プロッコリミー - みる会図書館


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1. SFマガジン 1980年2月号

「もちろんできるわ。プロッコリミー に頼むのよ」 折鶴がびよこびよこ跳ねながら、わしの周囲をまわりはじめたの ローラは大きな瞳を閉じて何かを念じはじめたのじゃった。 。フロッコリミー 「プロッコリミー ここへきてちょうだい。お客さ「フロッコリミー。 ちゃんとごあいさつができないの」 んカフロッコリミー一 ー会いたいって」 すると折鶴はむきを変え、ローラの方へ飛んで行った。 少女は折鶴を手に持って念じ続けていたのじゃ。 ローラが両手を前に差出すと、少女の髪は風になびき、フリルの ・フロッコリミー って何だろう。わしは単純にそう思った。念動力ついたスカートがひらひらと揺れた。 「だめよ。だめじゃない。そんなにじゃれついてきちゃ。・フロッコ を発現させるための呪文の一種なのだろうか。 。やめなさい」 「プロッコリミーがきたわ」 わしの周辺は完全な無風状態じゃった。草原にも、そよ風一つな 少女は笑顔を浮かべて、満足そうに言ったのだ。わしの眼に何も かったのじゃ。それなのに、ローラのいる場所だけに風が吹きつけ 写るはすがなかった。 「。フロッコリミー ていたのじゃ。 これ、日本の折紙で作った鶴よ」 って何だい」 少女が折鶴から手を離した。しかし、わしの折った鶴は、そのま「ローラ。・フロッコリミー ローラは眠を細く開き、わしにむかって答えた。 ま宙に浮かんでいたのじゃ。 「わたしの、おともだち。小さい頃から、いつも一緒に遊んでいる 折鶴はそのまま屋根の高さほどまで上昇し、両翼をはばたかせな の」 がらその位置に静止しおった。 「ローラが、折鶴を浮揚させているのかい」 確かにローラの他に何かがいるのじゃった。正体は、はっきり何 わしは、その現象のあまりの見事さに驚きながら少女にたずねたとは言えないが、ポルターガイストでもなく、ローラの観念動力で のだ。 もなく、 一つの意味を持った存在がローラのそばにいるのじゃっ 「んーん。・フロッコリミーよ。そこにいるじゃない」 「どんな、おともだちなんだい」 わしの眼には何も見えなかった。たぶん怪訝そうな表情を浮かべ ておったのじやろう。ローラは徴笑んで、中空に浮かんだ折鶴にむ「ここにいるじゃない。鬼ごっこしたり、かくれん・ほしたり、そん かって叫んだ。 なおともだちよ」 「。フロッコリミー 。降りておいで。お客さんだから」 折鶴はくるくると回転を続けておった。折鶴自身に生命を吹きこ 折鶴が、わしにむかって急降下してきたのじゃ。それから鼻先二まれたようにだ。 「・フロッコリミーが、そろそろ退屈したみたい。もう帰るって言っ 2 数十センチのところでびたりと静止した。 「フロッコリミー お客さんにごあいさつなさい」 てる」

