地球 - みる会図書館


検索対象: SFマガジン 1980年1月号
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1. SFマガジン 1980年1月号

囚を糾合して、大連邦に対する強い不満と改革を要求し、それを容海》と呼ばれていた。 れない場合には大連邦から離脱することを声明した。 大連邦は、その《異星人の海》の海底深く《城塞》を築いた。 北洋地区ばかりでなく、他の地区でも、同じような大連邦批判は《城塞》は誰言うとなく《ワルハラの城塞》と呼ばれた。 《城塞》は強力な防護施設に包まれ、無数のトーチカに囲まれてい 生していたのだが、北洋地区ほど強い姿勢に出た所はなかった。 貝細工の年五十七年。北大西洋で武力衝突が起った。戦いはたちた。《城塞》に果してそのような武装が必要だったのかどうか、の まち東半球全域に拡大し、ついで地球のすべての地域が戦火に巻きちになって誰もが疑念を感じたものだった。 、つ、誰の命令で停戦になっ 込まれた。戦いは始った時と同様に、し 《城塞》を囲むトーチカは、すべてコンビ = ーターによる完璧なセ ルフ・コントロールシステムで、自由に目標を選択し、適切に戦闘 たのかも不明のまま、戦火は静まった。 大連邦は初期の計画を実現させることを公表した。 を展開することができた。 《異星人の海》には、強大な防備艦隊が配置された。 巨大な航空母艦と潜水艦を根幹とする海上部隊は、陸上や海中か 人類の最後の一人が記号化したのは、貝細工の年九十八年とも百 ら、あるいは宇宙空間から加えられる如何なる攻撃をもはね返し、 二年とも言われている。 記号化が完了すると同時に、生体の組織壊死の問題は消滅した。 逆に敵を撃減し得る火力を備えていた。 人類はついに今度こそほんとうに永遠の生命を獲得したのだっ 《ワルハラの城塞》は無敵だった。おそらく、千万年の長きにわた って、如何なる強敵をも粉砕できる力を誇示していた。 だが、人類は、地球上に永遠の謎を残すことになった。 大連邦を構成する各地区に築かれた《城塞》も、《ワルハラの城 ほんとうに異星人が来ていたのか ? 塞》に劣らぬ堅城に立籠っていた。 その謎も、時の流れの中に埋没していった。 貝細工の年一八九年。ィースト。ヒアリアの《城塞》が連絡を絶っ 大連邦は、大連邦府と呼ばれる直轄領を持っていた。大連邦政庁銀翅鳥の年二年。レイナアデライダの《城塞》が消息を絶った。 、地球支配の中枢部としてのあらゆる機構を、記号化した人間に銀翅鳥の年二十九年。北大西洋で激しい戦争が起っているとの情 ゆたねるにあたって、政庁機構を収めた《城塞》を大連邦府の地下報が《ワルハラ》にもたらされた。 に建設した。 銀翅鳥の年は三十五年で改元された。 イル・ダリアの年九年。北洋地区が連絡を絶った。 大陸を南へはるばる下ってゆくと、大陸の縁辺から切り離され、 イル・ダリアの年七十五年。サンタ・アメリゴ大陸が喪われた。 外側の大洋へ向って弓のように大きく張り出した列島があった。 イル・ダリアの年九十二年。大連邦府は、地球上から、すでに二 大陸と列島の間の、比較的浅い内海があり、それは《異星人の こ 0 7 2

