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検索対象: SFマガジン 1977年4月号
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1. SFマガジン 1977年4月号

發さん。お手紙ありがとう。 たがいさまですがね ( なんのことかわからなかったせる。ロジャー ークスンという金髪の若者がい 御推察のとおり、今回のスキャナーには四苦八ら、十一月号を見てくたさい ) 。 ちばん現場に近かった。現場の六層下でゴルフをや 苦しています。前回の末尾に「次回はハ ード T'J に ジョン・ヴァーレイはいま二十八歳。年間最優秀っているところだったのである。ロジャーは。 ( ター ついて考える」と書いたのが手枷足枷。書くんじや新人に与えられるジョン・・キャンベル賞を、 を持ったまま、アンと共に現場に向かう。その車中、 なかったなあというのがホンネ。ここ数年、僕がやム・リーミ イとあらそって、おしくものがしました彼はアンをデートにさそった。事件がかたづいた ろうとしてきたのは、読者のみなさんに僕の考えが、とにかく期待の新人ですよ。 ら、いっしょにタ食をとろうと言いだしたのだ。し 方、観といったものを知ってもらおうというこ〈ギャラクシイ〉の七六年十月号にのった = B 品 a ( e ・かし、とアンは思う。事件は本当にかたづくのだろ とでした。つまり、このコラムで紹介する本を僕が lle ・・というのは、こんなお話 うか。もしかたづかなかったら、ニ・ユ ー・ドレスデ おもしろいつまらないと評価する、そのパックポー 「わたしは爆弾である。いまから四時間五分十七秒ン市はこつばみじん。そして、月に住む人々には隠 ンを知ってほしかったわけです。それがどうしたわ後に爆発する。わたしの爆発能力はトリニトロトルれる場所がないのである。 けか、僕自身の好みの原点を探るほうへと向かってエン五万英国トン分に相等する」 現場についたロジャーは一眼で、爆弾がサイボー しまいました。そして、センス・オヴ・ワンダーや場所は月の地下につくられたニュ ー・ドレスデングであることを見ぬいた。車の中枢部には、人間の ら。 ( ロデイやらミステリやらをながめてきたわ市。その地下第四十七層、レイストラッセと呼ばれ脳が入っているのた。車のまわりには線がひいてあ けで、その一環としてハ ードを考えてみようとる地区。爆弾は直径一メートル、長さ二メートルほって、そこから一歩でも中に入ったら、ただちに爆 いうことだったのですが、やれやれ、実はこの年どの横だおしになった円筒状で、四つの車輪がっ発すると、警告がある。 の間に原点みたいなものが見えてきてしまったのでき、円筒の上では四つのテレビ・カメラが九十度ずロジャーは、すぐ下の階から x 線を放射するよう すよ ( ワア、どうしよう ) 。それは、本当は原点じつをうけもって外界を走査している。道路清掃車ににと命じた。それで機構に狂いがでればめつけも ゃなく、単なる比喩にすぎないかもしれない。かり似ていたものだから、そこに来るまで誰も気づかなの。でなくても、車の構造がわかるだろうと思った に原点だとしても、ひとっしかないものだともかぎかった。その爆弾車はバガッテルという花屋兼プレのた。それと同時に、コン。ヒ、ーターを使って、爆 らないわけで、そんなアヤフヤなものをスキャナーゼント屋の前でとまると、 発を予告された時間に何か意味がないか調べさせ に書いていいものだろうかと思いなやみ、苦吟して「わたしは爆弾である。あと四時間四分三十七秒でる。やがて、この日その時間に生まれた ( ンスとい いるわけなのです。 爆発する」 う男が浮かんだ。彼はある事故が原囚で、人間は機 たいいち、今度紹介したいのはジョン・ヴァーレ報告を受けたのは、アンⅡルイーズ・ ( とい械の一部品であると信じるようになり、みずからも イという新人なのですが、実はその件でも困っていう都市警察署長 ( 名前からわかるとおり、女性、そいちばん美しい機愀ーー原爆になったのである。爆 ます。この新人、去年十一月号のスキャナーで安田れも美人なのだ ) 。彼女はすぐにコン。ヒ = ーターに弾は、自分が ( ンスであることを認めた。 均氏に油揚げをさらわれてしまったのです。ま、お命じて、体霰で月に来ている爆弾処理専門家を捜さ ロジャーはその日が彼の誕生日だと知ると、あき 0 0 % 見 2

