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を、木を、草を、ひとびとを、愛している ) つきささるような、えぐるような悲哀、寒さ、孤独。 それらすべてを抱きしめ、それらを愛したいとぼくは思ったもの そして、。ヒンク・タワ 1 で。フライに抱きっき、歓喜とも苦悶とも 2 だった。それらがほんとうは、どんなものであるかさえ知らずに。 つかぬ声をたてている、けもののようなレダをみたときの、あの殺 : : : ミラも、それを味わ ・ほくはすっと、自分に無縁な《世界》をはなれたところからな意に似たものーー・嫉妬 ? それとも、怒り がめ、憧れにみちて胸をいつばいにしている、小さな赤ん坊だった。 ったのたろうか。憎しみーー自分を拒み、しかもたしかに存在して ・ほくはきっと、それの中に人ってゆき、それが・ほくのためにある いる世界ならば、こちらからいっそ抹殺してやりたい、狂おしいま のではない、と知るのが恐しくて、それでいつも、ひとりでかれらでの怒り。 から遠くはなれていたかったのだ。 そのことをミラに話したい そう、・ほくは激しく思った。何か 美しい夢。さびしくて、美しいけれど、何ひとっ実際とかかわるらどう話していいのかわからない。しかし、ミラならきっとわかっ ことも、生み出すこともない、まぼろしのシティ。・ほくが愛してい てくれる。おちつき払ったラウリや、満足しきったおとなたち、何 たのは、ま・ほろしのシティに住む、実体のない物語の人びと。 も考えたことのないような同期生たちには何のことかわからないだ それを・ほくに教えたのはレダだ。ぼくをその、さみしいけれどもろう。でもミラならわかってくれる。それどころか、ミラに、云わ 1 よ ここちょい、学者の眠りからひきずり出し、そしてひとり・ほっちに なくてはならない。・ほくがいろいろなことに気づいたように おき去ってしまったのは、レダだ。なぜってレダはシテイから拒まんやりの、ぐずのイヴでさえそんなにいろいろなことを考えたの れていたし、そしてあれほど熱烈に、アウラから愛されているのた だ。いつもしつかりした見かたをする、頭のいい、何でもできる同 から。 期のスターのミラなら、・ほくが見るだけで、わからなかったこと そして、性た。他の存在とふれあい、肌で、からだでくつつきあを、一緒にみて、そして理解してくれる。 しかも魂と魂がべつべつでいるということ : なんてさびしい街だろう , 人はなぜデイソーダーになるのか : : ・なぜ、人が人であり、われ なんて悲しい人間たろうー がわれであり、そしてぼくたちはこのようにさびしくて、手をのば こが・ほくの街、そしてぼくも、悲しみに縛られた人間であり してものばしても愛にとどかずー・ - ー・そしてこんなに寒く、見すてら もしレダとアウラに出会い、一連のできごとにぶつかっていなか ったらー・ーあのセクシャリスト・タワーのできごとでさえーーーとうれているのに、他人に求めることを、こんなにも厳重に拒まれ、禁 ていミラの心のひだに入りこみ、その考えを理解することなどできじられているのか、ということ : ( おれたちは、人を愛することなんかできないのさ ) なかったたろうと・ほくは思った。レダを抱きしめるアウラに感じた はげしい痛切なーー南浦でたったひとりで感じていた、身体がすそんなことはないよ、ミラーーーだってそれではあんまりさびしす きとおってしまうような透明ですんだ悲しみとはまるでちがった、 ぎる。ひどすぎる 何のために、生まれてきたのかさえわからな , に、ガこ
