「夢と秘密」表紙 する。しかし、事実を目撃した主人公は、ジャマイカ氏なことだ ! 」と。 が、真実を知られないためにウソをついていると信じ、 私は全く驚いた。が、私も亦自説を固持して動かなか 他言はしないからぜひにと頼みこむ。 った。で、私も亦氏に負けず劣らすの大声で叫んたので ある。 「ではひとつ、御面倒でも、そのあなたが見たと云われ「否本当です。正真正銘事実です。あなたは確かに空間 る、私の空中遊行説を、精しく御説明願いましよう。でを歩まれたのです。私は見ましたから ! 見ましたか ないと、どうも合点が参りませんでなあ , ら ! 見たんですからなあ ! 」 そこで私は、先程終電を待っている間に見た、彼、ヂ と、氏は暫時うっ向いて凝然と何か考えていた様だっ ヤマイカ氏の空中遊行を、事実に則して細大洩らさす物たが、首を上げると、こんなことを云った。 語った。 「だとすれば、それは、あなたの錯覚じゃありませんか 「 : : : ホホウ、私がプラットフォーム上から : ・・ : 成程 : : 空間を ? ホウ : 「飛んでもない」そして、私は断乎としてかく言い放っ そして、だが、此の私の話が全部終った時に、彼は途た。 方もなく大きな声で、右手を烈しく振りながら叫ぶので 「あなたは空間を歩かれたのです ! 」 あった。して、此の物語一切を否認したのであった。 ヂヤマイカ氏は、何故か又狼狽てて首を下げた。それ 「そいつは信じられん ! 到底信じられん。此の私が空 から、幾分低い声で言った。 間を濶歩した ! そんなことはあり得ん ! 全然不可能「そうですね。では、若しかすると、よござんすか、若 しかするとですよ、私は空中を歩いたのかも知れませ ん。 ・ : あなたの見られたことが、絶対に錯覚ではな 、とすれば , 「そうですとも」私は意気揚々と答えた。 「又、そうでなくてはなりません ! 」 「けれども : : : 」 が、かく、ヂヤマイカ氏は気の弱そうな口調で続け 「けれども、然るに私は、そのことを全然知らんのです で思う よ。些少も、ね。全くおかしな話ですが : に、それはこう云うことになるんではないでしようか、 つまり、私がある時純粋に空間を大地であると確く思い 9
しかし。 「知って : : : いた」 「そうです」 彼は宙に視線を向けた。 今の話が真実だとすれば : : : 先住者たちはラクザーンの太陽の新「それで : : : 人間たちには、おっしやらなかったのですか」 星化を知りながら、ここにとどまるという。予知能力を持っ先住者「人間たちが何事かをしようとするのを、どうこういう権利は、私 たちがた。 たちにはありません。未来不明の人間たちがなすがままにして、な では : : : 先住者たちは、ラクザーンから退避する必要はないと考りゆきにまかせるべきたったのです。未熟なチュンや、チュンでな い者の中には、それをいったのもおります。が、信じては貰えませ えているのか ? ラクザーンの太陽は、結局は新星化しないと : んでした。信じて貰うためには、私たちの予知能力について語らね そう信じている、いや、そう知っているからなのか ? ばならす、それを語ると、さまざまな厄介ごとが続出することが分 連邦経営機構の科学者たちは、間違っているのか ? っていました」 チュン・ダ・ 「でも、私にはお話しになりました」 ハダラードは、それを承知していたと、たしかにい 「お話しせざるを得ない情勢になったからです。そのときが来る 迄、あなたがたは信じないということも、私たちには分っていまし そのはすなのた。 た。今は、お話ししなければ、マセ司政官、あなたが納得なさらな そうなのだろうか ? いでしよう。そして今なら分って下さるでしよう。私たちがここに もう一度、確認すべきではないのか ? とどまるという事実が、私たちのいっていることの正しさと確信を 「ぶしつけなお願いですが」 彼は顔をあげ、チュン・ダ・ハダラードを注視した。「もしも、証明するのです。だから私たちは、きよう迄あなたをお待ちしてい たのですよ」 出来ることならお話し頂きたいのです。