トーラン - みる会図書館


検索対象: SFマガジン 1977年6月号
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1. SFマガジン 1977年6月号

「それはおまえでしよ。慣れていないんだから」 ますが、その皮膚は、とかげのように、でこ・ほこがあり、皺が多 「はいはい、子供は母と言いあいをすべきじゃありませんからね」く、 色は淡いオレンジです」 「母親が正しいときは当然ですよ」母はおかしなことに、少しもユ 解説者「どんなにおいがしました ? 」においだって ? ーモラスでない口調で言った。「さあ、子供たちはお魚が好きかい おれ「さつばり見当がっきませんね。宇宙服を着ると、かげるの は自分自身のにおいだけですから」 おれたちは、どれほど空腹かしやべった。あぶなげのない話題解説者「ははあ、わかりました。わたしが申しあげたいのはです 」。それが数分っづいたあと、おれたちは米の上にのせられた、焼ね、軍曹、どんな感しがしたかということですが、 トーランを見て た大きなフ = ダイを前にしていた。この二十六年間で、おれとメの第一印象は : : : 恐か 0 たですか、吐き気がしましたか、腹がたち , リイゲイがいっしょにとる初めてのちゃんとした食事だった。 ましたか、あるいは他になにか ? 」 「そう、恐かったですね、最初は。そして吐き気がしました。おも に恐かったんですが、それは戦闘のはじまる前、ひとりのトーラン 8 が頭上を飛んだときのことです。実際に戦闘がはしまっちまいます 翌日、他の連中同様、おれも立体テレビのインタビ、ーをうけと、心理操作のためにーー・おれたちは地球で憎悪をうえつけられて ~ 。それはつまらぬ経験だった。 いて、ある言葉を聞くと、憎悪がわきあがるんです。で、おれは人 解説者「「ンデラ軍曹、あなたはでも 0 ともたくさん勲工の憎悪以外、あまり感じないというわけです」 ~ をおもらいになったひとりですが」それは本当だった。おれたち「 トーランをひどく嫌ったわけですかーーーまったく慈悲もみせす」 」みな、スターゲイトで手にいつばいの勲章をもらっていたのだ。 「そうです。皆殺しです。まあ、奴らが反撃してこなかったせいも ・あなたはあの有名なアレフ・ゼロ方面作戦に参加され、トーランありますけど。でも、催眠状態からもとに戻ったとき : ・ : ・えー、お 」初めて接触なさり、ヨド 4 攻撃から帰還なさったわけですね」 れたちは自分がこんなにすごい虐殺者だとは信しられませんでし おれ「正確に言えば、攻撃はーー」 た。十四人が気ちがいになり、残る者も何週間も精神安定剤を服用 解説者「ヨド 4 のことをうかがう前に、視聴者のみなさんも興味せねばなりませんでした」 」もっていらっしやると思いますので、 トーランについてのあなた 「それはそれは」相手は心ここにあらすといった調子であいづちを 一個人的印象をお話しいたたきたいと思います。あなたは面と向か うち、ちらっと横手を見た。「あなた自身は何人殺しましたか ? 」 てトーランにぶつかった数少ない人類のおひとりですからね。ト 「十五人か二十人かーーーわかりませんね。さっきも言ったとおり、 ・ランは恐ろしい格好をしていたのでしようね ? 」 戦闘中のおれは自分ではなくなっているんですから。あれは大虐殺 おれ「あー、そうです。写真をごらんになったこと、あると思い でした。 トランライザー 2 20

