らがなと漢字とカタカナを何。ハーセントず漢字だけというのが一応ふつうだから、こ いといった印象を与えるということとは別 に、検索のために役立っという部分がありつ使うかという割合だということがわかつれは日本人だとわかる。 これがニューヨークを舞台にした小説で ますからね。いまはそれそれの作家・翻訳たんですね。漢字は多すぎると読みにくい 「井上」と書いてあったとする。するとこ が、少なくても読みにくいんですね。カタ 家が、自分なりのルールに従って使ってい れは、日本の国籍を持ち日本から来た人間 カナもそうです。 るとしても、そのうち最大公約数が決まっ がニューヨークを歩いているという感じを 出版社によってはそのルールをはっきり てくるんじゃないでしようか。もう決まり 作りすぎて、この漢字をここで使った以与えられると思うんですがねえ。ダニエル かけていますかね。 ・井上という場合には、これは二世たな。 もうひとっ : : 昔、朝日か毎日かがやつ上、次に使うときには必らず漢字でなけれ さて、ダニエル・イノウ工と書いた場合 はいけないというところがあります : : : 早 たことですが、新聞記事にルビをふらなく はどうかです。これは二世、もしくは三世 川書房のことじゃないですよ : : : しかし・ほ なって読みにくくなったのか、それとも教 ですね。もちろんそんなことは断定できま くの考えとしては、最も読みやすい活字の 育水準が上がってきたから読みやすくなっ てきたのか調べてみたんですね。そうする組み方というのを最初に考えておくべきせんが、どうもそんな感じがするんです。 このあいだ面白い事件がありましてね。 で、日本語の長所を十二分に利用するべき と、文章を最も読みやすくする条件は、ひ フランス系、アメリカ人のお嬢さんと、日 だ、印刷面をよくしよう、情報検索が速く できるようにしようということです。そう系三世のアメリカ人のお嬢さんが野尻湖で いう考えが頭の中にあるから、漢字をどう夏休みをすごしたんです。ふたりで風呂屋 使うかも、そう堅苦しくは考えない : : : 答へ行って、その帰りにふたりで氷あずきを 食べに入って、外人外人した金髪娘が日本 になりましたでしようか ? ほかに何か ? 語でしゃべって、片方のどう見ても純日本 質問いまのことですが、ときどき翻訳小 説の中に日本人が出てきますね。それを日人のほうは日本語がぜんぜんわからない。 野本語になおす場合、どうするべきなんでし氷あずき屋さんはまるで大和魂のかたまり みたいな人だったんですな、金髪娘が「わ よう ? 人名だけでなく、地名でも : ・ る たくしは、こおりのうえにあずきかけるの 義矢野こういうことでの文字の使い方にね」なんていってくるから気持悪くてたま らない。それで日本娘のほうにむかって は、暗黙の了解というものがありますね。 「お嬢さん、何にします ? 」と尋ねると 日本内地では、名前というものは上も下も 漢字が使われている。例外的には、女の人「アイドントノー」とくる。それで腹を立 7 の名前で、ひらがなだけとかカタカナだけててけんかになった。日本人の顔をしてい 9 るから日本語をしゃべるはずだという先入 というのがありますが。でも、姓のほうは
たのだ。 だが、そのこころみは奏功しなかった。苦痛の低い唸りをあげて 彼の失望をリンダは可愛らしい頭をかしげて見つめていた。しか手をおろすと、彼はリンダのさしだした、騎士たちがウの鞍につ し急に思いついて両手をうちあわせると、立ちあがり、あちこちさけていた携行食糧の乾肉をうけとり、ロ〈はこんでみた。こちらの がしはじめる。 ほうが水よりはたやすくマスクの奥へさし入れることができて、ま ようやく求めていたものを見出して、得意顔で持ちかえってさしもなく彼は熱心に乾肉をかみはじめた。 だしたのは、一本のむぎわらだ 0 た。