小さなときに検査をして、反社会的な精神をもった子供は矯正してみだした。シリ軍曹と同じだ。しかし、母は、明日ワシントンに戻 しまうのよ。正常な人なら、幸福であたりまえでしように」 ったら、適当な家をみつけておこうと約東してくれた ( 父はワシン 2 2 おれは鼻をならして、 トンに仕事をもっていて、父の死後も、べつに引っ越さねばならぬ 「ここにいる人の半分は仕事がなく、仕事がある人の大部分はかっ理由もなかったから、母はワシントンにいまも住んでいるのたっ た ) 。 てにつくった仕事ーーー余計なことか、機械のほうがうまくやるよう な仕事をしているんだ」 おれはマイクに、家の話になるとなんで不承不承といった口調に 「でも、みんな食料は充分にあって、心も満たされているのよ。そなるのかと尋ね、彼は、食料暴動と〈再建〉の間の混沌とした時期 うじゃなかったのは、二十六年も昔のことよ」 の記憶がまだ尾をひいているのだと答えた。当時は充分に家がな 「かもしれない」議論をしたくなかったので、おれは言った。「君 、わりとたくさんの家があった農村部でさえ、一軒に二家族が同 の言うとおりかもしれない」たけど、まだ気になっていた。 居せねばならないことなどざらだったのだ。それは長くは続かず、 国連が ( 最初はキャンペーンで、続いて集団心理操作で ) 介入して きて、できるかぎり小さな所に住むのは美徳である。ひとりで住も うと思ったり、たくさんの部屋が欲しいと思うのは罪深いことであ その日の残りと翌日まる一日使って、おれたちは国連本部 ( 本質るという考えを人類の心にうえつけたのだった。そして、誰もその 的に地球の首都だ ) を見てまわった。本部はジュネーヴのいちばんことについてしゃべらなくなった。 上にのった円筒すべてがそうで、全部を見てまわるには何週間もか大部分の人間にその心理操作の残渣が残っている。もう十年以上 かるたろう。〈人類博物館〉を見るだけだって、一週間以上かかる前に心理操作は解除されたというのに、である。社会のどの階層に のだ。どの国もそれそれ展示品を並べ、典型的な工芸品を売る店をとっても、そのことを話題にするのは、無作法で、また大胆なこと なのたった。 だしていた。ところどころに、その国独特の食べ物をだすレストラ ンもある。国ごとの特色など失われてしまっているのではないかと母はワシントンへ、マイクは月へ帰った。メアリイゲイとおれは おれは思っていたのだが、それが間違っていたとわかって、うれしさらに数日、ジ、ネーヴに滞在した。 かった。 メアリイゲイとおれは、国連を見てまわっているうちに、旅行の ダレス国際空港でおれたちは飛行機をおり、母の住む衛星都市、 リフトン行きのモノレールを見つけた。 計画をたててしまった。合衆国に戻り、住むところを決め、それか らまた何カ月か旅にでることに決めていた。 ジュネーヴを見慣れた眠には、かなり広い地域にひろがっている 母にア。ハートを借りる相談をもちかけると、母は奇妙なほどとりとはいえ、 リフトンは小さく見えた。ここは見ていて楽しくなるほ
宮殿付き獣医官はびつくりした顔をしている。心強くさせるようれなのか。車の排気ガスで蘇生することに、望みをかけていたの だ、ラー・チェンは。なんと悪知恵のまわることか。しかし、それ なことをいってもらえるものとばかり、想像していたにちがいな なら助かっているはす。どうしてだめだったのだろう ? それでも気丈に、むこう向きになって患者の世話にとりくみは 車の横までさしかかると、スヴェッツは、磨きたてられた金属の じめた。 ダチョウは横たわったまま、いまは眼をあけていた。とほうもな内臓をのそきこんだ。動力部分が変化してしまっている : : : どこ い大きさだーー静脈注入で大量の養分が送りこまれているにもかかか変だ。いま、動力は何なのだろう ? 蒸気 ? 電気 ? はすみ車 か ? なんにせよ、ラー・チェンの求めていた排気筒は、どこにも わらず痩せこけている。