2. SFマガジン 1977年6月号

くだらん推測以外、ろくな情報がなかった。で、おれはロジャー しかし、現在のところ、ハンディキャップを負っているのは、わ 、・ツドに向かった。メアリイゲイの姿はまたみえな れわれだ。トーランの追撃艦がさらに近づくと、このハンディはさズをつかまえへ ・カー シングから情報を巻きあげようとしているのだろう。 らに深刻なものとなる。連中の方が攻撃がうまいのだ。 当方もうまく回避せねばならなくなるであろう。敵艦が五億キロ 以内に近づいたら、全乗員はシェルに入り、すべてを兵站コン。ヒュ ータにまかせねばならん。コン。ヒュ 1 タは、本艦の方向および速度 を無作為かっ急激に変化させる。 翌朝、」 前もって小隊長から通達されていたとおり、おれたちは いずれわかることだが、奴らがわれわれよりも多くのミサイルを集合した。もっとも、小隊長は例の断続的な、そのくせ、一本調 持っておるなら、われわれの生命など風前の灯だ。しかし、奴らは子な声で、艦長がきのう言ったことを歩兵用の言葉で繰り返したに 最初の一発しか撃ってこない。 ミサイルを温存しているのかもしれすぎなかった。彼は、トーランの宇宙船があれだけ進歩したのなら てごわ んし」艦長は不安そうに額の汗をぬぐった。「あの一基しか持って地上軍のほうも前回に比べてずっと手強くなっているだろう。そし いなかったのかもしれん。その場合、勝ち目は当方にある。 て、おれたちが トーランの地上軍について知っていることといった とにかく、全乗員は警告があって十分以内にシェルに入らねばなら、それしかないのだという事実を強調した。 らない。敵が十億キロ以内に近づいたら、自分のシェルのそばで待しかし、こいつはなかなか面白い問題だ。八カ月前というか九年 機するのた。五億キロに近づいたら、シェルに入る。シ = ルの部屋前というか、とにかくあのとき、おれたちは圧倒的勝利をおさめ に液が満たされ、圧力がかけられる。遅れる者があっても、責任はナ こ。トーランどもは何が起こっているかさえ、完全には理解してい 、 7 もこよ、 0 なかったようだ。宇宙におけるのと同様、地上にあっても連中は好 以上だ。小隊長 ? 」 戦的なのだろう。ただ、この前はおれたちに虐殺されるにまかせて 「わたしはあとでしゃべってやります、艦長」 いた。あのとき逃げおおせた者が仲間に、古風な接近戦について話 「解散」 してきかせたのだろう。 誰もあのばかな「尻礼」をやらなかった。海軍の連中はあれをや だからといって、その報告がヨド 4 を守るトーランのところにま ると体面にかかわると思っているのだ。艦長が部屋をでていくまで届いたとはかぎらない。光速よりはやく情報を伝える方法を、お で、おれたちはみな・。ーーストット をのそいてみなーーー気をつけをしれたちはひとっしか知らないーー縮潰星ジャンプを連続的におこな ト 1 ランの故郷の星からョ ていた。やがて、水兵のひとりがもう一度、「解散ーと言ったの って情報を伝える方法である。そして、 で、おれたちは部屋を出た。おれは、ソヤを飲み、おしゃべりを ド 4 へ至るまでに何度ジャン。フをしなければならないのかは、わか 8 し、ささやかな情報を得るため、下士官室に向かった。 らない。だから、ヨド 4 にいる連中も前回同様、無抵抗かもしれな ケツレイ 「ラ・フサー