2. SFマガジン 1977年4月号

・ンリー 今月は再録版が多い、主力であるハヤカワ ズからの再録で、・日に七分の一イは″ジョン・サイレンスもの″と並ぶむ霊、 ステリー - 文庫が六点全部再録のためである。編集部にンチずつ縮んでいく主人公を、恐怖小説タッ 『幽霊狩人力ーナッキ』 "Carnacki 0 the Ghost ・ Finder ・・ 問い合せてみるとおしなべて売行好調たそうチで追った、一種の変身テーマ。 ・ 47 ウィリアム・ホー , ◆、◆・で、まあ喜ばしいかぎりなのだが、それだけ月刊ペン社の妖精文庫から、刊行が遅れてプ・ホジスン ( 田沢幸男他訳・九八〇円 ) で、 〕読者の側の欲求不満が高ま 0 ていた証左でも心配されていた第四回の配本、。ード・ダン内容的にはも 0 と怪奇色が強くな 0 ている。 ・ - あるのだろう。比較的安価に名作を入手出来セイ = の『 = ルフランドの王女』 "King 。 ( ホームズばりの快刀乱麻の解決ぶりがお好み 、るこの路線の継続は当然として、もうそこら the Elfland's Daughtes" 4 ( 原葵訳・一の向きは″サイレンス″を、おどろおどろし 、、 - へんは読んでしまっている古手ファンの欲求二〇〇円 ) が出た。これは魔法を持っ工を望いムードがお好きな方は″カーナッキ″を、 不満の解消も、やはり考えて欲しい。中、短む領民の要請を容れ、雷の剣を持ち、エルフと好みがわかれるかも知れない。それにして ・◆・、◆、・篇の新作は毎年恒例で雑誌に載るヒューゴー ランドの王女をむかえに行く王子。二人の間もホジスンという人はよほど豚に反感をもっ ・、 . ネビ、ラ受賞作を中心にかなりされているにうまれた息子オリオン。娘を奪われ嘆き怒ているらしく、例の『異次元を覗く家』に続 、、し、その限りでは彼地での動向もうかがえるる = ルフの王。トロール、 = = コーン、鬼火いて、この本の中の「妖豚」でも " 地獄の業火 、のだが、少なくとも半分ぐらいは新作で、その群れ、といった彼方の国の物語、純然たるにほかならぬ、悪徳という炎にきらめく眼″ ー・テールでだの″残忍きわまりないなき声 : : : あのいや 物、◆れも出来得るならば読み応えのあるど 0 しり ( 良い方の意味での ) フ = アリ ◆、◆ ! とした作品で占めて欲しい、と考えるのは筆ある。読みはじめると瞬間ふわりと雲にのせらしいなき声″だの、他人 ( 他豚 ? ) ごとな 、、者だけではあるまい。今後に期待したい。 られ、最後にふわりとおろされる。この間墜がら可哀そうになってきますなあ。 : : : 閑話 落して這い登る作業が必要でなかったのは、休題。 ハヤカワ文庫。 最後に創元推理文庫から二冊。 ( 何回か高度を失いかけたことはあったが ) 『ゴルの無法者』 "Outlaw of G 。 r ・ : 67 ジ オラフ・ステープルドン『オッド・ジョン』ダンセイ = の筆力の確かさを示すものといえ "Odd John"'34 ( 矢野徹訳・三六〇円 ) 。 るだろう。 ョン・ノーマン ( 永井淳訳・三二〇円 ) は反 、、ー超能力・新人類テーマ。 先月号でも紹介した学習研究社の超常此界地球シリーズの二巻目で、コ日ロ日・ ( を減し 、、フレドリック・プラウン『発狂した宇宙』への挑戦シリ た神官王の秘密と残忍な女権芝配の都市国家 ーズの続刊が三冊発行されてい 、、 "What Mad Universe ・ :49 ( 稲葉明雄訳・る。『戦慄の怪奇人間』 "Vampi 「 es. zom ・ に対する主人公の活躍を描いている。鏡氏の 三四〇円 ) 。ハラレル・ワールド・多元宇 bies. and Monster Man" ) 75 グニエル 解説にもあるとおり、第・巻より面白くなっ ◆、◆、◆、《宙もの。巻末の筒井氏の名解説が泣かせる。 ファーソン ( 三好・三上訳 ) ーー、吸血鬼、オオてきているし、四巻までは文句なしとのこと ・ - ジャ , ク・ウ→リアムスン『宇宙軍団』カミ人間、ゾンビー、妖精、野性人、巨人云なので期待したい。 マイクル・ムアコックの『ル ーンの杖秘録』 、、 "The Legion 0 ( space" ・ 34 ( 野田昌宏訳説など。『ネッシーと雪男』 "Monsters and 、、蜘・三六〇円 ) スペース・オペラの古典的 Mythic Beasts" ・ 75 アンガス・ホール ( 桐 "Sorcerer ・ s Am 三 e ( ・ : 68 ( 深町真理子訳・ : ◆、◆、◆、△名作。 四〇円 ) も第二巻 谷四郎訳 ) ドラゴン、人魚、・角獣、ネ プライアン・・オールディス『地球の長ッシー、恐竜、雪男、サスカ「チなど。『幽Ⅱ〈赤い護符の巻〉 、、い午後』 "Hothouse"'62 ( 伊藤典夫訳・三六 / 霊とポルターガイスト』 "Ghosts and pol- で、お人公が赤い 、、〇円 ) 亠迷 ~ 木来テーマぐらいしか言いよう tergeists" ) 75 フランク・スミス ( なⅢ洋平護符を手に人れ て、新しい力を身 ョ - 、 - がない。植物支配のかげで細々と生きる人間訳 ) 界各国の幽霊とポルターガイスト ◆・◆、◆・△たち、といった内容でなっかしい。 につけ、ますます のレポート。 ( 各九八〇円 ) このシリ ハヤカワ文庫 Z 。 英国オルダス社の〈 A New Libraryofthe 強大になっていく セル文 暗黒帝国と対決す メルル『イルカの日』 "Un supernatural 〉の日本語版であり、表紙から ~ 、、・、 Animal Doué de Raison" ぶ 6 ( 三輪秀彦図版、插画までそっくり同じ体裁。本文は横る、といったヒロ ト・コンタクト 、・、訳・五〇〇円 ) 組みで多少読みにくいのだが、絵とその説明ィック・ファンタ 海当 ◆・◆、◆、△ならぬ、ファースト・コミ ュニケート・テーマ ジイ。例によって だけでも十分楽しめる。なんといっても大判 日一 リチャード・ マシスン『縮みゆく人間』 百五十頁オールカラーでこのお値段はお買得の御都合主義は気 - 、、 - Shrinking Man„ぶ 0 〕田誠一訳品だろう。 になさらずに : ステリ ・三三〇円 ) これよハヤカワ・ミ 国書刊行会のドラキュラ叢書第八回の配本といったところ。

