いったいあなたがたのところはどうなってるんです。秩序もなにタラントガあやうく医者を殺してしまうところだったんたそ、き もまるで無いじゃありませんか。患者が院長の頭をなぐって着て みは。 いるものをはぎ取っているというのに、看護人も医者もみないっ〈来訪者〉じゃ殺ったんじゃなかったのか。てつきりくたばった たいどこにいたんです。え、なんだって。あなたに説教するつも とばかり思ってたが : りはない。ちがう。わたしはそんなことに興味はない。 ししカタラントガ殺るつもりたったのか。 、きみ、院長がたとえ十人死んでも、そういう言いかたをする〈来訪者〉まさか。しかし要するにそんなことは別に意味はあり もんじゃない、失敬する。 やしないだろ。だってプトレミズするかもしれんじゃないか。 タラントガなんたって、プト・ 受話器をおく 。・、ルコニーに面したドアが開いている。別荘は庭にか 〈来訪者〉そうさ。急にプトレミズするかもしれんだろ。それが こまれている。夜。通りは暗い。遠くに街灯の光。カーテンがふくら どうかしたのか。 む。反対側からプラインドもふくらむ。タラントガはゆっくり近づく が、全く物音がしない。・フラインドのうしろをのそく。つぎにカーテタラントガいや別に。約束はどうする。 ンのうしろ。部屋の中央に戻ると、暗闇の中から〈来訪者〉の姿が不〈来訪者〉約東だって。どんな。俺はなにも約束なんかした覚え 意に現われる。〈来訪者〉は教授のうしろに立つ。タラントガはふり 洋よ、ま 0 返って彼を見る。一瞬間合いがある。 タラントガじゃなぜここへ来たんだ。 〈来訪者〉 ( 全く別人の声で喋る。知性が劣り、集中力がなく、頭の回転〈来訪者〉ここしか知ってる所がなかったからさ。ノヴァクが俺 にここのアドレスを教えてくれたんさ。 がにぶいどちらかといえば間抜けな印象を与える。ごくありふれた平凡な 男の感じ。どこにでもいるスポーツファンにどことなく似ている ) タランタラントガノヴァクが。じゃ君は誰だ。 トガさん ? 〈来訪者〉ギッペルコルンだよ。トビアス・アムフイロン・ペレ タラントガわたしのことを忘れたのか。 アストル・ギッペルコルン。あんたの名前を聞いたときはうれし 〈来訪者〉助けてくれるんだって。あんたは俺を助けてくれるは かったな、だってあんたが俺を助けてくれるんだからな。 タラントガわたしの名前がきみとどんな関係があるんた。 タラントガなにを助けなきゃならんのだ。 〈来訪者〉それはどういう意味だ。あんたはタラントガだろ。だ 〈来訪者〉戻れるようにだよ : ったらタイム・マシンの発明者じゃないか。 タラントガオブレンツインへか。 タラントガそれもノヴァクから聞いたのか。 〈来訪者〉オ・フレンツインへだって。あの気狂い病院へ ? 俺を〈来訪者〉そこでなんでノヴァクの名前が出てくるんだ。誰だっ 馬鹿たと思っているな。俺はあそこからすらかってきたんたそ。 てあんたの名前は知ってるよ、子供たってね・ : 9
をだして手紙を書きました。わたしは十九歳の女性で、生れつき で処理してもらう。 プロンドの髪をしています。オフィスの同僚達は真珠のような歯 シャンコ ( 最初の手紙を開いて読む ) これは招待状です。開会式が : をしていると言います : : : 』 タラントガ屑かご。 シャンコ ( 手紙を屑かごに捨てる。次のを読む ) ムルシ郡フムロクスタラントガ屑かご。待ちたまえ、その裏側に書いてある数字はな んだね。 市があなたに名誉市民になっていただきたいという依頼状です。 シャンコこれは : : : 彼女が体の寸法を知らせてきたのです・ : タラントガ理由は。 : 屑かご行 ストとウエストとそれから : : : その : : : 8 9 : シャンコ先生の曾祖母にあたる方がそこの出だということですが。 きですね。 タラントガ父方の曾祖父の連れあいだった人かな。 タラントガそうそう、もちろんだ。つぎ。 シャンコ・しし 、え、母方の曾祖母になるかたです。 