すなこともあり得るに違いないのである。 というものを大切にしていらっしやる。歴史を過去のものとしてい 「これでお分りでしようか ? 」 ろんな事象を位置づけておられますね。ところで現在のこの瞬間 2 チュン・ダ・ハダラード が引取っていいだした。「ず 0 と前にを、歴史の中で位置づけるという作業をどうお思いです ? それは は、私たちは、司政官のどなたかが、私たちのところに、の「びき先になってなされることだと考えられますか ? しようとすれば、 ならない用を携えて来訪するであろうということしか知りませんで現在でも可能なはすです。それをやるということは、すでに現在と した。それがいっか、太陽の新星化にともなう用件であるとみんな未来をつないでいることになりはしませんか ? 私たちの予知だと に分り、それがマセ司政官、あなたの代になってからだと知るよう いうのも、せい・せいその程度と解釈されてはいかがでしよう」 になったのです。あなたが来訪するとしても、それがこのミルル地「 : 区であり、ランさんの手引きによるものになるというのが分ったの少し無理がある、と、マセは思ったが、反論はしなかった。どう は、つい最近のことですけれども」 せチュン・ダ・ ハダラードもそれは知っているのだ。知っていて、 チ = ン・ダ・ ( ダラードは会釈した。「これでご納得頂けたでし何とかこちらに分らせようとしているだけなのた。 未来を知る。 沈黙が、部屋を支配した。 だが、その未来は、もはやこのラクザーンには存在しないのだー 「お話し下さって、有難うございます」 ー彼はたしぬけにそのことを思い出した。同時に、おのれの立場と マセは、やっと、自分の衝撃を控え目な表現で出すのに成功しなすべきことをも想起していた。 た。「でも、私にはいまたに奇妙な気がします。未来とは、そんな このラクザーンの太陽は新星になり、ラクザーンは消減する。消 ものなのでしようか ? そんなに先験的なものなのでしようか ? 」減の前にラクザーンの居住者を退避させなければならない。植民者 チュン・ダ・ハダラード が、それを受けていった。 だけではなく、先住者たちをも : 「失礼をかえりみず申し上げるならば、マセ司政官、あなたは未来そうなのだ。 というものを、現在とは別のものとしてとらえてらっしやるのでは 自分はそのために、ここへ来たのではなかったか ? ありませんか ? 」 ここの、ミルル地区に来て、チュン・ダ・ ハダラードたちと対話 「そうではないでしようか ? 」 しているうちに、その話に驚いているうちに、要するにここの、自 「私たちには、未来は特別なものではないのです」 分のそれとはまるでことなる風物や環境に浸っているうちに、、 か、暫時であったとしても、たしかに失念していたのだ。 「こういう風にお考え頂けないでしようか ? あなたがたは、歴史それをやらなければならない。
「鑞銃・恋感曲線」表紙 猟銃・恋愛曲線 城昌幸 小酒井不木 もちろん、城の作品に出会わなかったからといって、 今日の日本界に星新一氏が存在しなかったなどとい うことはます、あり得ないだろう。しかし、ひょっとし たらショート・ンヨ トの第一人者としての存在はなか ったという可能性は否定できない。星氏は長篇型の作家 になっていたかも知れないのである。 もし、ショ ート・ショートというスタイルで、星 が黎明期の界に登場していなかったとしたら、現在 これ以 のの隆盛がはたしてあったか、どうか : 上、城の界における貢献度についての説明の要はあ るまい 城昌幸は、明治三十七年六月、東京神田に生まれた。 その時のことは、きのうのことのように、あざやかに本名稲並昌幸。祖父が徳川家の御家人であったという生 粋の江戸っ子だ。戦前の探偵小説界の異才小栗虫太郎、 、ようがない。そのう 思い出せる。ふしぎとしか、しし ち、円盤の会員のなかから同人誌を出そうとの動き甲賀一二郎と同じ京華中学に学び、卒業後は日大をはじ が起り、私もそれに参加し、作品を持ちこむことになつめ、三、四の大学、専門学校を転々とした。 