2. SFマガジン 1980年1月号

flllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllltlllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllll が来てから〈狐〉の出産能力が目に見えカ作。この作品で両賞とも念願かなって 地球人たちが辺境基地カトーを築き、 の初受賞となった。ヴォンダ・マッキン この生物たちを観察しはじめてから、彼て衰えている。それを、彼らはこれまで タイアの長篇は、かってネビュラ賞をと らの生態に妙な変化が起った。〈狐〉が地上に浮き、やがて死んで地に還ってい 、邦訳もされた「霧と草と砂と」 ( 本 〈風船〉を手当り次第に殺戮しはじめた た〈風船〉たちが、海を越えて遙かな地 へと旅しはじめたせいにしたのだ。やっ 誌一九七五年九月号 ) に書き加えて長篇 のである。メーディアにもう一つの〈月〉 化したもの。あのときは、単なる三匹の らを殺し、その肉を喰うことで、 ( 生態 が昇り、それが惑星アルゴと一二七日間 隔で蝕を起こすとき、〈風船〉が螢光生系を固定し ) 自らの種を回復できるだろ蛇を治療に使うことになっていたが、こ うーーーでは、なぜ〈風船〉は旅しはじめ の長篇では舞台に拡がりができて、説明 物を追って蝟集する。〈狐〉にとって、 が丹念になっている。 このときが〈風船〉を襲う絶好の〈狩猟たのか ? これが、どうやら地球人たち 設定は核戦争後の地球。一部の人々は 月〉なのだ。この突然の変化の謎を追求の入植による環境変化のせいらしい したヒューとジャニカは、原始的な神経〈風船〉たちは、海のかなたに〈天国〉難を逃れて地下のシェルター都市にこも 組織をもっ二種の生物のシナ。フス・。ハタを見出したのではないか ? り、他の大部分は砂漠化した地上に住ん ーンをコン。ヒュータに解読させ類推す こうして、ヒューとジャニカは、よりでいる。彼らはまた、謎の異星人オフ・ マインド・スャヤン ワ】ルダーとも取り引きがある。その一 る一種の読心装置を作成した。それによ完成した読心装置を使って、いままさに ってお・ほろげにつかめたのは、衝突の原臨床実験を行なおうとしていたのであ部はこの荒涼化した地上での疾病を癒す 因が二種の生物の〈信仰〉に関わりがある。しかし、一方ではこの二人の関係に治療師と呼ばれる連中で、彼らはコ・フラ とガラガラ蛇、そしてオフ・ワールダー るのではということたった。地球人たちも微妙なかげりがあった。夫婦とはい え、もとはと言えば植民地での便宜的な から手に入れた〈ドリームスネーク〉を 結婚生活ではなかったか。二人の心のず使うのだ。物語はこの治療師の地上での れは最近に到って大きくなるばかりであ流浪の生活を追うーーー地下シェルター都 ンり、 それは美貌のクリシュラの登場によ市からの脱出者との接触、繁殖させにく 〈ドリームスネーク〉を大量に所有し ヴっても増幅されている。 やがて〈狩猟月〉が昇り、新たな実験ている辺地の有力者等々。なかなか雰囲 が行なわれたとき、こうした二人のあい 気描写にたけた長篇といえるだろう。 、一だの愛憎が読心装置を通じて、〈狐〉と 〈風船〉の関係に逆流した・ : ノヴェル ジ ノヴェラ部門と長篇部門は、ネビュラ 賞との二冠王である。ジョン・ヴァ 1 丿 イは彼の第一短篇集の表題作ともなった ◇ ◇ 7 3

3. SFマガジン 1980年1月号

議長「そのツーリストが、この地球上を支配するのかな」 貝細工の年五十五年。大連邦は戦慄すべき情報を入手した。 代表「それはわれわれに対する質問か ? もしそうだとすれば、 それを委員会内部で検討していた 経営委員会はごく短かい間、 答えは不可能だ。われわれも誰一人、われわれがツーリストと 名づけたものを目にしていないのだ」 が、委員会たけではとうてい処理しきれない内容とわかると、委員 会は評議員総会を招集した。 この〔議事録〕は長、 し「問題となった。その内容の奇異さゆえ 〔議事録〕 に真偽が問われ、ツーリストなる言葉は禁句となった。 議長「医療部と厚生委員会から合同でレポートが提出された。当 評議員総会は後半、この問題を離れて、さらに紛糾し、混乱し 事者説明がある」 た。リトル・ハラ公民会が提案した議題は、大連邦の運命を大きく転 医療部委員による代表説明「レポートの内容に関しては、議長の回させる結果となった。ど : 、 ュ / カこの時点では、そんなことを考えた 許可を得て要約を評議員各位に配布した。結論を言えば、最者は誰もいなかった。 近、頻発している生理的障害は、異星生物の侵人によるもので 総会は秘密会のまま百日も二百日も続いた。大連邦内部には不安 はあるまいか。ということだ。未たその存在は証明できない が渦巻いた。内容が少しずつ洩れ出した。内容がつまびらかでない が、これまで行った検査や実験では、 いかなる有害バクテリアままに洩れ出した情報は、聞く者をかえって動揺させる。 も発見されていないし、未知の・ハクテリアが原因となっている 総会が始って九十日目、北洋地区の評議員団は席を蹴って退場し とは甚た考えにくい。病源体もなく、自家中毒的なものでない ことははっきりしている以上、考えられることは、未知の病源 北洋地区委員会は、評議員団の報告を聞き、メッセージを発表し 体た。だが、それが各種の検査にもひっかかっていないという ことは、検査を洩れるからではないのか。それは未知の生物地球の全人類は、この時はじめて、事態の全貌とそれに対するも だ。異星生物を想定して、今後の調査や対策を立てる必要があっとも新しい見解と、それにつづ くリトル・ハラ提案を耳にしたのだ るたろう」 評議員 << 「異星生物がこの地球に来ているというのか ? 」 最初の問題はともかくとして、二番目の問題は深刻だった。 代表「われわれはその可能性を注視している」 リトル・ハラ地方の歴史的習慣と北洋地区のそれは甚だしく異って 評議員「異星生物だとすると、どこから来たのだろうか ? 」 いたし、それが長い門 日、この二つの政治的・フロックを対立させてき 代表「わからない。われわれは、この異星生物をツーリスト、とてもいた。それが、ここで決定的になった。 呼んでいる。旅人であることを祈っているのだ」 貝細工の年五十七年。北洋地区は、周辺の同族的関係にある小地 チェック 6 2

