・ : 道案内の子供もあらわれたし : 後は聞こえなくなり、銀眠はその場を離れて小館に戻った。 すべて : : : 予一一一口どおり : ・ 部屋に入ると、ちょうど午睡から覚めた水蛇が着換えをしている ところだった。侍女たちが部屋をさがると、ふたりは地下道へ降り 小館の門のあたりで綿々と続く話し声は、時おり波のようにふと ていった。そしてその夜は一晩中そこで魚を相手にすごし、昼過ぎ 高まったかと思うと、また低く細々とした調子に戻る。侍女たちの に部屋へ戻って寝た。 声だろうかと思いながらうつらうつらしていると、ふいに何かあわ ただしい気配が走った。 ・ : 浅い眠りの中に、戸外の気配がしのびこんでくる。 最初に、夜の水をかき乱す無数の櫓の音。船板のきしみ。解けお 高い声が響いた。門の扉が大きくきしむ。 また、全部がかすかで、遠 ちたもやい綱が、水面を叩く音。 どうやってここまで。 人に見られては : ひとつの手のひらが、お・ほっかなく船べりを叩いて拍子を取りは 侍女たちの声に混じって、聞き覚えのない声が唸った。ものすさ じめるが、じきに気おくれしたようにやめてしまう。 まじい早ロで喋りあう声と、なだめるような低い声がもつれあう中 しばらくの沈黙。 唐突に、数人の手が正確に船べりを叩きはじめた。単調なリズムで、痰のからんだその嗄れ声はしだいに高まった。 はすぐ四方に伝播した。拍子を取る手は無数にふえ、しだいに力強気づくと、水蛇は寝台から降りて手ばやく服をつけているところ だつだ。眼顔で銀眼を促すと、地下道に通じる扉のほうを指さして く、大きくなっていく。魚の皮を張った胡弓があちこちで掻き鳴ら されたすのと同時に、人々のロもほぐれだし、たちまち喧騒が高まみせる。その時、女たちの悲鳴じみた声があがった。 っていった。 船を出す。はやく用意を。 : ふいに、銀眼は眼をさました。 戸外の祭りの喧駁がどっと高まると同時に、数人の声が混じりあ いながら小館の中へなたれこんできた。ふたりが隣りの小部屋へ近 夢うつつの頭の中に、館を遠まきにした夥しい人の気配が流れこ づきかけた時、階下で石瓶の砕け散る音がして、数人の足音が階段 んでくる。ーーーすえた匂いのこもった真暗な部屋の中。窓から脆弱 を駆け登ってきた。 な光線が落ちて、部屋のむこう端たけがわすかに薄明るんでいる。 はやく、はやく、お嬢様 ! : ・その中で、魚の匂いのする生乾きの髪をまきちらして眠ってい 黒衣の侍女たちが、すべるように部屋へ駆けこんでくる。 る水蛇の顔。いつもの癖で、うつぶせに寝ている。 もうすぐここへ、やってくる。 しつの間にか低い女の話し声が混じりはじめて 遠い喧騒の中に、、 あの姿は、人間の見るべきものではない。塔の部屋にこもっ 、 0 7
フレンドを連れてきたのは、あたしのためだったなんて、考えられ リラは身を起こすと、再び吠えはじめた。河の近くのどこかで、一 」ファレルは、受話器を放り出すと、窓に向かって跳び出し 匹の犬がそれに答える。彼女は尾を振り、甘えた泣き声をあげる。 ファレルが言う。「二分もしない内に、あの管理人が上ってくるた。彼は内側の道をとっていたのたから、うまくやれるはずだっ そ。どうしたっていうんだい ? 」足音と、低いおびえた声が、頭上た。けれど、狼は頭をめぐらし、凄ましい調子でうなったものだか の部屋でしている。犬がもう一匹吠えた。今度は近い。狼は、坐っら、ファレルはひっくり返ってしまった。窓のところにたどりつい たときには、彼女は二階下の非常階段のところにいた。そして通り たまま、窓の方へちょっぴりにしり寄った。まるで赤ん坊のように すうっと動く。彼女は肩越しにファレルを見、ひどく全身を震わせでは、彼女を待ち望んでいる吠え声がしていた。 ・フラウン夫人は、受話器をとおして、ファレルのかすかな叫び声 た。衝動に駆られて、ファレルは電話を取りあげ、彼女の母親へ電 を聞いた。すぐさま、それに続いてドアを叩く重い音がした。奇 話をかけた。 狼が、身体をゆらし、よじり、呻き声をあげているのを見なが妙な、切れ切れの声が、その / ックの背後からわけのわからぬこ ドアがひらい ら、ファレルはプラウン夫人にその動きの様子を伝えた。「彼女のとを叫んでいた。足音が受話器のすぐそばを通り こ 0 とうしてしまったのか、わからな こんな様子、見たことがない。・ 「私の大、私の犬 ! 」その奇妙な声が悲痛に叫んでいた。「私の犬 「まあ、何てこと」・フラウン夫人はささやくように言った。そしてが、私の犬が ! 」 「あなたの大は、かわいそうなことをしましたね」ファレルが言 語りはじめた。ファレルが黙っていると、彼はひどく早ロでしゃべ う。「いいですか、どうそ出てって下さい。仕事があるんですよ」 りはじめた。 「もうずいぶんの間、起こらなかったのに。シェクト マンさんがあの娘に薬を与えてくれたのよ。でもあの娘ったら、そ「私にも仕事がある。その声が言う。「自分の仕事はわかってい る」その調子が高まり、外国語になっていた。その合間に、まるで れを切らしてしまったか、飲み忘れてしまったにちがいないわ あの娘は、小さなときから、ずっとそんな調子たったのよ。スクー折れた骨のように英語の単語が突き出される。 ハスに忘れてきた魔法びんの数ったら大変なもの、それと毎週「どこにいった ? どこにいった ? あの女が私の犬を殺したんだ のビアノのーー」 「前から言っておいて欲しかったですね」ファレルは言った。彼「ここにはいません」最後のところで調子が変ったファレル自身の は、慎重に開いた窓にむかってにじり寄った。狼の目の瞳孔は、せ声。彼の次の言葉まで、ずいぶん間があるように思えた。「そんな もの、ひっこめたほうがいい」 わしい呼吸に合わせて、脈打っていた。 ! リラの母親は、彼の耳の 「他人に言うべきことじゃありません」 ・フラウン夫人は、まるでその狼が彼女の家の窓の下を駆け抜けて いったかと思えるほど、はっきりと吠え声を聴いた。孤独な、何か 中へ泣きわめくようにいった。「あの娘が、最初のかわいいポーイ
コール音が絶えた。ラン。フがまたたきをやめ、重い沈黙が襲って 「まだはっきりしません。 : それに何かをこちらに問いかけよう きた。私は不安にかられて、左肩の銀色の楕円体に左手を当ててみとしているのですが、質問自体がよくわかりません」 た。手袋を通して熱気が伝わってくるような気がした。 「謎をかけようとしているのか」私は、。ヒラミッド ーー番人ーー質 「トリニテ ・ : 」私は小声で呼びかけた。 問という言葉から、スフィンクスの伝説を連想したのだ。岩山に住 「答えてくれ、何か聞えるか : : : 」 み、通行人に謎をかけ、解けないものを食べてしまうという伝説。 「何か″声″が聞えます。探査体が壊れる寸前に聞えたような : ・ 巨大な四面体の中の意識はこの星のスフィンクスなのではないか。 やはり、同し″声″です。この艇の解析装置で使用していた機械語私はにわかに不安にかられた。 で伝わってくるのですが : : : 」 トリニティの声はとぎれとぎれに聞 「正確な意味がわかりました」トリニティの声がした。「翻沢すれ える。「簡単な、ごく簡単な算式を送ってきています」 ばこうです。『私はこの星の種族を守護するため、この星の種族に 「あれは通信装置の一種なのか」 よって造られた存在である。私の存在理由はこの星に訪れる生命に 「いえ、応答の必要があるようです。