2. SFマガジン 1980年2月号

は無数の生命体とし ディスポーザーで粉砕され、・フロッコリミー だから、再びドームが静止して将校や博士たち、それにシェルター の所員たちが小躍りして・フラボーを叫びだしたとき、わしの心はそて蘇っておったのじゃ。それが何故わかったかというのかね。 の子供たちの一匹一匹すつが、折鶴を身体に入れ の遺体プロッコリミー こにはなかったのじゃ。気体怪物 : : : いや、プロッコリミー に覆われて窒息しかけたローラのイメージだけがわしの脳裏に広がて、てんでに飛ばしておったからじゃよ。千羽鶴のつむじ風じゃ。 「プロッコリミー だめよ。ほら、もっとお行儀よくしなさい」 っていたからだ。 ドームの中で明るい声をあげて笑うローラを将校や科学者たちは 将校たちは勝利に酔いしれていた。報道管制が解かれたのじやろ 。待機していた記者らしい連中がカメラをとりだしフラッシ、をあっけにとられたようにいつまでも眺めておったもんじゃ。 たきはじめたのじゃ。奴らはローラのことなそ、眼中にもないよう の子供たちがいまどうしているか すじゃった。 それでローラとプロッコリミー コントロール・カ わしがシェルターを出るために部屋のドアを開けようと必死にな というとな。「ローラ・スコイネルのウェザー っておったときじゃ。 ンパニイ」という会社を設立してだな。ほらたとえば日本に台風が 誰かがやっと気がっきおった。 直撃しようとするときなそ、政府がこの会社に依頼するわけじゃ。 「あの、怪獣退治のヒロインはどうした」 の成長した子供たちが何匹か出張してきて進 オ - るとフロッコリミー ドーム内の映像は土煙だけで、何も映っていなかった。それから路を変更させたりするわけじゃ。 ( リケーン、サイクロンなんでも 皆は慌てて一斉にシ = ルターを飛びだした有様じゃ。 ござれらしくてな。かなり儲かっとるらしいそ。もちろん、社長は の子供たちは皆この会 ドームの外から、口々にローラ・スコイネルの名前を呼んだのじローラ・スコイネルじゃが、・フロッコリミー 社の株をそれそれ持っているということだ。 ローラの声がした。 誰か聞いたことがあるかね。優良会社の株を持っているつむじ風 の話なんそを : ・ 「私は大丈夫よ」 の子供たちも幸福 を殺されて悲 ま、じやから、今ではローラも・フロッコリミー 意外な事に、明るい声がしたのじゃ。・フロッコリミー 嘆にくれているのではないかと予想していたにもかかわらず : に暮らしているのじゃよ。 ディスポ】ザーになった部分を開き、わしたちは土煙がおさまる わしかね。わしは、やはり、その会社に高給で勤めさせてもらっ コントロール・カンパニー」取締役折 のを待った。 ている。肩書は「ウェザー そこにわしたちは見たのじゃった。 紙部長となっている。いつでも遊びにきなさい。・フロッコリミーの 9- 埃だらけになったローラにじゃれついている何百というプロッコ子供たちとローラに折紙を折ってやっておるところを見せてあげる から。 の子供たちの姿を。

3. SFマガジン 1980年2月号

ーストが発生する前提として、雷雲た心地はありませんでしたね」 ケースがあるのだ。ダウン・ そのテレビのスイッチを消すと、ローラの入院している聖ジェー が存在しなければならない。晴天の日に発生したことについては、 ムズ病院へむかったのだ。間違いない。あれは・フロッコリミーだと その仮説では何も触れられてはおらず口をつぐんでいるのじゃっ な。タクシーの中でわしは足踏みしておった。病院へ着いたらロー ラ・スコイネルを連れてどこか : : : 公的機関にとびこむつもりじゃ これは・フロッコリミー ではないかと考えたのだ。 ・フロッコリミーがローラ・スコイネルを探しているのだ。離れば った。とにかく、笑われようが、狂人扱いされようが、これ以上プ ~ ( しかない。そう思っ による被害を増加させるわけこよ、 なれになった友人を求めてあてもなく飛行機を覗きこんでいるのでロッコリミー はないかと : たのじゃった。 しかし、その証拠も何もなかったから、わしはなすすべがなかつ病室で、ローラ・スコイネルは屈強そうな男たちに囲まれてい たのじゃ。へたに話をその筋に持ちこもうものなら気ちがい扱いさた。ローラは服を着ており、今にもどこかへ護送されていこうとし れるのがオチだからなあ。「ローラ・スコイネルの子供時代からのているかのようだった。 友達で、気体生物の・フロッコリミーというのがいるんです。その気「ローラ。どこかへ出かけるのか」 わしは、焦ってそう叫んだ。 体生物がローラを探しているから飛行機が墜落するのです」わかっ 「やはり、・フロッコリミー だ。被害はますます拡大するおそれがあ とったのじゃ。そのとき、わしが、どういう視線をうけるかをな。 やつらはこう思うじやろう。「ほう、超常現象の研究家が気体怪物るんだ」 の警報にきた。はてさて、どうやれば興奮させずにおひきとり願え私の言葉にローラ・スコイネルは弱々しくうなずいただけだっ」 るものかな」 そして、ついに、例の下降噴流にでくわして奇跡的に着陸に成功誰かが、わしの腕を握りおった。強大な力で抗いようのないもの ・こっこ。 した。ハイロットがテレビに登場したのじゃった。 。ハイロットはその時の気持を、地獄の渦から脱けだした恐怖 : 「あなたもプロッコリミーのことを御存知ですな。御同行頂いて御 と表現しておった。 協力願いたいのですが」 連行されたのは軍の施設の某所だったと思う。否応もなかった。 「突然、機体が震動しはじめたのですよ。飛行機全体が何かにすっ わしたちは映写室へ案内された。白衣を着た老人たちが数人、早 。それから、 ぼりおおわれて揺さぶりをかけられてるみたいで : 不思議なんですよ。窓の外に、紙で作った鳥のようなものが見えまくも席に座っていた。わしとローラは同行した軍の将校から、その した。ほら日本人がやる折紙ってやつですよ。あれが浮かんで窓の老人たちの紹介を受けた。流体力学とか、宇宙生物学とか、気象学 外にいたんです。地上数メートルで機体をたてなおしたときは生きとかの権成たちばかりだったのだが、いちいち名前までは覚えてお 224