3. SFマガジン 1977年4月号

①意志エネルキーセンタ ②居住セル N 引 2 3 ドッキング・セル No. 3 ④宇宙泡創造セル ⑤個別星問駆動装置 6 防御セル N 。 . 6 ①搭載艦セル N 。 . 2 ・①セル集積体 ⑨超時空スポーク ⑩超時空ホイル ・星問駆動ティスク その宇宙船は高度な文明をもっ た生物の探査船であった。彼らは まだ熱い息吹きをはなっ地球に生 命の萌芽をみいだし、それを調査 対象にしたのだ。生命の根元にあ 、と一歩まで迫り、長大な寿命まで は獲得していた彼らにとって、そ れは恰好の研究用サンプルだった 多元空間航法の応用で、彼らは 宇宙船を平行する他の空間に移す と、第五惑星を破壊した。更に平 . 行する別の空間につくった八面宇 宙の材料にしたのである そして地球で得られたサンプル をそこに凍結して研究を継続する システムを作りあげたところで、 彼らは母星に呼びもどされたので・ あるしかし、彼らはシステムを ・そのままに宇宙船と八面宇宙を残 ~ 一・して太陽系から去 0 たのだ。いっ の日か彼らが再び戻ってこれたな ら、より完成に近づいた研究成果 が王。に入るよ、つに・ システムは忠実に働いた支配 者のプログラムどおりにサンプル を収集し、保存し、研究を行なっ た。地球に対する活動はすべて多 ・ . 元空間を通じてなされたので、宇 宙船が直接、通常空間とコンタク トをもっことはなかった。だが、 ある日、宇宙船の扉が通常空間に むかって開かれたのだ。開いたの は支配者ではなかった。彼らが研 究対象にしていた地球の生物によ って開かれたのである

