思う - みる会図書館


検索対象: SFマガジン 1980年1月号
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1. SFマガジン 1980年1月号

ことないじゃん」というの。そいで、さらに リ」。涼しい、涼しいとは思っていたけれど、 「ツ 1 ビートの本にしようぜ。こっちのほうが まさか真夏に零下になるとは思っていなかった 安いし」といったの。 から大声をあげた。 と、先生、けいべっしたような表情で、「寒そ、そしたら、がね。しばらく考えてい て、「よし、じゃ、そうしようか」っていっ い夏ですよ」。 でもね、北海道出身の先生がレイカといえて、儂の本買わずに、ツービートの本を買って いってしまった。 ば、まちがえてもしかたないよね。儂はしかた で、儂は思った。 < は、帰り道、自動車に ないと思うけど、きみどう思う ? はねられて即死する。もはねられるが即死は で、次に病院にいくと、先生、 しない。人院して、意識が回復して、本が読 「どうです、忙しいですか ? 」 「ええ、まあ。ただアイデアがなくて困ってるめるようになると儂の本を買って読む。でも、 結局、そのあと、容体が悪化して死んでしま んですよ」 「たいへんですねえ。 TJV-æ作家は。冷夏なんてう。 のは、テーマになりませんか」 ほんでもう、今回は書くことがなにもなくな だと。儂、ばかに思われているんだろうな ってしまった。受けもち枚数はあと一枚ばかり あ。いやだなあ。当ってるだけに。 なのだけど、なんにも書くことがない。 と、これで三行埋まったけれど、これ以ヒは ーナーで、推理小説作家の赤川次郎さんと対談今日、本屋にいったら、高校生がふたりきて たのね。とが。それで、がなんと、儂のもう書くことがない。 をした。そのあと、急遽サイン会ということに と、これで、また二行埋まったけれど、さす なったのだけど、ここでも十冊ぐらい売れてし「小惑星帯遊侠伝』という本を手にとって、 がにもはや書くことがない。 「これ、おもしろそうだから買おうかな」とい まった。赤川さんのサインもらいにきた人が、 しいわけだ。などと と、書き続けていれば、 ったわけ。 ついでに買ってくれたわけだ。 いっているうちに、すでに九行が埋ってしまっ でも、ほんとにもうかるなあ。次は、だれのすると、するとですよ。となりにいたが 「えつ、おまえ、そんな本買うの。よせよ、どた。 サイン会にいこうかなあ。 とはいえ、同じことを続けるのは、読者に対 亠疉ガス うせ買うなら、ツービートの『わっ ! して申しわけないような気がするけど、同時 昨年の十一月に骨折した右手首が、まだ痛だ』にしろよ」 む。で、いまも通院しているのだが、八月の下とこういうのね。が、は、儂の本を手からに、どうせ、もうからんのだから、なにをやっ 旬のある涼しい日、北海道出身の先生が、いき離さず、「でもなあ、これ、おもしろそうだてもいいような気もするなどと思っていたら、 なり、「北海道は零下だそうですよ」といっ・せ」といったの。そうしたらね、のやつがまあ、なんとか予定枚数に達したようた。 では、また。 た。儂はびつくりして「へえ、そうなんですかね、「やめろってば、横田順彌なんて、聞いた h 、 ) ロ 3 3 9

