かしい。もっとも、二つの通信文を別の方向へ同時に送ることは可ら離れると、彼らはずっと平凡で恐ろしくない人間に見えた。レイ 能だし、事実、級の信号塔ではしばしば行われている。そんな場フはこの二人をよく知っていた。ロビン・ホイーラーのほうは、信 合には、北行きの信号の中へ、二つおきに、南行きの信号が混ざ号所への行き帰りにしよっちゅう彼に声をかけてくれる。ポプ・カ る、というようなことになる。また、・ との信号所も、とぎれとぎれマスのほうは、若い頃、村祭りの棒術試合で、大ぜいの相手の脳天 に、前向きと後ろ向きの通信を交代で送ったりする。だが、こうしを叩きのめしたことのある男だ。彼らはレイフに信号書をさした た同軸通信は、当のギルド組合員にさえ嫌われている。まず、おなし、番号順に黒い四角の中へ赤で印刷された符号のすべてを見せて くれた。ひきとめられるままに、レイフは彼らと食事をともにし じ線に属する全信号塔にほかの通信をやめさせ、合意の上で適当な こ。母は心配し、父は腹を立てているだろうが、家のことを彼はほ コードを決めなくてはならない。つぎに二人の見張りが立ち、かわナ るがわる信号手たちに向かって指図を唱え上げる。しかし、最も統とんど忘れていた。夕方近くに、西から新しい通信が届いた。警察 制のとれた信号所でも、ほんのちょっとした手ぬかりから完全な混の連絡事項だと信号手たちは彼に教え、腕木の羽ばたきに乗せてそ 乱を来たすことがあり、そうなった場合は、通信をもう一度白紙にれを送り出した。レイフが信号所を出たときは、もう日暮れだっ た。まだ雲の中を歩いているような気分で、信じられないことに、 もどして、最初からやり直す必要が生じる。 ツの中ではもらった小銭がちゃらちゃら鳴っていた。そのあ 混乱した信号塔が出す取消し信号を、軍曹は両手を使って真似てポケト と、べッドに入り、眠ろうとっとめている最中になって、長いあい みせた。信号柱から腕木を水平方向へ三度振り出すのた。もし、こ だ埋もれていた夢がほんとうになったんだと、はじめて実感が湧い うしたことが起きると、どこかでだれかの首が飛ぶことになる、と 軍曹は苦笑しながらいった。というのも、 << 級信号塔の指揮をしててきた。ようやく眠りにおちた彼は、またもや信号塔の夢を見た。 いるのは、少なくとも少佐以上、二十年を越える経験を持った男ば腕木の端のかがり火が、濃紺の空にごうごうと燃えさかっている夢 かりで、彼らは自分が間違いを犯さないだけでなく、部下にも間違である。彼はもらったコインを使わすにとっておいた。 いったんそれが現実の可能性にな 信号手になろうという野むは、 いを犯させないように監督することを期待されているからだ : レイフの頭はまたもやくらくらしてきた。彼は軍曹のすりきれた緑ったあとは、着々と育っていった。毎日、暇をぬすんで、レイフは の革の制服を、新たな尊敬の目で見つめた。いまようやく、お・ほろ無気味な先史時代の丘の上にそそり立っシルべリー信号所へかよっ げに、信号手になることがどんなものであるかが、わかりかけてき た。父親は、彼がしよっちゅう出歩くのを、厳しく叱りつけた。私 たのである。 有地管理の書記としてビグランド氏が受け取る賃金は、七人の息子 信号機の腕木が大きな音を立てて打ち合わされ、やっと通信は終を養うにはとても足りなかった。家族は必要に迫られて自給自足の わった。見張りはまだ持ち場に立っていたが、二人の操作係は下に生活をしており、そのために猫の手も借りたいほどだったのた。し かし、だれもレイフがしよっちゅう姿を消す理由には、思いおよば 降りてきて、はじめてレイフに興味を示した。信号機のハンドルか 3
を泳いだ。 / 彼よ肉体を離れた気分になった。手足は、もうろうと混訓練のつぎの段階は、楽しいことずくめだった。レイフはジョッ 乱して、ただ燃えるように熱い。やがて、苦悶の中で、どうにか通シ = に別れを告げ、二カ月の休暇で故郷に帰った。休が終わる 2 2 信の終わりがやってきた。ネ〈ミャ記の最後の一節を綴りおわると、彼は南西部の旧家であるフィッツギポン家へ派遣され、十二カ と、彼は「送信終了」の符号を送り、ハンドルにもたれかかった。 月のあいだ少年信号手として勤務することになった。仕事はおもに まだ思考のできる彼の一部分は、やっとこれで休息できることを・ほ儀礼的なものだが、国家的な危機ともなればある責任がふりかかる んやりさとっていた。急にやみくもな憤怒にかられて、彼は信号所ことは明らかだった。