フルー - みる会図書館


検索対象: SFマガジン 1982年1月号
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1. SFマガジン 1982年1月号

ったため、他の三人はびくっとした。「けど、そうじゃなかっただ ろ ? 変数は増えなかったろう ? 何も起こっていないようなもの なんだ。つまり、ぼくらの手に負えないような出来事という意味で はね」 誰も口をきかなかった。 「失礼。ひとりにさせておいてくれ」 クロービスは女二人に言った。「フル ーノ 1 がこの問題をしよっ ちゅう持ちだすようだと、思っているより早く、基地が交替をよこ すだろうな」 三十分後、ミリは小説を書こうと腰をおちつけ、・フルー 妙なふるまいについて、考えるのをやめようと努力した。テープル を離れるとき、・フル ーノーの顔に浮かんでいたあの表情は、なんと 言えばいいのだろう。興奮 ? 嫌悪 ? 驚愕 ? それがいちばん近 さめやらぬ驚愕。まあいし 、ゾルーノーのことだ。夕食の席 できっと説明してくれるだろう。・フルーノーよ頁・、 【豆力いいのだから、 これでもっと陽気なら文句はないのに。 ようやく・フルーノーの顔を脳裏から追いはらい ミリは原稿を翫 み返しはしめた。昨日の午後、例の悲鳴に中断されるまで書きつづ けていた個所だ。ちょっとむずかしい場面で、ある女性が、むかし の男と偶然に出会う。彼女は、十年前にはその男のものだったが、 こまったことに今は別の男のもので、ちょうどその男と連れたって いるところ、という設定である。舞台は大都会の飲食アルコープ。 「失せろ ! でないとぶんなぐるそ」ポルスキは言った。 ノル・フーは陰気な笑みを浮かべた。「そんなことをしてなん ミリは微笑した。思ったよりよくできているーー・自分ひとりで考 になるのかね ? イミ フル 1 ノーはばかに ルはあんたよりもわたしの方が好きなんえているときに謙遜していたって意味はない。・ だよ。確かに、あんたの方が陽気だが、イルミはわたしの方を 好きなのさ。あんたと過ごした昨夜のことより、わたしと過ご 2 した十年前の方を、ずっとはっきり覚えているにちがいない。 わたしは考えるのが得意でね。考えるのは、どんなに陽気でい られるよりも、もっと、 しいことなんだ」 「イルミはぼくと食事をしているんだ」ポルスキは目の前の冷 たい料理や飲みものを指した。「そうだろ、イルミ ? 「そうだよ、イルミ」ノル・フーは言った。「選ぶ・ヘきだ。両方 冫。しかないのなら、どちらが好きか、ちゃん の女になるわけこま、 と言うべきだ」 イルミは二人の男を見くらべた。二人はあまりにちがってお り、選ぶのはむずかしい。一方は陽気で、一方は頭がいい 方はほっそりしているが、片方は太っている。イルミは陽気な 方がいいと決めた。そっちの方がたいせつだし、意味があるー ーどう考えてもこちらのほうがいいということが、本当のちが いになる。イルミは「ポルスキをとるわ」と言った。 ノル・フーは驚き、悲しそうなようすを見せた。「きみはまち がっていると思う」 「もう行った方がいい。イラが待っているよ」ポルスキが言っ 「ああ」ノル・フーはひどくみじめそうだ。 イルミもとてもすまない気になった。「さよなら、ノル・フ

2. SFマガジン 1982年1月号

「もしかすると、任務交替のチャンスを、おれたち自身でふちこわ 毎日なにかしら、おかしなことが起こった。それは午前中に起こ ることもあり、男二人が計器の読みとりや観測にあたり女二人が家してるのかもしれん」 事にいそしんでいる最中に、大きな顔が現われたりした。また小さ「基地は解任のことなんか、ひとことも言ったことないそ」 「そりやそうだ。人員を配置すべきステーションが五十万もあれ な顔や色のついた炎の場合のように、おかしなことは午後にも起こ り、・フルーノーの機械の管理、保全や、クロービスの基地への送ば、ここみたいに順調にいっているステーションをとりあげるまで 信、リアの菜園手入れ、 リの執筆の時間などを乱した。