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検索対象: SFマガジン 1978年10月号
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1. SFマガジン 1978年10月号

のそれとはどこか違っていることは、まず間違いなさそうだ、 とまれ、全く愉快な連中である。大して働き者とは思えぬ カリフィャ星は、あるいは目的論的進化学説が成り立っ世界であ きりん が、いざ仕事という段になると、連中は実に能率的に仕事を処理しるのだろうか。つまりだ、麒麟の首が長くなったのは、高木の梢の て行くのであった。 美味い若芽を喰べたい、喰べたいと欲求しているうちに、首が長く 地球人類の発展史を述べる場合、″工作人″ ( ホモ・ファーベ なったのだ : : というあれた。 ル ) という概念のあることをご存知だろうか。 ところが実際に、彼らの間にはそれを暗示しているような創成神 これは、心理学者がよく用う言葉で、すなわち類人猿からホモ・ 話があるのである : 、 サビエンスが発生する進化過程の、ちょうど中間に存在する発展の 大昔のこと、空から舞い降りてきた″偉大な人″がいた。そ 段階を示す術語なのである。 の頃のカリフィヤ人は、まだ道具というものを知らない動物のよう つまり地球の人類は、道具を発明し使用することによって、そのな生活をしていた。 人間的知能の発現を示した。それは実用的知能の段階にあるものだ この天降ってきた″偉大な人″が奇妙な道具を用うのを見たカリ が、やがて人間は、そうした知能を抽象的レベルにまで発達させるフィヤ人の遠い先祖たちは、自分たちもあの″偉大な人″のように のである : なりたいものだと思った。 そういった点で、このカリフィャ星の住民たちは、まさしくエ作すると、寄蹟がおこり、その頃のまだ何でもなかった前肢が突然 人そのものなのである。いや工具人と言った方がよいかもしれな変化して、道具になった : 。しかもそれが地球人とは異って、彼らの身体的特徴として宿命 むろん、真偽のほどは保証はできぬが、何となく納得ができる話 的に表われているところが、私としては実に何とも面白く思われてではないか。ということは、彼らの遺伝子が多くの部分で、その意 ならないのである。 志と願望に支配されることを暗示している : 彼らはまさに、生れながらの工作人なのだ。遣伝子の中にその遺 伝情報が組み込まれているのである。宇宙の造物主という者は、ま ったく途方もないことをやってのけるものだ。 またた こうして、瞬く間に私に許された滞在期間は過ぎた。そして村で かくの如くカリフィヤ人は、道具 ( 工具 ) を発見、発明すること の調査が済んだあとの期間を、私は迷路のようになっている島の水 なく、工具を用うる文化を充分に享受しているというわけである。 では、このような現象はどうして表れたのだろうか というこ路の探険に当てた。 案内人は、いつもフルート少年であった。この少年は、やがてこ とだが、今の所私にもまだよく分らない。 ただ、この惑星におけるカリフィヤ人の持っ遺伝法則が、地球人のカリフィヤの長となる。彼の知能は親譲りのせいであろう、他 幻 4