3. SFマガジン 1977年6月号

るんだとさ」 おれは肩をすくめて、 「クソ、そんなのはすっと先のことだって話でしたがね」 「〈スターゲイト〉ってのは、特別なんだよ。あの星でもっとも可 「新しい事態がおこったのだろうよ。艦長がなんか思いついたのか能性の高い射出角をカ・ ( ーするだけでも、七、八隻の巡洋艦を常時 もしれんよ」 運航させなくちゃならないんた。おれたちには〈スターゲイト〉以 「艦長のクソッタレめ。これからラウンジへいらっしゃいますか外の縮潰星をカバーする余裕はない トーランにもない」 「よくわからないわ . 無言でカップにソヤを満たした。「もしかし 「ああ」 たら、わたしたち、彼らにとっての〈スターゲイト〉を偶然に見つ 「こっちへ来るとき、一杯もってきてもらえませんか。砂糖はごくけてしまったのかもしれないわね。それとも、トーランはわたした 少しでけっこうですー ちより十倍も多く船を持っているのかもしれない。百倍かも。そん 「いいとも、二十分ばかりしたら行くよ」 なこと、誰にもわからないけど」 「たのみます。じゃあ、連中を狩り集めます」 おれはふたつのカップにソヤを満たし、砂糖を入れた。ひとつに 大豆をもと みんなはゾロゾロとソャ ( 封をする。 ) の配給機に近づいていった。 にした飲料 おれもポッター伍長のうしろに並んた。 「そう、それを知る方法はない」 「どう思う、メアリイゲイ ? 」 高重力でソヤがとびちらないよう注意しながら、おれたちはテー 「わたしはただの伍長たわ、軍曹。わたしなんかどうなったってー ・フルに戻った。 「シング少尉ならなにか知ってるわ」メアリイゲイが言った。 「おい、まじめなんた」 「かもしれん。でも、奴と連絡するにはロジャーズとコーテズをと 「いいわ。そんなにやっかいなことじゃないと思うの。もう一度、おさなくちゃいけないんたそ。いまそんなこと言いだしたら、コー わたしたちにシェルを試させようと思いついたのかもしれない」 テズに怒鳴られちまう」 「実戦の直前だってのにかい ? 」 「わたしならシングと直接連絡がとれるわ。わたしたち : : : 」彼女 「うーん、かもしれないでしよ」彼女はカップをとりあげると、フ はおれを厳粛な眼で見つめ、それから、小さなえくぼをつくって、 ッとカップの中に息を吹きこんだ。心配そうにみえた。眉と眉の 「わたしたち、友達ですもの」 間を二分するように小さな皺が一本きざまれている。「それとも、 おれはやけどするように熱いンヤをすすり、無関心をよそおおう ト 1 ランの宇宙船がすっと遠くでわたしたちを待っていたのかもしとした。 れない。わたし、不思議に思うんたけど、連中はなぜわたしたちが「水曜の夜、いなくなったのは、そのせいか ? 」 〈スターゲイト〉でやってるようにやらないのかしら ? 」 「わたしの勤務当番表を調べに行ったのよ」彼女は言い、微笑をう コラ・フサー

4. SFマガジン 1977年6月号

ならないことになっている。 いるうちに、 ミサイルのひとつが敵ミサイルを捕捉、破壊した。こ メアリイゲイは続けてなにか言ったが、壁のスビーカーががなり こから千万キロほど離れた空間だった」 」てはじめたので聞こえなかった。 すぐ近くまで来ていたのだ。 「全乗組員に伝達。第六階級以上の陸軍要員および第四階級以上の 「この遭遇戦によって明らかとなったことで、ただひとっ励みにな 軍要員は、二一三〇に戦闘指令室に集合。全乗組員に ることがある。ミサイル爆発のスペクトル分析からわかったのだ スビーカーはその通告を二度くりかえした。おれは何分間か横に が、敵ミサイルは、これまでわれわれが出会したミサイルと同程度 」るため、その場を離れた。メアリイゲイは傷をーーーそして、全身の爆発力しか有していない。ということだ。したが「て、少なくと 医者と火器係に見せていたが、公式には、おれは嫉妬を感しも、きやつらの爆薬に関する進歩は、推進力に関するそれほどには ーカュ / すすんでおらんということがわかる。あるいは、さほど強力な爆発 物は必要ではないと思っておったのかもしれん。 艦長は戦闘概要を説明しはじめた。 いままでは理論家しか興味を示さなかったのたが、これは非常に 「しゃべるべきことは、あまりない。あるとしても、あまり いい = 重要な効果の初めての実例である。君」と、艦長はネグレスコを指 ースではない。 さして、「アレフ作戦で、われわれが トーランと戦ってから、どれ 今も本艦を追尾しているトーランの宇宙船が遠隔操縦のくらいたったね ? 」 、サイルを一基、発射した。発射時の加速度は八十のオーダーと「それは艦長の準拠体系によ 0 て違います」彼女はうやうやしく答 われる」 えた。「わたしにとっては、八カ月です、艦長」 艦長は一拍おいて、 「そのとおりだ。君たちは縮潰星ジャンプ中の時間短縮により、九 「そのミサイルは約一日にわたってロケット噴射をおこない、加速年を失った。その間に、工学的な面では、われわれはいかなる重要 は百四十八に到達した」 な研究も発明もなしとげておらん。 : つまり、敵艦は未来から来 あえぎ声の大合唱。 たというわけだ」 「昨日、さらにはねあがったーー・二百三 ()5 だ。言うまでもないこと その言葉が一同の心にしみこむのを待つように、艦長は言葉を切 」が、これはこれまでに遭遇したことのある敵ミサイルの加速能力った。 ) 二倍である。 「戦争が長びくにつれ、このことはいっそう顕著になるだろう。だ 本艦は四基の迎撃ミサイルを発射した。敵ミサイルの軌道としてが、トーランも相対性原理を打ち消す術は知っておらん。だから、 。っとも高い可能性をもっとコンビ、ータがはじきだした四つの軌彼らにと「て有利な事実は時としてわれわれにとって有利な事実と ~ にそれそれ交又するよう発射したのた。本艦が回避針路をとってもなりうるのだ。 田 4

