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検索対象: 銀煌の騎士勲章(ライタークロイス) 4
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1. 銀煌の騎士勲章(ライタークロイス) 4

す。ジャガイモやトマトといった作物はごく当たり前に流通していますし、振り子時計や傘な かつばんいんさっ ども出てきます。活版印刷の技術があって、本も大量にあります。 ほうせい 服についても素材こそ麻や絹などに限定されていますが、縫製や装飾については文字通りの ファンタジーですね。 魔法的な要素は騎士勲章や魔物に関係したことと、光灯石に代表される変わった小道具ぐら いでしよ、つか そんな世界でのカインたちの物語も、残すところあと一冊。最後までおっきあいいただけれ ばと思います。最終巻となる五巻はこの本の翌月に発売できるように頑張っています。結末に は大きく加筆をしたいと思いますので、ぜひご期待ください。 しやじ それでは謝辞をば。 これまでの登場人物たちはもちろん、今回しか出番のないような男まで新たに書き下ろして くださったアシオさん。ありがとうございました。編集のさん。打ちあわせ中にコーヒーを こばしてしまってすみません。誤用などがたくさんあったのは、当時は勢いを重視していたと いうことで。本作が書店に並ぶまでの工程に関わったすべての方々へ、お礼を申しあげます。 最後に、ここまで読んでくださった皆様へ。ありがとうございました。 あそれでは、また。 二〇一五年冬の半ばの夜に 川口士

2. 銀煌の騎士勲章(ライタークロイス) 4

ラムはそっけなく応じた。レイクはカインを横目で見て、小さく肩をすくめる。 ゆる カインも口元を緩めかけたが、そのときゴートと視線が合った。冷水を浴びせられたように 思ったが、皇子の従衛を務める男は苦笑を返してきたので、ほっと胸を撫で下ろす。 ともあれ、ハイラムは冗談につきあうつもりはないらしい。そう考えてから、カインは内心 で首をかしげた。自分とレイクへのひどい呼称は、真面目に言ったものだったのだろうか。 「本題に入るが , おうのう わけがわからずひとりで懊悩していると、ハイラムが切りだした。カインたちの前に数枚の 書類を置く。昨日提出した報告書だった。 「卿らがインフェリアで何を見たか。誰に会い、何をしたのかについては、だいたい把握して いる。ここでは、より詳しい話を聞かせてもらいたい 「それでは、まず僕 : : : 私から申しあげます」 カインが口を開く。インフェリアの王都を歩きまわっているときに、アリキーノと会ったこ と。アリキーノは、騎士登用事件において不正に関わっていたウルバと同一人物としか思えな 4 かったこと。彼と練習試合をすることになり、そのとき王城を魔物が襲ったこと。 勲それらのことを、カインは順序だてて説明した。 「卿は、魔物をどうやって撃退できたのだ ? 銀「私だけではありません。アリキーノと、他にも知りあいだった傭兵がおりました」 意識的にバルトの名は伏せる。それについて、ハイラムは追及しなかった。

3. 銀煌の騎士勲章(ライタークロイス) 4

げている」 せりふ アリキーノがカインに言った「ロや関節を狙え」という台詞。戦い方、貸し与えた武器。 すれも見逃せない要素だった。 スッラ とみ、、つい、つ一」 「あの従衛二人は年齢に比べれよ虫、 ( リしか、極端に飛び抜けているわけでもない、 とだったな。その二人が生き残れたのは、まさに彼らの知識と武器があったからだろうが : 試みに問うが、卿はできるか ? 聖獣を駆らず、ただの剣や槍で魔物を倒すことが」 「一対一では、騎士団長や千騎長を務める者でも厳しい戦いになるかとー ゴートの返答は慎重そのものだった。 いしゆみ 「相手は飛んでおります。弩や弓などで翼を傷つけ、地上に引きずり倒したとしても、戦斧の ような爪をかいくぐって斬りつけなければなりませぬ。今回現れた新種相手となれば、奇妙な 術を操るので、更に困難なものとなりましよう」 「その上で、魔物のロ腔や関節を狙って斬りつけなければならぬわけか」 「彼の有名なエノキオス鋼で鍛えた武器をもってしても魔物の外殻を傷つけることはかないま せぬ。二対一、三対一ならばいま少し楽にことを運べましようが : : : 」 勲「もう一つ。なぜ、魔物は帝国の村や町を襲わず、インフェリアに向かったのか。インフェリ 騎アには魔物を引き寄せるような何かがあるのか。あるとしたらそれは何なのか、いっからイン 銀フェリアにあるのか」 厄介そうに、ハイラムは吐き捨てる。