2. SFマガジン 1978年10月号

てみせないかぎり、 いくら珍奇なものを出してきたって、そんなもな、諸君。ここには顕在的。 ( ニックを制御する装置がない。われわ のは隕石のかけらほどの値打ちもない」 れはかって、この地球人たちが示しているような超常態に出くわ 「きみたちの敗けだ、諸君。きみたちは敗けたのだ」小柄な心理学したことはない。押えられなくなったら、どうする ? 」かれは激し の大家にとくいそうこ 冫いった。「わしはすでに立証した この潜く首をふった。 在的な。 ( ニックは、古典心理学に従えば、顕在的パニックと同じよ「分離したらどうた ? 」センパー ・ゴアが鼻でいった。「火をつけ うに、不可能とされている。きみらはただ事実を無視し、くどくどて、すぐ消してしまえゞよ、 。しい。なんでも好きなように準備するがい と専門用語をつつつきまわし、体裁をつけているたけのことた。帰 したが、どうしてもやりたまえ ! 」 りたまえ、諸君、家へ帰って、べッ トの下へでも隠れることた」 「できるものならな」ハイ・フロン・。フラットがうなった。 心理学者といっても、やはり人間であることに変りはない。自分しかし、タン・ポーラスにも欠点はあった。かれの気まぐれな癇 を動かしている動機を分析することはできるが、ごくありきたりの癪はいつもガラスの破片のように、足もとに散らばっていた。その ーマノイドと同じように、かれらもまた各人の動機の奴隷なの軽妙な舌は、あたりの大気に火ぶくれをつくりながら、あとからあ である。銀河に名高いこれら五人の心理学者たちも、事実というなとから波のように、ふてくされた心理学者たちに悪口雑言をあびせ かけた。 めし皮のむちに打たれ、。フライドを傷つけられ、虚栄心をうちくだ かれ、苦悩に身をよじっていたが、ただちに盲目的な頑迷さにとり「勝手にしろ、イカレポンチめ ! 勝手に地獄なりどこへなりと飛 すがり、自動的な反応に移らずにはいられなかった。かれらはそれんで行け ! 」かれは激情にかられて息もつけなかった。「このテラ ハニックを起してやるー を意識していた。また、 : 亠 ~ ーラスにそれがわかっているということポリスで、全員が引きあげてきたらすぐ、 も意識していた。だからこそ、いっそう激しく反応したのであつおまえたち、逃げられるものなら逃げ出してみろ ! ごきげんよ 別れのあいさつを怒鳴ると、かれは肩をいからせて部屋を出てい イナール・トウ。ハルは赤いふち取りのある眼の奥から、怒りをこ めてにらみつけた。「顕在的パニックが起るかどうかだ、ポーラ ス。それがきみの約東なのであって、われわれには権利がある。き ちんと証文どおりやりたまえ。さもなければ空間と時間にかけてわ タン・ポーラスがさっとカーテンを引きあけると、かれのまえに れわれはいちいち用語問題を検討するそ。顕在的なパニック、さも いた五人の心理学者はそろって眼をふせた。テラボリスの街路に、 なければ、われわれは失敗だったと報告する ! 」 民間人のすがたはなかった。ハイウェイを巡回する規則正しい兵士 ポーラスは薄気味のわるいほどふくれあがり、だが大変な努力をたちの足音が、まるで葬送の歌のように低くひびいていた。寒々と はらって、静かに話しかけた。「ものわかりのわるいことを言うした冬のくもり空が、死体のちらばった都市の上に低くたれこめ、

