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検索対象: SFマガジン 1977年2月号
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1. SFマガジン 1977年2月号

マーチンはペンカメラを自己負罪の書類の上に走らせた。 クエンチン・シェルウッドは机の向こうから二人を睨みつけた。 再びハーベイの声がライトフットの耳もとに聞こえた。 「誰が入っていいと言った。出て行け」 「踏みこむそ」 私服がの身分証明書を示した。 部屋のドアがばっと開かれ、三人の男が大股に入ってきた。その 「ご同行願います、シェルウッドさん。逮捕状も用意してありま うちの一人がまっすぐ机にやってきて、書類を押えた。 シェルウッドの顔が怒りで紫色になっこ。 「なんの真似だ ! 」 ヒューズが怒鳴った。 「わしに命令なんそしおって。貴様、自分をなに様だと思っている んだ。それに何の容疑で逮捕すると言うんだ」 「ここへ入っちゃいかん。書類を置いてさっさと出て行け」 が逮捕状を取出した。 入ってきた三人の男のうち一人が、革ケースを開いて示した。 「共同謀議と贈賄の容疑で、連邦裁判所と高速道路当局から逮捕状 「ロサンゼルス警察だ。あなたを逮捕します、ヒューズさん」 が出ています。ご同行いただけますね」 男は人事部長の腕を掴んだ。 「行くものか」 同じビルのそれより六十階上では、二人の私服の男がクエンチン ンエルウッド。ゝ カわめいた。 ・シェルウッドの事務室の受付をすかすかと通り抜けた。シェルウ 「そんなでたらめな容疑をでっちあげられたって、死んでも行くも トの守衛がとんできて、行手を遮った。 のか」 「中に入っちゃいかん」 彼は映像電話に手を伸ばした。ロサンゼルス警察の私服がすばや 制服姿の守衛が命令した。 くその手を押さえた。 「引込んでろ ! 」 一人の私服が守衛を押し除け、身分証明書をさっと出した。守衛「シ = ルウッドさん、おとなしく一緒においでいただけないと、手 錠をかけてお連れすることになりますよ。私たちにはどちらでも同 は再び行手を遮った。 「ロサンゼルス警察でも承知しないそ。シ = ルウッドさんの部屋にじことなんですから。ご一緒願えますね。それから、署に着くまで 電話はいけません。署に着いたら、弁護士を呼ぶこともできます。 入っちゃならん」 もう一人の私服が、・ ( ッジとカードケースを示して、びしりと言さあ、ご一緒にどうそ」 っこ 0 シェルウッドは一瞬二人を睨みつけたが、机から身を起こした。 彼はいやみたっぷりに尋ねた。 「だ。そこをどけ」 守衛は青くなって退いた。二人の私服は中の部屋に人っていつ「妻に電話して、夕飯は遅くなると伝えてもかまわないかね」 292

