/ リスの力強い尾が、ゆっくりと持ち上げられ、そして、ひとっ 返ってくるのが感じられます。その返ってきた声は、俺たちを求 の決断となって振り下ろされた。 め、呼んでいる : : : 」 「俺は行きます。この無敵の戦闘艦を指揮して、地球へ向かいま ノリスの目は、すでに地球人の醜態には向けられていなかった。 彼の視線は、はるか遠く、そしてはるか未来を見つめていた。 「決心がつけば、それでよし : : : また、決心がっかなくとも、儂は ノリスは低い声で、しかしはっきりと、そう言い切った。 ノリスを、これつ。ほっちも責めはしないだろう。決心がどうあれ、 「俺を呼ぶ声がある : : : それを聞かないふりをして生きることはで ノリスは、まちがいなく我等火星人の英雄だ。その名は、あの秘界きません。俺は、俺は行って、この艦の力を試しましよう。新しく に眠る大いなる心が目覚める時までも、きっと語りつがれるにちが地球人たるべく運命づけられた彼等のために : ノリスはその時、なぜ自分がこの宇宙に生まれ落ちねばならなか 導士は、 / リスと同じく、宙を見つめて、つぶやいた。 ったのかを、疑いようのない明晰さで認識した。 「 : : : 呼んでいる : : : 地球の生き物たちが、我々を呼んでいます : ( 地球では、彼等が俺を待っている : : : 身を潜め、人間の目を避け : ・我々、火星人の歓喜を自分たちのことのように喜び、祝福し、そながら、運命の日、新しい地球人となるための日を待っている : して、我々を呼んでいる : : : 」 ノリスが、切れ切れの言葉を、喉の奥から洩らし続ける。 ( 完 ) 「そうだ、ノリス : : : もっともっと心を開けば、さらに遠くからも 声が聞こえる。この太陽系を越えてなお、広がってゆく波動が見え る。我々を生んだ運命の秘蹟が、実は、注意深く我々を見つめるも のの意志であることが分るはずだ。我々に、運命を自ら切り拓くカ があるなどと思い上ってはいけない。我々はただ、与えられた運命 の中で、たたひたすら走り続けるたけだ。しかし、すでに走り続け る力もない哀れな者たちもいる : : : 我々がやろうとしていること は、決して彼等の運命をくつがえす行為ではない。 / / 彼等の閉ざされ た運命、閉ざされた未来が見えるからこそ、その苦しみを、少しば かり早く切り上けてやるたけだ。そう : : : それにしか過ぎん : : : 」 導士の声がさらに細くなり、そして消えた。 「導士 : : : 」 2 引
突然笑い出したのはカドだ。 「ああ : : : 奴等が気づかんうちに、手早く片付けてくれ。まかせた「なんと ! おかしいじゃないかー ″心を開けば、全てが聞こえ 2 そ、ノリス」 る″とか何とか、たいそうなことをほざいていた割には、こんな大 老ガルーが答えた。 切なことも分ってはいない。やはり、獣は獣だ。よし、かわいそう どうやって : 「攻撃 ? 攻撃だと ? だから教えてやろうー このガーディアンの中枢部は、もはや全て それでは約東が違う。おまえたちは、我々を無事に帰すと約東した凍結されている。もう誰も、この艦を動かすことはできんのだ。我 ではないかそれを : : : 我々を捕えたままで、攻撃だと ? 」 我がそれほど愚かだとでも思ったのか ? 」 混乱したリーマーが、唸るように言う。 カドは、また腹をかかえて、わざとらしく高笑いした。 「確かに、我々は、おまえたち三人の命を保証した。それに、卩ー しかし : その少将ド / の無事も約東した。それは、守る。だが、我々 ノリスは、そんなカドを完全に無視した。 は、他の将兵の命まで助けると言った覚えはない。