そのころから、詩学に興味を持ち、詩誌「サバト」に た。最初の一作を除き、いすれも短い作品であった。あ きらかに城さんの影響を受けている。城さんの亜流と評参加、日夏耿之介、西条八十らと知りあい、後に岩佐東 一郎と「文芸汎論」を運営する。 されるのを覚悟の上で書いた。そのうち作品が江戸川乱 歩さんの編集による「宝石」に転載され、作家を業とす堀ロ大学を師とあおぎ、石川啄木らの生活詩を否定、 るようになった。もし円盤の会がなく「怪奇製造人」に大正十三年には「東邦芸術」を、日夏耿之介の監修のも とに創刊し、城左門の名で詩を作った。 めぐりあうことがなかったら、私の今日はどうなってい リラダン、ルヴェ 1 ルらの幻 一方、ポー、ワイルド、 たかわからない。 想怪奇小説に興味を示していた城は、大正九年ごろから ート短篇を書きはじめ、雑 先々月号の「でてくたあ」欄で、石川喬司氏が紹介さ散文詩に近いショ 1 れていたので、憶えておいでのかたもあるだろう。これ誌「新青年」の懸賞小説に応募したり、同人誌に発表し たりしていた。 は最近刊行された城の作品集「のすたるじあ」 ( 牧神 そして、大正十四年に書いた、ふたつの作品がプロ雑 社 ) に書かれた星新一氏の解説の一部だ。 日本探債小説全集 4
かれらは、われわれみんなに本来備わっ 「そうだな。テレバシーはライン博士の実験によってはっきりとそはないんじゃないのか ? の存在が証明されているが、まだ説明はついていない。もちろんそているべき潜在的能力に偶然ぶつか「てしま「ただけじゃあないの か、という疑問さ。教えてくれ、きみがヴァルデスの頭蓋骨をあけ の以前にも、多くの人々がこれを観察しているんだ。あまりくりか たとき、見たところにどこか異常なところがあったかい ? 」 えして何度も現われているから、それを疑問視するのはおかしいと 「いいや。傷のほか、別に時別なものは何もなかった」 いったふうにまでなった。たとえば、マーク・トウェインだ。かれは ラインより五十年も昔にそれについて書いており、証拠書類とくわ「結構。しかし、きみがあの損傷個所を切除してしまうと、かれは しい目撃談もついている。かれは科学者しゃあないが、り 0 ばな常もはやある奇妙な透視能力を所有していなかった。きみはかれの大 脳の一片を、地図の描かれていない地域から取り出した : : : その機 識を備えた人だったんたから、無視されるべきじゃあないだろう。 ア。フトン・シンクレアもそうた。前兆というやつは、ちょっと厄能がまた知られていないところからね。さて、脳の多くの部分は、 はっきりした機能がわかっていないということは、心理学と生理学 介た。どんな人でも、虫の知らせや予感があとで本当のことになっ の初歩的なデータだ。 たという話の十や二十は聞いたことがあるたろう。たが、たいてい ・ダンの″時しかし、肉体のうちで最も高度に発達し高度に特殊化した部分の の場合、そういう話は追跡調査がなすかしい。・ についての実験。を、厳密な条件のもとでおこなわれた " 夢に現わ多くが無機能だということは、どうも理屈にあわない。だから、そ の機能が知られていないのだと仮定するほうが合理的た。さらにま しいな」 れる前兆″の科学的な記録として調べてみるのも、 「いまきみが話したようなことはみな、どういう点できみの気に入た、これまでにも大脳皮質のかなりな部分を切除されても、その精 フィル ? きみは″言じようが信しまいが″をただ集神能力に外見的な欠落は見られないという人間はおおぜいいる : ったんたい、 肉体の正常な機能をコントロールしている部分がふれられすに残っ めているたけじゃあないんたろう ? 」 「ああ。とにかくぼくは、山ほどのデータを集めてみなければいけている限りはね。 ところで、このヴァルデスの場合に、われわれは大脳の地図がな なカた・・・・ : 一度。