4. 銀煌の騎士勲章(ライタークロイス) 4

スッラ カイン ⅱパルスは十七歳。帝国の皇女ファリアⅡアステルの従衛である。 スッラ 従衛について簡単に説明するならば、従者と護衛と相談役を兼ねた職務というところだろう か。とはいえ、騎士ではなく、まだ未熟なところもあり、かっファリアと同い年のカインでは 従者と話し相手を兼ねたものというのが妥当かもしれない。 おもむ 二月前、ファリアは隣国インフェリアへ赴いた。帝国とインフェリアとの間で結んでいる通 商条約と不可侵条約を更新するためだ。これにカインも従った。 スッラ もちろんカインだけではない。同じ従衛で親友のレイク日ロノベと、朱鳳の騎士であり以前 スッラ からファリアの従衛を務めているクローディアⅡアインもいた。さらに道中の護衛を務める衛 士たちや技術交流のための職人集団もいるという大所帯だった。 条約の更新そのものは無事にすんだのだが、それ以外のところで驚くべき事件が起きた。 インフェリアの王都に、魔物が現れたのだ。それも三体。 魔物は、大陸の東の海の彼方から現れる。大陸の東部のほとんどは帝国の領土だ。インフェ 勲リアを襲った魔物たちは、帝国の上空を通過して飛来したのである。 カインたちはインフェリアの戦士たちに協力して、王城を襲った魔物を迎え撃った。多くの の 銀犠牲を出しながらも彼らは魔物を打ち倒し、あるいは撃退した。 そして数日前、カインたちは帝都へ帰還したのだった。

5. 銀煌の騎士勲章(ライタークロイス) 4

「フルカス騎士団長閣下。ストラス殿ー 槍を振るう手を止めて、クローディアが進みでた。右手の握り拳を胸元に当てる敬礼を行い、 いぶか それから訝しげに口を開く。 「今日は、どのような用向きでこちらへ」 「突然ですまないが、一つ手合わせしてもらえないかと思ってな。ああ、アイン殿ではない。 そちらの二人だ」 そう言ったのは剣を帯びた騎士だ。腕や脚は余分な肉をことごとく削ぎ落としたかのように そ・つぼ . っ 細いが、かといって虚弱な印象はまったく与えない。艷のない黒髪は腰まで届き、双眸には強 烈な意志が感じられる。 「騎士団長たる方に手合わせしていただけるのは、彼にとっても非常に名誉なことですが : さしつかえなければ、理由をお教えいただけませんか」 「インフェリアが魔物に襲われたという話は聞いている。その中で、皇女殿下をお守りしなが スッラ ら無事に帰還した従衛がいたということもな。魔物相手に剣を振るったことがある者ならば、 騎士ならぬ身で魔物と戦い、生き延びた存在に、興味を抱かずにはいられないだろう」 章 勲 インフェリアが魔物に襲われた件は、既に帝都でも広く知られている。王城が半壊し、死者 騎は五百を超え、負傷者はその何倍にも及んだのだ。隠すほうが無理というものだった。 煌 銀 ただし、魔物については帝国の騎士ーーっまり、クローディアが、インフェリアの勇敢な騎 士たちの協力を得ながら撃退した、ということになっている。カインとレイクについては「皇

6. 銀煌の騎士勲章(ライタークロイス) 4

アルプン を浮かべると、そばに控えているゴートに紙と黒炭筆を持たせた。 ゴートの手は長年武器を振るってきた者らしい無骨なっくりだが、筆の運びは繊細で、カイ せいち ンにひとつひとっ確認しながら魔物の姿を精緻に描いていく。遠くから魔物を見ていたレイク も助言し、魔物の絵は完成した。 それでカインの話は終わり、今度はレイクの番となる。 「職務上当然ながら、私はほとんどの時間、カインⅡパルスと行動をともにしておりました」 不真面目と言われたことがよほど気に入らなかったのか、隣のカインが目を丸くするほど真 よど 面目な表情と堂々とした態度で、淀みなくレイクは述べた。 「その間に起こったことについては、彼が申しあげた通りです。誤り、漏れなどなく、とくに 補足するようなこともないので、それ以外の部分について申しあげさせていただきますー それ以外とは、魔物たちが襲撃してきたとき、彼がファリアとともに、カインをさがして王 城内を駆けまわった話についてである。ハイラムは興味深く耳を傾け、インフェリアの王子ロ ダールのことも詳しく聞きたがった。 そうしてレイクが話し終えると、ハイラムは何度かうなずき、カインたちを愛想の欠片もな い表情で見据えた。 「魔物については、私からも説明することがある。先日、城砦の一つが突破された」 あまりにもあっさりと言ったので、カインとレイクはすぐには反応できなかった。言葉の意 味を理解すると、二人は同時に「えっーという驚きの声を発する。

7. 銀煌の騎士勲章(ライタークロイス) 4

はじめまして。他の作品を読んでくださっている方の場合は、一か月ぶりという方もいらっ かわぐちつかさ しやるかもしれません。川口士です。 本作は富士見書房さんから出した拙作『ライタークロイス』四巻に加筆修正を行い復刊した ものです。楽しんでいただければと思います。 今回は、世界観について少しだけ語ろうかなと思います。 イ サウザンド 拙作『千の魔剣と盾の乙女』はケルト神話を、文庫 *-•さんから出している『魔弾の王と ヴァナディース 戦姫』はスラヴ神話を、それぞれ参考にしていますが『銀煌の騎士勲章』にはそれがありま せん。 もちろんオリジナルと一一一一口うつもりはなく、たとえば騎士の駆る聖獣は中国の神話における四 きりんはうおうおうりゅうれいき 霊 ( 麒麟、鳳凰、応竜、霊亀 ) を参考にしたものですし、帝国や魔物、登場人物の名字につい てもやはり参考にしたものがあります。気に入ったものをいろいろ取りそろえて、アレンジを ほどこしたとい、つところでしよ、つか そんなふうにごちゃまぜなので、用語や言葉などはかえって何かを参考にできず、自分でい ろいろと考えることになりました。これはこれで楽しい作業ではありましたが。 衣食住については、それこそ剣と魔法のファンタジーをイメージしていただければと思いま 亠め A が」 せっさく ライタークロイス