由緒ある名門の大半は、もしそれだけの財カ の歴史の中でこれまでたった一人の前例しかないことをやってのけがあれば、ギルドから権利を買い取り、私有地のどこかに小さな信 た。もう一度 ( ンドルをとって、「注目」の信号を出し、恐るべき号塔を建てていた。これらの級信号塔は、レイフが卒業した級 正確さで、一字一字、「女王陛下万歳 , のメッセージを綴ったのでのそれよりもまだ小さかった。 ある。「送信完了」と符号を送って、認知の応答がないのを見てと 容易に観測できる距離に信号所の列が走っていない場所では、そ ると、 / 、 、ノドルを上にあげ、「非常事態、ーー連絡中断」の位置に固の周囲に一つまたはそれ以上の信号塔が建てられ、信号書の閲覧を 定した。これが一般の信号ルートなら、この警報はさっそく起点の許されない日雇いの信号手が勤務することもあった。しかし、フィ 信号所まで中継され、残りの通信を径路変更した上で、故障原因の ツツギポン家の字形をした大きな屋敷は、スワイヤー・ヘッドの 調査隊が差し向けられることになっている。 ほとんど真下、海に向かって開いた谷の斜面にあった。到着した レイフはうつろな目でハンドルを見つめた。そこについた鮮やか 朝、その豪邸の屋根の連なりを見おろしたレイフは、思わず口元を ほころばせた。これから彼のものになる信号塔が、組合わせ煙突の な色の奇妙な縞が、自分の血であることに、やっと気づいた。掌の 皮のむけた両手をむりやり ( ンドルからひき離すと、肱でドアを押あいだから突き出ているのが見える。そこからほんの一マイルほど しあけ、駆けつけた人びとを押しのけて、二十ャード先の草地へばの上手に、級の中継塔があった。丘のすぐ頂きにある懐しいセン ったり倒れた。彼は荷車でセント・アドへルムズへ運ばれ、べッド ト・アドへルムズ信号基地のために作られた短距離信号塔である。 に寝かされた。時計が一回りするあした、ノ冫 : - 彼よ昏々と眠った。目が彼は馬の脇腹を蹴って、ゆる駆けに入った。これだと、直接級の 覚めたとき、知らせがもたらされた。ジョッシ、も彼も、もう実習塔に対して信号することになり、ほ、にルートよよ 。オしノターと - 生用の頭巾のついたあすき色の胴着を脱ぎ捨て、信号手ギルドの緑六ダース、それに靴直しを一人用立てよ、というような要求を、セ 衣を身にまとえるのた。その夜、二人は包帯を巻いた両手でビール ント・アドへルムズやゴールデン・キャップへ中継するよう迫られ のジョッキをつかみ、無器用に祝杯を上げた。そして信号所の荷車たら、そこの少佐がいったいどんな顔をするだろうと、レイフはお が、二度目にして最後のおっとめを果たすことになり、泥酔した二かしくてならなかった。彼はその信号所へ正式のあいさつに立ち寄 人を宿舎へ運んでいった。 ったのち、新しい任務につくために、馬で谷を降りはじめた。
張りの床は、人が通った跡が半インチもの深さに磨り減っている。 ようなもやが信号所のまわりに渦巻き、初雪がちらついた。何時間 っ一 これからの数カ月で、レイフは隣の信号塔の腕木を見張るため、窓ものあいた、東西の信号所はもやの中に消えてしまった。もし、 っ 4 から窓へと往復して、その跡をもっと深く刻みつけていくことだろま通信が届いたら、信号手たちはかがり火を使わなくてはならない う。マッチ棒のような信号機は、ようやく見えるか見えないかぐら だろう。レイフは心配そうに粗朶の東を準備し、それを針金でかご いだった。たっぷり二マイルの距離はあるなと、彼は判断した。曇の中にくくりつけ、パラフィンといっしょにドアのそばに置いた。 った日にそれを見分けるには、ありったけの視力に加えて、鋭敏な いざという時は、このパラフィンに浸して、火をつけるわけであ ツアイスのレンズが必要になりそうだ。しかも、勤務時間中は、一る。もうすでに通信は届いていて、薄闇の中でそれを見逃したので 分も休ます、つねにその二つを見張りつづけなくてはならない。遅はないかという妄想に、彼は悩まされた。やがて、その不安も潮の かれ早かれ、どちらかの信号機が動き出すだろうからである。レイ干くように去っていった。・ キルドは厳格たが、しかし公平た。こん フはニャリと笑い、自分の信号機の ( ンドルに手を触れた。もしそな冬のさなかには、どんな信号手も超人になれるわけがない。も うなったときには、むこうが「注目」の呼びかけを終らないうちし、かりに一人の大尉がいま不意にこの信号所へ乗りつけ、なぜこ 「認知 , の信号を打ち出してやるつもりだった。 