ローズ - みる会図書館


検索対象: SFマガジン 1982年1月号
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1. SFマガジン 1982年1月号

九時にべッドで船出して、・ほくは夢みる、優しい洗濯女ローズのをいれてもらうんだから』 ことを。 あたいは知ってたよ、あいつらが・ヘッドの枕もとに吊るすのは、 買ってもらったばかりの靴下なんだ。ローズに意地悪してやろうと 思ってやったのさ、おまえにはサンタクロースは来ないだろうつ 洗濯ローズ 冬の寒い晩、女はぼくに言った。 「声に出して言ってみな、クソッタレ、あたいのありがたいお名前 ローズのとしを・ほくは知らない。たぶんぼくのおふくろよりは若 いと思う。ローズのとしはシーツの皺の間に散らばっている。 ローズが洗ったシーツ。 裸の胸の上で、赤くひび割れた女の指をもてあそびながら、・ほく ローズが汚したシーツ。 「どうしてあたいだって、サンタさまを待っていけない理由があろ 「 : : : せんたくろおず」 「クリスマスイ・フにや、よく似合う名前だろ」 うかね」 ローズは吊るした、小さな靴下。階下の下の、天井が斜めの小部 知らなかった、その夜がクリスマスイ。フだなんて。知っていれ 屋、ひんやりとした・ヘッドの枕もと。 ゾレゼントのひとつも買って行ったのに。 「もう夜も明けようという頃だったよ。あたいは大きな男の人が部 ・ほくはローズにほれていた。 黙りこんでいるぼくに女はささやいた。 屋の中に入ってくるのに気がついた。 あたいは尋ねたーー与ンタさま、あなたですね ? するとサンタ 「お互いイエスさまマリアさまとは、お近づきがないんだものね。 さまは答えたーー『そうだよ可愛いローズ、こうしておまえのとこ たけど、あたいにもうぶな時分はあったのさーーー」 ろへやって来てやったよ』 女は始めた、身の上ばなしを。 あたいは胸をドキドキさせて見つめていた。サンタさまはべッド 小さい時からお屋敷奉公、小さい時から洗濯女。 「クリスマスが近づくと、お屋敷のクソガキどもは浮かれたつのの端に腰を下ろした」 きしるべッド。 。どうしてあたいだって、サンタさまを待っていけない理由があ わうかね」 光る両の目。 「・ : ・ : さんたくろおす」 「サンタさまは靴を脱いだ。靴は床の上で重い音をたてた。それか らサンタさまは靴下を脱いだ。汚れた、臭う、大きな、ぶ厚い靴 ぼくはつぶやく、ローズのひしやげた乳房に頬押し当てて。 「ガキどもはこっそりあたいのところにやって来て言うのさ 下。『ローズや、これも洗っておくれ』 『ローズ、この靴下をきれいに洗っておくれ。サンタさまに贈り物そして、サンタさまは自分の靴下を、あたいの、小さな、しみひ 2 ー 0

2. SFマガジン 1982年1月号

科学日険時代ー會津信 第十三回 昭和十年代後半の☆ばあと・わん 天佑ヲ保有シ萬世一系ノ皇祚フ踐メル大日本帝國天皇 ( 昭ローズ先生はこの時 ( ワイにいて、日本軍の奇襲を体験してい るそうな ) ニ忠誠勇武ナル汝有ニ示ス 朕ニ米國及英國ニ對シテ戦フ宣ス朕カ陸海將兵 ( 全力フ太平洋戦争開戦前の昭和十一一年には、蘆溝橋事件に端を発す 奮テ交戦ニ從事シ朕カ百僚有司 ( 勵精職務ヲ奉行シ朕カ嶽る支那事変が勃発。日本政府は軍事費を捻出するために、経済 庶 ( 各、、共ノ本分ヲ盡シ億兆一心國家ノ總カヲ擧ケテ征戦統制の強化を行なう。ます政府は昭和十三年に国家総動員法 を、翌十四年には国民徴用令を制定し、経済・人材・物資のす ノ目的フ達成スルニ遺算ナカラムコトヲ期セョ・ べてを戦争にむけて集中させた。そして国民の生活は「贅沢は 一体ナ = ゴトが始まったのかと驚く方もいらっしやる敵だ」のスロ 1 ガンのもとに厳しく統制され、また日常品の切 かもしれないが、これは恐れ多くも畏くも昭和十六年十二月八符・配給制度がとられるようになった。 こうして国が総力を挙げて戦争完遂に盲進しはじめると、当 ″召書である。 日に今上陛下によって下された一、〒″ 「皇皹」たの「嶽庶」だのとやたらムズカシい漢字が行列して然のように物質面だけでなく精神面・文化面の戦争協力が強要 されるようになる。そのため文学はいきおい戦意高揚を目的と いて、一読したたけでは何のことやらほとんど分からないが、 とにかくこの詔書にあるとおりわが大日本帝国は十二月八日をしたものが最重視され、それ以外のものは次々に緊縮されてい の一つとして、文章 もって米・英に宣戦布告し、海軍の真珠湾攻撃を皮切りに太平った。当時の極端な圧制を示す工。ヒソード の中で「乞食」という言葉が使えなかったという話を聞いたこ 洋戦争へと突入していったのだ。 ( ちなみに御存じ・・