ほくのノ 1 トを見てくれよ : : : そのあとで・ほくは やっと、ひとつの作業仮説を組み立てることができたんた。ぼくはい部分と、ある奇妙な能力、つまり透視能力に直接の関係があるこ とを立証したわけだ。・ほくの作業仮説は、このことから直接に出て いま、ひとつの仮説を持っている : : : 」 くる。すなわち、すべての正常な人々も潜在的には、われわれがい 「それは ? 」 : ヴァルデスを手術することでね。ぼくはすま話してきたような変わった能力のすべてを、あるいはそのほとん 「きみがくれたんだ : ・ こし前から、ある疑問を持つようになっていた。つまり、こういつどを持っており実行できるんだってことだ : : : テレバシー、透視、 た奇怪な、明らかに考えられないような、精神的肉体的能力を持っ特殊な数学的能力、肉体とその機能に対する特別なコントロール、 ている人々には、そのほかの人間とくらべて異常といえるほどの差そういったものをね。こういうことをするための潜在能力は、大脳
「ごめんなさい、あたしが間違っていました」 ″がんばれよ、相棒 ! それはコバ 彼女は、林が教えてくれたとおり緊張を解き、時間をただひとっ ーンの個人的な通信たった。 の不死の現在によって包みこむ瞑想の中へと意識を流れこませた。 ″大丈夫よ、フィル″ ハウは彼女が平安の中にいるのを見て、集会のほうへ注意をむけ それはジョーンどっこ。 一瞬、かれは林のくすくす笑いと、静かな同意の声を聞いたよう な気がした。 かれは心をのばし、人々をみる、総会のテレバシー・ネットワー クへ集めた。 「やってみます ! 」 と、かれは答えた。 ″あなたがた全員が、なぜここに集まったのか、ご存知と思 います : : : われわれは、別の、より行動的な、わたくしの能力とは キャンプの最終日、ンヨーンはミセス・ドレイ。ハ ーとともにシャ 違う能力を必要とする時代に入ったのです。わたくしがみなさんを 呼び集めたのは、わたくしの選んだ後継者について考え、それを承スタ山上にある家のテラスに坐り、谷間を見おろしていた。彼女は 認していただきたいからです″ 溜息をついた。ミセス・ドレイバーは編み物から日を離して微笑し こ。 ハクスレイは、その思考通信を追ってゆくのが奇妙に困難なこと に気づいた。・ほくは働きすぎて疲れているんたなと、かれはひとり「キャンプが終るので、淋しいの ? 」 で思った。 「まあ、 しいえ ! それは嬉しいのよ」 だがハウは、ふたたび考えを放射していた。 「では、なんなの ? 」 ″そのようこ 冫いたしましよう。わたくしたちは合意しまし「ただ考えていたんです : : : あたしたち、このキャンプを作るのに あれだけ努力して、あれだけ大騒ぎして。それから、キャン。フの安 かれはハクスレイを見た。 全を守るために戦わなくてはいけなくて。明日、あの子供たちが家 ″フィリツ。フ、あなたは信任を受けてくださいますね ? / に帰ったら : : : そうしたら、かれらの見張りをしなくちゃいけな 「なんですって ? 」 い。かれらのひとりひとりをよ。あの子たちが充分に強くなって、 「あなたがいまや、長老なのです : : : 全員の合意によって」 まだこの世界に存在している多くの悪のすべてから自分を守れるよ 「でも : : : しかし : : : ・ほくは、用意ができていません」 うになるまではね。来年になったら、また別の少年の群がやってき ハウは静かに答えた。 て、そのつぎの年にも、そのつぎにも、これには、いつまでも終り 「そうでしようか : : いまや、あなたの才能が必要とされているのがないのかしら ? 」 です。あなたは、責任とともに、成長していかれることです」 「必ず終りはありますよ。あなたはお・ほえていないの ? 古代の記 こ。 230