それをそえて手真似で示す「どうやら、生きてゆくために必要なことは、それがとれなくても と、彼はうけとってむさ・ほるように飲んで渇をいやした。 やってゆけるようね」 彼の衰弱の原因はその九割方が、ひどい渇きと餓えとからきてい リンダは結論を出し、楽なようにひざをかかえてすわって、肉を るようだった。大きなかぶとに満たされた水をまたたくまに飲みほむさ・ほり食う男を見つめた。 してしまうと、もうほとんど、彼は常態に戻っていた。 レムスはその横で目を丸くして見つめていたが、 「ひどいことをするものね」 「じゃあ、この人は本当に人間なの ? 」 考え深く豹頭を見つめながらリンダがいう。 疑わしけにきいた。 「こんな仮面をつけたら、放っておけば、食べることはおろか飲む「ばかね ! 」 リンダは一蹴して こともできないわ。あなたが気を失っているあいだに、何とかして それをと 0 てあげようとや 0 てみたのだけれど、呪いでもかか 0 て「この豹頭は、どこかの王か貴族ー・ーそれとも魔道師の怒りにふれ いるようで、どうしてもとることができなか 0 た。い 0 たい、あなて、むりやりかぶせられたのにきま 0 ているわ。だ 0 て自分で好ん たのような妻い剣士が、どうして、そんなものをかぶせられることでこんなものをかぶる人なんて、いるわけがないもの。とろうとし になってしまったの ? 」 ても、とれないところをみるときっと誰か魔道師のしわざにちがい 豹頭は注意深く耳を傾けていた。リンダのことばをすべて理解しないわ。ねえ、わたしたちは、あなたに助けてもら 0 たし、あなた ている証拠には、豹頭の奥の目は鋭い光をうかべてリンダを見つめを助けてあげたのよ。だからわたしたちは味方だわ。あなたは何と いうの ? 」 ている。その仮面は目の部分だけがくりぬかれ、そこだけは彼のほ んとうの顔があらわれているのだが、その双の目は、おさえた憤怒後半分は豹頭の戦士にむかって云った。 とそして鉄の意志とをひそめて黄色 0 ぼく、そのままでまことの野豹頭はどうやら生気をとりもどしていた。もともとなみはずれた 獣の目であるとい 0 てさえおかしくはなか 0 た。彼はリンダのこと体力と回復力とをそなえていたのだ。彼は肉を手にも 0 たまま、く ばをきくと、その力強い手をあげて、仮面をとろうと再びこころみぐも 0 た唸り声を出した。リンダはおびやかされてとびのきかけた が、それがかぶせられた仮面のためにくぐもってはいるけれども、 刀 2
なるほど、たしかにそうだった。クモの糸だからといって、かな 力を込めたーー・俺にしたところで、むざむざあいつに食われるまま にはなっていない。 らすしもそのすべてが粘性を持っているとはかぎらない。第一、そ そのとき、大グモのうえにちらっと人影が動くのがみえた。そのれでは、クモ自身が歩くのにこまることになるではないか。ちょっ 人影は大グモの背後から大きく身をおどらせ、ポッテリふくらんだと冷静になって考えてみれば、すぐにわかることたった。 胴を跳躍台にすると、さらに大きくジャンプした。そして、大グモ ジローはっきだされた槍の柄を両手でしつかりとっかんだ。男は のまえにおりたち、糸のうえをこちらに向かって走ってくる。 ニャリと笑うと、槍をぐいっとひつばった。マントの裂ける音がき ジローは唖然とした。その男は ラクダの背中でゆられていた こえ、腰にするどい痛みがはしった。 あの死骸なのだ。信じられないことはそれだけではない。・ ろくに動くこともできない糸のうえを、どうしてあの男はあんなに そううめき声をあげたときには、ジローの体は糸からひきはがさ もやすやすと走ることができるのか。 れ、男の乗っている糸のうえにうつった。糸ーーーといっても、ちょ はあらたに加わった重みに 「わが守護神よ : : : 」 っとした綱ほどの太さがあるのだが ジローはかたく眠をとじた。あれは幽霊にちがいない。