2. SFマガジン 1980年1月号

んしゃないかね。他の物はクズさ ( 笑 ) いや。とても行ってみたい。興味もあは、まだまたこれからたね。 ーゴー賞、 2 世の人間はまだわからないらしいが、ところで、ここ数年、ヒ るし熱意もある。 ネビュラ宀員に、ジェイムズ・ティフトリ こちらで大会があったとき、日本こそこの時代で最も重要なフィクション はしめ女性の進出がⅡ立ちますが、それ なんた。 人作家にお会いになってませんか。 についてどうお考えですか。 会ったとは思うけれど人間が多いから私もそう思います。 これは絶対だ。だって日本の歴史でも結構なことたよ。素晴しい。私は一度 ね : も受賞したことがないがかまうものか の歴史でも、考えてごらん。テクノ 02 今のアメリカで、 c-q の状况はどうでロジーが志向しているアイディアというの 女性の作家がふえてぎましたね。 皆にもいたよ。友人のリイ・プラケッ そうだね。だいぶよくなってるん リイ・ブラケットは三八年も じゃないかな。映画のおかげで : : : っ トカ まり、出版もますますだし : : : ただ映 間にいろいろなことをやってのけた。私の 先生だ。マイ・ディア・ティーチャ ーリアン」とか「未知と 画がね、「エ 、ルトン。 0 んミセス・ハ、 ・ウォーズ」「スタ の遭遇」「スター ・ウォーズⅡ」 , ーー私も今週、「帝 ~ 一 うん。私に大いに影響を与えてくれた し、教えてくれた。先生にして友人た。な 国の逆襲」の s-äのライナーノートを くなる前に「帝国の逆襲」の脚本を仕上げ 書きあげたところさ。だから映画に関 たから、ちゃんとクレジットされてる。ま しては上々だね。何しろ最高の興業成 だ彼女の名前が残っているのは嬉しいよ。 績をあげているんだから。この三年 特別なひとたったし、親しみやすかった 間、映画以上の映画はないんだ。 は、我々を造りかえ、未来をめざすようしし、素敵だった。 何十億ドルももうけている。 たた、に興味を示す女性というの むけているんだ。すべての科学が、テクノ そしてそれ以前となれば、ジェームズ・ ロジーがそうなんだ。これは作り事でも何 は、男性にくらべるととても少ない。あな ・ホンド映画だ。あれも (-•og-t«映画たよ。たた あれをと呼ばないだけでね。あれももでもない。本当のことだ。そしてこれが本たにもわかってることと思うけれど : とえば、玩具店に人って模型の電気機関車 当のことなんだから、それについて本を う十七年も続いている。純粋にだ。 たから映画については上々。本についてき、映画を作り、音楽をつくるのは当然なを買うような女性がどれだけいるものか いを