それに、我々 そして、戦闘艦橋の前部にある指令コンソールに近づいた。 は、どうあってもドヌスをあのまま放っておくわけにはいかぬ。お「ー 0010 ー : ・ : こ まえたちが言う通り、確かに、あの母艦は、我々の未来にとって致 ノリスは一連の数字をつぶやき、それをコンソールのキイで打ち 命的な力を秘めている。だから、我々は、ドヌスを破壊する 1 込んだ。 振り返ったノリスが、そう宣告した。 途端、す・ヘてがよみがえった。 「、は、馬鹿な ! 狂っている : どうやって、あのドス 死んだように光を失っていた指令コンソールのディス。フレイが、 スと闘うつもりだ卩」 いっせいにまたたきはじめる。 ーマーはなおも食い下がる。 「う、嘘だ ! そんなはずはない : : 嘘た ! 嘘た ! 嘘たー 「もちろん、このガーディアンのビーム砲とミサイルを使ってだよ リーマーが狂ったように泣きわめきはじめた。 ノリスは、当然だと言わんばかりに、と・ほけた顔で目瞬きした。 とういうことだ」 これはいっこ、、・ 「そうだろう ? 少なくとも、太陽系で、あのドススを一撃で屠る カドの目は眼窩から飛び出しそうに見開かれている。 能力を持っ戦闘宇宙艦はこのガーディアンしかない。他の方法があ「どういうことだ、だと ? どうもこうもあるまい」 るのなら、教えてくれ」 せせら笑うように答えたのはノリスだ。 ノリスがうそぶいた。 「 5 ー 0 010 ー ()5 : : : 中枢コン。ヒュータの作動コードさ。そ れを入れたから、コンソールが蘇生したまでのことた」 「はっ ! わははははは : : : 」
「あり得ないー 我々ですら知らないコード・ ナイハーを、こん「我々は、おまえたちが、中枢部を休止させてしまったことを、そ な、こんなガルーが知っているはすはない。嘘た ! これは、なんの直後に気づいた。それは、我々にとっても、非常にまずい事態た 2 2 かの罠だ。絶対に、そんなはすはない ! 」 った。我々は、地球人が、自分たちの旗艦を事実上殺してしまうこ 丿ーマーが叫ぶ。 とになるそんな手段には出るまい、と予測していたのだ。だが、そ 「おまえの知らないことを、この俺が知っているのが、そんなに気の時、俺は心を開き、この艦の能力設定者がマルク・ゴゼイである に食わないのか 2 だから、言ったろう、俺は、おまえなどよりもことを知った。そして、マルク・ゴゼイの認識番号を、俺はかろう はるか昔から、この戦場に身を置いている、と : : : 」 じて覚えていた。そこで早速、我々は艦中央のコン。ヒュータ・セク ションに下りて、そのナン・ハ 、 5 ー 0 010 ーを試してみ ノリスは言った。そして続ける。 「いいか、教えてやろう。ガーディアンほどの艦の場合、通常、船た。思った通り、中枢部はすぐ再作動した。だが、それを悟られて はいけないので、我々はこの艦橋のコンソールを本体から切り離し 体よりも先に、まず中枢部コン。ヒュータがビルドされる。むしろ、 中枢部に、その端末としての各種艤装や武装、外殻を取りつけてゆて、休止状態のままに置いておいたのだ。おまえたちは、見事にた くと言った方がいいくらいだ。現代の、高度に自動化された戦闘艦まされていた、というわけだ」 は、ほとんどが、こうした概念で建造されるようになっている。と「なぜだ なぜ、ガルーのおまえが、少将の認識番号を知ってい いうのは、今や宇宙艦の良し悪しは、全体の構成よりもむしろ、そた卩 なぜだ : : : 」 の中枢制御の可否にかかっているからだ : : : 」 激しい混乱と苦悩に、リ ーマーの顔は歪んでいた。全身をぶるふ ると震わせている。 