幽霊たか激しくゆれ、ジローは男の体につかまることで、かろうじてバラン ら、死んだはずなのに生きているのだ。だからこそ、体重というもスをたもった。そして、あわてて大グモのほうをふりかえる。 のがまったくないのだ : 大グモは脚をとめていた。毛なくじゃらの岩のように、一点にジ 「これにつかまれ」 ッとうずくまったまま、動こうとはしなか 9 た。こちらをみている 頭上から声がきこえてきた。幽霊の声にしては、あまりにもはっそのあかい眼に、心なしかとまどいの色が浮かんでいるようにみえ きりしすぎているように思えた ジローはおそるおそる眼をあけた。 ( 註 2 ) 、″ミルメコレオ″はお利ロなクモなんだ」 た。死んたはずの男が、ジローのすぐ脇に立ちはだかり、槍の柄を「ああみえても つきだしていた。さすがにことここにいたっては、ジローもその男男がおちついた声でいった。「自由に動きまわれる相手と一戦ま を幽霊だとは思わなくなっていた。幽霊がこんなにもたくましく、 じえようとは考えないさ : : : いまのうちに、お仲間を救けにいった カづよい存在のはずはなかった。 らどうかね」 「どうして糸のうえを歩けるんだ ? 」 ジローが男の忠告にすぐさましたがったことはいうまでもない。 ジローが弱々しい声できいた。 男の名前はダフームといった。 「クモの巣をみたことがないのか」 二メートルに達するのではないかと思われる大男だ。胸の筋肉が 9 男はさとすようにいっこ。 「クモの糸には、獲物をとらえるため のものと、クモが自分で歩くためのものとがあるんだ : : : 」 巌のように盛りあがり、肌は黒檀のようにくろびかりしている。そ いわお
間のカガミ』と名付けたアイデアだった。鑑と鏡を引掛けて、心理緒に持って別世界に逃避してしまうというアイデア 『勘当の 劇調の & を狙ってみたものだが、僕の力不足のせいか、どう書時』。 いても陰々減々たる重苦しい話になってしまうため、仕方なく没に 「つまりですね。あなたはですね。我々に対して、そのような態度 したものである。当時、かなり熱中して取組んだアイデアだけに、 で接してはいけないのです。何故かと言いますとーーあ、その前 その図体の大きさには納得がいくし、割と高尚なテー「だけに尊大に、そのような態度とは、どのような態度であるかと言うとです な態度であるのも頷けるが ね。今、あなたが取られた態度でありまして、つまり、そのような 「おい、その言葉づかいは何だ。おまえ達から見れば、僕は母親ー態度のことを指しているわけですから、ええ早い話が : : : 」 いや、父親同然の存在じゃないか。少しは礼儀をわきまえたらど と、やたらと説明したがる奴は、職務に忠実な非行少年善導員が うだ ! 」 「ああしてはいけない、こうしてはいけない」と、手取り足取り指 驚愕と疑問をいったん脇にどかしておいて、僕は腹が立つままに導した挙句に「こんな具合に最終兵器を造ったりしてはいけない」 アイデアどもを睨みつけてやった。 と論すつもりで、逆に兵器の造り方を教えてしまう『熱心な男』。 ところが、アイデアどもは一向にひるまなかった。いや、それど「ウーウー ワンワン、ガッガッ、ムシャムシャ、キャーキャー ころか 「へえん、何をのたまいくさるのさ。一人前の言の葉の草など使い と、うるさいのは、地上の物質すべてを片っ端から食いちらかす たまいしが。そげん空威張りなんざあ、おれっちにゃあ通用せんば犬そっくりのに対抗するため、仲の良くない夫婦を総動員す 0 てん、いささかなりとも感じねえでありんすわいなあ。いぎすがるという『夫婦ゲンカは犬も食わない』。 ねえごど、やめどげー エトセトラ、エトセトラである。 古今東西、すべての日本語がごちゃまぜになったら、と考えた ( まったくもう : ・ 『大方言』という支離減裂なアイデアが、斜に構えてそう言い返し僕は完全にウンザリした。