ー迅社文庫 ライタークロイス 銀煌の騎士勲章 3 ライタークロイス 銀煌の騎士勲章 3 川口士 ー迅社文庫 ロ 士 ー迅社文庫 一迅社文庫
ライタークロイス 銀煌の騎士勲章 3 川口士
銀煌の蔚士勲章 Presented by Tsukasa Kawaguchi
CHARACTERS [ 銀煌の騎士勲章 3 ] / / クローディア ( 、一アイン カイン = パルス
、ヾレ , ・は田 5 、つ 魔物相手に一歩も引かず、応戦しているのは見事だと 俺は、戦うしかない。 『錬金課』へ向かって走る。「白鬼』ダントリオンに憧れ、師の雪辱をはらすため、戦士であ ること以外の何かを得るために受けた騎士登用試験は、自らの手で握り潰した。自分には戦う 以外の道はない。少なくとも 、バルトはそ、つ思っている 戦えることを、証明するしかない いびつ 自分が背負っている、この大剣とも槍ともっかぬ歪な武器のように。 『錬金課特別室』の前を通りかかり、足を止めた。 気配がする。半開きになっているこの扉の奥に、何かがいる。 ガト 腰をかがめて、刺貫を抜き放ってかまえる。それから扉を蹴り開けた。 扉の先は、細長い廊下になっていた。大人が二人横に並んだら、ほとんど身動きが取れなく なってしま、つのではと田 5 えるほど狭い くも そして、廊下の奥。右寄りに蜘蛛の魔物がいた。大熊ほどもありそうな巨躯の各所を鋼鉄で 勲覆い、背には、翼の残骸を残している。 嘘魔物の背後の壁には、外側から打ち砕いたような巨大な穴が穿たれており、穴の周囲には白 銀銀の糸が張り巡らされていた。その先には、蒼い空が広がっている。 蜘蛛の魔物のすぐそばに、ファルファレ口が仰向けに倒れていた。意識はあるようだが、動 きよく
「わかりました。それでは三日後にまた来ます」 そのとき、表に通じる扉が勢いよく開かれて、おもわずイングリドは後ろを振り返る。 肩から大きな布袋を提げた中肉中背の若者が、戸口に立っていた。イングリドよりわすかに びりよう 背が高く、彫りの深い顔だちは鼻梁が通ってすっきりとしている。通りを歩けばけっこうな数 の女性の視線を集めることができそうだった。 「婆ちゃん、いる ? 」 ぞんざいな口調で言いながら、男は大股で店内に入ってくる。誰だろう、とイングリドは田 5 っ マルチナに息子がいるという話は前に聞いたことがあった た。態度からして客には見えない が、たしか北の町で店をかまえているとか、そう言っていたはずだ。 マルチナは、皺だらけの顔をほころばせて男に笑いかけた。 「おや、フルスちゃん。いらっしゃい」 「『ちゃん』はやめてくれって言ってるだろ」 いちべっ イングリドを一瞥して、興味なさそうに視線を戻すとフルスと呼ばれた男は受付用の長机に 布袋を乱暴に置いた。そこから、鍋のふたほどの大きさの円形の鏡を取りだす。 勲「これが前に言ったやつだよ。婆ちゃんに幸せを呼んでくれるんだって。五枚一組でたった銀 貨二十五枚なんだ」 銀 二十五枚。 その数字を聞いた瞬間、イングリドは頭の中が真っ暗になってしまった。ただの鏡に、
か -03-26 J ー導藝文庫 川口士の本 星図詠のリーナ 1 ~ 3 桐野くんには彼女がいない ! ? ウチ この家に勇者様もしくは救世主さまは いらっしゃいませんか ? ! 1 ~ 4 シス 千の魔剣と盾の乙女 1 ~ 1 4 ライタークロイス 銀煌の騎士勲章 1 ライタークロイス 銀煌の騎士勲章 2 ライタークロイス 銀煌の騎士勲章 3 膩Ⅱ川 III 旧引ⅡⅢ 9 7 8 4 7 5 8 0 4 6 4 7 5 旧 BN978-4-7580-4647-3 C0193 \ 638E 定価ー + 税 発行ー迅社 J ー藝庫 ー迅社文庫 賊との戦い、そして超人的な怪物ぶりを発揮した謎の男との ィ 戦いを潜り抜け、ついに皇女ファリア = アステルともに 隣国インフェリアへと到着したカインたち。インフェリアの王宮で 帝国の使節として、友好条約の再締結の務めをはたすファリア。 一方、カインは王都ヴェルギルでかって騎士登用試験で共闘し、 そして道をたがえたかっての友人オルガーと、彼をそそのかした ーイ 将軍アリキーノと再会を果たしていた。 