ずいぶん楽た。昔のような気分になれる」 ないでください」 ールは持ちあげかけたナイトの駒を下におろし、上を見上「おれは怒ってないそ、エ、、 げ、また目を伏せた。 「艦長、いいですか、自分も焼き殺してやりたいやつはいます。法 「自分は : : どういっていいかわかりません、艦長。あなたが誘っ律違反とは関係なしに。しかし、あなたのようなやりかたはできま てくださるとは、思ってもみなかったんで : せん。自分なら、そうされても文句のいえないやつらだけをやりま 「どうしてフ いい部下がいてくれれば、おれも心強い。昔のようす。たたで」 に暴れまわろう。金はたつぶりある。気苦労はなにもない。タウ・ 「はっー ケチで三カ月の上陸休暇をとったあと、自分で自分に命令書をわた コーゴは一つきりのビショッ。フを動かした。 すんだ。そしてそれを実行するんだ ! 」 「おれの金をうけとりたくない理由はそれか ? 」 「艦長 : : : 自分はもう一度宇宙へ出たいですーー、出たくてたまりま「、 しいえ、ちがいます、艦長。まあ、幾分かそれもありますが : せん。しかしーー・せつかくですが・ : : ・」 しかし、それはほんの一部です。とにかく金をいただくわけには、 「どうしてだ、エ ミール ? なせいけない ? : 心から尊敬していた人を助けただけな 昔に帰って、たのしきませんーーー自分はただ : くやれるんだぞ」 んですから」 「過去形を使ったな」 「艦長、どういったらいいか : : : つまり、昔われわれが どこか の土地を焼きはらったときはーーその、相手は犯罪者ーーー宙賊でし「はい、艦長。しかし、自分はいまでも、あなたの受けられた仕打 た。法律を破ったやつらでしたーーーそうでしよう ? いまのあなたちはひどかったし、やつらがドリレンに対してやったことは、まち よ : ・ : 非道なことだと思っています。ただ、それだけでだれも : だれでも見さかいなしにー・・ー・殺すと聞きました。あー、法律がった : かれも憎むわけにはいかんでしよう。だれもかれもがそれをやった の違反者じゃない、なんていうか、一般市民をです。やつばり 自分にはできません」 んじゃないんですから」 レ コ これはやったとおな ーゴは答えなかった。工 「やつらはそれを是認したんだ、エ ルはナイトを進めた。 「おれはやつらが憎いんだ。工、、 じぐらいに悪い。それだけでも、おれはやつらのみんなを憎むこと ール」しばらくして、コーゴはい った。「やつらのひとり残らずが憎い。おまえは知っているか、やができる。それに人間はみんな似たりよったりだ。最近のおれは、 つらがプリルドでなにをやったかを ? 見さかいなしに焼きはらうようになった。それというのも、たれな ドリレンに対して ? 」 艦長。しかし、あれをやったのは一般市民でもないし、鉱んてことは問題じゃなくなったからた。あの罪はだれにも平等にあ 山の連中でもありません。人間みんなってわけじゃないんです。ひる。人類・せんたいが非難されてしかるべきだ」 とり残らすを目のかたきにするのはーー・・自分にはできません。怒ら「いや、それはちがいます、艦長。お言葉を返すようですが、イン 7
視線をあげた。 ーを持ってきてくれます。さて、失礼たが : : : 」 「ごいっしよしてもいいですか ? 」プレットは言った。「ちょっと「ほくの言ってるのは茶色いやつのことなんた。泥水みたいなやっ お話がしたいのです」 ですよ。秩序が乱れるとやって来るやつのことです」 ふとっちょは眠をパチクリさせ、椅子を示した。腰をおろすと、 太った男は神経質そうに、 プレットはテープルに身をのりだして、 「さあ、もう帰ってくたさい」 「間違っているかもしれなしカ : 、、・ほくはあなたは本物たと思う」 「ほくがここを混乱させると、ゲルが来ます。あなたはそれを恐れ ふとっちょはまたパチクリやって、 ているんですか ? 」 「なんのことです ? 」 「さあ、さあ。落ち着いて、興奮することはないんですから」 びしやりと言った。かん高い、短気そうな声だった。 「べつに大層なことをしようってんじゃない。あんたと話がしたい 「あなたは他の連中とはちがう。