あなたがたの予知能力によ : ここの太陽は新星になるのですか ? そうではないのです「お待ち下さい」 マセは、会話がひとりでに、こちらの望む方向に進んでいるのを 意識しながら、たずねた。「では、本当にそうなのですか ? あな チュン・ダ・ ハダラ 1 ドは、柔和な表情を崩さずに答えた。 こ : こよ、この世界から出て行くおつもりはないのですか ? 」 「なります。そしてこの世界は消減します。私たちはそれを遠い昔ナカオー 「おっしやる通りです」 から知っていました」 「遠い昔から ? 」 「そういう大きな事柄は、早くから予知されるのです。私たちは、 「それでは : : : あなたがたも、この世界とともに消えてしまうので すよ」 あなたがた人間がこの世界に来る前から知っていました」 っこ。
広告 や家の用事を忘れてまとめて読むこ宇宙開発 ( 横浜市港北区小机町一一四五九中村聡 ) と。好きで集めた数百冊、整理 〈未踏忌〉のお知らせ によわっています。どなたかよい整 故福島正実氏を偲ぶ会〈未踏忌〉の日時・会理のしかたを教えてください。私に 場が左記のごとく決定しましたのでお知らせい とって大事な大事な宝なのです。そ たします。 の中でも今、熱中しているのが〈ペ ローダン・シリ ーズ〉です。 日時四月九日午後四時 それだけは本棚の真中にデンとすわ 場所山の上ホテル ( 千代田区神田駿河台一 っています。なんとなく読み始め の一・二九三ー一一三一一 ) て、いつのまにか離れられなくなっ 会費三阡円 てしまいました。なぜ毎月ローダン ・ンリー 〈未踏忌〉世話人一同 ズを出さないんでしよう。 なかなかドイツの原作に追いっかな 「愛の多い少ないが判るはずがない」とか、何といではないですか。あーあ、イライ か、ケチをつけていたけれど、そんな事はメじやラしてしまう。なんとかならないか しら。 ない。相対化していようが、いまいが、とにかく ( 繝京都市南区久世東土川町一九〇 大傑作だ。 木村勇次方木村町子 ) ( 堺市大美野六ー五大美野園片山晴夫 ) 告知板 初めて貴誌に投稿させていただきます。私は私はいまだに信じられないのです。私はさみし まんが同人誌「 7 」発売中 そしてかなしい : マガジンを号から毎月かかさず読んでおりまい、 まんが特集日「スターシマック」「 M x V す。 私が二十六日の午後届けてもらったマガジ しミーリア」「ジュリー」他 6 ・ 3 月号の特集、楽しく読ませていただきました。 ンを読んでいた時です。私はなにげなく一三五。へ 一九六頁・オフ / 送料共六百円 / 発行・ストーリ 特に、クラークと小松左京の対談では両者とも熱 ジを開きました。そこには「エドモンド・ 意が感じられ、クラークの若々しさに感動しましルトン氏逝く」という一一一一〔が書かれてありました。イ作品研究会ティーム・「スモ ( 代表・関口よ しみ ) た。作品は一気に読んでしまいました。 私にはこの一言が堪えられませんでした。その時 申し込み先日〒兵庫県小野市下来住町一〇 私も、あまりニューウェーヴは好きではありまの驚きといったら、もうロでは言い表せないほど 五五の一ティーム・コスモ せん ( 全部というわけでもないのですが ) 。しかでした。 し、ファンの中でも乱読の方ではないでしょ 私は大のエドモンド・ ハミルトン・ファンだっ うか。と名がつけばなんでも読みたくなるのたのです。今までに読んだ ( ミルトン氏の本は数都市という幻の森を彷徨する蒼ざめた一匹オオ カミ。そんな仲間のミニコミグループ "Lone ですから。 知れません。まだまだいろんな作品を書いてもら Wolf" 狂いやマンガ愛好家、詩人などの集 マガジンが出るのがたのしみで、出産のた いたかったのに、ほんとうに残念でたまりません。 、です。仲間よ来たれ ! 連絡は左記まで。 め入院しているときでも、弟にたのんで買ってきでも、これから、もっとのおもしろさを知る てもらったほどです。いい年をして、とよく言わためにいろんなを読んでみようと思います。〒語兵庫県高砂市北浜町西浜一〇六二藤井光 れますが、好きなものはしかたがないですよね。そのためにも、これからも、マガジンにいろ■ 4 月号本欄の「宇宙塵幻周年を祝う会」広告中 2 歳の息子もファンです。特に表紙が好きです。んな作品をのせて私達を楽しませてください。 開催日が昭和十一一年とありますのは五十二年の誤 今の私の夢は、私の読んでいない作品を、子供 ( 長野県茅町市ちの本町四七七一一ー九柳平一美 ) りです。お詑びして訂正いたします。 ( 編集部 ) 80 ー