4. SFマガジン 1980年1月号

SF スキャナー は二年、一時間は約五世代に相当し、人間の一 地球人とチーラ人のファースト・コンタクト四センチメートルのゴルフポールのようなのが スレイヤー 日の間に彼らの世界ではいくつかの文明が興つは、探査船″ドラゴン殺し″によって二〇五〇母船で、内部にミ = ・・フラックホールを搭載し 4 ては亡びるのだ。 年におこなわれた。″ドラゴン殺し″は中性子ている。個人艇になると、五ミリほどの大きさ チーラ人は熱く輝く十二個の赤い眼をもって星探査のため特別に設計された宇宙船で、″ド で、やはりミニ プラックホールを積んでお おり、その姿は殻のないホタテ貝に似ている。 ラゴンの卵″を巡る高度四百キロの静止軌道にり、 人間のごく近くまでやって来るのだ。反重 光は主として中性子星の表面からの輻射 ( 八二のっている。ただし居住区は同じ速度で逆回転力の技術を利用しているらしい 〇〇 ) によるもので、彼らはふつう紫外線か さて、そのス トーリーは : : : しかし、これだ ら線に近い波長の光を見ることができるが、 け読めば、ストーリーなんてどうでもいいとは 中には可視光の紫色まで見えるやつがいる。こ 思いませんか ? 短篇を読んだ限りでは、アイ れが人間とのファス ート・コンタクトで重要と デアを除けば、やはりしろうとつ。ほさが目につ なる。 くのだ。もっともこの長篇は評判もよく、ひょ 中性子星のすさまじい磁場が、すべてのもの 解っとしたらストーリ 1 もおもしろいのかも知れ に影響している。音速、大気の透明度、移動に のない。読まずに断定するのはやめなくちゃね : ・ 星 要する力、その他多くのものが、磁場の方向 ( 東西 ) とその垂直方向 ( 南北 ) とで十倍違う トの方に枚数をとられてしまった 性と、 中 のだ。チーラの体を構成する核子もこの偏極を が、ここで百八十度方向の違うを紹介しょ 受け、したがって磁極にいるチーラは赤道にい 載う。実はこちらが本命なのだ。 るものの十倍背が高く、赤道にいるチーラは東 ードがあるなら、ソフトも 西方向に十倍長い。チーラ人の間では″長さ″ ゲあっていいじゃないか、と冗談めかしていう人 ロ の概念があまり発達しなかったのも無理はな がいるが、・ニコルズの『百科事典』に z-e アは、ちゃんと″ソフト″という項目があ 中性子星上でチーラ人は、方向を知るのに磁 る。要するに ( ちょっと古いけど ) ″派″に 〒ー 力とコリオリカの合力を利用する。そこで、磁 対する″派″みたいな感じのものだ。 カ線と自転の方向が平行になる赤道ふきんで ウォルター テヴィスの『モッキング・ハ - E は、方向感覚を失ってしまう。チーラ人はこの ド』は、 , てんな″ソフト CO ″とい一つこと・は・か 地帯を″フィーリング・ロスト″と呼んでいる びったりくる作品であみ。 が、それは地球の大洋に相当するものだ。コロし、星空に対して常に一定方向を向くようにな ウォルター・テヴィスという人を御存知だろ ン・フスが大西洋を渡って新大陸を発見したようっている。潮汐力による破壊を防ぐため、宇宙うか ? 昔のミステリマガジンに「ふるさと遠 に、あるとき、勇気あるチーラ人の一部族がこ船の周囲は高密度物質 ( アステロイドにモノボく」という、実にしみじみといい話が訳されて の地帯を渡り、北半球から南半球へと移住し ールを注入してつくる ) のリングが取り巻いていた。オハイオ大学の英文学の教授をする傍 た。そこで彼らが見たものは、頭上に輝く星ー ら、五十年代のおわりごろからぼつりぼつりと ーわれわれの太陽・ーーだった。 一方、チーラ側も宇宙船をもっている。直径短篇を書いていた人だが、むしろ映画化された 0 「 iginal home East P0 Mountains EX0dUs 00 Town of Swift's Climb