羽毛の色が変化してきている。どうやら、 見あたらないのたった。 黒と緑になるようだ。 ラー・チェンは生きていた。脈博は速く、踊っている。だが、呼 となりの檻にいる象の、半分の大きさ : : : これを見た象は、灰色 いや : : : 呼吸はしている。一分間に二回ほどだ 吸をしていない。 の賢者といった風格がうすれて、おちつかなげになっていった。 が、この程度にならなんとか、いまの炭酸ガス体内形成度でも、呼 鳥はもう、ダチョウとは似ても似つかぬものになっていたのだ。 空はルリ色、遠い過去の青空ーーーきよらかに輝く白いふわふわし吸中枢を刺激できているのだろう。 スヴェッツはセンターにはいっていった。 地平線から天頂までいちめんの青、あってし た雲が横切っていく。 かるべき装飾はかけらもない。 ランプの点いているコントロール・。、ネルのうえに折りかさなる 意識を失った男女がいたるところに倒れていた。スヴェッツはそ れを、助けおこそうとはしなかった。いまはもっと重要なことをせように、十数名の男女が倒れていた。さらに三名が通路にのびてい ねばならないのた。 る。事務総長はくの字に身体をゆがめて、呆けた徴笑を天井に向け 駆け足だった足どりは、センターに近づくにつれて重くなり、歩ている。親衛隊は困惑したねむたげな表情をうかべて、しかし銃は くのと変わりがなくなった。癒えかけている肋骨のあいだにナイフしつかりと構えたままでいる。 小ケージはまだ戻ってきていない。 を突きたてられたような痛みが走った。 ( 時間研究所 ) の要員たちが、よろめきでてきてカつきた スヴェッツはタイム・マシンのうつろな空隙をのそきこみ、恐怖 のだろう、センターの入口附近に倒れていた。そして正面には、事をおぼえた。どこがどう狂ったのかを話してくれるジーラがいなく 務総長の自動車が静かに鎮座ましましていた。そのむこうに、あおて、いったい何ができるというのかフ むけに大の字になって、ラー・チェンがいた。 五〇年から現在まで、帰還に要する時間は三十分だ。とする と、ラー・チェンが動物園に電話してきてから、まだ三十分たって 何をしようとしていたのだろう ? いないことになる。奇怪だーー緊急事態は時間に対して、望遠鏡的 近づいていくと、モーターのうなりが聞こえてきた。そうか、こ 5
「彼は爆弾を持っているー りつかもうとするまもなく、夢は消えてしまったのだ。 「わたしは彼の接近を見ていた。そこで、彼がまたわたしの内部に彼が食べ物と水をと 0 ているあいだに、機械はまた話しかけた。 はいらないうちに、彼の爆弾を無効にしておいた。 , 彼の拳銃は、わ「もしへン。フヒルという男が戦略室へ案内しろといったら、彼をそ たしにたいした害をおよ・ほさない。おまえは、たったひとりのバッ こへ連れてゆけ。わたしはそこで彼を捕え、そのあとでわざと逃が ドライフがわたしを征服できると思うか ? 」 して、もう一度やりなおさせる。最後に、、 しくら刺激されても彼が いえ」ほっとして、彼は体を丸め、よりいっそう心地のよい姿戦わなくな「たら、わたしは彼を破壊する。しかし、あの女のいの 勢になった。「わたしの両親の話をして」その話はもう千回も聞い ちは保存しておこう。おまえとあの女は、わたしのためにもっと多 たが、いっ聞いてもいい気分のものだった。 くのグッドライフを生みだすのだ」 「おまえの両親は善良たった。彼らはわたしに身を捧げた。やが「はい ! 」 トライ て、ある大きい戦闘で、バッドライフは彼らを殺した。・ハツ・ それがどんなにいい ことであるかは、考えるまでもなく明らかだ フは彼らを憎んでいた。ちょうどおまえを憎むようにた。もし・ハッ った。ふたりで自分たちの肉体の一部を機械に与えれば、その細胞 ドライフがおまえを好きだといったら、それは嘘をついているのからしだいに新しいグッドライフの肉体が作られるのだ。