3. SFマガジン 1980年1月号

て、信憑性のある証言や当時の記録から自分の父の最後にかんする 「送金は国許からでも伯父さんからでもないんです、先生」と学生情報をあつめ、真相に近い状況にまとめたのです」 は答弁にあぐねたように口下手に言いはじめた。「先生にはまだお「それも実は聞いたヨ」 「ただし友人間のからではな と老教授は押えるように言った。 話ししてなかったかも知れませんが、僕のは個人奨学金なんです。、 、学長からだがネ。学長はきみの卒業が間近いにつけて、成績と それも天王星界の」 よっこ。 学内での人望、そして何よりも学長自身の君の人物評を問うてこら 「それだって同じことたヨ」と教授が言い。 テ「学問奨励者が に答えるために、この一 れた伯父上 : : : ではないんだそうだが 宿学に反対するはすはない。きみの奨学金のことは聞いているヨ。 ノベルのように「平和のために」尽せという趣旨のものだというじ二カ月とくに君に注意を払っておられたのでネ」 ア / チミリタリア ないか。私の研究室は純粋に非軍事的な目的のものだ。そして私「それじゃここでは皆がお互いになにか調べあいッこしてるんです びとり が・ほんとならどうでもいい或る学生一人の引止めにこうまでねばネーーまるでス。ハイ学校だ」 るのは、君についてのもう一つののためなんだョ マテオ、き「そんなことを言うんじゃない」 みはこんな″下らん″学校に辛抱しているのは奨学金への義理たて 「たからどうだと云う と年寄はロを尖らしている若者を嗜めた。 かたきうち のためで、この″下らん″学習が了りしたい親の復讐の旅に出る、 んだネ ? みな君のためにしている事だ。ネ 1 、マテオ、若い者に と言っているそうたネ」 はごく普通なのかも知れんが、きみは事をラヂカルに急ぎすぎる 若者は。ヒクリと眉を動かした。 「そんな事を言ったかも知れません。しかし : : : 」 「でも私の父は背徳な暴力に殺されているのです尸若者は声を昻 「いいんだョ。私たってべつに本気に受取っている訳しゃない」とぶらして、「しかもそのために実さいは無かったかも知れない犯罪 年寄が笑った。「しかしいかにも君の言いそうな事だと思うと、聞の濡衣まできせられているんです。べつに先祖みたいに山刀をひっ 捨てにならないんた。私はきみの親縁の事情は知らない。がそう さげて仇きを殺しに行こうというんじゃない、真相を調べ、委細を 知りたいだけなんです。それをしに行くのがそんなに″ラヂカル″ った英雄叙事詩的な気持が若い者をしばしば把えてやまないことは わきま 自分自身の昔をかえりみてよく弁えている。もちろん君がまさか先で″性急んなんですか ? 父はただその輸送の任務にしたがってい ヴェンデッタ た金塊を強盗に掠奪されたんです。そしてそれを追っていって逆に 祖達の遺風のとおりに中世式仇討をやろうとしているのじゃない 射たれたんです。そうに決ってる ! かれは誇りに充ちた宇宙兵で たろうことを信じての上のことだが」 した。・ほくはそれをかならず証明してみせます ! 」 「血統なんか関係ありません ! 」 と若いコルシカ人は赫い顔になって大声をだした。「先生はなに 「しなくても誰もきみのお父さんを疑ぐってなそいやせんョ」と教 もご存じじゃないんた。私はただの風聞を信じているのじゃなく師はなためた。「それに問題は二十年も前のことで、世人の念頭に ロ 0

4. SFマガジン 1980年1月号

ているよ。 いや、短篇やエッセイたね。今、 オペラを考えている。舞台用にね : 探偵小説 ? ーラン・エリスンが うん。ロス・マクドナルドや ャーーところで、 作家廃業宣言をしましたけど・ーー少し前の ダシェル、 ・ノメットや、レイモン 話ですけれど : チャンドラーも大好きたか ら。 耳にはしてるけど : : を告訴す るのに手を貸したよ。法廷に持ちこんでー 未米の、ミステリーです、物 ー先月のことた。 、カ で、やめちゃうのは本当なんですか。 いや、純然たる探偵小説た。 ロではそう云うけどね。腹の中は違う 私は二十二、三歳のころ、短篇で 探偵小説をたくさん書いている たろう。 ( 笑 ) 腹をすえてという感しがあ んたよ。 "Dime Detective" とか りすぎたたろ。私なら、そういうことを云 "Dime N'1y 「 stery" とか "BIack おうとは夢にも思わないね。来年何をやり Mask" とかの雑誌でね。とても たしか、五年先に何をやりたくなるか、わ よかった。 かりやしないんたからね。さっき長篇 を書かないかときかれたけど、正灯 たから、今になって、現代ミス 年たってみ ら、私にもわからないんた。 : テリーを書いて、献辞をハメット ッとべッドからはねおきてい〔き とジェイムズ・ケインと : : : チャ 出すかもしれない。 ンドラーとロス・マクドナルドにあてようマを持ったものだけど。 最近の若い作家では誰がお好きで OZ しゃあ、もう、「華氏四五一」のよう と思う。来年までには片付けたいね。 なものは期待できないんですか。 来年の出版ですか。 召 そうたね。私はもともと長篇作家しゃうーむ ( 溜息 ) 連中ももう若くないか そうしたいね。 ないんだ。ェッセイや短篇や詩を書くつもらな。みんな私ぐらいの年た。ア 1 ーサー の長篇はいかがですか。 クラーク・ もうの分野ではあまり書かないと ーの長篇もそれひとっ若くはないでしょ ( 笑 ) 思うよ。特に長いものはね。短篇は書くしや、 そりや、そうなんたが ( 笑 ) チャール で・ し、詩はもっと〔く。詩でも的なテー 5