タラントガこちらへ置いてくれ ( デスクの上の書類入れを指す ) 。あシャンコ ( 読みあげる ) 『タイム・マシンの発明家であるタラント : これは少し狂っています、捨ててよろしいでしょ ガ教授殿』・ とで考えてみる。つぎ。 シャンコこれも招待状ですが、これは閉会式の : タラントガだめだ。先きを読みたまえ。 タラントガ屑かご。 シャンコ ( 手紙を捨てる。新しい手紙に目を通し ) ええと : シャンコ『あなたは実験を行なわれある現象にぶつかられました が、私は個人的にお会いしてその現象の本質を説明申しあげられ 私信ですが。 ます。残念ながら目下私はオ・フレンツインの精神病院にとじこめ タラントガかまわん、読んでくれ。 られています』・ : ・ : 中し上げたとおり、これは狂っていますよ : ( 読みあげる ) 『拝啓、教授殿。私は畑仕事をやっている ごくつまらない労働者ですが、日ごろから病気がちです。専領軍タラントガ先を続けたまえ。 『 : : : したがって何らかの口実をもうけてこちらへおい に左肺をだめにされたためです。身体障害者である私は貴様の著シャンコ でいただければ幸いですが、遠縁の親戚とでもしていただくのが 書が読みたいのです。貴様の著書か私にとって有駅であるのです が、買いもとめる金がありません。新愛なる教授ならご遠助いた 一番いいかと思います。この手紙は散歩のとき塀ごしに外へ投げ だけるものと思います。ご自費と思ってお送りください : ました。前にも五回そうしたのですが一通もお手許までとどかな かったようです。二、三週間のうちにこの病院を脱出する手をう タラントガ屑かご。詐欺師だ。そういう手合いは誰にでもそんな つつもりですが、そうして遅らせている間も刻々と危険が迫って 手紙を出す。つぎ。 ル・ノヴァク』 います。敬具。カジミー シャンコ『敬愛する先生へ。先生とわたしはまだ知り合いではあ りませんが、外国から帰られたという話を聞きましたので、勇気タラントガ日付は。 ・これは
タラントガきみがそういう人間たろうと思ったからきみを採用し たんだ。気狂いが、学者や発明家とどこが違うか知っているか。 シャンコ気狂いは病気だという点です。 タラントガ分りきったことを言うな。気狂いには、約東したこと を履行したり、予測したりする能力が欠け ているという点だ : : : 気狂いの発見はなん の価値もない。まあ様子を見ていよう。帰 今日はもう用はない。 タラントガは一人でロ笛を吹きながら鞄か ら書類を取りだす。戸棚のところへ行く。 コニャックのびんを出すとグラスに注い で、香りをかぎ、また中味をびんに戻し、 少し残念そうに栓をする。電話が鳴る。タ ラントガは受話器をとる。 タラントガタラントガです。ええ聞えま 0 リす。え、なんですって、失礼もう一度。 ( 間 ) いつですか。 ( 時計を見る ) それじや一 下時間半以上前ですね。なんですって。え え、そうです : : : しかし眠っていたんじゃ ないんですか。注射をしたんでしよう、彼 に。え、さつばり分らないんですって。そ れはこっちが言いたいことですよ。院長の 様子は ? ( 間 ) やれやれ。で、気がついた んですね。え、まだ昏睡状態だって。今、 なんと言いました。靴下がどうしたんで す。砂をつめて : : : さつばり意味が分ら ん。ええ、 しいでしよう。しかしそれがわたしにどんな関係があ るんですか。分りました。気をつけましよう。こっちへ現われた らもちろんお知らせします。 ( 間 ) 。ワルシャワ行きのバスに乗っ 3 たんですね。パジャマのままじゃないんですね ( 間 ) 。失礼たが、