私の家は福岡市の西北部、菰川の川口近く にあった。夏は快適たが、冬は北風がもろに 吹きつける。明治時代に建てた家たから保温 も糞もあったものではない。二階にあった私 の部屋など、雪の日には、白いものがチラチ ラしていた位だ。もちろん石油ストー、、フなど という結構なものがある時代ではない。氷み たいなふとんにくるまって、轟々と海鳴りの ◇連載◇ 私を U) u- に狂わせた画描きたち エド・カーティア ( そのニ ) 野田昌宏 カット / 加藤直之 4
「やつばりそうなのね ? 前もそうたったけど : : : あなたがた、予「多くの人々 ? 」 言をなさるのね ? 」 「チュンたちの大部分、というべきでしようね」 「チュンたちの ? 」 三人の先住者は、顔を見合わせた。それからチュン・ダ・ハダラ 「そうです」 ードが向き直って答えた。 と、チュン・ダ・ハダラード。「マセ司政官、あなたは、私たち 「予言というのとは、ややことなる面もありますが : : : 近いでしょ の種族のメイハ ーの一部がチュンと呼ばれていることと、それが敬 うね」 称であることもご存じです。そして、あるいはもうお察しかも知れ ませんが、それは年齢や性別とはあまりかかわりがありません。あ ランは何もいわなかった。というより、ここはマセが発言すべきる特別な能力を持つに至ったと、その居住地区の人々が認めれば、 ところであり、マセカししオ ; 、 : こす迄、自分の知りたいことをおあずけそれでチンと呼ばれるのです。その特別な能力というのが、あな にしようという態度で、黙ってマセに目をやったのである。 たのおっしやる予知能力なのですよ」 それでもまだマセには、何をいうべきかすぐには思いっかなかっ マセは、相手の顔を見た。チュン・ダ・ハダラード の面上には、 何をいえばい いというのだ ? 依然としてやわらかな徴笑があるばかりだった。 この先住者たちは、かれらの言によれば、予知によって、自分の淡々といわれただけに、マセの胸中に衝撃が走ったのは、やや遅 、、ルル地区への到来を知っていたのだそうである。しかもその用件れてであった。 も承知していたという。 特別な能力を持つ者がチュン ? 「そういうことが可能だとは : ・ : 私は考えませんでした」 その能力とは、予知能力 ? マセは低くいった。「あなたがたは予知能力によって、私の来訪彼はだしぬけに、とざされていた天が開けはじめるような気がし をあらかじめご存じたったと : : : そういうことですね ? 」 ていた 「ええ」 では。 チュン・ダ・ ハダラードは、相変らす徴笑している。 「では」 「そして、チュン・ダ・ハダラードさん、あなたは私たちとおっし と、彼は声に出した。「チンといわれる方々は、私のこの来訪 ゃいましたね。私たちとは、あなたと、そこのおふたりのことでしを知っていたたけではなく、他の事柄についても、ご存じだったと 、つかフ・」 「そうです。それ以外にも多くの人々が、知っていました」 「それが、チュンの特質です」 0 つん
