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検索対象: SFマガジン 1983年12月号
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1. SFマガジン 1983年12月号

ろうとさえする。緊張は高まっていった。 最近の作家というのは、すぐシリーズ物て行く・ : そこへロマニー氏が釈放され、異星人た トージョーは、彼らのリーダー格、・フル を書く ( というか書かされる ? ) 傾向があ ーマンから、彼らが異星からやってきたこちを取り戻しにやってくる。彼はザデウス ります。 B 、こ gh 、などの本格によ とを知らされる。それぞれ違う星から来た氏と交渉を開始する。しかし、ザデウス氏 り頭角をあらわしてきたマイク・レズニッ は事情を理解しているものの、異星人たち クもその例にもれず、シリーズ物の第一作異星人たちは、地球を見物するためフリー を発表しました。それが今回紹介する『サクス・ショウ一座に身をやっしていたのを手放そうとはしない。異星人たちは次々 だ。マネージャーのロマニー氏も異星人でと死ぬのを待つばかりなのだろうか : イドショウ』 S ~ ミ h 。さです。 しがないドサ回りの見せ物興行一座のポあり、一座の支配人であるとされる幻の人表紙の感じからなんとなくコメデイだろ ス、ザデウス氏は、フリークス・ショウを物アハザエラス氏とは他ならぬ・フルーマンうと思っていましたが、予想は見事にはず れ、少しノスタルジックで、の寂しい作 やりたがっていた。そこで 品でした。ト】ジョーには悲しい恋のエビ 出くわしたのが本格的なフ ソードなんかがあって屈折した性格の持ち リークス一座、大男やトカ 主だし、その他の一座の連中もなんとなく ゲ男、ミッシング・リンク ビヨーキの人間が多いのです。異星人たち や悪魔男ーー ザデウス氏・・第。 もめつきり元気がなく、苦しそうで楽しい は策をめぐらしてこの一座 感じではありません。というとえらい暗い をまんまと手に入れることふ ~ 4 話のようですが、そう落ち込むものではな に成功する。マネージャー く、ひねくれさ加減がけっこう楽しめま とお・ほしきロマニー氏はプ タ箱入りし、ザデウス一座一 ( 、一 さて、シリーズの初めを飾るかのごと は新しい見せ物を加えて次・・ 0 く、ラストは旅立ちのシーンで終ります。 の興行地へと向った。 のことだった。ザデウス氏は宇宙のジャル 結局ザデウス氏一座は二つに分けられて、 主人公のト 1 ジョーは、せむしの小男 パックツアー一行を乗っ取ったようなもの 記で、ザデウス氏のもとで働いている。なせなのだ。異星人たちは地球型の生物ではあ一つはザデウスとア ( ザ = ラス - 氏の一座と トージョーなどというあだ名がつけられてるが、地球の食物や気候に適応できずに身して宇宙へ打って出ていくことになるので ク いるかというと、髪は黒く肌が黄色つぼい 体の変調を起こす者が現われてきたのであす。トージョーは、それには同行させても 卩』ッ からだ。トージョーはフリークスたちの世る。出演者が減ったため客足が落ち、いららえないとあきらめていたのですが、ザデ ョ ス話を命・せられ、彼らとともに生活を始めだっザデウス氏。異星人たちに同情しながウス氏は行く当日にな「て彼に声をかける のです。 る。フリークスショウは順調にお客を集らもどうすることもできないトージョー。 サ . イめ、何もかもうまく行くはずだ 0 た。と一」倒れた異星人 0 中の一人などは、自由を得「おまえ、まだ荷作りしてな」 0 か ? 」 マろがフリークスたちが一人また一人と倒れられないなら死を選ぶと言い、自殺をはか 島田武