どいつもこいつも安 0 ぼさの見本のよ てきたのを皮切りに、他のアイデアどもも揃って好き勝手なことを うなアイデアばかり。それだけでも充分不愉快になるが、それに加 しゃべり始めたのである。 えて、そいつらが勝手放題なごたくを並べたてるのだから、これは 「ええい、青二才が生意気な口を叩きお 0 て。おのれのようなフャもう精神衛生上まことによろしくない。 ケた奴輩が横行しおるから、美しく伝統あるわが祖国が堕落してし「とにかく、だーー」 まうのじゃ。恥を知れ、恥を ! 」 ひと通りごたくを並べ終ったところで、『人間のカガミ』が、ま と、額に青筋を走らせてわめいているのは、若者文化の氾濫に業たもや思い入れたっぷりに言い始めた。 を煮やした老人達が、日本古来の風俗や習慣、そして記億までも一 「・ー・ー我々は、作者であるおまえに対して、不当かっ無責任な扱い 5
かれの口から、傷つき、死にかけている野獣の咆哮が洩れた。そがまだリンダは満足しなかった。 のそっとするような苦悩の声におびえて、泉のふちの木の梢から、 「まったく、おまえったら考えなしなんだからーーーここがどこだか 小動物ーー・、・たぶん鳥と獣のあいのこである飛獣のタウロである 忘れたの ? ルード の森よ、まだゴ 1 ラの冷酷王の領王なのよ」 がすばやくとびうつった。かれの手はもういちど水を汲もうとさし「リンダがどこかへ行ってしまったかと思ったんたもの」 のばされた。 少年は云いわけをした。そして同時に、そろそろと首をのばし しかしそこでかれの力は尽きてしまった。かれはまた、全身を痙て、茂みの外をうかがった。 攣させ、がつくりとなり、そのままさっきと同じように動かなくな「大丈夫。騎兵たちは、行ってしまったようだから」 ってしまった。 リンダも、隣の茂みから頭をのばしてみていた。弟の不用意な叫 風が出てきて、さわさわと草をなびかせ、泉の水に小波を立たせび声が、通りすぎていった騎馬武者たちの一隊の注意をひかず、周 た。下生えのあいだから、草ヘビか何かの紅く光る目がうかがい 囲はしーんとしているのを見てとると、茂みから這い出す、という 奇妙な色とかたちとをした木々の稍からは、するすると吸血ヅタが この難事業に思いきってとりかかる。 おりてきた。 茂みはその果実がもつばらロざみしさを慰める嗜好食品に最適と それもだが知らぬげに、かれーーー或いは、それーーは異形のすがされているヴァシャの木である。それはとげとげしい葉をもってい たを無防備にさらしてよこたわ「ている。スタフォロス砦から遠くる上に、樹皮にまで棘を植えこんでいた。リンダはまずその葉を注 なしこのルード の森林地帯で、かれはそうして掲き、弱りはて、意ぶかくおしのけ、ほ「そりと白いふたつの腕をのばして、棘たら かわいた血と泥にまみれたまま、緩慢でおそるべき死を迎えようとけの枝をおさえつけ、たくみにするするとその隠れ場所をすべり出 しているのたった。 た。輝かしい。フラチナ・・フロンドの髪につづいて、きやしゃなむき だしの肩が、そして未熟でみずみずしい細い胴、男の子のようにす んなりのびた、長い革プーツにつつんだ脚が、その一昼夜のとげと げした棲家からあらわれた。 「リンダ ! ねえ、 リンダ ! 」 「あーあ。からだじゅうが、痛くてめりめり云うわ」 澄んだ高い声が呼んだ。いちおう、かれとしては、声をひそめて リンダは云い、両手をつきあげて伸びをした。だが、すぐに弟の ささやきかけたつもりだったのだ。しかし、少年の声は思いのほか 小さな悲鳴をきいて、そちらへ走り寄った。 に、静まり返った森の木々のあいだに高くひびきわたった。 レムスのほうは、リンダほど、その敵意にみちた隠れ家とうまく ハカね、おまえは」 いってはいなかった。かれは棘だらけの葉と枝に存分にやわらかい 少女は鋭くとがめた。レムスは頬をふくらせて静かになった。だ手脚をひっかかれて、かわいそうに傷だらけになりながら悪戦苦闘 203