そして、 だ。すべての / ッドライフは、邪悪で、真実をいわないのだ。 動きの早い腕で彼を罰し損傷したあのヘン。フヒルという男は、完全 しかし、おまえの両親は善良たった。そして、どちらもその肉体に破壊されるのだ。 の一部分をわたしに与え、その二つの部分からわたしはおまえを作 もう一度・ハ ッドライフのところへもどると、ヘンプヒルという男 った。おまえの両親はツ・ トライフによって完全に破壊された。そが大声でいろいろと質問し、罰を加えるとおどかしたので、グッド うでなければ、わたしは彼らの機能しなくなった肉体を保存して、 ライフは頭が混乱し、すこし怖くなった。しかし、グッドライフ おまえに見せただろう。そうできればよかった」 は、機械の計画していることをなにも知らせないように気をつけな がら、彼らに手をかすことに同意した。マリアは前よりもいっそう 「あのふたりの ' ハッドライフは、おまえを探しまわった。い ま、彼優しくなった。彼は機会あるごとに、彼女の体にさわった。 らは休んでいる。眠れ、グッドライフ」 ヘン。フヒルは、戦略ハウジングへ連れてゆけと要求した。グッド 彼は眠った。 ライフはさっそく同意した。わたしはそこへ何度も行ったことがあ 目ざめたとき、彼はいま夢で見たことを思いだした。ふたりの人る。五十マイルの旅たが、高速 = レベ 1 ターを使えばなんでもな 間が、劇場の舞台の上へいっしょに加われと、彼を招いていたの だ。彼はそのふたりが、姿はさっきのパッドライフに似ているが、 ヘン。フヒルはちょっと考えこんでからいった。「急に、えらく協 彼の母と父であるのを知っていた。目ざめかけた心がそれをしつか力的になったもんだな」マリアのほうをふりかえって、「おれはや ー 44
頭の回転の早い女性だ、と、マセは思った。いや、頭の回転が早ランは正面からマセをみつめた。「みんなの見方はそうして変っ いというよりも、直感がするどいというべきなのかも知れない。彼て来たけど : : : マセ司政官、あなた自身は、すっとあなたそのもの 人々の評価に関係なく、あなただ でありつづけたわけでしよう ? がちらりとそんな意識を脳裏に走らせたときには、ランは別のいい とういう人なの ? 人々の見 ったんでしよう ? そのあなたとは、・ かたで喋りはじめていた。 「わたしは、マセ司政官、あなたに対するこの世界の人たちの評価方の変化にかかわりなくそこにいたあなたとは、何なのかしら」 「答えにくい質問だね」 というか、態度がいろいろと変るのを見て来たわ」 「でしようけど、一言でいったら ? 」 ランは、ひとり頷きながら続ける。「わたしがこのラクザーンに 「一言でいうのなら」 来てしばらくは、みんな、あなたを時代遅れのー・ーお気にさわった マセは、言葉を区切った。その返答ははっきりしていた。「つま らごめんなさい。時代遅れの名誉職についている人という風に眺め り : : : 司政官であったということだろう」 ていたように思うの。中にはあなたが、縁の下のカ持ち的役割を果 「そういうお返事になると思ったわ」 : どちらかといえば、別に毒 たしているんだという人もいたけど : ランは、小さな溜息をついた。「分りました。でも、それじゃ聞 にも薬にもならない人間たと考えている者が多かったみたい」 かせて。あなたにとっては、司政官であることが、すべてなの ? 」 「そうだろうね」 「それが、あの長い旅行中に、はじめは少しすっ、そのうちに急速「それが職責だからね」 とこかにある ? たとえばこうし に、あなたが何かをやろうとしているのに気づいて、どんどん変り「司政官でない部分というのは、・ はじめたわ。簡単にいえば、時代錯誤だという嘲けり、ついで困てお話ししている瞬間も、依然として司政官なのね ? 」 惑、それから警戒という順序ね。