3. SFマガジン 1978年10月号

それを得たとき、おそらくソビニトのユダヤ人がからだ。このグループには、誰からも賞讃される ウエルズ共和国のド級陸上艦が、ルキアノス紀 そうであったように、彼らは見出したものの変質作家が含まれる。たとえば、わたしはロ・ハート・ 元一六五八年に首都を再占拠し、それ以来一」の敷 2 にショックを受けることだろう。 シェクリイの作品が大好きだ。だが、それは彼を地には人が住みついている。パルプ紙および蒸気 2 二番目は、中へ入りたがっているグループだ。 ュ 1 ・モリストとして見ているからで、通常の小説印刷機の発見、それにパウル派の持たらした革命 ビンチョノ、く ージェス、エイミス、ダレルといでも彼なら楽しく書けるにちがいない。 は、さらにの居留民を都市へと呼びこんだ。 った連中で、普通の小説には欠けている、あるい そして五番目の最後のグルー。フがくる。このグ建築家ディフェイトによって作成された広い通り は自らの作品には欠けている何かを感じてのルー。フは個人主義者から成っているが、からは、理事会や各省がの管理センターとしてほ テク三ックを借用し、この分野をしばしば豊かに出ていくことを望んではいない。彼らが望んでい どよく調和する近代的な統治都市を生み出した。 彩ってくれた。もっとも、その豊かさは、永久的るのは、題材の境界を拡張することーー・逃亡では都市の人口は現在一四〇万人を超えている。 なものというよりは経過的なものであることが多なくて、拡大なのだ。わたしはこのグループに最 多あったにせよだ。しかしながら、わたしはこのも関心がある。というのは、わたし自身がこのグ主要地点の簡単な案内録 グルー。フの中で、その影響が永久的である作家のループの一員だと思っているからだ。 1 、帝国の議事堂 名を一人あげることができる。人類学者ジョー ( イ気をつけてほしいのは、わたしがどれか一つの 2 、帝国武器庫 ・スチアート。「大地よ永遠に」の作者であグルー。フを第倒的に優れていると主張しているわ 3 、帝国造船所・倉庫 る。 けではないし、特定のグループの排除や消減を望 4 、常任幹部会メン・ハーのマンション 第三のグルー・フは、ある意味で最初の二つのグんでいるというわけでもないということだ。わた 5 、出版省 ル , ープとは対極点に立っといえる。このグループしは、情熱家ではあるが穏健派でもある。は 6 、帝国コンペンション・センター は、アシモフ、ラリイ・ニーヴン、アーサー・ク変幻自在であることによって繁栄していくことが 7 、帝国印刷工場 ク、 ( ル・クレメントといった、この分野の望ましいし、それはまた競争と衝突が続かねばな 8 、ジャンル関係事件の理事会 古くからの ( ードコア的美点をたてまつる作家たらぬということも意味する。弁証法がこの国を形 9 、会計監査院 ちからなっている。彼らは中に入ることなど望ま成するのだ。 、ツョン・キャンベル通り ない。彼らこそが内部なのだ。また、彼らは外に Ⅱ、ドアーティ理事会 ( 再建 ) 出たがらない というより、ときとして彼ら ィアン・ ハランタイン通り は、他のものを外に出したがるような発言をす国首都・ーー中央部分 、外国公館、フーダニットの地 る。彼らは確かに一つの貴重なグルー。フであり、 ( 二八八頁の市街図参照 ) 凵、ウエスタン・ゲットー スト・キリスト教世界に対し彼らの聖典を引用 新、中央図書館 しているといえるだろうり 国言都は、ルキアノス紀元一一〇七年ヴ = 炻、分離器工場 第四のグルー。フはいちばん大きい。ここでは、 ル「 ( 帝国の野戦部隊によって、まずその基礎がっ貰、帝国植字工場 いずれにせよ、の国について特定の感情を持くられた。いまの帝国兵器庫の敷地にあたるこの、版権防衛庁 たない作家が大部分を占める。彼らはを書く地への移住は、ルキアノス紀元一三一三年に放棄 、ガーンズ・ハック & キャンベル記念博物館 ( 革 が、それはが商業的な意味で彼らに適していされた。 命および修正主義者立入禁止 ) るか、彼らが単にが好きであるかいずれかだ 、歴代大統領の墓 セレクター

4. SFマガジン 1978年10月号

を狙う敵をどう扱うかね、敵がわが手に落ちた場合に ? 」 た。宇宙で本当に大切なことがほかにあるだろうか、あの忌々しい 「われわれ火星人は狂暴な人間だということになっています。自分 機械どもを粉砕する以外に ? で自分に対する意見をいえというのですか ? 」 、、ツチは毎日何時間か、クリスと二人きりで過した。かれは艦隊カールセンはその意味がちょっとわからなかったらしい。「あ、 いや。わたしがいっているのは , ーーきみやわたしや、クリスのこと 中に広まっている不穏な噂を、彼女の耳には入れないようにしてい た。サル・ ( ドルの非業の死がロ伝えにささやかれ、カールセンの居ではない。個人的な事をいっているのではないのだ。たぶん、自分 住区の近くに衛兵が配置された。ケマル提督が公然と反乱を起しかの考えを口に出していっていただけだと思う。しるしがほしかった のだ」 けている、というものもあった。 ストーン・・フレイス そして、今や岩場は艦隊の行手に迫り、星々の半ばを覆い隠「では、・ほくに尋ねても無駄ですよ。お宅の神様に聞いて下さい しかし、神は汝の敵を許せといいませんでしたか ? 」 していた。漆黒の塵埃と破片、砕けた惑星のかけらのようなもの。 「いったよ」カールセンはゆっくりと、考えながらうなずいた。 どんな宇宙船もこの岩場の中を通り抜けることはできなかっ た。毎立方キロメートル中に含まれる物質の量が多すぎて、 (-)-tN 「なにしろ、神様は要求が多くてねえ。嫌になっちまう」 自分の見つめている相手が、正真正銘の、偽善者でない信者た ラスの航行は妨げられ、正常空間でも効果的なス。ヒードで移動する と、突然納得がいくのは奇妙な気持ちだった。 ことは不可能たった。 しかも、こんな態度のカールセンはこれまでに見たことがなかっ 艦隊は星雲の鋭く切り立った一つの縁を目指して進んでいた。へ ンプヒルの偵察隊はすでにその角を回って見えなくなっていた。 たーー・しるしを求めて、受動的に、待っているなんて。まるで、人 間の自己の精神の層の外側に、その人を鼓舞激励してくれる″目 ッ 「彼女は日増しに正気を取り戻し、落着いてきています」、 、ツチは的″とでもいうようなものが実際に存在しているかのように。 チはこの事について考えた。もし : 最高司令官の小さな船室に入ってきて、いった。 カールセンは机から目を上げた。前に置いた書類は金星人の筆跡しかし、こんな事は全くの神秘主義的ナンセンスだ。 ミッチは相手の言葉が聞き取れな カールセンの通話器が鳴った。 の名簿らしかった。「それは嬉しいな、詩人くん。彼女はわたしの かったので、最高司令官への影響を見守っていた。精力と決意が戻 ことを話すかね ? 」 りつつあった。力と、正しさへの強固な確信が戻ってくるかすかな 「いや」 二人は互いに見つめ合った。一方は、貧しく醜いすねもの。一方兆候があった。ちょうど、核融合ランプを点灯した時の、あの穏や かな白熱光を見るように。 は、聖油を注がれたハンサムな″信者 % 「よし」カールセンはいっていた。「よし、よくやった」 「詩人くん」カールセンがだしぬけに尋ねた。「きみなら自分の命 ーン・プレイス