すなこともあり得るに違いないのである。 というものを大切にしていらっしやる。歴史を過去のものとしてい 「これでお分りでしようか ? 」 ろんな事象を位置づけておられますね。ところで現在のこの瞬間 2 チュン・ダ・ハダラード が引取っていいだした。「ず 0 と前にを、歴史の中で位置づけるという作業をどうお思いです ? それは は、私たちは、司政官のどなたかが、私たちのところに、の「びき先になってなされることだと考えられますか ? しようとすれば、 ならない用を携えて来訪するであろうということしか知りませんで現在でも可能なはすです。それをやるということは、すでに現在と した。それがいっか、太陽の新星化にともなう用件であるとみんな未来をつないでいることになりはしませんか ? 私たちの予知だと に分り、それがマセ司政官、あなたの代になってからだと知るよう いうのも、せい・せいその程度と解釈されてはいかがでしよう」 になったのです。あなたが来訪するとしても、それがこのミルル地「 : 区であり、ランさんの手引きによるものになるというのが分ったの少し無理がある、と、マセは思ったが、反論はしなかった。どう は、つい最近のことですけれども」 せチュン・ダ・ ハダラードもそれは知っているのだ。知っていて、 チ = ン・ダ・ ( ダラードは会釈した。「これでご納得頂けたでし何とかこちらに分らせようとしているだけなのた。 未来を知る。 沈黙が、部屋を支配した。 だが、その未来は、もはやこのラクザーンには存在しないのだー 「お話し下さって、有難うございます」 ー彼はたしぬけにそのことを思い出した。同時に、おのれの立場と マセは、やっと、自分の衝撃を控え目な表現で出すのに成功しなすべきことをも想起していた。 た。「でも、私にはいまたに奇妙な気がします。未来とは、そんな このラクザーンの太陽は新星になり、ラクザーンは消減する。消 ものなのでしようか ? そんなに先験的なものなのでしようか ? 」減の前にラクザーンの居住者を退避させなければならない。植民者 チュン・ダ・ハダラード が、それを受けていった。 だけではなく、先住者たちをも : 「失礼をかえりみず申し上げるならば、マセ司政官、あなたは未来そうなのだ。 というものを、現在とは別のものとしてとらえてらっしやるのでは 自分はそのために、ここへ来たのではなかったか ? ありませんか ? 」 ここの、ミルル地区に来て、チュン・ダ・ ハダラードたちと対話 「そうではないでしようか ? 」 しているうちに、その話に驚いているうちに、要するにここの、自 「私たちには、未来は特別なものではないのです」 分のそれとはまるでことなる風物や環境に浸っているうちに、、 か、暫時であったとしても、たしかに失念していたのだ。 「こういう風にお考え頂けないでしようか ? あなたがたは、歴史それをやらなければならない。
九三一年の春、ミネアポリスで出会った。そしてに落としたときの、彼の爆発、ふりを思いだす。 6 彼の機智、愉快な話しぶり、文学への愛情を思 二人は、その年の夏のほとんどを、ミシシッビー 世界情報 をポートで下ることに費した。後に、私はニュ いだす。彼はむさ・ほるように読み、何ひとっ忘れ なかった。彼は私の古い小説を、私自身よりよく カッスルの彼の家を訪れ、彼の方も何度かニュー メキシコの私の小屋にやってきたりした。三三年憶えていた。彼には素晴らしい語りの才能がそな べールを脱いだテイプトリー 3 、、見は目もあやなイマジネーション から三四年にかけてのキイ日ウエスト島で過したわっており月一口 ヘールに包まれたまま冬はみじめなものだった。そこでは二人とも、唯によって白熱してくるのだった。 六八年のデビュー以来、・ 彼は現代を創建した第一人者であり、彼の ー社の正体が、遂一のよそ者だったんだ。 だったジェイムズ・テイプトリ に明らかになった。彼女の本名はアリス・シ = ル私はまた、彼から来た何百通もの素晴らしい手経歴はその全歴史にわたっている。彼の死と共 に、私達の世界の一部も失われてしまったのだ。 ダン。六十一歳で既婚。第一線を退いた実験心理紙をファイルして保存している。 学者。別に、ラクーナ・シ = ルダンのペンネーム私は彼を、偉大なパイオ = アの一人として、ま でも小説を執筆している。ティ。フトリーという名た、の進歩に遅れをとることのないすぐれた デール・ドナルドスン氏死去 前は、英国サセックス州の砂糖づけで有名な土地才能をもった立派な作家として敬服している。 