それでもには、ずいぶんと時間がかかるだろうさ。きみとおれは完璧なコン ビだし、きみにはリアが、おれにはミリがいる。みんな仲良くやっ 夕方は平穏なことが多く、夜はほとんど起きなかった。 通常の時間表記は、宇宙ステーションに半永久的に閉しこめられている。深刻な対立はまったくない。ゆえに、解任の理由はゼロ、 ている人間にとっては、なんの意味もないと、四人とも承知してい というわけだ」 る。このスチールの球体が静止している宇宙空間は、きわめて空漠アルコープにテープルのしたくをしながら、ミリはこの会話を聞 としており、いちばん近い星の光が届くのさえ、数百年かかるの いていた。そして、・フルーノーがリアのかわりにミリをほしがって だ。とはいえ、基地で考案された服務規定により、四人は何カ月も いるのが、でなければリアと二股をかけようとしているのが、な・せ 見ていない地球の規準どおりに一日二十四時間制を採るよう、勧告クロービスにはわからないのだろうと思った。もしかすると、クロ を受けていた。この取り決めは好都合だった。勤務、休憩、睡眠ービスはそれを知っており、・フルーノーをいたぶっているのかもし が、ごく自然の周期におちついた。くる年もくる年も、まったく同れない。そうだとすると、・フルーノ 1 が明かるい性格ではないだけ じ日課のくり返しが、この先いっ終わるとも知れずにつづいていく に、ばかなまねだと言える。あの太いくびと青ざめた丸まっちい顔 しい感じはなさそうで、 だけだ。それはストレスを生む。 では、。フルー / ーは抱かれていてもあまり、 その点を、ブルーノーはクロービスに力説した。午前中に、比較その点でも、クロービスとは正反対だ。クロービスのほうは背丈 こそ大差ないが、その細身の強靱な肉体とやわらかな肌は、抱かれ 的近い恒星を調査分析する、スペクトル分析器の故障を直したあと ブルーノーほど頭が切れないところは のことだ。二人はラウンジの中央観測窓に腰をすえ、正午のカクテていてもいつも気持がいし あるけれど、逆に言えば、・フルーノーが考えることの多くは陰気な ルを飲みながら、女性二人を待っていた。 ミリは飲みものをつぐと、男たちの方に行った。 「ストレスに関しちゃ、おれたちはじゅうぶん持ちこたえたと言えものだ。 ・フルーノー , 刀し 、くつかけんかをでっちあげて服務報告を摠造で る」クロービスはブルーノーに言った。「たぶん、じゅうぶんすぎ それは無理だとクロ るぐらいた」 きないのが残念だといった意味のことをいい、 ミリはクロービスにキス ービスが言下に同意したところだった。 ーノ 1 は太った体をまっすぐに起こした。「どういう意味だ し、傍にすわった。 ・イ・クル 8

3. SFマガジン 1982年1月号

情ある説得をふりはらって。すっかり狂っちゃってさ。おれ、高校りして。レコード殺人事件」 こーゅーことをいっているときが最高に幸福なのだから、こまっ 卒業して、こっちへきて、七〇年まえの活気のある新宿で、偶然に た女である。 会ったの。したら『ジェノ・ハにはいった』って」 ・『サ ( リンの灯は、いまなお消えず』なんて歌ってる「当時の女あそびの系譜ってのも、知りたいもんだね。ほんとに音 グルー。フ、テレビで見て、わたし、びつくりしたもの。わー、なん楽だけがすきでやってたやつなんて、いるのかな ? 」とゴザンナ。 だなんだ、って感じ。政治問題がテーマで、これは軍歌かしら、と「キンクスとかサーチャーズにびつくりして、わー、カッコいい な、もてるんだな、で、はじめるんでしょ ? 」 か」 「あのまちがい方は迫力あったね」 「動機が不純にならないやつは、異常者だよ、かえって。このご ろ、グルー。ヒーってことばも、あんまり、きかないしね」 「あった」 「わたしの友達が、ストレイ・キャツツのプライアン、やったの。 「本人は、本牧式にやりたかったんでしように。カツ。フスが外国の 曲やるってのは。必然性があったの。自らの血の問題で。純粋日本彼女の服、ぬがしたら、彼、おこってわめきはしめたんだって。