れこれの通信に応答しなかったかと詰問したとしても、松明と油が レイフは双眼鏡で両方の信号所を細かく検分した。春になって、 ちゃんと用意されているのを見れば、すくなくともレイフが最善を 新しい任地へ馬ででかけるときには、どちらかの操作係に会えるか つくしたのを認めてくれるだろう。さいわい、だれもやってこなか もしれない。だが、それまではためた。昼間の勤務時間には、むこ った。そして、やっと霧が晴れたが、・ とちらの信号塔も静止したま うも彼とおなじように信号塔へ縛りつけられているし、夜中に徒歩またった。 で訪問を試みるのは危険だろう。どのみち、むこうはそんなことを毎晩、あたりが暗くなったあとで、レイフは信号機を動かし、風 期待していない。それが不文律なのた。必要な場合、それもきわめが腕木に貼りつかせた氷を振り落した。頭上の闇の中で、薄い翼が て緊急の場合にだけ、信号機を使って助けを求めることができる。羽ばたく手ごたえを感じとるのは、しし 、気分たった。彼が夜闇に向 それ以外の理由は認められない。 これがギルド組合員の真の生活なけて送り出す通信文は、突拍子もないものだった。両親や、懐し のだ。ロンディニアムでの忙しさも、フ ィッツギポン家の暖かみと いグレイ軍曹に宛てた便り、フ ィッツギポン家の雇い人の中で、彼 快適さも、たたのエ。ヒソードでしかなかった。ここにはそれらすべ がひとかたならぬ好意を抱いたある少女への熱烈な恋の告白 : ての最終結果がある。この静寂、この佗しさ、この年経た山々との週に二度、彼は昼食の休憩を利用して塔に登り、グリースを塗られ 果てしない交感。彼は一循環して、もとに戻ったのた。 た心棒の状態を調べた。ある日、そうした検査で、連動軸の一つに 彼の生活は、眠りと目覚めと監視の。 ( ターンに落ちついた。日が髪の毛ほどの亀裂を発見して、彼は愕然となった。金属の疲労を示 短くなるにつれて、天候はしたいに悪くなっていった。体を凍らすす最初の徴候たった。その夜、彼はその部分ぜんたいを交換するこ
信号所そのものは、レイフのとほうもない空想をさえ凌いでい セント・アドへルムズへぎてから十二カ月後、ギルドへ編入され た。その常時の定員は、訓練中の十人あまりの実習生を含めて百人た日から数えて三年後に、実習生たちははじめて信号機の取手を握 をはるかに上回り、そのうち六十人ないしが当直または待機状態にることを許された。実をいうと、それが待ち切れなかったジョッシ あった。級の二大信号塔は、それそれ十二人の班で動かされてい ュは、何カ月か前、ある小さな信号塔の一つで、真夜中を選んでふ た。一つの大きな ( ンドルに六人すつがっき、信号長が共同作業をざけた通信文を綴り、欲望を満足させたことがあった。この恩寵の 監督しながら、観測係からの符号を伝えるのだ。信号所が能力いっ喪失において、ジョッシュは緑の革ベルトの端についた・ハックル ばいに運営されているときの光景は、印象的たった。並んでハンド で、したたか痛い思いをすることになった。ベルトを振るったの ルを握った男たちが、一団の踊り手のように一糸みだれす動く。信は、ほかならぬストーン少佐その人たった。二人のたくましい信号 号長の掛け声、白い厚板張りの台にひびく足音。連動軸の轟きと軋隊伍長が、身をよじって泣きわめく鉱山師の息子を押さえつけてい み。屋根の百フィ ートも上から遠雷のように聞こえてくる腕木の打た。その結果、さすがのジョッシュも、ギルドのある種の規律の厳 ち合わされる音。しかし、それは気なすかしい司令官にいわせる格さを、骨身に泌みてさとったようだった。 と、信号術ではなく、 ( 「非科学的な材木連搬作業」にすぎないら信号の技術をまなぶことは、またもや新しい始まりだった。レイ しい。司令官のストーン少佐は、その経歴の大部分をベナイン山脈フは、信号機の ( ンドルが自由に押したり引いたりできる従順なも の小さな級信号所で送ったあと、予期しなかった昇進で現在の地のではないのを、さっそく知ることになった。腕木の大きな黒い帆 位についた人物だった。 が風をはらんだときには、三十フィートの信号機でさえ、その反動 級の通信は、セント・アドへルムズからスワイヤ・ヘ ッドに飛で操作係が台の上から跳ね飛ばされることがある。級の信号塔で び、そこからウォー・、 / ロウ湾を見おろす高地に建つガッド・クリフ は、チームの共同動作が一つ狂っても、致命的な結果をひきおこす に送られる。そこから海岸そいに進んで、ライムズの漁村から六百おそれがあることは、事実、過去にも証明されていた。