5. SFマガジン 1980年1月号

だってありはしない。学長から聞かされたことはもう一つあるがてもらえなかったが、理由と目的についてはハッキリ「愛情」、そ して「平和への貢献」という回答が返ってきたそうだ。マテオ、た ネ、マテオ、これは同時にかれの伝言でもあるので改めて言うが、 メロドラマ きみのその気の早い探偵ごッこの開始は「恩人しの意志に反するとから我々がこうして君を引留めているんだョ。ばかげた伝奇小説の 思うョ。学長はこの点をきみに注意して、きみが学内に止まり、仇亜流を実践しにゆくのは止めたまえ。君はたた事実を知りたいたけ きをでなく学問の真実を追求することのほうを採らせたいと希望しだと言うが、友達のなかには君が恩人の希望で入った本学の課程を ておられる。私はきみの支援者については何も知らないが、これは了えしだい、″親父の仇きを討ちに出ると言っている、と証一言す る者もいるんだョ」 本来どういう関係の人なんだネ ? 」 「私自身にも分らないんです」と若者は話題が変ったのでやや沈静「ジョウとキヨシのやつらですネ ! 」 と学生は大声をたした。「あン畜生ども ! ニッポン人てやつは した様子を見せた】「名も知りません。とにかく私の幼いころから ずっと母宛に来つづけている年末の送金で、父が死んでからは之一みんな始末におえないお喋りだ ! ブッ飛はしてやる ! 」 ささ 「いい加減にしないか」 つに私達母子は支えられて来ました。思い当る親類は父母ともにな 教師はもて余したように叱る口調になって、 かったので、母はかなり熱心にこの恵み主をさがしたようですが、 「公立中学の生徒ではない、成長した大人の学校の学生だというこ その頃はしじゅう差出地の変る匿名郵便でくるので、けつきよく判 りませんでした。そして私が小中学を出るとどうじに天王星経済局とを忘れなさるな。友達だって、君のために私に協力したんだ サア、私がきみに言おうと思ったことはみな話した。マテオどうす 扱いの信託基金配当に振替られたのです。いぜん匿名で、いくら問 るネ ? 」 合せても「それが契約条件たから」と、答えて貰えませんでした。 しかし・ほくの今日は百 % この知れない恩人のおかげで成立っていま「考えさして下さい」 若者はそう言って教授室を出ていったが、のこった学者があぐね 「わかった」 たふうに首をふりながら、立って机まわりを片づけようとした瞬間 あわた と教師は頷いて言った。「話がそこまで来ればもう遠慮しなくてにもう足音慌だしく戻ってきて、扉を手荒に突きあけるなり、 「だめです ! 」 もいいだろう。きみの奨学金が個人の私的基金ーーそれも母上をふ くめた終身給与たということを学長が知ったのはホンの学籍簿の整と恩師にどなりつけた。 理にさいしての偶然からだったが、学長は若者たち・とくに寮生の「何と仰言ってもぼくは出てゆきます ! そしてたとい外惑星じゅ かたき 身ノ上については少しでも良く知っていたいとの方針から、振出しう尋ねあるいても父の讐をとります ! そしてこの旅には恩人をさ 局チタニアの理財課へ支給者の人物ならびに君との関係、給与の理がしあてる目的も含まれているんです。ぜったいに止めるわけには刀 由や目的などを問合せられたんた。贈与者の人物は匿名希望で答えゆきません ! 」 おや