4. SFマガジン 1977年4月号

ートレイは、立方体をもうひとっポケットからとりは、人間のつくったものさしで原理的な神秘をはかることはできな そう一一一一口うとハ だし、宙に浮いているものと、びったりと合わせた。どう見てもそいのだということをあらわすためにおくられてきたのであり、その のふたつはそっくりで、ただ、あとのがすこしばかり大きいだけだばあい、人間のものさしということばには、高等数学というような ハートレイは数歩さがり、たしかにそれがはなれないことを無形のものまでふくんでいる。 観客全員に見とどけさせたーーー吸着力がどれほどのものか、自分の もう昼を過ぎており、ジョン・トマスはとっぜん、自分が空腹だ 出した立方体のほうを、はげしくたたいてみせたほどだった。 ( ンセン立方体以外に」と彼は言った。「こんなにびったりくつつということに気がついた。とにかく、今までの議論では、ほとんど ジョン・トマスの知らないことばかりが話されている。ここですこ くものはありません、 ートレイの解答は、関係者全員に異議なく受けいれられた。そし、あそこですこしと、知っていることばだってましってはいた う書くことができるのはうれしい。けれど、問題の物体に名前をつが、それたけなのた。自分のみつけたものにみんなが興奮して興味 ートレイを寄せ、直接的にも間接的にも、それほどの注目を自分が浴びてい け、またその性質を公開実験してくれたことについてはハ は感謝されたが、ものに名前をつけたからといってそのものを所有ると思うのはいい気分たった。しかし、もうそれにはあきてしまっ たし、それより、昼食を口にしたいのだった。 したことにはならないというのが、科学者たちの考えだった。ヨハ ンセン立方体のすべてが、宙に浮かんだり、受ける力をすべてはね 母親につれられて家のなかにはいると、ビーナツ・ ( ターとゼリー ミルクを一杯入れてもらった。「裏庭のあのヘ かえしたりするわけではない。その指摘には、ハ ートレイも同意しのサンドイッチに、 よ、つこ。 んな金属に、みんながあつまってきていて、うれしい ? 」 ないわけこよ、 「いやなことだわ。今日の仕事はまだ しいえ」と母親が答えた。 こんなふうに、その金属立方体は、量質ともに完全な自然物であ「、 ることが明らかにされた。そうであるからには、一見いかにも不自なにも手をつけていないし、ああいうおしゃべりを聞いていると、 然なその性質も、合理的唯物論的な説明がつけられるはすである。頭がくらくらしてしまう。だれが正しくてだれがまちがっているの か知らないけれど、とにかく、あそこでとうさんが話題の中心から 必要なのはただ、科学的方法を忍耐づよく応用し、真実を明らかに 出ようとしないことだけはわかる。そんなこと、会社の上司の人だ していくことだけなのだ。 ってよろこびはしないでしように。あんな物体なんて、来たところ ートレイ氏がそう一一 = ロ しかし、それには教会側から異論が出た。ハ にどこにでも、もどってしまえばいいわ」 うのなら、それがヨハンセン立方体だということは受けいれるし、 「・ほくも、もうあきた それがヨ ( ンセン立方体の特性をしめすということを否定はしな「そうたね」とジョン・トマスは言った。 。けれどそれがすべてではない。基本的なところに矛盾をふくんよ」 でいることをお示しになるのが神の意志なのだ。かがやくこの物体ちょうどそのとき、みんなの叫び声が庭から聞こえた。「消え ロ 3

