立レヒ三ウ ・ライス・ どちらかといえばリリカルな、ファンタであるはすの川又千秋が、評論とはまつれは、たとえばエドガー ジとでもいうべきタイプの作品か たく異なる創作の論理というものを、徹ウズがかりにどんな悲惨な結末を描こう らだった。もちろん、それらの作品をそ底的に押し進めたのが「天界の狂戦士」としても、決してできない種類のことな うしたタイ。フに決めつけてしまうのは乱 だったのではないかということだ。だのだ。 暴なのだが、少なくとも、現在発表してとすれば、川又千秋の作品の変化が、洗そして、さらに言うなら、川又千秋の もともとの小説から、荒々しい小説へと いる一連の作品、ことに「天界の狂戦練から荒々しさへと向かっている、とい 士」と区別をつけるという意味で間違っう理由もきわめて容易にうなづけるだろ変貌をとげるというきわめてユニークな てはいないだろう。 作業 ( また、きわめて知的な作業でもあ ともかく、そうした傾向の作品を書い 主人公が復讐心を抱くまでの過程がきる ) は、「天界の狂戦士」でひとつの典 ていた川又千秋たったが、それ以前かわめてストレ 1 トに描かれ、そしてそれ型を得たわけだが、ここから、再び彼独 ら、エドガー・ライス・ ' ハロウズの作ロ が主人公自身の口から生々しく語られ自の小説を作りあげる方向、具体的には を、前述の「へ : ト」に対する「内臓のる。そして、その復讐心は、徹底的な破「反在士の鏡」のような作品の傾向を押 小説」として高く評価していた。 壊をもたらす能力、すなわち狼男の変身し進めてほしい、という気がする。 ( 『天 さて、その初期の川又千秋の作品でのような仕掛けによって爆発する。ヤク界の狂戦士』 / 著者Ⅱ川又千秋 / 新書判 は、言葉の選び方のひとつひとつが非常ザ映画のパターンとも似ているし、とも / 200 頁 / 600 円 / 双葉社 ) に繊細で、しかもたえず独特な表現を試 かく一番感情移人のしやすいパターンで みているようなふしがあった。ところある。 が、「天界の狂戦士」ではそれがまった さらに、それがまったくソフィスティ く逆転してしまっている。 ケートされることなしに、いや、かえっ ことに言葉づかいは、ことさらに類型て生のままで出されている。ふつうな を目指している感があり、さらにその言ら、類型的と思われそうなパターンをい 葉の類型化によって、フレーズ全体、ひかに工夫によってそれらしくなくすると・・【ー、鷙 いては登場人物のキャラクター 行動ま ころだが、かえって徹底させている。だ でもが類型化している。 : 、結末に至ってやはり川又千秋はシン そこで感じたのは、評論家から作家に。フルには「内臓的」になれずに終る。最 なってきたという、きわめて知的な作家後に実に皮肉な結末が描かれており、こ
S レヒュウ この威勢のいい発言は、作家たち がこれまでセックスをテーマとする にとり組まなかった理由の一部は、アメ リカ社会の清教徒的伝統にある、という 文章の後にみられる。こういったことを 森下一仁 いうところをみると、エルダーという人 は、観においても、あまり保守的な 原題を″ェロス・イン・オービット″ 意見の持ち主ではありえないようだ。こ という、セックスをテーマとした短篇ばのようなアンソロジーを出そうとするこ かりを集めたオリジナル・アンソロジと自体が ( まあ、商売上、目新しいセー エルダーはこれだけしか書いてない 原著はアメリカでオリジナル・アン ルス・ポイントを必要としたということ が、おそらく彼の意図に最も近かったの ソロジーが竸って出版されるようになつもあるのだろうが ) 、「過激好み」とい は、冒頭に置かれた・フライアントの『二 た頃 ( 一九七三年 ) に出ている。 った一面をのそかせているように思える ・四六五九三』という作品だと思われ 感想を先にいってしまうと、そんなに が、集めた作品も ( 当時の ) 新しいタイ ズバぬけたアンソロジーとよ、 プのを指向しているという印象を受る。