6. SFマガジン 1980年1月号

だから・ハロウズというのは、親しみのあ ね。これが文化的背景によるのか、遺伝に素晴しいことになるよ。 る、特別ないつぶうかわった、すばらしい よるのか知らないけれど、男はある種のば嫌いな作家はありますか。 かげたオモチャで遊ぶ傾向があるんた。 特に : : : 言えないな。そういう考え方作家なんた。ところが文章はうまくなかっ ( 笑 ) 女の人はそれを見て「・ハカね」と言はしないんだ。愛するのが流儀だ。ジョー た。おかしなものでね。文学という見方か うのさ。 シェークス。ヒらすると、うまくはなかった。それでも、 ーマン・メルヴィル、・ ()5 見事に夢を描いた。私を夢中にさせた。そ 0 ニューウェイヴについてお話しいア、聖書、 たたけますか。 れで充分しゃよ、 オしか。こう一一一口ってくれる人 ・ウエルズのような仕事をしようとしてい 話せないんだな。というのは、よく知る。嫌いな人なら、こちらから近づかない があれば充分なんた。「大胆に、愛してい らないんだ。時間がなくて読んでいられな から、名前をあげることもできない。仮にると云ってみろ」と。「そして立ち向かえ ノロウズ 。自分の小説やエッセイや戯曲を書くの好かない人の名をあげて、その人を君たちば、宇宙にひきよせられるーと。 に忙しくて時間がない。 が好きたったら悲しいたろう。 はそれを言ってくれた。天文学者のカール ・セイガンも同じことを言っていたよ。 特にお嫌いというわけでは : 0 お好きな作品は。 ハロウズが私を天文学に夢中に とんでもない。そんなばかなこと。 むすかしいね。数が多いから。界「・・ ろいろやればやるほど、先へ行ってからよ全体から影響を受けたからね。私が八歳とさせた」と。「宇宙に惚れさせた」とね。 ・・ウエルズが私にとっては二番目 か十歳のころは。 り成果が上がるんだ。 OZ お好きな作家は。 ライス・、、ノ 、ロウズならの人た。「来たるべき世界」を観たのが十 4 」たエドガ 五歳のときで、映画のおわりで、カベルと : ターザン、火星のジョン・カーター ジュール・ヴェルヌ ! 敬愛する人 た。二年前にフランス政府が私と妻を招待 : ・ああいう本で、たとえばジョン・カータもうひとりが、子供たちが月に出て行くの 「これつ してくれてね。ヴェルヌ生誕一五〇年を祝 ーなら「夏の芝生の上に出ておいで。赤いを見てる。そこでこう言うんた。 星″火星〃を見上げてごらん」と云ったわきりかしら、このあとどうなるの」する ったんだ。わが英雄の誕生を祝うために、 私が招待された。素晴しいことだよ。 けだ。「手をのばせば、君たちを連れて行と、「これすべてか、これきりか。墓場に 私がヴェルスの生誕を祝いたいのは、あってあげる」と。 入って、塵と虫とにまみれるか、それとも つまり、十二歳ぐらいのころ、そう云わ未来か、宇宙旅行か。どちらを選ぶね」 の人こそ、われわれが今しゃべっているこ とについて考えた人だからだ。われわれをれて、私はそのとおりにしたのさ。以来、と。十五歳た 0 た私は、映画館を出て「こ 変える機械、われわれにかわって夢見る機私は戻って来ていない。大昔に火星に行っれが ' ほくの未来だ」と思ったね。だから、 ロウズは たきりなのさ。 械。われわれさえ間違いを犯さなければ、 、にー・、ノョ 1 ー、

