一人 - みる会図書館


検索対象: SFマガジン 1977年4月号
232件見つかりました。

1. SFマガジン 1977年4月号

階段は曲りくねって、二階へと続いていた。カーリーは一度に三 ガナスス人は、その無表情な凍りついたような顔に、奇妙な恐怖 段ずっとびあがって、階段を昇っていった。下方かすかに、巨大なを浮べて、わけのわからないことを口ばしった。カーリーは残忍な 2 ゴングが乱打される音がきこえる。警鐘た。だが悪魔の怒りは、血笑いを浮べて、剣でそいつを突く。 潮に火と燃え、氷の冷静さをもそなえてくる。 「サテイだ ! 」彼は性急に言った。「ライヴァンのサテイだ ! 」 もう一人の召使いは、ロをポカンと開けて、彼をみていた。カー ぶるぶる震えながら、召使いは案内した。カーリーは、もっと早 リ 1 はたくましい手でそいつをつかまえ、咽喉もとに剣の刃をあてく歩くよう手荒に召使いをせきたてた。二人はもう一続きの階段を こ 0 上り、毛皮や綴織などがふんだんにぶらさがっている広間を通り抜 「サテイだ」彼は唸るようにいった。「サティは ライヴァンのけた。従僕がポカンとした顔で二人をみている傍を通りすぎる。な ん人かが走った。畜生、奴らはありったけのガナスス人をひきつれ

2. SFマガジン 1977年4月号

ように彼をみつけ出すことができるだろう。 カーリーはゆっくりと立ち上り、距離を目測した。哨兵が一人、 どうしよう ? ・とうしよう ? ・ 片手に槍を持って傍に立っている。ほかの男たちは、キャンプのあ 2 2 ちこちにちらばっていたり、火の傍で体をまるめていたりしてい 道をゆくとき、彼は後手にしばられ、足首をひもであぶみにくく りつけられている。そして彼の馬の手綱は、ほかの男の鞍の鞍がしる。馬はひとかたまりの黒い影となって、キャン。フの端のほうにい らのところへ結びつけられてあるのだ。とても逃けるチャンスはな ことわり い。だが、寝た後は起きあがるのが理た。 カーリーは、いちばん近くにいた男から槍をもぎとり、・フーツを 彼は、眠りながら寝返りを打つようにみせかけて、静かにしてい はいた片足で、男の腹を蹴りつけた。そしてとりあげた武器を、も るサティの傍へ近づいた。唇が皮の寝袋に触れた。これが彼女の顔のすごい勢いでふりまわし、重い石突きをもう一人の男の顎にぶち ならいいのに、と思った。 当て、その頭を三人目の男の咽喉にぶつつけた。敵を刺しながら 「サティ」彼はできるたけ声をひそめて、呼びかけた。「サティ、 も、彼はすばやく突進の姿勢をとった。 動かないで、・ほくの言うことをきいてくれ」 一人のガナスス人が大声をあげて、彼に向って槍を投げようとし 「わかったわ」風と寒さの下をくぐりぬけて、彼女の声が返ってきた。サティが槍の柄にとびつき、槍をひきずりおろした。カーリー た。「わかったわ、あなた」 は馬の群へ向って、いっさんにかけていった。 「起きるときに、逃けようと思う。できたらカを貸してください。 そこには、哨兵が二人いた。一人が刀を抜いて北部人にきりかか だけど絶対に危いまねをして、怪我などしないようにね。二人そろってくる。鋭い刃が重い長衣をきり裂き、下着を通して、肩にきり ってうまく逃げられるとは思わない。だけど、ガナススでぼくを待つけた だがそんなにひどくはない。その男のみているま下か っていてほしい ! 」 ら、拳を突き出して、顎に痛烈なパンチを見舞った。武器をひっ 彼女は長いこと黙っていた。やがて、「そうするといいわ、カー むと、彼は身をひるがえして、もう一人の男に切りつけ、その兵隊 リ . 1 ー どんなことがあっても、あなたを愛していてよ」 の斧をたたき落とし、顔をななめに切った。 キャン。フこ 彼もこれに応えるべきであったが、言葉が咽喉につまって出てこ 冫いた兵隊どもが、彼めがけて突進してくる。カーリー よい。彼はまた転ってもとへ戻り、ただじっとしていたが、やがては身をかがめて、すぐ傍にいた馬の脚を縛ってあるなわを切った。 眠った。 鞍のない馬の背にとび乗ったとき、彼のまわりに雨のように槍が降 槍の石突きで脇腹を突っつかれて、彼は目を醒ました。一つ大きってきた。左手をたてがみの中へ入れてギ = ッとひねり、恐れをな くあくびをして起きあがり、寝袋のひもをゆるめた。全身の筋肉がしている馬の脇腹を蹴って、逃げた。 緊張していた。 ガナスス人が二人、行手にたちはだかる。彼は馬の背に低く体を 「この旅がすんだら、町へ入る」モングクが言った。 かがめて、刀の先で拍車をかけた。二人の上におどりかかるように こ 0