5. SFマガジン 1977年6月号

の的みたいだ 0 た。一列に並んでいたんで、かた 0 ばしから射ち倒ていくと、今日の祭典につりあ「た二種類の衣装を示した。おれは してやった」 煉瓦色のやつを選んだーー淡い青灰色のやつはちょっとキザすぎる 「じゃあどうして ? 」母が言 0 た。「 = = ースでは、十九人が殺さと思えたのだ。おれはシャワーをあび、髭をあたり、化粧は断わ 0 れたんだって言ってたよ」 て ( マイクは美しく着飾っており、化粧の手伝いをしようと言いだ 「殺されたっていうのかい ? そうじゃないよ」 した ) 、会場に行く道順を書いた半ページの指示を読み、出発した。 「よく覚えていないけどね」 二度、道を間違えたが、通廊の交又点ごとに十四の言語でどこへ 「たしかに、十九人がやられた。けど殺されたのは四人だ。戦闘の行く道だろうと示すことのできる = ンビ、ータがそなえられてい 最初のほうでね。トーランの基地を見つける前のことた」チーのた。 死にざまについてはしゃべらないことにした。話が複雑になりすぎ おれの見るかぎりでは、男の服装は昔に戻っていた。腰から上は る。「残る十五人のうち、ひとりは味方のレーザーにやられた。腕そう悪くなか 0 た。短いケイ。フのついた、び 0 たりした ( ィネ , ク が一本なくなったが、生きてる。残りは : : : 気が狂った」 のプラウスだが、幅広のキラキラ光るべルトの役目をはたさないべ 「なにか、トーランの武器のせいなのか ? 」マイクが尋ねた。 ルトがついていて、それから、宝石をはめこんだ小さな短剣がさが 「そいつはトーランには関係がない ! 軍隊のせいなんだ。連中は「ているのた 0 た。おそらく手紙をあけるくらいにしか役にたたな おれたちの心をいじって、動くものはすべて殺せと命じた。軍曹が いだろう。大きなひたのついたパンタロンは、キラキラする合成皮 あるキイ・ワードを口にすると、その命令が効力を発揮するんだ。革の・フーツの中にたくしこまれている。そのプーツは ( イヒール 虐殺者になっちまうんたよ」 で、膝まであるのだった。これで羽飾りをつけた帽子をかぶれば、 おれは数回、あらあらしくかぶりを振 0 た。「リファナがきいてシ = イクスビアが舞台にでてくれと雇いにくるだろう。 しる 女性はもっとすごかった。おれはホールの外でメアリイゲイと会 「ちょっと失礼」おれはかなりの努力をして、立ちあがった。「二 十何年ーー」 「まっ裸みたいな気持よ、ウィリアム」 「もちろんよ、ウィリアム」 「けど、すてきだよ。これが流行なんだな」 母はおれの肘をとり、寝室に導くと、夕刻の式典には充分まにあ おれとすれちがった大部分の若い女性は、似たような衣装をつけ うよう起こすと約東した。べ , ドは途方もなく心地よか「たが、おていた。両脇にわきの下から裾までの大きな四角い窓があいたワン れはごっごっの木によりかかってでも眠れただろう。 ビースだ。裾は男の想像力がはじまるところで終わっていた。上品 空腹と麻薬と多忙な一日のせいで、母は冷水をおれの顔にかけにしているには、非常に控え目の動きをせねばならず、また静電気 て、おれの目を覚させねばならなか「た。母はおれを洗面所につれに信頼をおかねばならないのであ「た。 幻 6