2. SFマガジン 1977年2月号

っていた。 ・ライトフットが ( ーベイに身を寄せて尋ねた。 「評決は下りましたか ? 」 ベル裁判長が尋ねた。裁判長席の上にあるスビーカーから、陪審 「有罪となったら、ケビンはどんな刑を受けるかしら ? 」 ーベイは肩をすくめた。 員の一人の声がした。 「わからんね。それは裁判長の胸三寸だ。私が思うには、体刑と罰「はい、裁判長殿」 金刑と両方ともかなり重くして、たぶん体刑の方に執行猶予をつけ ベル裁判長が被告席を見た。 るんじゃないかな。しかし、どうなるかはその時になってみなけれ「被告は立って裁判長席を向きなさい」 ばわからんよ」 ケビン・シェルウッドが椅子を下げて立上った。 ライトフットは部屋の向こう側に、緊張しているケビン・シェル 「陪審員の皆さん、評決をお願いします」 ウッドの姿を見た。 「被告のケビン・シェルウッドを、あらゆる点から容疑どおり有罪 「彼、かわいそうだわ」 と認めます」 「僕だって同じさ」 部屋の向こう側では、ケビン・シェルウッドがテー・フルの端に手 マ 1 チンが言った。 をついて、じっとうなだれた。傍聴席では、彼の父親が腰を浮かし 「しかし、理由は違うんだ。彼も昔はよい子だったと思うし、このかけて、二人の弁護士に引戻されていた。 一件が片付けば、またいい奴になると思うよ。でも、彼がもう少し ベル裁判長が陪審員に話しかけた。 で殺しそうになった人たちのことを考えるとねえ。この一件が片付「この評決は、あなたの評決と同じですか ? これから一人ずつお けば、少なくとも彼は生きているんだし、人も殺さなかったのだか尋ねします。陪審員一号、同じですか ? 」 ら」 テレビカメラの上のスピーカ」から、声が聞こえた。 三人の乗組員とハーベイは立上って、たばこを契いに廊下に出「そうです」 た。火をつけて煙を吐きだしたとたんに、ドアのブザ 1 が低い音で裁判官は十二号までずっと訊いていった。全員が肯定の返事をす 2 っこ。 ると、彼はちょっと間をおいて言った。 「陪審員の皆さん、ありがとうございました。退廷して下さい」 「陪審員の準備ができた」 テレビカメラにカ・ハーがかけられ、裁判長席の十二のモニターが ーベイは言って、たばこを消し、急いで法廷に戻っていった。 三人が法廷に入った時、ベル裁判長が再び入廷して、裁判長席に空白になった。 ついた。裁判長はボタンを押した。陪審員室のカメラのカ・ハーが外「被告は裁判長の前に来なさい」 された。裁判長席のモニター・スクリーンに、陪審員の顔が映っ ケビン・シェルウッドが被告席のテー・フルの後ろから出て、二人 295

3. SFマガジン 1977年2月号

0 後の午前十時とします。逮捕した 係官の推薦があったので、特に被 告の保釈を認めます」 ケビン・シェルウッドは、検察 官席に坐っているマーチンにちら と目を走らせ、感謝の微笑みを送 っこ 0 「保釈金は、現金で二万ドル、あ るいは有価証券で四万ドルとす る。閉廷する」 マーチン、ファーガソン、ライ -z. フツ、い の三人は、検察官席から 静かに立って、シェルウッドと弁 護士の後ろから、法廷を出た。廊 下に出ると、ファーガソンが立停 ってたばこを取出し、二人にすす めた。 シェルウッドと二人の弁護士が すぐ前で話しあっていた。ハック モア弁護士が頷くと、ひとり離れ て事務室へと消えた。シェルウッ ドが三人の方へやってきた。 「親切な口添えをありがとう」 彼はマーチンに言った。 3 「どういたしまして。あんたをあ んな所に入れておきたくなかった