5. SFマガジン 1978年10月号

だ。柿れとはそうした私自身の心に対する危惧たった。 「フルート、君らは今のところ、平和に暮してるんだろう ? だっ たら、それでいいじゃないか : : : 」 「でも、フルートは知らない場所へ行ってみたいんだ : : : 」 しかし私の顔付きがやや厳しく、冷たかったせいか、それつきり が必ずしも それから一年後。 彼は黙りこくってしまった。むろん、それで、フルート、 私の″カリフィヤ人の生態″と名付けた研究論文が、ある学術雑 納得したわけでなかったことを、私は強く感じとっていた。 異星人に対する不干渉の原則は、地球人の長い経験から生まれた誌に発表された。 ものである。干渉の結果が成功する場合もあるが、多くは失敗に終ま、自信作と言ってよいだろう : : : 。私が秘かに自負し期待した る例が多いのだ。すなわち文明の進化、発展が干渉によって加速化とおり、この論文は専門家の間に好評を博したばかりでなく、数種 されると、それに比例して多くの厄介な問題が派生的に発生するのの高級日刊紙も採り上げて好意的に紹介などしてくれた。彼ら工具 である。 肢を持っ奇怪な惑星人類の記録が、ジャーナリズムの世界の好奇心 私の覚えたためらいの種は、そうした性質のものだった。むろんを強く刺戟したためであろう。 私としては、この原則に沿って慎重にやってきたつもりである。私それから二年後。 私は、この研究の業績が認められて、多年強く希望していた大学 は規則を破って、自分の経歴に傷をつけたくはなかったのだ。そ う、私が彼らの生活に具体的に干渉を加えたと自覚されるのは、研に招聘された。肩書きは、″惑星人類学講座教授″である。待遇も 悪くはなかった。私は良き研究課題に恵まれた自分の幸運に感謝し 究をスムースに運ばせる便法として彼らの躰にペンキを塗った : それくらいのものである。とまれ規則は守らねばならない : : : 私のながら、設備のいいこの大学の研究室に通う身分となった。と同時 さまよ に私は、大宇宙に含まれた永遠の神秘に誘われて、長い間彷徨い歩 将来のためにも : ・ ・ : そのとき以来私は、 やがて許可された滞留期間が未だ多少残っているのに、突然いた宇宙での生活を捨てることとなった。 私は、このカリフィャ星を立ち去ることにした。出発の時間を夜にある意味では保守的な人間になったのであろうか、私は地球の安穏 選んたのは、彼らには黙ってそっと出立するつもりだったからであな生活に浸り込もうとしていた。 しかし、いつも私はある不安の念を抱きつづけていた。発表した る。次の曾長になるフルート少年にも告げようとはしなかった。な ・せなら、フルートはしきりに他の島のことや、さらに宇宙の星々の論文の中に、あのカリフィヤ人の起源神話のことを意識的に伏せて ことなどを聴きたがったからである。すでにその時から私は何かをおいたのは、実はそうした理由からである。それはカリフィヤ人の ・ : 。私は、心の片隅では、少工具肢と遺伝子との関係のことなのだ。もしもあのカリフィャ神話 怖れはじめていたからにちがいない : 年の希望をかなえてやるべきかもしれないと思いはじめていたのがほんとうであるならば、私があの惑星へ行ったということ自体 幻 6

