龍一郎 - みる会図書館


検索対象: SFマガジン 1979年4月号
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1. SFマガジン 1979年4月号

ィースター島の謎は明かされたロ 小惑星帯遊侠伝・龍一郎、涙 木犀と恋 奇才が世界の構造を書く 自分の背中に追いついた男 試金石 時に棲む猫 疑う余地なし ^ 海外未紹介作家コーナー〉 四次元猫の標本はなぜ出来ないか ? さわやかなファンタジイ 仁侠スペース・オペラ ヒューゴー / ネビュラ両賞受賞ー スターダンス 1979 年 4 月号 目次 横田順彌 殿谷みな子 伊東守男 テリイ・カー 安田均訳 アイザック・アシモフ 4 野口勇訳 6 ・ < ・ハインライン & エルマ・ウエンツ 9 島岡潤平訳 訳ン 祐 8

2. SFマガジン 1979年4月号

ろ、お出迎の準備をするか。おい、レーダー。やつらは、あとどれ龍一郎が答える。 くらいでベスタに着く ? 」 「これでも、まだ、おめえはをとめるつもりか : : : 」 「へい。中速で向かっておりやすから、かれこれ一時間ぐらいかと「 : 「そうかい。それじゃ、 、ってもいいんだな ? 」 「へい。ただし、ひとりじ 、いけません」 レーダー係が、計器を見つめながら答えた。 「よし。二十分後に全機発進開始だ。よく整備しておけ。相手はた 「なんたとに」 ったの三人た。全機でかかればわけはねえ。それから、全員に伝え ーアカぐっと身を引き締める。 ろ。三人のうちたれでもい、。 ひとりでも殺った者には、小惑星フ 「ひとりでいくのは、この昇り龍が許しません」 オカエアの繩張りを預ける。三人で分けても立派なも・んたぜ。今度 , 龍一郎が、じっと目をつぶっていう。閉したまぶたら、ふた筋 は、みつともねえことのねえように、頼んたぜ」 の泪が、を冫 一策は、ぐるりと部屋の中を見回した。 「じゃあどうしろと ? 」 「あっしも、 っしょにい . きます」 コン。ヒュータ・ルームの子分たちが、声をそろえた。 「龍、おめえ卩」 「よーし。声ばかりじゃなく、立派な働きをするんた。せ。発進ま「ためです、兄貴。 いいだしたら、聞かねえのは知ってのとおり で、あと十九分。全員持ち場につけ。原子破壊砲の手入れを忘れんだ。い っしょにいきます」 なよ」 「いや、今度は俺のとめる番だ。橘も死んだいま・これ以上の犠牲 秋山が、全員を叱咤した。 はいらねえ。あとは俺ひとりが死ねばいい」 福永が、龍一郎をさとすようにいう。 : このばかが、なにも自爆することはねえものを : : : 」 「いきます。橘の兄貴のためにも第っしがいかなかったら、の すでに、銀色の断片さえ見えなくなった窓の宇宙に釘づけになっ兄貴はなんのために死んだんだがわからない」 たまま、福、水は呟くように、 龍一郎の決意は固かった。 龍一郎と梅原も、エンジンを停止したまま、無言でなにもない宇 「わたしも、おともさせていただきますよ」 宙を見つめる。 ふたりの会話のとぎれ目に、梅原が口をはさんだ。 、「二代目、それはいけねえ。これは寺島の組内の問題だ」 ネ、「 , 力いった。 被永があわてる。 「でも、わたしは龍一郎さんに、命あずけた身なんでね」 8 4

