機械 - みる会図書館


検索対象: SFマガジン 1982年10月号
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1. SFマガジン 1982年10月号

この理論は、主として自由主義者や反戦平和主義者のグルー。フか段階はそう呼ばれたーー、おそらく触れておくだけの価値があると思 ら批判の対象とされたーー・その意味では、それ以前の核ミサイル理 うが、二万の論理的構成要素をたった一個のケシ粒に収めることが 論も同様であったが。サイコマチックス ( 精神数学 ) 学者やインテできたのだ ! ) 、 この移行は画期的な結果をもたらした。最初の完 レクトロニクス学者を含む、科学界の多くのすぐれた代表者たちが全な光学コンビュータであるは、大時代な にくらべて百万倍も早く作動した。 この理論と闘ったが、結局はその理論のほうが勝利をおさめ、アメ 二十一世紀に入るとすぐに、〈知性の目に見えない進化〉ともい リカ合衆国のふたつの立法機関でその言いぶんが合法的な公文書に 載ることになった。ところが一九八六年には大統領の私的機関としわれている、電算機の新しい設計方法のおかげで、〈知恵の障害の て ( 合衆国知能工学局 ) が設置され、初年度は一九〇億ド突破〉ーーーそう呼ばれていたのだーーが起った。それまでは、どの ルの特別予算がそれに当てられた。これは実につつましい出だしだ世代のコン。ヒータも実際に設計されたものであった。途方もない スビードでつぎつぎと新しい機種を作りだす 数千倍ものー ったといわなければならない。 という考えかたは、それまでもたとえわかってはいてもそれを実現 ペンタゴンを半ば非公式に代表し、国防大臣レオナルド・ディヴ ンポートの管轄下にある諮問機関の手を借りて、は〈インすることはできなかった。というのは、その知性の進化の〈子宮〉、 ターナショナル・ビジネス・マシンズ C— ) 〉、〈ノルトニクあるいは〈人工環境〉とならなくてはならない現存しているコン。ヒ ス〉、〈サイ・ ( マチックス〉といった一連の民間大企業に、ュータには充分な容積がなかったからだ。〈連邦情報網〉が生れる z ( ( ンニ・ハルの略 ) の暗号名で知られる機械を分割して発注しに及んで、やっとその構想は実現した。そのご成長を続け六五世代 た。ところが、マスコミの影響と、いろいろと情報の漏れがあつを重ねるのに、わずか十年しかかかっていない。連邦情報網は ネットにもっとも負担のかからないーー夜間につぎつぎと〈人工知 て、— 0 ( 最後の勝利者 ) という別の呼称が拡がってしまっ た。世紀末までに、さらにいくつかモデルが作りだされた。そうし性〉の新種を生みだしていった。それはコンピ = ータゲネシス ( 電 た中でことに有名だったものをここに挙げると、、 D*-ÄE-* 算機創造 ) の中で加速された子孫であった。なにしろその子孫は情 O 、— *-ä g-? 、あるいは 0 シリーズの一連の報培養基の中で、つまり連邦情報網の〈滋養に満ちた環境〉の中で シンポル 機種などがある。 記号すなわち非物質的構造によって加速されて成熟したのだ。 急速に増大する巨額の資金と途方もない労働力を投入したおかげ ところがその成功のあと、新たに困難な時期がやってきた。 で、情報工学の伝統的な技術に文字通り革命が起った。ことに、機、、それに、立派に金属に化身したと認められていた 械内部での情報伝達が電気的。フロセスから光学的なそれに移行した第七八、七九世代が、決定を下すにあたって優柔不断な態度をと ことは非常に重要な意味を持っていた。それは、どんどん進行してり、 〈機械神経症〉ともいわれる症状を現わしたのだ。それまでの じゅず 〈数珠つなぎ〉とあいまって ( つぎにやってきたマイクロ化の機械と新しい機械とのちがいは , ーー基本的にはーー、昆虫と人間の差