「それさ。おれが、ラウリがおまえに申しこんだときいてから、ず 彼は云った。 「あんな、つまらん模範市民のために、おれがのぼせが来て、矯正 ーっと、考えつづけていたのは」 そんなふうに センター行きになるなんて、思われたくないね。 ・ほくは、下の方で、何かサイレンのようなものをきいて、あわて やつの自尊心を満足させてやるのは、まっぴらだよ」 て見おろした。 「ミラーーーそれじゃ、なぜ : : : 」 ミラも見おろし、そしてくすっと笑った。 「さあな」 「来やがった。センタ】だ。大げさに、何台も車をつれてきやがっ 、ツ、ここからみると、まるでカプトムシだな。おかしい ミラは、ナイフをもってない方の手をあげて、つめを嘴んだ。 あれが、ここからだと、カ・フトムシにみ 「おれにもどうしてかよくわからない。ただ、わかるのは、おれと思わないか、イヴィ えるってのを、見てるのは、おまえとおれの二人だけしかいないん が、じっとしてられなくなった、ということだけさ」 「しっとしてーーーい られない ? 」 1 ま ~ 、よ、 ミラの感じたことがわかったと思った。一 「ああ。ーー・考えてみたんだけどな」 それは、何かしら、そくそくと身内にしみわたる感覚だった。誰 ミラは云った。 かと同じものを見、同じように感じているーー・ほくもミラもあの地 「たぶん、おれが、このままじやセンター行きだろうが何だろう が、かまやしない、という気分になったのは、別にラウリが好きで上からへだてられて。この広い、何百万の人を持っシティの中で、 ・ほくとミラ、たったふたりだけがこうしてここにいて。 好きでたまらなくて、それなのに。ハー トナーにしてもらえなかっ た、そのせいじゃないと思うんだ。だってーーそうだろう。おまえ やにわにミラは下へなかってどなった。風が、その声を吹きちぎ もいうとおり、ラウリはそんなにとりたてておもしろみのあるパ トナーじゃないと思うよ。親切で、 いい人だし、そのつもりで勉強った。 「きこえるか。 ししか、だれも、上ってくるな。だれもだ。上 すりや、模範市民にだってなれるだろうけどな ! 専攻はフイロソ ギルドにや信頼され、休みの日には、スクオッシュの選手つて来ようとしてみろ : : : このちびすけをつきおとして、おれもと びおりてやるからな。いいか、わかったか ! 」 権に出る、というタイ。フだろ , 第一、どうしてもそんなにラウリの・ ( トナーになりたきや、第下で、カプトムシと、そのまわりを走りまわるもっと小さい虫の ような人びとのうごきが、にわかにあわただしさを増した。その中 ートナーは、あい ートナーまで待っこともできるし : : : 第二。、 に、ラウリもいるだろうかと、・ほくは思った。 てがよけりや、複数でもいいんだしさ。いや、 . , イヴ。別に、そのこ とじゃない と思うよ、おれは」 かわいそうなラウリ、かわいそうな人々 ! かれらには、どうす 「ゃあ、なぜ・ . ・ : : 」 ることもできやしないのだ。ここにいるのは・ほくとミラ、二人だけ 240
は台所に舞い戻り、ポットに湯を注ぎこん は短縮コードを使っているのだ。 えていった。 あたしは溜息をついて、食卓に色どグよ , 2 だ。湯気と香りが顔をつつむ。あたしは幸 00 。間違うわけないわ、こんな数字。 福感をとり戻した。われながら単純なもの く並べた朝食を眺めた。焼きたてでうまそ あたしはフックを指で静かにおさえた。 うだったハムステーキはすっかり冷めてし かけ直しだ。今度はフル・ナン・ハーで。一 卵を皿にとって食卓にのせた。ハムとメ つひとつ、丹念に。やはり電話はすぐにつまっていて、溶けた脂は白くどろりと固ま ロン。鮮やかな色のコントラスト。それに ながった。コール音。ひとつ。ふたつ。出っている。ぼくはそれを二、三度フォーク 香り高いコーヒー 。ぼくは満足だった。おた。 の先でつついてみたが、すぐに嫌気がさし こいつらを片付ける前に麻理とコ さっきと同し静寂が回線の向うにあっ食う気がしなくなったので、フォークを放 ンタクトをとっとかなくちゃな。こないだ た。完全な沈黙が。あたしは受話器をおい り出してコーヒーカツ。フに手をのばした。 みたいな待ちぼうけはごめんだ。