4. SFマガジン 1980年2月号

ローラはわしの顔をじっと凝視した。それから、ゆっくりうなず わしは、あっけにとられていただけじゃった。ただ、うなすいて いた。それが失敗だったと思う。 「じゃあ、 わ。・フロッコリミー お帰りなさい。折鶴もですっ 「鶴の折り方を教えてくれましたわね」 ししわ。私、また、おじさんに折り方を教わるから」 彼女は、わしのことを思いだしてくれたんじゃ。 折鶴はわしたちを残して遠去かっていった。驚いたのが、草原に のことを話しておられた。 「そうです。あのときも・フロッコリミー 入っていく折鶴の周辺の丈の高い草が左右に薙倒されていくことじまだ、あの時ローラさんは幼女でしたから、はっきりしたことが、 やった。何か、そこに物体が存在し、草を押しわけていくかのようあなたの口から聞くことができなかった。プロッコリミーとは、 に、。ほっかり空間が存在していることがわかるのじゃ。 ったい何んなのですか」 ″ローラのおともだ ローラはわしの質問に、・ とう答えるべきなのか懸命に言葉を選ん 透明な何か。形はあるが何か目に見えない でいる様子じゃった。 ちんが草原を渡って帰っていくのだった。 わしは、その時のことを記事にしたが、同時に載せた写真もロー 「プロッコリミーが私を助けてくれたのです。あれは、飛行機がど ラと宙に浮かんだ折鶴という迫力のないものじゃった。その記事 : 一よんなものかということを全然知らなかった。・フロッコリミーが飛行 なんの反響もよばなかった。数日後に取材したネ・ハダ州の円盤同乗機を壊したのは、私を助けだすためだったのです。分解した飛行機 青年の胡散くさい独占インタヴ = ーのほうが、よほど評判になったの中から私は救いあげられました。そのまま、そっと地上まで運ん ものたよ。 でくれたのです。 ローラ・スコイネルは頭のよい娘じゃった。わしが教える折紙を フロッコリミー は生物なんです。子供のころからずっと一緒に遊 すぐに覚えておったほどじやからな。ただ、帰国してからも、あのんでいました。 不思議なプロッコリミー の存在は頭のすみにひっかかっておったの初めて・フロッコリミーと会ったのは、いつだったのでしようか。 じゃよ。 おじさんに会う数年前だったはずです。窓から部屋の : : : 私の部屋 そして十数年後のローラ・スコイネルとの不思議な再会で記憶をの中に入ってきたんです。名前も、そのとき私がつけました。その 蘇えらせたというわけじゃ。 ころは大きさも十センチ立方くらいだったでしようか。便せんを持 べッドに腰をおろしたローラ・スコイネルの瞳は、あのコロラド ちあげるのが最大の力だったみたいでしたから。おじさんにプロッ コリ . 、、、 1 ー の田舎で会った少女と同じものだったのだ。何故もっと早く気がっ を紹介したときが一メートル立方くらいには成長していま かなかったのじやろうと自分でも不思議なほどだった。 した。 あれは気体生物なんだと思います。でも、いまでも私のおともだ 「昔、わたしは、あなたにお会いしたことがありますよ。憶えてお られませんか」 ちであることには変りはないんです。なぜ、あんな生物が存在する 222