6. SFマガジン 1977年6月号

「月世界旅行」イラスト 〔今月ガッカリしたこと〕 ところが、届いた雑誌を開いてガックリきた。たった 先々月号の「テレポート欄 . に紹介があったのひとこと「ノーコメント」と書かれてあったからた。好 でごそんじのかたも多いかと思うが、関西の有力フききらいは別として、マガジン・レビューとしてある以 アンが発行しているファンジンに「オービット」という上は、ほんの少しでも評してほしかったのに。 のがある。 そうでなくても、古典 (f) のファンというのは数が少 一応は海外研究誌ということになっているらしい なく話のできる人間がいなくて、淋しくてしようがな のだが、や奇想天外の作品考課表などが載ってい 。それでも、足を棒にしてセッセと歩き回り、高いお て、これが目玉商品になっている。 金をだして買い、なんとか読者に親しみを持ってもらお 現在、や奇想天外の作品評をしてくれる機関うと努力してきたのに、これじゃ、あんまりた。 は、ほとんどないから、ファンジンとはいえとても参考それではと考課表のほうを見ると、二十二人のうち十 になるので、・ほくは欠かさす読んでいる。 ( もっとも、人が読んでなくて、 八つの作品中のプービー賞。あー ぼくの作品なあ、情けなくなっちゃった。 ど、いつもケチ ョンケチョンに〔今月よくわからなかったこと〕 もうひとつ「オービット」に関連した話を書いてお / 「を・酷評されて泣い てるけど ) で、・ほくは今先日、ファンから電話をもらった。「こてん古典」や 度刊行された第小説の話をした後、そのファンはこういった。 四号に、少々期「横田さんて、界の黒幕なんですか ? 」 待していたこと なんのことやらわからないので、「えっ ? 」と聞きな があった。それおすと、そんなふうにとれる文章が「オービット」の " 【ツは、昨年九月号 Ed 一 ( or こというべージにでていた、ということだった。 の本誌に翻案しあわてて、ペ 1 ジをめくってみたら、なるほどでてい た、巌垣月洲のた。こんなことが書いてある。 ・ ) ' 日本最初の 「征西快心篇」◇このファンジンに掲載された雑文の文責は、すべてそ が、どう評価さの書いた本人に帰する。編集長は個々の雑文に対する責 ライターの意見Ⅱエデイターの意 とたった。 見という誤解はなさらぬように。 5 3