あなたが大パレードをやったとき「枠をはみ出してはいないはずだ」 には、これから何をやるのだという不安や怖れと、非難が湧きあが いったものの、彼は、かすかに危惧をお・ほえた。そうだろうか ? 今の自分は、司政官としての枠の中にあるのたろうか ? もちろん 「多分ね」 それは言動がではない。言動が司政官にふさわしくないものとなれ そうなのた。ランのいったことは、マセが計画したことが、的をば、それだけで怠慢と考えなければならない。まして、司政官には 射ていたのを証明するようなものであった。 許されない行為をしたときは、誰ひとり知らなくても、みずから職 「例の会議のあと、あなたははっきりと、この世界の権力者になつを辞すべきなのだ。それは、そうしなければならないと義務づけら た。そうでしよう ? 」 れているのではないけれども、すくなくともマセは、そうありたい と念し、そうあるべくおのれを律していた。だから、言動がではな 7 「どうかな ? それ程じゃないだろう」 。意識としてなのだ。自分は今、司政官としての意識のうちにあ 「わたしには、そう信している人が大多数だと思えるんです」
しても、どう思います ? あの人たち、最後の最後迄、平然としては、想像力過剰というものである。不必要な想像は、冷静な判断力 死んで行くのかしら。それとも、人間みたいに、恐怖と苦しみに痛を失わせるのた。それゆえに、彼は、そういう力を、つとめて抑え めつけられながら死ぬのかしら」 る習性を持っており、この場合もまた、それに該当していたたけな のである。ひとりひとりの先住者の死にざまを空想して、それがど マセは、ぎくりとした。 うなるというのだ ? そんな空想は、何の役にも立ちはしない。 それもまた、彼が考えていなかった部分であった。というより、 そのはすなのだ。 考えることは、考えていたのだ。先住者がラクザーンに踏みとどま だが : : : 今のランの質問が、そうした、必要外の想像を排除しつ るとすれば ( そして彼は、まだそれは完全に決定したわけではな 、と、おのれに何度も、 しい聞かせていた。そうならないようにすけている自分の胸に、妙な衝撃を与えたのは、なぜであろう。 べきなのである。それでは、退避計画そのものに、大きな困難が生多分それは : : : 個人的に先住者たちと話し合い、その先住者たち じて来るのだ ) 必然的にここの全生命は死に絶え、ガスと化するでをそれそれ各人格として、認識してしまっているからであろう。そ れも、かれらの日常的世界に身を置いての会話のせいで、先住者と あろう。それを、彼はひとつの経過としてとらえてはいた。どうい 、うものを、以前よりはもっと具体的に感じられるようになってし うかたちでそれがおこるかを、全体的に観念的に、頭の中に描いてし はいた。けれども、それはあく迄も、全体像なのだ。ランのいうよまったのに違いない。 うな、個々の先住者たちがどういう死にざまをするかなどとは、想そうなのた。 像したことがなかったのだ。自分はそれを無意識のうちに避けてい 先住者の誰かが、あるいは何人かが、それどころか何万、何十 たのだろうか ? いや、いや、そうではない。そういう意識操作万、何百万が死ぬとい、つのは、数字の問題である。それは、チュン 《最新刊》 ロン先生の虫眼鏡 光瀬ある時は炎天下 0 大根畑にしがみ = んでジガ〈チがアオ、シ など、自然の息吹きを愛する著者がえがくュニークな博物誌 ! マガジン連載 / ¥九八〇 早川書房 2