5. SFマガジン 1980年1月号

一躍脚光をあびることになったのである。 では、アインシュタインの四次元世界と 図 2 をごらんいただきたい。 この図は八月号の説明図と同様だが、す こしだけ改良してある。 相対論においては、ある系ドと、それに 7 1 一 ( c ) 2 対して相対的に運動している系 & との間 そこで、恒星船からのの観測値をメと で、時間と空間の値がどのように″変換み だであらわすことにしよう。 る れされるかが問題とされる。 アインシュタインは、これらの地球から 図 2 では仮に系を地球、系 & を速度 の観測値の、と、恒星船からの観測値 ち でとぶ恒星船としているが、これは逆にな 〆、だとをむすびつける″変換式″を、見 み がってもいいし、他のどんなものにしてもか事な方法でみちびいた。 それは図のすみにもあるように、 / のまわない。 れ 遅さて、地球上から宇宙空間 ( どこでもよ 琲い ) のある事象を観測したとする。 事象というとなにやらむずかしげだが、 ら かそんなややこしいものではない。 0 式 隕石の動きでもいいし、星の光でもいし ーく 1 ー ( ミ 0 」 の 噸し、第二の宇宙船の飛翔でもい ッ とにかく、運動学的な物体で、観測でき という形をしている。 ン るようなものならなんでもいいのた。 これが有名なローレンツ変換である。 レ このの連動を地球から観測してグラフ この式で光速が無限に大きいとする かなんかに描こうとするとき、どうするか と、簡単化されて、 というと、何時何分にどの位置にあり、一 図 分後にはどの位置に変化して : : : というふ うにあらわすだろう。 つまり、位置のと時間によって表現す るわけである。 となる。 一方、この同じ事象を恒星船からみ これが古典的なガリレイ変換である。 て、同じようにグラフに描こうとするとき 式③と④はたれにでもわかるであろう。 も、やはり位置と時間であらわすだろう。 式③はスビードに時間をかけたものが距 恒星船は地球に対して動いているから、 離になることをあらわしているだけだし、 同じを観測してもその値はちがってくる式④は地球と恒星船とで観測時間が同じと はずである。 いう、きわめてあたりまえのことを意味し ④③ 8

6. SFマガジン 1980年1月号

11 一い一〔い一いい 地球の時問経過ー〔年〕 表 1 の式は国際単位系 ( メータ、秒、キロ グラム ) なので、的な銀河旅行にはち よっと不便である。 そこで、でおなじみの単位に直すこ ととし、時間の単位を″年距離の単位 を″光年″としよう。 また、加速度を、地球の重力と同じ″一 と仮定する。 こうすると付表 1 の各式は簡略化され て、 ( 若干の近似はあるが ) 付表 2 のよう ^ い ) -0 ) 1 よ 億億億億万万万万 -0- 0- 1 亠 0 0 「 1 -0- 1 亠 0 よ 地球からの距離—〔光年〕 になる。 れば、どういう値についてでも関係を読み 加速度がべつの値の場合の関係についてとることができる。 は、グラフの説明のところで述べる。 いずれにせよはっきりしているのは、吏 度が大きくなればなるほど、恒星船の時 ①一定速度航行のグラフ ( 図 7 、 8 ) 間経過がすくなくてすむようになることで 恒星船内の時間経過 % をもとにし、図 7 ある。 に地球の時間経過、図 8 に航行距離をしめ 地球からみたときの距離と時間は、速度 してある。 に時間をかけたものが距離ーーーというごく 一定速度の場合は比例的な直線のグラフあたりまえの関係で、相対論的なルートを だから、ヨコ軸とタテ軸を同時に何倍かす含む式は必要がない。 恒星船の時問経過れ〔年〕 図 9 一定加速度航行における時間関係。 加速度 0.5 0. lg 0 25 恒星船の時問経過れ〔年〕 図 10 一定加速度航行における距離と時間の関係。 ー 06