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が、私の本音なのです。おそらく、古く 時代的変化をとらえ、新しい作品の面白彎、 からの読者の多くは、そんなようなことさも認めているということです。古びた を感じていると思うのですが : ものを読めば、ああこれはやつばり過去 これは年寄りの懐旧趣味でありましょのものだ、と感じると思うのでありま うか ? 嫌らしい保守的発言なのでありす。そして、これらの過去からやってき ましようカフ・ た作品を読んで、そう感じたとすれば、 答えは、伊藤典夫、浅倉久志、両氏の私は自分がオジンではないことを納得で 手で編まれる〈マガジン・ベスト〉きるでありましよう。 レ で、結果はどうたったかと、 しいます 「『冷たい方程式』および『空は船でい 0 。はい』の中にあるように思うのです。こ と、良いのですよ、やつばり : こに収められた「当時の名作群」が時のれこそがじゃ、と感涙にむせぶとい えます。 流れの中でその魅力を失っており、現在 うほどではないのですが、かなりそれに はっきりいって、私は、最近の洗練さ 生み出されているに比べて、著しく近いものでありました。一九四〇年代、れた作品よりも、この本に収められてい 価値を低めていれば、昔のは良かつおよび五〇年代に書かれたものでありまるような作品の方が好きであり、よりス た、などという私は既にオジンでありすから、特に宇宙像などにおいては、どベキュレイティヴであると感じ、価値も ( 自分がオジンであることを認めるにやうしても古めかしさを感じさせますが、 高いように思うのです。やつばり私はオ ふさかではありませんが ) 、保守的なそんなことはさておいて、話の中へグイ ジンなのでしようか。今では書かれるこ 観の持ち主ということになるでしよう。 グイと引き入れる力を持っている作品が とのできない、良き時代のを夢みる ここで私が言っておかなければならな 、ませんが すべてとはいし ほとん愚か者なのでしようか。いや、そうとは いのは、ひとつは、実は私はこの二冊にどなのです。たとえば、本書でいえば、 限らん、どっかに、現代におけるこのよ 収められた短篇のほとんどを未読である O ・»-2 ・ムーアの『美女ありき』は、昨うなのあり方がある筈た、と、まあ か、読んでいたとしても、まるつきりと年訳出された・ポールの傑作『マン・ こんなことを、薄暗い部屋の片隅で、と しっていいほど、忘れていたのでありま。フラス』と同じテーマを扱って、あの長りとめもなく考えているのです。 ( 『空は す ( : : : 宇宙艇への密航者がフレアのス篇に勝るとも劣らない衝撃を与えます船でいつばい』 / 編者Ⅱ浅倉久志・伊藤 カートをはいていたなんて ! ) 。ですかし、ワイマン・グインの『危険な関係』典夫 / 著者日シオドア・スタージョン・ ら、これらの作品を読む時に私が昔の感は、ひとつの人生をふたつの人格が半々他 / 文庫判 / 328 頁 / 380 円 / 早川 激を思い出すといったことは、ないとい に生きるとはどういうことか、という考書房 ) っていいのです。 察を個人から社会的規模にまで広げて、 もうひとつは、私は自分なりにの絵空事でありながら、深刻な読後感を与 をマガ財】第ト 4

