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検索対象: 銀煌の騎士勲章(ライタークロイス) 3
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1. 銀煌の騎士勲章(ライタークロイス) 3

これは帝国だけじゃなく、 うなると、併合してしまうのが手つ取り早いと考えるかもしれない。 相手もそう考える可能性がある」 せりふ 厳しい声でのクローディアの台詞に、カインとレイクは緊張の視線を交わし合った。自分た ちでは捉えきれない。事態はあまりにも大きすぎる。 「魔物に対して、一致団結するということにはならないんでしようか ? 」 期待するようなカインの言葉に、クローディアはわすかに表情を緩ませる。 「そうね。そうなれば理想的なんだろうけれど げんがい その見通しは楽観的過ぎる、と表情が言外に語っている。 「まあ無理だわな。頭が二つある時点で、まとまらなくなるのは目に見えてる」 レイクがさばさばとした口調で肩をすくめた。カインも同意せざるを得なかった。 「気に病むな、と言っても無駄だろうが、気にしすぎるな。判断するのは私の兄だ。そして、 兄は戦を好む方ではない」 むしろ二人を安心させるように、ファリアは笑って言った。カインもそれがわかったので、 笑顔をつくって返す。 「ところで、向こうはどう考えているだろう。戦を、したがっているかな」 「それはわからぬが、現状では可能性は低いだろう。インフェリアが我が国を倒すには、一つ 条件があるからな」 「どんな ? とら ゆる

2. 銀煌の騎士勲章(ライタークロイス) 3

142 「よかったじゃない。さっそく汚名返上の機会を得られてさ」 ォルドリッチはそう言って笑うが、アヴァルはあまり楽観的になれない この近辺に魔物がいる可能性がある、ということもアイシャは告げていた。つまり、襲われ る可能性があるということだ。そうなると、自分のせいでオルドリッチたちを危険にさらして いるわけで、気分が悪い。 しんがり 「おまえは殿が嫌じゃないのかよ ? 俺は嫌だぞ、と思いながら一言うと、オルドリッチは笑って首を振った。 「そりや怖いけどね。状況聞く限り、殿も中央も先頭も、たいして変わんないわよ。殿が面倒 なのは、敵の追撃が後方から来ているときのみじゃない 「敵が中央を攻めてきて分断したら、殿は取り残される上に囲まれるだろうが」 「隊長って意外に悲観主義者なのねえ。女の子に好かれないわよ」 「おまえが好きだの嫌いだの言うとわけがわからん」 ラウニーはまだ怒っているらしく、最低限しかロは利いていない。ネルもそれに近いが、こ ちらは性格である。アヴァルとしても、積極的に話したい気分ではなかった。 昼頃に休憩を取って食事などをすませ、また行軍を開始する。 自分の前を進む隊列に、アヴァルはどこか違和感を覚えたが、よくわからなかった。近く いるオルドリッチに話すと 「ああ、それはきっと、先輩たちがいなくなってるからじゃない ? 」

3. 銀煌の騎士勲章(ライタークロイス) 3

引「仕方ないだろう。私たちでは、顔を知られている可能性があったからな」 「物陰から見ていたんだろう ? どうだった ? 」 、こ、アリキーノは、つなずいた。 ファルファレロのし。 「いたよ。見覚えのある顔が二つ。皇女殿下の従衛だったな」 正直驚いたという顔で話すアリキーノに、ファルファレロは首をひねった。 「従衛は三人いるけど 「騎士を除いた二人だ。銀髪の方はけっこう気に入っている。 その言葉に、ファルファレロはよ、つやく思いだしたよ、つだった。 「あの子か。少し話したけど、印象はふつうだね。都市に来たばかりの、世間知らずの田舎坊 主ってところかなあ。何ができるんだね ? 」 「戦士としての能力において、いまのところ突出したものは感じないな。槍は巧いが、まだ甘 いところもある。とはいえ、十七歳だからな。あの子はおそらく伸びていくと思う」 アリキーノは帝都ラウルクでのいきさつを説明した。試験の不正に彼を誘い、断られたこと、 試験当日に自分の居場所を突き止めたこと。 「彼は不正のことを知っている。従衛になったのは口止めも兼ねているのだろうが、ただの騎 士志願者の平民であることを考えれば、たいした出世じゃないかー : パルス君だっけか、君は、彼をこちらに引き入れたいのか」 ようい 「可能ならばね。頑固なところがあるが、それだけに、一度こちら側に来れば、容易に戻りは