ぼくは移た。チンと軽い音がした。 こちらも、冷めきっている。それにもメゲ 動ワゴンを呼んで、その上の受話器をとっ 妙な不安が・ほくの中でひろがりはしめてずカツ。フを口に持っていくと、またしても いた。この理不尽な状況はまるでよくある オレンジ・ペコの匂いがした。かまわずロ コードナン・ハーを入力すると、すぐっな いたずら電話ーー他人に電話をかけておい に含むと、とたんに、たまらなく嫌なにお がった。快い呼び出し音が鳴る。ひとつ、 て何も言わずに切ってしまうあれ。ーーのそ いが口から鼻にかけてひろがった。あわて ふたっ、みつつ、よっつ、出た ! つくり逆だ。・ほくは受話器にもう一度手をて吐き出し、カツ。フをみると、紅茶は毒々 「もしもし ? なんつって。麻理かい ? のばそうとして、引っこめた。そう、恐か しい赤になっていた。どろりとした舌ざわ ったのだ。 ぼくだよ、・ほく。だ。でさ、待ち合わせ 。生臭さ。血 ! 細かく砕かれた骨片が の時間のことでちょっとーーおい、どうし イラついた、ほくはオーディオのスイッチ 白く浮いている。あたしののどがけっと鳴 た ? 何だまってるんだ。おい、麻理 を入れた。流れたした音は・ハッハのものだ った。ひどい吐きけに、あわてて洗面所に だろ ? なんかあったのか ? 返事ぐらい った。いつもなら聞きほれるはすの・フロッ 向おうとしたとき、強烈な幻覚があたしを しろよ。お : : : あ」 クフレーテのかけあいも、しかし今は味気襲った。 ブツリと軽い音がして、向うの受話器が なかった。それでもいくらか心は和んだ。 何かが火を吹いた。・、 ノランスを失う 静かにおかれた。電話はきれた。向うはひ第三楽章のフーガときたら、やつばりモー 感覚。歯の浮くような音。耳をふさぎ、目 とことも、そうひとことも口をきかなかっ ツアルトは天才ね。ーーーあたしはスウィッ を閉じて絶呷するあたし。 こ。間違い電話のはずはな、、 とあたしは チを切った。。ハ、 ーナと。ハ。ハゲーノの二重 麻理の顔。日本人ばなれした色の白さ。 思「た。てまをはぶくために、あたしたち唱が、行き先を見失い、すぐに弱々しく消さらさらの茶色つぼいロング〈ア。柔かそ
それに ル、ヨウ、あいつらは、どうだっていい。だって、 まで気づかすにいたことが、わかったような気がする。 」からな : : : イ 、つらは、とりたててパーソナリティというほどのものをもっちゃしても、イヴ、おまえ、本当に、自分が平凡だ、と考えてたのか ? ないんだからーーーあいつらが『おれはおれだ』といったところだとしたら、おまえはよっぽど、自分てものを知っちゃいないんだ おれは、そうかい、それがどうかしたか、と云ってやるだろう な」 そうだろう : 「だってぼくは、いまだに将来どのギルドに入りたいかも決められ だけどおまえは別だ。おまえを見てて、そして、おまえよりも、 ばくは抗議しかけた。そのとき、ラウリのことばがふいに記憶に ~ れの方がいつだって先だ、と思うこと、ーーそれはいい気持だ。そ レは、おれがおれだ、ということが重要なんだと、ここちよくおれよみがえってきた。 ( きみは、ユニ 1 クだ、イヴ ) 」保証してくれるんだ」 ( ミラよりも、きみの方が、それを必要としている、ということ 「どうして ? 」 は、・ほくには非常に明らかに思われた。ミラは安定している。安定 おどろいて、・ほくは叫んだ。 しているしセクシーだ。彼のパーソナリティは、もともと、アダル ? きみはいつも、・ほくをばかにして、 「一体また、どうして トのものなんだ ) ・・こからぼくよ、、 しつだっ 一らかって、皮肉をいうばかりでさ・ ラウリは考えちがいをしている、と・ほくは思った。何もかも考え 、きみにとてもかろんじられてるんだとばかり思ってたよ。きみ ミラはちっとも安定し そんなにこの・ほくのことを気にしてたなんて、・ーーでも、どうしちがいだ。