6. SFマガジン 1978年10月号

ることができます」 ケンタウリ人の司令官は人ってくると機械的に敬礼し、さあこい 「われわれはーとタン・ポーラスが楽しそうにいった。「かれらよ という顔をした。 「やむなく戦闘にな「た場合、きみの船一隻は、ソルの船一隻をよりはるかに大きな艦隊をも「ている。われわれに、かれらを全滅さ せられるたろうか ? 」 くうち敗かすことができるだろうか ? ジョゼリン・アーンはをふった。 「いま、かれらを敗かすこと アーンは皮肉つぼくにやりとした。「まったく見込みはありませ の法はできますーーたふん、できるでしよう。しかし、全滅となると話 ーマ / イドは、狂乱状態になるとクロート ん、教授。あのヒュ 則を破りますーーこれは戦闘状態でも同じであります。わが艦隊にはべつで、その賭けにはあまりたくさん賭けようとは思いません。 は専門家部隊が乗り組んでおりますが、むこうには個性というもの自分からは、絶対にそんな賭けはしません。問題となるのは、この マノイドは軍事となると、おそろしいスビードでも をまったく持たず、まるで一人の人間のように動く搭乗員団があり機械狂のヒ、 1 それは恐怖、とのを発明することです。科学技術という点では、かれらは水中の波 ます。これが戦闘状態でも同じであるとすれば のように移り身がはやい。ところが、才鷲われの文明はむしろ砂丘 いうのが最適の表現であろうと愚考いたします。船上の各個人が、 船の器官と化するのであります。われわれにと「ては、御承知のよのようにしか動かないのであります。わたくしはかれらの地に車産 業が、ニューモデル牛産のためにまったく新しい工作機械製造に場 うに、これは不可能であります。 か完全にすたれてしまったという理 さらにまた、この界は、天才的な釭人にみちあふれておりまをたて、六カ月後にそのモデを 由から、工場をこわしてしまった例を知っております。 す。わたくしの調と見分によりますと、かれらはわがアルフア・ われわれはまだ短期間、かれらの文明と接触したにすぎません。 ケンタウリを訪れたとき、たまたまタルスーン博物館で見つけた面 白そうな、だがまったく役にたない装置を、少なくとも二十二個われわれはこれまでの二百八十いくつかの文明に加えて、いまこの 、り、それをいじくりまわしたあげく、わたくしの見新しい文明から学んでおりますがーー単純に数的な比率からいって ここへもちかた たこともないような不快きわまりない軍事装置に仕立てあげたのでも、それほど利益があるとは思えません。ところが、かれらにはも ともとひとっしか文明がなく、そこにまったく新しい文明がひとっ あります。ジャルマン・シルの重力線追尾器をごそんじですかっ・ 現代の電子ポテンシャル・メソッドが開発される以前に、金属鉱床加わるわけですーー , つまり、かれらには百。 ( ーセントの進歩が保証 されているのであります ! 」 をさがすのに使われた、効率の低い装置です。 「それで、どうだね ? 」ーラスは穏やかにたすねた。「単純に、 まったくうん かれらはあれをーー・どうやってか知りませんが 二百年間かれらを無視したとしたら、われわれの軍事的な立場はど ざりするほど命中精度のいい自動照準器に仕立てあげております。 うなる ? 」 砲や発射体はあれを使えば、宇宙空間であろうと大気中だろうと、 ジョゼリン・アーンは失笑した。「できればの話ですがーーらま 水中だろうと、あるいは岩石中であろうと、自動的に照準を合わせ