事 / し力し J 田 5 、つ て、見つけて、送ってくれる本屋さんが、 の文章をあまり変えずにです。ですから、 てしまう。それも面白いじゃよ、 アメリカにはあるんですね。・ほくがこれま シソーラス的な日本語と外国語の対応を常 んですが、世間ではたぶんそれを翻案とい にやっているわけですよ。ところが、いま うでしような。あなたの翻訳論がそれな でで一番優秀たと思うのは、クリス・ネビ あなたがいわれたようなドイツ語を英語に ら、それでいいと思うんですが、いまのと ルの友達のロイ・スクアイアというのです なんて場合は、極端なことをいえば、鹿児 ころ日本の翻訳者はそこまで大胆不敵ね。こんどぼくは、一九二 0 年から三〇年 にはならず、もとがトムと書いてあればト 島弁の小説を東北弁の文章になおしている の〈アーゴシイ〉を百二十冊買ったんだけ ムとしよう。たたし、あまりにも舌を噛みど、これはクリスの紹介だったからだろう だけのものですな。要するに印欧語族とい が、こちらはいつでも金を送るからという うのか、そういうことには詳しくありませそうな場合には、すこしはゆがめるといっ んが、語族を同じくするもの同士のときに と、すぐ手紙が来ましたね。「もう送っ たこともあるでしようね : : : とにかく、自 はね。ところが、英語と日本語は非常に違分の地というものは当然出てくるが、それた。完全な状態で着いたら代金を送ってく っている、というより、似ているところなを出しながらも、原文の味を出す、そこがれ」というんです。そういうところもあり んかないわけです。ですから、翻訳にあた難しいところなんでしよう。 ますからね。ただし、これはごまかして金 ってのひとつの考えかたは、原作者が日本質問むこうで新刊が出ますね。ところを送らなかったら、国際的な問題になるで 語で書いていたら、どんな日本語になって しようが、そういうところは、実に速いで が、なかなか翻訳が出ないでしよう。そう いたろうかです。 いうときには、 いったいどうやるといちばすよ。先に金を送れば問題はないですね。 しかし、なんといおうと、英語と日本語 ん早く手に入るんでしよう。 ( 註・住所は Ro A. Squires 1745 Ken- neth Road GIendaIe, CaIif. 91201 U. S. の単語がびたりと対応することなど、そう矢野もとの本ですか ? ないから、初めから終りまでびたりと合っ質問ええ、そうです。本屋さんに幀なの A) た翻訳など出るはずはないけれど、われわ もうひとつの方法は、丸善だとか紀伊國 がいちばん早いんですかっ・ れは非常に近い近似値は出していると思い 矢野アメリカへ行って買ってくるのが、 屋とか、たぶん三省堂も、海外の本屋から ますよ。とにかく誤訳をまったくなくする いちばん速い ( 笑 ) 。本当にそうしている直接買っていると思うんですが、そういう ところで特急料を払うからやってくれない ということだけでも、これは実に難しい作人が何人もいるんですからね。その次は、 業ですからね。 アメリカ人の友達に、金を送るから本を送かといったら、やってくれないことはない もしあなたがハインラインであれば、と と思いますね。あるいは、買われる量が多 ってくれと、これは実に速いですね。ぼく いなら、海外から本を買っている友人を見 まずそう考えたとしますね。すると、人名の場合には、こちらの手紙がむこうへ着い つけて、ついでにもう一冊頼んでくれない をアメリカ人の名前にするはすはますありてから十日以内ぐらいに、こちらに着いて ませんよ。もし原作者が日本語で書いてい いますね。何にもいわないでも送ってくれかといってみることです。 たらという考え方が百。ハーセント正しいと 質問矢野さんは岩崎書店で、たしかハイ る場合もありますし。 すれば、登場人物がほとんど日本人になっ その次には、こちらの欲しい本を探し ンラインの「超能力部隊」というのを出し