3. SFマガジン 1977年4月号

~ ノ 7 / 第 巨大宇宙船の中に敵がいた / 行方不明になったドランカドの 乗客の一人、宇宙船のシステムに 組みこまれた教育に耐えることが できた三人のうち」叺 1 太陽系 でもっとも秀れた総合科学者の一 人といわれたナイボンガ博士であ る ドランカドが巨大宇宙船に進入 してきた時、巨大船舶の頭脳は当 然、その乗員を支配者と判断した。 そこで頭脳は彼ら全員にこれまで の成果を報告ーー教育したのであ るだが、その情報量はあまりに も膨大であった。しかもその「教 育」は支配者の体力を想定したカ リキュラムで行なわれたのだ。 それが並の人間に耐えられるは すはない。ある者はショックで死 に、ある者は発狂した。そして残 ったのはシンタニ、マッケン、ナ イボンガの三人だけであった。 ナイボンガは人類の征服、宇宙 の支配者を夢みた。誇大妄想では ない。それだけの力を得たのだ。 シンタニとマッケンはやむを得ず ナイボンガに同調した。同じ教育 を受けたとはいえ、もともとシン タニは超心理学者、マッケンは波 動物理学者である総合科学者の 訓練とあの知識が結びついては太 ニ人はナ 刀打ちのしようがない イボンガの野望をうち砕ける人問 がくるのを期待した。グランドマ ークがやってくるのを :

4. SFマガジン 1977年4月号

ヴァクです。上級タイム・ゴーグル . 住 7 で のスペースが小さく、一人で一昼夜二十四時間勤務に就かなけれ タラントガそれはどういう意味だ。ギッペルコルンはどこだ。 ばならなかった星間宇宙船で採用されました。つまりこうです。 5 〈来訪者〉あの馬鹿者のことですか。彼が言わなかったですか。 一人の脳に二人の人格をつめこんで、一人が休んたり眠ったりし 頭が割れるように痛、 ・ : なんかいまいましい注射をうたれまし ている間、もう一人が当直に立つのです。そのご、そういう措置 てね : : : 何をおたすねでしたつけ。いや、くり返されなくても結 がほどこされるのは、勤務濃縮の目的のためだけではなくなりま 構です、分っています。あいつは狂ってます。院長を襲ったんで したから、個人的に体から体へ移れるようになるとその可能性は す。ぼくにはとめられなかった。てつきり殺してしまうと思った うんと広くなりました。たとえば、ある社会にあきたり、背が低 んですが : く、プロンドの髪でいるのがいやになり、肩幅が広い褐色の髪に タラントガやつは、院長をプトレミズするとか言ってたが : なりたいとか : : : あるいは若いときみたいに無鉄砲なことがまた 〈来訪者〉どうしようもない馬鹿た。あの馬鹿には、。フトレミズ やりたくなったとします : : : そういう場合は、。フランフォス日マ が発明されるのは二六八三年になってからだということが分って ルジ・ ( ニ装置でその人間の神経組織をそっくり他人の脳の支配領 ないんです。どうかもう絶対に彼とは話をしないでくださいませ域に移し変えるわけです。ただしひとつだけ制約があります、つ んか。あの男は低能です。どうして彼があんなふうにぼくを繋げ まり二人は同性でなければなりません。男と男、女と女というふ たのか理解できない : うに。つまり、ぼくはギッペルコルンが乗っていた穴居時代の観 タラントガなんたって、すまんがもう一度言ってくれ。 光旅行にむかう時航パスの六級タイム・ゴグルなんです、言うな 〈来訪者〉いまになにもかもお分りいたたけます。・ほくは男では れば、だったわけですが、・ほくが勤務明けで眠っている間に、あ ありません、教授。男性体なんです。男性体というのは、異った の低能児は海水着の女を見てマシンから跳びたしてしまったんで 無関係の個人を少なくとも二人、体内に持っている人間のことをす。 いいます。 タラントガなるほど、だんだん分りかけてきたそ。 タラントガ何の話をしてるんた、きみは。 〈来訪者〉彼はグラブソドルのことをあなたに話しましたか。 〈来訪者〉どうかぼくの話をよく聞いてくたさい。人間の頭脳はタラントガいし ほとんど完全にたがいに独立した二個の半球から出来ているとい 〈来訪者〉彼は長い時間ここにいましたか。 うことはご存知ですね。アルチバルド・プランフォスが二九八九タラントガ一時間ぐらいだが : 年に一人の人間の脳の中に異「たふたりの人格を入れる可能性を〈来訪者〉あの男がどうすることもできない低能だといったの 発見しました。最初は、経済的な面からたけでそれが行なわれた は、どうやら間違いなさそうですよ。一番かんじんなことなんで ということは理解していただけますね。たとえば、乗組員のためすからね、グラブソドルというのは。教授、それは、・ほくが脱い