4. 銀煌の騎士勲章(ライタークロイス) 3

とはいえ、やるしかないだろう。勲章が使えないというのは本当に違いない。もしも使える のならば、この男がとうに使って聖獣を呼びだしているはずだからだ。帝国の琦士に見つかる ためら 可能性があるとはいえ、魔物を目の前にして使用を躊躇うというのは、考えにくい 「この勲章はもらっていく 「 : : : 使えないのに、どうするつもりだね ? 」 「やつは、これを喰っていた」 とれほど効果があるのかは、わからないが。 それしか、根拠はない。。 「聖獣を呼べないのならば、餌に使う」 「なるほど それなら、とファルファレロは懐に手をやり、何かを取りだす。それは、何も刻まれていな ライタークロイス い騎士勲章だった。 「ついでに、これも持っていきたまえ」 ライタークロイス バルトは自分が持っている騎士勲章と、ファルファレロのそれとを交互に見比べる。表面に 聖獣の意匠があるかどうか以外の違いは、まったくない。 やけど 勲「こいつは例の言葉を唱えると、熱と煙を噴きだすんだ。私は持っていられなくて火傷までし 騎た。元はまともな勲章だったはずなのに」 銀 バルトは顔をしかめる。そんなものをど、つする気だ、と思っていると、ファルファレロはバ ルトの手に無印の勲章を押しつけた。

5. 銀煌の騎士勲章(ライタークロイス) 3

「だが、 やつが僕たちのことを覚えていたからとばけたんだとすれば、あとをつけられる可能 性ぐらいは考えているんじゃないか。それに、僕は尾行なんてしたことがないぜ」 不安要素を話すと、レイクはわかっていると言いたげにうなずいてみせた。 「俺は慣れてるから安心しろ。で、方法としては、俺とおまえは別々にやつを追うんだ。ばれ てもかまわねえ、っていうか、おまえの場合、ばれた方が好都合だ。そうすれば、やつの注意 はおまえに向けられる」 カインはすぐに納得して手を打った。 おとり 「つまり、僕は囮を務めるわけだな」 , をしし冖」 , カ 「もし見つかってもそうできる、ってだけだ。見つからなけりやそのまま追えよ、 く大事なのは、やつの拠点を突きとめることだ」 「言っておくが、時間はないぞ」 盛りあがる二人に、頬杖をつきながらファリアは冷淡な言葉を浴びせた。 「卿らは、自分たちの役目を忘れていないだろうな ? 祝宴まであと一刻弱だ。戻るのに四半 勲刻、用意に半刻で時間はとれぬ 騎「君とクローディアさんだけ出席ってわけによ、、 ( し力ないのか ? 」 銀 つい声を荒げそうになってしまい、カインは一旦一一一一口葉を止め、できるだけ落ち着いた口調で 言い直した。

6. 銀煌の騎士勲章(ライタークロイス) 3

圏肩を叩く。 「で、だ。問題はこれからどうするかだ」 「オルガーさんに話してもらうっていうのは」 「あの態度を見ただろうが。三人だけになったら変わる可能性もあるが、博打としては分が悪 すぎる」 レイクは揶揄するように、ロを歪めて笑った。カインもとりあえず言ってはみたていどで あって、あらためて考えると、うまくいくとは思えない 「まあ、それも一応考えておくとして。俺の考えはこうだ。やつを尾行して家を突きとめ、証 拠になりそうなものを探しだす 「もし、見つからなかったら ? 」 「弱味になりそうなものを探しだして、脅す ファリアの疑問に、レイクは凄みのある笑みを浮かべて答えた。カインは驚き、それから悩 む表情になる。もっと堂々とした手段はないのか。そんな思いを察したのか、レイクは今度は 説得するように、やや強く肩を叩く。 マレブランケ 「向こうが既に手段を選んじゃいねえんだ。まして、あいつが名乗った十二将ってのが本当な ら、ここは完全な敵地なんだぜ。駒を落として盤遊戯をやるような余裕はねえ」 「 : : : わかった」 カインとしてもあの男を逃すわナこよ、、 しし ( し力ない。ためらったり、代案を考える余裕はなかっ ゆが シャトル ばくち

7. 銀煌の騎士勲章(ライタークロイス) 3

172 「インフェリアに訊け」 ため息と舌打ちを立て続けにすると、ちょっと待てと言ってレイクは自分たちの部屋に駆け 戻る。 「何をやって 怒鳴りかけたら、すぐに出てきた。手には弩を持ち、矢筒を背負っている。 「それは、カインが買った土産ではなかったか ? 」 「でも本物だぜ。他に武器らしい武器がねえんだもん。あいつなら笑って許してくれる」 「だが、卿は扱い方を知っているのか 「買ったとき、矢を装填するのと撃ち方は聞いた。あとはやりながら覚える」 なんともいいかげんな発言にファリアは呆れたものだったが、城内が狂乱状態になる可能性 は高い。 武器は必要だろう。 三度、轟音。遠い 足音が聞こえて廊下を見ると、医師や薬師、衛士がこちらに走ってくるところだった。 「皆、無事か ? 」 うなすくのを待って、ファリアは力強い笑みを浮かべる。 「よし。謁見の間はわかるな ? 卿らはそこへ向かえ。我々は帝国の使者であり、少なくとも 我々が城内にいる限り、インフェリアは我々の安全を保障する義務がある。それでも駄目な場 合は、とにかくこの城を出よ。後で必ず迎えに行く」 えつけん いしゆみ