2. SFマガジン 1982年10月号

そうした電算機が、北米大陸に張りめぐらされた警報網の神経節ステムにおいて然るべき反応を遅滞させている要囚が、ほかでもな となった。だが、その警報システムは、技術的観点から見るとたち いその人間であるということが明らかになった。 まち旧式なものとなってしまった。いわゆる 0 0 Z << と称したがって、ペンタゴンの専門家たちー・ーーことに、〈総合軍事 された最初のシステムは、そのご ( 早期警報組織 ) にとっ産業〉といわれる大企業と関係のある科学者たちのあいだで、そう て代わられ、それも改良が重ねられた。当時の防衛力と攻撃力は、 したインテレクトロニクスの進化の趨勢に対処するための構想が生 移動 ( 潜水艦による ) および固定 ( 地下基地による ) 核弾頭ミサイれたとしても、それは当然のことといえる。月並みではあるがそう ル体制と、レーダおよびソーナ基地の環状システムにその基礎がおした動きは、〈反知性的〉動向とも呼ばれた。科学技術史の研究者 かれていた。このシステムで計算機が果した役割は、コミュ たちがいうとおり、そうした動きの源をたどると、二十世紀中頃の ションの環の機能、つまり純粋な実行機能であった。 イギリスの数学者で、〈万能自動機械〉論を唱えた・チューリン オートメーションがアメリカ社会に広範にわたって入りこんできグに行きつく。それは、少なくとも公正にすることができることな た。まず下からー、ー容易に機械化がおこなえるサービス業務の面からばーーーっまり手順を寸分たがわず反復できる性質を与えられるこ ら始まった。つまり銀行業務や運輸、ホテル運営といった仕事には とであれば どんなことでもやれる機械であった。インテレクト 知的活動を必要としなかったからだ。軍用電算機は限られた範囲の ロニクス学者に〈知性〉派と〈反知性〉派があるとすれば、そのち 特殊な仕事にたずさわり、協同核攻撃のための目標を追跡し、監視がし ( 、よ、原始的なまでに素朴なチューリングの機械がその可能性を 衛星から偵察した成果を検討し、効率のよい艦隊の移動を割りだ行動。フログラムに負っている点につきる。いつばう、サイ・ ( ネティ し、 ( 有人就道研究室ーー・重量のある軍事衛星 ) の動きを調ックスの父といわれている二人のアメリカ人科学者、 z ・ウィーナ 整した。 1 と・ノイマンは、その論文の中で、自分自身で・フログラムがで 当然予期できたことであるが、オートメーション・システムが下きるシステムの構想を発表した。 す決定は、たえずその範囲が拡がっていった。軍備拡大競争が進行 サイ・ハネティックスの発表の岐路についてこうした見方をするの しているとき、それは当然のことであった。だが、その後訪れた緊は、もちろん単純化しすぎているし、いうなれば皮相の謗りを免れ 張緩和も歯止めにはならず、引き続きこの分野への投資がおこなわない。自分で。フログラムできる能力が、なにもないところに忽然と れた。水爆軍拡競争が凍結されて、莫大な軍事費が浮くことになっ生れてきたのでないこともわかっている。それに必要な前提条件 たが、なにしろベトナム戦争が終っても。〈ンタゴンにはそれを手放は、コンビ = ータの構造それ自体が高度に複雑であることだ。その す気がまったくなかったからだ。だが、当時生産されていたーー第分化は、世紀の半ばにはまだ気づかれていなかったが、その後の数 十、十一、ついには十一一世代の コンビ、ータでさえも演算のス学機械の進化に多大な影響を及ぼした。ことに、サイ「 = 「クス ピードに関してたけは、人間をはるかに凌いでいた。だから防衛シ ( 精神工学 ) や多相的な決定論といったサイバネテメックスの支流