相手は接触を求めているよう次の問いを与えることであり、答えの得られぬ場合、私はその生命 をこの星から排除する処置をとらねばならない』こうなります」 「よし、データの発信装置を使え」私は制御盤を操作した。 「しかし、その種族はとっくに滅亡しているのではないのか」私は 叫んた。 艇体全体が一瞬浮かびあがるかのように揺れたような気がした。 次の一瞬、ラン。フ群がいっせいに暗くなり、ディスプレイ画面がで 「不明です。相手はこれたけしかいいません」 トリニティの声はむ たらめな走査線で青白く輝いた。 しろ冷静たった。 トリニティと遺跡との間で猛烈な速度で交信が開始された様子だ「それで、その『問、 し』は送られてきたのか」声がうわずっている った。どんな交信がなされているのか知ることはできない。私としのが自分でもわかった。 ては、トリニティの機能が停止しないことを祈るしかない 7 「次のとおりです。 やがてトリニティの声がした。 『自然数 >< ・・の組合せにおいて Xn 十 Yn=Zn 「意味が少しずつつかめてきました。 やはりあの四面体は単な る遺跡ではなく、意識を持った存在です。コードの対称が細部はまを満足する組合せは n>2 の場合に存在するか』 た不正確なので、厳密な意味はつかめないのですが、『私はこの星 こう問いかけています」 の種族の守護神』あるいは『番人』といった意味を伝えてくるので 「フェルマーの定理だ」私は悲鳴をあげた。それから、あることに 思い当って息を呑んだ。「 トリニティ、あの四面体の水平断面は直 「減んだ種族を守っているのか」 角三角形だったな。その三辺は整数比にならないか」 ガーディアン ウォッチ
遺足亦の声 晃画 = 加藤直之 減亡した種族の遺跡を求めて 地球型惑星に降りたった彼らは 数式を囁く奇妙な声を聞いた・・・ ハード S F の俊英再び登場 !
唯一のドアである表ロ ミリアムに会いにでかけるとき、そこの声は低い、満足のうなり声に戻っているはすである。 カンヌキをはずし 0 ばなしにしておいたことを、彼はすっかり忘れ泥棒がいるのだろうか ? スティーヴンは大の鎖をとくと、その 9 ていたーーーを通りすぎて、スティーヴンは小屋の裏手のさしかけ屋あとについて走り、小屋をぐるっとまわって表口についた。 根の下にまっすぐ向かった。 , - 家の中になにかいた。ランタンのない、月光に照らされた室内 「フケファロス、さあ来てやったよ。もう静かにおし。お互いなぐで、三人の男がかがみこんでいるように見えた。その人影が急に逃 さめあおうじゃないか。女の子も雌も手近にはいないものね」 げだしたので、スティーヴンはひどくびつくりし、彼らの進行方向 しかし、・フケファロスの鳴き声はさらに大きくなり、鼓膜も破れ からどいてしまった。ブケファロスも内気な若駒のようにあとじさ るかと思えるほどだった。淋しさを訴えているのではなかった。怒った。侵入者の身体がけがらわしかったからではない。かん高く、 りの声。鎖をといて、主人の家族を守りにいかせてくれと吠えてい鋭い悲鳴のせいだった。その声に思わすスティーヴンは両手を耳に るのだった。さもなければ、スティーヴンがやってきたいま、鳴きあて、彼らの進路からどいてしまったのだ。 彼は見たーー月光の中、侵入者の後頭部 を。その胴体を。歩く木。おそましく蠢く巻 毛。バタ・ハタと動く枝のような四肢。しか し、彼らには、木の自然なところがなかっ た。彼らは歪んでいた。堕落しているように スティ 1 ヴンには見えた。なまじ人間に似て いると、それが恐怖を呼ぶ。ロンドンの祭り で、猿が人間の真似をすると、人は声をあ げて笑う。しかし、人に似た木を見るのは、 楽しくない。、 しや、そいつらは植物人間など というなまやさしいものではない。死体のよ あおじろ うに蒼白い肌。ずっと地中に埋められていた 死体が、身体に木々の根をからみつかせたま ま、墓から這い出てきたように見えた。 マンドレイクだ。 いそいでスティーヴンはランタンに火をい