8. 銀煌の騎士勲章(ライタークロイス) 3

「帝国を滅ばし、その領土を完全に支配するまでの間、魔物をおさえておくことだ。それがで きなければ、仮に我が国を討ってもすぐ魔物に蹂躙される。そして、それだけの戦力を蓄える ようい のは容易ではないし、必ず、どこかから漏れる 「しかし、そうなると僕とレイクはアリキーノに狙われることになるな。あくまでウルバとア リキーノが同一人物であるとすれば、だけど」 あくまで、とは言ったものの、カインの中ではこの二者は同一人物扱いになっている。 「有り得るな。さきほどの料理屋で向こうも知ったわけだから、最短で襲撃があるとすれば今 夜かもしれん。だが、そうすればそうしたで、インフェリアは我が国に口実を一つ与えること スッラ となる。皇女の従衛を害するということは、皇女に危険が及ぶ可能性があった、という解釈に なるからな、ふつうは 「えらくややこしくて面倒くせえんだな。結局、俺たちが安全に帰るにはどうすりやいいん 途中から考えることを放棄した顔でレイクが問うた。 「試験の不正のことを考えても、アリキーノは慎重な男だろうな。むしろ、インフェリアにい 勲る間は仕掛けてこない気がする。帝国でならば、卿らが死のうと私が死のうと、インフェリア 騎に落ち度はなくなる」 いんべい 銀「ですが、インフェリア領内ならばことを隠蔽しやすいという利点がありますよ」 クローディアが冷静に指摘する。 じゅうりん

9. 銀煌の騎士勲章(ライタークロイス) 3

104 叱るような口調で言われて、カインはやっとその可能性に思い至った。 「でも、それなら僕たちが昼に抜け出したのはまずかったんじゃないか ? 」 「私が部屋を出るときは、クローディアに手伝ってもらってごまかしたからな。あと、レイク。 卿は城下で充分に飲み食いしただろうが」 「だって、庶民です平民ですって顔したら食べたことないでしよ、どうぞどうぞって勧めてく れるんだぜ。おいしいですって顔したらかわいがってもらえるし。階級がどうのとか偉そうな こと言ってても、やりようはあるよな」 「大や猫をかわいがるのと変わらんぞ、それは 「一晩の雨宿りだったら大や猫の扱いでもいし あぜん カインは唖然として友人を見やる。そのたくましさには感心した。ファリアは呆れてものも しわ いえないという態で、ドレスに皺がよることも意に介さず、いつもの態度で椅子に座り、カイ うなが ンたちにも座るよう促した。 「さっき、アリキーノが、とか言ったよね。何の話なんだ ? 」 盗み聞き、という単語が気になり、声を抑えてカインはレイクに尋ねた。 「ああ、世間話に混ぜてちょっと聞いたんだよ。あれ、本人っほいぜ。特徴がいっしょだ。も てるのな、あいつ」 カインは再び驚いた顔で友人を見た。ただ談笑していたのではなかったのか。 「どんなふうに言われていた ? 」 しか

10. 銀煌の騎士勲章(ライタークロイス) 3

224 ライタークロイス 「魔物は、騎士勲章を狙ってきます」 じようしん 魔物襲来から数日後、ファルファレロは国王にそう上申した。 「現在、王国東方の各地へ兵を派遣しておりますが、魔物の被害にあったという村や町はひと つもございません」 「帝国はどうなのだ」 じようさい 「帝国の城砦を一時突破したという情報は入っておりますが、やはり、町や村が襲われたとい う話はありません。もっとも、帝国からの情報は時間がかかりますゆえ、新たな知らせが入る 可能性は高いと思われますが」 「つまり , 国王は重々しい声で訊いた。 ライタークロイス 「王城のみが襲われたのも、騎士勲章があったため。おぬしはそう主張するのだな」 ライタークロイス 「実際、大量の騎士勲章が魔物に喰われて消失してしまいました」 ここまで、則置きである。ファルファレ口にとっては。 ライタークロイス 「さりとて、騎士勲章の研究と謎の解明は必要です。そこで、遠く離れたところにそのための 施設をいただきたく存じます。特に東方国境付近にいただければ、もし魔物の襲来があったと しても帝国が対処するでしようし、今後、帝国に対して何かを仕掛ける際にも連携が取りやす くなるかと れんきんか この要請は受け入れられた。インフェリアの東端に『錬金課分室』が設立されたのである。