タラントガきみがどこからやってきて、何者かということを話し〈来訪者〉それはどういう意味。 タラントガきみの国籍だよ。 てくれるだろな。 〈来訪者〉観光旅行で来たんだよ。来ちゃいけない理由でもある〈来訪者〉意味が分らんな。コクセ : : : なんだって。 タラントガきみがいつも生活している場所のことだ。どこなんだ。 のか。だれだって来るんだから。時航・ハスが高度をさげたとき、 〈来訪者〉そんな場所はないよ、ひとっ所にじっと暮しちゃいな 俺は馬鹿なことをやっちまったんだ。自分でも認めるよ。ちょっ いから。退屈だよ。あんたが言ってる意味が生れのことだった と跳びおりたんだ。そばをいい女が通りかかったもんでね。一目 ら、マグラ人だよ。 惚れさ。俺が跳びおりたのに気がついたやつはいなかった。女の あとをつけると石で出来た小屋みたいなもんがあって、女が立ちタラントガマグラというのは何た。 止ったんでさ「そく声をかけてみたんだ。すると女がキャー「て〈来訪者〉火星にあるそういうキプリアダのことだ。 悲鳴をあげてね。なんだか知らないけど人が駟けつけてきて、車タラントガさしあたりはそういうことにしておこう。い 0 たいそ こで何をやってたんだ。そしてどこからやって来たんだ。 がついた小屋に乗せられちまった : : : そしてあの気狂い病院にほ 〈来訪者〉別にたいしたことじゃないよ。ちょっとばかりメント うりこまれたってわけ。 をやってた。 タラントガ君は何年生れだ。 タラントガそれはどういう意味だね。 〈来訪者〉三千五百六十七年。 〈来訪者〉あんた、それを知らないの。 タラントガプトレミズというのはどういうことなんだ。 〈来訪者〉。フトレミズ ? さあね、よく知らないな。死人・ : ・ : っタラントガやってみせてくれないか。 やそれを屍生させるた〈来訪者〉 ( 部屋の中を見まわす ) そりやいいけど、ここには = シ まり死体があると、そいつが自分で : : : い ックがひとつもないからねえ。 めに。フトレミズするんだ。 タラントガニシックって何たね。 タラントガ蘇生させることか。 〈来訪者〉小型のニスだよ、持ち連びが出来るやっさ。 〈来訪者〉その意味が分らんよ。 タラントガ坐ろうじゃないか、え。順序だててなにもかも話してタラントガどんなことに使うんだね。 〈来訪者〉なんだって、きまってるたろ、メントのためだよ。俺 聞かせてくれないか。 はかュなり - ・しし 、成績をたしたんだ、一ア・フストリフに十七パルグ 坐る。 タラントガおおよそ見当がつけばいいんだ、そのニシックとやら 〈米訪者〉何から始めよう。 なしでそれをやってみせてくれないか。 タラントガごみはポーランド人か。
〈来訪者〉極く短期間で言葉をマスターすることぐらいぼくにとタラントガそれでなにをするつもりたね。 「てはなんでもないんです。お願いです、教授、なにかも 0 とも〈来訪者〉別だん悪いことをする訳ではありません。それから靴 3 らしい話を・ほくのために作ってくださいませんか。 下が片一方あるといいんですが。 タラントガ残念たが、そう簡単にでっちあげることはできんよ。 タラントガ片つぼうだけ ? 裏づけが必要だと言うんならロ裏を合せるぐらいのことはできる〈来訪者〉ええ。 が、しかしわたしは長いこと外国にいた。だから第三者の確証がタラントガなにに使うんだ。 いるたろうな。 〈来訪者〉今は申しあげられませんが、いただけるのでしたらお 〈来訪者〉おっしやる通りです。だったらどうしたらいいでしょ 礼はさせていたたきます。 う。この方にそれをやっていただけませんか : タラントガどうやってだ。 シャンコわたくしが。 〈来訪者〉この病院を抜けだしたらまず最初にお宅にうかがって タラントガだめだろうね、疑いをもたれるかもしれん。わたしの事実を : : : つまり、この世界の様子を一変させてしまう情報をお 助手がきみの同級生か協力者であ「たことにするのは = = = あやし教えします。靴下の片 0 ぼうの代償としてなら十分すぎると思い まれる可能性があるし、一度そういう作り話が見破られると、二 ますが。 度ときみに手を貸すことも、ここへ来ることもできなくなる。ほ タラントガそらやすりた。しかたがない、時と場合によっては冒 かになにかきみにしてやれることはないか。 