5. SFマガジン 1980年2月号

にやらせなければならないのですか。それで確実にやれる保証はあ を殺すことについてです。このままでは 「気体怪物プロッコリミー るのですか」 被害は拡大するばかりです」 0 ーラはゆ 0 くりとうなずいた。もう、彼女は涙を流しておら「はい。彼女でなければできないのです。プ 0 ' = リミーはス スコイネルを探しているのですから。彼女だから確実に呼びよせる ず、決意をかためたように見えたのじゃ。 のです。他のエサでは無意味なのですよ : : : 失礼」 「わかりました。御協力します」 わしが今度は叫びだそうとしたときだった。 の殺害方法につい 学者たちが入替りに、次々と、プロッコリミー ての発表を開始した。われわれが、ここ〈呼ばれるまでも気体生物「お引受けします」 ローラはしつかりした口調で言いおった。たいした女しゃよ。 をやつつけるためのいろんな手法がとられておるようじゃったが、 ロサンゼルスの郊外、砂漠地帯にドームはたてられておった。ド いずれも失敗に終ったものらしかった。ョウ化銀を注入して、凝結 ームの表面は四十センチ径の孔が無数にあいていた。その表面と一一 核を作り、消滅させようという計画や、冷却化して機動力を失くさ せようという案はいずれも、不可能な机上たけのアイデアに終 0 て重にもう一枚の金属綱が内部に仕掛けられておるのじゃ。簡単に、 そういうもののこれがなかなか巨大でな。急々ながら、よくも、こ しまっていた。 れだけの巨大な構造物が建造できたと感嘆したものじゃった。 軍が持っていたアイデアは次のようなものだったのじゃ。 . ローラはそのドームの内部に入っていった。ドームのなかから、 。フロッコリミ 1 が先ほどの映画にうつった町を襲ったとき、一つ を呼び寄せようというのじゃ。 の奇妙な行動が目撃されていた。プラッディ・タウンの中央に三十プロッコリミー わしらは、ドームの脇の壕の中の部屋から外部を見ることになっ は、ビルの メートルのビルが建っていたのだが、・フロッコリミー 右側だけを通過していたのしや「た。それによる一 0 の仮説がたてた。本来なら、この時点で、奴らにと 0 てわしは何の価値も持たな いはずじゃったのに、同行させてくれたのは、まだ気体生物の存在 られておった。気体生物の組織は単細胞ではないかというのであっ をばらばらに切断すれば、気体生物はを一般に発表していなか 0 たからだと思う。 た。つまり、フ卩ッコリミー 奴らによれば、ローラは、精神の不可知のカでプロッコリミーに 消減させうるのではないかというのじゃった。 「軍は某所にスタジア、の数倍ほどの大きさを持「たデ→スポーザ自分のいどころを知らせることができるはずだというのじゃ 0 た。 は現在のところカリフォルニア州でも限 ーを完成しているのです。敷地の上空を二枚のすのこ状の金属板で気体生物プロッ 0 リミー 覆い、気体怪物をおびき寄せ、分解するのです。〔ーラさんには、定された地域しか徘徊しないから、この地点〈や 0 てくる確率は非 常に高いというのじゃ。わしとローラ・ス「イネルはすべてのお膳 を呼ぶ役をやっていただきます」 その中に入ってプロッコリミー 立が終了してから連れてこられたに違いないのだ。 わしは立上った。 「そんな、残酷な : : : それにかなり危険ですよ。そんなことを彼女数時間が過ぎた。 227