・ほくはユニークなんかじゃない。 ても、アダルト的でもない。それどころかミラはーーーそう、何とい 、 ? 。ほくは平凡だ。きみより、スポーツも、学課も、カン・ハセー ったつけーー・・心理学の用語た、ええと : : : 《見すてられた赤ん坊》 , ョンも、何ひとっとしてすぐれてるものはないよ。イルやヨウよ , ・もっとすっと平凡なパーソナリティなんだ。いつだってぼくは、 〕分が平凡だってことを苦にし、何でもできるきみのことを、うら「ぼくは、ちっとも、ユ = ークじゃないよ」 ・ほくは云った。 、んできたよ。だのにな・せ 「・ほくはユニークじゃない」 だのにな・せ・ほくだったんだ ? 」 「それはな」 「誰も、おまえがユニークだとか、ジ】ニアスだとかといってるん ミラは鼻にしわをよせて考えこみ、すると奇妙なくらい大人っぽじゃないよ」 ミラは一瞬、いかにもいつもの彼らしい、つけつけとした、皮肉 。表情になった。 つぼい云い方になった。 「おれは、ラウリのことをきいてからずっと、おまえのことを、お 、えとおれのことを考えつづけていたよ。だから、ずいぶん、これ「むろん、おまえはユニークじゃないよ。ュニークなんてことはー テッド べイビ 243
ラ。かれらはーー自分と、自分であることが、びったりはじめから ひとつになってる。幸福で、平和で、満足していて、そしてーーーそ さる十月三十一日、新潟の書店、北光社の主催で、 況会 神林長平氏の「出版記念サイン会 & ハヤカワワー して自分を個性があり、ちょっとしたものだと考えている。だけど クショッ・フ」がおこなわれた。これはハヤカワ文庫 *-. ン どうして ある人たちはちがうんだ、ミラ。ある種の人間たちは <t より出版された『狐と踊れ』を記念しておこなわれ イ そうなのカ 、、ぼくはわからないけどーーー自分がどうして自分なのか たもので、会場の新潟商工会議所には熱心なファンが わからなし 、。ぼくはいま、何もかもわからないし、何をみても生ま サ集ま「た。 「ハヤカワワークショッ。フ」は、本誌編集長の質 れてはじめてみたような気がするんだ。そして、これまで、どうし 平問に答える形で行なわれ、の創作に関わる基本姿 て何ひとっ気がついていなかったのかと思うーー気がつくと、ぼく 勢から、日常のことまで、興味ぶかい話が聞かれた。 長 のまわりはまっくらで、誰もいなくて、とても寒くて : : : 誰もぼく また、新潟在住の唯一の作家ということで、地 元マスコミの取材も多く、新聞、テレビ、々一ウン誌に のことをわかってくれなくて、好いてくれなくて、みんなそれそれ 林 神林氏の記事が掲載されていた。現在、長篇を脱稿、 居ごこちのいい居場所があるのに・ほくはなくて、。ほくひとりが、道盛・子 意欲満々の氏に期待しよう。 に迷った迷子で、寒くて、とても寒くて、誰を呼んでいいのかさえ わからなくって : : : 」 ああーーーぼくは思った。ぼくは何をいってるのたろう。どうして ・ほくは、こんなことを云ってるのだろう、こんなことを、知ってい るのだろう。それもこれもみんなあのせいだ、あのーーー暗闇の中 に、白く、ほっそりと、ひとつの顔がうかびあがってくる。そして それにおおいかぶさるもうひとつの顔。 ( レダ ! ) あのときまで、・ほくはたったひとりで、自分がひとり・ほっちたと いうことに気がっかないのでまるで植物か、小動物のように満たさ れて、寒いままで満足してうろっきまわっている小さな風たった。 ・ほくはコモン・エリア南にゆきーーぼくと相入れない、同い年 の友達といて退屈するよりも、透明なさびしいここちよさを抱いて 風と草のあいだにたったひとりでいて、そして歌をうたっていた。 ( 愛している、愛している。ぼくはシティを愛している。ぼくは風 245