グラハはあいまいに首をふり、ロのなかでモゴモゴとつぶやい 裸の上半身に鞭がふりおろされるたびに、男のロのなかでその草 た。「そうじゃない。そうではないんじゃが : : : 」 のようなものが上下するのだ。ときおり、くいしばった歯のあいだ それから、なんの意味もなく、マントを肩にはねあけると、寄妙から、うめき声がもれる。 にセカセカとした足どりで、人垣に近づいていった。なんとなく、 男は汗みどろになっていた。苦痛を懸命にこらえているせいか、 そのことにふれられるのをいやがっているといった様子だった。 ひたいの血管が青くふくれていた。しかし、それでいながら、男の ジローとダフームはもういちど顔をみあわせ、しようことなしに様子にはどことなく超然としたところがあった。ふつうなら、苦痛 グラハにしたがった。そして、膝で子供たちをかきわけるようにしに泣きさけんでもふしぎはないはすなのに、宙の一点をにらみすえ て、蘗うたれている人物をみた。 ながら、立ちはたかっているのだ。 ヒュッ、。ヒンツ、ヒュッ、。 ヒシッ : : : 鞭はくろいへビのように宙「あの男はどんな罪を犯したんだ」 ジローがグラハにきいた。 をうねり、灼けた大気をつんざき、正確にひとりの男の肌をとらえ ていた。 「だから、なんにも罪は犯しておらんのじゃ」 鞭をふるっているのは、ダフームと同じくろい肌の男だった。裸「どういうことなんだ ? 」 と、のそきこむジロ 1 から顔をそむけるようにして、グラハがい の上半身に、汗の玉がいつばいにひかっていた。この炎天下では、 鞭をふるうのもかなりの重労働にちがいなかった。 「あの男があんたたちのお仲間じゃ」 どうしてか、鞭うちをみとどける義務をおわされているらしく、 「なんたって」 ひとりの肥った男が地面にじかに腰をおろしていた。その男はいか かぶとむし にもウンザリした様子で、鞭が一回ふりおろされるたびに、手に持「甲虫の戦士 : : : 」 フェーノ・フェーン グラハはため息をついた。「″空なる螺旋″に足をふみいれた男 っているちいさなガラス玉を、膝のうえの壺に入れていた。どうや ら、そのガラス玉がなくなるまで、鞭うちはつづけられることになじゃよ」 っているらしかった。 鞭うたれている男はーーその男はいまだかってジローがみたこと のない種類の人間だった。髪はわらのように黄いろで、眼が褐色だ った。肌も褐色たったが、それは日に焼け、汗と泥で汚れているせ いで、ほんらいはもっと白いのではないかと思われた。顔はいかっ く、不精ヒゲにおおわれ、ロになにか草のようなものをくわえてい 一瞬、ジローは頭のなかが空白になるのをおぼえた。強烈な陽光 だけがギラギラと、しろく、まばゆく、ジローの眼を射った。そし て、そのなんだか自分のものではないような意識のなかに、鞭の音 4
彼のロにした名を、リンダはおそるおそる使 0 て、豹頭の男に呼「あなたは、記憶がないの ? 」 「どうも , ーーそのようだ」 びかけてみたが、はしめてその名を口にしたとき、奇妙な宇宙的な はしめから、ある程度の精神感応能力をもちあわせていたゆえか 戦慄ともいうべきものがその五体をかけぬけるのを感したのだっ リンダとレムス、ことにリンダには、グインのことばは少 - どうカ し馴れればたやすくききとることができた。しかしそれはかれらで ( わたしはどうしたというのかしら ) あれこれの予兆を感じとることに長けていたのだが、ふいにリンあ「たからこそで、かれら以外の少し不注意な耳であ 0 たら、豹の ダは、いま自らの身内をかけぬけた戦慄の意味をよみとることを恐巨大な口からゆ 0 くりと、くぐも 0 て吐き出される彼のことばはほ れた。彼女は弟のいぶかしけな目に見られながら、弟をまねて両肩とんどが、まるでただの唸りや呻き声としか、きこえなか「たかも の森の夜の寒しれない。 