3. SFマガジン 1979年4月号

の自分を育ててくれた美津の頼みを断わるのは、龍一郎には辛かっ龍一郎が、若い者を叱った。 た。こころよく引き受けて、美津をよろこばせてやりたいことも事「龍、なにを怒ってるんだい。あたしにも、お前のいってること 2 は、まるつきり通じないよ」 実だった。 が、どうしても龍一郎にはそれができなかった。できな 美津が、こみあげてくる笑いを押えていう。 いからこそ、彼は真継龍一郎であった。 「龍の兄貴は、こういう話しに弱いんですか ? 」 コンビュ 1 タ・ルームをでると、美津と龍一郎は、格納庫に向か若い者が、意外だといった口調でいう。 「むかしから、女性の話しになると逃げだすんだよ。よほど、女性 い、すでに待機している、寺島組の代紋も鮮やかな中型のスペ】ス シャトルのシートに腰を沈めた。秒単位で遠ざかっていく、標位星に痛めつけられた経験でもあるのかも知れないね」 をちらりとふり返った美津が、そのまま隣席の龍一郎の横顔に目を「いや、そんなんじゃないですよ、姐さん。あっしは、その、ただ とめていった。 龍一郎は、額に汗を浮きあがらせ、必死になって弁解した。 「龍、さっきの話しとは別に、もうひとっ話しがあるんだけどねえ」 「あらら、むきになってるよ」 「なんでしよう ? 」 美津の先刻とはうって変わった軽い口調に、龍一郎はちょっと首美津がぶっと吹きたし、操縦席の若い者も、こらえきれすに笑い をかしげて答えた。 「弱っちゃったなあ」 「お前、そろそろ、世帯をもっ気はないかい ? 」 龍一郎も、頭をかきながら笑いだす。龍一郎と美津にとって、そ なんです ? 」 「だめだよ、とぼけても。聞こえてるに決まってるんだからね。でれは三週間ぶりの笑顔たった。 も、聞こえないっていうんなら、もう一度いってやろうね。そ「つそ ろ、世帯をもったらどうなんだい」 寺島組の跡目相続会議は、葬儀の後かたづけもすっかり終った十 照れて、おと・ほけ作戦をとろうとした龍一郎を、美津は容赦なく一月の十六日、すなわち、善次郎が藤原剛造の手にかかって倒れて 追撃した。 から、ちょうど一と月目に、小惑星イレーネの料亭〈天の川〉で開 。あの : つまり、 「 : : : その、世帯といっても、あっしは : かれた。 どうも・ : ・ : 」 集まったのは、生前善次郎と親交の深かった四人の叔父貴衆と美 「兄貴、なにしゃべってるのか、さつばりわからないですぜ」 津、代貸の北村、北村と同格の橘、そして龍一郎、若頭の城喬介の 九人だった。 操縦帯の若い者が、茶々を入れた。 「ばかやろう ! お前はよけいなことをいうんじゃねえリ」 この日の会議の主旨を説明し終えた美津は、火星茶でのどをうる