、よ、し、電報も「そうだ」畏怖をこめて、マイクはささやいた。「明日、ジョーと は、どうしたらいいんだ。手紙を書くわけこよ、 うてない。 ノックするのにドアもなければ、鳴らすような鐘がある出番を代わってもらって、いっしょに湖に行こう。朝早くさそいに 来るよ」 とうすれば、呼びだして話ができるんだ」 わけじゃない。・ 肩を落とした。「さあ、マイク、葉巻きはどうだい。あんたはずグリーイハーグはこぶしを握りしめ、興奮のあまり胸が締めつけ られて声も出なかった。エスターが手伝いに出てくると、はじめて っと親友だったが、もう打つ手はあるまい」 語ることもなく、二人は立ちつくした。沈黙をやぶって、マイク鉄板をあっかう男の子だけを彼女といっしょに店にのこし、彼は村 にでかけて、セロファン包みの角砂糖をさがした。 が言った。「じつに暑い日だ。毎年の猛暑というやった」 マイクがホテルにやって来たのは、やっと日がの・ほった時刻だっ 「ああ。エスターの話では、このままつづけば商売繁盛だそうだ」 こ・、、グリーン・ハーグはとっくに服を着かえ、いらいらしながらポ マイクは、セロファンの包み紙をいじっていた。グリーン・ハーグ 】チに立って待っていた。マイクは、この友人のことを心から心配 「とにかく、あの小人と話ができたとする。それで、砂 が言った。 していた。駅に向かってよろめきすすむグリーン・ハーグの目は、お 糖の件はどうするんだ。 沈黙が長びき、雰囲気は張りつめたものとなって、気まずくなっそるべき二日酔いの苦痛のために、ほとんど閉じんばかりだった。 た。マイクはまさに当惑していた。彼のぶつきら・ほうな性質からし簡易食堂に寄って、朝食にした。マイクは、オレンジ・ジ、ース ーコン・エッグ、牛乳とクリーム入りのコーヒーを注文し て、気落ちした友人をなぐさめることなど得手ではないのだ。指のと、べ た。その注文を聞くと、グリーン・ハーグはのどにこみあげた固まり あいだで葉巻きをころがして、そのさらさらと鳴る音を聞くことだ をのみこまなければならなかった。 けに気持を集中した。 「こちらは、何にしますか」カウンターの男がたずねた。 「今日みたいな日が、葉巻きには禁物なんだ」言うこともなく、つ 「ビ】ルをくれ」ざらついた声 グリーン・ハーグは顔を赤らめた。 ぶやき声で言った。「だれも責任をもつやつがいなくて、乾ききっ で言った。 てしまう。だが、この葉巻きは別だ」 「おふざけですか」グリーン・ハーグは声もたてられず、首を横に振 「ああ」グリーン・ハーグは、気がなさそうに言った。「セロファン トース った。「食べものはどうです。コーンフレークか、パイか でつつんであるからーーー」 とっ・せん二人は顔を見あわせたが、言いたいことはそれそれの表トか , ーー」 「ビールだけ」そして、無理やり飲んだ。「たすけてくれ」ののし 情にあらわれていた。 り声で言った。「朝食にあと一杯ビールを飲まされたら、死んでし 「なんてすてきなたばこだ ! 」マイクがさけび声をあげた。 「セロファンで砂糖をつつめばいいんだ ! 」グリーン・ハーグも金切まう ! 」 「気分はわかる」ロいつばいにほうばって、マイクが言った。 り声だった。