5. SFマガジン 1977年4月号

は両手をあげて、そこへとりついた。 「おいで ! 」彼は声をはげました。「いっ背後から敵がやってくる豪華な調度品のある一続きの部屋が、暗くひっそりと目の前にあ かもしれないんだ」 った。彼は獲物を探す動物のように、左右を見まわしながら、第一 「どうするの ? 」と彼女はつぶやいた。「なにをしようというのの部屋を通り抜け、次の部屋へ入っていった。 ョ 1 ナンとモングクだ。 男が二人、立って話していた 、ハッとして体を凍りつかせた。血にまみれ、 「笛をとり返すんた ! 」彼は唸った。・フロイナの悪魔の血が、また 二人は彼をみると 騒ぎだす。「あの笛を手に入れて、奴らを減・ほすんだ。ほかに手は煙でまっ黒になり、その目は狂暴なつめたい青い光を放って、まこ ない」 とに恐ろしい姿である。彼はニャリと笑った。煤だらけの顔に、白 二人は扉を通って、狭い階段を降り、宮殿の四階へ達した。 い歯がキラリと光った。彼は剣を抜きはなって、つかっかと前へ出 こここへた。 サティは、がらんとした広間を見まわした。「ここ、 「そうか、来たのか」モングクが静かに言った。 来たことがあるわ」彼女は冷静に言った。その声は耳に快い。「え 「そうだ。ャローンの笛は、どこにある ? 」 1 とーーーそうだわ。たしかこっちたと思うわーーー」二人はほら穴の ョ 1 ナンは、ベルトの剣を抜いて、突き出した。「わたしがこい ような長い廊下をかけて言った。彼女はさらに言葉を続けた。「こ こでは、すいぶんていねいに扱ってくれるわ。わたしは捕虜たけど、つをかたづけましよう、殿下。あなたのために、八ッ裂きにしてお ほんとうに敬意をもってね。でも、ああ、カーリー、またあなたにめにかけます」 カーリーは前へ進み出て、剣を合わせた。二人はサッと弧を描い 会えるなんて、太陽の光みたいだわ ! 」 彼は立ち止って、短いキスをした。これから先、こんなことがでて、とんだ。脚をこわばらせ、油断なく身構えて、きっかけをうか きるチャンスはあるだろうか、ますあり得ないだろうな。だが、彼がった。ここには、死があった。サティは、この二人のうちの片方 だけが、この部屋を出ることになるということを、確実にってい 女は、困難な道を行くのには、さそいい道連れになることだろう。 二人は大きな控え室へ入っていった。カーリーは、たった一つ残た。 と後退する。この ヨーナンが突っこんできた。カーリーは、。、ツ されている武器の剣を抜いたが、そこには人がいる気配はなかっ た。王の衛兵たちはみんな、彼を探しに外へ出ているのだろう。彼将校のほうが、北部の長い刀身に馴れているカーリーより、短剣の さばきは上手であった。カーリーは、敵のきっ先をかわすと、サッ は狼のように歯をむいて、次の扉へとっき進んだ。 「カーリー 入ると剣をさげた。ヨーナンはそれをかわす。それからは、剣の打ち合 」サティが彼に身をすり寄せた。「カーリー、 7 いに、ぶつかりあい、突きと、剣の音、剣のひらめきの中に、二人 2 の ? 死ぬかもしれなくてよ ? 」 は縦横無尽に動きまわった。剣の空を切る音、戦っている男たちの 「いつでもそうさ」そっけなく言って、彼は扉を勢いよく開けた。