うがね」 のよ、フィル」 「あたしには道路を見張っている必要がないのよ。見て」 べンがまた話しだした。 彼女は顔をぐるりとまわして、両眠をしつかり閉じているところ「・ほくは興味を持ったよ。見たいと思うもののほうへ視線をむけて を見せた。遠度計の針は九十のあたりでゆれている。 いなくてもいいって、きみが話したことにね。ぼくの場合は、目を 「ジョ 1 ン、頓む ! 」 そらしていると、そううまくいかないんだ。目をそらしながら、同 彼女は目をあけて、ふたたび前方をむいた。 時に直接的知覚を使ったままたと目まいがすると、きみも前にそう 「でもあたし、見るためにつてことなら、そちらにむいて眺めてい いっていたはずだがなあ」 る必要はないのよ。あなた自身が教えてくれたんですからね、お利「前にはそうだったのよ、べン。でもあたし、それを克服したわ。 口さん。おぼえていないの ? 」 あなたもそうなるはずよ。それは単に、古い習慣を破るという問題 「そうだ、わかってるさ。でも、きみが車の運転にそれを使うなどにすぎないんですもの。あたしにとっては、あらゆる方向が″前 とは、考えてもみなかったんたよ ! 」 方″にあるの : : : まわりと上と下がね。あたしは、どの方向へでも 「どうしてなの ? あたしは、あなたがこれまでに見たうちで、い 注意を集中できるし、同時に二つか三つの方向へでも大丈夫よ。そ ちばん安全な運転手よ。あたしには、道路上にあるものがみな見えれに、肉体的に存在している現在の場所から遠く離れたところへ視 るわ。それに、見とおしのきかないカー・フのむこうのものだって点を移動させて、いろんな物のむこう側を見ることだってできるわ : でも、このほうが難しいわね」 よ。もし必要なら、ほかの運転手たちの心を読んで、つぎに何をす るつもりなのか知ることだってできるわ , フィルは情なそうな声でいった。 「そのとおりだよ、フィル。何度か彼女の運転ぶりに注意してみた「きみたちは・ほくをまるで、醜いアヒルのお母さんみたいな気分に が、彼女は・ほくが同じ状況におかれたときにするのとまったく同じさせてくれるんだな : : : きみたちは人間的な意思疎通手段を超越し ちまっているというのに、まだぼくに好意を持ってくれるつもりか ことをやっていた。それでぼくは不安にならなかったのさ」 フィルは答えた。 「そうかい、そうかい : : しかしきみたちスー ーマン諸君にいっ ノヨーンがその声に本当の同情をこめて叫んだ。 とくがね。後ろの席にいるのは、いささか神経質になっている、あ「あなたは、あたしたちを教えてくれたのに、だれもあなたには教 りきたりの人間で、曲がり角のむこうが見えない男なんだってことえようとさえしなかったんだわ。ねえ、べン、今夜はどこかのオー ト・キャン。フで泊まりましよう・ : ・ : サクラメント郊外のきれいで静 を忘れないでほしいな」 かなところを選んで : : : それから二日ほど、フィルがあたしたちに 6 ジョーンはまじめな口調で答えた。 「いい子にしてるわ : : : あなたをびつくりさせるつもりはなかったしてくれたことを、かれにもするのよ」 0 、
いかさま師のフランソワ・ビョンの身許調査にでかけ、あるい よハルン・アル・ラシドのあとを追ったりする。 ( 数百年早く生ま つぎに公開した二本の映画は、即座に成功をおさめた。まず〈ア すぎたという人物がいたとするなら、それはこのなげやりなカリ メリカに自由を〉で独立戦争をえがき、つぎに〈兄弟たちと銃〉で 一のことだ ) 。あるいは、気分が悪かったり落胆したりしているとは南北戦争をあっかった。大騒動である。三人にひとりの政治家、 には、しばらく、三十年戦争を追ってみればいし 。じつに野卑な無数のいわゆる《教育者》、それに愛国者であることを職業にして 持ちのときには、ラジオ・シティの更衣室をのそくのである。マイ いるすべての者が、おれたちの悪口をさけびはじめた。独立戦争将 一は、アトランディスの減亡に、、 しつも奇妙に魅人られていた。た 兵子孫婦人協会、アメリカ連邦退役将兵子孫協会、同婦人協会のす ~ ん、今や核エネルギーを再発見した人類が、同じことを繰りかえ べての支部が、いかりくるった。