汽車のなかで、計画をたてようとした。だが、彼らの直面してい 「それでどうするんだ」グリーン・ハーグはいらだって言った。「あ 冫。し力ないんだ ! 」 るのは、今までに経験したことのない事態だったから、結論などはきらめるわけこま、 出なかった。むつつりとして湖へと歩いたが、やってみて効果のな湖をまわってとぼと・ほと、なげやりにさけびながらもどった。ポ いやり方はやめにするという、場当たりの方法で行くしかないとい ト小屋にもどると、グリーン・ハーグは敗北をみとめないわけにい うことを、じゅうぶんに認識していた。 かなかった。 : ホト小屋の主人が険悪な態度で二人に向かって来 「ポートはどうする」マイクが思いださせた。 「おれが来ると、水に浮いてはいない。漕げないわけだ」 「あんたら二人のきちがいは、なんでさっさとかえってしまわない 「さて、ではどうすればいいんだー んた」ほえるような声だった。「大声でさけんで魚をおびえさせる グリーイハーグは、唇をかみ、美しく青い湖をみつめた。すぐそなんて、どういうつもりなんだ。みんな怒ってしまってーーー」 「もうさけんだりはしない」グリーン・ハ 1 グは言った。「なんの役 こに、小人は住んでいるのである。「茂みを分けて岸沿いに歩き、 力いつばいさけんでみよう。おれは逆回りに行く。向こうですれちにもたたないのだから」 ビ 1 ルを買いもとめ、マイクが、衝動的に、ポートを借りると、 がって、またポート小屋で会おう。もし小人が出てきたら、大声で 知らせてほしい」 相手はおどろくほどの早さで冷静をとりもどし、餌を出すためにた 「わかった」マイクは言ったが、確信があるという様子ではなかっちさった。 「ポートなんて借りて、どうするつもりだ」グリーン・ハーグがたず ねた。「おれはポートに乗れないのに」 湖はひじように大きく、二人はゆっくりとその周囲をまわって、 ときどき足もとをさだめては力いつばいの声でさけんだ。だが二時「あんたは乗ることはない。歩くんだ」 「また、岸辺づたいにかい ! 」叫び声をあげた。 間後、湖の直径をへだてて二人が向かいあったときにもまだ、グリ ーン・ハーグはマイクのしやがれ声を聞いた。「お 「いいや。さて、グリーイハーグさん。これだけの水をとおして ーい、小人よ】っ は、小人にこちらの声はとどいてないにちがいない。小人というの はそんなに無情なものではないのだから。声が聞こえて、あんたの ! 」グリーン・ハーグもさけんだ。「小人よ、出てこー 後悔していることがわかれば、すぐにものろいを解いてくれるだろ う」 一時間後、二人は出あった。疲れきり、絶望し、のどは焼けつく 「そうかもしれない」確信はできなかった。「それで、どうしよう ようだった。静かな湖面をみだすのは、漁師たちだけだった。 っていうんだ」 「くそくらえ」マイクが言った。「こんなことをしていてもらちが あかない。ポート 、屋にもどろう」 「思うに、なんらかのカであんたは水を押しやるが、同じだけのカ
やり考えた。それにしても、これではこの人々はどうなるのた ? 人々の怒号が、いっか、消えていた。みんな何も叫んではいなか彼は眸を澄ませた。 っこ 0 天啓かも知れない。 な。せだ ? なぜやめたのだ。 あの夢で : : : 彼は、功績章をつけた人々に押し立てられていた。 彼は周囲を見渡しーーー人々がいっか、ことごとく口ポット官僚に あれをしてはなぜいけない ? なっているのを知った。ロポットの大集団の中にいて、ロポットた あれを : : : そうなのた。自分の味方となるべき人間を : : : あの栄 ちに押し立てられて : : : なおも進んでいるのである。 典制度を予定よりも早く全ラクザーンに施行して : : : その栄典に浴 その中のただひとりの人間、マセ。 した人々を利用すれば : : ロポットたちだけの護衛では、人々はそ そうではない。 の気になれば、 いくらでもロポットに突っかかって来るであろう。 そしてロポットが人間を傷つけたりしたらロポット自体に障害がお マセ自身もロポットになっていた。そのロポットの姿というのが ・ : 彼が研修所で学んた司政制度初期のなのである。