コ。ヒ 1 ライターの男が、名も知らぬ が、近頃のアメリカはどんなふうかけた。日ぼしい収録作家の名を書いてみ科学者の女と愛をむすぶ場面を軸に、男 な、といったことを知るにはよさそうなると、昨年、今年とネビ、ラ賞を授賞しの独白や広告のコビーを散りばめた技巧 本、といったところか。 ″ニュ的な小品で、ストーリー を排除し、男の たエドワード・・フライアント、 シルヴァーく ーグ、『アポロの彼意識内容を浮かびあがらせようとしてい 編者のジョセフ・エルダーが書いた文 ・ Z ・マルツ・ハーグなど。 る。マルッパーグの作品も独白体で、宇 方』の・ハ 章を少しみてみよう ( 訳は風見潤氏 ) 。 宙飛行士の性的妄想 ( ? ) を描く。ゴ】 編者は彼らに何を書かせたか ドン・エクランドの表題作は、人気者の ・ : すでにわれわれも気づいている とおり、攻撃をしかけて、破壊すべ ・ : 作家たちは、主流文学のように性優 ( これはたった今、私が作った言 きなのは、伝統というやつなのであ は扱えないセックスの諸相を論じる葉。セックスを演ずる者というほどの意 る。 味です ) となったアンドロイドの内面の ようにともとめられた。 ジョセフ・エルダー編 『ラブメイカー』 , ラフメイカー ・独セ 1 ・エルダー ・を久を = ら・ゞノいはい 円 2
もかくほめて」おけば しいと思うのだ というものから、その連鎖について書か が、亀和田武は、だからこそ「川又千秋 9 れ、その連鎖の中に読者をまきこんでい とその作品を本格的に論じていく」とい めくっても、めくっても、そこにま た新らしい仮面が現われてくるのだ。常 亀和田武がそういう時、それは亀和田 に、語ろうとする者を裏切り続ける言語 武の解説に対する基本的な考え方ももち の性質を、レムは、逆手にとっている。 三井継ろんあるのだろうが、それと同時に、 はたして、レムが、その企てに成功して レ 又千秋自身に本格的に論じたいと思わせ いるのか、どうかは、この作品を何度も 「天界の狂戦士」は、いわゆる娯楽小説る要素があるのではないだろうか ? 読み直し、考えてみなければ何とも言え ケージもかけ値なし たとえば、川又千秋はある座談会で ないのだが ( もちろん、考えたってわかであり、また、パッ 「ぼくはプロットにはまったく興味はな らないかもしれないが ) 、この段階でも、の娯楽小説として作られている。判型に しろ、装幀にしろ、もっともらしさとい い」、と発言し、まだ評論活動中は、島 ・ほくはこの作品を傑作としておきたい。 ランスに欠けるうのはまったくない。ところが、巻末に尾敏雄、・ホリス・ヴィアン、そしてエド 全体として、少々、・ハ ー・ライス ハロウズを ( ウィリアム が、それとても、一つの意図があるようは十二頁に及ぶ亀和田武による解説が付ガ されている。 ハロウズも ) 並べて論じている。 に思える。 そしてまた、川又千秋は小説を二つに それにしても、この作品が、もう二十本来、解説というものは、解説がない 年も前に書かれ、今、訳されたというのとわからないもののために書かれるもの分類し、「ヘッドの小説」と「内臓の小 は、何とも、くやしいことだ。 であると思う。しかし、娯楽小説に解説説」という言葉で説明している。これだ 行に、創元の文庫に「東欧傑作が書かれるのは、特に最近の流行であけの餌をばらまかれて、おざなりの解説 選」が入った。解説、作品、共に、。ほく り、それについては解説の冒頭の部分でですます、ということはむずかしいたろ には勉強になった。このレムの作品の訳も触れられている。また、ここで亀和田う。 そして、「天界の狂戦士」は、その川 者でもあり、創元の編者でもある深見弾武は、解説が「その本を買うか買わない 又千秋の作品の中でも、格別にそうした 氏の努力に敬意を表したいと思う。 ( 『浴 かの決定要因」になっている、としてい 「評論意欲」とでもいう・ヘきものを刺激 槽で発見された日記』 / 著者Ⅱスタニスる。 ワフ・レム / 訳者Ⅱ深見弾 / 四六判上製 ただ、だとしたら解説は宣伝コビーとする作品なのだ。 / 265 頁 / 箪 1200 / 集英社 ) 川又千秋の作家としてのスタートは、 同様に考えて、悪い言い方をすれば「と 川又千秋著 『天界の狂戦士』