その作業 トの断崖の止にある信号所、ゴールデン・キャツ。フへ。そしには一つのコツがあり、それは何時間も傷だらけになって練習しな て、西へ大股に跳躍して、サマーセ ット、デヴォン、さらには遠いければ身につかない。背中や腕の筋肉を使うというよりは、むしろ コーンワルへと向かうか、それともふたたび北へ方向を変え、大平全身の重みを ( ンドルにかけ、腕木が跳ねかえったり振れ動いたり するのを利用して、自動的につぎの符号の位置へ持っていくのだ。 原の丘づたいにウェールズを目ざす。レイフはよく知っているが、 信号はその途中で、エイベリー の古い巨石環列のすぐそばを通りす反動を利用せすに、それを逆らったりすれ・ま、 。いくらカの強い男で ぎていくのた。たびたび彼は両親やグレイ軍曹のことを懐しく思っも数分で汗びっしよりになり、くたびれ果ててしまう。しかし、熟 レイフ た。しかし、ホームシックになってはいられなかった。彼の一日練した信号手は、半日作業してもほとんど疲れを感じない。 は、あまりにも忙しいのた。 は熱心に練習をつづけた。六カ月と一度の鎖骨骨折ののちに、彼は 幻 8
には、ギルドの歴史、それから信号機の構造や符号法の基礎も教え示板の一つがくるりと回転して、西の方角へ黄色の左下がり斜帯を られた。もっとも、こうした実際的な作業は、イングランドの南海示すのを目にとめた。それと同時に、真上の信号塔は、通信の途中 岸や西海岸、それにウ = ールズの湿地帯に散らばった信号訓練所で平文から複雑なコード二十三号に切り替わった。彼が横目でちら で、実地に行われることが多かった。見習生たちは、魔法についてとジョッシ = を見やると、相手は元気よく親指を上けて、了解の合 いちおうの知識を持っことさえ要求された。しかし、布でこすった図を返してきた。二人は小力。 ( ンを肩にかつぎ上け、着任報告のた 琥珀の棒に紙が吸いつけられるのが、どうして信号術と関係があるめ正門に向かった。 のかと、レイフも首をひねった一人だった。 最初の数週間は、ふたりともおたがいがそばにいることに慰めを にもかかわらず、彼は勉学に打ちこみ、教授たちをも満足させる感していた。大信号所の雰囲気が、学校のそれとは非常にちがうこ 優秀な成績で卒業した。彼はさっそく実習のため、 ーセットのセとに気づいたのだ。騒々しくて賑やかたった学校に比べると、ここ ント・アドへルムズ・ト ップの頂きにある << 級信号基地へ配属になの空気は修道院のように厳格に思えた。信号手ギルドでの訓練は、 った。なによりも嬉しいのは、学校時代の無二の親友とまたいっしどこまでもつづく梯子と蛇のゲームに似ており、レイフとジョッシ ょになれたことだった。ジョッシ、・ケープという髪の黒い、向こ ュはふたたび山のいちばん下へ滑り落ちたのた。二人の生活は、酒 う見すな少年で、一般入学生の一人であり、ダーラムの鉱山師の息保の雑役と、雑巾がけや、研磨や、艶出しの作業のほとんど限りな 子だった。 い連続たった。部屋の掃除、砂利道の草取り、それに何マイルもの 二人は伝統的なやりかたでセント・アドへルムズに到着した。重真鍮の手すりをビカ。ヒカに磨き立てなくてはならない。セント・ア 荷にあえぐファウラー蒸気機関車につながれた路面列車でヒッチハ ドへルムズは模範信号塔なので、しよっちゅう視察があるからだ。 イクをしたのた。その信号所の最初の眺めを、レイフは決して忘れ一度、信号総監閣下と州知事閣下の臨席を仰いだときなどは、数週 ることができなかった。それは彼の想像よりもはるかに大きく、丸間も前から化粧直しが行われたほどである。さらにその上、信号塔 い岬の鼻の頂上一帯に伸び広がっていた。便宜上、どの信号所も、 そのものの保全作業が加わる。太い連動軸に巻きつけられた帆布の それが持っている最大の塔を基準にして格付けされている。しか パッキングを取り替えて漂白し、腕木を塗りかえ、べアリングを洗 し、セント・アド〈ルムズは、、 O 、級線の中継本部でもあってグリースを塗りつけ、円材をはすして索を張りかえなくてはな り、級の信号塔を二つ一組にした巨大な建造物のまわりを、小さらない。それも、一日の信号作業が終わった夜中の、しかもたいて な信号塔が円形にとりまいて、そのすべてが日ざしの中で腕木をく い一番悪天候のときを選んで行われるのだった。ギルドの半軍隊的 るくる動かしていた。それらのかたわらには補助装置があり、派手な性格から、携帯武器の訓練や、長弓や石弓の射撃も必要視されて な色に塗った一連の丸や四角を使って、いま信号塔がどのコードで した。いまではこれらの武器は廃れかかっていたが、まだヨーロッ 通信しているかを表示していた。それを見つめていたレイフは、表パの戦争ではときどき用いられることがあったのだ。 べ / ド・シニスダ 2 る