南部諸州は狂乱した。深南部の諸 はしないかという怖れをいだいていたからだろう。そして、おれ 州と国境沿いの一州では、二本の映画がともに簡単に上映禁止にな まどろんでしまうと、かならずと言「ていいほど「イクは、〈始「た。それが真実にあふれていたからというのは二番目の理由で、 のとき、おれたちの知「ているこの世界のはじまりのときまで第一には、検閲というのは悪性の流行病のようなものだからだ 0 わどるのだった。 ( その前がどんなたったか、ここに書いてもしか た。職業政治家たちが思慮をとりもどすまで、上映禁止の処置はっ ~ がない ) 。 づいた。上映禁止が解けると、リンチ用の繩を手にした連中が、二 よく考えてみると、おれたち二人とも結婚していなか「たのはい本の映画に的をしぼって、これこそ一部の分子がじっさ、こ、 ) ことたったのだろう。おれたちは、もちろん未来に希望はつない ている考え、思想のおそるべき見本たと、攻撃しはじめた。そして 、いるが、現在では人類そのものに厭気がさしているのだ。その欲樽を持ちだし、地域主義的、人種差別的な憎しみをこめて高らかに 」な顏と手とに。富と権力と実力とに重きが置かれている世界で太妓をうちならす機会があたえられたことを感謝した。 、すべての道徳的行為が、現在する恐怖、未来に存在しうる恐怖 ・イングランド地方は、その尊厳をたもとうとっとめた ~ らのみ出ているものであっても当然のことだろう。おれたちは世 が、圧力に耐えることができなかった。ニ = ーヨークの北部では、 中の秘密の行動を見てーー・おのそみなら、それは覗き見だと言っ 二本とも上映禁止になった。ニーヨーク州議会では、田園部出身 、くれていい 表面的な善意善行を額面どおりに受けとってはい の議員が結東して投票し、禁令を州全域に押しつけた。特別列車が ) ないことをまなんだ。た「た一度だけ、「イクとおれは、おれたち編成されてデラウ = ア州に向か「た。こちらでは議会が別の法律を ~ 知「ており、好ましく思い、尊敬しているある人物の私生活をの成立させるのにいそがしか 0 たのである。誹毀罪の訴訟がつぎから 」きみた。一度でけっこうだ。その日からあと、おれたちは、人々 つぎと提起され、新しい訴訟がおこされるたびに特別番組が大駁ぎ 」外見どおりのものたと考えるようにつとめることにした。話をもで放送したけれど、どれひとっとしておれたちは敗訴しなか「たと 」にもどそう。 いうことを知っている者は少ない。ほとんどの裁判を、おれたちは
「実のところ、ビアスさん = = ・・・ほくらはあなたのこの住まいをも 0 われの施術者は、あなたの意志にその肉体を支配せよと命令しただ と見せていたたき、あなたがたについても 0 と知りたいと心から望けなのです。この技術は簡単なものですよ。もしお望みであれば、 んでいます。あなたが入 0 てこられたとき、ぼくらはそのことを話あなたがたもお・ほえられます。それをお・ほえることのほうが、われ われのわずらわしく不完全な言語でそれを説明するよりも、ず 0 と し合っていたのです」 「好奇心とは、自然で健康なものです。どうそ、なんなりとお好き容易なことだと保証しますよ。わたしはまるで、心と意志が別《の ものででもあるかのようにいいました。言語がわたしに、この奇妙 な質間をなすってください」 で誤ま「たいいかたを余儀なくさせたのです。実体としては、心と フィルはつつこんで尋ねた。 いうものも、意志というものも、存在していません。あるのはた 「それでは : : : 昨夜、べンの足は折れていました。それとも、折れ ていなかったのでしようか ? 夜のうちになお「ているんですが」た : : : 」 かれの声が消えた。ペンは自分の心の中に、大口径ライフルで射 「かれの足は、実際に折れていました。足は夜のうちになおったの たれたような衝撃を感じたが、それに痛みはなく、優しいものだっ ですよ」 た。