SF スキャナー 今年いちばんの話題作 ( といっても他にいろ いろあるから、そのうちの一つとしよう ) フレ デリック・ポールの『ゲイトウェイ』はもう読 ーゴー賞や まれたたろうか ? やつばり、ヒュ ネビ、ラ賞を取っただけあるって ? それと も、思ったよりつまらなかった 2 ・ まあ、それはあとでのべるとして、このまえ からポールに関する記事をファンジンや何かで 探していたら、意外なめつけものをした。『ゲ イトウェイ』には、あのほかに前篇と結末がべ つにちゃんと存在するのである。 ( 続篇じゃな いよ。正真正銘の結末。ちょっと信じられない でしよう ? ) このうち前篇のほうは、番外篇と いってもいい感じで本筋とは直接関係がない。 一九七一一年のイフ誌に発表された「金星の商 人」 "The Merchants of Venus" がそれで、 金星の地下で発見された謎の異星人ヒーチーの 遺物を掘りだそうというのがメイン・ストーリ ここからあのスゴイ宇宙 イ。ご承知のように、 船が続々と出てきて『ゲイトウェイ』の中心。フ ロットにつながるわけだ。してみると、ポール は発端のアイデアはすでに『ゲイトウェイ』を 書く五年前にはつかんでいた、ということにな る。作家の作品完成までの期間がわかるよう で、なかなかおもしろい さて、それよりも問題になるのは″結末″ だ。これは、ポールがギャラクシイ誌七七年八 月号に「『ゲイトウェイ』の補遺」と題して書 いたエッセイに収録されている。もっとも、こ こには、『ゲイトウェイ』完成までの逸話もい ろいろとつまっていて楽しい。たとえば、あの 作品を特徴づけているさまざまな断片の挿入 フレデリック。ポールの「 JEM 」は傑作だア ! 安田均 は、ポールが似たものの頻出するのをさけるた め、タイ。フライターを肌身はなさず世界中もち 歩き、そうしたいろんな地方の刺激を受けて出 てきたものらしい。また、作者によれば、この 作品は″一つの世界全体を、自分のカの及ぶ限 り完全につくり上げたいという気もちから出た 実験″だそうで、その結果、逆に作品の中心と なるイン。ハクトが何なのか終り近くでわからな くなり、結末には大いに悩んだという。つま り、それはプラック・ホール自体の色や恐怖な のか、あるいはロビネット・プロードへッドの 個人的体験なのか、それともコン。ヒ = ータ心理 分析医ジークフリートなのか、というようなこ とである。 結局、第一稿を全面的に書きなおし、それに 何度も手を入れた。そして、ようやく完成とい うときになって、やつばり思い直して最後の短 い章を落してしまった、というのが事実らし 。ところが、いざ本が出版されてみると、好 意的な書評がほとんどだったものの、そのうち のいくつかには、結末の部分があいまいだと か、不満だとか書かれている。よし、それなら 原案がどうだったのか見せてやろうじゃない か、というものだ。 いかにもファン出身の作家らしいサービスぶ りだが、ここでそれを訳出してみた。 ( 矢野さ んの名訳に比べたらひどいものだろうが、この さいお許し願おう ) ・ハプルの下での午後おそくの陽射しは、暖