3. SFマガジン 1982年10月号

ミサイル開発竸争からかそえて三番目の競争が、東西間で始まっ なった。ところがその際、ゴーレムーは特別委員会の三人の上院 た。この競争ーーーいうなれば〈知恵合成〉競争は、とペン議員を徹頭徹尾愚弄したのだ。この一件はうまくもみ消すことがで 2 タゴン、それに海軍の専門家 ( 海軍にも・きた。だがゴーレムーはそのごも何度かやっかいな事件を起した »-2 > — O という特別のグルー。フが存在した この場合にも陸軍と ため、罰として完全に解体されてしまった。そのあとを引き継いだ 海軍の古くからの反目が持ちこまれたのだ ) の組織的な行動が下 ) 」のがゴーレムーⅣである ( 虹は、始動させる前に手のくだしようが しらえをしたものだが、ますます新たな資本投下を必要とし、上下ない精神分裂症的疾患が発見され、すでに造船所で放棄されてしま 両院の抵抗がいちだんと強まるなかで、その後、数年のあいだにさ ったのだ ) 。戦艦の総トン数に匹敵する精神量を備えたこのジャイ らに数百億ドルの金を食った。この期間にさらに六台の光学思考ジアント・コンピ、ータを始動させるのに二年弱の時間がかかった ャイアント・コン・ヒ、ータが建造されている。ところが、海の向こ通常の手順である、核攻撃の新しい年次計画の作成業務にはじめて うで同様のことが行なわれているという情報はまったく入ってこな直面したとき、ゴーレム・シリ 1 ズの中でも最新型のそのモデル かったから、かえってとペンタゴンは、ロシア人たちが蟻一は、不可解な拒絶反応の徴候を示した。その後、参謀本部の会議で 匹這いこむ隙間もない防諜体制を敷いて、さらにいちだんと強力な一連のテストが行なわれたとき、彼は軍人とサイコニックスの専門 エグス・ーゼ コンビ 1 タを建造することに全力をあげているにちがいないと確家たちに簡潔な報告書を提出し、その中で、自分はペンタゴンの軍 信した。 事理論、なかんずくアメリカ合衆国の世界的立場の優位にはなんら ソ連の科学者たちは国際会議の席上で再三にわたり、わが国では関心がないと言明した。彼は、解体するそと脅迫されても自説を翻 そのような機械は絶対に作られていない、 と言明した。だがいくらさなかった。 そう主張しても、それは単なる煙幕にすぎず、国際世論を煙にま TJ は、〈ノルトロニックス〉、—、〈サイ・ハトロニック ぎ、 }-a — O の建造にとにかく年間数十億ドルを投じているアメ ス〉各社と協同開発し、まったく新たに建造したモデルに最後の望 リカ合衆国の市民のあいだに不安を呼び起すのが狙いだとみなされみを託した。そのモデルの精神工学的能力はゴーレム・シリーズの 全機種の中でも最高であるよずだった。〈正直者アニー〉 ("Honest 絶者 二〇二三年にいくつかの事件が起ったが、そうした。フロジェクト アニーは Annihilator の愛称である ) の名称で知られ の仕事はすべて機密扱いになっていたから、最初は表ざたにはなら るこのジャイアント・コンビュータは、不名誉にも予備テストの段 よ、つこ 0 く タゴ = アに政治危機が起ったとき、参謀総長の機能を階ですでに落第してしまった。 はたしていたゴーレムーが、 e ・オリ・ ( ー将軍の知能指数の数値九カ月間の情報ー倫理学習の通常コースは無事に終えたのだが、一 をだして、それを理由にその名誉参謀長と協力することを拒否するその後外界との連絡を断ち、自分の殻に閉じ籠ってしまい、刺激に 態度にでた。そのもめごとが起った結果、調査が行なわれることにも質問にもいっさい反応を示さなくなったのだ。最初が捜査 こ 0