険も必要だ。シャンコ君、靴下を脱いでくれるだろうね。 〈来訪者〉わかりません。・ほくの立場が信じられないほどやっか シャンコわたくしが脱がなきゃなりませんか。 いなことが、あなたには想像もっかないんでしよう、いわんや・ほタラントガ無理に、とは言「ていない、だがぜびそうしてもらい くは一人でなくて : タラントガ他の星から来た生物とか言う話は聞いた : シャンコでも片つぼうだけ靴下をはいてるんですか。 〈来訪者〉ああそのことですか。それはそのうちはっきりしまタラントガ両方とも脱いだっていいんたよ。 す。それとは全然別のことを考えていたんですが、今は説明する〈来訪者〉いそいでください、お願いですからいそいで。 つもりはありません。それを話せば、仮に二人がかりでなくても シャンコ、靴下を脱ぎ〈来訪者〉に渡す。受取った方はパジャマのポ まる一晩はかかりますから。今そこになにかやすりのようなもの ケットにそれを隠す。〈来訪者〉立ちあがる。 はお持ちじゃありませんか。 タラントガ爪やすりなら持っているが : タラントガそれ以上もう話してくれないんだね。 〈来訪者〉それをいただくわけにはいきませんか。 〈来訪者〉話せません。もうそろそろ持ちこたえられなくなって
きた感じです。たぶん彼が不意に現われてここで騒ぎを起すでし ようし : タラントガ彼とは ~ 謳のことだ。 〈来訪者〉ギッペルコルンです。 タラントガ何者だ、それは。 〈来訪者〉あとで教えます。足音がします、彼らが来ますよ。で はこれで。有難とうございました。約東は必す守ります、信じて ください、教授。 院長と看護人が登場。〈来訪者〉、突然ふたたび椅子に坐り、顔が痙攣 しだす。手で顔をおおうと、反乱を起した体の一部を無理やり押えっ けようとするみたいに、体をよじり、手でロをふさぐ。 タラントガわたしの甥はすこし神経がたかぶってるようだ。人に 会って興奮したんだ : : : お分りいただけると思います : 院長よく分ります、当然です。連れてお帰りになりますか。 タラントガそのつもりで来たんですが。 院長治療はまもなく終ると思います。治療の経過はあなたにお知 らせすべきでしようね。 タラントガわたしも今そのことをお願いしようと思ってたところ です。そうしていただけますか。 院長ええ、もちろんです。 ( 椅子の上でふるえている〈来訪者〉を見 て ) どうかしたのか、カジ、、 〈来訪者〉が奇妙な細くて低い声をだす。 〈来訪者〉な、なんでも : ・ : ただ : : : その : リだ、せ、せんせい 院長そうか、なるほど、シャックリか : ・・ : そうだ、シャックリだ . シャック タラントガの書斎。シャンコが書類の整理をしている。タラントガ登 場、すでにコートも帽子も脱いでいる。だが鞄はかかえたまま。それ をデスクの上に投げだす。 シャンコ教授、嫌なお知らせがあります。 タラントガなにかあったのか。 シャンコ一時間ほど前ですが、オプレンツインの病院のクシメー ヴィチ博士から電話がありました。例のあの : : : ノヴァクが自殺 をはかったそうです。 タラントガまさか シャンコ幸い、気づくのが早く、手首に怪我をしたたけですんた ようです。自分で切ったんです。 タラントガわたしがやったやすりでか。 シャンコそうです、教授。院長は疑っています。そうはっきり言 った訳ではありませんが、それとなく匂わせました : : : 我々が訪 問した直後にああいう危険なものをノヴァクがどこから手に入れ たか非常に驚いていましたよ。 タラントガほかになにか言っていたか。 シャンコ タラントガノヴァクの様子がどんな具合か、それは言わなかった 3 のか。 とも。失礼しました、教授、ではお送りします。 ( 看護人に小声で ) 彼を処置室へ連れていけ、どうやらちょっとショッ クをかける必 要がありそうだ : せんせい