ノリスは鼻の頭にしわを寄せ、コンソールに片手をのせた。 「それは、俺とマルク・ゴゼイが知り合いだったからさ。そう : 「そこで、だ : : : 宇宙軍内にはいっか、こんな伝統が生まれてい た。それは、中枢部の能力設定にたずさわった責任将校が、栄誉と一時は、友人のように付き合っていたこともある。彼の死を知った して、その作動コードを好きなナン・ハーで作製できる、というもの時、俺たちは皆、我を忘れるほど驚いたものた」 だ。そして多くの将校は、おおむね、自分の認識番号を、作動コー ノリスが言った。すると、回りのガルー戦士たちが、また、い ドとして記憶させた : : : 」 せいに笑った。 「わたしも軍人の端くれだ。それくらいのことは知っている。だ「でたらめだ ! みんな、何もかも、でたらめだ ! 」 が、なぜ、ガレ しかし、そう叫・ほうとするリーマーの声には、すでに力がなかっ ノーが、そんな軍内部のことを知っているんだし かも、ガーディアンのコードまで正確に : : : 」 呆気にとられて、リーマーが説く。 「ノリス、説明はそれくらいで充分だろう。ともかく、ガーディア しかし、それには答えず、ノリスは続けた。 ンは、我等が手に落ち、そして完璧に制御されている。そろそろ、 っ
丿ーマーは、自分でも気づかずに、びとり言をつぶやいていた。 を、この宇宙から消減させることだろう。 その彼に、ノリスが振り返った。 そんな思いが、共通に、地球人たちの胸にあった。 「艦長、実は、あんたをもう一度、失望させなくてはならないのだ ( 終った : : : 全ては、終った : : だが、この苦い記憶を、我々はい : 」ノリスは言った。 つか忘れ去ることができる。忘れて、そして一からやり直すことも 「 : : : あんたは、確かに、 可能た。しかし、ガルーどもにとって、もはや未来は閉ざされた : このガ 1 ディアンの自爆装置の安全ロッ クを解除した。その手順には、何の誤りもなかったさ。ただ、あん カドは、目を宙にさまよわせながら、そう思った。 たは知らなかったんだ。俺が、あんたの作業前に、 5 ー 0 010 「連絡艇、発進します ! 」 ーで中枢コンビュータの凍結を解き、そこに、自爆操作演習の カドたちの乗船するはすだった連絡艇が、今、無人のまま、宇宙。フログラムを入れておいたことを : : : まったく、見事な迫真の演習 空間に射出されたのだ。 たった。いっかは俺が、そいつを手本にさせてもらう時がくるかも 地球人たちは・ほんやりと目をあげ、予定の軌道をはずれて、暗黒しれない」 の宇宙空間に飛び去ろうとするオレンジ色の連絡艇を、モニターの ノリスの声は優しかった。 画像に認めた。 しかしリーマーは、もう、ノリスの言葉を聞いていなかった。 「ドヌス、移動開始 ! 連絡艇を追って軌道から離れます」 彼の全ての知覚は、はるか幼児期にまで退行し、心の奥底に、固 今までのとこ「つ、何もかもが、ガルーのシナリオ通りに運んでい く固く閉じこもってしまっていたからた。 「 : : : さあ、もう、 しいだろう : : : 」 戦闘母艦ドヌスは、射出された小艇に、ガルーの人質だった国際老ガレ / ーが、両足と尾を交互に使って、ゆっくりノリスのかたわ 経済開発委員会総裁が乗り組んでいるものと信じ込み、大慌てで追らに歩み寄った。 跡に移っていた。 : 今、我々は、歴史のはざまにいる。ひとつの終りと、始まり ガーディアンとドヌスの距離が、見る見る開いてゆく様子を、戦の瞬間の、ちょうどまん中に立っている。そのことを、我々は知っ 闘艦橋のディスプレイがはっきりと教えていた。 ている。