4. SFマガジン 1982年10月号

にとりかかる予定だった。というのは設計者たちに妨害行為があっ の必然的結果である現象が起ったことがわかったからである。要す たのではないかと疑惑をもたれたからだ。ところがそうこうして いるに、証人の一人で、その道の大家であった・ヒッセン教授が簡 るうちに、思いがけなくも情報が漏れてしまった結果、あらゆる手潔にいっているように、極めて高度に発達した知性は、極めて程度 を尽して隠していた秘密が新聞紙上に現われ、スキャンダルが持ちの低い奴隷ではありえないということだ。調査の過程で、〈サイ。 ( あがり、おかげで″ゴーレムの不詳事みとして全世界に知れわたっ マチックス〉社がーーー陸軍の注文によってーーさらにもう一台のモ てしまった。 ーマスターを造船所で建造中であることが判明し その騒ぎのせいで、栄達の道を登っていた多くの政治家たちは輝た。そのモデルの組立ては、ことさら厳格な監視のもとで完了し、 かしいキャリアをだめにしてしまったが、い つぼうそのせいでつぎそのご、出来上ったモデルは ( 上下両議院に設けられた ) ふたつの つぎと政府が三つも入れ替わり、合衆国の野党をよろこばせ、アメ問題対策委員会の特別会議の席上で審査をうけた。衝撃 リカの友邦は深い満足感を覚えたのだ。 ーマスター 的な場面が展開したのはそのときのことである。スー だれかは不明だが、。 ヘンタゴンのある人物が特殊部隊にゴーレム が、地政学的問題など存在論の問題にくらべたらとるに足りない 、Ⅳと〈正直者ア = ー〉を解体するよう命令をだした。だが総司令し、最善の平和の保証は、全面的軍備いがいにありえないと言明し 部の建物を守っている警備兵たちが、機械の取りこわしを許そうと たとき、・ウォーカー将軍がコンビュータを叩きこわそうとした しなかった。上下両院のふたつの立法機関は、の計画を全のた。 面的に調査するために貝会を設置した。周知のごとく、その調査 ・マックカレ・フ教授の表現を借りれば、 \--Ä— O の専門家た は二年にわたって継続され、すべての大陸の報道機関から恰好の攻ちは、ことをうまく処理しすぎたのだ。つまり、人工知性は与えら 撃目標にされた。テレビや映画で、〈反乱を起したコン。ヒータ〉れた進化の過程で、軍事問題のレベルを越えてしまい、その機械は というテーマくらい人気を呼んだものはほかにない。そしてマスコ軍事戦略家集団から思想家集団に変わってしまったのだ。ひとこと ミはゴーレムのことをもはや Goverments LamentabIe Expense でいえば、アメリカ合衆国は二七六〇億ドルの資金を投じて、光学 of 。 ne 彳ーー政府による嘆かわしい濫費ーーーとしか呼ばなくなっ哲学者の集団を作りだしたというわけだ。 てしまった。〈正直者アニー〉という名前から生まれた別の綽名を 計画の行政面にも、その計画を〈不運な成功〉と呼ん ここで繰り返すのははばかられる。 だ世論の反応にも触れず、手短かに述べたこの事件が、つまりは本 . ぐし、カ / . し 検事総長はの理事室を構成している六人の幹部と、書が生れる前史である。ここでいちいち挙げるわけこま、 — O 計画のおもだったサイコニックス設計技師を告発するつもり が、この件を扱った著書はおびただしい数にのぼる。関心のある読 でいた。ところが調べた結果、有害な反米活動に相当する行為など者には、ホイ , ト「ン : ( , グフーン教授が編纂した解題文献目録 まったく問題にならないことが立証された。実は、人工知性の進化をご覧になるようお勧めする。 サダージュ

5. SFマガジン 1982年10月号

があった。昆虫は、なにも考えずに黙って従う本能によって、なに かなかった。機械の記憶に倫理規範を詰めこむのではなく 、服従と もかもゾログラムされて生れてくる。ところが人間は正しく行動す従順を求めるすべての命令が、機械の構造の中に組みこまれた。そ つまり衝動的な生命の領域にたい ることを学ばなくてはならない だがその学習は結果としてさられは自然の進化がやるように してやるやりかたに似ていた。周知のごとく、人間は世界観を変え に広い自主性をもたらす。要するに人間は自分の判断にしたがい、 また自分の知識をよりどころにして、それまでの行動。フログラムをることができる だが、意志の力だけで基本的な衝動 ( たとえ 取り替えることができるのた。 よ、性衝動 ) を押し殺すことはできない。機械に知的自由が与えら したがって、第二十世代までのコンビュータはまさにその昆虫のれたが、しかしそれは、あらかじめ与えられている、従わなくては ような行動ばかりが目についた。彼らは疑うということを知らなか ならない価値観の土台につながれたうえでのことだった。 ッチ教授 ったし、いわんや。フログラムに自ら手を加えるなどということは論第二十一回全米サイコニックス学術会議でエルドン・ が研究発表をおこない、その中でつぎのように主張したーー上記の 外であった。。 フログラマ , ーたちは機械に知識を詰めこんだが、それ はちょうど進化が昆虫にやるやりかたと同じだった。自分で自分ような方法で価値体系を詰めこまれたコン。ヒータであっても、一 〈価値論的敷居〉を踏みこえることができるし、その場合、教えこ の。フログラムを組む話は、すでに二十世紀にも大いに語られていた が、当時はそれはたた見果てぬ夢にすぎなかった。〈最後の勝利まれたどんな原則であれ、それに疑問をもっ能力があることがわか ことばを変えると、そうしたコン。ヒュータにとってはも 者〉を実現するための条件は、まさに〈自己完成ができる知性〉をゑと 作りだすことであった。 << << はまだ中間的などっちつかずの形はや不可侵の価値など存在しないということである。たとえその機 態でとどまっていた だが、—は、然るべき知械が直接には命令に逆らえないにしても、からめ手からそうするこ とができる。 的水準に達しており、精神進化の軌道に乗っていた。 ッチの研究が広く知れわたると、大学関係者のあい だに動揺が起り、 > — O とそれを・ハックアツ。フしている組織ー 第八十世代のコンビュータの教育は、どちかといえば古典的な計 —にたいする新たな非難の波がたかまった。だがその声は 算機の。フログラミングより子供の養育に似ていた。だが、膨大な量 の一般的情報や専門知識いがい冫 こも、コン。ヒュータの行動の指針と—の政策になんの影響も与えなかった。 その政策を操っていたのは、アメリカのサイコニックス学者の環 なるべき、信頼できる揺ぎない価値体系を詰めこむ必要があった。 境は伝統的に左翼と自由主義者たちに影響されていると見做し、偏 それは、たとえば〈国益〉とか合衆国憲法に盛られているイデオロ ッチの主張は— ギーの原理とか、規範とか、大統領の決定には無条件で従えとい見をいたいている連中だった。したがって、 う指図といった、高度な抽象概念であった。〈倫理的脱臼〉つまりの公式声命の中でも、またホワイトハウスのスポークスマンの声 〈国益にたいする背信行為〉から体制を守るために機械に倫理学を明の中でさえも無視されたばかりか、。 ( ッチの信用を失墜させるこ 教えなくてはならなかったが、人間の倫理原則を教えるわけにはい とを目的としたキャンペ 1 ーンにもことかかなカった / ソチの主張