タラントガ ( 立ちあがる ) ゃあ、カジクじゃないか。久しぶりたな。 〈来訪者〉時間がありませんから、さっそく本題に人ります。彼 お前のおじたよ、分るだろ。 らのチェック方法にたいして持ちこたえるだけの然るべき過去が 3 〈来訪者〉こんにちは : : : おじさん : : : 分ります、分ってますと どうしても考えだせないためにこの病院から出してもらえませ も、米ていたたいてとってもうれしいです : ・ ん、お分りいたたけますか。 タラントガうん、とてもすばらしいそ。院長先生、姪の息子とちタラントガそれだけじゃまだ不十分だよ。 よっと話をさせていただけますか。そうしてやれば彼のためにな〈来訪者〉ではもっとはっきり申しあげます。・ほくはここでの自 ると思うんですが : 分の過去が思いだせないんです。つまり・ほくにはそれが無いから ですが。今年は一九六二年ですね、そうですか。 院長どうそどうそ。当然ですとも。しかし残念ですが十五分しか 時間を差しあげられません、そのあと治療の時間になりますかタラントガそうだが : ら。あなたがただけにしておきますが、よろしいですね。私は大〈来訪者〉彼らがあのソス / ーヴェッの会計士の話にひっかかっ 部屋の患者を回診する時間ですので。 ( 声を落して ) 看護人をここ てくれるのを期待していたんです。でもうまくいかなかったの へ残しておかなくていいですか。 で、異星の生命の講演の話に乗り替えたんですがこれにも失敗し ました。だから今のところ手が無くて困ってるんです。 タラントガしし 、え結構です、何のためにですか。必要ありませ タラントガその会計士とか宇宙協会とかいう話はどこから仕入れ ん。礼を言います。 たんだね。 院長それでは失礼します。ュ 1 ゼフ、最初に六号室だ。石護婦は 〈来訪者〉もちろん新聞からです : : : 彼らが病状緩和と呼んでい 部屋へ行ってるんだね。 る状態になったふりをしはじめると、新聞を読ませてくれるよう 石護人今日の当直はアンナです。 になりましたからさっそく覚えこんだという訳です。・ほくはこの 院長では失礼。 世界で暮したことも存在したこともない以上、ここに存在してい 隊長、石護人と退場。しばらく沈黙がつづく。 て働いていたことはないんですから、ポーランドはおろかこの世 タラントガさて、話とやらをうかがおうか。 界のどこであろうとどこかで働いていた証拠を見せられるはすが 〈来訪者〉おいでくださって感謝しています。わざわざここまで ありません : おいでいただけたということは、ぼくのことを気狂いだと思ってタラントガいったいどこからやってきたんた。 おられない証拠ですね、そう考えていいですか。 〈来訪者〉もしあなたがタラントガ教授だったら : : : あなたは本 タラントガたしかにそういう言いかたもできる。しかします話を 当にタラントガ教授なんでしようね。 聞かせてもらおう。 タラントガ身分証明書を提示しなきゃならんのかな。
は今では俺も知っている。連中は全部気が狂ってしまったんだと タラントガじゃ裸で娘を追っかけてくどくつもりだったのか。き み達の習慣はすいぶん変ってるな。 思うよ。 〈来訪者〉おかしいかい。素裸たったわけじゃない。あそこはちタラントガ医者達がか。 ゃんと大きな葉っぱがくつついた枝で隠してたんだ。 〈来訪者〉うん、そうだ。でも最初のうちだけだ。ノヴァクが、連 タラントガそんな服装でくどけると思ったのか。 中は俺達が知ってることを何も知らんのたと教えてくれたから。 〈来訪者〉あの娘たってほとんど何も着ていなかったぜ。包帯みタラントガそれでどうしたんだ。 たいなちっちゃな布切れをふたつつけていたたけた。正直に本当〈来訪者〉ノヴァクに話をさせてやったよ。俺は見ていたが彼の 方が俺より話のしかたがうまい。それはたしかた、彼は、俺もナ のことを言うと、実は・ しいよ、笑ったって : : : 俺はてつきり ンも、それにグレャも存在しない、要するになにもいなくて、彼 穴居時代だと思ったもんだから : : : 俺達はその時代へ行くことに は : ・・ : あの会・ : ・ : なんとか、なんと言ったかな、ここのソス / ヴ なってたんだが、ここで一時停車したらしい。