彼 フがふたり。・こ はホモだったの。その女の子、少年つぼかったもんで、まちがえら 人は、ディヴひとりだけなのね。外人が三人、 けど、ほかのパンドがやるってのは、納得できなかったりして」 れたらしい。そしたら、今度は女の子がカンカンになって、『やれ 「彼らもいやだったんじゃない ? おしきせのあまったるい曲が。 ! 』って命令したんだって。・フライアンは、しぶしぶやったんだっ 英語の歌もうたえるそ、ってこと見せたかったんだよ。オックスのて。かわいそうね。でもおかしいわね。しぶしぶ、ってとこが」 『テル ー』のあのひどさ」 「そのあと、訴えられたのか ? 」 「でしょ ? またべつの女の子は、アダム & ジ・アンツにいって 「わたし、菊回転でテー。フにいれたの。そうすると『テル・ さ。楽屋でアダムさがしてたの。なんか、腹がでて頭がはげかかっ らしくきこえる」 たオッサンがよろよろきて、それが本人だったもんで、逃げてかえ 「耳お・ほえもむずかしかったろうね。英語、よめないしー ってきたんだって。化粧すると、わかんないから」 「ウォークマンはないしね」 「ロック少女もたいへんだね。アイドルがこうすくないと。ところ 「オックス・オン・ステージーーーあの日の若者、っていうのよ。レ ードロック少女はどーしてる ? 」 コード・タイトルが。悩んでしまう」 「ロミは、水ぼうそうにかかったの。もう、なおったらしいけど。 あの日の若者、とシデとゴザンナは同時にくりかえした。 「でね、赤松愛が、いまおとうさんのあとついで、鉄工所、やってで、『これは友達の話だけど』なんて、いうの。『あたしの友達 るでしょフ そのちかくにひっこして、毎週日曜日に、ライヴ盤をが、やつば水。ほうそうにかか「て、なおりきらないうちにコンサー トへいって、外タレにうっしてきちゃったんだって』なんて」 かけるの。しつこく。そいで、神経症にさせちゃう。逆に殺された で、 8

4. SFマガジン 1982年1月号

てしまうのだ。 完璧な管理社会シティーーそこでは人々は様々なギルドに属し、 おお、レダ ぼくは呼んだ。おお、レダ。あんたとアウラみた 体制に適応せぬものもまた紊乱者として存在を許されるという理想 いに愛しあえたら、何ひとっーーーそうだよ、ちつぼけな嫉妬の悪意 社会だった。平凡な少年イヴはある時紊乱者の女レダと会い、やが なんて、何ひとつ、恐れる必要もないのに。 てしばしば彼女の家に出人りするようになって、その家の同居人ア 唯もまくを愛していない。そうだ、・ほ ぼくは誰も愛していない。言 ~ ウラや、知性を持つ大ファンらとも知り合う。しかし、ある日レダ くに。フロポーズをしたラウリでさえだ。だから、ぼくが、ミラの悪 とアウラのレズビアン行為を目撃、しかもそこでスペースマンと出 意に吹きさらされたこの廃墟の中に立って、ぼくを守ってくれるも 会ったことにショックを受け、イヴはレダの家から足が遠のいた。 そんな時、彼の属するグルー。フのリーダー、ラウリから第一。 のは、何ひとっとしてありはしなかった。 ナーの申し込みを受ける。彼らの社会では、少年は成長とともに同 どうして、こんなことに気づいてしまったんたろうー 性の第一バ ートナーと生活し、ついで第二パ ・ほくは思った。気づきたくなどなかった。自分が恐しくひとり・ほ ナ】と選ぶことになっているのだ。しかし、同じグルー。フの少年ミ っちで、無防備で、何ひとっ身を守るものをもっていないなどと、 ラは自分が選ばれなかったことでイヴを脅かす。そして、イヴはラ こんなときに、こんなふうにして、気づかされたくなどなかった。 ウリとともにセクソロジストのギルドを見学に行ったが、そこでラ ・ほくは自分が何をしているのかさえ、よくはわからないまま、の ウリとはぐれ、しかもスペースマンのプライと抱き合うレダと出会 った。衝撃的な事件の連続に、ふらりとユニットを出たイヴは、戻 ろのろとさまざまなものがちらばっているヘやの中央に歩みより、 った時そこが減茶減茶に破壊されているのを発見した。 