2. SFマガジン 1983年12月号

4 「先生、わたしは両親も物心つく前に亡くしているので、患者を看 取るというのがわからないんです。わたしはどうすればいいのです 「人が死に至る心理には、五つの段階があるとされています。それ ・ : 否認、怒り、抑鬱、取引き、受容です。人は、場合によっては この五段階を停滞したり、重複したり、逆行したりしながら進んで ゆくのです。これは想像を絶した苦しい旅です。わたしたちは死に ゆく人に、少しでも苦しみを少なくこの五段階を越えてもらわねば なりません」 「最初自分の死を認めなかった人間に、死を受け入れさせればよい のですか ? 」 「違います。われわれは死のセールスマンではありません。患者が 怒り、抑鬱といった段階を経てゆくのは、必要不可欠なことなので す。患者はある段階では、医者や見舞いに来た者にあたり散らし、 なぜわたしが死ななければならないのかと叫び、神をののしりさえ します。われわれは、患者のそういう諸段階さえも助けてゆかなけ 父親を見上げた。 「パパ、紹介するよ」 ジャックも緊張して、少し高めの声で言った。 「・ほくの妻、シエナだ」 あどけない、それでもジャックよりは背の高い少女は、ラヴラン ドを大きな目で見つめていたが、やがて歯をきらりと光らせて笑っ こ 0 『 : : : 絶句』原稿完成記念、新井素子お手製 オーダー・千羽鶴。フレゼント当選者発表い このたびは、千羽鶴。フレゼントに無闇やたら沢山の御応募、どう もありがとうございました。葉書全部見たんですよね、したらもう とにかく一人で沢山出す人やしよっちゅう手紙くれる人や一所懸命 絵なんか描いてきてくれる人や : : : うつうつ、全部あててあげた 。しかし、いくらなんでも三十万羽も鶴折っている暇はない。 で、その、一切の情をま・せずに目をつむって選びました。はずれ た人ごめんね。 ( しかし、の 1 はすごかった。七十倍よ ) 鶴、これから折ります。で、できました人から順々に送りますの で、最後の方の人はちょこっと時間がかかるかも知れません。年賀 鶴か ( もうちょっと運が悪いと ) 寒中見舞鶴。お待ち下さいませ。 はずれた人、本当にごめんね。 では、 新井素子 当選者 ( 順不同・敬称略 ) 松見俊介 ( 広島県 ) 内田紀子 ( 千葉県 ) 峯田英良 ( 大分県 ) 増田勉 ( 兵庫県 ) 新谷智子 ( 東京都 ) 濱田正樹 ( 兵庫県 ) 岡本純子 ( 山口県 ) 高山晋 ( 神奈川県 ) 久保田忠 ( 岐阜県 ) 三浦由加 ( 愛知県 ) ・興味のある方のために千羽鶴のタイ。フ別希望状況を公表 ! @鶴がだんだん大きくなるタイ。フ⑩同寸の鶴。 ①青のグラデーション②赤のグラデーション③オレンジのグラ デーション④緑のグラデーション⑤黒一色 名名名名名名名名名名名 -4 1 亠 1- ワ】 1 よワ】 ①②③④⑤①②③④⑤ 三】ロ 9- 6