7. SFマガジン 1977年6月号

おれは艦長の言葉を聞いてはいたが、おれの心にあるのは、友達 ろう。 の三分の一の生命がつい一時間ほど前に失われてしまったというこ 一方、われわれは宇宙よりトーランの基地のある惑星を攻撃し、 君たち歩兵の助けをかりすに敵基地を破壊することができるだろとたった。艦長は立ちあがり、軍のセオリーをしゃべりだした。 う。しかし、それには非常な危険が伴うものと考えられる。われわ「それゆえ、ときには、戦争に勝つ一助とするため、戦闘を放棄せ れは : : : 本日攻撃をしかけてきた物体により撃ちおとされるかもしねばならぬこともある。いまわれわれがしなければならぬのも、ま れん。きわめて重要と思われる情報をスターゲイトへ持ち帰ることさしくそれだ。 もできなくなる。敵の新兵器についてその推論をつんだ連絡機を送これは容易な決定ではなかった。実際、わたしの軍人としての経 り帰すことは可能だ : : : しかし、それでは充分ではない。その程度歴中、これほど困難な決定はなかったのである。な・せなら、この決 定は、表面上は臆病者のなせるわざと見えるからだ。 では、軍は大幅におくれをとるであろう。 ーセントだとはじきだ それゆえ、当艦はヨド 4 をまわる針路をとる。敵との遭遇は避兵站コン。ヒ、ータは成功の確率が六十二パ した。それなら、敵基地を攻撃すべきだろう。だが不幸にして、生 け、できるだけすみやかにスターゲイトへ帰投する」 成功の計画中に きて帰れる可能性は三十パーセントしかない 信じられないことだが、艦長は腰をおろし、こめかみをもんでい は、光速でとぶ〈アニヴァーサリイ号〉で敵惑星に突っ込むという 「諸君らは少なくとも分隊長もしくは班長である。すぐれた戦歴をものも含まれているのだ」なんてこった。 「諸君らがかような決定を下さねばならぬ情景にたちいたらぬこと もっておる。君たちのうちの何人かは除隊後もふたたび軍役に戻っ てきてくれると、わしは願っておる。さすれば、少尉になれる。そを、切に願うものである。スターゲイトに戻ったら、わたしは間違 いなく軍法会議にかけられるたろう。しかし、トーランの基地の破 して、初めて本当の指揮ができるのだ。 わしが話をしたいと思うのは、そうした諸君だ。君らの上官とし壊よりも〈アニヴァーサリイ号〉の被害を分析することによって得 られる情報のほうが重要だと、わたしはほんとうに信じている」艦 て : : : 上官のひとりとしてではなく、先輩、忠告者として、だな。 指令というものは、戦略状況の判断やどのような戦闘行動が当方長は背筋をのばして、「一兵士の経歴よりも重要なのだ」 おれは笑いだしたいのをこらえた。たしかに〈臆病〉は艦長の決 の最小の犠牲で敵に最大の被害を与えうるかと考え、その考えをお しすすめることでできるものではない。現代の戦争は、特に二十世定と少しも関係がない。たしかに艦長は生きるという根元的かっ非 紀以降、非常に複雑になっておる。戦争は、一連の戦闘に勝てたか軍隊的意志をもちあわせてはいなかったのだ。 らといって、勝てるものではない。軍事的勝利、経済圧迫、兵站、 3 敵情報の利用、政治状況など数十の、文字どおり数十の要素によっ整備員はどうやら〈ア = ヴァーサリイ号〉の横腹にあいた大きな R て勝つものなのた」 裂け目につぎをあて、再び気圧を正常にすることに成功した。おれ