腰をかがめ、床から何かをひろいあげた。 それは、・ほくが、そんなものを持っていたことさえ、忘れていた 男の子なのに、人形なんか買ってらあ、といって、ミラがぼくを レ ものだった。 ひやかし、ラウリより前の指導員のシビルに、フィメールとメー 小さな、乱暴な侵入者のためにむざんに首をひきちぎられた、布を差別する発言はいけませんと、きびしくたしなめられていたのを 製の女の人の人形。 覚えている。 ほくがまだうんと小さかったころ、ちょっとした室内装飾品やか しかし、ミラに冷やかされるまでもなかった。実は、、ちばん恥 わいい置物をつくる、ハンドクラフトのギルドの見学こ 冫いったときずかしかったのは・ほく自身だった。 に買ったものだ。もしかしたら、それが・ほくの生まれてはじめての ・ほくは、何だか、とても恥ずかしい、どうしても人に知られては 買物だったかもしれない。 ならないことを知られてしまったような気がしたが、しかしその人 というせつばつまった気持は、そ どうしてかはわからないが、その白い服をきた、髪の長い女の人形を手に入れなければならない、 形を、棚にひと目みるなり、・ほくはどうしてもそれをもちかえらなの恥かしさよりもっとつよかった。・ほくはそれを持ちかえり、そし くてはいけない、 という気持になった。 て大切にした。 226

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〈彼女〉は、悲鳴なんかあげない。眼とばしに専念している。へ ー油くさい ( 本名、潘広源 ) ねばりつくようなフレーズをぬすもう え、「忘れえぬ君」だって。わりかし、カッコいいじゃん ? あのと、身がまえてたり。松崎由治の、オリエンタルなメロディーをま ヴォーカルがつくったにしてはさ。うしろでハーモニカ吹かせても ねしたがっていたり。 らってる子、だあれ ? ショーケンっていうのか。地味なパ 例外は、「銀色のグラス」のマア坊のべースにびつくりして、高 ひまそうだから、目線おくってみようか。 ーツとなってしまって。突然髪を 知県から退学家出してきた子。カ ゴールデン・カップスのマア坊が目当てできたんだけど。ろくろ染め、トンポメガネに編みあげ・フーツ。網のチョッキに、スリムジ っ首のルイズルイス加部は、まずゼッタイといっていいほど、客席 ンズは里 ~ の をみないから。 とういう脳を リズム担当が、メロディーひくなんて。いったい、。 とりあえず、この前座パンドでもいいや。テーマ曲が「太陽の誘してるんだ ? 気が狂ってるとしか、おもえない。あのべースラ 惑」だから、テン。フタ 1 ズっていうんだって。 インは、常軌を逸している。 女の子たちは、キャアキャアをがまんしている。歓声をあげた〈彼女〉は、いそがしい しかし、一方ではこわがっている。この埼玉の不良のあとが、 眼とばしを続行しつつ、たまにはギターもききつつ、あとで楽屋 本牧の不良だから。いかがわしいという感じで。ことにこういう小 へおしかけたら、どっちをえらぼうか、とかんがえている。モデル さいとこでは。タイガースのワンフとは、やはりちがう。 のおねえさまがたに先をこされないように。ツ・ハつけとかなくっち ジュリーよ、 っしようけんめいに歌をうたうのにいっしようけや。 んめいで。グルービーを相手にしない、 といううわさだ。なんせ ーフのマア坊は、かなりめずらしいタイ。フ。顔がきれいなの ね。手抜きしなくても、手をぬいているようにきこえるんだから。 に、楽屋ができるという。各種末端肥大症なんだって。腕ならびに 努力と熱気で、〈タさをカバーしてるんだから。女の子をかまって脚の先端は、公然とわかるけど。のこりの一カ所が、問題だったり る余裕ないんでしょ ? して。 ギター少年たちは、わざとらしく楽器をかかえて。暗がりで腕を まあ、とにかく。 くんでいる。パスドラが遅れたとか、チ = ーニングがあってないと今夜は、どっちかをオトしてやるつもり。 か。演奏のアラさがしに、けんめいだ。 しかし、まわされるのだけは、さけたい。いくら、ドイハ荒らし ポジションとしてまず決まるのが、リード・ヴォーカル。声質もの異名をとる〈彼女〉にしても。それだけは。 テクニックも関係ない。ルックス最優先。つぎに、リ ] ド・ギタ 5 。あとはまあ、いってみれば人数あわせだ。 「クラッシック界に、グルー・ヒーが進出してきたんだってーとロ 7 ここにいる男の子たちは、エディ 1 潘の・ハタくさいというか、ラ 「友達とはなしてたの。最近、いいのがいないからさ。ぐ ん