20n Wings of Song" が一九八〇年度ジ生涯功績賞ウィリアム・シャトナーとジー ・ホワイト、ヘヴィー・メタルを去る ョン・・キャンベル記念賞を受賞した。 ン・ロッデンペリイ 昨年夏、″アダルト・イラストレイティッ 一一席はスキャナーでも紹介されたジョン・ ・ギャラクシイ誌、ようやく再出発 ド・ファンタジイ・マガジン 4 「へヴィー クローリイの『エンジンサマー』、三席は メタル」の編集長に就任し、話題をまいたテ ・・・ハラードの最新作『夢幻会社』 "Unli- 「ガリレオ」に買いとられたギャラクシイ誌 ッド・ホワイトが、その座を追われてしまっ mited l)ream company" である。 が新会社からの第一号をようやく発行した。 た。原因は、経営側が彼の編集方針を嫌った このジョン・・キャンベル記念賞は、オこれが一九八〇年に入ってから初めて出るギ ールディスやハリスンの他、大学で講座ャラクシイ誌である。二月に出る予定が、財 「へヴィー ・メタル」誌はテッド・ホワイト を持っジェイムズ・・ガン、ロ・ハ ート・ス政難などの理由で延び延びになってきたらし が編集長となってから大幅に誌面構成が変わコ】ルズなどそうそうたる顔ぶれからなる選 った。小説の掲載をやめ、 0 ラムを大幅に取考委員会で決定されるもので、世界大会新ギャラクシイは以前のものよりも判型が り入れたのである。その 0 ラムも何人かのラで与えられるキャンベル新人賞とはま 0 たく大きく、七十一一ページで一ドル五十セント。 イターが、書評をしたり、ロックやアン違う賞である。 ( まぎらわしいが ) これまで表紙はなっかしの五〇年代ギャラクシイ風。 ダーグラウンド・コミックスについての記事の受賞作には・ ( リー・マルツ ' ( ーグの『アポ隔月刊の予定である。この号は部数が少な ロの彼方』などがある。 / を書いたりと幅の広いものであった。特に いそうなので、日本には人ってくるかどう の書評は、こちらにとっても興味ある内容 ・カ : ・映画賞 のものが多かった。その上、最近はメビウス ・作家ニュース やドリイエなど有名コミック・アーティス第七回映画賞 (Science Fiction Fi1m / トのインタビ = ーを載せるなど意欲的な試み Awa 「 d) がアメリカで決定した。受賞作を ジ日ン・ヴァーリイの短篇、「空襲」の映 を行なっていた。 あげてみる。 画化作品の脚本をヴァーリイ自身が完成し、 また、コミックの内容も、従来のアメリ 映画部門「エイリアン」 に渡した。この映画の題名は「ミレニ 力、フランスのものだけではなく、他国のコ ファンタジイ映画部門「ザ・マペット・ムアム」である。果してどうなりますか。 ミックを積極的に掲載していたようである。 ービー」 ( セサミ・ス トリートでおなじみ ジョーン・ヴィンジとジム・フレンケルの 例えば日本の風忍氏の作品なども載ってこち のマペット目あやつり人形が活躍する映結婚式は一一度行なわれたそうである。一回目 らでも評判となった。 画 ) は東海岸の友人たちを集め、二回めは西海岸 このように大胆な編集方針で非常に活気あホラー映画部門「ドラキ、ラ」 の友人たちを集めて。 る雑誌作りをして来たテッド・ホワイトだ最優秀主演男優ジョ 1 ジ 先月号のスキャナーで紹介された『モッキ が、どうやらそれが裏目に出てしまったよう 「ラヴ・アット・ファースト・・ハイト」 ング・ハード』のウォルター・テヴィスは、こ である。しばらくは編集のアドヴァイスをす最優秀主演女優メアリー・ スティーン・ハ の作品のテレビ化の脚本を完成したそうであ / ・ / るようだが、出来ればカム , クして欲しい ゲン【「タイム・アフター・タイム」 ( こる。これは今年初め放映されて好評だったル ところど。 の映画、見たいですねえ ) ・グインの『天のろくろ』のテレビ版と同様 最優秀助演男優アーティ・ジョン【「ラヴ三時間ものの特別番組となる。日本でも放映 ・ディッシュ、一九八 0 年度ジョン・・キ ・アット・ファースト・ハイト」 して欲しいものです。 ャンベル記念賞を受賞 最優秀助演女優ヴェロニカ・カートライト ( 島田武 ) トマス・・ディッシュの『歌の翼に』 「エイリアン」のランバート役 7 7