7. SFマガジン 1978年10月号

この惑星では、動植物そのものが一種の鉄鉱たのと同様、この星のカリフィヤ人は自然から、いわばすでに半加 するとみなしてよい 床的役割りを果しているのた。実にこの星の自然環境においてのみ工された鉄を入手して原始的な技術を加えればそれでよく、現に彼 らはそのような加工技術をもっているのである。 可能な文化形態である。 前述したように、カリフィャ星の地表に含まれている多くの鉄成キャンプを移してから数日後のことだった。私はフルート少年に 分は各生物に摂取されて、ちょうど地球の石炭分のような役割りを案内されてジャングルの奥にある彼らの鉄器製作場へ行く機会をえ しているのである。地球の古代人が動物の骨で棍棒などの武器、釣た。 そこは、ジャングルを切り開いた場所で、彼ら独特の鉄骨建築の 針や骨刀などを作り、また貝殻から必要な容器を得ていたと同じこ とを、彼らもやっているわけである。従って、いわゆる地球の骨器作業場であった。 数人のカリフィヤ人の専門職が、例の気声音を盛んに発しながら 文化がカリフィャ星の鉄器文化に該当するわけなのだ。 地球の場合、人類の鉄の発見は、おそらく土器製作の際の副次的懸命になって働いている有様は、まさに異様であると同時にユーモ ラスでもあった。 産物として発見されたものだろうと言われているが、つまりそれは アフリカ一帯の地表に普遍化されていた土壌中の海綿鉄が、土器焼ちょうどその時、彼らは柄杓を製作中だった。その長い柄の材料 成の作業時に偶然融解して鉄に化成されたものである。こうして地は、アイアン・マングロープの″気根〃である。これは、地上の枝 から水中に垂れるやつで、真っ直ぐである。 球人は紀元前すでに鉄を発見し、次第に合理的な製鉄法を発達させ て、今日見る優秀な地球型鉄文明を形成するに至ったのだ。 ます、それを見たたけで、思わす私は感嘆の太息をもらして了っ た。なぜなら、地球の鉄筋に相当する素材が、こうしてやすやすと ところがこのカリフィャ星にあっては、事情が根本的に異ってい るところが面白い。繰り返すが、ここでは鉄器はもともと自然状態自然から入手できるのだから : で存在しており、彼らはそれをただ採り上げて使用しさえすればよ私が白い″星″印をつけてやったカリフィヤ人が、それを適当な 長さに切り揃えていた。その作業振りたるや、まさに堂に入ったも かったのだ。 であるから彼らの社会では、鉄鉱床の発見、採掘、そして精錬とので、彼は頭上に振り上げた重い工具肢を、一気に振り下ろして いう作業は一切無用たった。それらの行程は全く自然に、生物そのは、すばりすばりと鉄筋 ( 気根 ) を切断しているのである。 ところで問題なのは、この、彼らの工具肢である。彼らの工具肢 ものが既に実施していたわけだからである。 彼らは職種によってそれそれ 従って彼らはただ、そのような純度の高い鉄を含んだ動植物をあは私たち人類の手にあたるものだが、 , りのままで採取すればよいわけで、彼らの " 技術。はその条件からが異った工具を発達させているのである。言うなれば、それそれの 作業に応するそれそれの道具としての手を、生得持っているわけで 始まったのである。 つまり、地球の石器時代人が自然の石を採取加工して石器を造っある。 ひしやく 幻 0