7. SFマガジン 1980年1月号

た。その反対の極には、現実の世界に存在したはずがないような、人の人々がいるのだった。 ゼウスとか、アリスとか、キングコングとか、ガリくー ノとか、ジー そして、リング都市の傍には、使節とほかの〈封群の伴侶〉たち 5 グフリードとか、マーリンとかがいた。だが、ロビンフッドや、タを恒星間空間を超えて運んできた宇宙船が停泊していた。そこで よ、 ーザンや、キリストや、シャーロック・ホームズや、オデュッセウ いまこの瞬間にも、次に予定されている六百年間の旅に備え スや、フランケンシ、タインについては、どう考えたらいいのか ? て、切迫した空気は少しもなかったが、計画より数年早まった出発 ある程度の誇張は認めるとしても、彼らは実在の歴史上の人物とい の準備が進められていた。もちろん、スターホルム人にとっては、 ってもよさそうだったのである。 とりたてていうほどの時間ではなかった。旅の終りまでは、再変身 〈象の玉座〉は三千年の間にほとんど変「ていなか「たが、かくもするつもりはなかったのだから。だが、同時に、彼は長い一生で最 異質な訪問客の重みを支えたことは、いまたかってなか「た。スタ大の試練に直面するかもしれないのだ「た。なぜなら、前例のない ーホルム人は、南方を見つめて、山頂から聳えたっ幅五百メートル ことだが、恒星探査機が一つの太陽系に入った直後に破壊された の柱を、他の惑星で見てきた大建造物と比較してみた。こんなに年 ( 少なくとも沈黙させられた ) のである。ことによると、多くの惑 若い種属としては、これは実にみごとなものだ「た。それはいつも星に痕跡を残し、不可解なまでに〈起原〉そのものに近い、あの謎 今にも空から倒れてくるのではないかと思えたが、現在ではこれでの〈暁の狩人〉と接触したのかもしれなか「た。仮にスターホルム 十五世紀にわたって立っているのだった。 人におそれや恐怖の感情があったとしたら、今から六百年先の未来 もちろん、現在の姿のままでではない。下から百キロまでの部分を考えるとき、きっとそういう気持に襲われたことだろう。 は今では直立した都市と化し ( その広く間隔をとった各階の一部に だが、いま彼は、雪の積ったヤッカガラの頂きにいて、人類の星 は、また人が住んでいた ) 、それを貫く十六組の軌道は、時には一 への道と相対していた。彼は子供たちを傍へ呼び集めて ( 子供たち 日百万人の乗客を運んだものだった。今では、そのうち二組の軌道は、彼が本当にいうことを聞いてほしいときには、いつもそれがわ だけが動いていた。あと数時間もすれば、スターホルム人と連れのかるのだった ) 、南にある山を指さした。 子供たちは、その縦に溝の入った巨大な柱を通「て、地球を取囲む「君たちは、よく知 0 ているな」と、彼は、必すしも見せかけだけ 〈リング都市〉への帰路につくのである。 ではない苛立たしげな口調でいった。「第一地球港がこの壊された ホルム人は望遠視を得るように眼を反転させ、天頂をゆ「くりと宮殿より二千年後に建設されたのだということは」子供たちは、ま 探った。ほら、あれだ・ーー・それは、昼間は見えにくかったが、夜にじめくさった様子で、いっせいにうなずいた。「それじゃ、 し / なって地球の影の外側を通る日光がそこをまだ照らしている間はよ い」と、天頂から山の頂上へとたどりながら、スターホルム人は説 く見えた。空を二つの半球に分ける輝く細い帯は、それ自身が一つねたのである。「どうして君たちは、あの柱を、〈カ 1 リダーサの の世界であり、そこには永久的な無重量状態の生活を選択した五億塔〉と呼ぶのかね ? 」 ( 完 )