の的みたいだ 0 た。一列に並んでいたんで、かた 0 ばしから射ち倒ていくと、今日の祭典につりあ「た二種類の衣装を示した。おれは してやった」 煉瓦色のやつを選んだーー淡い青灰色のやつはちょっとキザすぎる 「じゃあどうして ? 」母が言 0 た。「 = = ースでは、十九人が殺さと思えたのだ。おれはシャワーをあび、髭をあたり、化粧は断わ 0 れたんだって言ってたよ」 て ( マイクは美しく着飾っており、化粧の手伝いをしようと言いだ 「殺されたっていうのかい ? そうじゃないよ」 した ) 、会場に行く道順を書いた半ページの指示を読み、出発した。 「よく覚えていないけどね」 二度、道を間違えたが、通廊の交又点ごとに十四の言語でどこへ 「たしかに、十九人がやられた。けど殺されたのは四人だ。戦闘の行く道だろうと示すことのできる = ンビ、ータがそなえられてい 最初のほうでね。トーランの基地を見つける前のことた」チーのた。 死にざまについてはしゃべらないことにした。話が複雑になりすぎ おれの見るかぎりでは、男の服装は昔に戻っていた。腰から上は る。「残る十五人のうち、ひとりは味方のレーザーにやられた。腕そう悪くなか 0 た。短いケイ。フのついた、び 0 たりした ( ィネ , ク が一本なくなったが、生きてる。残りは : : : 気が狂った」 のプラウスだが、幅広のキラキラ光るべルトの役目をはたさないべ 「なにか、トーランの武器のせいなのか ? 」マイクが尋ねた。 ルトがついていて、それから、宝石をはめこんだ小さな短剣がさが 「そいつはトーランには関係がない ! 軍隊のせいなんだ。連中は「ているのた 0 た。おそらく手紙をあけるくらいにしか役にたたな おれたちの心をいじって、動くものはすべて殺せと命じた。軍曹が いだろう。大きなひたのついたパンタロンは、キラキラする合成皮 あるキイ・ワードを口にすると、その命令が効力を発揮するんだ。革の・フーツの中にたくしこまれている。そのプーツは ( イヒール 虐殺者になっちまうんたよ」 で、膝まであるのだった。これで羽飾りをつけた帽子をかぶれば、 おれは数回、あらあらしくかぶりを振 0 た。「リファナがきいてシ = イクスビアが舞台にでてくれと雇いにくるだろう。 しる 女性はもっとすごかった。おれはホールの外でメアリイゲイと会 「ちょっと失礼」おれはかなりの努力をして、立ちあがった。「二 十何年ーー」 「まっ裸みたいな気持よ、ウィリアム」 「もちろんよ、ウィリアム」 「けど、すてきだよ。これが流行なんだな」 母はおれの肘をとり、寝室に導くと、夕刻の式典には充分まにあ おれとすれちがった大部分の若い女性は、似たような衣装をつけ うよう起こすと約東した。べ , ドは途方もなく心地よか「たが、おていた。両脇にわきの下から裾までの大きな四角い窓があいたワン れはごっごっの木によりかかってでも眠れただろう。 ビースだ。裾は男の想像力がはじまるところで終わっていた。上品 空腹と麻薬と多忙な一日のせいで、母は冷水をおれの顔にかけにしているには、非常に控え目の動きをせねばならず、また静電気 て、おれの目を覚させねばならなか「た。母はおれを洗面所につれに信頼をおかねばならないのであ「た。 幻 6
給自足でなければならなかった。かといって今すぐ メージング・ス トリーズに短篇を『マン・プラス』カバ 人類が自給自足できる植民地を建設することなど出 売り込んだ高校生″とその才筆ぶ 来はしない。 りは有名で、それから昨年のこの では人間自体を改造したらどうだろう。基本的な 作品まで四十年近くにもわたって 人間の構造にいろいろな器具をとりつければいいの 活躍し続けていることになりま だ。呼吸可能な大気は火星にはない。だから身体か す。息が長いだけでなくその活動 ら肺を取り除いて、そのあとに全分留式酸素再生装 の場も広く、米 TJ ファンダムの 血も沸きたってしまうという 置をはめこめばい、。 最も初期のであり、作家で のか ? よし、それなら血は抜きとってしまえばい あり、編集者であり、数多くの大 。手足の筋肉は取ってモーターに代えれば、血が 学で講義をし、何百というラジ一 必要なのはただ脳の部分だけになる。食料だってほ オ・テレビ番組に顔を出すという とんどの筋肉や器官を除いてしまえば極端にわずか 超人ぶりなのです。 な量ですむはずだ。