この次の瞬間に訪れる未来こそが、歴史の主人公を決める このまま状態に変化がなければ、三分二十秒後ーードヌスはガー のだ。そのことを、知っているのは我々た。だからこそ、我々はた ディアンのビーム砲に射抜かれて、そこでかりそめの太陽となってめらうことなく、人間どもから、その歴史のたずなを奪いとらなく 輝きわたることだろう。 てはならない。今が、ついに、その時なのだ : : : 」 「 : : : しかし、そこまでだ : : : あと一一十時間 : : : 今度は、ガーディ 老ガルーは、静かに語った。 アンがドヌスの後を追って : : : 」 「さあ、ノリス : : : その役割を果たすのに、君ほど適確な存在はあ セイフティ 226
ハミルはすでに、ひとりで立ち上れないほど酔っていた。 彼は床を這いずり、汚物を吐き散らしながら、なおもわめいた。 その様子を、導士と / リスが、無言のまま見下ろしていた。 ーむごいそ、むご過ぎる : : : 」 ついにたまりかねたのか、カドが、導士に食ってかかった。 ーなぜ、こんなにまでして、我々を辱めなければならんのだ。もう ) いだろう ! 確かに我々は、文字通りの捕虜だ。だが、捕虜にも 厳というものがあるはずだ。これではまるで、獣以下の扱いでは 中む、このハミルだけでも、部屋に退がらせてやってく カドは懇願する口調になりながら、ちらりともうひとりの地球 ロード少将に視線を走らせた。 卩ードは、壁際に背をもたせかけ、独り、黙々と杯を口に連んで ーこの、恥知らすめ ! 貴様のような奴、見るだけで反吐がでる ! 、いか、ガルーだけじゃない。貴様もきっと、わしがこの手で八つ きにしてくれる。貴様など、ガルー以下の人間た ! 忘れるな、 ~ ず、殺してやる ! 」 、、ルが暴れ出した。 、カド総裁、何を言ってるんです。こんなになるまで飲んで欲しい 」頼んだ覚えはない。我々はただ、独立を祝う酒宴に、かっての好 ハ手として、人類の代表として、三人を招いたたけだ。そして、あ たたちほど、それにふさわしい人間は他にいない」 ノリスが一 = ロった。 「我々をこんな目に合わせて、いっこ、、 何が狙いだ ? そうか、 刀ったそ ! 我々を酔いつぶしておいて、また、心の中をのそいて いるんだろう ! そうやってまた、人間の弱味を握ろうと考えてい るんたな ? 何て奴等た ! 見かけばかりか、心の中まで薄汚い、 腐り切った獣どもだ ! 」 今度は、カドまでがわめきだした。 「自分の心すら開けぬ哀れな動物たち、地球人 : : : 」 ゆっくりと話しはじめたのは老ガルー、導士だ。 「自分たちで勝手に酔いつぶれ、それでも本性を見られるのが、そ : まあ、 れほどにつらいのか : 、、。せいぜい、そこでお互い傷つ けあい、あるいは、自分で自分の傷をさらに深くすればよかろう。 我々には、どうしてやることもできん」 「帰してくれ ! 帰してくれるだけでいいんだ ! 早く我々を、人 間の世界に帰してくれ ! 」 カドは叫んだ。 そして叫ぶことで、ついに精神の殻が破れた。 うつむいたカドの喉の奥から、鳴咽が洩れはじめた。 それはすぐさま、号泣に変わった。 そのかたわらでは、汚物にまみれたハミルが、いつまでも吼え続 けている。 その二人を、呆けたような無表情で見つめながら、ロードは水の ように酒を身体に流し込んでいた。 その光景は、まさに地獄だった。 「これが、人間た : : : 分るか、ノリス。どうだ、決心はついたか : ささやくように、導士が言った。 「 : : : 導士 : : : 俺は今も感じています。大勢の声が、俺たちを手ん でいる : : : そう : : : 俺たちの歓喜の波動が、宇宙に広がり、そして 2 30