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だ」アレンは四人に向かって話しつづけた。「しっとしていてく「どこでもいい。 とにかく、ここから連れ出して、見張ってろ」 れ。よし ししそタグラス」 「全員注射ずみですが」 三人目の男が近づいてきた。手に皮下注射器を持っている。ダグ「わかっている。だが、見てみろ。もう人間じゃない。話しかけて ラスはミリのなきだしの腕を強くつかみ、注射した。たちまちミリもむだだ。ことばを取りあげられていたんだ。おかげで、このざま の気分は変化した。精神的な不快感は消えないが、なにもかもどう だ。すぐに連れていけ」 でもいい気分になった。 ミリは傍に立っている若い男に、ゆっくり視線を向けた。ジェ ムズだ。 やがて若い男の声が聞こえた。「袖をおろして。こわいことは何 もない、それだけは安心していい」 「ここはどこ ? ・」 ミリは訊いた。 「ついてきなさい」アレンが命じた。 ジェームズはためらった。「なにも言うなと命令されているん ミリたちは、三人のあとからステーションを出て、元はコンクリ だ。そのうち心理学者チームが来て、きみたちを治療してくれる」 「お願い、教えて」 1 トらしいざらざらした床の上を歩き、階段をのぼった。約三十フ ィートほどの距離だ。人工灯のついた通路を通り、太陽の光がさし「、 しいだろう。たいして害にはならないだろうし。きみたち四人を こんでいる部屋に入る。部屋の中には二、三十人の人々がおり、何はじめ、他のグルー。フの人々は、いろんな実験の被験者たったんだ。 人かはグレーのユニフォームを着ていた。ステーショノこ 、こときこの建物は、特別福祉研究ステーションの第四号棟だ。というか、一 のように、ときどき壁が震動するが、遠くの爆発のせいらしい。と前にはそうだった。ステーションを創った政府は、もう存在してい きたま、かすかな叫び声も聞こえた。 ない。わたしの属する革命軍が倒したからだ。われわれはここに入 アレンが大きな声で言った。「よーし、ちょっと体制をととのえるのに銃撃戦をしなければならなかった。戦闘はまだつづいている」 よう。ダグラス、上のほうでは、きみにタンクの中の連中を担当し「それしや、わたしたち、宇宙にいたんじゃないのね」 てもらいたがってる。連中は生まれつきの水生動物だと信じこまさ「ちがう」 れているから、ストレートにきく打撃を与えた方がいい。ホームズ 「なぜ、そうだと信じこまされていたの ? 」 がタンクの水をぬいている。行ってくれ。それから、ジェームズ、 「まだわかっていない」 きみはこの連中を見張っていてくれ。おれは、あの環境をもうちょ 「どうやって、そんなことをしたのかしら」 っと調べてくる。精神科の先生がたが来てくれるといいんだがな。 「新しい形態の、高度の催眠術だろう。定期的にかけ直していたん このままじゃ、五里霧中だ」アレンの声が遠のいた。「軍曹・ーー , そ だと思う。それ。フラス、幻影を投射する各種の装置。それはまだ調 この五人をどこかに連れだしてくれ」 べている最中だ。さあ、いまは質間はこれくらいでたくさん。すわ 「どこに、ですか ? 」 って休みなさい」 0 《 0