5. SFマガジン 1977年4月号

の司政官カミノ / ; レレ地区に赴いていると知って、そっちへ急行したとり、ぬきん出たリーダーシップを持っ官僚群の総帥なのた・ しても、ミルル地区のマセを襲うにはそれ相応の準備が要る。準備そこで彼は顔をあげた。 が成った時分には、司政官は司政庁に帰着しているーーーというの ランが身じろぎをして、目を開いたのである。 が、スマ 1 トなやりかたというものであった。 「わたし、眠っていたようね」 そのための、窓のおおいなのだ。司政官機が司政庁を飛び立った と、ランは溜息をついた。「少し失礼して、身づくろいをして来 事実を何もわざわざ広告する必要はないので : : : しかもこの瞬間のていいかしら。そういう場所、あります ? 」 司政官機は、通常よりもはるかに高空を飛翔しているのた。 「後尾に小区画がある」 安全策といえば、護衛のしかたもいつもとはたいぶ異っていた。 マセはいった。そういえばこの前司政官機に乗ったときには、彼 今、ミルル地区に向っているのは、この司政官機のほかに、もう 女はそういう要求はしなかったのた。若い女にとっては不満足きわ 一機あるだけなのだ。その一機には、本来自力飛行が当り前の戦闘まるに違いない最低限の設備たが、そこを使って貰うしかない。 専担ロポットと、それらを指揮するにもしものことがあっ 「機能本位に過ぎるかも知れませんがね」 た場合、任務を代行するための上級系ロポットが、びっしり「いえ。それで充分」 と搭乗していた。かれらが一体すっ別々に飛べばそれは壮観であろ ランは席を立ち、の横をすり抜けて後尾へ向った。 うが、いやでも人目に立ち、人々を刺激せずにはいないたろう。そが指令を出したのだろう、彼女の行く手のドアが自動的に開い れを避けるための、一見おたやかな : : : まさか司政官がみずから出て、むこうのあかりがともった。 掛けているのではないたろうと思わせるための、地味な二機編成な ランはちょっと意表をつかれたように立ちどまり、マセに一瞬視 のである。 線を投げてから、ドアのかなたへと進んで行く。 考えてみれば、護衛の形態というのも状況に応じて随分あるもの その通路のさらに奥にある小区画のドアも中の照明も、彼女の位 だ、と、マセは思った。自分がまたラクザーンにおける一介の並び置によってひとりでに作動しているのは疑いのないことだった。 大名、いやそれ以下の古風な飾りものであったさいの、あのお手軽はがあらかじめ出しておいた範囲内で、彼女のために な護衛陣 : : : それから巡回からの帰着時の、あのことさらに示威的も、司政官と同様の待遇をするよう、機に指示しているたろうから な護衛の隊列 : : : そして今は、きわめて強力な癖にさりげなさを装である。そして、ランがそのことに戸惑いを見せようとも、マセは う護衛と : : : 時と場合に応じてのの選択のしかたが、いとも特別命令で cnCRN<t にそうした扱いを変えさせるつもりはなかっ 明瞭にあらわれているのた。この正直さは : : : それが当然たとしてた。そんなささいなことに関する特別命令が、へたをすると、あ も、やはり TCR--* がロポットであり官僚であるのを、端的に露呈しと、の彼女に対する扱いを混乱させかねないからである。 ていた。いや、そういう表現はよくない。最高級のロポットであ それ程時間をおかすに、彼女は戻って来た。 4 っ 4