3. SFマガジン 1983年12月号

六八年に『なにも起らなかった娘』を発のことにしている未開人同然の世代も現れしい環境に順応したディク、新旧両世代を 表していらい詩情あふれた特異なをつた。そうした退化現象に逆 0 て老人は若者つなぐただ一人の若者オリ。ーク、対照的 ぎつぎと発表、目下もっとも人気ある作家に知識と自分の夢を伝えようと懸命になっ な二人のあいだに立っ仲介役の娘マリャン のひとり。『不思議な国のアリス』の宇宙ているが、それに耳を傾けるのはオリヨー ナ、この四人が遠征の途につくことになっ 見 版ともいうべき主人公アリスが活躍する連クただ一人というありさまだった。その彼た。村と周辺の森を出れば草木一本ない荒 架作は子供たちの愛読書にな「ている。代表にしても、村と見たこともない別世界の歴地と岩場だけ。だから食料はもちろんのこ 作に『最終戦争』、『グスリヤル国綺談』史を、ただの物語としてしかとらえられなと、焚火の薪まで持っていかなくてはなら などがある。『峠』は今年発表された問題 。文明社会の産物はまったくなく、石器ない。まだ四十代でしかないト ーマスは老 作。 時代同然の生活を送っている彼らにしてみ人同様で、旅の足手まといだった。だが彼 ・。・の持っている地図と経験は遠征に欠かせな 異常な森の中に村とは名ばかり かった。洞窟や野外で夜をすごしながら谷 の原始的な集落がある。かっては′ ・ ~ 間にたどりつく。どの遠征隊もそこから先 それでも四十人近い人間が住んで ) ~ ( は進めなか 0 た。夜は零下に達する巌寒季 いたカ、いまでは、わずか十数人 のために。隊を先導し、すべての責任を負 しかいない。 ここに村を作ったの っていると自覚していたディクは引き返す は十五年ほど前、〈峠〉を越えて一 と宣言する。だが他の三人の反対にあい ル やってきた連中だった。だが外界 一 0 旅は続けられることにな 0 た。暗い谷間を からまったく切り離されているこ・ 6 、《、を一一 ( 抜け、高台に出たところで、人間を発狂さ の苛酷な環境に適応できないで、 ーせる虫に刺されたオリヨークは意識を失っ 村人はつぎつぎと死んでいった。 たままあばれまわり断崖から転落しそうに 峠を越えてきたものはほとんど死 なる。だがそれを防ごうとしてたトーマス ちに絶えようとしている。彼らは、 、ふのほうが転落死する。正気に返ったオリョ ・〈 = 0 望みを託し = 生き = 」る。 = れまれば、」まや峠越えど一」ろ〈、 = 0 異質なすデ→ , = 逆 0 = 、一人「も先〈進むと フにも = 一度それを試み、いずれも失敗に終 0 世界に順応することのほうが先決であ 0 頑張る。リャンナも彼の肩をも「た。疲 ていた。しかもその都度、ここの厳しい自 た。他の世界を知らない若者たちが野性化れきった体をひきずるようにして二人は最 チ 然条件を生き抜くために必要な人材を失するのもむりはない。 後の斜面を這い登りはじめる。ついにディ 、残された人間は退化の傾向を早めてい それでも峠越えはやらなくてはならなか クも彼らにしたがう。 く。峠越えのとき赤ん坊だったり、そのご った。結局それ以外に生きのびられる道は疲労困憊の極に達し自分たちが峠に達し プ 村で生れた若者たちにとっては、〈峠〉のないのだから。だがそれが成功するとは年たことにも気がっかない。だがやがて我に レむこうはすでに伝説的意味しかもっていな寄りたちももはや信じていなかった。それ返った三人の目前には下り斜面がつづいて い。ディクのように、奇怪な動物を石弓ではむしろ儀式といってよかった。 おり、その先に盆地が広がっていて、そこ 『キ殺して食糧を手に入れ、その日暮しを当然かっての遠征隊の生き残りトーマス、新に :

4. SFマガジン 1983年12月号

を作成するだけで、面白いことは、なんにもない」 んでしようね」 中年すぎの男がなだめた。 「まあまあ、まだ若いんだし、そのうち変った目にも会いますよ。 つぎの日の夜の八時ごろ、中年すぎの男と、四十歳ぐらいの男と わたしなんか、その若さがうらやましい」 が、またもこ 2 ハーで顔を合わせた。ますは昨夜のことを話題にし 「おざなりですね。この平凡はつづきそうですよ。そうにきまってようとした時 : ・ ドアから、その青年が入ってきた。マスターも加えて三人、目を いる。ああ、みなさんが、うらやましい」 酔っているので、声が大きくなった。 丸くした。青年は手を振って言う。 「どうしたんです。みなさん、妙な目で見ないで下さいよ。なにか それから数秒たって、ドアが勢いよくあけられ、二人のサングラ スの男が入ってきた。青年をつかまえ、どなりつける。 あったんですか」 「ついに見つけたぞ。われわれ組織の暗号解読のキーワードを、商「なにかって、あなた、きのうの晩、二人の男にナイフで刺された 業文をよそおって、対立国に知らせている。もう、これ以上はほっじゃありませんか。よく無事で : : : 」 ておけない」 「そんなこと、知りませんよ。かなり酔って、帰りの歩き方はおか もうひとりの男は、無言でナイフを青年の胸に突き刺した。鈍いしかったかもしれませんが」 音。青年は血のにじみはじめたその部分を手で押さえながら、すば「いや、たしかに、ス。 ( イ組織と称するサングラスの二人の男に : やく逃げていった二人を追いかけ、ふらっく足どりで店を出ていっ 「冗談じゃありませんよ。ぼくが、そんなのに関係してるわけがな 残った三人は、あまりのことに黙ったままだったが、やがて中年いでしよう。たくらんで演出するんだ 0 たら、スパイだなんて、そ んな単純な手は使いませんよ。・ほくをからかってるんじゃなかった すぎの男が言った。 ら、きっと、なにかの錯覚ですよ」 「ほっとくわけにも : : : 」 三人のうちの、だれかが言った。 「しかし、ス・ハイ関係となると、警察も動きにくいのですよ」 「そうですなあ。あるいは、人生も社会も、錯覚の連続の上に存在 とマスターは顔をしかめる。四十歳の男は、つぶやくように言っ こ 0 しているのかもしれませんな。そうじゃないと断言できる人が、た 「だろうな。へたに通報して、巻きぞえになるのもかなわない。それかいますかね」 れより、あの青年、命は助かるかな」 「かなり深く、ナイフが刺さりましたよ。あれでは、とても長くは もたないでしよう。気の毒にな。死体は、巧妙に処理されてしまう こ 0 2