またしても、訃報が一つ。ムーンプロス誌の編 彼の処女作「マムルスの怪物神」 "The Mo- の名からとったものだそうだ。彼女の母親、マリ ハスティング・・フラッドリイは、国立および nster ・ G0d 0f Mamurth" は旧ウィア 1 ドテール集・発行人、デール・ (-) ・ドナルドスン氏が一月 王立地理学会の会員で、旅行家でもある。この母ズの一九二六年八月号に発表された。ファ 1 ンス四日、肺ガンのため死去。享年五十四歳。一九五 親が最近亡くなったことも、彼女が本名を明かすワ 1 ス・ライトは、一度もハミルトンの小説をつつ〇年、ポートランドの世界大会ではドン・デ 返したことはなかったのに、エドは決して返送用イと共に連営にあたった。ウィリアム・チャン。ハ 決心をした動機の一つらしい ーリンのペンネームで、いくつかの作品も書いて 先頃、この思いがけない正体を知らすにテッドの郵便料金を同封するのを止めなかったものだ。 初期の作品のベストは〈星ド ・スタージョンはこんなことを言っていた。 司パトロ】ル〉ものいる。一九七一年に、ファンタジーのセミプロ誌、 「優秀な新進作家のほとんどは、ジ = イムズ・テで、これらはほ・ほ、最初のスペース・オペラとしムーン・フロスを創刊し、成功する。今年中に二九 ーを例外として、すべて女性である」て、ドク・スミスや他の何百という作家たちの進号が最終号として、夫人と息子の手によって発行 む道を切り拓いたのである。そして、今だにされる模様。 だが、今や、その例外も消え失せてしまった。 の大きなテーマである、人間が星々を征服するよ うになるという神話の形成に寄与し、おそらくは ハインラインの献血運動 故ハミルトン氏を偲ぶ また、アポロやヴァイキングの着陸をさえ、間接 ハインラインの献血運動は依然としてさかん。 ジャック・ウィリアムスンがローカス誌に故ハ的に援助したといえよう。 エドの未来小説に生じるすべてのドラマの背景最近では、サンフランシスコで開かれたスペース ミルトンの思い出をつづっているので、抜粋して コン・スリーに連動推進の一環として出現。今年 には、彼が豊かな天賦の才能に恵まれているこ 介しよう。 ハミルトンはカリフォルニアで二月一日のと、そして、多彩な側面を有していることがあ中に、あと九回の運動が予定されているそうだ。 朝、突然の手術を受けたあと、腎臓の衰弱から逝る。新しい経験を得るのに情熱的で、ほとんどす全く老いを知らぬ元気な人である。 ってしまった。四年前には、重態から良好な回復べての物事にすぐ興味を引かれるのだ。彼は、信 を示し、昨年のミニコンでは、ほとんど元通りにずるものを守るためには、歯に衣着せず語り、き七七年度のネビ = ラ賞の投票は四月三十日、ニ ューヨ 1 ク市のワーウィックホテルにおいて行な なったかにみえたのに。彼の死は私にとって、痛らいなものをけなすときには皮肉屋にもなれた。 、、シシッ。ヒーをわれる。 時には、気短かなこともあった。 みにも似た衝撃だった。 彼は私の最初にして最良の友だった。私達は一旅していて、私が船外モータ - ーの大事な部品を河
「その通りです」 思いおこさせた。あるいはチ、ン・ラ。トレンザは、人間の植民者 のことを暗に指しているのかも分らない。そしてそれを口にしたと 2 「私たちがそうなるというのは、すでに分っているのです。私たち いうのは、あれたけ″いい人たちんである先住者たちが、心の底の はそれを知っているのです」 どこかで人間たちを意識しているのを示しているのかも知れなかっ 「知っていて : : : なぜ ? 」 た。かれらが植民者たちにおのれの予知能力を本気で告げようとし 「私たちは、この世界からついに出ずに終ることになると、それをなかったのは、実はその意識を反映した底意地の悪さだったと解釈 予知しているのです、 することも出来るのではないか 2 「どうして ? 」 とはいうものの、今は、それをあれこれとせんさくしているとき ランだった。