6. SFマガジン 1977年4月号

そこはすっかり黴が生え、苔におおわれ、一面埃をかぶってい蝶番、ベルトの切れつ端、バックル、くしやくしやになった未使用 の便箋、空のマッチ箱、封を切ったばかりの封ロウの棒。あとは、 男は、戦い取った一隅をゆっくりと丹念に調べた。いったいここ壁ぎわの副木にはさまれた、まるで灰色がかった毛が密生している に何があるんたろう ? どうして机が動かせたか分らないが、満足ように見える黴が生えた屑がころがっている一隅だけが残った。そ : 」っこ 0 っと用心してスリツ。、 / の爪先でそこをつついて、息が止まるほど仰 ッ 0 、、 部屋の真中に、汚れた下着類と新聞が放りだしてあったーーそれ天した。穴があいたスリ、 / カら顔をたしていた親指が、なにか小 はたしか机を動かすとき足で蹴りだしたものだった。よっんばいにさなぶよぶよするものにさわったのだ。もう一度足で探ってみせた なると、用心しながら薄暗がりの中に頭を突っこんだ。体で明りがが何もなかった。 さえぎられなにも見分けることができない。埃を吸いこんで、また「錯覚たったのか」と思った。 続けざまにくしやみをしたが、もう腹はたたなかった。 机のそばへ椅子を引きよせる。それは脚が三本のスツールではな あとずさりして這いだしてくると、時間をかけて鼻をかみ、それ く ( それには触らないことにしていたからた ) 、皿がのっている別 から、今まで一度もやったことがないくらい壁からうんと机を離すの椅子だった。皿を押しのけると音をたてて床の上を転がっていっ ことにした。威嚇するようにメリメリ音をたてる机の側板に手をか た。につこり笑って腰をおろすと、机の裏で見つけだした物の吟味 け、手ごたえを測ってから思いきって押してみた。思いがけなく楽にとりかかった に動き、机は部屋の真中あたりまで出て、ナイトテー・フルをひっく り返してしまった。やかんが床に落ち、足がそれをひっかけ蹴とば 注意深く灰色の埃を吹き払うと、真鍮の指輪が金の指輪のように す。 ビカビカ光りだした。指にはめてみたが大きすぎた。刃の部分に石 ふたたび暴かれた秘宝の山のところへ戻った。得体の知れない物天のかたまりがくつついている錆びて曲った鉤を手にとって目を近 で埋まり、かろうじて床板が見分けられるだけだった。ちょっと体づけた。その様子から判断すると現役時代にかなり不幸な目にあっ を動かすだけでもうもうと埃がまいあがる。 ているようたった。ひん曲った先端がひしやげていた。腹いせにこ スタンドを持ってきて洗面台のそばに置きスイッチを入れて振りの鉤に当り散らしたやつがいたらしい。すでに錆で腐蝕していた逆 ふち 返った。机の裏の壁面に、くもの巣がところどころロープぐらいの爪の縁は打撃に耐えてまだ残っていたが、指でふれると・ほろぼろに 太さの房になって、びっしりとたれさがっている。黄色くなった新こぼれてしまった。刃は壁の中のなにか固いものにぶつつかってな 聞紙をまるめて棒にすると、それで手あたりしだい払い落しだしまくらになってしまったらしい。柄は根元から外れ、刃はこ・ほれて た。体をかがめ、もうもうとまいあがる埃の中で息を殺してその仕ぎざぎざになっていた。一本だけ目立ってとびたしている歯にそっ 事に没頭したーー・つぎつぎと姿を現わした。カーテンの輪、ドアのと指を当てた。まるで鉤に同情しているような様子だった。 リング ー 02

7. SFマガジン 1977年4月号

深見弾 スタニスラフ・レム特集 レムの経歴や作品については、すでに出親父ぶりを発揮しているのかもしれない。 クラクフで出ているレム選集の一番新し ている『宇宙創世記ロポットの旅』や『泰レムは自分でタイプライターを打ちなが 、七六年に出た巻が最近とどいた。この ( 平ョンの航星日記』などのあとがきや解説ら原稿を書く。書きあげた原稿に手を加え "Suplement" となっている巻は、文字どお サイ・レメント に詳しいのでそちらを読んでいただくことまたそっくり打ち直す。またそれを推敲しり過去に出版された作品群の″追加″だ にし、ここでは彼の日ごろの仕事ぶりや創て始めからタイプで、という具合にその繰けが収録されている。『泰平ョンの航星日 ~ 作態度などから書きたい。 り返しを作品の長さにかかわらすどんな原記』、『宇宙創世紀ロポットの旅』、『宇宙 朝七時ごろから正午までの五時間を創作稿でも十回はやる。こうして出来あがった パイロット・。ヒルクスの物語』の追章がそ にあてているというから、彼は早起きで作品がすぐ出版社に渡されるわけではなれ。『航星日記』は、お読みになった読者 Ⅷ健康的な作家生活を送っている。午後は食 。そこでまたしばらく机の抽出しに入れならご存知たがそのまえがきでタラントガ 事のあと郵便物や、新聞雑誌など印刷物なておかれ、時間をおいて読み返し、納得がい教授がいっているように四ッ折り版で八十 どに目を通したり、仕事の打合せや問合せけば印刷にまわされる。レムは雑誌に載せ七巻もある未整理の日記の中からその極く などの電話をあちこちにかける。さてそれるものでも単行本にするものでも要するに一部が公刊されただけであるから、整理が から夜の時間は、と日本の作家なら一番創彼の表現を借りれば〈生のまま〉で原稿を済んたものが発表される可能性はあったわ ー作意欲にかられるらしい けた。今回この″追加″冫 こ含まれているの . 物渡すのがいやでそうしてい かんじんの部分が分らな るのだが、恐らくはそうしは、〈第八回〉、〈第二十一回〉および〈第二 。場末の飲屋へでかけ たくともそんなことを言っ十二回の旅〉である。恐らく今後もまだま るのか、クラクフ市の銀 だ公表される部分があると予想していい。 ておられない事情がある日 ( があるのな【 " 本の作家たちとは、おかれ『宇宙創世紀』にいたっては、日本語版が ら ) へ繰りだすのかその ている環境が根本的に違っ出る一九七三年の時点ですでに前章に当る 辺が明らかでない。 ているのかもしれない。だ イントロの部分と二回分の旅に相当する二 人息子と手作りの飛行機 . 繼第響「から雑誌に発表した作品が章の計五章、分量にしてほ・ほ日本語版の倍 ( 近ごろはロケットに切 Ⅷり替えたそうだが ) を組 諸洋融。当。「れ「 0 と」う一」とをしな」がら訳本割愛され」た。今回 " 追 立てるのが趣味たという すむ幸せな作家でもある。 加″された一章と併せて、とりあえず〈続〉 から、夜はあんがいししスタニスラフ・レム 編としてでも紹介されることが期待され っ 4 5