4. SFマガジン 1979年4月号

ターが狂ったように踊る。小さな隕石が、船体すれすれのところをんです。ともかく、話しがしたい。宇宙船をとめてください」 梅原の声は、きわめて冷静だった。だが、福永からの返事はな 通過した。 「だいじようぶですかリ」 「 : : : 兄貴。龍一郎です。考え直しておくんなさい」 龍一郎が、降り龍の異変を認めて大声をあげる。 「あぶないところだったが、なんとか」 たまりかねた龍一郎が、マイクにすがりつくようにしていう。や はり、福永は返事をしない。 梅原が計器を点検して答える。 、い終らないうちに、視界が開けた。レーダーにも、もはや隕石「兄貴。もとはといえば、みんなこのあっしが、わがままいって起 おとしまえ こしたこと。決着はあっしがつけます。兄貴は手を引いてくださ 群の影はない。 「よかった。どうやら難関は突破したようです」 ほっとしたようすでいう。 龍一郎が、 龍一郎は、必死で福永の宇宙船に追いすがりながらいう。 ーしし , 刀」 「これで、福永さんの宇宙船に追いついてくれれ、よ、 「断わる。せ、龍。さっきまでなら、まだ手を引くこともできたかも 知れねえ。が、田島が橘を襲ったいまとなっちゃ、もうだめだ。橘 梅原が、電磁シールドを消しながらいった。 おとしまえ 「 : : : それが、どうやら、追いついたようです。レーダーが甲八 に璃かかした決着は、俺がつける。だが、その前にかわいい子分 六、乙一三四、丙八五の座標に宇宙船らしい物体を捕捉している」を、あんな行動に走らせた野村親分の仕打ちががまんできねえ。 「なるほど、こちらのレーダーも捕捉した。急ぎましよう 龍、おまえもがまんしてるし、梅原の親分さんも命落しかけながら 二隻の宇宙船は、限界までスビードをあげる。やがて、レーダー寺島組のために目つぶってくたさる気持ちは、うれしい。でも、俺 にはがまんできねえ。仁侠道には仁侠道の定められた掟がある。が 上の物体は、ふたりの肉眼に見える距離まで接近する。 その宇宙船は、福永彦次の乗りものにまちがいなかった。宇宙船まんするのも掟だろうが、目覚めさせるのも掟だ」 は、船体をすつ。ほりと電磁シールドで包んでいた。銀色の外鈑からやっと、龍一郎の呼びかけに答えた福永は、自分自身にいいきか せるように低い声でいった。 抜けでてきたように、怒り天女の像がくつきりと闇の中に映える。 「そこを、がまんしてほしいんです」 「あの天女の像は、まぎれもなく福永の兄貴です」 「では、わたしから、声をかけましよう」 ついに、福永の宇宙船に並んだ龍一郎がいう。 「しつこいぜ、龍。俺はいやだといってるんだ。どうしても、俺を 梅原は、寺島組専用周波のスイッチを入れた。 「福永さん、わたしは倉持組の梅原です。宇宙船をとめてくださとめたければ、俺を斬れ。たたし、俺を黙って斬られはしない。俺 。福永さんのお気持ちはわかるが、お美津さんはじめ寺島組のみがおめえを斬ることになるかも知れねえ」 んなは、福永さんのことを心配しています。龍一郎さんもきている「 : : : 兄貴」 い」 3 4

5. SFマガジン 1979年4月号

時代のイジプトで行なわれたことは、今晩このムウでもできるのじ「まことに申し訳なし 、。ほかの像にはもっと気をつけますからな」 そして、老人は努めたけれどもーーー酒が威力を取りもどしつつあ ドルフがひとこと口を入れた。「それはないよ、おやじさん、だ った。彼はつっ立ったままあちこちにゆれ、像をとばすねらいは、 ったらどうして言ってくれなかったんだい ? 」 だんだん散漫になっていた。石像はあらゆる方向にとんだが、遠方 へとどいたものは一つもなかった。六つが一群れになってとんだ はね返ってきた答えはいかめしく、理に適っていた。「誰もきい てくれんかったじやろ」 が、港に高い水しぶきをあげて落ちてしまった。とうとう、四分の 三を越える像に手をつけないまま、老人はゆるやかに身体を沈めて コンドールはさっそく仕事に取りかかったけれども、これがまたひざをつき、仰向けにひっくり返って動かなくなった。 ドルフが駈け寄ってゆすった。手応えはまるでなかった。彼はコ ずいぶんとのろかったので、三人は見ていて悲鳴をあげそうになっ 「うま た。老人はまず、地べたに大ぎな円を一つ描いた。「これは暗黒のンドールの一方のまぶたをめくり返して、瞳孔をのそいた。 アスタル 家じゃ」おごそかにこうもらすと、月の女神の三日月を描きそえくないな。正気にもどるまで、何時間もかかるそ」 た。それから、はじめの円と一点で接する大きな円を、もう一つ描 ロくールはがっかりして、ごちやごちゃに散らかったあたりをな いた。「そしてこれが、光の家しや」彼は太陽神のしるしをつけ加 がめた。こいつらも役にたたなくなったな、と彼は思った。誰の目 えた。 にふれることもなかろう たくさんの選挙道具が、使われず廃品 これが終ると、老人は左から右へまる三回ぐるりとまわった。自になってしまったのだ ! おれのすばらしいアイデアがー クレヴァムが不快な静けさを破って言った。「おれはときたま、 分の足に二度も裏切られそうになったが、もち直して歩きつづけ た。三周目をまわり終えると、彼は暗黒の家の真中にひょいととびこの国にはひどい地震が必要だ、と思うことがあるんだ」 こんで、光の家と向きあった。 前列の左にあった像が、土台の上で震えて空へとびあがり、東の 「 : : : かれらの主たった神に対する崇拝からである。 地平線めがけてとび去った。 たしかに、考古学では誤りが犯されることもあるが、これは 三人の若者は一度にわっと歓声をあげた。ロ ・、ールの顔に涙が流 誤りの存在し得ない一つのケースである。石像は明らかに宗教 れた。 的な意味をもっている。慎重な科学者ならば、そういうたしか な足掛りを踏まえ、自信をもって、その由来をたずねるだろう さらにもう一体、像がとびあがる。こいつが飛翔に移ろうとして 宙にとどまった瞬間、コンドール老はしやっくりをやらかした。像 はなまの重さで元の台めがけて落ち、真二つに割れた。彼はふり向 いて言った。 ロ 9