あなたとは話ができる。あなたもだけなんだ。あんた、ここにどのくらいの間いるんだね ? 」 よそからこの町に来たんでしょ 「騒ぎは好きしゃない」 ふとっちょは自分のよれよれの服を見おろして、 「いっからここにいるんだね ? 」 「わたしは : : : アー : 今日、ちょっといそがしくて、服を着がえ 「十分ほど前からさ。ここに坐っただけた。まだ食事をすませちゃ る時間がなかったんですよ。忙しい人間なんです。で、あなたの用いないんだよ。さあ、自分のテープルに戻ってくれ」 件は何です ? 」 ふとっちょは・フレットを用心深く見つめた。汗がはげ頭に光って きゅっと口を結び、・フレットを注意深く見た。 「・ほくはこの町、はじめてなんです」ブレットが言った。「ここじ「この町にいっからいるのかって聞いたんだよ。どうなんだ ? ゃいったい何が起こっているのかと , ーー」 こから来たんだ ? 」 「なら、ガイド・ブックをお買いなさい。 ショーや映画のリスト 「わたしはここで生まれたんだ。どこから来た、だと ? それはど ういう質問だね ? コウノトリがわたしをどこから運んできたのか 「そういう意味しゃないんです。ここにいる人形どものことです。答えろというのかね」 それから、例のゲル 「ここで生まれたのか」 「人形たあ、何のことです ? ジェルフ 「そのとおりだ」 ジェロ ? ゼリーは嫌し ですか ? 」 「この町の名前は ? 」 「わたしをからかっているのか、君は ? 」 「ゼリーは大好きです。・ほくの言うのはーー」 「なら、ウ = イターにたのみなさいよ。お好みの香料をきかせたゼ ふとっちょは怒りはじめた。声が高くなる。 5
という鳴き声、その他百万もの虫が奏でるひそやかな哀歌、プラン 行くんだ」 はそんな音を聞いているのではなかった。そこにありえない、異質 6 ジルは位きだした。 の何かを求めて、彼は音のかなたにある静けさに全神経を集中させ ふたたびゴードンは、図書館の窓からもれる光を見つめていた。 ていた。長い時間がたった。何もない。やがて プランが話しだした。 。フランの意識は、ジルの思考を求めてのびひろがった。当然そこ 「死がどんなものか、ジルに説明しようとした。もちろん、無駄た には、眠る子供の思い ーー・・非現実的な夢、不活発な意識の流れがあ った。子供に死は理解できない。子供の心は未完成た。理解するに は、その前に学習しなければならない。経験をたくわえる必要があるものと思っていた。それらは見つからなかった。一つの場面から 別の場面へ何の脈絡もなく移り変る、とっぴで不明瞭な夢の思考は る。死と出会うのは、それがはじめてだった。蠅を燃やしたときに よ、。。フランよべッド の両方のふちをつかんだ。こぶしが白くなる は、死の観念はないんだから。自分が子猫を殺したことも気づいてオし いない。今夜、フォーブズやバティンを殺したことも、本人は知らまで、にぎりしめていた。悲鳴をあげまいとするだけで精一杯だっ ないだろう。自分が知っている唯一の防衛手段を使ったというだけた。 伝わってきたのは、水品のように澄みきった、堅固なジルの思考 ートよ世界に住んでいる。 だからね、ゴードン。子供は、プライベオ その一部は幻想た。おもちやを失くしたといった些細なことが、子だった。眠ってはいなかったのた。 供にとっては重大事た。死や生や誕生は、べつに大した意味もな光と闇のめくるめく交錯があった。ひらめき、変り、すさましい 。人形がこわれたと知ると、子供は火のついたように泣きたす。勢いで視界を流れてゆく。おそろしい感覚たが、つかのまプランに はその正体がっかめなかった。しかし心臓の鼓動をとめ、筋肉を凍 だが、犬が死んたといっても、けげんな顔でこちらを見るたけだ。 いうまでもないだろうが、この話はまだ終らない。あと一つ見せりつかせるには充分たった。死にものぐるいでジルの心から離れよ うとするーーだが彼は完全に呪縛されていた。 たいものがある」 ふたたびゴードンは、異質の思考が自分の心に重なるのを感じ光と闇の気ちがいしみた混乱が、不意におさまった。すべてが停 のふちか 止したーーーその場にびたりととどまった。。