しかし、たまに通るものがびつくりしたようにぼくたちを見、あ を殺す、と宣言した以上、ぼくがセンターを呼ぶことは、じゅうぶ ん、予期しているだろう。ちゃんと、身をかくせるところにいるは わてて、礼儀正しく目をふせてゆく。。フライヴァシーにふみこんで 3 2 ずだ。 はいけないからだ。 しかし、ラウリがぼくのユニットに入るところをみていたという その、善良な市民たちが、なんととおい存在であったことかー ことは・ まるで、・ほくと、かれらとのあいだに、目にみえないあつい膜が ( そうだ。それに、ヴィジフォーンをかけられるところでなくちやできてしまっているかのようだった。こんな非日常的な、まるで立 いけないんだ ) 体のドラマみたいなさわぎでかけまわっているぼくと、何もか ラウリがすでに、彼がヴィジフォーンをかけに公共用フォンへでわりのない生活をいとなんでいるかれら。きのうまでと、同じ市民 ミラのし もゆく間にぼくのユニットを出てしまっておれば、 、つもと市民だというのに、かれらにむかって手をかしてくれとたのなこ ともできないし、かれらがどうしたのかとたすねることもない。 見張っているそ、というおどしは、何のききめもあらわさなくなっ てしまうだろう。 《個人的な問題》それが・ほくとかれらとの壁だ。かれらは何であれ だから、ヴィジフォーンをかけながらでも、・ほくのユニットの入そのやっかいごとが自分のものでないこと、自分が何にもやっかい ごとを持ちあわせておらぬことを O ・ O に感謝しつつ大いそぎでそ 口が目に入る場所でなくてはならない。 こをはなれてゆくだろう。 と、すれば : 「イヴ。ね、イヴ、危険なことを好んでするのは、ばかばかしいよ くがかれらでなく、かれらが・ほくでないことはどうしようもな : イヴ、待っておくれ」 いのだ。 「ラウリ、手わけしてさがしましよう。ぼくはこのレーンから右を ( レダ ) みますから、あなたは左を」 ・ほくはレーンからレーンへと、いっ殺人者とぶつかるかわからぬ 「いやだ」 小道をかけまわりながら、ふっとよびかけていた。 よっこ。 ラウリは一ムいー ( アウラ。 わかったような気がするよ。あなたたちはいつで 「ミラは、センターにまかせておけばいいしゃないか。どうして、 も、ふつうの善良な市民にとっては、かかわってはならぬやっかい こんなふうに逸脱してしまったもののために、かけまわったりするごとそのもので : : : デイソーダーである、というのは、そういうこ 必要がある ? ぼくはーーこ とだったのでしよう ? 同しシティの中にいながら、身のまわり 「いいから見にいって下さい ミラは、あなたには、危害を加えやに、あついガラスの壁をもちはこび、ひたいに《不可解》の刻印を しませんよ」 きざみつけて : : : 孤独ーー他の誰とも似ていないこと : : : ) レーンには、あまり、人かげはなかった。一 ( だがなぜかれらはそうだったのだろう )
スカイラインが展示されている。 っ下も、今日で三日めらしい、ひどいニオイを放っている。 6 3 ぼくは丸目のテールラン。フをのそきこむようにして、パンフレッ に出会ってから、ずいぶんおしゃれになった。 だが、どうも最近、かっこうばかりきどって、なかの腐った果実トをまたひっくり返した。 「いかがです、失礼ですが、お客さまは今、何にお乗りですか ? 」 のようなものがジクジクとしみ出してくるような気がしてしかたが ・ほくは肩をすくめた。 パンに、かわいげのない黄上 かぎ裂きだらけの洗いざらしのジー カ・ハみたいな尻を左右にふりながら、 。ハ。ハアが奥の間へひっこ む。女のくせに、 ーマのかかりすぎた髪の中央は地肌がすいて見色のシャツ、その上にどう見ても浮浪者ふうの戦争色のジャンパ える。 ーをひっかけている・ほく。 さえない見かけどおり中身だって貧乏な学生で、今だってクラ・フ・ 敦彦は森田出版と印刷された茶色い封筒のロを指で裂いた。 まず目次を開いて確かめ、インクの匂いを嗅ぎながら、。