8. SFマガジン 1978年10月号

って示されているのだろうな」 工作局の幹部たちは、い っせいに椅子を蹴った。先任工作員とし 本部長は、唇を歪めた。 て会議に参加していた続も、傍の曾根とともに、ゆっくりと立ち上 2 他人のことはいえない筈だーー続は思った。おれたちが手を染めがった。 て来た仕事も、決して文化的とはいえないしろものではなかった 「ひるがえって、わが国の状況だが、情報コントロール面におい 続と曾根が、儀礼的なノックの後、局長室に入って行くと、局長 て、面白くないかげりが出て来ている : : : 」 の犬養がデスクから立ち上がった。 葛城は続けた。 きよそ 「むろん、すべてのマスコミには、厳格な報道コントロールが強制 つねに冷静なこの男としては珍しい挙措たった。目がかがやき、 されて来た。世論操作は、とどこおりなく行なわれて来た筈だっ頬が興奮を示して紅潮している。二人に、デスクの前のソフアに坐 うわさちまた るよう指し示し、自分はデスクのふちに腰を下ろした。 たが、根づよい噂が、巻には流れ始めているらしい。 被汚染者となることが、決して忌むべき体験ではないこと。むし「最優先事態だという伝言でしたが : : : 」 ごたっ 続は、ソフアに腰をおちつけると、上司の顔を見上げた。 ろ、それは一種の悟達にひとしいこと。 「いったい何ごとです ? 新らしい情報工作。フロジェクトが、ちょ ひそかに、″解放″ということばが、囁かれ始めているらしい。 異星人たちは、われわれに有意義な精神革命をほどこすために、接うど始まるところだったのですがね」 かっき 「分かっている。だが、画期的な事態が、生したのだ」 近しているというわけだ」 犬養は、興奮をもて余しているかのように腕を組んだ。 葛城は唇をつよく結んだ。 ムープメント ーーー・昨夜、房総の 「ツキが、こっちに回って来たといってもいい 「われわれがもっとも恐れる必要があるのは、この精神的運動で ある。すべての物理的努力も、このヴィジョンの感染の前には、徒航空自衛隊レーダー基地が、大島と野島崎との中間に墜落した敵の 労に終わってしまうだろう。 宇宙機をとらえた。母船と目される。大型の精子形のやつだ。 あやまった価値観がはびこる前に、新たな汚染源を絶たなければ海面に突入したきり、飛び立った形跡がない。おどろくべきこと ならぬ。 従って諸君の今後の活動は、その工作に集中すること だが、不時着したと見ていいようだ。 になる。 「そいつは信じがたいですね」 うわさ 目下、情報局が、この噂の伝達メカニズムを分析中である。行動ずけりと続はいった。 要目が決定され次第、ただちに実施してもらいたい。 「今まで、一度もそんな事故を、敵は起こさなかった。敵のテクノ 今日のところは、以上だー ロジーは、われわれとは段ちがいな筈です」 いぬがい

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とを聞かせるためにここまで呼んだのかい ? まったく失望した だから」 よ。きみを選んだのは、冗談をいうためじゃなし 、、ほんとうにそう「じゃあどうしてそんなにわたしに関心をもつんだ ? どうしてそ 8 っ 1 じゃないんだ。わたしたちにはビジネスができるはすだ。わたしはんなにわたしと行くことに熱心なんだ、わたしはたた自転車を借り たがってるだけなのに ? わたしにそれほど魅力があるとしたら、 「そうね、もしこの提案が不満足なら、こっちはどうかしら。料金今までに自分で気付いてるはずだ」 タダ、酸素と食糧と水の実費のみ」彼女は足で水をたたきながら待「そんなの、わかんないわ、と、片方の眉を上げながらいった。 ち受けた。 「あなたには何か、完全に魂を奪われちゃうようなものがあるの。 もちろん、それには恐ろしい条件が付いているはずだ。まこと宇もう、たまんないほどね」彼女は失神するふりをしてみせた。 宙的スケールの直観的な論理の飛躍と、アインシ = タインもまっさ「それが何なのか、教えてくれる ? 」 おという推測により、わたしはそのべてんを見ぬいた。わたしがそ彼女は首をふった。「今のところ、わたしの小さな秘密ってこと の跳躍をおこなったことを知り、しかもその着地点が気にくわない にしといてよ」 のを知って、彼女はちらりと歯を見せた。そこでもう一度、これで 彼女が引きつけられているのはわたしの首の形じゃないのか、と 最後というわけでもなかろうが、わたしは彼女をしめ殺すべきか、 わたしは思いかけたーーーそこに歯をうずめ、血を飲みほせるよう それともにつこり徴笑んでやるべきかの決断にせまられた。わたし に。そんな・ハ力な、と結論を下す。うまくいけば、これから先、彼 は微笑んた。どうしてなのか知るもんか、でも彼女はたとえ相手を女がも 0 と話してくれる日もあるたろう。というのも、日は、これ ギタギタにした時でさえ、その相手に好かれるようなコツを知って から先続けて、何日も何日もあるように思えたからた。 いるんだ。 「いつ出発の用意ができる ? 」 「きみ、ひと目・ほれって信じる ? 」とわたしは説いた。彼女がガー 「あなたの眼を修理した後、すぐ荷造りしたわ。出かけましよう」 ドをはすすことを期待して。チャンスのかけらもなかった。 「感傷的な希望的観測ってところね、せいぜい」と彼女。「まだま 金星は無気味だ。何度も何度も考えたけれど、それがわたしにで だ修業が足りんよ、ミスタ きる最上の表現た。 「キク」 それが無気味なのは、ある程度まで、その見え方のせいだ。右眠 「すてき。火星の名前 ? 」 可視光線と呼ばれるものを見る方ーーでわかるのは、手にもっ 「だと思うけどね。まじめに考えてみたことはないんだ。わたしは たトーチによって照らされる小さな円の中だけ。時おり、熔けた金 金持ちじゃないんだよ、エン・ハ 属の輝く点が遠くにあるが、あまりにもかすかで、ほとんど見えな 「たぶんね。もしそうならわたしの手を借りようなんてしないはす いといっていい。赤外アイの方は、この薄暗がりを通して、ト