6. SFマガジン 1980年2月号

ここへおいで」 わしは、東亜の果てから、あなたを取材にきたのですと、ていね「プロッコリミー。 その言葉が、古い記憶の中から掘りだされていた。それは、その 2 いに自己紹介した。 2 時点より十年もさかの・ほることになる。 「よく助かりましたね . コロラドの念カ少女。 そうわしが言うと、ローラは一つ大きくうなずいた。瞳に涙を溢 わしは、そんな話を聞いてコロラド州へ取材へ行ったことがあっ れんばかりに溜めていたから、単純にわしは、自分が命拾いしたこ とに対しての涙だろうと思っていたのだ。 テレキネシス 「プロッコリミー のせいです。私が、ロサンジェルスの大学に行く 観念動力を持っ少女がいるという話だった。小石を宙に浮かべ、 ことを知って追っかけてきたんです」 池の水を吸いあげることが可能だという少女。何万人かのわしの読 わしは、最初、彼女が質問の意味をとり違えているのではないか者の好奇心を満足させることができるという単純な理由で、日本か と思ったほどじゃ。 らはるばるコロラドへやってきたのだった。 「・フロッコリミー はカの加減ができないんです。じゃれついてきた 長い超常現象の取材生活のうち、本当にこれは妻い現象だと恐れ の力は強大すぎ だけかもしれない。でも、今しや、プロッコリミー いったことは数えるほどしかなかった。 るんです。三百人もの乗客を巻きそえにしてしまって : : : 」 コロラド州の小さな町、フェアリー・ ス。ヒリット・シティの少女 わしは、彼女が自分一人生存できたことに罪の意識を抱いているローラのがその一つだった。 のではないか : : : そう単純に理解していた。とにかく、わしの、そ母親のスカートの陰に隠れていたローラは仲々わしに馴染んでく の時の興味の焦点は彼女がどうやって八千メートルの上空から無事れようとはしなかった。八歳の少女は繊細な神経でわしの価値判断 に生還できたかということじゃった。 に奮闘しとったのじやろうな。わしは超能力少女ローラの歓心を買 うために、、 しろいろなことをやって見せたものじゃ。 「飛行機が空中分解したときのことを憶えておられますか。私は : 母親は、ローラが神経過敏な子でカンが強くて困るとしきりに言 ス・ロ 1 ラ。そのときの状況を詳しくうかがいたいのですが」 っておったよ。 わしは、自分の質問の内容がローラに残酷に感じられるのではな ようやく、ローラがなついてくれたのは、わしが折紙で鶴を折っ いかと恐れつつ口にしていたのだ。だが、ローラは歯切れのいい口 調で短く答えてくれた。 てやってからのことだ。少女は、ようやく、わしの手を引いて家の 「プロッコリミーが窓の外から、私に話しかけたんです。私がお帰裏の草原に連れて行ってくれたのだ。】 りなさいといったら、あんなことをやって」 「小石を持ちあげたりしてくれるかい。 ローラの手を使ったりしな いで」 ・フロッコリミーだ。そうだ、わしは、この少女に以前会ったこと ローラは一 = ロった。 がある。その時思いだしていた。