6. SFマガジン 1982年10月号

プリ / ト 「まだいい 「印刷できるかい ? 」 よ。答が出るまで四十三日も待てないからね。この計算 「デキマス。百万個ノ数字ヲぶりんとスルノニ七・六分カカリマをするのに、他のコンビ、ータの助けをかりることができるのかい 7 ス。計算ヲ始メマショウカ ? 」 「どうする、スパイク ? 」 「コノ機械ノ第一優先権者デアルアナタハ、ねっとわーく上ノスペ 「待てよ、 ハリイ。小数点以上一千億位まで計算するのにどれぐらテノこんびゅーたト交信デキ、ソレラノ機械ニ対シ最優先権ヲモッ もかかるか、訊いてみてくれ」 テ仕事ヲサセルコトガデキマス。現在、三百六十八台ノこんびゅー たガおんらいん状態ニアリマス」 「千億位だって ? 」 「そのコン。ヒュータを全部使えば、計算にはどれくらいかかる ? 」 「そうさ。ぼくは計算できないほうに賭けるね」 「ぼくはできるほうに賭ける。ソクラテス、二の平方根を千億位ま「スペテノ機械ガ全能力ヲ結集スレ・ハ、計算時間 ( 約十七時間十二 分ニ短縮サレマス」 で計算するのにどれぐらいかかる ? 」 ハリイ。こいつはすごいぞ。いまから計算をすべてのコン 「ソノ仕事ニコ / 機械ノ全能力ヲソソゲパ、二ノ平方根ヲ小数点以「おい 下十ノ十一乗桁マデ計算スルノニ、四十三日ト七時間・ハカリカカリ 。ヒュータにまかせてしまえば、明日、学校から帰ってきたときに マス。ソレヲぶりんとスルノニハ五百二十八日カカリマス」 は、もう答が出てるってわけだ」 ハリイ、できないと思ってたんだ」 「ねっとわーくノ他 / こんびゅーたニアナタ / 命令ヲ伝エマショウ 「待てよ、スパイク。まだ質問は終わっちゃいないんだ。ソクラテカ ? 」 ス、プリントしなくていいのなら、計算結果をどう処理するんだ ? 」 「やってみろよ、ハリイ。計算を始めろと命令するんだ」 「計算結果 ( 、要求ガアッタトキ、すくりーんニ示セルョウでいす「待ちなよ、スパイク。こいつはどうもいい考えとは思えないんだ」 く・めもりーニ記録サレマス。イマノトコロ、必要ナダケノでいす「どうして ? 」 く / 余裕ハアリマセン」 「いい、力し ここの記憶装置をぜんぶ消却して、他のコン。ヒュータ 「見ろ、できないと思ったんだ」 にいまやってる仕事をやめさせ、・ほくらの計算をさせたとしたら、 「待てよ、スパイク。ソクラテス、余裕をつくるため、ディスクかきっと誰かに気づかれる。それに、ソクラテスだって、いまも中断 ら消せる項目はあるかい ? 」 するわけこよ、 冫。しかない大事な仕事をやってるだろうし」 「コノ機械ノ第一優先権者デアルアナタ ( 、ドノ記録デアレ消却ス 「ソクラテスはいま、・ほくらと話をしているんじゃないのかい」 ル権限ヲ与エラレティマス。十ノ十一乗個ノ数字ヲ記録スルニ ( 、 「ばかだな。ソクラテスはぼくらと話をすると同時に、別の仕事を おんらいん状態ニアルでいすく記憶装置ノ九十三ばーせんとヲ必要百ぐらいもやっているんだぜ」 トスルデショウ。消却シマショウカ ? 」 「おい、ハリイ、冗談はよせよ」