8. SFマガジン 1977年4月号

ー。フ。フレーヤーははたと思いついた。頭が急速に働 その瞬間、 時法規を読んで聞かせて、海軍にはいるように説得してくれ。この いて、あらゆる可能性を吟味している間、体の麻痺した人のように 間の遭遇戦で手不足になったところた」 「艦長はたいへん寛大な方で、われわれも見習わなければいけませじ 0 と掛けていた。そうだ、これはうまくいくかもしれない 彼は手のひらに拳を打ちつけ、そこではじめて気 や、うまくいくー んね。彼の船はどうしましようか , 「わたしが臨検する。本国政府の参考になるような、操縦法の原理づいたが、小さな乗り物は、考えごとをしている間に、向きを変え がめるかもしれないからな。舷梯をおろしてくれ、この目で見てていて、いまにもリダンダント号に突 0 込もうとしていた。手すり に、仰天した顔顔顔が並んでいる。手馴れた操作で、彼が動物 ( ま くる」 たは奴隷 ) に止まれと合図を送ったので、ポートと艦が接触した瞬 、、ーププレーヤーは、ガラスのキャ いろいろ探っているうちに / 間、ごくかすかにドシンと音がしただけだった。 ビンを動かす操作桿が見つかり、キャビンがするっと脇へ開くと、 彼はその下の操縦室へすばやく降りた。坐り心地のいい長椅子と向「ミスタ・シ、ラツ・フ」 「はい、艦長」 き合いに、奇妙なハンドルが一面についている操作盤があり、クリ 「 ( ンマーと、釘を六本、それに、それそれ時限二分の導火線とロ スタルのカバーの下に、いろいろなボタンや潜水装置が隠されてい 戸で明暗自在に ) が欲しい」 る。それは東洋のデカダンスの典型的な見本で、英国産の上質の樫 1 プの輪をつけた火薬樽を六本、と暗燈 ( で 「しかし、艦長・・・ーーどうなさるのですか」こんどばかりは、びつく 材を使ってもよさそうなところに、ごてごてと装飾がついており、 りしたシュラップが、すっかり言い付けを忘れて、艦長の命令に質 ポートを漕ぐ奴隷たちへ命令を伝えるための簡単な回転式の棒が一 引をした。 本ある。それともその。 ( ネルの向こうに何かの動物が隠されている卩 思いついた計略に、すっかり気を良くしていたハー。フ。フレーヤー のだろうか、どの操作桿かに触れたら深くこもった唸り声のような は、この急な馴れなれしさにも腹を立てなかった。実は、外が薄暗 音が聞こえた。これはきっと、ガレー船の漕ぎ手のような奴隷 くなってきて、顔の表情が隠せるのをいいことに、そっと微笑をも あるいは動物ーーーに、苦役の開始をつげる合図だったにちがいな 。その証拠に、この小さな乗り物はいま、かなりのス。ヒードで海らしさえした。 ー。フ。フレーヤ「決まってるじゃないかーー・艦が六隻いるから六樽だよ」と、いっ 面を走っている。波しぶきが操縦室にはいるので、ハ になく照れた調子で言った。「さあ、早くしろ」 ーは天蓋を閉めた。これはうまく出来ている。別のボタンは隠れた 掌砲長とその部下が手早く用意を終わり、六本の樽が吊り索で降 舵を傾がらせたにちがいなく、ポ 1 トは急に鼻先を突っ込んで沈み ー。フ。フ はじめ、海面が上がって、しまいにガラスの天井を洗うようになつろされた。それたけで狭苦しい操縦室はいつばいになり、 ( レーヤーの腰をおろす余地もろくに残らなかった。実のところ、 た。幸い、この乗り物はがんじように造られていて、水が漏らなか ンマーを置く場所もなくて、彼がくわえなければならなかった。 ったし、別のボタンを押すと、ポートはまた海面に浮き上がった。 5