10. SFマガジン 1978年10月号

プリッジの中心付近にある球面スクリーンに、人類の進軍の模様冷たい正確さをもって、いった。今までだったら、三百機の・ ( ーサ ーカーが存在するという事実を知っただけで、人間の希望は完全に が映し出された。それそれが百隻以上の船からなる二筋のかえる跳 びライン。それそれの船は緑色の光点として球面に示され、その位潰え去ったことであろう。だが、ここでは、この時は、恐怖そのも のはいかなる人を恐がらせることもできなかった。 置は旗艦のコン。ヒューターの許すかぎり正確に表示されている。 ストーン・・フレイス ッチのヘッドフォーンの中の声は、開戦準備のためのやりとり 岩場の不規則な表面は艦隊のそばを、一連の痙攣的な動きで移 動していく。旗艦は O ープラスのマイクロジャンプで航行しているを始めていた。今のところ、かれとしては耳を傾け、見守っている ので、球面スクリーンには一秒半の間隔で連続的にあらわれる静止以外にすることはなかった。 画像として表示される。六隻の重装備の金星船も、懸命に前進を続六個の重い緑の光点はずっと後方に取り残されていた。カールセ ンはためらうことなく、全艦隊を敵の中心に向かってまっしぐらに けているが、搭載している O ープラス・カ / ン砲の質量で足を引っ 張られるので、それらを示す六個の太目の緑色の記号は、艦隊の他突撃させていった。敵軍の戦力は過小評価されていた。だが・ ( ーサ 1 カーの指揮官も同じ誤りをしていた。な・せなら赤い編隊も止むを の船の後に取り残されている。 チのヘッドフォ 1 ンの中でだれかがいった。「約十分後に到得ず隊形を組み直して、さらに広範囲に散開したからである。 両艦隊の距離はまだ遠すぎて、通常兵器は効果的に使えなかっ 達できると思う・ーー」 声が消えた。すでに球面に一個の赤い光点が現われていた。それた。だが、のろのろ進んでいる O ープラス・カノン砲を搭載した重 からもう一個、それから一ダース、と、暗黒星雲のふくらみの周囲武装船は、もう射程距離に入っていた。そして、間に味方の編隊が に、たくさんの小さな太陽のように昇ってくる。非常に長く感じら いても、いないのと同じように容易に射撃することができた。かれ ーサーカー軍らが一斉射撃を開始した時、ミッチは周囲の宇宙空間が震動するの れる何秒間かの間、・フリッジの上の人々は黙って、 が感じられるように思った。人間の脳が感じるのは一種の二次的な が次々に姿を現わして進んでくるのを見守っていた。ヘンプヒルの 効果であって、実はただの使い捨てられたエネルギーに過ぎない。 偵察隊は結局発見されてしまったにちがいない。なぜなら・ハーサー カー艦隊は巡航してくるのではなく、攻撃してくるのだから。さっそれぞれの投射物は、それを発射する船からの安全距離まで火薬で きまでは百隻かそれ以上の戦闘網が一つあっただけだが、今ではそ吹き飛ばされ、それから、それ自身が搭載している 0 ープラス・エ の網が二つになり、人間艦隊と同様にカエル跳びをしながら宇宙空ンジンでさらに加速され、現実の内と外をマイクロタイマーでちか ちかと出入りしながら飛んでいくのである。 間に現われたり、消えたりしていた。そして、なおも・ハ 1 サーカー エングロープ の赤点が昇ってきて編隊を組み、小さな人間艦隊を球囲し、叩き速度によって質量の増大した巨大な弾丸は、ちょうど小石が水面 を跳躍していくように、実存の間を跳躍しながら、生命艦隊の間を っふそうとして、展開を続けた。 幻のように通過し、標的に近づいてからはじめて正常空間に完全に 「三百機を算えるな」沈黙を破って、やや女性的な気取った声が、