ヘージをの調理場の・ハイトにゆく途中にちょっと立ち寄ってみただけなの くる。 「え、あの、スパルですけど : : : 」 ちょっと毛色の変わった作品を書いたので、今回はイラストレー ターがちがう。 ス、く、ルと申しますと : : : 四輪駆動のつ・ 「ああ ? 「しかし、あの車はですねエ・ 大宇宙のセールスマン セールスマンはあいかわらずチェシャ猫の笑みを満面に浮かべな がら、底の知れないビーズ玉のような黒目で・ほくを見つめている。 内山敦彦 彼のロはゴムでできているかのようにフニヤフニヤよく動く。 だが彼は一つだけ大きなまちがいを犯している。 口から先に生まれてきたような男だった。顔色は蒼ざめているが ・ほくの車は確かにスパルだけど、なんかじゃない。妹に 頑強そうなアゴを前につき出し、チェシャ猫みたいなに・やにや笑い ″食パン″とののしられ、ガールフレンドには″発酵中の肉マン〃 を顔じゅうにはりつかせている。 と嘲笑された、黄色のサイハ 「いかがでしよう ? 」 男のくどくどした説明は永遠につづくかとさえ思われた。 ・ハンフレットにひととおり目を通して、質問がいくつか頭の中に 浮かんできたちょうどそのとき、ころあいを見はからって、その男 ・ほくが・ほうっとしてそのひるのような収縮性のあるくちびるに が声をかけてきたのだ。 入っていると、セールスマンはよほど誤解したらしい、・ほくの左腕 銀座四丁目の交差点のかどにある日産ショウルームでは今、愛のをしつかりつかまえて、すみのソフアへズルズルひつばっていっ
せばもっともエチケットにかなったかたちで、ラウリの。フロポ 1 ズ とで、他の善良な人びとのうける。 をなかったことにできるだろう、と考えつづけていたからである。 病院での後半五日間はだからとても退屈だったが、しかたなかっ ミラと給水塔の上ですごした短いあいだに、奇妙なことだが、ミ た。外へ出られるようになるとすぐ、ぼくはとび出しーー歩きなが ラのあの皮肉つばい、しかしほんとうは稚くてたよりなげな魂が、 らも、何というかを頭の中でくみたてていた。 まくの中へ入りこみ、・ほくをかえてしまいでもしたかのよう ( ねえ、ファン。人間がそんなものなら、どうして・ほくたちはこん何だかに なふうに暗さ、寒さ、さびしさを感じないように目かくしをされてだった。 ぼくはもはや、それ以前のぼくのように寝んねではなくなったと いなくてはならないの。・ほくはむしろ、そういうものとあってはじ いう気がしていたし、その上、ものごとを、いくぶんミラのように めて、人をわかるような気がするよ ) ( だからだよ、ポーイ。だから、かれらは、『幸福であること』を皮肉つぼい、さめた、距離をおいた目でみるくせがついていた。そ 権利じゃなく、義務に入れているのだよ ) うなってみると、それ以前にぼくの抱いていたたくさんのコン。フレ おお、ファン、なっかしい、大きな、毛ぶかい・ほくの友達ー ックスや悩み、ステイへのうらやましさだの、ラウリがぼくをえら なんて長いことファンに会ってないのだろう。レダもむろんだんでくれたという子供つ。ほい誇らしさだの、そういったものが、も が、それよりどうして、ファンにこんなに会いたくて、そのしめつ はや何の意味ももたなくなってしまっていることに、・ほくは気づか た鼻づらにほおをおしあてたいのかーーきっとあのイヌという種族ざるをえなかったのである。 の中には、たとい人のことばをしゃべろうが、しゃべるまいが、人まったくどうして、あんなに周囲からどう思われるか、他の同期 間という種族とのふしぎな交感、種族のレベルでの本能的な愛情が生とくらべて何が水準で、何が劣って、といったことばかり苦に 流れているのだろう。 し、得意に思ったりひけ目を抱いたりしていたのか、自分でもわか たいていの人間たちよりも、ファンのほうが、ずっとすっと愛すらぬくらいだった。