赤いちりめん紙がビンと貼ってある。いくつかのドアは、中の整頓かった。長年の修練を積んだ彼らの流れるような動作は、・ハレエの ぶりが見えるように小開きになっていた。板張りの壁は明るい天色ステッ。フやポーズを思わせるほどたった。彼らの体は回転し、止ま に塗られ、ストー・フの煙突を包んだ出っ張り壁には、当番表がきちり、唐草模様を描いた。木材のきしみとかすかな信号機の轟きは、 ~ たえまなく眠たけにその部屋を満たしてい んとビンで留められていた。部屋の一隅には、額縁にはまった色あ蜜蜂の唸りのようこ、 第ゲレオダイプ ざやかな何枚かの賞状。その下に、ひどく色褪せた銀板写真があった。 た。写っているのは、たいそう背の高い信号塔の前に立った一団の レイフと軍曹には、だれひとり注意を払わなかった。軍曹はふた 人びとである。寝室の隅には寝床があって、毛布がその端にきちん たび低い声で説明をはじめた。もうこれで小一時間もつづいている と折畳まれている。その上には、手で彩色した、若い娘がほほえん長い通信は、ロンディ = アムからの穀物と食用家畜の相場である。 でいる絵が貼ってある。ギルドの緑色の帽子のほかは、ほとんどなギルドの組織は、この国のこみいった経済を調整するのに、なくて にも身につけていない レイフの視線は、子供らしくかすかな当惑はならないものだ。農民も商人も、ロンディニアムの相場を物差し と無関心さを混しえて、その上を通り過ぎた。 にして、売り買いの代価を知る : ・ レイフは失望することを忘れ 白塗りの真四角な部屋の中央には、信号柱の基部があった。そのた。彼の頭は、軍曹の話を聞いてそれをどこかに貯え、その一方で 周囲には、磨きぬかれた滑らかな木材で足場が作られ、その上に二彼の目は、信号手たちの作り出す、たえず変化する。 ( ターンを見ま 人のギルド組合員が立っていた。彼らの手には、頭上の腕木を動かもっていた。信号手たちは、彼らが動かしているキイキイカタカタ す長いハンドルが握られている。そこから上に伸びた運動軸は、白 いう機械の一部分のように見えた。 い帆布のパッキングに包まれて、天井にあいた穴をくぐり抜けてい 実際に伝達される情報、軍曹がペイス。ヒーチと呼んでいるもの る。天窓は両側で開かれて、そこから暖かい七月の風をとりこんでは、信号のごく一部を占めるにすぎない。 一つのメッセージは、そ いた。三人目の当直信号手は、双眼鏡を目にあてて東の窓に立ち、 の配布先を限定する必要から、しばしば暗号だらけになることがあ たえまなく、静かにしゃべっていた。「五 : : : 十一・ : ・ : 十三 : : : 九る。たとえば、最新の相場価格は、アクイ ・サリスを含めたいく ・ : 」操作係たちは長いハンドルを動かして、その組み合わせをくつかの中心地へ、日暮れまでに知らせなくてはならない。。 とんなル り返すのたった。頭上の信号機の腕木の引力に逆らって自分の体重 トを使ってそれを目的地へ届けるかは、暗号を中継する支所の信 をかけ、腕木が下へ降りるのといっしょに、つぎの信号への姿勢を号手たちの腕の見せどころだ。すでに情報でごったがえしている列 とる。そこには精神集中の雰囲気はあっても、むりな負担は感しらを避けて、信号のルートを決めるのには、長年の経験がものをい れなかった。すべてが非常に楽な、もの慣れた作業に見えた。信号う。いまさらいうまでもないことだが、信号塔の列が一方に向かっ 手たちの前には、天井からの筋交いに支えられて、腕木の位置がそて たとえばいまのように、東から西へ複雑な通信文を送るのに のままそこに表示されていたが、彼らはほとんどそれに目もくれな 使われている場合、それを逆の方向に使うのは、きわめてむす