か、星新一氏がこんなことを言っておられます。 2 ⑩② 「最初にタイムマシンを登場させた作家よりも、 編集後記 二度目に登場させた作家のほうがえらい」 : : : ど 剛衂満 2 うです ? おわかりいただけますか。 一一三三 = 三 = 三三 = 三三 = 三三 = 三一三一三 = 三 = 三三一三一三 = 三一三 = 三一三一三一一三 - - = 引 たの修 ( ー■本誌十一月臨時増刊号は、おかげさまで非常に今月から、ついに萩尾望都氏の連載コミックの 物好評のようです。雑誌にしてはだいぶ高いものに開始です。今年は星雲賞も受賞、油の乗り切った なってしまいましたが、単行本四冊分の迫力で感があります。お楽しみください。 また、新連載といえば、會津信吾氏の「科学冒 回す。よろしくお願いします。 険時代」も始まりました。「新・こてん古 十二月号の後記に臨時増刊号のことを書くとい うのもちょっと変な話かもしれませんが、増刊号典」ともいうべきシリーズで、横田順彌氏の開拓 宏Ⅷ 号 回には後記がなかったということで、まあいいでししたジャンルがいかに発展していくものか、期待告月 田Ⅲ しましよう。 野 ところで、十二月号のほうですが、コンテ最後になりましたが、前号の予告にありました ( 号年 スト佳作の大原まり子さんは「一人で歩いていっ堀晃氏は、都合により次号の登場となりました。 なⅢ ( 今 ) ーた猫」と同じ設定の作品。なんとなくラリイ・ニ御諒承ください。 対Ⅷ ーヴンを思わせる壮大な未来史の一工。ヒソ 1 ドで第光瀬龍氏と萩尾望都氏の絶妙のコンビネ 1 ショ 殊Ⅷ す。従来女性のというと、なんとなくファンンで本誌連載中より熱狂的な反響を呼んだ「宇宙 特細 ータジーと見られがちでしたが、大原さんの場合は叙事詩」。遂に単行本として間もなくお目見えし 聞堂々たるです。もっとも実際、たとえば女流ます。上下二巻、サイズの大迫力はまた格 > 旅 プ一誌枚 ア本 8 作家のはしりともいえる故リイ・・フラケット 別。新たに二十四篇の詩とカットを加えて一層豪 > ズフ鋭 0 曲など、ス。ヘース・オ。ヘラ、冒険、といった傾華な内容になっています。連載中は単行本化の問 篇ムト新子 > 亜悟わ龍都夫 ( い合せが殺到し、終了後は読者からの矢の催促に 国向で、常に男まさりの作品を発表していました。 凹女性作家はファンタジー、というのは単なる思い矢だるまのようになっていた編集部も、責任を果 海 = リ井皿田連瀬連尾原 ぐジクく新く堀今岬く光 < 萩石Ⅷ たせた思いでホッとしています。乞う御期待 ! ー込みにすぎないことは確かなようです。 もちろん、新人ばかりが活躍しているわけでは眉村氏の「長い暁」。十一月下旬には刊行の予 ( 池 ) 定です。いましばらくお待ち下さい 岫ありません。豊田有恒氏の「黄金の方程式」、 旧かがでしたか。ことにこの作品については、あま■十一月臨時増刊号と十一一月号と続いたために、 ーり解説的なことを書くわけにはいきませんが、充ここしばらくの間、鬼のようになっておりました 叫分お楽しみいただけるものと思います。方程式シが、おかげさまで増刊号が非常に好評のようで、 ーリーズもだいぶ書かれてきましたが、こうした、あの苦労もむくわれるというものです。さて、若 い必ずしもパロディとは言いきれない同じパターン手の活躍めざましい最近ですが、これからも、ま は、に特徴的なものかもしれません。たしすますの活躍に期待したいものですね。 ( 田 ) マガジン一九八〇年十一一月号 ( 第二十一巻 十三号 ) 昭和五五年十二月一日印刷発行発行所 東京都千代田区神田多町二の一一郵川早川書房 東京 ( 二五四 ) 一五五一 ( 代 ) 発行人早 川清編集人今岡清印刷所誠友印刷株式会社