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私の名前を書きながら、「 Oh 屋にびったりと似合っていた。優しいアメ Azusa 一」と一ムう。カリフォルニ リカ人、アメリカの少年。 アに、 Azusa という小さなかわい 「どうもありがとうございました。ほんと し町があるのだそうです。何年か にありがとうございました」 前に行ってとても楽しかった、と もう十一時をすぎていたので、あたふた と退散することにする。ブラッドベ いっていた。それは全然知らなかを Lu 関のところまで送ってくれる。 った。でも、ステキだね、私と同 私は、それまでは、一応正確を期して じ名前の町がカリフガル = アにあ & ス の るなんて。いっか行ってみよう、 ( というか、たぶん通しないと思って ) 質 と思った。 間はすべてさんの通訳をとおしていたの ラたが、これたけはどうしても自分で云いた とにかくそれで一段落のはこび かったので、出がけに、頭の中で何回か考 となり、みんな、サイン入りの本 えておいて ( これがなさけない。わしは英 ( 「 October CountryJ たったの 会話に行くそ ) 勇気を出して中しました。 で、とても嬉しかった。やつば 「必す日本に来て下さい。今度は日本でお り、いちばんはしめに読んた本な 目にかかれたら、こんな嬉しいことはあり ので、これがいちばんなっかし ません」 。その中でも「みすうみーがい ブラッドベリは、につこりした。 ちばん好きです、と・フラッドベリに云「てうい「たいつまでも忘れられぬ短篇がタイ 。フから打ち出されるのにふさわしいかもし「もちろん、もちろん。日本で、ね」 みたが、なにせ私の英語であるから、チャ ンと通したかどうかはわからない。彼は、 れない、そんな気のする、どこかなっかし彼は手をさしだした。お決まりのセリフ ではあるけれども、その手はほんとに、カ 召ウンウンと笑ってうなすいていた ) とレく、書庫のかびくささと海賊の宝倉のスリ ルと、そして少年の部屋のかわいらしさのづよくかわいてあたたかったのである。 コードをかかえて階段を上り、 T 「 easu 「 e ロウィーンの名残りのよ Room を残り惜しそうに出た。何となく、 感しられる ヘリの仕事部屋 ( 書斎という 〃ここならおちついて小説が書けるかもしれうなブラッド・ ( このインタビュウの通訳は松島啓之氏、 ない、たしかに、 「いちご色の窓」だの感じではなかった ) だった。 翻訳は佐久間弘氏によるものです ) そして・フラッドベリ自身も、そうした部 「万華鏡」たの「 0 ケ〉ト「ン」だの、そ 9

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ることができるであろう。めでたし : めでたし : p-ä・ニーヴン・ 。ハーネル著 などという書き方をすると、すぐ素直 じゃない読者は、 ( あっ、こいつ、『悪 ュ『悪魔のハンマー』上・下 魔のハンマー』を、本当はけなしたいん だな ? ) と邪推するに違いない。が、そ 川又千秋れは少なくとも、五分の四は正しくな レ 本書『悪魔のハンマ 1 』は、まぎれも つまり筆者は、先に挙げた本書の素晴 ない第一級の成功作である。明らかすぎらしさを、心の中の八十パーセントの部 るほど、と言ってもいい。 分で、完全に納得しつつ、この作品を楽も、だ ) の部分に、やはり、どうにも。ヒ それを細かく検討していたら、キリがしんだからである。 ンとこない甘さを感じるからだ。むし ないので、以下、要点だけを列記しょ では、残りの二十パーセントとは何ろ、純粋な小説であれば、 ( 逆説的 に ) この甘さは許されると思う。だが、 まず、正確な科学知識に裏打ちされ僕は、『悪魔のハンマー』の頁を繰りある程度の大衆性、広汎な一般読者を想 た、堂々たる設定 : : : 生き生きと書き分ながら、かって読んたふたつの作品を思定するなら、″マントル対流によって、 けられた、さまざまの人間群像 : : : 緊密い浮かべていた。 列島が日本海溝に落ち込む〃というくら で、しかもスリリング、読者を決して飽びとつは小松左京の『日本沈没』であ いの切実さ、蓋然性の提出に頭をし・ほっ きさせない見事な小説展開 : : : 知的かつり、もうひとつは、ジョージ・・スチても良かったのではないか ? とわ 的確な文明観と、そこから導かれた現代ュワート の『大地は永遠に』 ( ハヤカワ そして、下巻 : : : 『大地は永遠に』 に対する鋭い洞察 : : : 充分に制御され、シリーズ 3182 ) だ。 も、やはり破滅後のアメリカで、混乱の 洗練された構成と文脈 : : : エンタティン そして、『悪魔のハンマー』上巻を前 なかから立ち上がろうとする人々の物語 メントと哲学の、上品で無理のない結合者と、下巻を後者と比べていた。 なのだが、こちらの方は、『悪魔の・ ・ : それら全ての巧妙なプレンド : そしてどう思ったかというと : ・ : 』とは違い、前時代の文明に固執する トセトラ、エトセトラ。 まずはじめの比較で、僕は『日本沈ことなく、ごく自然に、一歩後退した地 恐らく、本書に関するかぎり、担当の没』の方をとる。その理由は、彗星が地点から、別種の道へと歩み出す展開をと 編集者が惹句に苦労するということはあ球との衝突コースを進んでくる、とい っている。そして、そのために、神話形 りそうもない。彼は心の底から、思うが う、そもそもの仕掛けづくり ( それがど成期を思わせる象徴性と、一種不思議な ままの文句を駆使して、本書を賞め讃えれほどタイトに書き込まれていようと余韻をかもしだす。 悪魔の にツを 8