ってきたのを知っていた。ェイベリー の老婦人のひとりが契約で雇も、大ぜいの高官も、あの塔の信号が読めれば、もっと枕を高くし われて、勤務中の信号手たちに食料を与えることになっているのて眠れように」軍曹はとっぜんこわい顔になった。「坊や、おれを だ。シルべリー信号所の仕組みで、レイフが知らないことはほとんからかっとるのか : : : 」 どない。 レイフは無言でかぶりを振るたけたった。軍曹はまだしやがんた 秒が分になり、なにかの答をする必要が生した。レイフはちょっまま、彼の頭上の空間をにらんでいる。レイフはこの相手に、どん びりやけくそになって、体を起こした。自分がまるで他人のような な内密の空想の中でも決して自分を信号手になそらえたことはない 声でしゃべっているのを聞き、そして、なんの思考の介入もなく口と、説明したかった。自分の舌が勝手に動いて、あらぬたわごとを から出てくるように思える言葉を、心の一部でいぶかしんでいた。 ロ走ったのたと、説明したかった。だが、もう一言も口がきけなく きいきい声で、「おらは、ト、 塔を見ていました : : : 」 なっていた。緑衣を前にすると、言葉が出てこないのた。沈黙の時 「な。せた ? 」 間が延びる中で、彼は一びきの甲虫が草の茎をよじの。ほるのを・ほん 「あの : : : 」 やり見まもった。やがてーーー「坊や、おぬしの父親の名は ? 」 また、彼は答に詰まった。どう説明しよう ? 信号手ギルドの秘 レイフはごくりと唾をのみこんだ。これはあとできっとお仕置き 密は、外部の者には決して明かされない。ギルドの掟や、も「と深だ , ー、そんな確信が生まれた。それに、もう塔のそばへ行ったり、 い奥義のかずかすは、緑衣を着る特権を与えられた一家の中で、用信号を見まもったりすることも、きっと禁じられてしまうにちがい 心深く子孫だけに伝えられていく。軍曹が彼にス。 ( イの嫌疑をかけない。鼻の奥がつんとなるのを、彼は感じた。いまにも涙がこ・ほれ たのには、それなりの理由があった。あの言葉は無気味だった。 おちそうたった。「エイベリ】 のトマス・ビグランドです」彼は答 ギルドの男は答をうながした。 えた。「サー・ウィリアム・マ、マーシャルにお仕えして、書記の レイフ ? ・ 「おぬしは信号が読めるのか、 仕事をしてます」 レイフは激しくかぶりを振った。一般庶民には信号が読めない 軍曹はうなすいた。「で、おぬしは信号術を習いたいと申すの し、また、だれも読もうとはしよ、。 レイフはみそおちの奥に震えか ? 信号手になりたいと申すのか ? 」 が走るのを感したが、またもや彼の意志に反して声がひとりでにし「はい、さようで : ・ : ・」その言葉は、もちろん工匠や商人の使う近 ゃべりだした。「 いいえ、読めません」その声はきつばりした高音代英語であり、土地を持たぬ平民たちの耳ざわりな方言ではなかっ たった。「でも、習いたい・ た。信号手たちがときおり仲間うちで使う古風な言葉づかいの中 軍曹は眉を上げた。踵の上に腰をおとし、両手を軽く膝にのせたへ、レイフはすんなりと入りこんだ。 レイフ まま、笑い出した。笑いがおさまると、首を小さく振りながらいっ軍曹がたしぬけにたずねた。「おぬしは本が読めるか、 た。「なるほど、習いたいか : : : そうだろうとも。何人かの国王 幻 0
その技術をものにした誇りを感じられるようになった。彼がはじめにはたびたびなった。彼が課題に取り組みはじめたとき、日は昇り かけたばかりだった。彼がそこを去ったとき、日はもう西 . の地平線 て同軸信号の恐るべき複雑さにでくわしたのは、そのときたった : に沈みかけていた。最初の二時間、三時間は、なんということもな 二年間の信号所勤務をすませた実習生は、ようやく一人前の信号かった。やがて、苦痛がはじまった。両肩に、背中に、腰とそして 手として卒業に近づいた。つぎに、いちばんむすかしい試験が待ちふくらはぎに。世界がせばまってきた。太陽も遠い海も目に入らな くなった。存在するものは信号機と、ハンドルと、目の前にあるテ うけていた。試験の現場は、セント・アドへルムズから約半マイル の先にある低い禿げ山たった。その上に、約四十ャードの距離を隔キストと、窓だけだった。二つの小屋を隔てた空間のむこうに、ジ ョッシュがこちらを向き、彼の果てしなく、そして無益な作業を見 てて、二つの Q 級信号塔と付属の小屋が、おたがいに向きあって立 つめているのが見えた。レイフはしだいに信号塔を憎み、ギルド っていた。ジョッシュはこのテストで、レイフの相手をつとめるこ とになった。二人は早朝に現地へ連れて行かれ、そこで課題を与えを、彼自身を、彼がこれまでにやったことのすべてを、シルべリー られた。聖書のネヘミャ記を交互に一節すっ、そのたびに「注目」とグレイ軍曹の思い出を、憎みはじめた。なによりも憎いのはジョ ッシュであり、その白く・ほやけた間抜けな顔であり、その頭上で彼 「認知」「送信終了」の符号を頭と終わりにつけて送信すること。 