を腕で抱きしめ、いま全身を走ったおののきはルード 「俺はーーー誰と戦ったのだ ? 」 気のためだ、というふりをした。 豹頭の男のほうは、そんなリンダの当惑になど、気づいたようす「少なくともゴーラの大公の黒騎士小隊ひとつを全減させたわ」 リンダは云って手で示した。豹頭はそちらを見やり、いぶかしむ もなかった。彼は巨大な手を目の前にもってきてかざし、しげしげ ように首をふった。 と眺めていた。 「あれを俺が ? 」 「傷をおっている」 「そしてわたしたちを助けてくれたのよ」 彼はつぶやいた。もっともそれは、リンダにしかききとれなかっ リンダ、火をたこうよ ! 」 たまりかねてレムスがわめいた。リンダはまた我に返って、自分 「ここにも、刀傷がある。ということは、俺は戦ったのた。これは スタフォロスの砦フ たちのおかれている状況に気づいた。 だが鞭の傷のようにも見える。辺境 ねえ、わたしたち、ここでは安全に夜を送 ルードの森ーーー聞き覚えのあるような気がするのだが : : : 俺がど「そうだったわね。 って生きのびるわけにいかないわ」 うしてここにいるのか、それがわからぬ。 「妖怪たちは血の匂いが好きなんだよ」 わからんといえ、はこれもそうだーー・」 レムスが昔習った知識を披瀝した。 手をあげ、顔と頭をすべておおっている豹の首をまさぐってみ 「あの死体といっしょにいるのは、危ないことだよ」 「泉があったわね」 「いったい俺はな・せこんなものを ? 」 リンダは考えて云った。 「わからないの ? 」 「泉を背にして、火をたいて一晩起きていましようよ。水妖は自分 リンダは叫んで両手を口にあてた。 て、
「スペースオペラ性教育」 「ねえ、 場の支店たよ」 ん坊が地球へ届けられる前に横取りして、地 「なんだい ? 」 「へえ。赤ん坊工場にも支店があるの。じ球に子供が生まれないようにすれば、人類は や、本店はどこにあるの ? 」 「赤ちゃんはどうやって生まれるの ~ 」 いずれ滅びるだろうという、雄大な計画だ」 「ア、アメリカだよ、アメリカ」 「ううむ、いよいよ来るべき時が来たか」 「なるほど」 「なあに ? 」 「じやアフリカとかソ連とか中国の赤ん坊も 「さあ、この大陰謀を知った地球防衛軍は早 「いや、なんでもない。つまりな、坊や、子メイド・イン・なの ? 」 速金星人を倒すべく、一人の戦士を派遣し 供はコウ / トリが運んで来るんだよ。わかっ 「あー、いや、アメリカのもやつばり支店だた」 った。アフリカやソ連や中国にも支店があっ 「どんな人 ? 」 「うん。わかった」 て、それそれの国の赤ん坊を作っているん 「地球防衛軍のエース、ジェラルド・フィリ 「そうかそうか。おまえは素直な子だね」 ップス少尉だ。少尉は最新型宇宙船にとび乗 「ところで、 「じゃ、本店はどこにあるの」 って、超光速で金星へ飛び立った」 「何だい ? 」 「えーと、あの、火星」 「一人で 2 ・」 「コウノトリはその子供をどこから運んで来「火星 ? そこで誰が赤ちゃんを作ってる 「そう。少尉は根っからの一匹狼でね。それ るの ? 」 に予算の都合もあったから」 「そりや火星人さ」 「うつ ! あ、あの、それはだな、つまり : 「ふーん」 ・ : あれだよ」 「火星人が地球人の赤ちゃん作って、それを「金星へ接近した少尉の宇宙船はたちまち金 「どれ ? 」 コウノトリが地球まで運んで来るわけ ? 」 星人のチョウチンアンコウ型戦闘艇の迎撃を 「赤ん坊を作ってるところがあるんだよ」 「鳥は宇宙空間を飛べないなんて言い出され受けた」 「レ J こに ? 」 ちゃ困るな。なんとかごまかさなくちゃ」 「金星にもチョウチンアンコウがいるの ? 」 「何か言った ? 」 「あそこたよ、ほら、隣町の工場」 「うん。二つの惑星で偶然魚が同じような進 「ふーん。あそこで作ってたのか。でもあそ「いやいや、つまりこの、コウノトリの定期化をしたんだな。これそ宇宙の神秘」 こだけで全世界の赤ん坊を作ることはできな便を金星人が襲撃するんだな」 「それで少尉はどうしたの ? 」 いだろう ? 」 「どうして ? 」 「金星上空で少尉の宇宙船スター 「そ、そりゃあ、そうさ。あそこは赤ん坊工「奴らは地球を征服するつもりだからさ。赤ー号は、金星の宇宙船と壮烈な空中戦を展開 0 今月の入選作・ 北川俊司