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米 ) 、れ〃血ん ( 1968 ) なども似た問題 を扱っており、大破壊以後の世界に生き残 り、適応するという陰惨なテーマを中心に 据えている。文化や安定をはぎとった状況 の中で、クリストファーが描く人間の本性 は、色調の暗さという点ではまったく申し 分がない 近年クリストファーは、彼に名声をもた らしたサプジャンルに背を向け、さまざま な種類の小説に手をたしているが、その大 半は初期作品のような好評を得ていない。 Cloud 0 〃 & ん ( 1964 , 図 S , “れ 0 な ム記米 ) は、伝統的な島テーマを現代化 し、複合企業体のポスの活動と、 ているが、思索的でもあり、大好評を博す ヴナイル作品はアクションに重点が置かれ 星人に立ちむかう。クリストファーのジュ 人公は成長し、地球を侵略した三本足の異 可、 ( 1 % 8 ) 。この三部作では、若き主 ( 1 % 7 ) と『もえる黄金都市』 7 ' んれ况 征服者』 The 0 な可、 G01d のんに。 d 発表したのである。続く二作は『銀河系の 巨人』 The Ⅳん加 M 側れ地切 s ( 1967 ) を の分野に進出し、三部作の第一作『鋼鉄の て新しいスタートをきった。ジュヴナイル ろが 1967 年、クリストファーは S F におい 渇したかの印象を与えたことがある。とこ マのくりかえしによって、作家的才能が枯 ンパクトが、あまりにも低下し、同一テー 一時期、クリストファーの S F 界へのイ F の枠組みの中におさめられる。 にはそのままの形で提出され、ときには S 人間性を描く社会小説である。これがとき けているのは、たいてい非常事態における F 作品。クリストファーが初期から書き続 ( 1958 ) は洞窟冒険小説で、境界線上の S 非情な行動である。 The C 研 Night がした状況の中で、独裁主義的人格が示す でも主たるテーマは、文明の仮面をひきは ント生命体の脅威を描いている。が、 ることになった。少なくともイギリスで は、現代の児童 S F 作家として、クリスト ファーは第一人者といっていい。その後の ジュヴナイル作品は、『異世界からの生 還』 The んい C , ぉ ( 1969 ) 、年間最優 秀児童書としていみじくもガーディアン賞 を受けた 7 ' んに G ″ ar 市のい ( 1970 ) 、 D の〃 〃ノ 4 ( 1973 ) 、一物・ , ル ( 1974 ) 、 E 襯 2 な W の・ ( 1977 ) 、そして三部作の 7 ' んどれ c にーたツ g ( 1970 ) 、おの / んどお″切 g ん”み ( 1971 ) 、 T んに S , 0 S が 5 ( 1972 ) がある。おとな向 け S F と同じく、クリストファーのジュヴ ナイルも大部分、デイザスター以後の世界 こうした作品でしばし を背景にしている。 ば中心におかれるのは、ロマンチックな個 人主義で、これに対抗するものとして、何 かしらの体制順応主義者や、洗脳された社 会が配され、ときには地方と都市の相克の 形に象徴されている。 映画 CINEMA 〔 J C / P N 〕 VI SF 映画は活字 SF と混同すべきではな い。映画はそもそも異なる約東事に従って いる。使うテーマも、はるかに範囲が狭 い。不合理なできごとやファンタスティッ クなできごとを、ゴシック風に強調する。 受け手の知性にあまり期待していない。現 代の S F 映画は、ほとんど例外なく、 1930 年代のジャンル雑誌 S F と同程度。たた し、 TV の映画 ( テレビジョン ) にくら べれば芸術的にずっと重要である。 いちばん幸せな S F 映画ファンとは、活 字 S F の知的な豊かさがスクリーンに再現 されていないなどという批判は眼中にな 266 ツツ・ラングの『メトロポリス』 S F 映画史上最初の重要な作品は、フ く、映画なりの利点をもつばら楽しむ人で リ