「そう : : : おまえたち地球人は、いずれにせよ、そうするつもりなな戦闘宇宙艦は、このガーディアンとドススだけだ。ドヌスをやっ つけてしまえば、残りは輸送艦に毛が生えたようなフネばかりにな のだ。このガーディアンを失ってもドヌスがある。そのドヌスで、 る。つまり、地球人は、火星に対する軍事的切り札を全て失うわけ 火星を核爆発の燃えがらに変えてしまおうと決意している : : : 」 老ガレし、 ノカ対照的に静かな声で言った。 だ。そうた、ノリス、やってくれ ! 」 ガーディアン 「ああ、ああ、その通りだ ! それがどうしたに 「やってくれ、だと同じ手は二度と通用しないと教えてやった は、あと二十一時間後に確実にこの宇宙から消減する。そうすれはずだそー いくら、このカド総裁が地球にとってかけがえのない ば、再びドヌスが最強の母艦の地位に返り咲く。しかも地球には、方でも、そこまで地球人は甘くはない ! 」 マーは叫んだ。 ガルー戦士に背後から抱きとめられたまま、リー 新造中の母艦が、あと二隻もある。まあ、それを待つまでもなく、 ドスス一隻で、火星ひとつぐらい破壊するのはわけもないことだ 「そう駁ぎ立てるな。見苦しいそ、少将」 ノリスという名で呼ばれた屈強なガルーが、一歩前へ出てリーマ 1 の肩に手をかけた。 ーマーも叫ぶ。 「ふむ : : : ふむ : : : そうであれば、なおさら、ドヌスの存在は、我「まあ、いつまでも、そうして、我々のことを無知な奴隷たと思っ ているがいい。だが、我々ガルーのなかには、おまえたち以上に地 我火星人にとって見過ごせない脅威というわけだ : : : 」 球人のことを知り抜いている者もいるんた。おまえたちが、たた、 老カルーが、ちょっと考え込むような仕草をした。 「その通りだ、ガルー ただし、それは、脅威などという生やさそのことを知らないだけだ。なにしろ、我々の方が、おまえなどよ り、はるかに長く、この戦場で闘い続けている。例えばこのわたし しいものではないがな。ざまを見ろ。どの道、おまえらに未来はな だ。わたしは、ガルーが決起した、その第一夜から、この闘いに関 いんだ ! 」 わっている : : : 」 あごを突き出し、リー マーは毒づいた。 と ノリスは、″火星人と言わず、自分たちのことを″ガルー″ 「そうか、そうか : : : 分った、分った : : : 」 呼んだ。 ノーがからかうように、尻尾を振り回した。 っせいに意味ありげに それを聞いて、回りにいた戦士たちが、い その動作がなおさらリーマーを逆上させた。 笑った。 思わず彼は、こぶしをガルーに突き出す。 しかし、リー マーには、その笑いの真意が全く分らなかった。 しかし、老ガルーは、そんなリーマーにとりあう風もなく、くる ノリ . スよ、リーー りと背を向けると、ひとりの若い戦士をかたわらに呼び寄せた。 マ】の身体から手を離し、老ガルーに目くばせし 「聞いての通りだ、ノヴ・ノリス。どうやら我々は、あのドヌスも 始末しなくてはならんらしい。なに、 この火星へやって来た本格的「長老、では、あのドヌスに対する攻撃を開始してよろしいです 2 幻