まだ自・ぎるし、襲った人間のほうも激昻するに違いない。それなら、功績 章をつけた人間たちを、ロポットの中にましえればどうなのだ ? 力で移動していた頃の、コンパクトなスタイルのなのだ。 相手の中に人間がいれば、暴徒と呼ばれるものが出ても、その行動 「は一惑星にひとつです」 どこかから、ラクザーンのの声が聞えた。「マセ司政官、を怯ませることが出来るのではないか ? 司政官に戻って下さい。あなたがになれば、私が司政官にな考えてみよう。彼がそう思い、ゆっくりと闇の中に半身を起した とき、の声がした。 らなければなりません」 「おめざめですか ? 」 彼は何かいい返そうとしたが、出来なかった。声が出ないのだっ た。声が出ないまま、ロポットたちにかつがれて、みるみる大きく なって行く太陽へと進んでいた。そういえば太陽自身が、ぐんぐん こちらへ近づいて来るのである。 彼はなおも叫・ほうとして : : : そこで目がさめた。 彼は、照明が消えている私室の静けさの中で、横たわったまま、 しばらく今の夢を反芻していた。 何という夢を見たものだ。 守、 0 〈以下次号〉 2 3
的な事故ではないのか」「そう考えられないでもありません。ただ いやーー私は遙か遠方に、ほんのわずかな異物、小さな鋭角的な ・ : 」「たた、何だ」「ただ、何か声のようなものを聞いたので : 影を発見した。無数の砂丘の稜線がもはや直線にしか見えない地平 ・ : 」「地表からの送信からか」「わかりません : : : 雑音が偶然、意線の一角に、わずかに牙のように突き立っ黒い影。肉眼でかろうじ 味ありげな。ハターンをとったのかもしれません : : : 」 トリニティのて判別できる程度の大きさだが、それは砂の堆積がとりうる形では よ、つこ 0 声はとぎれがちになった。考えこむときに、時折現われる反応だ。 / 、刀ュノ 私の癖がこんなところにも写されている、と思い、それから私も考「 トリニティ、見えるか」私は声をかけた。 えこんだ。 「間違いありません、無人探査艇の発見した遺跡はあの位置です」 結論は出なかった。が、着陸の操作をトリニティにまかせたの彼の声は興奮しているように聞えた。 は、自動操縦装置に探査体と同じ混乱が起る可能性を否定しきれな「距離は測定できるか」 かったからだった。 「前方百三十キロです」即座に回答があった。 目標地点は黄昏地帯から昼の半球へ入りきっていた。 私はその数値を頭の中でいじってみて、ちょっと驚いた。「 : 「始動します」 トリニティの声がした。 高さは」 補助噴射の軽い衝撃が席に伝わってきた。正面の視界がゆっくり「底部が同じ標高にあるとすれば頂点の高さは二千メートルに少し と回転した。探査艇は徐々に機首の方向を変え、アドルム第四惑星あります . への着陸へ姿勢を整えた。 私はふっとため息をついた。「ハベルの塔か : : : 」 調査の手順は決まっていた。いくつもの星系でトリニティと調査 2 行を共にしてきた。ほとんどが遺跡の調査たった。知的生命との接 触が最重要課題とされている恒星間探査の中で、廃墟の調査や発掘 見渡すかぎりの砂の海だった。 は、まさに辺境の下級調査員にふさわしい任務だった。たとえ対象 夜は明けきって、青味がかった太陽が背後の空に昇り、怪鳥の首が減亡していない種族であっても、歴史を調査する私の出番は、接 のような機首の影を前方の砂丘の彼方まで引いた。 あるいは 触のルールが完全に決められた後で回ってくるのだ。 砂丘はあらい縞の風紋で覆われ、稜線はごくゆるやかなカー・フを私は減亡の跡を見過ぎたのかもしれない。異星の、はじめて知る種 描いている。その向うにも砂丘が連なり、さらに彼方にもゆるい砂族の死に絶えた風景、それはもはや新鮮な興奮を誘うものではない の稜線がうねっている。視界はすべて砂のうねり、やわらかい稜線のだ。私の内部で異郷への情熱が緩慢に、だが確実に冷却しつつあ の重なり、地平線まで無限につづく曲線で構成された単色の風景るようだった。調査行の手順すら慣れきった動作になりつつあるの