6. SFマガジン 1979年4月号

龍の彫りものを、電磁シールドで鮮やかに宇宙空間に浮きあがらせ 福永彦次の宇宙船とまちがって梅原正二の宇宙船を襲い、しかも ながら、猛スピードでかれらの包囲網めがけて飛んでくる龍一郎の龍一郎の出現でベスタに逃け帰ってきた子分たちを見て、野村一策 g 宇宙船を認めると、たちまちのうちに陣容に乱れを生し、一斉に方は、あきれてものがいえないという調子でいった。 向を転じて宇宙の深淵に逃げ去ったのだ。 「なぜ、相手まちがったとわかった時、すぐ謝まってしまわねえん だ。そこで、詫び入れりや、めんどうくせえことにはならなかった 発進の必要がなくなったと知らされて、コントロール・ルームに ものを」 帰ってきた梅原に、レーダー観測員がいった。 「おやっさん。戦闘機群は、甲座標八六五、乙座標二二三、丙座標 一策は、横目で床の上に正座し、頭を下げている二十三人の子分 八一の方向に消えてきます。これ以上のレーダー追跡は不可能にな たちをながめ、腕組みをしながらいった。 りました」 「へい。その時には、もう倉持の子分衆を三人も斬っちまった後た 「そうか。ひと安心たな。で、その方向にある客星は ? 」 ったんで、引くに引かれなくなって : : : 」 梅原が聞く。 兄貴格らしい若い衆が、ちょっと顔をあげて弁解する。 「小惑星ベスタです」 「馬鹿野郎 ! それがいいわけになるか ! そうと気がっきや、お 「ベスタ : 。野村の親分の繩張りだな。二十数隻の戦闘機といえめえがその身体でおとしまえつけりやすむことた。指の二、三本を ば、相当に大きな母艦か、悪星からの直接発進しか考えられねえ惜しみやがって、俺の顔に泥塗ることがわからなかったのか ! 」 が、もし、惑星からたとしたら、なんで野村の親分が : : : 」 「すみません」 梅原は、宇宙帽をはすしながら、大きくため息をついた。その胸「それも いい。後に引けなかったら、どうして梅原を殺っちまわね の中を、なにか悪いことが起こりそうな、いやな予感がよぎってい え。皆殺しにすりや、だれの仕業かわからねえだろうが : : : 」 っこ 0 一策は、熊のように部屋の中を歩きまわる。 「真継の叔父貴が、滝本といっしょに、 「それが、龍一郎さんが助つ人に飛んできたんで、顔見られたら大 いまハッチに入りました」 「よし、寺島親分の墓参はとりやめにする。宇宙船をケレスに向け変だと : : : 」 てくれ」 若い衆は必死でいいわけをする。 梅原はいし 、龍一郎を迎えるために、ゆっくりと自動扉に向かっ 「おめえたちょ、 ーしったい、なん人でいったんだ」 て歩きたした。 「二十三人です」 「よく、しゃあしゃあと答えられるな。二十三人もがん首そろえて 「馬鹿野郎 ! てめえたちの、まぬけっぷりは念が入りすぎてて、 いて、わすか、四人や五人を相手にできなかったのか。この野村一 ぶん殴る気も起こらねえぜ」 策も立派な子分もったもんだぜ」