の肉体の滑稽な延長部分のようにカタカタ鳴っている信号機だっ 十分間の小休止は数回許されているが、それはとらないほうがいい と、二人とも内密に注意されていた。いったん台の上から離れたらた。疲労といっしょに夢うつつの状態が訪れ、その中では論理が停 さいご、疲れきった体でもう一度 ( ンドルの前に戻る気力はなくな止し、行動の理由が失われてしまった。なにもない人生、なにもす ることのなかった人生ーーーただ、台の上に立ち、ハンドルを握り、 るかもしれないからだ。 小さな禿げ山のまわりには何人かの審査員が置かれ、刻々と送信腕木の反動を感じとり、それを体で受けとめ、反動を感じとり : ・ 。彼の視野は二重に・ほやけ、三重に・ほやけ、やがて前にあるテキ を見まもりながら、まちがいや遅れをチェックする。審査員の満足 する出来で送信が完了したときには、実習生はそこから離れ、信号ストの文字が・ほうっと光って読めなくなった。それでもまだ試験は えんえんとつづいた。 手を名乗ってもよ い。だが、それまではだめだ。もし、完了しない うちに仕事を投げ出したくなったら、そうするのは自由である。だ午後になってから、レイフはもし手が届くものなら親友を殺して れも非難がましいことはいわないし、処罰もない。しかし、その代やりたいという気持に、何度おそわれたかしれなかった。しかし、 、即日ギルドを去ることになり、二度と帰ることはできない。こ手が届くはすはない。彼の両足は台の上に根を生やし、両手は信号 うして逃げ出す少年も、少数ながらいる。また、気絶するものもい機の ( ンドルに膠づけされていた。信号機は不平そうにキイキイ軋 んだ。彼の呼吸は、まるで蒸気機関のように荒々しく彼の耳に聞こ る。彼らには第二の機会が与えられる。 レイフは気絶もせす、逃げ出しもしなかったが、そうしたい気持えた。目の前が暗くなった。テキストと向かいの信号機が虚空の中 2 円
仕事は、彼の予想よりも、どちらかといえば楽たった。当主のフ別にすると、ならず者が欲しがるような物はなにもない。狼や妖精 ツツギポンは宮廷の上層グルー。フに加わっていて、めったに家にのほうがもっと危険だろう。もっとも、前者は南部ではほとんど絶 いたことがなく、屋敷のとりしきりは彼の妻と二人の十代の娘にま減していたし、年若い彼にとって後者はお笑い草だった。レイフ かされていた。レイフの予想どおり、彼が送信をたのまれるメッセは、任期を終えたばかりの退屈しきった伍長から仕事をひきつぎ、 ージのほとんどは、ごく家庭的な性質のものたった。彼は、こうしおなし線の信号塔を通して自分の到着を本部に報告してから、在庫 た立場にある若いギルド組合員がみんなそうであるように、思う存品調べにとりかかった 分特権を楽しんだ。夜はいつも調理場の中の暖かい場所が確保できすべての報告からおしても、単独勤務の信号塔での最初の冬は、 たし、ローストを最初に切り分けてもらえたし、いちばんかわいい あの耐久試験よりもつらい試練だといえる。なぜなら、それはまさ 女中が服をつくろったり、髪を刈ったりしてくれた。石を投げればしく試練たからだ。これからの暗い数カ月のあいだに、ひょっとし 届く距離で海水浴ができたし、祝日にはダーノヴァリアやポーン・ て昼間のどんな時間に、東または西から、死に絶えた塔の列を伝っ レイフは必すその場にいて、 マウスへの旅もできた。一度、小さな市が私有地の中に立ったことて通信がやってこないとも限らない。 もあった。どうやらそれは毎年の行事らしかった。レイフは蒸気機それを受信し、つぎへ回さなくてはならないのだ。認知の応答が一 関用の油と、曲芸団の熊のための生肉を請求する通信を級信号塔分遅れても、ロンディニアムから正式の戒告が舞いこむたろう。そ へ送ることになり、その半時間を有頂天ですごした。 うなれば、昇進は数年間、それとも永久にお預けた。ギルドの基準 一年はまたたくまに経った。晩秋になって、いまや信号隊の伍長は高く、それが弛められることは決してない。級信号所を監督す に進級したレイフは転任の辞令を受け、別の少年が彼のあとをひきる少佐でさえあっさり左遷されるとすれば、名もなく実績もない伍 ついだ。レイフは彼にとっての最初の重任につくため、馬で西へ向長の首など、どんなに簡単に飛ぶことか ! 毎日の勤務時間は短 く、たったの六時間、厳冬の十二月と一月には五時間たった。しか ーセットの南の一角にかたまった丘陵の中へ分け入った。 、力し し、そのあいだは、一回の短い休憩を別にすると、レイフはつねに その信号所は、高地を西へ縫いながらサマーセットに達している 待機状態でいなくてはならないのた。 