4. SFマガジン 1977年2月号

シェルウッド老人のご機嫌をとろうと夢中になって、自分で君ないんだ」 と接触しようとした。たぶんそんなところだが、もしそうだとすれ ーベイは言って、インターホンに怒鳴った。 ば、こっちにもチャンスがある。ところで、電文はなんと書いてあ「ラス、二人を中に入れてくれ。それから、音声タイプを持って来 っこ ?. てくれ」 「自分で憶えているかぎりでは、最初の申し出があと四十八時間有 ーベイ検察官の部屋に、五六号車の乗組員が揃い、秘書のラス 効で、給料無制限でシェルウッド電子工業の交通部長にするという 嬢が音声タイプのマスクをセットすると、 ーベイが計画の概要を 内容でした。そして、ここに着いたら、人事部長に連絡するという話しだした。 ものです」 「このままうまくいくと、君たち三人は午後になってすぐに。ハトロ ールから解雇されて、シェルウッド電子工業へ就職しに行くことに 「こいつはいい」 なる」 べイが言った。 「すぐ電話でそいつを呼出して、面会の約東を取付けたまえ。君は 「ちょっと待って下さい。私はそんな : : : 」 これからシェルウッド電子工業の交通部長になるんだ」 「黙って終りまで聞きたまえ」 マ 1 ーチンは検察官の太った身体を見つめた。 マーチンをハーベイが押さえた。 「気が狂われたんじゃないでしようねー 「三人とも非常によい条件で迎えられる筈だ。しかしそれはパトロ ーベイは頭を振った。 ールを辞職することが条件で、それを証明する書類を要求するたろ 「大まじめだよ。君は向こうへ行って、弁護士が勘付かないうちう。向こうに行って見せる書類はすぐ作らせる。ラス、べン・マー ライトフ に、人事部長と取引するんだ。君が取引するのは、自分の就職たけチン巡査部長と、クレイ・ファーガソン巡査と、ケリー・ でなく、君の二人の部下の就職という、楽しい条件をつけるのだ。 ト医務官の解雇の書類を、一時間以内に作らせたまえ。それか とにかく、君をあちらの会社に引込まれても、あとの二人が証人台ら、簡単な退職届も作っておいてくれ。文面はわかっているね。一 に立てば、シ = ルウッドに対する起訴はできるのだからね。そのヘ身上の都合により、とかいうやつだ。それが終ったら、逮捕状を三 んを会社側にわからせて、よい条件を引出すのだ。それから三人そ通作らせてくれ。通常の書式でいし 。容疑は三人とも同しだ。高速 ろってその仕事につく 道路当局の係官に対する、贈賄と脅迫の強制、およびその共同謀議 「でも、そうなれば。ハトロールは辞職する訳でしよう」 だ。三人の名前は、クエンチン・シェルウッド、ポール・クイン、 マーチンが文句を言った。 セオドア・ ックモアた。昼前に私が署名できるようにしてくれ。 「そのとおり。退職と解雇の書類はすぐに作らせる。さて、君の部それから、逮捕状を執行するまでは、このことは絶対に口外しては 下をここへ呼・ほう。計画を練らなくちゃならないし、時間はあまり ならない」 288

5. SFマガジン 1977年2月号

「ケリーったら、僕のことをあんたよりずっと手荒く扱うんだ。ど クエンティン・シェルウッドが言った。 うしてあんな女が医者になったんだろう。ありや獣医だね。どう見「 ( 1 イ、ダッド。元気だよ」 たって医者じゃないよ」 ケビン・シェルウッドが微笑んだ。彼はあと二人の男の方を見 ファーガソンが答えた。 て、頷いてみせた。 「ビューラを整備士に預けておいてくれ。私はシェルウッドさんを「クインさんこ、ツ 冫 / クモアさん。顧問弁護士が来ているとは心強い 本部に連れていく。後で独身寮で会おう」 ね」 シェルウッドは父親の方に向きなおった。 シェルウッドが立上った。ファーガソンが手を差出した。 「あんたが窮地に立っているのが気の毒で仕方がないよ、シェルウ「父さん、本当に元気たよ。ちょっとした誤解だよ。騒ぎたてるこ ッドさん。本当たよ。あんたが私を助けてくれた時、自分からとびとはないさ」 出してきてくれたと聞いて、うれしいよ」 記者たちが寄ってきて、録音機やマイクを差出した。 二人は握手をした。 「シェルウッドさん、なにかおっしやることは ? 」 「役に立ててよかったよ」 年長の弁護士のクインが、記者たちを手で制した。 シェルウッドが→一口った。 「シェルウッド氏は現在のところ何も申上げることはありません。 もう少ししたら報道用のステートメントを発表します」 「面会日に来てくれよ。さあ、行こうか、巡査部長殿」 マーチンはケビンに配車カウンターへ行くように示した。配車係 マーチンは運転席から降りて、計器板の横の箱に手を伸ばし、シ が手で合図をしていた。配車係はカウンターに身を乗りだして言っ エルウッドの所持品の入ったプラスチックの袋を取出した。それか こ 0 パトロール本部へナ らシェルウッドの手をとって、五六号車を降り、 向った。 「フィッシャー局長が待ってる・せ。その人と一緒にすぐ署長室へ行 マーチンが本部ビルのドアを開けると、たくさんのカメラが二人ってくれ、べン」 マーチンは頷いて、ケビン・シェルウッドを促して、カウンター に向ってシャッターをきった。広い配車室の向うから、カメラ が二人を狙っていた。マーチンは立ち停って、先に入るようにとシのドアを抜けると、中に入っていった。シ = ルウッドの父親と二人 エルウッドに手で示した。シェルウッドが入ると、ビジネススーツの弁護士がそれに続いた。マーチンはパトロール局長室のドアをノ を着た三人の男が進み出た。いちばん年長なのが、まちがいなくシ ックして、入った。五人が部屋に入ると、フィッシャ 1 局長はパト エルウッドの父親であった。彼は息子の手を握りしめた。 ロールの青い制服姿で、机の後ろに立上った。局長は手を伸ばし 「ケビン、なんともないのか。これはいったいどういうことなんて、マーチンと握手した。 「やあ、よく来た。あの多重衝突事故ではよくやってくれた。ちょ 266