7. SFマガジン 1979年4月号

第五回 「ハヤカワる F コンテスト」 0 予選通過作品 ( 順不同 ) 0 オリジナリティの過程 花狩人 東京都 野阿梓 福岡県山科敦之 長らくお待たせしました。 狐と踊れ 母の産んだ未来 コンテストの第一次予選 新潟県 石飛卓美 島根県神林長平 通過作品を発表いたします。 一発 知慧の檻 枚数制限が百枚ということ・フラザーの理論 埼玉県 東京都松本富雄 ロロで、い 0 たいどれだけの応募島浩一 があるかと心配でしたが、そ ドーソンヴィル伯爵夫人は 吉備の黄昏 れも四百を越す作品が送られ 岡山県 櫻井竜 雨が好き てきたことで、吹きとんでし 兵庫県 石木仲樹 まいました。 大いなる旅立ち 東京都サンクトウス 今回の応募作品の特徴は、海棠稔 スペース・オペラ傾向の作品 東京都 柚木千史 青蛾の神殿 が多いことでしたが、そうし 美苑風 神奈川県静寂の日々 た作品では何を意図して書か 千葉県 畑健二 選れ、 ~ 0 判然と」な」も 0 が時殺考 多く、気になりました。 艸上人 千葉県超ゲーム なお、次号ではこの作品を 東京都 浅利知輝 我ゴジラの地へ さらにし・ほり、第二次予選通 割鞘義一郎 東京都昨日に加えて一日 過作品として発表、最終選考 神奈川県 神津彌須雄 エルケーニッヒ は七月号発表の予定です。 マガジン編集部横山太郎 神奈川県リゼアの星の歌 京都府 南山烏・ 1 ー 7 擬装ゲーム 千葉県 大場惑 3 6

8. SFマガジン 1979年4月号

秋葉すぐる 今日こそ奴を殺してやるそ。ほらつ、新品冗談じゃねえぜ、全く。軍隊は世界が一つに いてやつつけられるかもしれねえんだ。おれ の光線銃が手に入ったんだ。えっ ? 奴ってなった時、解散しちまったじゃよ オいか。ほらはちゃあんと知っているんだよ。奴の弱点 誰かって ? わかりきった事を聞くなよ。奴つ、世界政府が最初にした仕事がそれだよ。 が、あの気味悪い五ッ目の真ン中だって。そ ったら、奴だよ。火星人だ。ほらつ、三カ月あんた、何人・こ ? テ二十五世紀人じゃねえこをやれば奴は死んじまうんだ。どうしてそ 前に地球にやってきた : : : 知らない ? そうな。二十五世紀人なら、そんなことはみんな知んなことを知ったかって ? 決っているじゃ か、知らないのか。まあ、いいや。いっかテ ってる筈だ。もっとも、あんたが何人だろうねえか。経験よ。今までおれは二匹の火星人 レビでやる筈だ。その火星人は、今、おれのとこの状況には変化がないがね。えっ ? 火を殺したことがあるんだ。もっとも、奴らは 家の近くにいるんだ。あいつのためにどれだ星人なんかいる筈がない ? あんた馬鹿か ? 大分味方の警官を殺し、いや、食いやがった けの人が死んだことか。あの、いまいましい現実にあそこにいるじゃねえか。でももへつがな。そしておれは、光線を二匹のいろいろ 食人鬼め ! えっ ? その間お前は何をしてたくれもねえよ ! 現実は変えられねえんな所に当てて試したおかげで、光線銃の動力 いたのかって ? もちろん戦ったさ。だが、 だ。おれ達はただそいつを認識する他ねえんが切れ、今までただの。ヒストルで奴と渡り合 いくらあいつが一匹しかいなくても、ただのだよ。でなきや、おれみたいな一介の警官がわなきゃならなくなったんだ。幸運にも、奴 。ヒストルじゃ、役に立たねえんだ。あの化物軍隊の代わりに奴をやつつけるなんて事をしは一匹しか生き残っておらず、おれは奴から の体は、弾が通じねえんたよ。しかし、今はなくていいんだ。しかし、奴は実在するし、 いつも逃げていられたんだ。なにしろ、ビス 違うぜ。ついさっき、誰かの光線銃を見つけ実在する以上おれは奴をやつつけなきゃならトルじゃ、相手にならねえからな。 たんだ。たぶん、その銃の持ち主は奴に食わねえんた。何もしないでいると、いっかはお ところで、今奴は、例の広場で横になって れちまったんだろう。何しろ今じゃ、生きてれも奴に食われちまうからな。わかったか。 やがる。ほら、味方が初めて奴らと交戦し いる人間はほとんどいないんだ。大部分の人じゃあ、おれはいくよ。どこへいくかって、火星人を五匹しとめた広場だよ。その広 間は奴に食われる前に逃げ出したんだ。そして ? わかりきっているじゃねえか。奴を殺場に奴は、のうのうと寝てやがる。今に見や て、残って、奴と戦った者はたいてい食われしにいくのよ。こいつばっかりはやめられねがれ ! おめえは、その広場で死んだ仲間の てしまっている。おれがまだ生きているのがえ。殺るか、殺られるかだ。 後を追うんだ。 不思議な位だ。えっ ? 軍隊はどうした ? よし、このビルにの・ほろう。そうすりや、 幸い、今は奴は寝ている。だから不意をつ 0 今月の入選作・ 「おれ」