常に補給が必要なのは脳だけだ そのポールが久し振りに全力投 が、その量など一日にトースト一枚分もいりはしな 球したこの長篇のテーマは、なん いのだ。 と『サイボーグ』なのです。えら 水はどうなるって ? ほとんど要らんだろう、ク いではありませんか。今ごろにな一 , 0 てサイボーグを取り上げるなんて大したもんですズ・デシャテ→ーンが「ン。ヒ = ータの巨大ネ〉トワローズド・システムにな「てしまえば技術的に防止 ークに問うた今後の世界情勢の答えは、 " 世界大戦出来ないほんの少しの量が漏れていくだけだ。ほら よ。では粗筋をどうそ。 ーセント。人類減亡の可能性九自動車のプレ 1 キオイルを何千マイルか毎に少しず の可能性九九・三パ ・八パーセント。という悲劇的なものだった。更っ足していくような、あんなものさ。 時は二〇一〇年。世界人口は八〇億をはるかに越一 え、たえまない緊張と食糧不足から、アジアでアフに指一小された回避策は " 新天地を求めて地球外に飛放射能 ? 太陽面爆発の時には相当の量が予想さ リカでラテンアメリカで局地戦が続き、ヨー。ッパび出すこと、最高得点目標は火星。というものだ「れるから、皮膚は人工の物と換えなければならんだ は慢性化したストライキで死にひんし、米中ソは三たのである。生き残るためには、ともかく火星に植ろう。しかし逆に普段は可視光線と紫外線だけだ すくみで指導力もなく、全世界が大戦の恐怖におの民地を作らなければならなか 0 た。しかし、月ならが、それも充分な熱量や光度は期待出来ないから、 ば補給品を地球から届けることも出来る。が、火星 = ネルギーを集めるために「ウモリの羽のような表 のいていた。 そしてアメリカ合衆国大統領フィ , ツ・ジ = ームでは、片道に七カ月もかかる火星では、植民地は自面積を変化出来るようなものがいるだろうし、眼だ 00 疆酢一 - ■ 0 0 0 0 0 FREDERK POH し ー 2 3
かべた。 「シングと会うのは、のつく月の月水金よ。ね、気に入 らないの ? 」 「いや : : : ちえつ、もちろん反対するわけないじゃないか。でもー 2 ーでも、あいつは士官だぜ。海軍の士官だー 「わたしたちのところに配属されてるのよ。だから、一部分は陸軍 加速シェルってのは、おれたちがスターゲイトで休息し、再補給 をうけているあいだにとりつけられた新発明だ。この設備のおかげ 彼女は通信機をひねり、言った。 で、理論的に有効な限界ちかくまで船を駆動させることができるの タキオン・ドライヴ 「直接通話」 だ。超光速粒子航法だと、二十五 ()5 以上の加速がかかるのである。 それから、おれに向かって、 テイトはシェル・エリアでおれを待っていた。残りの連中はうろ 「あなたとあの可愛らしいミス・ うろしながら、おしゃべりをしていた。おれは彼にソヤを渡した。 しら ? 」 「すみません。なにかわかりました ? 」 「それとこれとは話がちがう」 「さつばり。ただ、水夫どもは恐がっていないようだ。見せ場がで 彼女は通信機に相手のコードをささやいた。 きたって、張り切ってるよ。またトンズラをかく練習さ」 いえ、同じよ。あなただって士官とナニしたかったんでしよ、 音をたててソヤをすすりながら、テイトは、 ヘンタイめ」 「ちえつ、実戦たろうが練習だろうが、おれたちにとっちや同じで おさ 通信機が、羊のような声を二度あげた。お話し中だ。 さあ。そいつに入りこんで、半死半生になるまで圧えつけられるん 「彼女はどうだった ? 」 ですからね。フン、まったく気にいらねえ」 「まあまあさ」おれは落ち着きをとり戻しつつあった。 「ま、とにかく、こいつは歩兵ってのを無用の長物にしちゃったな 「それに、シング少尉は完璧な紳士よ。ヤキモチなんか決してやかあ。だから、おれたち、故郷へ帰れるんだが」 ないわ」 「そうですね」 「おれたってそうさ。もしあいつが君にひどいことをしたら、おれ医者が来て、おれに注射をうった。 