6. SFマガジン 1977年4月号

馬をはねさせ、一人に切りつける。そいつが悲鳴をあげて倒れるのい硫黄の匂いがこもっていた。その火は、雪原に輝くつめたい月の がみえた。もう一人は、ほうほうの態で、彼の向うみずな攻撃の手光と星あかりに、血の色を添えていた。 からのがれた。 市の中央門に到るハイウ = イが通っていて、燃えるような目をし た〈闇の国〉の人が往き来していた。カーリーは群集の中を、まっ 「ハイーー・アー ! 」カーリーはかけ声をかけた。 北の方にぼんやりと姿をみせている黒い丘の陰をめざして、彼はすぐに進んで、町に近づいていった。 彼は、中心地から離れた民家で失敬してきた、この地方の人たち 石のような氷原を駆けていった。槍や矢が唸りをたてて追いかけて くる。かすかに人の叫び声がきこえて、後を追ってくる蹄の音がしが着るごくありふれた毛皮と皮の服を着ていた。毛皮のジャケット についているフードを目深かにおろして、異国人の顔つきを隠し 彼は敵地のまっただ中で、孤立無援であった。半マイルと先が見た。大ていの人がそうであるように、彼も腰に剣吊りのベルトをし えない、凍てつくような寒冷の地で、飢えと剣しかない地で、彼はめ、武装をしていたし、それにひっそりと、落ち着いて歩いていた から、その姿に目をとめる人はいなかった。 一人・ほっちであった。敵は後を追ってくる。それから逃れきるに は、キロ】ンで覚えた狩人としての技が、行軍のうちに教えられた万一みつかって、大声をあげられたら、この追跡は一巻の終りと なる。 戦士としての術策が、ものを言うのである。うまく逃げ果せたらー ーガナススへ行くのだ ! 飢えと寒さに身を震わせ、よくみえないながらもみつけることの 出来た動物をつかまえ、ガナススの追手がいまだに追跡を続けてい る中で、荒れた丘の中を走り、身を隠してなん日も明け暮れするー 7 ーすべてが徒労に終るかもしれないのだ。彼は死ぬかもしれない。 しっしか異国 そしてサティはいまわしい人質となり、キローンは、、 永遠に輝き続けている星にとどこうとして、石の指をのばしてい るような町が、目の前にお・ほろにみえてきた。それは黒い石ででき人たちの住み家になってしまうかもしれないのだ。 た町であった。山のような壁が、せまい街路やみすほらしい家々を とにかく、追手をまいてしまわなければならない、と彼は思っ とりまいている。夜の都市、暗黒の都市だ。カーリーは身震いし た。小高い丘の間を歩きまわってみても、以前に彼らを一掃した兵 隊たちの影はみえない。そこで、彼は無謀な、望みなき使命のため 町の背後には、山が聳え、その黒い影を凍てついた暗い空に、い に、ひたすら町へと向って進んでいった。 っそう黒く浮きたたせている。それは火山であった。火口から赤い まったく一 = ロ葉の通じない敵の砦の、いちばん奥深いところにいる 炎が、身を切るようなつめたい風の中でゆらめいている。火の粉と女と武器とを求めていくとはーー・・神もお笑いになっていることだろ盟 煙が、ガナススの町の上空に流れていく。つめたい空気の中に、熱う !