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ていた」 らんよ。 ローラは、そのとき、やっと寂しいながらも笑顔をとりもどした ローラは、わしにそっと囁いた。 のじゃった。 のことをなんとか助けたいんです」 「フロッコリミー わしは、心配する必要はないと、ロ 1 ラの背中を軽くたたいてや「おそわ 0 た折鶴はお気にいりでしたわ。毎日、私に折鶴をせがん でましたから。私がカリフォルニアへ発つ日には、自分で折ってい ったのだが、わしとしても何の裏付けもないものじゃった。 に。フレゼントすると、家の周囲をはしや」 を殺そうとしている。そして私にそた千羽鶴を・フロッコリミー 「あの人たちは・フロッコリミー いで飛びまわっていたほどですから」 の計画に協力して欲しいと頼んでいるのです。私にはできません。 あの人たちにと 0 ては怪物でも私にと 0 ては子供の頃からの遊び相わしたちは顔を見あわせて微笑みあ 0 たのじゃ 0 た。プロ ' 「リ ミーという気体怪物も、そういう常識はずれの形態を持たなけれ は、まだ幼児のままなんです。単 手なのですから。・フロッコリミー こフロッコリミー は私と遊びたく 0 て、私のいどころを探しているば、憎めない存在だ 0 たに違いないという共感がわしたちの間に生 まれたからじゃった。 だけにすぎないのです」 一人の将校がわしたちの前で言った。 ローラは涙を拭こうともしなかった。わしは彼女に何もカづけて 「お疲れのところ、誠に申しわけありませんが、これからフィルム やれる言葉を持たなかった。話題を変えることくらいが関の山たっ こ 0 による被害記録を御覧になっていただきます。これが、ローラさ ん。あなたの言う、おともだちの・フロッコリミーがやってきたこと 「プロッコリミー は、私の教えた折鶴が好きだったみたいですね。 ・フロッコリミー を目撃した男が、折鶴を一緒に見たとテレビで話しです。いま、あなたのおともだちが現実にどんな事件を起こしてい 庫 文 ワ カ ャ イラスト / 安彦良和ノ 高千穂遙 ダー一ペアの大冒険 〈ダーティベア・シリーズ①〉犯罪トラコンの美女一一人組ュリ 絶とケイが、愛機ラブリーエンゼルを駆り、悪漢相手に大活躍 ! べアの大 養穗を 225

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ドーム内の映像に変化が起ったのじゃ。受像器のローラが立上っ ていた。 「フロッコリミー は私の仲間をたくさん悲しませてるわ。ここへ来 「プロッコリミー 2 ね。わたしはここよ」 てはいけなかったの。私のあとを追ってきてはいけなかったの。テ 同時に、通信士が将校に情報を手渡した。将校は、も「たいをつ ンーの田舎へこのまま帰りなさい」 けながら発表した。 すると、すねるように、気体塊がドームのまわりを跳びはねた。 「うまくい「ております。気体生命が、こちらにむか 0 て直進して「風速六十メートルです」 いるようです。この速度なら : : : 十分後にはその姿を現わすでしょ 観測員の一人が叫んでおったよ。 う。エサにかかりおったのです」 「だめよ。私は、ここで勉強するの。何年かしたら帰ってくるか この壕の中のシ = ルターから、ドームの仕掛けをすべて操作するら」 ことができるようになっておるのじゃ。他の受像器の一つに砂漠の 砂塵が消えたのじゃ。カメラを上空に向けて移動させると、そこ 遠景が写っていた。将校はそれを指していた。 には、山々と草原が浮かび上っておった。・フロッコリミーが自分 「こちらの方角から、やってくる」 の身体で蜃気楼を作り、ディ 、ハーの景観を創造して、ローラにデン そのとおりじゃっこ。 ーへ一緒に帰ろうと説得していたのじゃ。 砂煙が舞上り、得体のしれん何かがものすごい速度で突進してく「だめよ。・フ。 , 0 リミー。 そりゃあ、私だっていつもデンス るのじゃった。巨大な = ネルギーの塊といえばいいのじやろうか。 帰りたいわ。でも、私は私の生きる道があるんだし。お願い、・フい その存在の後方のものは、なにも見えない。視野にあるのは、猛り ッコリ . 、、、 , ー 私の言うことを聞いて。でないとあなたは : 狂う噴流そのものたった。 私をここから救けだすなんて考えないで。これ以上近寄ったら : : : 」 砂塵が停止した。 トームカフロッコリミー の身体で覆われおったのじゃ。・フロッコ 他の受像器のローラが叫んた。 リミーがローラ・スコイネルを助けようとして。 「プロッコリミーきたのね」 「いまだ」 噴流は歓喜してドームの蔔こ 月冫いた。砂塵はまさしく蠕動しておっ 将校が叫びおった。一 たのじゃ。 すると、凄い勢いでドームが回転しはじめたのじゃ。ド】ム内は 「だめ : : : 。フロッコリミー。 それ以上この中に近づかないで。お頁 原土埃だらけでローラがどうなっておるのかも全然ようすがめな いがあるの」 、。ドームの全景の映像では、気体怪物がドーム内へ確実に吸いこ 将校が、ローラの言葉を聞いて歯を剥きだし唸 0 た。それから、 まれていくのを見ることができたのじゃ。 いつでもディスポーザを回転できるようにと指示をくりかえしてお わしは、ローラがどうなったのか心配で心配でたまらなかった。