フランはべッド 。フランは一瞬らようやく手を離した。ふらふらしながら部屋の床にすべりおりる 今そこにあるのは、さしせまった強烈な危機感ー トの中でとっさに身をおこすと、五官をとぎすまと、背中に感じる床の堅さをこころゆくまで味わった。ジルの心か にめざめ、べッ ら逃れようとする気持もなくなっていた。光と闇が何を意味してい し、つぎにとるべき行動にそなえた。 部屋は静まりかえっているー・・ー異様な静けさたった。なぜなら外るかに気づいたのは、そのときたった。彼自身も、子供時代に経験 には、いつもと変りない夜の音があるからだ。遠く、近く、こおろしたことがあるのだ。それは、生まれながらに彼の中にあり、いま だに克服できないでいる恐怖の一つだった。 ぎが羽根をすりあわせるリーリーという音、あまがえるのゲッゲッ
、彼はその人物のことをしゃ・ヘりはじめる。彼はその男、また女に広がり、彼の話を聞きたがる人間までもが、ます自分たちの記憶 ) 生活の裏面を、洗いざらいきみにしゃべるだろう。な・せなら、きをにぶらせるためにアルコールを十分飲んでから、部屋の反対側、 「が自分のそれを聞かされて憤慨する以上に、彼はこの種の社交的それもできればドアのそばにすわりたがる始末だった。 〈応を賞味しているからだ。やがて、なかば夢心地におちいった彼彼が金持になった理由は、彼の特殊能力が無生物にさえも適用し エンシニント・ たことにある。陸地の少ないクジャムの世界では、鉱物は貴重だっ ) 目と声と手は、〈老水夫〉のようにきみをつかんで離さなく る。ぎみはいやおうなく彼の話をしまいまで聞かされ、麻痺状態た。もしだれかが鉱物標本を持ってくると、彼はそれを握りしめて 涙を流し、そしてどこを掘れば大きな鉱脈があるかを、相手に教え ) 上からさらにショックをうける。 それから彼は立ち去って、こんどはほかの人間に、きみのことをるのだ。 クジャムの広大な海でとれた一びきの魚から、彼は魚群の回遊路 ) ゃべるのだ。 を描きだすことができた。 ベネディック・ベネデ . イクトはそんな男だった。たぶん当人は、 涙を流しながら、彼は土地っ子のラド真珠のネックレースをさわ 凵分がどれだけ嫌われているかを知らなかったろう。なぜなら、そ り、そのラド真珠の養殖場を占うことができた。 ~ な反応が生まれるのは、あとになってから、つまり、彼が「さよ ら」といって立ち去った何時間かあとのことだからだ。彼は聴き土地の保険会社や金融機関は、ベネディクト・ファイルを作って いた。取引相手が契約書にサインするのに使ったペンや、もみけし 丁をまるで強姦されたばかりのような気持におとしいれて、去って ッくーーそのあとで、恐れや恥ずかしさや嫌悪が、聴き手にいまのたタ・ ( コの吸いがらや、ひたいの汗をふいたプラステックスの ( ン 国来事を考えまいとさせ、彼のことを忘れようとさせる。でなけれカチや、担保にはいったなにかの品物や、・ ( イオプシーや血液検査 相手がこれらの会社をだましたり、規約に 、聴き手は彼を黙って憎みつづける。それは彼が危険な男たからの標本を残しておく へネディックの力をか 。言いかえれば、彼が大ぜいの強力な味方を持っているからだ。違反したりして、行方をくらました場合に、・ りるためである。 彼はきわめて社会的な動物だった。注目を集めるのが大好きで、 ソやほやされたがり、聴き手に飢えていた。 ベネディックは、・ へつに自分の力に酔いしれてはいなかった。た どこかで。おびただしい秘んにそれを楽しんでいるだけだった。彼は銀河系百四十九の居住惑 また、聴き手はいつも見つかった を知っているおかげで、彼は重要な場所にも、話を聞いてやると星の中で知られた十九人の超能力者の一人であり、彼にとってはそ う条件で、出入りを許されているのだった。それに彼は金持でもれ以外の生き方はなかったのた。 彼はときおり官憲当局に力をかすこともあったが、 - 一それは彼が当 のった。だが、その話はあとにしよう。 時がたつにつれ、彼が初対面の人間に会うのはしだいにむすかし局の目的を正当なものと思った場合に限られていた。そう思えない 、なっていった。彼のおしゃべりとともに、その評判も幾何級数的場合は、彼の力はとつじよとして失われ、その必要がなくなったと