6. SFマガジン 1977年2月号

「その雑誌にはなにがのってるんだい ? ドール・スターさんとやで、耳のところたけきれいな白髪、あとはつやつやした黒い髪の人 らはおのが肉体的魅力に飽き飽きし、田舎に小さな家を買って子供なんて、君ほんとに見たことあるかい ? この娘も映画スターの卵 をたくさん産みたいと思っている、とでも書いてあるかね ? なみたいだ。母親も同じ・ーーただ、旦那にあわせて、額の上に白髪が 数本。私道に車が駐まってるだろ。タイヤは洗われたばっかりみた ら、キャスパートンに引っ越してくりやいいんた」 リ . 1 ー いにビカビカして、車体のどこにも埃なんかついていない。庭のど 「あなたにはわからないのよ」と、プリティ こにも小石ひとっ落ちていない。花はみんな満開で、しおれたのな ・フレットは雑誌をとりあげ、パラ。ハラとめくって、 んてありやしない。芝生には枯葉も落ちていないし、木の枝も枯れ 「これを見なよ。何千ドルもかけた。ハーティをやってる人たちだ。 色恋沙汰をおこし、世界中を飛びまわり、自殺をし、離婚をしてるたのは一本もない。背景に見えてる隣の家は宮殿みたいだ。くま手 人たちだ。火星人の話でも読んでたほうがマシたよ」 を持った人が垣根ごしにこっちを見てるが、この人、こっちの主人 「わたしはスターの話のほうがいいの。どこも悪いところなんかなと双子みたいじゃないか。しかも、落葉をかき集めてるっていうの に、新調の服を着てーーー」 いわよー プリティ 日リーは雑誌をつかんだ。 「こんなキチガイどもの話ばっかり読んでると、イライラが嵩じて しい場所を憎んでいるのよーーー」 くるそ。ほら、この写真みたいに髪の毛をへンなふうに結いあげ「あなたは、この汚い町より、 「べつにいい場所だとは思ってないさ。君が好きだよ・ー・・・、君の髪は て、気味が悪くなるような服を着ーーー」 プリティ 日リーはストローをふたつに折った。っと立ちあがる いつでもなめらかってわけじゃないし、服には繕ったあとがある。 と、買物袋をとりあげる。 君には生きている人間の感触がある、匂いがあるーーー」 「よかったわ、あなたがわたしの服を気味悪いと思ってるとわかっ 「まあ ! 」 日リーはくるっときびすを返すと、ドラッグ・ストアか 。フリティ 「そんな。君個人のことを話してたんじゃないんだよ。ごらん」雑らとびだしていった。 こらんよ。男 誌の裏表紙にのったカラーの広告を示した。「ほら、・ の人がいる。裏庭のグリルでステーキを焼いているらしい。映画ス ・フレットは埃つ。ほいフラシ天の椅子のうえで身じろぎすると、あ ターみたいだ。これから結婚するみたいにきちんとした格好をして たりを見まわした。車内には数えるほどしか乗客がいない。老人が いる。しわひとつありやしない。エプロンにはシミもない。フライひとり、新聞を読んでいる。ふたりの老婦人はおしゃべりをしてい パンには油のシミさえついていないじゃないか。芝生はビリャードる。みす・ほらしい格好の子供をつれた三十ぐらいの女。あと数人。 台みたいにまったいら。ここには息子がいる。父親そっくりーーー父みんな、雑誌の写真とは似ても似つかぬ人々である。これらの人々 0 親には、こめかみのところに白髪があるけどね。こんなにハンサムが、新聞で読んたようなことをしたとしたらどうだろうと彼は想像 こう