それが何であれ、それははちどりかじゃれる子猫のように生き ーンは咳ばらいをした。 「ビアスさん、・ほくの名前は = ・ ( ーンとい「て、外科の医者です生きとしており、しかも静かでゆ 0 たりしたものた「た。 が、ビアスを見つめたまま同意したとうなずいた かれはジョ 1 ン が、こんな治癒についての知識はまったくありません。このことに のを見た。 ついて、もっと教えていただけませんか ? 」 ビアスは、その穏やかなよくひびく声でつづけた。 「いいですとも、あなたは下等な生命形態でおこなわれる再生とい ・、、ほかに何かありま 「みなさんのどなたかを心配させていることカ うものをご存知でしよう。使われている原理はそれと同しですが、 しかしわれわれの場合は、意志によって自覚しながらコントロールしたか ? 」 ジョーンはうなずいた。 し、治癒の割合も加速されます。わたしは昨夜、あなたを催眠状態 におき、われわれの外科医のひとりにあとをまかせました。かれ「ええ、ありますわ、ビアスさん。いくつかのことが = は、自分の肉体をなおすために自分の力を使えと、あなたの心に命この場所はなんですの ? 」 「ここはわたしの家であり、またわたしの友人たちの家でもありま 令したのです」 ーンはまごっいた表情にな 0 た。ビアスはそのままあとをつす。みなさんがも 0 とわたしたちと親しくなるに 0 れて、も 0 とわ れわれのことを理解できるようになるでしよう」 づけた。 「ありがとうございます。でも、このような共同体が、だれにも知 7 「本当のところ、驚くようなことは何ひとつないのです。心と意志 とはいつでも、肉体を完全に支配する可能性を持「ています。われられることなくこんな山の上にどうして存在することができたの : ここは、
作者ハインラインは、アンソン・マクドナらみると残念な気がしないでもない。にもか ルド、カレ。フ・ソーンダースなど、、 しくつかかわらず、「未来史シリーズ」とは一味ちが のペンネームをつかって作品を発表しているうものがあるが、語りくちの巧みさ、伝奇的 が、本篇もそのひとつである。一九四一年、なストーリーの展よ、、、 し。し力にもハインライ 見る目を持っているー ・サイエンス・スト ー〉誌十ン的で、十分たのしませてくれる作品である。 解一月号に、ライル・モンロー名義で掲載され最近の ( インラインは、献血連動に身をい 「やあ、殺し屋 ! 坐れよ」 た。テレ。ハシーその他の言葉が、いまほど人れて活躍する一方、『愛に時間を』 ( 当社近 と、フリい イノ。フ・ハクスレイは話しかけ、もて 口に膾炙されていない時代に書かれているた刊 ) を書きあげたあと、次の長篇執筆に忙殺 あそんでいたダイスのカップをおき、からの椅子めに、超感覚・超能力現象そのものの説明にされているという。そのエネルギーは驚くべ スペースが大きくさかれているのが、現在かきものがあり、矍鑠たる作家ではある。æ) でおし出した。 小人を探がしているのかい、フィル ? 」 呼びかけられた男は、その挨拶をわざと無視し、黄色いレインコ 1 トと濡れた中折帽を教職員クラブの給仕にわたしたあと、その椅「きみが超心理学のことをいってるつもりなら、そのとおりさ」 「商売のほうはどうなんたい ? 」 子に坐った。かれが最初にロにした言葉は、その黒人給仕に対する ものたった。 「なかなか結構さ。ぼくは今学期の講義をひとっ減らしたんだが、 「いまのを聞いたかい、。 あいつは心理学者だなどと気取 いつもとまるで同じでね : : : 途方もないほどうんざりしてるってと まじないや ころが本音たよ。馬鹿面をしたやつらを相手に、その連中の脳味噌 っているが、呪術師にしかすぎないんだよ。それがあっかましく も、ぼくのことを、内科と外科の医師免許を持っているぼくのことの中でおこることについて、われわれが実のところどれほど無知で あるかということを説明するなんてことはね。