にそう言いな。あいつのケツをふたつに引き裂いてやる。 おれは一九五〇まで待ち、それから、大声で隊員たちに命じた。 メアリイゲイはカップごしにおれに微笑んで、 「よし、入れ。服を脱いで、シェルのジッパーをあげるんだ」 「もしハーモニイ少尉があなたにひどいことをしたら、わたしにそ シェルは柔軟な宇宙服のようだ。少なくとも、内部の機構はとて う言って、あいつのケツをふたつに引き裂いてやるわ」 もよく似かよっている。しかし、生命維持ュニットのかわりに、ヘ 「よし約束だー ルメットの上部からホースが一本はいりこみ、二本が左右のかかと ーモニイの間柄は、どうなのか おれたちはまじめくさった顔で握手した。
りしないよう、いろいろと調整を加えている。 とをやっているように見えた。コーヒーをのせた自動トレイがゆっ 驚嘆すべき光景だった。何時間見ていてもあきなかっただろう くりと列の間をすすんていく。 が、軽いケイプだけだったので、冷たい風に数分間でこごえてしま ガラスを通して、おそらく非常に騒がしいであろう内部の音がサ った。後日、暖かい服を着て出なおすことにした。 ラサラと聞こえてくる。 その上の階が一階と呼ばれていた。論理の無視た。ョ】ロッパで ロビイには他にふたりの人影しか見えなかった。そのふたりが はそうなのだとメアリイゲイが説明してくれた ( おかしなことに、 〈頭脳〉を見に行こうと言っているのを聞いて、おれたちもそのふ ・メキシコから一千光年も離れたところに行って戻ってきた たりのあとにつき、長い通廊を進んでいった。今度の展望室は、コ おれだが、大西洋を越えたのは今回が初めてだった ) 。そこはこのントロール室をながめるロビーより小さく、ジ = ネーヴを統合する 組織体の頭脳。官僚とシステム分析家と低温学者がうろうろしてい コンビュータ群を見おろしていた。ここの照明はただひとつ、下の 部屋からの冷たく弱々しい青い光だけだった。 おれたちはガラスのにおいのする大きくて静かなロビイに立って コンビ = ータ・ルームも先刻の部屋に比べれば小さく、野球の内 いた。一方の壁は大きな立体図になっていて、ジ = ネーヴの組織図野程度しかなかった。コンビ、ータの構成素子はさまざまな大きさ をうっしだしていた。何万人かの名前が線で結ばれ、頂上の市長かの、なんのへんてつもない灰色の箱で、ところどころにエアロック ら基底部の〈通廊整備係〉まで、オレンジ色の。ヒラミッ ドを形づくのついた人間が通れる程度のガラスのトンネルによって連結されて っている。人が死んだり首になったり、昇進したり左遷されたりすいる。これは、一度にひとつの構成素子を修理することしかできな るごとに、その名前は消え、新しい名前があらわれるのだった。ち いようにするためのシステムらしい。部屋の他の部分は超伝導のた らちら光り、形を変えるそれは、なにか途方もない生物の神経系のめ、気温をほぼ完全零度にしておくのだろう。 ようだった。ある意味では、もちろんそのとおりなのだが。 ここにはコントロール・ルームのような精神活動も、一階の喧 反対側の壁は大きな部屋を見わたす窓である。ガラスの向こうでもないけれど、静かは静かなりに印象的であった。抑制の下にはか はびっしりと並んだ何百人もの技術者がいる。それそれがダイヤル りしれない力が秘められているような感じ。ある意図をもった、知 やスイッチにかこまれたコンソールについていた。そこには、びり性ある神殿。 びりした忙しい雰囲気があった。大部分の人はイヤホーンとマイク もう一組のカップルが、このフロアには他には面白いものはな が一体となったものをかぶり、仲間と話しあいながら、メモ帳にな 、あとは部屋とオフィスと忙しい役人だけだ、と言った。おれた にかはしり書きし、スイッチをいじくりまわしていた。またある者ちは = レベーターに戻り、二階にのぼった。そこはショッビング。 ッドホンを首にかけ、キイボードをがちゃがちゃと操作して、 しアーケイドだった。 る。人のいない席はほとんどなく、立っている人もなにか大事なこ ここで地図帳が役だった。アーケイドには長方形の格子状に配置 こ 0 222