7. SFマガジン 1977年2月号

眉村卓 第を消成。光輪 , 罩一 = 。 , 淡々と決定を告げぎマセの声を圧するように怒声がとびかい、人は正面に迫る′ 都市个の道 ( 第原のなこ。そえゐ、の者市 - ー・・ 4 ~ は忌しきコームの街だっ - 丁 ーニ〇枚 リック」レイフ・ル 超高速道路事故 ルカー ( 飛ぶー ード、スリー へ 0 奇妙な、ユテま、。話をもちかけできた、そ確 ( にをち 0 、ます第 ロャー・ゼラズニイサ・ . 復讐の女をを 金、「 , 系一なだたる = 人の、争人た ) ちま な↓男 *' を追要・ : 1977 年 2 月く創刊 17 周年記念特大号目 逆者〃 195

8. SFマガジン 1977年2月号

格からして、非常に重いものですそ。あなたの息子さんは、高速道 っと前に報告書を受取ったよ」 局長が姿勢を正した。彼はケビン・シェルウッドを見て、顔をこ路パトロールの裁判所に出廷して、保釈、無罪、有罪の判決が下さ わばらせた。彼はシェルウッドが着ているパトロールの青いカバ れるまで、被告人として留置場に人ることになっています」 「よくもそんな口をきけた : ・ : こ オールをじろじろ見て、事務的な口調で尋ねた。 「これが君の逮捕した男かね」 シェルウッドは唾を飛ばしてわめき、怒りで顔をまっ赤にした。 そうです。シェルウッド氏はあの惨事の時に有効な手助け弁護士のクインがそっと腕を押さえた。 クエンティン。かえって事が面倒になります をしてくれました。その時、彼の着ている物を駄目にしましたの「落着いて下さい で、しかるべき衣服が手に入るまで、カバーオールを貸与しましよ。この場は私たちにおまかせ下さい」 クインはフィッシャー局長に徴笑んた。 た」 「なるほど。わかった。報告は書類にして全部すんでいると思う「お話の腰を折ってすみません、局長。どうそお続け下さい」 「今も言ったように : フィッシャー局長が続けた。 マーチンは召喫状綴りと報告書を局長の机の上に置いた。フィッ シャ 1 は召喚状を取上げて念入りに読み、それから報告書を読ん「異議申し立てがあっても、この被告人は当局の留置場にいる他の 人たちとまったく同じに扱われて告訴されます。これ以上の質問が だ。読み終えると、彼は言った。 「皆をこの部屋に呼んだのは、この刑事被告人に対する容疑事実をなければ , ーーマーチン巡査部長、被告人を留置場へ連れていって、 自分で確認しておきたかったのと、いわゆる社会的地位に関係な登録をすませてくれたまえ」 「シェルウッドさんとちょっと話したいのですが、よろしいです 、被告人は : : : 」 か、局長」 「ちょっと待ってくれ、局長」 一目一、こ 0 ィッンヤ クインが尋ね、フ 、刀日一しー シェルウッドの父親が割ってはいった。 クインはケビン・シェルウッドの腕をとって、部屋の隅に連れて 「わしの息子は罪人じゃないし、あんたが十把ひとからげに言うよ 行き、そこで声をひそめて早口に何事か話し合った。シェルウッド うな被告でもない」 は何度か頷き、それから微笑んだ。彼はマーチンの所へ戻ってき フィッシャ 1 局長が父親をしろりと睨んだ。 「シェルウッドさん。あなたが私の部屋にいるのは、私がご招待した。 たからで、なにも法律に基づいている訳しゃないんですよ。お知ら「行きましようか、巡査部長殿」 7 マーチンはシェルウッドを連れて、パトロール局長室の横のドア 6 せしておきますが、あなたの息子さんは一連の犯罪ーーー犯罪です そ、犯罪で告発されており、この犯罪は高速道路当局の国際的な性から、留置場へ通する廊下へ出た。歩きながら、ケビン・シ = ルウ が」