インフェリア宮廷に渦巻く陰謀と人類の脅威たる魔物との戦い、 そして謎が深まる騎士勲章の存在。 騎士を目指す少年たちの物語、 緊迫の第三巻。 . ⅶ士動早 川口士→早アシオ 川口士 ( かわぐち・つかさ ) お待たせしました。上下巻構成の下巻です。 三冊目になっても、見直すと「いまの自分なら・ ・・・」感がどうして も抜けませんが、最低限の手直しで出させていただきました。そ れにしても見直して思うのは、やはり自分はこういう主人公が好 きなんだなということでしようか。もちろん、ひねくれた主人公も好 きですけどね。 そして短編の三つめ、すなわち完結編です。やつばり主人公は 出てきません。ですが、個人的にはこの短編 ( 結果的に中編か な ) の締めくくりとしては、やはりこの子の視点での話がふさわし いといまでも思っています。 1 9 2 01 9 5 0 0 6 5 8 4 イラスト アシオ ( あしお ) 猫とファミレスとコンビニをこよなく愛する、最近漫画描いてない 漫画家。最近、倒れるだけで腹筋が出来るという某トレーニング 器具を購入。初日にはりきりすぎて翌日すごい筋肉痛に もまだ一応続けてるみたい。 Presented by Tsukasa Kawaguchi lllustration = AsiO 一迅社文庫 Presented by Tsukasa Kawaguchi lllustration = AsiO
呆然として彼女を見つめる。 綺麗だ、とカインは素直に思った。 輝くような金色の髪は丁寧に櫛を入れたうえで、細い銀鎖の髪飾りを用いて後頭部でまとめ ほど一 ) そでぐちせいち ししゅ・つ ている。薄絹の白いドレスは肩口を大きくふくらませ、裾や袖口に精緻な刺繍が施されたもの きら だ。肘まである手袋には翼を模した装飾があり、白皙の肌の胸元には碧玉の首飾りが煌めいて 色彩を際立たせていた。 化粧はやや濃いが、それは彼女を病弱に見せるための処置だと、カインたちにはすぐにわ かった。青白い顔をして、眉を下げ、伏せ目がちにしながらも口元には微笑を浮かべている。 「ばけるもんだなあ : : : 」 つぶや 呆れと恐れをないまぜにして、レイクが呟いた。カインも同感だ、と首を振る。 「パルス。ロノベ。ご苦労様です み うる えしやく ごうがんふそん はかな こわね うわめづか 儚げな声音と、碧い瞳を潤ませての上目遣いで二人に会釈した。普段の傲岸不遜な態度は微 じん がくぜん 塵もなく、あまりの差異に愕然として立ち尽くしていると、 「さっさと言葉を返せ、ひとが見ているだろうが」 ささや 勲すぐそばにいる二人にしか聞こえないほどの声で囁かれ、それでカインはようやく正気に 騎返った。 きようえっしごく 銀「お気遣いいただき、恐悦至極に存じます。殿下こそ、長い旅でお疲れでございましよう。く れぐれもご無理をなさらぬよう」 はくせき
267 銀煌の騎士勲章 3 しつもの無表情で彼 イングリドが浴槽を出たのは、半刻後のことだった。仕事着をまとい、、 女はアウレリアの部屋に向かう。 彼女の尊敬する奥様はソフアに座って何かの本を読んでいたが、イングリドの顔を見ると微 笑を浮かべて言った。 「イングリド、お茶を淹れてちょうだい , はい、とイングリドは微笑とともに、つなずいた。 彼女のいつもの仕事がはじまる。 まるかがみ 円鏡 了
服装を整えている暇などはない。名を刻んだ短剣だけを腰に帯びて、ファリアが部屋を飛び だすと、ちょうどレイクも部屋から出てきたところだった。服は乱れていたが、それを指摘し ている余裕などない。 「お姫さん、さっきの凄い音はありゃなんだ」 「魔物だ」 短い即答だったが、 一瞬、レイクは理解できないという顔をした。 「ちょっと待ってくれよ ? ここはインフェリアだぜ」 「事実だ。カインはどうした ? 勲「あいつなら中庭に : 嘘そこまで言ったとき、再び轟音が響き、王城が振動する。 銀「衛士たちを避難させてから、中庭に行くぞ。カインと合流し次第、私たちも避難する」 「避難って、どこにだよ」 ことは、ただそれだけで精神に負担を強いる。 魔物が放った水塊。あれを地上に撃たせてはならない。かといって、即座に斬り伏せるのは 無理だ。せめて、間断ない攻撃を加えてそちらに目を向けさせない以外に、ない。