「あなたと乗組員は、直ちにフィッシャー局長のもとへ出頭して下突事故の時に、拘禁中の若いシェルウッドを危険にさらしたなど、 対訴を起こしている」 彼はマーチンに言って、カウンター越しにメモをよこした。マー フィッシャー局長は机から立上って窓際に行った。外にはロサン チンは頷いて、ファーガソンを促した。 ゼルス警察署の広い駐車場が見えていた。高速道路。 ( トロールカー 「医務局へ連絡して、ライトフットさんにここへ来るように伝えてのスマートな青い巨体が、二十台ほど一列に駐っており、整備士た くれないか」 ちが周囲に群がっていた。フィッシャー局長はビ = ーラの乗組員に マーチンが配車係に言った。 背を向けて窓から外を見ながら、ひとり喋り続けた。 「もう連絡してあります。こちらに向っている頃でしよう。先に局「私たちは人々のために必死になってこの組織を作りあげてきた。 長室へ行ってて下さい。彼女がここに来たら、すぐに後を追わせま今、一人の薄汚いやつが、自分の利益のために、 この組織をぶち すから」 壊そうとしている。君たち三人はここを出たら、検察官室へ行くこ マーチンとファーガソンはフィッシャー局長の部屋に向った。 とになっている。検察官は次の月曜日に法廷で使うため、逮捕した 時の報告と他の材料を、すっかり調べたいと言っている。私はテー プをすべて調べ、君たちの報告書も調べた。君たちが高速道路パ 「いわゆる重要人物のからんだ訴訟事件は前にもあった . ロール隊員として、それに相応しい行動をとったことに、私は満足 フィッシャー局長が言った。 ここで している。しかし、それたけでは充分でないかもしれない。 「しかし、シェルウッドほどの政治的経済的影響力を持ったのは初は一個人を酔払い運転で起訴するという簡単な事件ではすまなくな めてた」 る」 彼は言葉をきって、机の向こうから五六号車の三人の乗組員の表フ ィッシャー局長は三人の方を向いた。 おまわり 情を眺めた。 「警官が好きなやつなんていない。言わなくてもわかっているだろ 「君たちが十日前にここを出発すると、高速道路当局に対して、設 うがね。自分がトラ・フルに巻きこまれると、すぐにでも警官を呼び 立以来はじめてという敵意に満ちた攻撃が始まった。シェルウッド たがるが、そうでない時は、自殺しようとしている人を止めても、 老人は自分の息子を刑務所に入れないために、うじ虫どもを次々に罪もない市民を迫害している無頼漢の集まりのように見られるもの 送ってよこした。そして、これはまだ手始めにすぎない。裁判を開なのだ。議会では、高速道路当局への支出について、大論争があっ くまでには、当局たけでなく、君たち三人もこれまで経験したこと た。人間なんて、お菓子を持っていたいくせに、同時にそれを食べ もないような熾烈な戦いに巻きこまれるだろう。すでにシェルウッ たがるものなのだ。今日のような高速道路システムは、羽 リや国の財 トの弁護士どもは、誤認逮捕、暴行、人権侵害、そしてあの多重衝政では作れす、三カ国で共同してようやく作れるってことは、誰だ 284
ホーマーは振りむいて出ていこうとしたが、怪物がふさふさした「対外援助みたいに」ホーマーが言いおぎなった。 前肢をあげて押しとどめた。 「ところが、このへまな男が」と怪物は、率直で真実な怒りのため 3 2 「わたしたちをおそれてはいけない。わたしは、半分もとのままでに声の調子をあげた。「このいやみな男、この愚か者、このご存知 す、わかりますね ? 全部人間にもなれるが、めんどうが起こる。 のスティーン氏が、何をやったと思いますか。彼は計画責任者とし これでじゅうぶんいいですね ? 」 て地球にやってきてーー・まちがった計画をおこなってしまったので 「よろしいです」ホーマーは言った。 す ! 前にも似たようなことをしたが、そのときは問題が起こらな 「わたしたち、あなたに借りがある」怪物が言った。 「このご存知かった。だが、今度はやりすぎです。