9. SFマガジン 1977年2月号

ターステルほども大きいシステムになると、だれもがほかのたれも「わかりました。あなたの番です、艦長」 のやっていることを知っている、というわけにはいきません。だか そんなことになったのは、コーゴの行動が注意をひいたからでは ら、中にはあなたとおなじような気持の人間もいるでしようし、そ なかったーーー彼は約東どおり焼き打ちをやめたからである。そんな んなことをまるで気にしない人間もいるでしよう。そして中には、 よそでどんなことが起こっているかをよく知らないが、もしそれをことになったのは、たれかがコ 1 ゴを探し求めたからではなかった — O のファイルでは、彼は死亡したことになっていたからで 知ったら、すぐにもなんとかしようとする人間もいるはすです」 ある。そんなことになったのはーーーひとえに クスミリの飲みす 「おまえの番だそ、エミ ぎと、狩人たちの親睦が原因だった。 「はい」 三人の同盟が解散になる夜、陽気な酒宴のあとにノスタルジアが 「いいか、おれはあのときおまえに士官をひきうけてほしかったん ル。おまえにはそのチャンスがあった。ぎっと、 い士おとすれた。 工 きみもお・ほえているように、ベネディックにはこれまで友たちと 官になっただろうに」 いうものがなかった。それが、い まの彼には三人の友だちができ しい士官にはなれなかったでしよう。自分はのんびり屋で て、しかもまもなく別れなくてはならないのだ。 すから。部下になめられるのがおちでしたよ」 リンクスはうまい料理と酒に満足し、気どりのない、体の不自由 「残念だな。だが、世の中はそういうものだ。わかるか ? な友人とのつきあいに満足していた。彼らの神経症は常識でそこな ・、弓、。のんびり屋だ。なぜだろう ? 」 つに限って気力弓し われてはいない リンクスにはそれがたのしかった。 「わかりません」 サンドールの人間関係の輪は三割がた広がった。そして、いまの 二、三手のあと ル。もしおれがあれを : : : つまり、焼き打ちをやめ彼は、自分自身をすくなくともある厖大な流れの名誉会員の一人だ 「なあ、エ と、・ほっぽつ考えはじめていた。その厖大な流れを、以前の彼は人 ワラビ 1 号でふつうの、穏当な密輸たけをやるとしたら、 、よ也人の集りとしてしか意識していなかったの いまのおれにはな。おれは疲れた。疲れきっ類として、あるしーイ それでもいいんだ。 て、ただぐっすり眠りたい気持だーーーそう、四年も五年も六年もだ。 な。かりにおれが焼き打ちをやめて、たた品物をあっちこっちへ運というわけで、書斎の中で飲み、食い、しゃべりながら、三人が 狩りにもどった。死んた虎は、つねにもっとも好ましい種類の虎な ぶだけにしたらーー - ・おまえはいっしょにきてくれるか ? 」 のた。 「考えさせてください、艦長」 しうまで ベネディックがあの心臓をとりあげたのは、、 「いいとも。ゆっくり考えてくれ。おれはおまえを連れていきたい もない。まるで鑑定家が美術品を値ぶみするように、彼はそれを手 んだ」