〈アドミラル・シェア物語〉 がんばれおしゃれママ ローランス・ジル / 林屋正子訳三四〇 Z ママ、ユー・アー・クレイ ポケット戦艦 ジー、あたしのパ。ハを代え ・クランケ & I ・¯) ・プレネック 庫 ちゃうなんて : . 川にの少 伊藤哲訳予 >+ 三八〇 攵を語り手に歳の新鋭女 第二次大戦中、連合国軍 文 去乢作家がみすみすしい感性 の通商破壊作戦に活躍し 離婚再婚狂騒曲ー ワ たアドミラル・、ンエアの 一万九千マイルにおよ カキング・コングの 」儿跡を、一兀ドイツ海軍十 官が描く戦記の傑作ー・ ライヴァルたち マイケル・。、 リー編 / 宇佐川品子訳三六〇 『キング・コング』に代表される経物テーマ 一間秒間の脱獄 の作品から情選した桀作川譬Ⅲを収録。好評の アシノフ / ヒンクル / ターナー テーマ別怪アンソロジー 宇野輝雄訳四六〇 一九七一年八月十八日、メキシコの刑務所に ヘリコプターが着陸、囚人を拾って逃げ去っ アッカットーネ た。その間わすか十秒。囚人の名はジョエル ハゾリーニ / 米川良夫訳五四〇 庫 ・カプランーーー製糖業界の億万長者で、十年 ソ ・孑晶、生を一・ムえる ーニ文学の〈表現〉の 前に裁判もないまま殺人犯として投獄された ( ィー監督処攵作のシナリオ「アッカット のだ。誰が彼に罠を仕掛け、誰が救出したの 文 ネ」他、シナリオ一本、短篇・篇を収録。 アメリカの か ? O — < かマフィアか ? ワ 黒幕に挑んだチーム・ジャーナリズムの傑作 〈Ⅱ月刊〉 佐久間英著 フランケンシュタインのライヴァルたち 予三〇〇 マイケル 珍姓奇名 ノエル・ペ 単位ではありません。実在する正真正銘の名 シャドウボクサー 字です。名字二百傑、珍姓難姓三千種が登場
秘密のペンタゴンに放り込まれた一民間作品には、スト 1 リ ー性が希薄たという 人ということになっている。そうしてみのは、そういう意味であるし、実際、レ 8 ウ ムにあってストーリー れば、ストーリーなどないのが当然とい を読むことそのも うわけだが、レムの作品を考える場合、 のが、無意味なのた。 ストーリーというものの存在は、常に希読み終えた後の興奮に駆られて、この 薄だ。それが極端な形で示されていると文章を書きはじめてしまったのたが、ど レ いうべきだろう。 うやら、・ほくは自分の書くべきことを見 要するに、どうやら何か特別の使命の失いはじめているらしい。書くという行 5 読み終えるのが、惜しか 0 た。 ために、日記の書き手は、ペンタゴンの為は、言葉の意味を固定化しようという 月並みな言い回しだが、レムの作品、 中に放り込まれたらしいのだが、当人に気持を伴うものだけれども、それは往往 ことに三癶一屈は、 いつも、そう感じさせは、それが何であるのかわからない。そにして、書こうと思っていたことそのも のから、遠去かるような結果を招く。言 してまた、周囲の人間も、それについ ストーリーらしいストーリーは、なて、教えてくれない。そこで日記の書き葉を、意味の伝達手段として使おうとす い。この「浴槽で発見された日記」が発手は、精神的にも、構造的にも迷路と化るかぎり、それは避けられないことなの かもしれない。 見されるに至る経過を述べた序文が、した建造物の中を、さまよい歩くことに まあいし その辺の話は、ヌーポー らしさをとどめているが、「日記」そなる。使命、それはアイテンティティと のものに関していえば、らしさは、 言いなおしてもかまうまい、自分が何でロマン時代に書かれたフランス産の評論 ほとんど感じられないだろう。 あるか、それを探し求める物語という形の幾つかを読んでもらえば、済む話だ。 設定を述べれば、現在から三千年程もをとっている。 生半可な知識と考えで、・ほくが言うべき 未来、その時代からすれば古代にあたる ことでも、ない。 