9. SFマガジン 1977年4月号

本艦が沈むーーこれは避けられない事実だ。ネズミどもが、水兵板にぎちんと並べたりしながら、笑っていた。艦はますます沈んで たちのののしりや足踏のおどしを無視して、甲板を走り、海へ身を 投げている。前方のフランス艦隊は、すでに。ヒエフォー岬の、海岸 「死体運びをやめて、ポンプにつけ」と、彼は命じた。「さもない 砲台の援護をうけられる安全圏に行きついており、砲台の大きな口 と、食事は海の底でということになるそ」 をあいた大砲がすべて、リダンダント号に向けられて、このもろい 男たちはまたゲラゲラ笑って、そそくさと各自の仕事にもどっ 軍艦が射程距離にはいったら、火と死を吐き出すばかりになってい る。 彼らを喜ばせるのは造作なかったし、彼らの単純な生活が、ハー ー。フプレ 1 ー 「帆をおろす用意をしろ、ミスタ・シュラップ」と、 ププレーヤーはうらやましかった。仕事がきつくても、飲料水がま ャーは言い、それから全員に聞こえるように声を張りあげて、「あすくても、時には鞭に打たれても、彼らの生活は、指揮官という孤 の臆病なフランス人どもは、とうとう逃けきって、われわれの捕獲高の地位の、苦労多い生活よりはましだ。すべての決定は自分の責 賞金、百万ポンドをフィにしおった」 任において行なわねばならないし、彼のような病的で偏執的な性格 乗組員たちが一斉にウォーと咆えた。ラム酒を買えるポンド、シの男にとって、これは生き地獄のような生活だ。士官たちは、彼を リング、ペンスが、ラム酒のつぎに大好きな連中だ。そのわめき声ひどく嫌っており、そろって無能だ。シュラップさえ、忠実で辛抱 が、とっぜんちょん切られて、苦痛を訴える低いうめき声に変わっ強いシ = ラツ・フでさえ、それなりの欠陥がある。つまり六十の 知能しかなく、生い立ちが卑しいこともからんで、所詮は海軍少将 た。狙いのまずいフランス艦の砲弾で弱められていたメンマスト 以上に出世することができないのだ。今日一日のいろいろな出来事 が、苦しい作業をつづける乗組員の一団の上に倒れてきたのだ。 ーププレーヤーは狭い艦尾甲板で、神聖犯すべか ミスタ・シ = ラップ、われらが友ナポ公を考えながら、 「帆を降ろす必要はない、 らざる散歩をはじめたので、同じ甲板に居合わせた者はみな、右舷 ーププレーヤーは、 の奴隷どもが、もうやってくれていた」と、 たまさか飛ばして乗組員たちに人気のある冗談を、無理に飛ばしの邪にならないところによけて、ひとかたまりになった。一方へ た。こんなふうに自分の感情をいつわり、そんな手段で、目に一丁四歩、それから反対へ三歩半で、彼の膝が左舷カロネード砲に、ひ ーププレーヤーはそれを感じなか 字もない男たちに迎合して共感を呼・ほうとする自分が、いやでならどい音を立ててぶつかったが、 ( った。トランプに長けた彼の頭は、いまさまざまな考え事で渦を巻 ないが、艦の統制をとらねばならぬ義務がある。それに、冗談の一 いろいろな計画の評価と吟味をし、少しでもまと いているのだ つも飛ばさなければ、乗組員たちから、奴隷のようにこき使う、冷 酷な、向こう見すの上司だと、憎まれるだろう。もちろん、いまでもなところがあるものはしりそけ、異常で実行不可能なことばかり を考えている。だから彼が艦隊じゅうで″きつつきハー。ヒー″と呼ば も彼を憎んではいるが、憎みながらも彼らは笑った。 彼らは、もつれた索具を切り離したり、死体を引きずってきて甲れ、つねに敗北のとば口から勝利をむしり取り、つねにおびただし