8. SFマガジン 1977年6月号

十九人の乗員を乗せただけの船を地球に向けて運航するのは不経済大将はテープルの端に腰をかけ、テー・フルにそって視線をはしら だと考えられたのたった。その三十九人は除隊を許可されていた。 せたが、誰かを見ているというわけではなかった。 おれたちは二機の偵察機に分乗して、惑星におりたった。 「わたしの戦闘の記憶は半世紀も前のものだ。わたしにとって戦闘 は刺激だ。精神の昻揚だ。わたしは君たちとは違う種類の人間なの かもしれん」 ツッフォード大将 ( たったふたつの小屋と二十四の墓しかなか あるいは、つごうのいいことだけ記憶しているのか、だとおれは ったカーロンで初めて会ったとき、彼はたたの少佐たった ) がエレ ガントな研究室でおれたちをむかえた。大将は部屋の奥、巨大なホ思った。 ログラフの作戦図の前をいったりきたりした。作戦図のラベルはか「しかし、それは取るにたらんことだ。君たちにある交換条件をた ろうじて読みとれ、おれはヨド 4 がかなり遠方にあったことを知っそう。直接戦闘にかかわらなくてもいいのだ。 コラ・フサー てびつくりしたーーーもちろん、縮潰星ジャンプに関しては距離なん 実は、優秀な教官が不足しておる。ひとりもおらんと言っても過 て問題じゃない・すぐ近くにあるが、もちろん縮潰星しゃないアル 言ではない。 フア・ケンタウリへ行くときの十倍ほど遠くにあるだけだ。 諸君らは、ベトナムやシナイ戦争をくぐりぬけてきた退役軍人の 「諸君ーーー」と、大将は言ったが、声が大きすぎた。それから、教授をうけた。君たちが地球をはなれたとき、彼らのうちいちばん くだけた口調で、「諸君、われわれは諸君を新たな攻撃部隊に編人若い者でも四十代だった。二十六年前のことた。それゆえ、われわ し、ふたたび宇宙へ送りだすこともできる。〈エー 丿ート徴兵法〉はれは君たちを必要としており、それなりの金を払おうというのた。 改訂せられ、主観的時間で二年から五年へと従軍期間が延長されもし教官となってくれたら、少尉の位をあたえよう。地球で教官 になれるのだぞ。月でなら給与は二倍、カーロンなら三倍、ここス われわれは強制はせん。しかしーー・・ちくしようめーー君たちのなターゲイトなら四倍を払う。しかもだ、いま決心する必要はないの かに、軍に残りたくないという者がおるというのがよくわからんのだよ。地球まで無料で送り帰してあげようーーーまったくうらやまし だ。もう数年っとめあげ、それに複利を加えれば、一生楽をして暮い話だ。わたしなど、もう二十年も帰っておらんし、おそらく一生 らしていけるというのにだ。たしかに、君たちの損失も大きかったもどれないだろう。まあ、もういちど民間人になった気分をあじわ ・ : しかし、それは避けがたいことたったのた。君たちが最初の試いたまえ。それが気に入らなければ、 Z ;-@ の施設に入っていけ みだったのだから。いまでは、諸事、ずっと容易になっている。戦ばいし 。そこから出てきたときには、士官だ。勤務地は望みのまま 闘スーツは改良されたし、トーランの戦術もよくわかってきた。武だ。 器も効果的なものになった : : もはや恐れる必要はなにもないの笑っておる者がいるな。まあ、判断はいずれ先のことにすればい 。地球は君たちが出発したときと同じではないのだそ」 こ 0 209

9. SFマガジン 1977年6月号

指揮官 : 第ニ階級 : 第三階級 : 第四階級 : 第五階級 : 第六階級 : マンデラ軍曹 テイト伍長 ュカワ伍長 ホフシタールー等兵 ムルロイー等兵 ショクリイー等兵 ラビ二等兵 編成表 アルファ攻撃部隊 ョド 4 方面作戦 第一小隊 ストット小隊長・・ コーテズ中尉 戦闘曹長 ( 空位 ) 少尉 ( 空位 ) ロジャーズ小隊軍曹 チン軍曹 ベトロフ伍長 ルスーリー等兵 へノレッ - ・ = 等 : 兵 ヘイロフスキイー等兵 一等兵 カトー ポーリングー等兵 ルノールご . 等兵 ・マーチネ艦長・・・ 軍医 ウイルスン 少尉 ( 医博 ) ポッター伍長 ストルヴ伍長 クサワー等兵 アレクサンドロフ ハーグマン一等兵 デミイー等兵 ステイラーご . 等」兵 一等兵 専門技術者 : ボク中尉 (C K), ルヴァイン中尉 (C P R), パストー リ中尉 ( 心理 ) , ワインフ・レナー中尉 ( 医 ) , ハーモニイ少尉 ( 医 ) , フ。リンスウェル少尉 ( 資料 ) , ストーンウェル准尉 ( 火器 ) , セオドボ リス准尉 ( 無線 ) , シング少尉 ( 航行 ) , ドールトン小隊軍曹 ( 整備 ) , ナンミカール小隊軍曹 ( 補給 ) 。 発行スターゲイト TAC BD / 183 ー 967 李ー 138 / SG 2007 年 3 月 20 日 発布者 : スカーフォース司令官 交付先 : 1 : アルファ攻撃部隊全隊員 2 : アルファ攻撃部隊第六階級以上の全隊員 3 : 攻撃部隊第五階級以上および必要と認められる隊員 ムプッ・ナーコ大将 代理発布者攻撃部隊准将アラシア・リンカー S G 2007 年 3 月 20 日 T A C B D / 1003 / 9674 / 13g / 100 C 0 P ン