レムの作品、ことに長篇の多くは、こ 現在のアメリカの遺跡から、一冊の文書のような一種の探求物語の体裁をとる。 この作品のテーマは、一言で言うなら が発見される。それがこの「日記」とい そして、重要なことは、その探求の過程「意味の意味」ということになるだろ うわけだ。その遺跡とは、アメリカ政府にあって、探求されるべき対象が形骸とう。それは、この作品の中では、大きく が秘密の内に構築した地下のペンタゴン化していくことた。というよりも、もと二つに分けられて語られていく。一つ であり、この「日記」 ( というよりは、 は、アイデンティティの問題であり、体 もと、そのような対象に意味などなかっ 手記という感じだが ) の書き手は、その たことが、明らかにされていく。レムの制、社会、制度、あるいは一種のパラダ る。 スタニスワフ・レム著 『浴槽で発見された日記』
イムの中に取り込まれた人間が、アイデろん、そこには、今のぼくのような状態回答を考え出した奴が現われたために、 ンティティを求めていく中で、何を見るにある人間も含まれているのだけれど必勝法であることを失った。それと共 のか、ということだ。今、不用意に、取も、皮肉なことに、これだけ「意味の意に、この遊びは、すたれてしまった。な り込まれたという言葉を使ってしまった味」について語られながら、再び「意味ぜなら、この言い方が成立するなら、同 けれども、同化されたという意味ではなの意味」の意味について、考えさせられじ言い方で「もっと大きい宇宙」と言っ 周囲から異化されてしまった人間のてしまうのだ。この作品が、錯綜した印ていれば済むからた。それは、無限に続 目で見た世界が、どのような世界になる象を与えるのは、その不条理さでも、論 ・・スミスの「スカイラーク」や かということだ。ペンタゴンという名の理の逆転や飛躍でもなく、「意味の意味」 架空の建造物を支配している論理を理解という向かい合わせにした鏡面の像にも「レンズマン」あるいは「ペリー・ ダン」あたりを読んでいると、いつも、 できない人間にとって、それは明らかに似た永遠の反復によるものだ。 このことを思い出してしまうのだが、そ 不条理でしかないのだが、そう見てしま子供の頃に「この世で一番大きいも うことそのことが、すでに意味を取ろうの」 ( あるいは小さなものでも、甘いもれらの物語の中では、この無限の連鎖 とにか は、一種の必要悪として、容認されてい とすることから、はじまるのだ。おそらの、でも、強いもの、でもいし く「この世で一番」という言葉が付けばる。その連鎖の意味については、決し くは、この作品が受け取られるであろう しい ) を想像しあうという遊びをしたこて、考えられることがない。 風刺、喜劇といった外面は、ただ「意 味」を読みとろうとするところから、来とが、ある。たとえば「日本」と言われそして、レムのこの作品は、「意味」 たら、「アメリカ」と答える。それが る。けれども、それこそが、この作品に 「地球」になり、「太陽」になり、「銀 レムが課した皮肉なのではないか、と、 河系」になり、「宇宙」となる。ここま 思う。 もう一つの「意味の意味」は、文字どでくれば、終りになるのだが、この遊び おり、言葉にとっての意味の意味だ。すの必勝法を思い付いた奴がいた。それは べての会話や言葉が、暗号であるという「おまえの思っている宇宙より、もっと ことに発するナンセンスが、この作品の大きい宇宙」と言うやつだ。だが、この 中で、しばしば語られるけれども、それ必勝法も「おまえが″おまえの思ってい る宇宙より、もっと大きい宇宙″と思っ は意味の呪縛から逃れることのできない 人間そのものについて語っている。もちているより、もっと大きい宇宙 , という ミタミジ 13 トをに鬆 0 2 掲 9