8. 銀煌の騎士勲章(ライタークロイス) 4

致する。だが、この人間によく似た魔物だけは、報告にない」 「姿形から考えて、見落としたとは考えにくいですな。巧妙に姿を隠していたか、リ 男の方角か ら現れたか : 今日中にあらためて確認をとっておきましよ、つ」 「こいつは、インフェリアに現れた一体だけだと思うか , 「この魔物と相対したクローディアⅱアインの言ですが、これほど造形が特異なものの存在が いままで見過ごされていたとは、考えにくいことです。攻撃にしても、一国の城を破壊するほ どの水を撃ちだす、というものは私も見たことがありませぬ。また、彼女の剣を見せてもらっ たのですが、ほとんど使いものにならなくなっておりました。鋼鉄を続けて斬ったとしてもこ うはならないだろうと思わせるほど、欠け、亀裂はひどいもので ハイラムはゴートから視線を外し、しばらくうつむきがちに考えこんでいたが、何かを思い だしたように顔をあげた。 「確か、魔物について研究していた老人がいたな」 「グラスフォラス殿ですね。陛下と親しくされていた方で、宮殿に一室を与えられ、勤めてお ります 勲「その老人にもご協力願うとしよう。これと同じものをもう何枚か描いてもらうぞ。各城砦に 嘘も警戒を呼びかけなければならん。フルカスの提案と合わせてな」 銀騎士団長リオンⅱフルカスの提案というのは、三騎の騎士で一体の魔物を同時に攻撃し、一 度で確実に仕留めるというものだった。正面と左右から、あるいは上方、正面、下方から、も あいたい

9. 銀煌の騎士勲章(ライタークロイス) 4

「ふん、ファルファレ口か」 グラフィアカーネは毒づき、部下がさしだした紙片を受け取った。さきほどしつかり目を通 したのだが、 あらためて読み直す。特に真新しい発見があるわけもなかった。 『カインⅡパルス。カナン地方ルッカ村出身。十八歳。両親のみ。平民。前年度の騎士登用試 験を受験。筆記試験の成績は上位。実技受験前に不正を知り、試験は辞退。不正を止め、おそ スッラ らくはその功績と口止めを兼ねて皇女の従衛となる。他に目立った賞罰はなし。武芸において は槍が突出しているが、現状では警戒の要なし。性格は温和、実直。不正義を嫌う。成長には 期待できる。引き入れることを検討』 紙片に書かれているのは、アリキーノがまとめていたカインについての情報だった。つまる ところ凡人か、というのがグラフィアカーネの評価である。実際の人物を目の当たりにすれば がいせんしき また変わるやもしれぬ、と凱旋式を見にきたついでに観察してみたのだが、評価はまったく変 わらなかった。 ( しいところでは 「あんな小僧をかばって死んだというのであれば、アリキーノめ、無駄死こも ) ないか」 その言葉に部下は少し考えるようにうつむき、それからロを開いた。 「アリキーノ殿の行動は、帝国に口実を与えないためではないでしようか。魔物が襲ってきた とはいえ、皇女の護衛ともあろう者が我が国の王城で死んでは問題になりますから」 「そんなところだろうが、払った代償が大きすぎる」

10. 銀煌の騎士勲章(ライタークロイス) 4

の分野なら夜明けまで語ることができる」 なるほど、と部下がおもわずうなずくほどグラフィアカーネは熱、いに語り、納得させてし 亠まった。 「とはいえ、読む暇がどれだけあるものやら : グラフィアカーネには、やるべきことが山積みされている。アリキーノが帝国内につくりあ まなざ げていた人脈の整理をしなければならず、帝国がインフェリアに向けている疑惑の眼差しを、 どうにかして逸らさねばならなかった。そして、そのための時間や人材は、決して豊かにある わけではない。 ちょ・つもん 「帝国は、我が国には弔問の使者を送ったきりなのだな」 「いまのところは。魔物の襲撃のために、帝国もかなりの被害を被ったようです。あと、これ は確かではありませんが、魔物が強くなっているという噂があります 「噂の出所は ? 「一部の騎士から」 「それが事実だとすれば、魔物を警戒して騎士を動かせす、そのためにこちらの動向をさぐっ 勲ている、と考えられるが : 騎グラフィアカーネは握り拳を口元にあてて考えこんでいたが、何かを思いだしたように顔を 銀あげた。 「騎士といえば、最近、我が国に逃げこんできた帝国騎士がいただろう。表向きは公金横領の