10. SFマガジン 1977年6月号

のだ。 軍曹マンデラ 「はい、小隊長」 ( 西暦二〇〇七年ー二〇二四年 ) 「マンデラ、君は君の分隊員の肉体的戦闘能力のみならす、精神的 戦闘能力についても責任を負っておる。したがって、本艦における 士気阻喪の問題についてもよくわかっておるだろうな。君の分隊も まぬが 恐いかって ? そうとも、恐いさ。恐くない奴なんているのかその問題から免れておらんのだ : : : それにつき、君は何をしたかね ね。いるにしたって、馬鹿か自叔志願者かロポットか、さもなき ? 「わたしの分隊に関してでありますか ? 」 や、兵科将校ぐらいなもんだ。 小隊長はおれを長いこと見つめて、 ト小隊長はさっきから〈アニヴァーサリイ号〉の集会室兼 「もちろん、そうだ」 食堂兼講堂兼体育館の小さな演壇上をいったりきたりしていた。 コラ・フナー 「徹底的に話しあいました」 おれたちはテトからョド 4 へと最後の縮潰星ジャンプをしおわっ たところで、百十二で減速中だった。縮潰星ョド 4 に対する速度「で、なにか劇的な結論に到達したかね ? 」 は光速の九割にちかい。おれたちの船は追跡され 縮潰星からとびだすという現象を利用したの ていた。 本篇は一九七六年のヒーゴー賞、ネビが縮潰星ジャンプという宇宙航法である。 かくて、多くの植民隊、探検隊が宇宙に送 = ラ賞長篇部門のダブル・クラウンに輝く 「しばし気を楽にして、本艦のコン。ヒュータを信 "The Fo 「 ever war" の第二部である。もりだされる。あるとき、そうした宇宙船の一 頼するんだな。トーランの宇宙船が攻撃可能範囲 ともと、七三年の〈アナログ〉に掲載された機が攻撃をうけて破壊された。その敵は〈雄 に入ってくるのは、まだ二週間ぐらい先のことに 中篇であるから、本篇だけ読んでも充分に楽牛座人ⅱトーラン〉と名づけられ、ここに地 なるだろうさ。だが、諸君がこれから二週間とい しんでいただけるものと思うが、一応、背景球人対トーランの永久戦争がはじまったので うもの、ふさぎこんでおったなら、敵が接近して説について簡単に述べておきたい ( 詳しくは、ある。地球では国連探検軍がっ きたとき、諸君も諸君の部下も戦闘などおこなえ解本誌七六年三月号の風見によるスキャナくられ、 = リート徴兵法が制定されて、知能 、および〈別冊・奇想天外〉 2 号の安田均指数百五十以上の男女が集められた。その中 ぬ状態にあるのではないかね。恐怖というのは伝 氏のエッセーを御覧いただきたい。なお邦訳に主人公マンデラがいた 染病だからな。マンデラ ! 」 御者座エプシロンをめぐる惑星の敵基地を 単行本も近々発売になる予定である ) 。 小隊長は、部下の前ではいつも注意深く〈マン 縮潰星ジャン。フが発見されたのは一九八五攻撃し、勝利をおさめたマンデラたちは、太 デラ軍曹〉とおれを呼ぶのだが、この会合に顔を年のことである。たとえばプラ , ク・ホール陽系にいちばん近い縮潰星〈スターゲイト〉 なども縮潰星の一種だが、そうした星にかなで休息をとり、ふたたび宇宙にのりだした。 だしているのは分隊長かそれ以上の位の奴ばかり ( 訳者 ) りのスピードで突っ込むと、瞬時にして別のそこから第一一部がはじまる : で、兵卒はいなかった。だから、階級を省略した