ム」という映画が、先にあった。「征服歴・ : のため、かえってチグ ( グになった気がすら、テンポよく書いてくれないと読めない。 ・ : 」は、宇宙訓練風景とクローン人間の話る。 「大きなロポット」山田隆寛 ( 八尾市 ) 「商売」 樹村サミイ ( 野田市 ) が、巧くつながらず分裂している。 星さんの文体は、真似ができそうで、でき 次点「タイム・オペレーター」 エデンの園ということを、読者に隠すつもない。ひとつの完成された世界である。他の 堀越幸一 ( 東京都 ) りなのか、どうか、はっきり決めて書くべき文章を知らないから、文体模写で、というこ 順不同たが、これも次点としたい。い つもだろう。オチは、逆手のつもりなのだろうとなら、判らないこともない。つまり、習作 ながら達者である。オチは、意外に思えた。 か ? 「アダムとイプは、平和に暮らしましである。それにしても、会話といい文章とい ーしし力、なんともいえな どこをどうなおせ・よ、 た」のほうが、いいのではないだろうか ? 、酷すぎた。選評に残したのは、壊れて狂 。しいて入選にしなかった理由といえば、 だが、そうなると現存人類は、いなくなって いだしても、壊せないロポットを作ってしま 相対的に山本くんの作品が優っていたからだしまう。このアイデアは、他にあった気がすったというアイデアのためだけ。大きい必然 る。 ろう。 性はないだろう。 「砂の惑星」他 木下靖 ( 座間市 ) 「手紙」 佐部野各史 ( 松戸市 ) 「電話の向こう」 月村江光 ( 尼崎市 ) メロドラマ仕立てのス トーリイに、甘さだ文章が巧くて、アイデアがこなれてない作これまた、パランスの悪い作品である。た けでない結末。この計算は間違っていない。 品にであうと、評価に困る。転生輪回を扱っ った一人の人類の生残りが、静かにジャズを ただ、この手のス トーリイは、構成力を必要ているわけだが、・ とう説明すれ・よ、 。ししカ判聞いていると、電話が : : という書きだし。 とするのだろう。こう淡々とはこんでしまつらなくなってしまったらしい。壮大なアイデ なんとでも面白い展開になりそうだし、事 てはいけない。書きつづければ巧くなる。 アを狙いすぎた失敗である。 実、電話の相手の言葉が、地球上のどこの言 「知能測定機」 「自閉症」 境淳伍 ( 京都市 ) という期待を持たせる。 平山祐之 ( 西宮市 ) 語とも判らない 退職された教員という作者。選者とも一世これまた、未来のテレバシー社会がよく判が、オチは、拍子抜け。 代ちがうから、選評が書きにく、 。この話とらないので、オチがきかない。読みなおして のうきょ , してよくまとまっているのだが、二つの企業みても、な・せ、この子の脳筐を、鉛がおおっ ここまでで、今月は終りである。 を争わせて、漁夫の利をはかる第三の企業のているか、よく判らない。そのため、テレ。ハ 「原発の挑戦」「知的冒険の時代」の二冊の 隠謀という、いわばミステリー的なオチで、 シーが遮断され、この未来での「自閉症」に ノンフィクションを脱稿して、選者もの 興醒めしてしまった。この発明がなくても、 なったわけなのだろう。無理がある。 世界にカム・ハック。と思ったが、韓国新任大 そうできそうな感じである。 「区別がっかない」妹尾俊 ( 北九州市 ) 使の。ハーティ ( 会費一万円、ちゃんと払って 「タケシ君の悩み」菱谷毅 ( 弘前市 ) 体の一部が、別の次元へ落ちこむーーと いる ) 。来週は、出演のため大阪へ四泊 本名である。良い名前だろう。作品も、な うアイデアは、よくある。頭だけ出たところ五日。今年は、売れそうもない二冊のノンフ かなかのものだ。ですます調で書いたのは、 が、タイムマシン故障の未来人のいる次元断イクションの他、新刊は一冊も出さない予 タケシ君が読破した書名の羅列で、かたい感層。向こうに残った首なし死体 ( ? ) は、生定。そのくせ、妙に時間だけなくなる。 じになるのを避ける計算だろう。しかし、そきながら解剖されかける。どうせドタバタな では、また来月。