9. SFマガジン 1979年4月号

たとえば大江健三郎の文体でを書いた うのは、ショ 1 トショ 1 トではちょっと書であるんじゃないかと、そこに何か突破口 けなし、ぐ とか、発表はしてないですがそういうやっ 、。・一まくの場合は明らかに使い分けてみたいなものを開いたつもりです。あと、 つばいあります。漢字ばっかり使った いるから・ 動きのギャグは書かないですな。これを書がい 】トは日本人にすご 編集部ショ 1 トショ くと筒井さんになっちゃうのです。こっち文体がおもしろくああいう何か晦渋な文体 オし力という気がしま く好まれる形式じゃよ、 は小理屈をこねて組み立てたものが、そのというのが非常に好きでこったことがある わけです。それにしても、下敷が生で出て ート・シェクリイなんか日本の 小理屈の食い違っているところがおかしい くるやつはちょっと困りますな。つまり Z 方がかえって評価が高いような傾向があり という形にしかもっていけない。あと、い 博士はというやつで、これは完全に星さん ますね。 つだったか星さんが頭を抱えていまして、 の文体が下敷になってきているやつです。 豊田そうですね。星さんは非常にコスモああ、おれの本はみんな古くなってしまう、 ポリタンで、日本的な、たとえ・は畳の生活どうしようというので、一体どうしたんであと、選者にごまをすろうと思って、おれ は何とかだ、だれが何といおうと何とかに とか、ああいうものは一切出てこないで、 すかといったら、いままでの本は全部バ これがくるんですけど、これ 非常におもしろいんですけど、ただ向こう カーのサイレンと書いてしまった。あれが は本筋とあまり関係のないところなんで、 の人にいわせると、たとえばソ連で翻訳さ電子チャイムになるとは夢にも思わなかっ れていますが、東洋的な感じがするそうで たと。だから時事、風俗を書かないといっ応募するときには自分の文体にしろという すね。ぼくらが書いている場合、星さんの ても、そういう制約はあるんでしようけれのは無理かもしれないけど、ストレートに あまり変に気どらないで、ともかく作文を タ・フーに全部挑戦して書いているようなも ど、それはちょっと直せば済むことで : リーダーズ・スト 1 リイを読んで書くのと同じタッチで書いてくるのがいし ので、つまり星さんはべッドシーンは書か編集部 な、、犯罪の場面は書かない、時事、風俗 いますと、どうしてもいろいろな欠点が目でしよう。そのかわりアイデアを有効に生 かすということの方に頭を使うことが必要 は書かない、そういうタブー。それからあにつきますが、そういう欠点というのは、 なんで、文体にしろ、アイデアのこなし方 とあまり知られてないことですけれど、当どういうところが : 用漢字は確実に守る。そういう何か自分に豊田それはあくまでも書き方の問題ですにしろ、オチのつけ方、途中の処理の仕 方、いろいろなことがあるわけです、それ かせをかけて書いているわけですけれどね。つまり初めてものを書くという人は、 も、ぼくは結局それを全部とつばずしてい が全部がパランスがとれているということ さっきいったように習作ということをし ったらよかろうということで、そうしない て、だれかのを下敷にして書く。元のアイをそもそも期待するのは無理なわけです。 と要するに星さんの亜流になってしまう。 ですから一番困るのは、大変に文章がうま デアが下敷になっていて、 いようだ。けれどもアイデアは大したこと だから違う形で時事、風俗というのを歪曲としてこなれているぐらいになるには、文 オい、センス・オブ・ワンダ 1 を一向に感 させたら、そのときああいうことが話題に章力が必要なわけです。だから最初は文章よ なって、これをこう歪曲したのがおもしろをだれかに借りなければならない状態とい じない、最後にとんでもないオチがあるか と思うと、思ったとおりに終わってしまう かったなというので、逆に変な残り方が後うのは必ずあるわけで、・ほくは昔好きで、