り得ない。そうだろう : : : 今、歴史の幕を引けるのは、ノリス、君「 : : : 十分後、例え連絡艇がガ 1 ディアンから発進しても、それを をおいて他にない : 収容すべき相手は、この宇宙から消減していることでしよう : : : 」 そう言って、老ガルーは言葉を切った。 言って、ノリスは、大きく息を吸った。 「目標は、捕捉中の戦闘母艦ドヌス : : : 一番、二番、三番砲塔、攻 戦闘艦橋は静まり返った。 ただ、艦の奥深くから響いてくる主機関の鈍い唸りだけが、未来撃準備せよ ! 」 どこかから、艦内の空気を細かく震わせて、識閾ぎりぎりの低音 への秒読みを続けていた。 が響いてくる。 その時だ。 と、きっかり二秒後、コンソールのディス。フレイに、″装填完 突然、入信の・フザーが短く三度鳴った。 : こちら、ドヌス・ : ガーディアン、聞こえるか・ : どうし了″の赤い文字が浮かび上がり、そして明滅した。 た何があった ? ・ ・このつまらない小細工は、どういう意味「 : : : ガーディアン ! ・聞こえるか ? こちら、ドヌス : ・ : 答えろ ! 答えるんだ。いいか、今から十分以内に、残り 再びス。ヒーカーが吼えた。 の人質全員を解放すること。十分以内に、全員を乗せた連絡艇を発「 : : : 何だに何があったリそちらの砲塔が右方向へ旋回してい 進させろ ! ・ガルーたちは、どうなった卩 : : : 艦 るそリどうしたんだー スビーカーから流れ出す声の主は、慌て、そして焦っていた。 長、 ) ・ 1 ーマー艦長 ! 聞こえるか : : : 答えてくれ ! 自力で、や 総裁等、人質一行を乗せるはずの連絡艇が無人であったことの意つらをやつつけたのか ? 見えるそ ! 砲塔の回転が、こちらから 丿ーマー艦長・・ : : よし、す 味を計りかねながら、そこに明らかな挑戦を感じとったのだろう。 はっきり観測できる。やったんだな ・聞こえるかー いな、十分以内だ。もし、それが果たされ ぐに、こちらから応援を送る : : : 」 ない場合には、我々にも決心がある。ついさっき、地球の軍司令部ガル】どもに、戦闘艦の運用ができるはずはない、と信じきって から、新しい指示が届いた。人質の安全よりも、艦隊の安全を優先いるドヌスの指揮員は、ガーディアンの砲塔の動きを、人質からの せよ、という指示だ。我々は、それに従う。十分以内だ ! 十分た合図だと思い込んだようだ。 っても反応がないなら、我々は、人質を犠牲にしてでも、新しい処通信者の声が、にわかに喜色を帯びる。 置を講じなくてはならない : よく、やった ! まっ 「 : : : 待ってろ ! すぐに、迎えに行くー 「地球人も、ついに、本気で決意をしたようじゃないか : : : 」 老ガレし、、 ノカ他人ごとのように楽しそうな声で言った。 ノリスは、艦橋右手のスビーカーを、ちらりとにらんだ。 「まあ、しかし、それも遅すぎたというわけですよ、導士 : : : 」 そして素気なく言った。「全砲塔、撃て ! 」 ノリスが答えた。 軽く、艦全体がゆらいだように感じられた。 2 2 7
ドヌスに引導を渡してやるべき時間た。敵もそろそろ、こちらの様間を、せいぜい大切にすることだ」 長い棄て台詞を吐いたのはカドだ。 子が普通でないことに気づきはじめるだろう」 マ 1 同様、ある種の虚脱感に襲われているらしか / リスの長ロ舌が一段落したところで、老ガルーが静かにそう言彼もまた、リー っこ。 いわたした。 「分りました、導士。それでは、攻撃開始をコンビュータに指示し床にべたりと座り込み、憎悪のこもった眼で、コンソールのキイ ます。現在、ドヌスと本艦の距離は約三千メートル。少し接近し過を操作するノリスをにらみつけている。 とこか晴れ晴れとした気分がただよっ ぎているようです。少なくとも、十五キロ以上離れないと、ドヌス だが、彼等地球人の間に、・ が一度に爆発した際、こちらが、大被害をこうむる危険性がありまているのも、また事実だった。 す。ですからまず、囮の連絡艇をドヌス前方の空間に射出し、それ彼等は皆、胸のうちで、敗北は今日が最後たと確信していたの を追ってドヌスが充分本艦から遠去かったところで、ビーム砲の一 斉射撃を加えます。