級線の一部だった。冬になると、日が短い上に視界も悪化するの で、この線の信号塔は使われなくなる。レイフはそのことをよく知ひとり・ほ 0 ちにな 0 てからの彼の最初の行動の一つは、小さい信 っていた。いわば完全な孤立生活なのた。山地の冬は厳しく、吹雪号塔に登ることだった。この信号所は、一風変わった構造になって いた。高度の不足を補うため、屋根のすぐ下に高架歩路がとりつけ で旅はほとんど不可能になり、何週間も氷に閉ざされてしまう。冬 のあいた西国を徘徊するというのある追い剥ぎの一味を、あまりられており、その真中に操作台がある。一方、歩路の両端には二重 ガラスのはまった窓があって、西と東への眺望がきく。歩路は二つ 2 心配しなくてもすみそうだった。信号所は街道から遠くはすれてい る上に、小屋の中には、信号手の必需品であるツアイスの双眼鏡をの窓をつなぎ、信号機の ( ンドルの前を通っているが、その厚い板
なかった。そして、レイフのほうも、そのことは黙っていた。 ろがった。どのギルドも門戸は狭い。レイフを仕立屋の道に入らせ 隠れた時間で、レイフは腕木の三十あまりの基本的位置と、いちるにも、彼の父親は多額の金を払わなければならないのた。それが ばんよく使われる連続符号をおぼえた。そのあとは、シルべリー・ 信号手ときては : : これまでビグランド家の者が信号手になったた ヒルの近くに寝そべり、信号を見ながらその番号を復唱すればよかめしはなく、またこれからもないだろう。いや、しかし : : : 家族の った。ただ、その信号がなにを意味しているかは、またなにもわか地位はそれで上がる ! 緑衣を着る息子が出たということで、村の らなかった。一度、グレイ軍曹が、マールバラ・ダウンズから送らみんながわれわれを見直すたろう。ばかばかしい れてきた通信で、彼に観測係をやらせてくれたことがあった。すば みんなの議論が出つくすまで、レイフは唇をみ、頬を紅潮させ らしい半時間だった。レイフは体をこわばらせて立ち、汗びっしょて、静かに待った。こうなるたろうことを彼は知っていたし、自分 りの手に双眼鏡を握りしめて、できるたけ大きなはっきりした声がどんな態度をとるべきかをも心得ていたのた。彼の冷静さが、家 で、背後にいる信号手たちのために符号を読み上げた。小屋のもう族を落ちつかなくさせた。家族は話しやめ、見せかけの真剣さで、 一方の端では、軍曹がこっそり彼の報告を確認していたが、レイフ どうやってその野心を達成するつもりかと間うた。第二の爆弾宣言 は一つの間違いもおかさなかった。 の時期たった。「ギルドの一般入学試験に申込むのさ」彼はもうそ 十歳になるまでに、レイフはこの階級の子供が受けられる正規教らで覚えているセリフを口にした。「シルべリー信号所のグレイ軍 育を、せんぶ卒業した。なんの職業につくかという大問題が、そこで曹が相談に乗ってくれるよ」 起きた。家族が会議のために一室に集まったーー父、母、それに年新しい沈黙の中で、当惑した父親の咳払いが聞こえた。ビグラン 上の息子三人である。レイフはなんの感銘も受けなかった。家族がド氏は年とった羊のように、眼鏡の奥で目をしょぼっかせ、うすい 彼のためにどんな運命を選んたかを、もう何週も前から知っていた ロひげを噛んた。 「はて」と、彼はいった。「はて、どうしたもの のである。彼は、村に四人いる仕立屋のひとりのところへ、弟子入かな : いやはや : : : 」しかし、すでにレイフは、父親の瞳に目も りすることになっていた。布地の俵でできた壁のうしろへ隠者のよくらむ特権の見通しに対する希望の光が宿ったのを、見てとってい うにあぐらをかき、蝋燭の明りをたよりに縫針を動かして生涯を送た。息子が緑衣を着たあかっきには : 家族の気が変わらないうちに、レイフは正式の手紙を書き、自分 ってきた、小柄な猫背の老人たった。レイフは、その一件で自分に 相談がかかるという期待を、ほとんどしていなかった。しかし、形でそれをシルべリー信号所へ届けた。丁重な文面で、グレイ軍曹 式どおり、彼も会議の席に呼ばれ、なにをしたいかとたすねられに、お手数ながらビグランド家へご来駕の上、息子のロンディニア た。いまこそ爆弾宣言のときだ。「もう、なりたいものは決めてあム信号学校志望の件につきご意見を賜わりたいと、依頼した手紙た るよ」レイフはきつばりといった。「信号手」 一瞬、驚愕の沈黙がおりた。それから笑い声が上がり、それがひ軍曹は約東を守ってくれた。彼は男やもめで、子供がいなかっ 幻 4