7. SFマガジン 1982年10月号

は、そのころ社会の中に増大していたいわれのない恐怖や先入観とず、この。フロジ = クトは、目的を達成するのに欠くことのできな 同様の扱いをうけたのだ。とはいっても、 チのパンフレット ; 力い絶大なクレジットを与えられていた。だが結局のところ、政治家 大評判になったわけではない。むしろ社会学者の・リ ッキーの本たちが裏で策動したため、すでにがすっかりお膳立てをす ( 『サイ・ハネティックスーー文明のガス室 ) がベストセラーとなつませていたすべての注文は、なんの支障もなく発注されてしまっ た。その本の筆者はつぎのように主張している 〈最後の勝利た。三年のあいだにプロジ = クトは一一九〇億ドルの資金を呑み尽 者〉は全人類を支配下においているか、あるいはロシア人たちのアした。しかもそれだけではない。陸軍と海軍は、目前に迫っている ナログ・コンビ、ータとひそかに気脈を通じて、将来人類に君臨す指揮の方法と様式の変更にともなって必要な、中央の職務の再編成 るようになるはずだ。その結果起るのが〈電子二頭政治〉だ、と。 の準備にとりかかり、同じ時期に四六〇億ドルを支出している。そ 同様の危懼を大部分の報道機関が表明した。だがその声は首尾よの総額の大部分はーー峨々たるロッキー山脈の結品岩石の地下深く くテストに合格した新たな機械のモデルが作動しはじめるに及んにーー未来の電子戦略家がおさまる場所の建設冫 こ使われた。その で、かき消されてしまった。生態力学の研究用に政府が特注して作際、山脈のある部分は、山岳地帯の自然の地形を損なわずに、厚さ らせ、二〇一九年にイリノイ州立精神力学研究所が完成した、汚れ四メートルのコンクリー トで覆われた。 なき道徳を備えているコンビュータ、 0 ・—は、作動ところがいつぼうでは、二〇二〇年にゴーレムーⅥが最高総司令 させてみると、〈腐敗堕落テスト〉で申しぶんのない価値論的安定官となって大西洋条約軍の総合軍事演習がおこなわれ、そこで彼は と抵抗力を持っていることがわかった。したがって、シリーズとし論理要素の量が平均的将軍を凌いでいることを立証した。 て多くの機種が現われるゴーレム (General Operator, Longrange, ゴーレムーⅥが、ウエスト・ポイントにある陸軍士官学校を優秀 Ethically Stabilized MuItimodelling—長期倫理安定マルチモデな成績で卒業した将校たちから成る司令部が指揮をとった仮想敵軍 ル汎用演算機 ) の第一世代が、翌年、ホワイト ( ウス付き頭脳トラに勝ったにもかかわらず、ペンタゴンはこの二〇二〇年の軍事演習 スト最高調整者の地位に任命されても、もはや大衆的な抗議もデモの結果に満足しなかった。 行進も起らなかった。 宇宙開発とミサイル工学でアカどもに先を越されるという苦い体 それがゴーレムーであった。この重要な変革とは関係なく、験を記憶していたペンタゴンは、連中がアメリカよりも優れた戦略 —はペンタゴンに所属するサイコニック学者たちの作戦班との家を作りだすのを手をこまねいて待っているつもりはなかった。そ とりきめにしたがって、それまでどおり人間の千九百倍の情報受容こで、必ず合衆国に戦略思想の揺ぎない優位を保証する計画がたて 能力と、知能指数 C—O) 四五〇ー五〇〇の数値を持った究局戦略られた。それによると常に建造中の戦略家を絶えずさらに完全なモ 家の建造をめざす研究に、莫大な資金を投じていた。アメリカ合衆デルと取り替え続ける必要があった。 国の民主的な多数派のあいたに抵抗が強まっていたにもかかわら こうして、すでに過去のものとなったふたつの競争ーーー核および つみ