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ア S F の見本といっていい。 ハインラインは、ただし、児童向けに書 く場合でも質の下落が見られないという点 で、例外に属する。他の S F 作家の場合、 必すしもこうはいかない。アイザック・ア ジモフの《ラッキー スター》シリーズ は、アジモフの最高作品よりはるかに落ち る。ジェイムズ・フ。リッシュのジュヴナイ ルは通例退屈で例外は《宇宙都市》 4 部作 の第 2 部『星屑のかなたへ』 A んど和だ the & 4 ( 1962 ) だけ。ペン・ポーヴァ もアーサー・ C ・クラークもゴードン・デ イクスンもエヴァン・ハンターも、おとな 向けの方が良い。ただハンターの児童書 は、一風変わっていて興味深い。逆にアラ ン・ナースは、年少読者を相手に書くとき の方が肩の力がぬけていて、最高作品とい うと年少向けの未来医学ものである。 すっと新しい作家では、ロバート・ C ・ オプライエンが児童向けに、すぐれた SF 作品を 2 冊書いている。ウィッティで、共 感を呼ぶ『フリスビーおばさんとニムの家 のねすみ』」必を滝・訪 y 〃イ励 6 火な研 NIMfI ( 1971 ) は幼い読者向けで、ロを きく動物が登場する路線ではより著名なリ チャード・アダムズの『ウォーターシッゾ ・ダウンのうさぎたち』ルゆ D02 〃 ( 1972 ) より良いという熱狂的ファンもい る。オフ・ライエンの / 工 0 だ / “ん 4 ん ( 1975 ) は、青少年を対象とした大破壊と その後の物語であり、温か味があって感動 的で、ときに恐ろしくもある。オフ・ライエ ンの早逝は児童 S F にとって重大な損失だ ったと言っていい。 クリストファー CHRISTOPHER, JOHN 〔 P N 〕 イギリスの作家クリストファー・サミ ェル・ヤウド ( 1922 一 ) が、 S F を書く ときに使うべンネーム。そして、この名 前がいちばん名高い。ただし、最初の長 篇 ( 本名で出版 ) はファンタジイ The Ⅳん S , 4 れ ( 1949 ) だった。第二次世界 大戦前から S F ファンとして活動し、大戦 に従軍、 S F テビュー作はクリストファー ・ヤウド名義で ASF 誌に発表した「クリス マス・ツリー」 "Christmas Tree" ( 1949 ) である。最初の S F 単行本 The Twenty- Second Ce れル ( 集 1954 ) に初期作品が 集めてある。長篇第一作 The 丘の・研〃尾 Co 襯 ( 1955 ; 圜刊〃切″米 ) が 成功、第二作『草の死』 The Death 可、 G 囮 ( 1956 ; 異 0 窺 4 イ e 研 Grass 米 ) でさらに大きなインパクトを与えたのち、 クリストファーは長篇に専念するようにな った。この分野ではジョン・ウインダムの ライノくルかっ後継者とみなされ、戦後イギ リス・デイザスター小説の第一人者とし て、 1955 年から 65 年にかけ、多くの作品を 発表した。 『草の死』 ( コーネル・ワイルドによる映 画化題名は『最後の脱出』 Xo 窺記に研 G ) は題名からも明らかなように、自 然界のスランスが崩れ、イギリス ( と世 界 ) の様相を一変させてしまうデイザスタ ーを描く。すべての草と同属の食用植物が 死に、破減的状況が生みだされる。ウイン ダムの小説なら主人公には中産階級的ねば り強さがあり、おかげで読者には、いま闘 っている危機も結局はめでたしめでたしで 終わるにちがいないと予想がつくが、クリ ストファーの登場人物は、この作品のジョ ン・カスタンスが徐々に非情になり人格崩 壊していくのを見ればわかるとおり、より 暗くより不安定な世界に住みつき適応して クリストファーの他の長篇、たとえば The 仏の・切Ⅳ / ( 1962 ; 医 7 ' / 尾 ん g Ⅳ i 元米 ) 、『大破壊』ルだわに 剏〃尾 S ん・〃 ( 1965 ; T んな gg 記 E ( な℃

9. SFマガジン 1982年1月号