5. SFマガジン 1983年12月号

たうえで文章にしてるから、わかりやすい早い段階で主人公の性別、年齢、職業あた作家の分身だからですよ。容貌、年齢をぼ のかもしれませんな。 りを、さりげなく書いてもらわないと、困やかし、ぼやかしですからね。 ( 笑 ) 一人 2 眉村書きだしたときに、終りまでわかつりますな。 称の女主人公が、せいぜい三十くらいかと てて書くというのはやらない人が多いでし眉村もっとも、あれをあんまり早く出そ思っていると、終りごろになって五十とわ よう。純文学の人だと、あまり考えないこうとして、目茶苦茶にいっぺんに並べる人かる。 ( 笑 ) 純文学こそ、イラストがいる とでしようけど。 がいるでしよう。 んじゃよ オいかな。 ( 笑 ) 星短篇だと、いちおうの結末は考えてか星それは、さりげなくやってもらわない 眉村どうもあっちの方は、さりげなくも らじゃないとね。 と。ぼくにとって、三人称が書きやすい しいけどさりげなさすぎて、『源氏物語』 眉村どうでしようねえ、それでもわからな。 といっしょで具体的な文章はぜんぜん使わ ないで書いている人が多いかもしれません眉村いちばん困るのは、主人公が相手にずに、感知できないやつは感受性が鈍いと よ。 呼びかけるシーンからはじめると、主人公言われるだけだから : ・ 星たしかにいますな、「奇想天外」でやって何やってるのかというイメージがおこ星あれは特定の作家のファンが納得して ったコンテストの募集作品なんかを見てるるでしよう。そうすると困るんですね。こるということで、これでいいのだというこ と。長めの短篇のなかにはね。 ちらは、最初に主人公の名前から、風貌、ともあるでしような。 眉村私小説の場合だったら、いつもこれ 眉村それといちばん困るのが、はじめに年まで覚えてもらってから書きはじめたい これこういう人が、こんなことをしている 話を四分の二拍子で書いていたのに、途中わけですね。最初に主人公の相手を焼きっ で四分の三、八分の一になるとか、そういけてしまうということは、どうも・ほくにはと決まっているからそれでいいんでしよう う格好で調子が変ってくる。自分で書けな良いと思えない。そういえば、日本語ではね。の場合は、それこそ宇宙人が主人 くて辛いから走ってしまうんでしよう。あことに一人称の使い方をまちがえるととん公の場合もあるわけですから。 れをやると小説にならないわけですけれどでもないことになるでしよう。昔の翻訳作星宇宙人じゃなく、宇宙飛行士が主人公 も、星さんは初めから終りまで計算どおり 品で、主人公が「おれは」「おれは」と言の場合は、だいたい何歳ぐらいとみればい のコースでゆくでしよう。、、 いんだろう ? し力にも、素人っているのがありましたね。非常に荒くれ にはなだらかなスロー・フを上がっていくよ男みたいな感じなんですが、途中からエン眉村宇宙飛行士というのは、常識的に二 うな気がするんですね。 ジニアとわかるんですね。 十四、五から職について、それからペテラ 星あと、いろんな人が短篇を一人称で書星女流作家の純文学が難解なのは、あれンで四十四、五というふうに考えているん くけれども、一人称で書く場合はなるべく は難解なんじゃなくて、主人公がすなわちですけれども。