フ。それに、ふざけた機械の扱いにかけては、きみよりもちょっぴのは、無数にあるはずだよ。きみが思い出そうとしているものが、 り厳格なんだ」 どの穴にあたるのか、エ。ヒクトにどうしてそれがわかる ? 」 「わかった、わかった。じゃ、話そう、グラッサー」スミルノフは「一つ。その埋もれた穴は、わたしのポスのスミルノフと埋もれた 不承不承にいった。わしの最初の命令は、こういうものだった。わ関係を持っています」機械のエビクティステスが答えた。 れわれは、その存在が知られていないあるものを、証拠の不在を綿「うん、それはもちろんだ」グラッサーがいった。「エビクトはな 密に検討することによって、発見しなくてはならない。この一般論にかを掘り出したのかい ? 」 的なかたちでエビクティステスに問題を提出したとき、やつは頭か「シャベルで一すくいほどな。しかし、海のものとも山のものとも らわしを笑いとばした」 わからん」スミルノフが悲しげにいっこ。 「わたしの最初の衝動もそれとおなじたったろうよ、スミルノフ」 「一つ。なぜ、ある時代のハンガリーの百科辞典では、 Sik という と、シッ。フラップがいった。「あんたは自分がなにを探しているか単語と Sikamlos という単語のあいだに、不必要な埋め草があるの か ? 」工。ヒクティステスが問うた。 を、もっとうまく表現できないのか ? 」 「シップラップ、わしは自分が忘れるように強制されたなにかを、 「おまえの考えはわかるよ、エ。ヒクト」と、グラッサーがうなずい 思い出そうとっとめているような気がしてならないんだ。わしの二た。「それはなにかの手がかりになりうるそ。もし、ある概念と名 度目の命令も、たいして変わりばえはしなかった。ェビクトにこう称があらゆる参考図書から削除されたとすれば、すべての初版本 いったんだ。″そういう概念そのものが完全に消去されているようで、それとおなじページにあるほかの項目が水増しされるか、それ ななにものかを、再構成できるかどうか試してみようじゃないか。 とも別の項目にさしかえられているはすだ。この作業があわてて行 それが決して存在しなかったという過大な証拠を検討して、それをわれた場合には、質の劣った記事になるかもしれない。さて、 Sik 見つけられないかどうか、試してみようじゃないか″このかたちと Sikamlos の中間にあって、いまでは使われていない単語を、だ で、エ。ヒクトはやっと承諾してくれた。それとも、面白半分に調子れか知らないか ? もしその単語がわかったとして、われわれにそ を合わそうとしたのかもしれん。このガラクタ機械がなにを考えての意味がわかるだろうか ? もしその意味がわかったとして、それ いるのか、どうもよくわからんのだよ」 がなにかの参考になるだろうか ? 」 「しかし、どんな穴も完全に埋まることはない」と、コグズワース 「一つ。な・せクマの子は、むかしキュ 1 プと呼ばれていたことがあ 、力し / 「なにを穴埋めに使うにしろ、量が多すぎるか少なすぎったらしいのに、いまではパップと呼ばれているのか ? 」工。ヒクト るか、それとも、質のちがったものになるかだ。問題は、きみがエが問うた。 ピクトになんの手がかりも与えなかったことにある。忘れられたこ 「クマの子がキ、ー・フと呼ばれていたなんて、聞いたことがない」 と、抑圧されたことーー・一つの穴を埋めたあとのでこぼこを示すもシップラップが反論した。