ゆるせる限度をこえている」 のスティ ーン氏が、ものごとをめちゃくちゃにしました」 「つまり、この〈幸ノ台〉の計画は、地球のためのものでなく、ど 「そう思います」ホーマーは同感をこめてうなすいた。 こか別の惑星のためにつくられたものだというんですか」 「無器用な男です。へまをする。そして、冗談好きなのです」 怪物は、理解と同情をこめたしぐさで、ホーマーの肩に腕をまわ 「冗談が好きだって ? 」 した。「そのとおりのことを、彼はしたのです。ここには〈幸ノ 「道化役というのか ? おどけ者 ? つまりーー彼は冗談をしかけ台〉の必要はない。あなたがた全員をおさめるたけの余地はまだあ るのです。ときどきとてもおかしなことをするが、いずれにしてもるのですから。倍増していく必要はない」 くだらない」 「これはすて 「だが、あなた」とホーマーは熱心な口調で言った。 怪物はからだをかがめ、ホーマーの顔をのそきこんだ。 きな考えです。可能性をはらんでいます」 「あなたの惑星にも、冗談好きはいますか」 「あなたの惑星はほかのことに不都合があります。あなたがたに 「ええ、たしかにいます」ホーマ 1 は答えた。「店の並びにひとり は、もっとよい計画が用意してあるのです」 います。ギャビー・ ウイルスンという名の男たが , もっとよい計画と怪物が言ったときの口調を、自分が気に入った 「では、わかりますね。冗談が冗談であるなら、それほど悪くなのかどうか、ホーマーにはわからなかった。 い。だが、冗談でまちがいが起こると最悪です。そのことばがあり「ほかの計画というと ? 」彼はたすねた。 ました。いやみになるというのですか ? 」 「最高機密です。その計画を最大限に成功させるため、原地人には 「そのとおりです」ホーマーが言った。 自分たちで考えついたのだと思わせて実行させなければなりませ 「この不祥 「わたしたちは、惑星のための計画を、ひじように多くの惑星のたん。そして、その点で」と、怪物は床をさししめした。 めの計画をおこないます。それそれの計画で、各惑星に適合するよ事は第二段階で失敗したのです。何が起こっているかを知られてし う、はからいます。その惑星の助けになるよう、もっとも必要とさまったのだから」 れるようなかたちであるようにはからいます」 「たが、 ほかにもたくさんの人々がいた」とホーマーは反論した。
「そんなに興奮しなくてもいいでしよう」スナイダーが言った。 「スナイダー」と彼は言った。「あんたはこの店で大騒ぎしてい 「はなしあえば いいことなのだから」 る。あんたは仕事をちゃんとやったーー・あたしに警告したんだか 「あんたがやって来て、脅迫しみたことを言っているんた」とホ】 ら。さあ、出ていってくれ」 マーが言いかえした。「はなしあうことなんてなにもない。あたし そこまで言うつもりがあったわけではなく、彼は自分の言ったこをやつつけるつもりだって言ったんたから、さっさとそうしたらい とばにおどろいていた。だがいまやロにしてしまったあとでは、と いじゃないか」 りけすすべもなく、それに、自分のことばによって生まれた力強さ スナイダーは荒々しい動作で立ちあがった。「ジャクスン、あと 0 と独立感は悪いものでもなかった。 で後悔するそ」
ん。もしーーーラマヌよ許したまえーーーやつらが集団となって乗組員ばゆい日光の下へ出た。 へ立ち向かってぎたら、非常に危険な事態となるでしよう。しか アンガムはここへくる途中、この船長の船に気づいていた。見お 8 し、やつらは度し難いほど兇悪で、自分達同士でも殺し合うのでとす訳もない大きな船である。おそらく船乗りの職業的な眼で見れ す。ねずみというやつは、われわれが想像もっかぬほど野蛮な状態ば、そこいらに停泊している沿岸航路の船とはまったく異なる部分 にあるのですよ。われわれだけでなく、われわれの親戚筋にあたるがいくらもあることを発見するのだろうが、そんなことを抜きにし 四つ足の生きものの大部分でさえ、想像がっきかねるほどの ても、その大きさは、野牛のなかにいるマストドン位の違いがあっ た。船体の鮮やかな小豆色と上部構造の淡黄色との対照はまことに モルリンは、とても信しられぬという顔をした。