6. SFマガジン 1983年12月号

だから、そんないやな尊を、お店や役所のある〇番錨地 ( うちは あいつがせンから欲しがってたメカトロンの手頃な奴を、町のおも ・ショッ。フなんかで大ッびらにしゃべる奴 9 と逃げ出したとたん、ス左二番なの ) のコーヒー ちゃ屋で掻ッ払ったの。そして、 2 カートがひっかかって大きな商品ケースをひとっ丸ごとひっくり返 がいても、二人はなんにも言わない。 しちゃッてさ、こっちは下敷きになりかけてさ、店のおやじは真ッ蒼 だから、尚更、二人がかわいそうでねエ・ ! ″なンてオロオロ言って になって″お嬢ちゃン ! 大丈夫ですか よ ! まア、ぶ るうちに、セ】ターの下にかくしてた奴がポロリ : : : 五郎八の操縦であたい達ののった型艇が錨地のエアロックに人 うちにまでのりこまれて たれたのぶたれないの : ・ って、フロアへ降りたとたん、ラッタルの下にネンネが待ってた。 いや、そんなこたアどうでもいいんだ、この際 : 「ね工、買ってきてくれた ? 」 それはどうでもいいんだけど、そんなあたいだって、かりにあの お帰りも言わずにこれだよ : 時、あのナビオニクス・べイの中でよ、ネンネと二人で二万クレジ 「あア、買ってきてやったよ ! 」あたいはっッけンどんに言った。 トの札東みつけたとしても、くすねたりは絶対にしないわよ。 「こっちゃ、お尻を鞭でたたかれるやら、ドブン中へ四つン這いな これが他の工場で働いてるンなら話は別よ。 るやら大変だったンだから ! 」 だって、二万クレジットといや、星涯のホテル・レモンパイで 「どこにあるの ? 」これだもの。 ″松″っていういちばん豪華な結婚式をネンネと二人でそれそれ五「あんな下らないもンがそんなに読みたきや勝手にしな ! 」とうと ほしのみやこ 回ずつもあげたうえで、五回とも〈星京〉まで新婚旅行に行けるうあたいは噛ましてやった。「席の物入れ ! 」 ・ : たぶ やるね、きッと くらいのお金よ : くすねるな : ・ 「あ、そう」 ん。あたいはいただいちゃう。他の工場で働いてたら、あたいはき なんて奴だろ : ・ あたいは、とことこラッタルを登ってくネイ っとくすねる : ネをまじまじと見ちゃった : でも、ムックホッファ頭目とロケ松ッつアンの下で働いてる限 ネンネに頼まれたのは、〈乙女の友〉っていう雑誌なんだけど り、そんなことは絶対にしないわ。できないわ。 . 殺されてもできなさ、クソ甘ッたるい恋愛小説がいつばいのってるほんとに下らない おりる 。そんな人なのよ、あの二人は : 雑誌なのよ。星涯へ行くんで刪型に乗るとき、ネンネの奴が、あた 五郎八、椋十、虎造、キチ : : : みんな、あたいとは桁違いのワル いに〈乙女の友〉を買ってきてッて、頼むわけよ。 あア、こいつもとうとう色気づきやがったかと、あたいはがツく 上りだけど、あいつらも乞食軍団にいる限りは絶対にやらない。あ りしたんだけど、あそこまでノボせてるとは知らなかった : 、こよわかってる。 そしてそれは「あの二人にもわかってるのよ。あの二人は心の底それで、ごはんを食べて工場に戻ったら、事もあろうにネンネの奴 からみんなを信じてるんだ。 は〈乙女の友〉をひろげたまま、例の真ッ二つになった〈クリスクラフ

7. SFマガジン 1983年12月号

星新一 鳳挫。卓 星新一ショート・ショート 1001 作記念特集 特別対談 眉村星さんと対談をするのは、これが初 めてなんですね、不思議なことに。 星そうですか、ずいぶんやっているよう な気がしますが。 眉村ええ、本当にこれが初めてなんで。と ころで今日はいろいろとおうかがいしてい きたいと思いますが、・ほくが星さんのショ ート・ショートについて一番感じるのは、 星さんの文体を若い人が簡単に真似たがっ て、それをやっているということですね。 星うまくやってくれればいいんだけれ ど、なかなかうまく真似してくれないんで ね。 眉村うまさが、なかなかわからないわけ でしよう。 星それはそうでしよう。年少者で、はし めて出会った小説がぼくのだという人たっ てかなりいるかもしれない。 眉村ずいぶん多いでしようね。 星ほかの人の作品を読んだことがないう ちにね。文章とはこういうものと思うでし ようね。 眉村ほかの人のを読んでみると、小説的 レトリックを使っているものだから、いろ いろやらなければならないけれど、星さん のはよくわかるから、このとおり書けばい Shin'ichi Hoshi 2 2