た。この恐るべき女ときたら。彼女と話すたびに、結婚しているよ 祈ってるよ。奴の現実的な使い方を考えなきゃね。リラの母親が、 自分のことをベレニスと呼んでくれって・ほくに言ったことを、話しうな気にされる。彼女が何をやろうとしているのか、わかってい 7 る。でも結局、彼女は好きなようにやるんだ。「朝になったら、リ たつけ ? 」 ラと話してみます」リラは月の光の中でもがいていた。踊りと溺れ 「ファレル、もしもぼくが君たったら、この国か べンは言った。 の中間のような格好で。 ら出てくね。きっとそうするさ」 一一人は、雪と雨の間を行ったり来たりする二月のみそれの中に出「そうね」・フラウン夫人が言った。「そのとおりね、もちろん。あ ていった。ファレルは、本屋の方へ曲る角にやってくるまで、話その娘に電話をさせてちょうだい」ためいき。「あなたがそこにいて くれると思うと、とっても安心するのよ。フォンデュをするかどう うとしなかった。それから、ささやくように言った。「畜生。君は もっと注意深くすべきだよ。他人が何になるか、誰が知りたがるか、あの娘にきいておいてね」 リラは手造りの狼を完成させていた。雌にしては背が高く、広い ? 」五月がやってきた。そしてリラがまた裸で窓際に立ち、月の光 を待っ夜がやってきた。ファレルは皿とごみくずと戦争し、猫にえ胸をしていた。まるで石の上を流れる水のようになめらかに動く。 さをやっていた。この瞬間は、いつだってぎごちないものだった。毛の色は濃い茶色、光線の具合では赤く見える。そして胸のあたり ハリケーンがやってくる に白い毛のところがあった。目は薄緑色。 ファレルはリラにこう尋ねただけ。「お米の残り、取っとくかい ときの空の色。 ? 」その時、電話が鳴った。 いつもなら、彼女は変身が終りしだい、すぐに出ていくのだっ リラの母親たった。今では、週に二度か三度、電話をかけてく た。な・せなら、自分の狼姿を、ファレルに見せることなんて気にも る。「べレニスよ。ごきげんいかがアイリッシュちゃん ? 「元気ですよ、べレニス , ファレルは言った。突然、リラが頭をのしてなかったから。でも今夜は、ゆっくり彼の方へやってくる。奇 けそらせ、音をたてて思いきり息を吸いこんだ。猫はかすかに泣き妙な、ほとんど後ろ足をひきするような格好をして、彼女は高い かすかな声をあげた。彼女の目は、ファレルを見てはいなかった。 声をあげると、・ハス・ルームに飛び込んだ。 アツ・フダウン 「今週の金曜日に、こちらにあなた方をさそおうとして、電話した「何たい ? 」馬鹿げたことを尋いてしまった。狼は、泣き声をあ のよ」プラウン夫人が言った。「古い友人が何人か来るの。何人かげ、テープルの下に這いすり込むと、脚に身体をすりつけた。それ 月、、いになり、身体を転がせた。そうしていると、彼女の咽 若い人たちがいないと、わたしたち、ただ腰をおろして、進歩党のから、夏一一 失敗の原因について語り合うなんてことになってしまうわけよ。旧喉の奥から声が出はじめ、それは奇妙な、悲しげな、か・ほそい叫び 式の左翼たちね。だから、もしもあなたが、あの娘にスクウ = アヴとなるまでに高まる。狩りの吠え声ではなかった。吐息に変ってい くような、何かを求めるような震え声だった。 イルで一晩を過ごすようにうまく言ってくれればーーー」 「そんなこと、やめるんた ! 」ファレルは息を呑んた。けれども、 「リラにきいてみなきゃなりませんね」またやっている。彼は考え