「予知しているからって、何もその通りにすることではなかった。それがどうであろうとも、所詮近いうちにラクザ】 はないんしゃないかしら。その予知はまだ現実じゃないんでしょ ンそのものが消減してしまうのである。その消減にさいしての対策 う ? 変えられないの ? 何もわざわざ手をこまねいて こそが、焦眉の急なのであった。 「どうなんでしよう そのあとの言葉を口にするのをランははばかったが、チュン・ダ ハタラードが静かにいった。 マセはいった。「その宿命に対して、あなたがたのすべてが、満 「手をこまねいて滅ぶのです。私たちは、そのとき減亡します。そ足してらっしやるのですか ? そうではないのではありませんかっ・ れが私たちの宿命なのです」 宿命をひっくり返し、予知されているという未来を変えようとする 「そんな : : : 宿命だなんて」 者も、いるのではありませんか ? 」 「それが自然の道なんでしようね」 「チュン以外の者の中には、、 しるかも分りませんね」 チュン・ダ・ チュン・ラ・トレンザが応じた。「わたしたちは、未来を知るこ トが受けた。 とが出来ます。それがあいまいなうちはともかく、はっきり焦点を「チュンの中にも、いらっしやるかも知れない」 結ぶようになって来れは、その未来は避けがたいんですわ。それゆ マセは続けた。こんなことをお願いするのは不謹慎たということ えにわたしたちは長い長い間に、運命に自分をゆたねるすべを覚えも分っているのですが : : : せめて一度は、。 こ存じだという未来をく たんでしよう。宿命に従順になって行ったんです。そして、そのこ つがえそうと試みられてはいかがでしようか ? 」 とが、わたしたちの、何事がおこってもおたやかに受けとめて順応「と、申しますと ? 」 するという気質を作りあげたのではないでしようか」 「この世界から、新天地へ移るための努力をなさいませんか ? 出 そのチュン・ラ・トレンザの発一一一一口は、ふとマセに、 このラクザー来るかどうか、やって下さいませんか ? そのために : : : 現在行な ンにことわりもなく入り込んで来た人間たちと、先住者との関係をつている住民投票に参加して頂けないでしようか ? それが手はし
オームと化し去ったかの観があった。そして彼は、右側 人が、しみしみと孤独を思う晩秋の、とある日を、散のプラットフォームに向けて歩一歩、あわてす騒がず、 りばう病葉の影にしてあわれ秋や逝にけん、と、感傷の大いなる自信に充てるが如く、而もやはり何か未だ己れ 頭をめぐらす、うすら冷たい日のひねもすを、あやしけの思案に耽りながら、規則正しい彼の動作を続けゆくの そこばく であった。 なる商売の群に伍して、若干の利を争うに疲れた私が、 ゅぎよう たまたま 空間を歩む ! 空中遊行術 ! 会々一郊外電車のプラットフォームに、寒々と肩をすぼ ああ、何ということー めて、終電車を待っていた。 茫然と、私は例の柱の隠から、泳ぐ様な上半身の姿勢 例によって、この物語も城ならではの独得の文体ではでそれを見守って居たのである。 じまる。だが、電車はなかなかこない。電車を待ってい そして此の、私の驚嘆と怪訝の中に目出度く外人は、 る人たちは、みんな寒そうにたたすんでいたが、ひとりその空中遊行術を終って、向側の。フラットフォームに到 の外人だけは、プラットフォームの端から端を、なにご達すると、コツン、と鋪石に靴底が音をたてた。 その靴音で、初めて外人はふと気付いた如く立止まる とかしきりに考えこんたようすで、行ったりきたりして いた。そして、そのなん度目かに、その外人は、まわれと、ぐるり、四辺を睨々するかの様に見廻した。それで 右をしかけて途中でやめ、線路のほうに向かって足を踏私も亦我に帰り、思わすも、危く、その美事なる彼の技 , 、に対しては拍手することが礼儀ではあるまいか、とそ みたしてしまったのた。 ところが、当然、この外人が線路上に落っこちるであれを実行に移そうとした処であった。 