研究しているほう を殺し屋たとさ」 が、ずっとましだな」 その口調は穏やかなものながら、ド : ョカこめられていた。 「こいつにだまされるなよ、。ヒート。コく 「みんなそう思っているよ。それで近頃は、何か変わったものを見 ーン先生がきみを手術室 に連れこむなんてことになったら、あっさり頭を開かれちまうからつけたかい ? 」 「いくらかはね。いまのところ・ほくは、法学部のある学生を相手に、 な。それもただ、なぜきみが生きているのか知りたいだけのことで さ。灰皿を作りたいからって、きみの頭蓋骨を使うかもしれないやなかなか楽しいことをしているよ。ヴァルデスというやつなんだ」 ったそ」 ーンは眉を上げた。 「ほう ? 超感覚ってやっか ? 」 黒人の給仕はテー・フルをふきながら微笑したたけで、何も答えな 「そんなところだ。かれはまあ、透視能力者ってやつだな。物体を ーンはくすくす笑って首をふった。 ひとつの方向から見ると、その反対側も見ることができる」 「それこそ、まじない医者のいう文句だな。まだ、存在もしていな 「馬鹿なことを ! 」 第一章″おまえたちは ロ 8
・ : 突然変異はその変化を使用することによって確認しながら、 かりだということだ。かれらは自分たちの学問と称しているもので : こう、 ごくすこしすっ飛躍しながら進むものだ。いやまったく : の最も単純なことについてさえ合意することができないんたね。第 った奇妙な能力は痕跡的なものたね : : : 人類全体がそれらを持ち、 二には、人類の祖先についてかれらが主張していることを支えるに それらを使っていた時代の遺物なんだ」 たる実質的な証拠と称するものを信じるのは、ほんのひと握りしか フィルは話をやめ、そしてべンはかれに答えず、ただ坐りこんでいないということだ。たった一個の牡蠣から、あれほどの量のシチ ュ ーができるとは知らなかったよ、とでもいうべきだな。かれらは ・ほんやりと考えこみ、そのあいだに十マイルほどの距離が流れるよ うにすぎていった。ジョーンが一度口を開きかけたが、考えなおしつぎからつぎへと本を書いているが、何をもとにして書いていると た。やがて、べンがゆっくりとしゃべりはじめた。 ドーソン人、北京原人、ハイデルベルグ人、そのほか いうんだ ? 「ぼくはきみの推論に、なんの欠点も見つけられない。複雑な機能ふたつほどの化石人類。しかも、それらは完全な人骨が出ているわ を持っ脳のあらゆる部分が、ただ発育してきてそこに存在しているけしゃない、壊れた頭蓋骨、二本ほどの歯、それにほかの骨がもう だけ、と考えるのは理屈に合わない。しかし兄弟、きみが現代の人一本か二本かだ」 類学に大騒ぎをおこさせることになってしまったのは確かだな」 「それでも、フィル。クロマニョン人については、たくさんの標本 「初めてこれを考えついたとき、・ほくは悩んたよ。それでロを閉しが発見されているわよ」 ていたのさ。きみは人類学のことを何か知っているかい ? 」 「そう。しかしかれらは現生人類だ。・ほくは、進化論の上でわれわ 「別に。どんな医学生でもするように、ほんのちらりとのそいてみれの祖先である猿人のことを話しているんだよ。わかるかい ? ・ほ たたけだがね」 くは自分が間違っていることを証明しようとしていたんだぜ。もし 「ぼくも同しだが、しかしぼくはその学問に非常な尊敬の念を抱い人類の進化が長い着実な上昇だとしたら、猿人から原人へ、原人か ていた。ゥーシストウィッチ = ル教授は、一本の鎖骨と何本かの前ら原始人へ、そして原始人がその文化を文明へと完成させる : : : こ 歯からわれわれの遠い遠い祖先を再現し、それの個人的ないろいろのすべては、ほんの数百年、あるいは最大限に見積って数千年のち な習慣について長々しい論文を発表したが、ぼくはそれを、鉚も釣よっとした退行をともなっているが : : : われわれの現在の文化につ 糸も重りもみなうのみにし、非常な感銘を受けた。