8. SFマガジン 1980年1月号

・前回までのあらすじ・ 荒れ果てた惑星の植物人たちの村が、突如飛来した星人によって 破壊された。生き残った首長フセウと長老は、この悲劇の謎を解明 すべく、伝承の古き都を求めて旅立つ。ロウホト族のスターズを加 面発光材で張りつめられた天井や壁の生み出す影の無い世 えた一行は、奇怪な体験を重ねたのち、海辺にうずもれた巨大宇宙 、つさ 界は、そこでくりひろげられる事象までも、すべて透明に、 船を発見する。内部には星人の死体が散乱していた。長老はこれが 伝承の都だといい、彼らはそこで謎を解く何者かの到来を待ちうけ いの翳りと色彩を失わせ、まばろしよりも稀薄に揺曳させていた。 るのだった。一方、地球の地下深く、人類の末裔がこもる《ワルハ 銀色の手術台の列は、目に見えぬほどの速さでゆっくりと動いて ラの城塞》は危機に瀕していた。彼らは自らの生物学的特性をカー ドに記録し、必要に応じて再生していた。そのカードが謎の侵略者 天井から垂れ下っている数十本の作業腕は、手術台の移動に合わ ツーリストのものと思われる攻撃により破壊されたのだ。委員たち せて、ほんの少しずつ関節の角度を変え、精緻な作業を続けてい リストの情報を得るため第一委員フサを地上に送り、意外に もそこに大都市を発見する。一方、老ドラムも別個に地上偵察に赴 た。それはわずかな時間もとどまることはなかった。 くが、彼の見たものは、干上ったかっての海底だった。フサの報告 手術台の上には、誰が見ても人体たと思われるものが横たわって にもかかわらず、委員たちは恐怖から外界の調査を打ち切ってしま う。フサは再度地上へ赴き、都市をさまよううちに、自らも立ち会 人体として完全な頭部。それに続く肩や胸。あるものは上膊部 ったはるかな過去の幻影を見はじめる。それは、侵略者の影と原因 も。あるものは腰から大腿部も。 不明の生体反応停止現象におののく人類の姿であった。 作業腕は数本に分れた手首の先の金属の指に、溶接 / ズルや、徴 細な直径のドライ・ハー、接着材の嘴管などをつかみ、おそろしく巧植の可能性を検討せよ》 妙に使い分けながら、手術台の上にあるものを完成させていった。 手術台のコントロール・システムがつぎつぎに指令を下す。 《手術台ナイハー七二一。被加工体ナン・ハ ー三四一九 0 。左脚テレビ・スクリーンの中では、作業腕がそれ自体が生命あるもの 膝関節以下交換。型ジャイロ内蔵、二点支持型。右脚スリ 1 ・ ハンのように、微妙な動きをくりかえしていた。 ド油圧調整。抗体九。脳波注意》 切除された腕や足が、ベルトコンべアーで運び去られてゆく。黒 《手術台ナイハー四四〇。被加工体ナイ ( ー九五五〇 ga 。代謝いソフト・ガラスのコン・ヘアーに乗せられた金属の脛骨や、ステン 調節装置交換。三度の視神経 ZZ 症候群あり。大脳海馬回転区電圧レス・ ハニカムの頭蓋骨が、まだ人工リンパ液に濡れて、つややか 検査。調整結果を追跡せよ》 な光沢を放っていた。それらの部分品にくらべると、血に塗れた肺 《手術台ナン・ ( ー一〇八。被加工体ナン・ハー七六一二消化や腸管などは、色褪せ、扁平にひろがり、少し前まで生命を維持し 器官系除去。集合型消化システム装着。被覆筋肉電流測定。頭部移ていたなどとは思いにくかった。 ニレグトロ・ルミネッセンス 3 シンドローム 8