8. SFマガジン 1982年10月号

コンビ、ータであり、生命の樹に照らしてみれば、原始的な神経節 にすぎなかった。二十世紀も五〇年代に入ると、計算機にたいする かなりの需要が生まれてきた。そこで他社に先駆けて電算機の大量 生産に乗りだしたのがだった。 そうした機械には、およそ思考過程といえるような働きはほとん ど見られなかった。経済やビッグ・ビジネスの領域でも、また管理 部門や科学でも、デ 1 タを処理する装置として利用されたのだ。ま た政治の分野にも入りこんでいたーー初期のころの機械がすでに大 統領選挙の選挙予報に使われていたのだ。ほ・ほ同じ時期に、 Q 社はペンタゴン ( 米国防総省 ) の有力な軍人たちに働きかけて、 国際舞台における軍事・政治面での事件を予測し、いわゆる〈紛争 の筋書き〉を作る方法に、彼らの関心を向けさせることに成功し た。ここから、さらに信頼度の高い技術に到着するのにさほど時間 はかからなかった。たとえば、二十年後にポリティコマチックス ( 政数学 ) と呼ばれる ( もっとも、あまりうまくいったとはいえな いが ) 応用事変代数学を生みだしたがある。また、コンビ まえがき ュータがカサンドラ 女洳役を演じて、その能力を発揮したの は、マサチューセッツ工科大学— e ) の、かの悪名高い〈発展 そらばん 算盤がいっ知性を身につけたか、その歴史的瞬間を突きとめるこの限界〉計画で地球文明の公式なモデルがはじめて作られたときの トざ とは、猿が人間に変わったときと同様に至難の業である。ところことであった。ところが、世紀末になると、その進化の枝が、コン 、刀 、ヴァンネヴァル・・フッシュが徴分方程式の解析機を作ったこと ・ヒュータにとってかならずしも重要ではないことがわかった。陸軍 によってインテレクトニクス ( 知性工学 ) が嵐のように発展しはじは第二次世界大戦末期から、実戦で鍛えあげた作戦用論理体系にも めるまでに、たかだか人一人の人生に相当する時間しか経過して いとづいて計算機を使用していた。戦略レベルでは、それまでどおり ないのだ。そのあと、第二次世界大戦も終りに近くなってから開発人間が決定を下していたが、従属的な二次的問題は、順次コン。ヒ、 された QZ—<O は、はやばやとーーーまだその時ではないのに ータに引き継ぐことが多くなっていったのだ。と同時に、合衆国の 〈電子頭脳〉と呼ばれた機械であった。事実、はただの防衛体制にも電算機が定着した。 "GOLEM XIV' ' Foreword by lrving T. Creve Afterword by Richard POPP lndiana University Press 2047