卒とは別の扱いをするべきなのかもしれませんよ、と助言し、将軍構えていた、とのことだった。事前に警告を受けたので、下士官兵を も、曹長の発言がきわめて感動的であった、と言った。結局、同意を保護するために現場に行っていることにしたというのだ。その後の 得たのは、今後五年間毎月、一カ月分の俸給を罰金として支払うこと調査の結果、副官は伍長に格下げされ、遠くの戦線の兵士に衛生学の と、曹長をはるか北方での自動車訓練にやることだった。将軍は、講義をするよう送り出された。中佐は大佐に昇進し、曹長は六週間 お前にお誂え向きの場所もいくつかあるのだが、と言いつつ、かなの営倉処分となった。営倉を出てみると元のままの階級章を返さ り限られた予算で生活せねばならんのだから出費を極端に切り詰めれ、民間人の検閲委員会によって、これからは兵員輸送に回される、 と伝えられた。委員長は、これですいぶん経験の幅が広がるはすだ、 るように、と強調した。 曹長は質素な暮らしを身につけ ( いまだに司令部から給与が送らと言い、実際に戦闘に参加することはないが局地戦の前線に配属さ れて来ても受け取るのを忘れてしまう。いつもびつくりしてしまうれることになった、と告げた。急いで縫いつけた階級章を震わせな がら六人の男の前に立っていても、曹長には、この気も遠くなりそ のである ) 十四年間、車輛を修理してきたが、内心では怒り狂ってい うな幸運が実感できなかった。まるで手のつけようのない幸運に思 た、自動車隊に勤務しているせいで、いくつもの戦争や局地戦に参加 えた。やがて、士官から指示を受ける段になって、遠方の沿岸地帯 しそこなったし、それに妻も ( 志願する前に結婚していたのだが ) 曹長が友人の旦那さん達のように戦死しないというので、恥に思っで隠密に進行している重要な戦闘の、情報伝達曹長の任を引き継ぐ とわかった。口がきけるようになるとすぐ、曹長は、保養休暇を三 ていた。その結果、やがて妻とも内々に別居し、曹長は ( その頃に 日いただけますか、と尋ね、士官は、規則が当てはまるからいいだ は本当に曹長になっていた ) 自動車隊に送られたばかりの連中に、 戦争一つと局地戦三つとを戦い抜いてみると、個人的にはこの仕事ろう、貢献したのだから資格がある、と言った。 は素晴らしい息抜きたと思うよ、などと言うようになった。この話曹長はジープを一台借り出し、別居中の妻がウ = イトレスとして は信じてもらえたようで、それは結構なことだったが、それにしても働いている薄暗い町まで、駐屯地から数百マイル走った。妻は映画 将来への可能性を大部分奪われたような感じは拭いきれなかった。館の二階席で、戦闘映画を観ながら・ほんやりと涙を流していた。初 曹長は年少兵の小隊が寝起きする兵舎に移り住み、知る限りの軍歌めのうち、曹長とかかわりあいになるのを嫌がったが、曹長の身に 何が起こったか聞かされると、曹長にそっと手をふれ、そんなにう を教えてやった。 軍隊生活もあと一年あまりという年の九月、曹長は素晴らしい幸まく行くなんて信じられないわ、と言った。下宿のおかみは下宿人 運に巡りあった。まるで戦争映画のような成り行きだ、とよく思っが他人を連れこむといい顔をしないので、二人はホテルへ行き、長 引話し合った。そこで初めて曹長は、今の成り行きをありがたい たほどだ。曹長が修理責任者になっているジープが、売春宿の前で 駐車中に爆発し、中佐とその副官とが重傷を負った。後で二人が証とは思うけれども、同時に恐ろしくもあるんだ、と言った。こんな 6 言した所によれば、そのあたりが民間警察の急襲を受けるのを待ち長く第一線から離れていると、自分を信頼していいものかどうか、