9. SFマガジン 1980年1月号

十か所の《城塞》が消失したと判断した。大連邦府は、強力な探察《城塞》はすべての記録を《記憶の箱》に収め、《忘却の谷間》に 部隊を地球上各地に派遣した。だが、それらの探察部隊は、ひとっ埋めた。 として帰還しなかった。 イル・ダリアの年一二四年。大連邦府は再び探察部隊を地上へ送キャリコの年二九九年。《城塞》は冬眠に人ることを決意した。 《城塞》はすべての記録を《記憶の箱》に取め、《忘却の谷間》 った。この時、リトをハラ公民協議会と連絡を取ることができた。 リトル・ハラ公民協議会は繁栄していた。以後、大連邦府は、リトル ・ハラ公民協議会と定期的に連絡を取り合うことになった。 キャリコの年二九九年。 キャリコの年三十三年。フズリナ第五惑星から通信があった。フ ズリナ第五惑星には貝細工の年二十一年。探検隊が到着していた。 キャリコの年。 フズリナ第五惑星には三つの開発都市が建設されている。 キャリコの年五十二年。大連邦は、十二隻からなる船団をフズリ 6 ナ第五惑星へ送った。これに関する情報はついに得られなかった。 キャリコの年七十年。大連邦はあきらかに宇宙の未知の生物の発 信したと思われる通信を傍受した。大連邦はこの年、再度、十七隻気がついた時、すべての箱は半ば砂に埋れ、億万年の不動を保つ て、ひっそりとならんでいた。 からなる船団を、フズリナ第五惑星へ向って送り出した。 どのぐらい前から動くのをやめていたのか。それとも、ほんとう キャリコの年一〇九年。大連邦は、人類は地球の表面から完全に 撤退すると発表した。事実は、大連邦が《城塞》計画に着手して以は全く動かなかったのか。 来、そうなっていたのだが、これは単なる事態の追認に過ぎなかっ老ドラムは、自分がひどい錯覚を抱いていたのではないかと思っ た。これ以後、実質的に地表は異星人にあけわたされたことになった。 ツーーリ・ス、ー すべての箱は、最初見た時とは、別物のように光沢を失い、表面 た。だが、この状態においても、なお異星人との接触は成されてい には無数の腐蝕の跡さえとどめていた。 ず、 リトルバラ公民協議会は、大連邦のこの宣言に批判的であっ 老ドラムは、風に飛ぶ砂の中で立ちつくした。 砂煙はたえ間なく、薄雲のように箱の上にたなびき、ほんの少し キャリコの年二三六年。《ワルハラ》は、異星人の海に、あきら ツーリスト かに異星人の侵入の形跡があると判断。全防衛部隊に攻撃を命じずつ、砂を積らせていった。 ツーリスト この、何とも知れぬ箱のむれは、砂漠を吹き渡る風とともに地上 た。その数年後、異星人の海は、戦略的に乾燥化された。 に姿をあらわし、砂の風とともにふたたび砂の海の底へ埋められて キャリコの年二九九年。《城塞》は冬眠に入ることを決意した。 こ 0 8 っ 4

10. SFマガジン 1980年1月号

①一定速度 ②一定加速度 ③一定推カ ③ ' 一定推カ ( ル = c ) ℃と % の関係 1 ー ( を c ) 2 cos カコ % 一 1 たと % の関係 1 ー朝 / c ) 2 = Sin 乃 ー / 。十 1 ー % 1 級数表示が必要となるので割愛 地球 地球からみた宇宙船速度 地球からみた距離 地球の時間経過 付表 1 の tC れ 地球からみた出発時の宇宙船加速度 宇宙船からみた噴射速度 宇宙船内の時間経過 距離と時間の計算式 (S I 単位系 ) 理換本 解式式こい式分 う う 式 基 、てた フ フ はと し″ ″かがが あ時 表う ③三で対 藝今 ー数 に順 るれら伐 のま間ま つの で数グり る参 の興あく た味ら必 めをわ要 の ロ レ 、変 。考にでお に者る おた積 たをと 1 て ① ーこ り イ メ を の で あ ぐま ち カ : つ の イ寸 手 月ヾでし、 を ) 、さ ②て理 ヶ ス 、的を つあ象 る が % 間マ 宅で る にか 。すら の と 、空 に く 月 の フ - おあドはれりの 、るて , 、以や三 % 医、恒外す種 わそ速船考です かれ度のえある らろの 。ばはなれうが 求ーどビる。わ 、で一のこか き で と る め 星到球到距恒 船達で達離星 内すのすみ船 時る の 地 でる 時で 間の % 恒 カ ; す る 付表 2 前表で加速度 1 g , 時間の単位を年 , 距離の単位を光年とした場合の簡易式。 し て 軏あい ってな ②一定加速度 ①一定速度 ③一定推カ ( = c ) と / 。の関係 1 ーい / c ) 2 (v/c) ー 1 ー朝 ( 1 毛 = cos ん ( れ ) ー 1 と / 0 の関係 1 ー朝 / c ) 2 96 = ー ( 1 ー / 0 ) 2 十 1 ー % ( 1 一 % ) 2 ー =sinh(to)