8. SFマガジン 1983年12月号

F ゲへの招待 N NH 髯ー tHE TABLE. 〈ゾーク〉シリーズ 1 のバッケージ くゾーク〉シリーズ 1 の画面 わかるだろう 9 、ドリー』が似ているようで基本的にちがう点 とにかく、このゲー以では『 & 』 - の魅がある。『』は四 ~ 五人のグループが 力が最大限に生かされている。フレイヤー いっしょに迷宮へもぐる。だいたい共同行動 キャラクタすの種族から役割、モラル、特徴をとるけれども、彼らはそれそれがプレイヤ ポイントなどの決定にはじまり、城砦内の宿ーの分身であり、根本は多人数ゲームだ。一 ー』では、これが六人ま 屋、商店、寺院、酒場などで、それそれプレ方、「ウイザー イに必要な準備行為が行なわんを。」で準。で一時に迷宮〈もぐれるけれども、その移動 備をしてから一行は迷宮へともぐっていくのは最初から最後まで団体行動なのである。言 だが、その各階の趣向の凝ったこと ! もち いかえるなら、『ウイザードリー』の六人 ろん、似たようなものはどれ一つとしてな は、みんなまとめて一人のプレイヤーの分身 く、意外性は満点。さらに、怪物や罠、宝なと考えたほうがびったりする。これはコンビ ツリテア どはストーリーが進展していくにつれ、見事。ーヨタ・ゲームがもともと一人遊び用から発 にそれに適ったタネプへと変化していくの展した名残りだろう。『ウイザー だ。こういう作品こそ、本当にソフト面がすゞ式は、結果として一応六人まで。フレイヤーが参 加でき、その面では他のコン。ヒ、ータ・ゲー ぐれているとうのだろう。作者のグリーン ムよりすぐれているけれども、六人のキャラ ーグやウッ卞ヘッドは、、これを作るのに。 ( スカル・ラゾツージで← . 万四千行の書き込みクターが別れて動き回ることはできない。 とは言っても、これでプレイの興味が減ら をし、構想に五年い作成にまる一年以上かか い。いわば、『 な℃というのだからすご ったと述懐ししるが、機械オンチの・ほくに とってはむしろそんなことより、『 & 』《【』では自らがゲーム世界の役割になりきる ー』の六人はみん の雰囲気をよくぞここまでといった感動のほ一のに対し、『ウイザー な自分の″子供″なのだ。感情移入度では何 、つ・か強い ちどプレイしていて、自分 もちろん、『』のほうが生身人間ら遶色はない。い の息子のアダ名をつけたキャラクターが、あ がしゃべり考えるだけに、幅の広さはある。 ウワサの活用や、後ろからの不意討ち、怪物と一レ・ヘル成長すれば続篇『ナイト・オプ・ ダイヤモンド』に進めるとき、強力な魔術師 との交渉などは、『ウイザー ー』ではな いか、あっても簡略化されている ( コン。ヒ、の不意討ちをくらい、死んでしまったのには ータというのは、素直なゲーム・マスターで愕然とした。よもやと思った大金を積んで ある ) 。だけど、こちらの大迷宮は、最高のの、寺院での″再生の儀式″に失敗したとき が長期間必死に考えてやっと造りだせるの喪失感。そばに本物の息子がいたのもまず ほどの緻密さとヴァラエティと意外性に溢れかった。「お父ちゃん、・ほくがいなくなっち ているのだ。 やった。生き返らせてよう」って言われり それにもう一つ、『 & 』と『ウイザー や、こりや涙が出ますよ。