どうして俺にそん ェッのカケイシとかなんとかそんなもんだというふりをしたんだ なことが分る。外を見たら、広い草原はあるし、遠くに海か川み : ところが連中はすぐそれを納得してくれたが、俺達を出しち たいなものがあるし、若い女がこっちへやって来る : やくれなかった。 タラントガその話は何度も聞いた。つまりきみはギッペルコルン タラントガ俺達たって。するときみ達は二人いるんだな。 なんたな。 〈来訪者〉あたりまえじゃないか。俺とノヴァク、だから二人 〈来訪者〉そうだ。 だ。それからナンもだ。あの若い女が歩いてるとき乗り替えをや タラントガじゃ、ノヴァクはどこにいる。 つがしたことが不幸だったといえば不幸だ : 〈来訪者〉眠っている。注射を打たれたんでね。 タラントガああそうたったな。それで、きみが病院へ入れられてタラントガ ( 彼に時計を見せて ) 今何時だ。 〈来訪者〉二七時四九分。なぜそんなものを俺に見せるんだ。そ から何があったんた。 れは何だい。 〈来訪者〉俺の本意しゃないけど、俺のせいで危険が迫っている 話を彼らにしてやった : : : 乗り替えるときナンがここへ入りこんタラントガ時計だ。きみたちは何で時間を知るんだ。 だかもしれんのだ。ナンが一匹いれば百匹になるし、百匹いれ〈来訪者〉あんた時間を聞いたんだろ、え。だから言ったんじゃ 十 / し、カ ば、もうグレヤがいる。そいつのせいで世界的規模の惨事が起る かもしれん : : : 連中は俺に、なにもかもうまくいく、ナンを入れタラントガ今何時かということがどうして分るんた。 やしないし、グレヤはまだ広がっていないと言って、俺をあの箱〈来訪者〉頭痛がするとき、それをどうやって知る ? 感じるん の中へとしこめてしまった : : : その箱が部屋と言われていること だろ。あんた達は時間を感じないのか。
タラントガ感じないね。それできみ達はどうやって感じるんだ、 ってたころの話だろ。そんなもの今は博物館に錆だらけになって 何で。 並んでるだけだ。人工体は人間と同しもんで出来ていて、違いと 4 〈来訪者〉頭さ。どうなっているのかそんなことは知らん。生れ いえば、やつらに血がないことだけだ。だから俺が人間たとやっ たときから誰だってそうだ。あんた達のところじゃそうじゃない らに思わせるために自分で切ったんだ。 / ヴァクはいやがった んだな。 が、言いまかしてやった。だらだらといつまでたってもらちが明 タラントガきみたちの一昼夜は何時間た。 かないのにひどく腹が立ったんだ。注射器を持って連中がやって 〈来訪者〉三十時間だ。火星の一昼夜たよ。 きたのでノヴァクを放免してやって連中にあいつに注射させてや タラントガじやきみは火星からやってきたのか。 ったんた。ちょっとしたもんだろ、え。それであいつが眠りこん 〈来訪者〉さっきも言ったろ、俺はマグラ人だ。俺のキプリアダ でしまったので、俺は起きあがってパジャマのポケットに靴下が は火星の小シルチスにある。俺はそこにパシケルをふたっ持 0 て片 0 ぼう入 0 ていたからそれに砂をつめて廊下を歩いていると、 入口のところでばったりあの、そらなんて言ったけ、あれに会っ タラントガきみ、手をどうかしたのか。 ( 〈来訪者〉は手に包帯をまい たんだ : ・ ている ) タラントガ医者だろ。なんてことだ。それできみは彼の頭をぶん 〈来訪者〉ああこれ。けがをしたんた。わざと自分でやったんだ。 なぐったってわけだな : ・ タラントガなんのために。 〈来訪者〉そういうこと。そして服を着替えた。ほかにどうしょ 〈来訪者〉実はこういう訳た。今朝俺はノヴァクと暄嘩した。俺うもなかった。分るだろ。 はやつを信用して、やりたいようにやらせてや 0 た。ところが見タラントガしようがない、や 0 てしま 0 たんだから。