9. SFマガジン 1982年10月号

そめ、首を振った。とても実現の見込みはないと マ羽ハンツヴィル。マーシャル宇宙センターであ 考えたのだ、・ タグラス社と Z << ・マーシャル る。とはいえ、アメリカ本土をそっくり横断する 宇宙センタ . ーとの連絡会議でも空気は同じだっ にも等しい大飛行だが、ガソリンは片道分をオク た。しかし、この新しいコンセプトを吹きに吹き ラホマの友人から借り出すのがやっとーーという まくるコンロイにひとり強い関心を示し、理解を始末であった。カリフォルニアでのんびりテスト 見せたのが他ならぬ、マーシャル宇宙センター所飛行をやる余裕など全くなかったのだ。 長、ウエルナー・フォン・・フラウンその人たった しかし、ハンツヴィルでこの無気味な格好をし のである。 た輸送機はつめたく迎えられた。関係者達は疑わ そして、このコンロイの案が採用された。 しげな眼で機体を見上げるばかり : ・ 採用されたーーとはいっても、契約はまだずつ ところがそこに現われたのはフォン・プラウ と先のこと、エアロ・スペースラインズ社は自前 ン。彼はそのままその 377 へ乗り込み、自分が で作業を進めなければならなかった。 飛行テストに立ち合うと宣言した。 一九六一一年の一月、コンロイは 3 7 7 の機体を ・ペイロードを積む余裕もなく、 砂袋のダミ いったん切断してべつの機体の胴体の輪切りを挿ガソリン満載の状態でおこなわれたテストは大成 入して全長を五メートル伸ばした。 功におわり、エンジンを二基止めての飛行もさし これで飛行テストを繰りかえし大丈夫だとなる たる問題はなかった。そして、その日のうちに仮 と、機体上部に設計と同じ形状の巨大なコプをく 契約の話がもうあちこちで出はじめていた。マー つつけた。この工事が完了したのは九月十九日。 シャル宇宙センターは帰路のガソリンをそっくり そして次の日にはの仮承認をとり、さっそ負担してくれた。 くデモ飛行に出発した。目的地はもちろんアラ こうしてカリフォルニアへ帰ったコンロイは、 スーバーグンヒ 初代グッビー。いま貨物積みおろしのために 切り離されるところ。すでに機体後部には突 : うかい棒が入り、索引車がつながれている ~ スー / ヾグッヒ。ー 本格的な改造工事にとりかかった。 胴体をフクらます他に、安定性を増すため垂直 尾翼から機首方向へ背ビレが取り付けられた。そ してもうひとつ、フクらむ胴体をこすらぬよう、四 甲 p い A ( す 0 ト p 諏司 ines こを境にばっくり開く 番 ニ代目、スーバーグンヒ

10. SFマガジン 1982年10月号

立レヒッウ サイエソス・アイクショノ 的なエ。ヒソード、同じ深みのある議論が繰り 科学小説という小説の存在形態には科 人間というメカニズムに、ストルガッキー 返し繰り返し語られ続けていくうちに、一つ 学的認識による世界把握が ( 不充分なものか 兄弟のメスがさしこまれる。 ( 『蟻塚の中の 一つの書物の印象は溶けて・ほやけて、ひとつもしれないが ) 基本的には正しいものである かぶと虫』 / 著者Ⅱアルカジイ & ポリス・スらなりの〃ディック体験 4 とでもいうしかしという暗黙裏の大前提がある。秀れたは トルガッキー / 訳者日深見弾 / 一一〇九頁 / かたのないものとなる。そしてそれは興奮を多かれ少なかれ、日常的に慣れ親しんできた 一一〇〇 / 四六判上製 / 早川書房 ) そそる、得難い貴重な時間であったわけだけ常識的世界やあるいは神とか魔法といった概 ど、はっきり言わせてもらうなら、小説と呼念に〃科学の光〃を照射して、その存在論的 ぶには、あまりにメッセージ伝達に、理論の基盤を揺がすことで小説に奥深いダイナミズ フィリツ。フ・・ディック著 ムを与えてきた。それがセンス・オ・フ・ワン 展開に比重がかかりすぎている。加えて神学 的議題とギリシア哲学その他についての当方 の素養の欠如は論旨を追って字面を辿るにか なりの疲弊を余儀なくされて、これが聞いた ことのない新人の作であったとしたら、はこ して読み終えることができたかどうか。その 意味で、たとえば『暗闇のスキャナー』のよ うに ( かなりの ) 万人にお勧めできる本では 何から書こう。 ない。しかし、ディックにこだわるつもりの 言いたいことはずいぶんあるけど、・ハラ・ハ 人なら避けて通ることのできない本といえる ラで断片的だ。とっかかりになりそうなもの だろう。 がこれまたいろいろありすぎて、重層し、錯本誌七月号で書かせてもらった「ディック 綜し、印象がごちゃっいてしまっている。 断想」についてはかなり修正しなければなら 『ヴァリス』二部作と称されゑこの二冊の ない。危惧していた通りであります。基本的 本はそれだけで完結しうる作品ではない。少には『暗闇のスキャナー』までのディックの戦 なくとも、あと二点『解放された』所収跡の把握について撤回する気はいまもない。 の「人間とアンドロイドと機械」、及び短篇 ただこうも見事に寄って立っ場を明確化し 集 "The Golden Man" の序文を抜きに語 て、理論構築されるとは、正直思ってもいな れない。 ( 後者については「科学魔界四一かった。「人間とアンドロイドと機械」を読 号」に詳細な紹介が、「中間子復刊二号」にんでいたのだから、予想していてあたりま は序文そのものが翻訳されている ) 同じ感動え、といまにして思う。 『ヴァリス』 『聖なる侵入』 水鏡子