「つまりあなた美しいものだったが、仮に、その船全体がきまりきったとび色と灰 はロアナに住んでいるのが、そのーーねずみだとおっしやるのです色で塗装されていたにしても十分美しいと感じられるほど、船その のが端麗な形につくられていた。 か」やっとのことでかれは言った。 いえ、そういう意味ではありません。只、わたしが言いたいの 船橋よりもずっと高くつき出た煙突は鈍い赤に塗られていて、そ は、われわれがロアナの住民を、はじめからわれわれそっくりの性の中に、金色の獅子が跳ねている。すらりと高いマストの根元から 質を持った連中だときめこみすぎるー・ーーということですよ。しかしつき出たデリックは、昼食時のためか停止したままたが、埠頭には わたしには、ロアナの都市の灯がひとつひとっと消えていくこと積み込みを待っ貨物をおさめた箱や樽や俵などがうず高く積みあけ が、最後の水のひとしずく、空気のひと息を求めて住民たちがおそられていた。 「いつアルラ ろしい争いをくりひろげているようにしか思えないのです。みんな「いい船ですね工、ノア・フ船長」アンガムが言った。 が力を合わせて働くしか、自分達を救うみちはないというのに、か ック号は出港ですか ? 」 れらはべつべつの ドームにたてこもっているのではないでしよう「まだ決めていません。貨物の積み込みは明日中に完了するつもり です。しかし、植民者の選抜はすこしおくれているようですから アンガムはちょっと時計へ眼をやった。第一一時刻まであと四分 の一時刻である。かれは立ちあがった。 「わたしも御一緒したいとおもいますよ。きっと西の新らしい地方 「さあ、わたしは行かなけりゃなりません」とかれは言った。「わでも潮汐動力の技術者を必要としているでしようし、ね。只 たしの助手が交替を待っているのです」 「アンガムは、すでに二人の妻を持っ身でね」モルリンが口をはさ 「わたしも一緒に行こう」モルリンも言った。かれはプロンドのウんだ。 ェイトレスへ合図して、もってきた勘定書きに小袋からとり出した「そうなんです。女というのがどんなものかはあなたも御存知でし よう」 鉛筆でサインをした。ノア・フが先に立ち、三人は店から昼下りのま
ってよくわかっているんだ。ところが一旦できてしまうと、維持費三人は敬礼して、フ ィッシャー局長の部屋を出た。検察官室へ行 の負担を逃がれようとするんだ。シェルウッド側では、高速道路にくと、ライトフットとファーガソンは控えの間で待たされて、マー 対する反感を、ことごとに利用しようとしている」 チンが中の部屋に招かれた。 局長は握り拳で机を叩いた。 高速道路検察官は五十代のなかばで、頭髪がいくぶん薄くなりか 「あの糞ったれ爺いは、自分の息子を刑務所に入れないためなら、けており、腹が少し出はじめていた。マーチンが部屋に入ると、検 北アメリカの人口半分でも殺しかねない」 察官は机を廻って、彼に手を差伸べた。 マーチンは椅子にどっかりと坐って、床のモザイク模様を見つめ「ジョン・ ーベイです。トロイ攻略にようこそ」 。彼は下を見たまま尋ねた。 検察官がにつこり笑って椅子をすすめ、マ 1 チンが腰かけた。 ( 「止めさせるには、どうしたらいいんです ? 」 1 ペイはたばこの箱をテープルの上を滑らせてよこし、それからぶ 厚い書類とマイクロテープに手を伸ばした。 フィッシャー局長が唸った。 「腹を割って話すと : : : 」 ーベイは証拠の山を叩きながら言った。 「そいつは簡単た。息子の起訴を取下げればいし 。そうすれば爺さ んは喜んで、自分の仕事に戻ってくれるよ。たが、あの息子がまた 「こいつは薄汚いことになりそうな事件た。私はきみたちと一人 高速道路を走るようになって、他人を道連れに死ぬから、爺さんのずつ会見して、それそれの話をつきあわせ、さらに報告書やテープ 喜びもそこまでだ。そうなったら、息子を高速道路の脅威から護らとっきあわせるつもりだ。だが、悪くとらんでくれたまえ。きみた なかったと言って、私たちの頭の皮を要求するのは間違いない。しちが立派に行動したことは、これつ。ほっちも疑ってはいない。だ が、もしきみたちの一言うことに、・ かし、問題はそんなことじゃない。 