よろしいですか ? 」 今日を境に、地球人は、火星という惑星に完全な見切りをつけ コンソ 1 ルのアウトブットを読みながら、ノリスが説く。 「もちろんた。この艦は、君にまかせてある。好きなように、思う もはや、火星人を名乗るガルーと、何かを争い合う必要はなくな 存分闘ってくれ ! 」 老ガルーは力強くうなずいた。 彼はただ、火星と、そこに住む薄汚い生き物を抹殺するだけでよ 「ふん ! なぜ今さら、ガーディアンの被害を気にする必要があるかった。 んだ どうせ、この艦は、あと二十時間で、火の玉となって消滅しかも、地球人がそれを決行する時、作戦を妨害し得る力は、 ルーたちにないはずだった。 する運命にある。自爆装置のロックは、絶対に掛け直しがきかな ガーディアンさえ自爆してしまえば、火星人の手に残るのは、地 。せつかく、太陽系最強の戦闘艦を手に入れても、それが自爆し てしまったら、もうおまえたちに勝ち目はないんだ。地球には、新上戦闘用の大小火器、それに、鹵獲した連絡艇や揚陸艇がせい・せい ・ころう。 造中の母艦が、まだ二隻もある。つまり、おまえたちが火星ではし ゃいでいられるのも、その母艦が完成し、回航されてくるまでの間 地球人は望むままに惑星間を遠征して、火星を死の世界に変える だけということになる。その時、おまえたちには、我々に対抗できことができる。 だが、ガル 1 たちは、やがて核弾頭によって灼きつくされる火星 るものは何ひとっ残されておらん。もはやトリックもきかない。地 球人も、これだけ振り回されては、もはや問答無用で、この火星をの地表から逃げ出せはしないのだ。 灰にすることだろう。まあ、この艦と同じことだ。限られた猶予期地球人は何の危険もなしに、この憎んでも余りある生意気な奴隷 こ 0 225
もなければ、さまざまな事情によって、地球へ帰りたくないか、帰たしなめたのはカドだ。さすがに、彼だけは、何とか平常心を保 っている。 れない人間などが含まれていた。 ともかく、明日まで耐えればい、。 だが、彼等の多くは、その後二年以内に、大半が死ぬか、殺され 明日になれば、ガルーたちは連絡艇を用意し、近傍で警戒に当っ るかすることで、火星の土に還っていったのだった。 ている軽武装の補助艦へと、彼等四人を送り届けると約東してい 戦闘母艦ガーディアン艦内には、この時また、四人の地球人と、 カドは、ガルーたちの言葉を信用していた。 十数名の火星人がいた。 な。せなら、こうなった以上、彼等がカドたちをここに引きとめて 彼等は一夜、奇妙な酒宴をいっしょになって催していた。たたひ とり、精神に変調をきたしてしまったリーマー艦長の姿だけはそこおく理由は全くなかったからた。 ただ、彼等は今、勝利に酔っていた。 そして、その勝ち誇った姿を、カドをはじめとする地球人の代表 地球人の投げやりな罵声と恨みをこめた歌声、それに、火星人た 者たちに見せつけ、強く印象づけようとするためだけに、彼等の釈 ちの歓声と高らかな合唱が交錯した。 放を引きのばしていたのだ。 これで勝ったなどと思うなよ ! 」 「くそったれめがー 、即ち導士と、若 そこへ、艦内の視察からもどってきた老ガルー 泥酔して怒鳴っているのは、ハミル元帥だ。 い戦士 / リスが加わった。 その様子には、かっての上品な、軍部高官の面影はまるでない。 彼等の目には、等しく、自信と希望、未来に対する確信の色があ のび放題の無精ひげが、なおさらに彼の悲劇的変貌を彩ってい っこ 0 カドには、それがまぶしかった。 