10. SFマガジン 1980年1月号

とによったら五十光年 ! にもわたって広がっているガスに、割れ速く飲めない : お気に入りのシュトラウスのワルッと・ハルカロー 目があったのだ。すご い。なんて眺め。無限に伸びた視野で、ここ レをかけた。おう、ベルリン・フィル。恋人のキスって、かれらの 8 から見た眺めは、なんとすばらしいのだろう。なにもかも見える。 タッチみたいなものだろうなあ。外の景色を大スクリ 1 ンに写し ずっと前の方も、通り過ぎていく途中もーーそして、振返って地球た。星々の舞踏室。自分の影と踊った。そして、しばらくの間は、 の方も。 深淵の上でジャンプスーツにヘッドフォーンをつけて踊っているの 振返る。振返って、別の道を歩むこともできたのに、と悔むのをでなく、十九世紀のウインの舞踏場で、何ャードものサテンとレー 決してやめはしないだろう。少なくも、二種類のわたしがありえた スを身にまとって、ワルツを踊っていた。一瞬でも時間から脱け出 と。ここにいるわたしと、地球に留まっていて正常になることがでして、あそこへいってみたい。一生涯なんていわない、一年でなく きたかもしれないわたしと。だからといって、後悔によって永久にてもいし ほんの一晩、ほんのワルツ一曲分だけ。 二つに引き裂かれていなければならないということはないだろうー わたしが決してしないであろう事が、ほかにもある。時、才能、 人生の無情な気紛れーー理由は何であろうと、われわれだれしも、 ドウシタ、ドクター ? できない事は山ほどある。みんな無限への片道旅行をしているの ャメテ ! 」 ) だ。もし運が良ければ、好きなライフワークか、またはある人間、 ( 「こら、気をつけなさい ! 飲むなら、飛ぶな」 ) ばか鳥め : : : もしわたしが涙もろくなっているなら、それは今日が与えられる。うんと運が良ければその両方が。 そしてわたしにはウィ 1 ムズがいる。時々わたしは、自分たちの アイーをやったからよ。シャンペン一瓶あけちゃった。そう よ、あのパーティーをやったのよ : : : わたしたち、やったのよ、オことを、長年にわたって寛容な理解を育て上げてきた老夫婦のよう に感じることがある。わたしたちは、ほんと、心の友だったことは ジマンディアスとわたしはね。うちうちの一千天文単位の祝賀会 を。遅れ。はせでも、全然やらないよりはましだと思うわ。少なく決してない。でも、お互いの沈黙が快い : そろそろ、かれに返事を出してやろうかなあ。 も、お祝いにかたちの残ることをやったのよーー・写真撮ったの。そ して、この祝賀会が思ったほど陽気にできなかったとしても、その 次の時、つまり、二千天文単位の時に振返ってみれば、たふん、け っこうそれらしく見えると思うわ。もうだんだん早くくるみたい、 祝賀会がさ。もしかしたら、八千天文単位祝賀会まで生きるかもし れない。なにをばかな、あたしや一万を狙ってるんだよ シャンペンを飲み終えてから : : : オジマンディアスは九八年は当 り年だったと思っている。ありがたいことに、 こいつ、わたしほど ◇