例のナンの ていると時間ばっかり喰って何も起らんし、俺達はとじこめられ ことをもう少し話してくれないか。連中はどこから来たんだ。 つばなしだ。そこで俺は、連中に俺のことを人工体だと思いこま〈来訪者〉知らないよ。 せてやろうと思いついた。 タラントガ人間に似ているのか。 タラントガそれは何だ。 〈来訪者〉何を言ってるんだ。ちつぼけなやつらだそ。 〈来訪者〉模造体のことだ。あんた達は知らんだろ。俺はあんたタラントガで、連中が現われたのはいつなんだ。 達のところで見たことがないもんな。買うときは、《サイバナク〈来訪者〉知るもんか、俺はナノ 0 ジストじゃないよ、中し訳な を一台くれ》と言うが、《人工体》という言いかたが普通だ。 いが。やつらはいつもグウールするためにスコプで走りまわって タラントガロポットのことか。 いる。人間を避けるのに懸命なんだ、ちょっと触るたけで、パチ 〈来訪者〉ロポット ? ロポットか、ありや古いよ。まだ鉄で作 ンだから。
の乗ってきた時航・ハスはまだここにいると思うかい : : たぶんグ話してくれたのをたまたま記憶しているだけだが、ナニシム科、 レヤが入りこまんように時間吸収パリャーを閉めてしまったと思 アムフォテリヤ族、エウトリホスポリジャ目で繊毛種と哺乳種に 4 うが、せめて隙間ぐらい残しておいてくれたかもしれん。どうだ 分類される。繊毛種のほうはまた我慢できるが、哺乳種のほうだ ろう。 よ、とんでもないやっかいもんは。 タラトンガ隙間って、どんな。 タラントガで、そいつらは何をやるんた。 〈来訪者〉跡さ。時間航跡のことだよ。イゾクロンとかなんとか〈来訪者〉時と場合によるが、ふだんはなにもしないでじっと見 そんな名前たった : : : 覚えてないな。科学とか技術とかに全然興ているだけだ。こっちが頼みもしないのにでしやばってくる。た 味がなかったんでね。畜生、えらいことになったそ、困った。俺が一番しまつに負えんのがやつらのあの膏薬だ ~ グレャって言う の再生をやってる感しがする。 んたが、まるでタールみたいにべたべたしてやがって、人間にえ タラントガなにをやってるって。 らく興味をもっている。まったくかなわんよ。アルポレアリウム・ に全部返しちまえばいいんだ。 〈来訪者〉うん、四週間俺が生命徴候をださないと再生されるん だよ。ペリルダがきっとまたやつを追っかけるにちがいない : タラントガそれは何だい。 タラントガそれは誰のことだ。 〈来訪者〉何って、グレヤのことか。うん、グレャってのは : 〈来訪者〉女房だよ。 そいっからペーストを作る。 タラントガああ、女性のことか。 タラントガペースト ? ・ 〈来訪者〉いや、女しゃない、女性体た。ただ、女と言うだけじゃ〈来訪者〉そう。俺達のところじやほとんど何でもペーストから 意味が違う。 物を作る。 ( 電灯を指して ) ああいうもんは俺達にはないよ。 タラントガどこか違いがあるのか。 タラントガじゃ何があるんだ。 〈来訪者〉それはどういう意味たーー違いがあるかとは。きまっ 〈来訪者〉ペーストさ。こんな子供の歌があるくらいだ。《ペー てるじゃないか、俺は正真正銘の男性体だ、違うかい。 ストさんは明るいな、。ヘーストさんはあったかいな、ペーストさ タラントガもういい分った。子供はあるのか。 んはあたい達のお友達》壁も着る物もそれで作れる : : : あんた達 〈来訪者〉いやまただ。だがまもなく指定されるはずだ。 のところにはペーストが無いのか。グレヤがいないから当然ない タラントガ指定 ? さつばり分らん、ところでさっききみが一 = ロっ だろうな。 ていたナンというのは、あれは何たね。 タラントガところでこっちへ着いたとき、何を着ていたんだ。 〈来訪者〉ナン ? ああ、それは知性体のことた。知性体つてい 〈来訪者〉なんにも着ていなかった。服を着てちや時航・ハスから うのは、ナンかクレッペルだが、ナンのほうが多い。ノヴァクが外へ出られんのだ。全部ぬがなきゃならなかったんだ :