ここで爺さんに勝たしてしまう とんなに小さくても食い違いがあ と、私たちがこれまで血と汗で築きあげてきたものが、根本から壊るなら、被告側の弁護士がそれをもって逆襲してくる前に、対策を されてしまうことだ。高速道路で市民の生命を護るための最大の武構しておきたいのだ。さて、ます最初に、起こったことをすっかり 話してくれたまえ」 器は、法律が個人や集団よりも大きいということ、そして違反者は 路上でも法廷でも平等に扱われる、ということだ。大きな違反をし ーベイは背もたれに寄りかかり、たばこに火をつけた。マーチ た者が私たちの法廷の公明正大な正義によって高速道路から排除さンが話しだした。 れるので、安全が保たれるということは、誰でも知っている。もし マーチンがケビン・シェルウッドの逮捕とそれに続いて起こった この原則を曲げれば、すべてのシステムが無力になってしまう。さ出来事について話している間、 べイは時々メモをとった。マー て、君たち三人はこの一件が片付くまで、検察局へ派遣される 9 なチンが話し終ると、 ーベイは身を起こした。 にがどう動いているか、いつも私に連絡をとって知らせてくれ」 「それで全部かね ? 」 286
おさまったようであった。ファーガソンはあおるように一杯だけ飲 んでね」 ケビン・シ手ルウッドは苦笑した。 むと、ポケットから小さな住所録のノートを出して、頁を繰った。 「おかしいと思うかもしれないけど、僕も同じことを考えていたん彼は座を外すと電話の所へ行った。二分もすると彼は帰ってき だ。父親にいくらお金やカがあっても、子供に買ってやることのでて、グラスに残っていた酒を空にして、制帽に手を伸した。 きないものがあるってこと、僕にもようやくわかりはじめてきた「ひとっ走り行ってこなきや。出発の時に会おう」 よ。いくら高いものについても、自分で払わなければならないって彼は小さな住所録を振ってみせ、困ったようなふりをした。 ことがね 9 でも、とにかくこうなってしまったんだ。今朝僕が言っ マーチンはファーガソンの後ろ姿をにやりとして眺め、クッショ たこと、思いだしておくれよ。この結果がどう出ても、僕を恨まなンのよくきいたソファーに深々と身を沈めた。 いで欲しいな。僕が裁判なんそ受けないってこと、わかってるたろ「あいつは一晩中起きていて、馬のようにがむしやらに働いた。そ のうえ何時間もすごい緊張を強いられたっていうのに、見なよ、あ 「やめな、ケビン」 と二十四時間は一睡もしないたろうから。賭け率五対二で賭けても マーチンが怒鳴りつけた。 「裁判から逃げられないことは、よくわかっているくせに」 「賭けはダメよ」 シェルウッドは笨って、歩きかけた。 ライトフットが答えた。彼女もソファ 1 の背にもたれかかり、マ 「僕たちシ鷆ルウッド一族がいったんこうと決めたらどうなるか、 ーチンの近くに身体を寄せた。 ちっともわかっていないんだ。あ、それから、今朝そちらにお邪魔「疲れたの、ペン ? 」 した件については、謝りますよ。さっき聞いたばかりだったので マーチンは手で髪をでつけ、溜息をついた。 ね。もう二度とあんな真似はさせませんから。そのうちまた、どこ 「そうらしいよ、王女様。もうあいつほど若くはないし、この仕事 かでお会いすることもあるでしよう」 も辛くなりはじめた 9 パ トロールを始めた頃には、ずいぶん荒つ。ほ シ = ルウッドは手を振ると、クインの所へ戻り、二人そろって事い仕事もした。それなのに、今度はこんないざこざた」 務室へ入っていった 9 ライトフットが手を伸ばして、彼の手に重ね、頭を彼の肩にもた マーチンはたばこを床に落として、靴でぎゅっと踏み消した。 れさせた。 「行こう。一杯やろう。強いのを今すぐ飲みたい気分だ」 「イトロールを止めようって、いっ考えてもよかった筈よ、ダーリ 一時間後、マ 1 チンとライトフットは、カクテルラウンジの隅に マ 1 チンは自分の肩の上で休む赤みがかった金髪を、やさしく見 あるソファーに坐っていた。マーチンの前には空になったグラス - が 三つ並んでおり、アルコ 1 ルのおかげで、彼の緊張と怒りもだいぶおろして、彼女の手をそっと撫でた。 274