10. SFマガジン 1979年4月号

て、そのまま藤原組に殴りこみかけやした」 裨、ラが、ふたりの外套を受けとり、乾燥ロッカーに吊しながらい 「じゃあ、おめえもおやっさんに会わずじまいか : : : 。気の毒にな あ。おやっさんは、あんなにおめえのことかわいがっていたのに : 「万が一つていうと ? 龍一郎が、福永のことばに疑問をなけた。 「なに、時々、酸素発生装置がいかれることがあってな。なにし福永は、すまないことを聞いたという表情でいった。 ホンコツだ。 ろ、この鉱山はいまは本格的な採掘作業をしてねえ、 : 一時間たっても、外の氷嵐はまったく変化を見せていなかった。 機械もそうとうにがたがきてるのよ。以前、突然こいつがこわれ て、死にかかったことがあるんだ。さてと、おめえたち、なに飲福永は話しの途中時折、シャッターをあげて、展望窓から外に目を トリトン正宗ってのはどうた。小惑星帯あたりにやねえ海王星向けた。もちろん、なにも見えはしなかった。雪粒は防雪ガラスを む。 ものともせず、その表面に二十センチもの厚さに積っていた。 産の地酒だ」 藤原組とのいきさつを、ひととおり聞いた福永がいった。 「ぜひ、いただきます」 「そうかい、それしや、その己之介さんとやらが、命と引きかえに 龍一郎の返事に、福永はコンパクトな特殊強化プラスチック製の 一度会ってみてえ人だったな」 四角いテープルの脇にあるボタンを押した。テープルの中央に小さ 「たしか、己之介さんは海王星の香山組にいた人とか聞きました な穴があき、中から、とっくりと盃が現われる。 が、兄貴はうわさ聞いたことはありませんか ? 」 「独得の匂いがあるが、味はばつぐんた。さあ、飲んでみろ」 田島がいった。 福永は、ふたりに盃を渡し、少し濁りのある酒を、注いだ。 「どうだ、いい味だろう。俺は、すっかり気に入っちまったよ。と「知らねえなあ。なにしろ、冥王星は遠すぎるよ。一番近い海王星 ころで、さっきは、ただ、びつくりしちまって聞くの忘れていたのできごとだって、ほとんどここにや届いてこねえ。それに、冥王 が、おめえ、タイタンをいつでてきたんた」 星でも地下のメガロシティに住んでりや、もう少しは情報も拾える が、俺のところは離れ島た。もっとも、好きでこんな生活を選んだ 「かれこれ、三カ月前になります」 んだから文句はいえねえがな」 龍一郎が答えた。 「そうか、そいつはよかったな。面会にもいけねえで、許してく福永は、自嘲にも似たうす笑いを口もとに浮かべた。そして、 れ。 : : : すると、おやっさんが藤原に殺られなすったのは、おめえ がケレスに帰ったすぐ後かい ? 」 「それで、三代目はだれが襲名することになったんたい ? 姐さん か、それとも龍、おめえか ? 」 福永は、盃をぐいとあおっていった。 福永の質間に龍一郎は答えなかった。 「いえ、そのちょっと前です。ケレスに向かう途中で知らせ聞い 7 2