しかし・ほくはこ いては、これを人類がこれまでに到達し得た最高のものであるとす の問題について研究しはじめた。・ほくが何を見つけたかわかるかる : ・ : ・もし、これがみな正しいとすれば、・ほくの考えは間違いたと しうことになる。 、、、まくのいってることが ? 脳の内部にある証拠が明 「いえよ」 わかる力し 「ます第一に、この世界にいる有名な人類学者というのはみな、ほらかにしているのは、人類が失われたその歴史のある時期に、今日る かの同じように有名な学者を申しぶんのない嘘つきだと呼ぶやつばでは夢に見ることさえできないような高みに達していたということ
可能な決定は、ひとっしかなかった。いかなる存在が、自己保存 依然として受けいれがたい映像であった。 自分の感覚を信用する以外にどうしようもなく、 = イソヴは、なの感情的欲求にもとづいて考えようと、あるいは使命達成の論理的 んとかその映像を理由づけることができた。銀河系が老い果てたの必要性から考えようと、同し結論に達していたことたろう。超新星 た。その意味するものはただひとつ、彼の眠 0 ていた時間が、おそからまだふんたんに流れてくる = ネルギーにたよりながら、 = イソ ろしく長く、宇宙そのもののスケールで考えてすら、なおかっ長期ヴは、ます自分の推カべクトルを変えて、これまでかってなかった ほどのコ】ス修正操作をやってのけ、銀河系の中心へ向かって出発 にわたるものだったということであった。 さしあたっての問題は、エネルギーである。推進、通信、照合なした。 どに必要な動力だ。エネルギー源がひどく乏しいというのは、はじ生命と光輝をもとめて、彼は、無気味に静まりかえった銀河の荒 めて経験する事態だった。すぐまわりの空間からは、ほとんど何もれはてた岸辺をあとにしたのである。 その途次にはエイソヴは、銀河系の老衰ぶりを記録に残していっ 得られないのだ。 彼の航跡は、銀河系を横断する大きな楕円軌道をなしていた。恒た。死に絶えた、あるいは死に瀕した星が、彼の長距離知覚装置に 星の数が急激に減少しているのは、この外縁部においてのことであかかるたびに、それをひとつひとっ観察した。ごく時たまではある が、すぐ近くを通って、その星系の死の過程をみとどけたこともあ った。銀河系の中心方向は、エイソヴからも光りかがやく霧のよう っこ。 に観察でき、そこでは星々も、かっての密度も維持していた。しか 同じパタ 1 ンの、憂鬱なくりかえしだった。 し、渦巻きの腕にあたる周辺部では、星々はもう比較的まばらにな かって何億年にもわたって、生命と光の源であった星が、にぶい り、厳粛な宇宙の弔鐘が鳴りひびいていた。中心部の星々も、年老 いてはいたが、それらはより安定たった。外縁の巨星たちが、つね赤色をはなっ死の霧にとりまかれている。かっては生命をいつばい に短命で、生涯を放縦に荒つぼく燃やしつくすのに対し、内側の恒にたたえていた惑星が、つめたい岩塊、巨大な石碑と化して、ころ 星は、わすかな出力に甘んじ、その原子核の体液をできるかぎり温がっている。その表面には、うごめく影とてなく、その空には裸の 存しようとっとめているのだった。 星々が、臨終の苦悶の炎をひらめかせているばかりだ。 しかしそれも、永遠にはつづかない。 生命の律動も、彼我のせめぎあいも、いたるところで終局を迎え つねと変わらす現実的に、エイソヴは = ネルギー源のことに思考ていた。しかし = イソヴ自身は、それら環境とちがって、少しも変 を集中した。ただちに予測されたのは、現在のコースだと、彼はまわっていない。その本能、その基幹にある動機づけは、かって星の もなく最低限のエネルギー入力もない地域へ突入するということだ光の愛撫が彼の目を宇宙へびらかせた最初の日と同じだった。いま った。そうなったら、彼の感覚は、またもや昏睡状態におちいってや彼の探査器官にふれる周囲の環境が、いかに憂鬱で悲惨なものだ ろうと、彼は、いっかどこかで何か新しい発見に出あう可能性を忠 しまうだろう。