食 ) 、午後三時 ~ 翌朝午前十時い五千円 ( 含版として復刻します。よろしくお願いします。 体裁判・コピー誌、付録付き タ・朝食 ) Z ・・ラジオドラマ 頒価四百円 ( 送料込、定額為替に限る ) 申込み〆切十二月十二日 G 亠 ) 消印有効 ア・ラ・カルト「矢野徹の世界」 連絡先〒高松市福岡町四ー七ー一 主催北海道協会 申込み、問合せは六十円切手同封の上左記ま 松原アパート一号室高見和輝 一月四日 ~ 八日・午後十一時 ~ 十一時十分 で。なお〆切間近ですのでお早目にどうぞ。 東北大学研究会会誌 います。若くなければ人れないが、若ければ若〒网札幌市中央区北一一条東一一丁目庄崎方 氷垣浄 「ダイバージェンスⅣ」発行 " いほどドッ。フリ型、こんなところに T' アレル 創作 ( 期待の ? ) 新人特集、「第一一知性」 ギーのもとがあるのだろうか、と考えたりして 「 O 」「逆説方程式」「帰去来」以上四篇 います。 ( 私自身はまだ二十二です念のため ) 「第一回日本ファンタジイ・コンべンション 翻訳ラリ ー・ニーヴンの短篇「ドラコ亭シリ ( 茨城県筑波郡大穂町要一ー四栗原方 ( 仮称 ) 」のお知らせ このたびホラー系ファンタジイ、同人誌の ーズ」より訳出、「シューマンズ・コン・ヒュ 竹内さやか ) 「黒魔団」を中心に第一回日本ファンタジィ大 ーター」「グラマーレッスン」等五篇及びア 会の準備会が結成されました。一九八一一年五月 ン・マキャフリイの最新作「シンデレラ・ス 中旬に東京での開催を予定しております。 ィッチ」を掲載 興味のある方は事務局長まで御連絡下さい その他、奇想天外追悼座談会・三号で好評だ 〒東久留米市上の原二ー七ー四二ー四〇一一一つたあの Neg 一ミ ence ・ 2 などなど読み物満載 " 「星群」号発行 井口倫太郎 5 判・オフセット印刷・百二十八頁 内容「祝いの日」児島冬樹、「箱」石飛卓美 申込みは送料込みで六百円を郵便振替又は定 「プロハンター」松本富雄、他、創作十一篇、 コミック・フェスティバル—、 0 額小為替にて。 ( 振替仙台 4 ー 2 2 0 6 東 詩一篇 北大学研究会 ) 体裁判・々一イブオフ・八八頁 日時十二月二十日 ( 日 ) 十時半 ~ 十六時 〒仙台市川内東北大学教養部内 頒価千円 ( 送料共 ) 東北大学研究会 0 「星群の会」新入会員募集中。入会ご希望の会場神戸市立三ノ宮青少年会館レク レ】ションホール 方は、六十円切手同封のうえご連絡ください。 入会案内書をお送りします。「星群」号、お内容コミック・フ = アー・ 8 ( マンガ同人会員募集「エルリック・」 ミニコミ誌 & TÅ、アニメファンジンな 0 O Z ・Ⅶで一応名前だけは : : : のエル よび人会ご希望の方は左記まで。 リック・オ・フ・メルニポーネのファン・クラブ 連絡先〒神戸市東区深江北町二ー七ー二どの展示即売会 ) 、マン研アトラス、ペンギ ンクラブ合同マンガ作品原画展 です。エルリック主義を全世界に普及し、「混 0 ー一〇三坪井貞一 コミック・フ = ア , ーに参加するグルー・フ募集沌」の魔手から地球を守りぬくことを目的とし 中 ! 詳しい事の問合せは左記へ。入場無料 ! ています。六十円切手一一枚を同封の上、住所、 日北海道 tnræクリスマスのお知らせ 氏名を明記して左記までご一報下さい 今年も札幌でクリスマスが開かれます。〒高砂市北浜町西浜一〇六二藤井光 〒小田原市板橋八七一ー七細井恵子 ・ヒデオ上映、マイコンゲーム等用意してます。 冬の一夜、仲間と共にすごしましよう。 香川大学研究会会誌 第一回「」ビデオ上映会のお知らせ 日時十二月二十六日 ( 亠亠 ) 午後三時 ~ 二十七「ファンタジア」創刊号増訂版発売解禁 , ・ 日 ( 日 ) 午前十時 先日発売致しました「 T' ファンタジア」第我が「 & 」では、この度トータルメディ アとしてのをより楽しむ為に、・ヒデオ上映 会場真駒内ハイツ北海道青少年会館 二号は好評のうちに売り切れました。そこで、 参加費午後三時 ~ 午後九時Ⅱ二千円 ( 含タこの度「ファンタジア」創刊号を増補改訂会を開始する事になりました。 広告 け 4