3. SFマガジン 1982年1月号

、 / ドやるかしか、なかったんじゃな するようになった、そのはじまりが六〇年代よ。五〇年代とか四〇アッシンモデルになるか、 / 、 年代っていいかたになると、アメリカやヨーロツ。ハのはなしで」 い ? あの時代は。サラリ ーマンにはなれない。面接ではねられ ロミの誠実な口調は、かわらない。 る。すごーく不幸な人生ね。中国人だったら、目がつりあがっては いても、髪と肌の色はそうちがわないけど」 が、どんどんはいってきた。あ 「貿易の自由化が六五年。レコード のあとじゃない ? フェンダーのストラトキャスターもつの、はや「あの子がセールスマンにでもなったら、品物売れないとおもう りはじめたのは」 よ。お客さんが、こわがっちゃって」 ロミはかすかにわらった。 突然、有線から「ペイント・イット・・フラック」がながれてき た。まりこは、わーっと泣きふす ( まねをした ) 。ショッ : クカ大き「のみじめつぼさは、そこにあったのね。いまみたいにマルチ いのだ。。 フリテンダーズのあとなどにかかると。 が可能というか、ゆるされてなかったから、いくら人気があって も、精魂かたむけずにはいられなかった、という。ジュリー がその 「よかったわよねー、あのころ。郷愁もまじってるのかもしれない けど。でも、郷愁って、でっちあげだから、だとするとこれは自己代表で」 ギマンか ? ともおもうんだけど」 「星の動きに関係あるのかしら」 「ちがうわよ」とアミが断言した。「いまの二十五歳から三十五歳アミが妹にたずねた。 までがことに、それをつよく感じる、ってのはあるけど。それだけ「みたい。で、八二年が惑星直列たけど、これはどうなのかしら。 じゃない。みんな、もう、舞いあがっちゃったでしょ ? 家出ししかし、その瞬間に、カリスマがうまれても、有名になるまでには て、髪のばして。コンサー トいくのは不良だ、なんていわれるの十五年かかる。あたし、四十になってるわよ。だから、つまんな が、またサスペンスがあったりして。うちのママ、いわなかったけい」 ど。なにかがはじまるんしゃないか、ってわくわくしてたの。実際「ありやー、くるねえ。どんどんくる。、、 ししのかしら ? 」 「ラ・フ・ にはじめた子たちがたくさんいたし」 まりこが、うわっいた声をだした。どうしようもない。 ポーション・ナンく ・ 9 」ときたもんだ。 「おわりたったのよね。じつは」 今度は「シーズ・ノット・ゼア」である。なんという仕打ちだ。 「この時間、リクエストがすくないからよ。有線のひとの趣味で、 「日本の場合は」 とんでもない曲かかることあるわよ。うちのママがやってる店、歌 やっとのことでおちついて、まりこが発言した。「本人には酷な謡曲のチャンネルにしてあるんたけど、カーナビーツの『泣かずに ことだけど、差別がはっきりしていたから。なんにでもなれる、つ いてね』とか。あの気持ちわるさには、叫びだしたいくらいよ。ウ てわけじゃなかったから。ルイズルイスなんて、二十センチもあるオン・チ = ーばっかりなんだから、とにかく」 汽とみどりつにい目しや、もう定められてて。どうあがいても、フ 「つぎは『ュ ー』だったりして」とロ 6 8