9. SFマガジン 1980年2月号

のかとか、学問的なことはわかりませんが、私たち同様に、・フロッ あったが、これは例外中の例外じやろう。ラッキー・ガール / ロー コリ . 、、、 1 ー ー的記事のほうが、どれほど ラの理想の男性像は ? というミーハ は考えることができるんです。それに私にも話しかけてく れます。他の人たちに意志を伝えようとしたことはないようでした多かったかしれない。 けれど、それは私と話をしていれば他の人と意志を通じあわせる必それは同時に、わしは奇妙なことに気がついた。飛行機の墜落事 要性は何もないからたと思いますわ。プロッコリミーが何を食べて故に関する報道が異常に多いように思えてきたのだ。最初、単純に いるかとか、何時の時代からそんな生物が発生したのかとか、私にアメリカというのは飛行機事故が発生しやすい国なのかと考えてお は興味はありません。でも、あれの知能はまだ八歳のころの私と同ったら違うらしい。それも、最近になって急増しておるということ 程度なんです。まだ、私を慕ってくれています。でも、悪気がなかじゃった。そして、事故発生がカリフォルニア州に集中しているの ったにしろ、あんな事故をびきおこしてしまって : : : 」 わしは、まだ信しられなかった。気体生物と言われても、その概その事故ケース群には一つの暗合が存在するような気がしたのし 念がイメージとしてびんと浮かんでこないのた。 「フロッコリミー は成長するのですか」 無風状態に近い状況で、すべての飛行機が着陸体勢に入る前後に 「ええ : イ ( ーから出発するまえ、最後に会ったときは四十地上に激突しているのだ。ほ・ほ同時刻に着陸したどの飛行機も危険 一刀メ 1 ー , いレ ノ立方ほどに成長してました」 を訴えていないのに : そのとき、わしは退室を命ぜられたんじゃ。婦長らしいのが来て フライトレコーダーの記録によれば、機体は、強い下降流を受け な。面会時間が終了したことを告げやがった。抗議は聞き入れられて瞬間的に地上にたたきつけられていたのじゃった。 よ、つこ。 ュ / 、カュ / これだけ事故が重なると、一つの見解が定着するようになるもの しかたなく病室を出ると、数人の男たちがローラの部屋へ入ってナ ・こ。学者たちの想像力から生みだされた仮説は、「下降噴流」のせ いということだった。 いったのだ。事故調査団の人々だと看護婦の一人に聞き憤慨したの じゃっこ。 ダウン・ ーストというのは雷雲が空からなだれ落ちてくる雲の それからの数日間、相も変らす新聞紙上ではローラ・スコイネル崩壊現象と考えられている。この下降流は直径が一、二キロメート の奇跡の生還の仮説やら、ローラの近況報告、彼女の。フロフィルな ルほどしかなく、雷雲が急成長して噴出するものだ。周囲の数倍の どでにぎやかなものだった。 ーストによる被害で森林の樹木をな 強風となる。実際のダウン・ 力といって、・フロッコリミー の存在を指摘した記事は皆無で、わぎ倒したり、家屋を倒壊させる被害を見ることができるから、なる ほど学者の仮説で世間の人たちは納得しているようだった。 ずかに三流週刊紙で、ローラの幼女時代の超能力ぶりを記事にした だが、ひっかかるのが、晴天の日にもそういう事故が起っている ものが一つあり、ローラは念力で助かったのだと結んでいるものが 0 - 」 0 グウン・ 223