7. SFマガジン 1977年4月号

ーの刀の鍔を打ち落した。 て、おれの汽根っこをとりおさえに来るだろうー 閉じた扉の前に、哨兵が一人立っていた。召使いが一つの入口を 指さすと、カーリーは召使いを殴り倒し、あらたな邪魔者に向って 走っていった。哨兵は悲鳴をあげて、槍を投げた。 カーリー の柄の長い武器が突き出された。お互いに急所を探しな〈薄明の国〉の男は自分の武器を捨て、両手で敵の武器の柄をん で、ひねった。ガナスス人は、必死の形相でしがみついている。カ がら、差しちがえた格好である。哨兵は胴鎧を着けており、カーリ 1 ーリ・ 1 ー は、ぐいと敵に近づいた。そして突然、柄を離し、敵の上に 2 ーのきっ先は、金属を擦って外れた。そこですかさず左腕に、激し かぶさるように倒れこみ、〈闇の国〉の男の剣を抜いた。短い刃が く切りつけた。ガナスス人はもちこたえ、槍をふりまわして、カー ら第 , 第き . ド , 詩・ : ゞ

8. SFマガジン 1977年4月号

にしろ体重がトランクほどもなかったので、いつも例外扱いされた使っているテレタイプだということでした。コードを持ちあげたと のです。 き、テレタイプが受信をはじめる前からすでにこうなっていたんで ティスプレイには最後の記事を組みこむばかりになった白い長方はないだろうかとふと思いました。そんなとほうもない馬鹿げた話 形の空欄をあけた一面の整版がうつっていました。イランとの通信があるわけはありません。それはそうでしよう、テレタイプと接続 していないでコンビュ 1 ターにニュースがインブットされるはずが はいぜんとして途絶えたままでした。数台のテレタイプがいっせい に打ち出しはじめましたが、その音を聞いただけですぐに私はそれありませんから、ゆっくりとテレタイプに近づくと、電文を打ち出 がトルコからの入電だとわかりました。それは無意識に身についたした用紙をちぎってそれに目を近づけました。どこか少し違ってい 習性のなせるわざでした。テレタイプが入ると同時にディスプレイるように思えましたが、なにしろいつもその時間になると疲れて頭 に文字が現われるはずなのに意外なことに空欄は白地のままでしの回転がにぶくなっているものですから、記憶に自信がありません た。しかしその間合いは一秒ないしは二秒でしかありませんでしでした。私はコンビ、ーターにもう一度スイッチを入れました。第 一面をたしかめてみたかったからです。両方の内容をくらべてみま た。電文が全文そっくり現われましたが、ひどく短いものでした。 テキスト した。違いが見つかりました、しかしそれはたいしたことではあり それを読んでびつくりしました。今でもその文章をよくおぼえてい ません。テレタイ。フが送ってきた原稿の内容は ます。見出しはできていました。その下に本文がつづきました。 〈シェラ・ ドで連続して二回、 〈現地時間の十時から十一時の間にシェラ・ハ ハードにおいて現地時間十時から十一時の間にマグニチュ ード七と八の地震が二度発生。町は廃墟となった。犠牲者の数は千マグニチ「一ード七と八の地震があった。町は完全に崩壊。儀牲者の 人を数え、負傷者は六千人〉 数は五百人をこえ、負傷者は六千人〉 ムこよこれをどう考え、どうしていいものやらさつばり分らす、 ベルが鳴りました。ちょうど三時。印刷所が私を呼んでいる合図不冫。 でした。本文があんまりあっさりしすぎていて余白ができていたのディスプレイと用紙に目を往復させて立ちつくしていました。本文 で、どうでもいい文句を二つばかり本文の中に突っこんでおいてかの意味はどちらも似たりよったりで、本質的な違いがあるのは犠牲 らキーを押し、印刷所に仕上った整版を送りたしました。あちらで者の数だけです。アンカラが知らせてきた数は五百ですが、コンビ は自植字機に直接つながっていて、版を組み輪転機にかかるように ューターはそれを二倍している。新聞記者の習慣で私は反射的に印 なっています。 刷所に電話を人れました。ライノタイプの当直だったレングホーン 私のやる仕事は終りました。立ち上って伸びをすると、火の消えに私は言いました。 たパイプにマッチを近づけました。そのとき床をはっているコ 1 ド 「いいか聞いてくれ、イランのニュースにミスがあった。一面の第 が目につきました。コンセントからはずれている。アンカラとつな三欄、最後の行だ。そこの千という数字を : ・ : ・」 がっているテレタイ。フのコ 1 ドでした。ということはロジャ 1 スが その瞬間でした、トルコからのテレタイプがまた打ちだしはじめ 5