しかも、・ほくは別に、かれらの判断を尊重し、 るのにふさわしい ・ほくは、苦い気持で、ラウリとかわしたさい それのよって来たるところである、かれらの。ハーソナリティを、す ごの会話を思い出していた。 ぐれたものとして評価していたわけでさえなかったのだ。 ミラの死んだあと、ラウリは責任をとってーーあるいは 0 ・ 0 の ( 何て、ぼくは支離減裂だったのだろう ) 配慮により 他のセクションへうつり、居住エリアもかわったと じっさいには、ああした事件のあとでーーーよしんばそれがぼく自 いうことで、それはむろん、例の第一。 ハートナーの。フロポーズも反身には、何の罪もない、たたのまきそえであったところで、ぼくが 古にする、ということだったし、それには・ほくも異存がなかった。 常ならぬ体験にあった、という点では、何のちがいもない。 9 というよりも、その点でもラウリはまことに完全な市民だというべ そして、ふつうの、善良な市民たちがつねにもっとも恐れ、遠ざ きだった。なぜなら、・ほくは、毎日べッドでひたすら、どう云い出けておきたがるのはーー、あれほど「ユニーク」にあこがれているく
りつよいし、力もある。スポーツもとくいだ。でも に、おどろき、茫然としていた。こんなことが、信しきっていたシ ( 待ち伏せ ? ) ティで起こりうるとはーーーそう、もし、いまミラがおどり出てき 3 2 このせまいユニットの中に、かくれる場所があっただろうか。 て、・ほくの腹にナイフをつきさしたとしても、・ほくのさいごに思う ある。 ことは、むしろそのおどろきでしかなかったたろう。 バスルームだ : : : ふいに、ぎゅっと、何かのかたまりが結節し シティでは、いつだって、すべての人間は礼儀正しく、節度を守 り、そうして距離があるものだとばかり思っていたのにーーーもしか 全身があついのか、冷たいのか、わからなくなってきた。 ミラして、ぼくは、自分の同期生や、人間そのものについても何も知ら は、・ほくのユニットを叩きこわし、そしてパスルームにかくれ、ぼ なかっただけではなく、セックスや、愛や、人と人とのつながりに くが彼の呪詛のメッセージをききおえるまで、じっと息を殺して待ついて何ひとっ考えてみたこともないだけではなく、このシティー っていたのか ? ー・ほくが所属しており、そしてずっと愛していると信じてきたたっ たひとつのもの、それについてさえ、何も知ってもいなかった、と もうまちがいない いうわけなのだろうか ? とうして、へやに入ると同時に。ハ スルームの中までたしかめておかなかったのだろうとくやんだ。・ほ だとしたら、・ほくなんて、まるであわれな石ころか、虫けらみた いなものだ。 くだって、じゅうぶんすぎるほど、実際的じゃありやしない : 、カ あわれな、みじめな、ばかなイヴ、こんなことになっても、まだ あっけにとられて考えこんでいるなんてー ( ラウリ ) そうだ。ラウリが、もうすぐここにきてくれるはずだ。 ガタン、と大きな音がたてつづけにした。・ほくはスルームへむ それまで待てばーーそれまでに、 ミラがススルームからとび出しかってふみ出そうと思いながら、悪夢の中のようにどうしてもそう できないでいた。 て、おそいかかってさえ来なければ。 そのとき、別の音 ドアのチャイムが鳴っこ。 何ということだろう。この、平和なシティでーー最も安全なシテ 「ぼくだ、イヴ。ラウリだ。あけてくれ」 イの、自分のユニットで。 「どうそ」 ミラは、一体、どうやって・ほくを殺すつもりだというのだろう。 カギなど、かかってもいないのに まったくラウリは実際的で ナイフ ? 手で ? それとも、殴りつけてフ 恐いというより、むしろ、全身の中から何かがこみあげてきて止ない 「そのう , ・ーー失礼するよ、イヴ」 まらない。ふしぎなくらい、自分の身に危害の及ぶという恐怖はな くて、ただ、こんな悪意、それが自分に向けられていること、それ「人って下さい、入って。早く」