さて、それから、彼はもう一度前後左右を見廻すと、 ろうという主人公の予想に反して、外人は二歩、三歩と はて此れは合点がゆかぬわいと云った風に一寸頭を振り 空間を進みはじめたのである。 ながら、今度は例の思案の漫歩ではなく、目的地を指す 空間を ? それは不可能であらねばならない。奇蹟で歩行を線路を横切る地上に求め、今迄のプラットフォー あらねばならない。然らざれば、我々の物理学は破産しムへと戻って来た。 なければならぬ。 そこへ、待っていた電車が人ってきて、外人も主人公 而も、見よー も車中の人となるが、ここで主人公は、なんとしても、 彼外人が、今、悠々と空中を濶歩してゆくではない この外人から空中遊行術の伝授をしてもらわなければと 全く、私の今迄の憂慮が、全部杞憂に止って了ったと駅に降りた外人のあとを追って話しかける。 ところが、話しかけられた外人ジャマイカ氏は、目を 誰が思おう。 ばちくりさせて、自分にはそんなことはできないと否定 その場景はあたかも、線路上一面の空間がプラットフ っ 4
ある。なるほど種々の条件や状況を総合すれば、その推測は出て来 るであろうし、その推測をつかんでいる者だって、決してすくなく はないであろう。けれどもチュン・ダ・ハダラードは、予想したと はいわなかった。知っていた、という表現を使ったのだ。予想して ほんのわすかな間ではあったが、マセは、相手の言葉を頭の中で いたのと知っていたのとではまるで違う。 反芻していた。 チュン・ダ・ハダラードは、はったりをきかせているのか ? し それは、つい今しがた、靴をぬぐときに聞いたものと符合してい かし先住者がそんな真似をするとは到底考えられない。 た。今しがた、チュン・ダ・ハダラードは、長い間自分を待ってい ならば、そういう表現が、先住者においては普通なのか ? たといった。そして今度は、この自分の来訪を、ランから告げられは従来のいきさつから見て、にわかには信じがたいことだが、あり る以前に知っていたというのだ。 得ないことではないかも知れない。 このふたつを組合わせた結果は : : : おのずからあきらかである。 だが、それにしても、やはり、それではチュン・ダ・ハダラード チュン・ダ・ハダラ 1 ドは、司政官が訪ねて来るであろうことを知 が、それだけの情報網を保持しているということには、変りはない る何らかの手段を持っていた、ということにしかならない。何らかのだ。 の情報網か、でなければその他の方法によって、これをあらかしめ そして : : : 留意しなければならないのは、チュン・ダ・ハダラー 予想していたということにしかならないのである。すくなくとも、 ド : 、私たちといっている点なのた。チュン・ダ・ハダラードは、 チュン・ダ・ ハダラードの言によれば、そういうことになるのであ私とはいっていない。あく迄も私たちなのである。つまり、これは チュン・ダ・ハダラードひとりが得ている情報ではなく、その仲間 それに : : マセはもう一度、相手の言葉の細部をよみがえらせたちをも含めているということになる。仲間というのが、ここに同 た。チュン・ダ・ハダラードは、明確に、そのことで、と、 いった席しているふたりの先住者のチュンたちたけなのか、もっと広い範 のである。そのこととは、先住者がどういう感覚でいるのか知りた囲を指すのかは、何ともいえないけれども : : : チュン・ダ・ハ 、そして、なぜ先住者たちが住民投票に参加しないのかを知りた ト単独ではないことを、心に銘記しておく必要がある。 い司政官がそれらを突きとめるためにここへ来るということであ と、こうして整理して並べると長いけれども、マセは、また る。 たきする位の時間のうちに、それらの想念を複雜な一個のパターン それ程に迄くわしい情報網を、先住者たちが持っているというのとして把握し、結果としては適当な間合いを置いたかたちで、おも か ? これは、ラクザーンの一般植民者たちに対してはもちろんのむろに口を開いた。 こともっと枢要な事実を知り得る立場の連中にも伏せていたことで 「それはまことに光栄です。もしお差支えなけれ・は、どうして私が 7 ( 承前 ) 8