10. SFマガジン 1977年2月号

「小さなことだが、お知らだって、棒の先でさえ触れはしないんだが。しかし、こんなに利子 ィーンが一一一口った。 「もうひとっ」とステ こちらの自動車業者がおります。じが高いとかいろいろあ 0 て商いのすすまないこの時期に、この仕事 8 せしておかなければならない。 つは、何社もあるのだが。たいていどんな車種でもそろえられるのは転機になるかもしれないしーーーこ 「ステ ィーンさんが、逆の足に靴をはいていることだけだったら」 とエレインが言った。「心配するにはおよばないと思うわ。エプ叔 「だが、いったいなぜそんなことがーー・」 父さんのこと、お・ほえているかしら。 「いろいろなってがあるのです。どんな車種を希望されてもいし だが、住宅の賃貸をのそな人々は、かならすこちらの自動車を買わ「お・ほえている。チョッキを裏表逆に着ていた人だ」 なければならない」 「エプ叔父さんのばあいは、単に強情たっただけなのよ。ある日チ ョッキを裏表逆に着て人にわらわれたの。そこでエプ叔父さんは、 「あなた」とホーマーが言った。「車の業界の抜け目のない人たち のことはいろいろと聞いているが、これはそのなかでも随一だ。あこれがチョッキの着かただと言いはって、死ぬ日までチョッキをそ う着ていたのよ」 たしが自動車を売る商売を引きうけるなんて考えておいでならー 「たしかにそうたったんた 「いや、わかった」ホーマーが言った。 ィーンが言っろう。だが、チョッキを裏表逆に着たからといって、胸が痛いわけ 「その件で不明朗なことは、なにもありません」ステ ではない。靴を左右逆にはけば、死ぬほど痛いそ」 た。「良い取り引き先がいくつかある。どんな車をのそまれても、 このステ ィーンさんは、一種のびつこかもしれな 「かわいそうに、 公明正大な価格でとどけられるのです。それに、下取り価格として かなりの額を出す用意もある。このような高級住宅地に、・ほろ自動いわ。きっと生まれつきなのよ」 車はふさわしくないでしよう」 「左右の足が逆に生まれついた人の話なんか、聞いたこともない」 「もちろん、奇妙たわ」エレインが反論した。「でも、だからとい 「で、ほかには何を売るんですか。抱きあわせで売る商品の数を、 ってなんのちがいがあるの。もしその住宅を全部成約させたら、 ぶちまけてもらったほうがよさそうた」 つもねがっていたようなヨーロッパ旅行ができる。わたしに言わせ 「ほかにはない。自動車だけです」 れば、その人がのそむならたとえはたしで歩いていたっていいわ」 ホーマーは車のギアを入れ、ゆっくりと門に向けてすすんだ。 「ああ、そう思う」 制服姿の門衛は彼らの車が来るのをみとめると、門扉を大きくひ 「それに、車も要るわ」と、エレインは目録をひろげはじめた。 らいた。門衛小屋の前を過ぎる二人に、彼は楽しげに手を振った。 「それから居間のカーテンも。外出用の服だって、もう何年も新調 「あれだけの大金がからんでさえいなかったら、と、妻のエレインしていないし。それに、あの古い銀の食器をつかっているのだって ィートはなれたところからはずかしいことよ。すっと前に買いかえなければならなかったのに。 にホーマーはうったえた。 「たとえ十フ