「まあ、そうやって待っていろ ! あと一年、いや四カ月もする と、新鋭の宇宙艦隊がこの火星へと殺到してくる : : : そうさ、こん彼は思わず顔をそむけた。 し力し、、ミルは、彼等を見て、またいきり立った。 な母艦一隻で防ぎきれるものか ! まず最初の血祭りはおまえたち この、奴隷どもめがア ! 今のうちだ、今のうちだけだー だ。そして続いて、ガルーどもが皆殺しにされるんだ。そうさ、こ れだけは、はっきりしている ! 動かしようのない未来ってやっすぐに、わしは帰ってくる。この火星へ、新しい艦隊をひきつれて ・ : きまってる。ひとり残らず、だ。それも、できるた帰ってくる。そして、おまえらを皆殺しにしてやる。ああ、そうし ・ : それが恐ろしければ、今、ここでわしを殺せー : そうでしよう、総裁 ! てやるとも。 け残酷な方法で : 2 だが、例え殺されても、わしの恨みは消えん。亡霊となって、悪霊 きっと、そうなるんだ ! 」 っ 4 となって、おまえらにとり憑いてやる ! とり殺してやる ! 」 「やめたまえ、見苦しい ! 」
夫妻らと、昼間友人から差し入れてもらった美 コンテストである。審査委員は「超革命的中学 生集団」の出演者たちで、司会は学ラン姿の佐 登酒を汲み交しつつおしゃべりってしまった。 も ( 加藤はこの間。ヘンを離さず ! ) 一升のお酒が 藤正明さん。これがまあよく似合っていてかわ 氏 之なくなるころにはもう四時半をすぎている。あ ーんだわあ。で、コンテストの方はどうかと 波わててふとんにもぐりこんだら、なによ、空が ゅーと、 0 れもまた凄」 0 よう。感動的な「復、 .- 一 ) 〉 ( 白々としてるじゃないの ! ああ、やつばり今 活の日」の再会シーン。二人とも男だなんて。 イ 年もねられなかった。 他にも男性の扮した「時をかける少女」や「オ 8 月川日 ( 日 ) 注目されたのは・ハン。ヒレラで、しかも演じたの ン ねむい目をこすりつつ、大会二日目をむかえ が、中学三年、十五歳ということなので、その 島る。参加者の意気込みは昨日と少しも変わらな 後しばらくの間、男性参加者の話題はその子に 中 。みんながんばるのう。 集中していた。また、最後にあらわれたローラ リス、ヴァレリア、エルリック、本家コナンに 映写室は昨日にひき続いて映画のマラソン上 ーによるヒロイック・ファンタ リアスのメン・ハ 。あまりの凝りように映で、両日合わせて、「盗まれた街」 ( 旧版 ) ジイのヒーロー & ヒロイン達も凄かった。次々元祖コナンなどなど : と「ダーク・スター」には特に人気が集中して ・ン観客は皆・ほー・せんとしていた。 とあらわれるジョン・カーター、デジャー 午後七時半。ほ・ほ予定通りに本日の・フログラ ムは終「して、参加者は三カ所に分かれた合宿 所へと散って行った。わしらの部屋は上野の水 月ホテルだけど、八時半からお茶の水の駿河台 ホテルにて第二回川又千秋杯 ( ェア・ガンによ る射撃大会 ) に出場するため、まずそちらへと 向った。ところが途中の道がひどく混んでて、 駿河台ホテルについたのは八時半近く。おかげ で社長はスコー・フの照準をあわせている暇がな ス くて、みじめな成績であえなく敗退。私はしつ ン かり・フービー賞の賞品をもろうてしまった。 コ ーうぐぐ、これもみんな上野の夏祭りがいかん のじゃ ! 次回こそは : ュ 川又千秋杯終了後、即、上野の水月ホテルへ チ , 第ス移動。食事に出かけた後″もう絶対にねるん だ″と決心していたにもかかわらず、同室にな った猫十字社さん達や、社長、道明、加藤直之 川又千秋杯の授賞式 . 主催者もガンバッタのだが・・・・・・ 203