9. SFマガジン 1977年4月号

き流れの果に』がすごく好きです。長編がきらいです。ややこしいストーリイになると楽しむ前ー こめられるわけじゃなし。まあ、平和に手をとりあ という人もいるけれど読みごたえがあって好きでヒステリカルになっていまい「もう知らんワ、好ってみんなでについて考えるときに性別はい す。熱中して、捶眠時間がけずられるのが玉にききにしてくれ、オレの手には負えん」と投げ出しらない。そうなのだ。要はを読む人かどうか といささか なのだし。 と・フツ・フッっふやき、今日も一日 ずだけど。睡眠不足は美容の敵だもんね。それでてしまう。だめたな、オレって。 はまた次の機会に : 無事だったと、タメ息をつくのであります。 自己嫌悪の気味だったオレの頭に妹がラ・ヒット・ ( 喇福井県鯖圧市桜町二目一の二九松島淳 ) パンチを食らわせた。先日、ポケ 1 ッと『ムーミ ( 繝京都市東山区今熊野北日吉町葺錦華寮 「ねえ『ジゴクへン』って誰が書いた本 ? 」と聞 こんにちは。二月号の越阪部氏の同類項の読者く。「ん ? ああ、ありや平井和正た『人狼地獄アニメ狂専門誌最新号発行 ! 篇』まだ読んでないけど」「はあ ? 」「なんか、 広告 東京アニメ同好会 殺された女の人の復讐をするとか : : : 」「わ 1 宇宙塵跚周年記念を祝う会 きやはは、ふははは」と笑われた。「芥川龍之介。フロによるアニメ , ーションの専門誌として発行 COSMICON 77 だった。『地獄変』 ! 何とかんちがいしたの ? 」されている、フィルム 1 / 圏の号・肥号がなん 「あれ、ウルフガイの : : : 」「いやーん」 : : : くとか発行できました。ア = メ好きの方に他の 数多くの作家をうみ、現代日本界のそ ! 純文学に走った妹にはスペ 1 ス・オペラのファン雑誌との併読をおすすめします。 に界のアニメフェスを語る 1 ロ・ノⅡー本十占Ⅱ・ ロマンも・フラッドベリのファンタジーも何も ) か第 母体となった同人誌〈宇宙塵〉が本年五月に、 ハウゼン受賞アニメ見たまま・森卓也 らんのだ ! オレはそう毒づき、また『ムーミン / オー 創刊二〇周年をむかえます。 それを記念して、日ト作家クラブ員全員 パ・ ( 』に読みふけった。その後、妹が何人の人間 / カラーとア = メの発達について・杉本五郎 / 他 の参加による大会を左記のとおり開催いたしまにこのことを話し、笑い話にしたか、オレには知に号日フライシャ 1 親子 ~ ・フライシャーの るよしもない。しかし、オレは決心 す。 した。だれが芥川の本なそコンリン ザイ読むものか ! 何やら二、三か月前から、フ = ◎実行委員長小松左京 アンの質かどうのこうの、女はアカを ◎開催日 昭和十二年五月二十二日 ンとか何のかんのともめているみた一 ◎会場 九段会館 いですが。性別なんてあまり関係な ◎ゲスト・オヴ・オナー いのとちゃいまっか。それはまあ、 フォレスト・・アッカーマン 男性の好みと女性の好みではの ) 一 ~ 二 ~ 夫妻、柴野拓美、矢野徹 タイプもかわってくるにちがいない 字宙塵幻周年を祝う会実行委員 ◎主催 けど、どんなタイプのものでも好き・・ 会 オししんではないか。好きで男に 日本作家クラブ ◎後援 うまれたんじゃないとか、なにも頼 日本ファンダム連合会議 ◎協賛 んで女にしてもらったわけじゃない とか、そういう人はきっと多いんじ 参加希望の方は《本誌次号 ( 五月号 ) に詳細 ゃないかな。かの萩尾望都氏の「Ⅱ を発表いたしますので、それにしたがってお申 人いる ! 」に出てくる両性体みたい し込みください。 に、自分で男・女どっちになるか決 1 = ロ 、 R にミ 宇宙開発 ( 横須賀市坂本町六ー一四鈴木康之 ) に。に心 0 ーー 5 7

10. SFマガジン 1977年4月号

カーリーは、ライアックの上にかがみこんだ。この魔術師の青白「ありがたい状態じゃないが、できるだけのことは、しなければな い顔は、死によっていくぶんやわらげられ、今は、おだやかにみえるまい」 る。だがこの静けさ。おどろくほど蒼く、静かな顔だ。やがて大地「ああ、そうとも。なにもあんたが悪いんじゃない、カーリー。 は、あなたを迎え入れ、あなたの生命がその手からこ・ほれ落ちたこ だわしは、だれ一人、あの永遠のタ映えを映した湖の静かな水を、 の異郷に眠るのです。キローンの高みにある風渡る湖は、ふたたびふたたび飲むことはかなわんのじゃないかと、それが気がかりで あなたにまみえることはないのですね。おお、笛吹きのライアックの」 ロチリーは、自分の箝を唇にあてた。古い挽歌の荒涼とした空し さようなら、さようなら、おとうさん。安らかに眠ってください響きが、静まりかえったキャンプに、嫋々と響き渡った。 。おやすみ、おやすみ ! カーリーは神の名笛を背中に吊して、車陣を出、・フラムとライヴ カーリーは、ゆっくりと、ライアックの額にかかっている灰色の アン人の方へ向って、歩き出した。 髪をかきあげてやった。そしてひざまずき、額にキスをした。神の 名笛が、かたわらに添えてあった。それを取りあげると、痺れたよ 3 うによろよろと立ち上ったが、さて手にはしたものの、この笛をど う扱ったものかと、彼は思案にくれた。 南部人たちはすっと高い文明を持っていた。都市もあり、書物も ロチリー爺さんは、彼をいたましそうな目で、じっと見ていた。 あり、変わった芸術もあったが、北部人は、彼らがこのように卑屈 そっとささやくように吹き寄せてきた風に乗ったその声は、ほとんに王の下に屈服しているのは、精神のない証拠とみなしていた。こ ど聞きとれないほど、かすかであった。 の辺一帯の人たちは、髪と目が黒かったが、肌は〈薄明の国〉の人 「こんどはあんたがプロイナの長じゃよ、カーリー。 キローンの笛すべてに共通の明るい色をしている。北部人と比べて背が低く、ず 吹きになるんじゃ」 んぐりしていた。磨かれた胴鎧をつけ、羽かざりのついた兜をかぶ 「わかってる」彼はうっとうしげに言った。 り、長い楯をもった戦士たちはなかなかに勇ましかった。彼らには 「だが、笛の吹き方がわからないんしやろ、な ? そう、それはだ背の高い馬に打ちまたがった強い騎兵隊がいる。それにトラン。〈ッ れも知らん。プロイナが、天のルーガン・ロングソードからその笛ト吹きと、旗手と技師もいた。キローン人と比べて、数の上では三 を手に入れてこの方、その吹き方を知っている者は、たった一人し対一の割合で優勢であった。お互いにびったりとくつつきあった奇 かおらなんだ。それが、キロ 1 ン全部の守り神になっていたのじ妙な隊伍の組み方をしている。 ゃ。だが今やそれは失われ、われわれはよそ者や敵のまっただ中彼らに接近していきながら、結局は自分たちの軍隊だって、ライ で、孤立無援なのしや」 ヴァンに対する侵入者ではないか、とカーリーは思った。この新し 6