9. SFマガジン 1983年12月号

「悪液質を発していて、顔も変わっている筈です。結婚されていた「先生 : : : 少しだけ、時間をください」 ころの面影はありますまい。冷静でいられますか、ということで「いいでしよう。しかし、今あなたは、われわれの時間ではなく 6 て、メアリーさんの時間を使っているんだということをよく考えて くたさい」 「苦しんでいますか、彼女は ? 」 「どうしてこんなことになったのだろう ? 」 「苦しいと思いますよ。ペイン・クリニックを始めてはいますがー 「病気はいつだってなる可能性のあるものです」 「そうではなく : ・ : な。せ彼女は・症でなく、癌などになったの 「誰かを必要としているでしようか、彼女は ? 」 でしよう ? 」 「わたしはそう思いますよ、ラヴランドさん」 「わたしに : : : その資格があると思いますか ? 彼女を苦しめたわ「ラヴランドさん。お気持ちはわかりますが、それはしてはならな い質問です。われわれの状況はまだ死の形を選べるほどの買い手市 たしに ? 」 「ラヴランドさん、あなたは生の苦しみと死の苦しみを一緒になさ場じゃないのですよ。五〇億の人間がいれば、五〇億の死の需要が るのですか ? 人は苦しみなしに生きることはできません。それはあるのです。しかも、その配給は神に委ねられています」 生の証しなのです。しかし、死の苦しみは、そうした生の努力を無「癌は治せないのですか ? 」 にするものです。それはなんとしても取りのそかねばなりません。 「今の医学をもってすれば、病巣の転移がないか、あっても一、二 わたしが、どうして今はあの人にとって赤の他人のあなたに病状をか所ならば完治させることができます。もちろん臓器はほとんど人 教えたと思います ? 」 工物の助けを借りることになりますが : : : 」 「ああ : : : メアリ】」 「メアリーの状態は、もうそんな段階ではないと 「あの人の : : : 奥さんの手を取って、そう言ってあげなさい」 「ご存じのように、癌の主犯は患者自身の遺伝子です。からたの中 「こんなことなら、来るのではなかった」 で癌細胞の方が支配的になってしまった患者の場合、″助ける″と いうのはどういう意味を持ちますか ? 個体を救おうとすればする 「何を言ってるんです。一体、今苦しんでいるのは誰か、考えてご ほど、それは癌細胞群を救うことになります。癌細胞を特定的に殺 らんなさい」 す方法もありますが、そうするとからたの大半を失うことになりま 「会わなくたってかまわない。それはあなたの義務ではない。しかす」 し、あの人に会わすに、あなたはこれからの人生をどう生きるつも「 : ・ りです ? そんなことが考えられますか ? 一生を後悔で埋めつく「お考えになってください。あの人はいまや身よりのない哀れな身 の上なのです」 すような人生が ? 」

10. SFマガジン 1983年12月号

一つに五人で寝ることになるわよ スカートをひつばった。「今度やったら、先生はフェイスおばさんところへ行ったら、あんた・ヘッド 十文字になって。 に言いつけるつもりなんだから」 ペンダーソン先生がげんこつをふりまわし ( 行こうよ、ゲイラー 「フェイスおばさんに 」ゲイラは身じろぎして背中を伸ばし た。彼女は両手でカールした黒い前髪をうしろへ払った。「おばさてるわーー」 んが今朝なんて言ったか知ってる、ヴ = ラ ? これがわたしの学校ヴ = ラは遊び小屋からあとずさりしはじめた。 へ行く最後の年だって。もう自分の道を行ってもいい齢だと言った「もしフ = イスおばさんがわたしをあそこへ行かせようとするな ら、わたし逃げだすわ」ゲイラがのろのろとあとを追い、二人の少 のよー・ー・」ゲイラはその言葉をかみしめた。 「そんな、ゲイラ ! 」ヴ = ラはしやがみこんだ。「おばさんはあん女は四つんばいになって顔をつきあわせた。「あんたしゃべったり しないでしようね、ヴェラ。わたし町へ逃げだしてお金持ちになる たをわたしとっきあわせなくする気じゃない ? もう一年すれば、 のよ、おばさんはわたしが帰ってきたら、すごく意地悪だったこと わたしたち十四になるしーーー」 「ちがうわ。わたしはおばさんの子供たちの口から食べ物を取りを後悔するわ。でもわたしは許してやって、すばらしい贈り物をあ げるの、きっとおばさんは泣いてわたしに許しを乞ーーー」 あげるし、長いこと荷物になってきたんだそうよ。ちがうのよー ー」ゲイラの目がまたぼんやりとわたしの向こうを見た。「わたし「フ = イスおばさんが泣くですって ! 」ヴ = ラは鼻で笑った。「あ んたが逃げだすなんてあたしは一分だって信じないけど、もし逃け は自分の道を行くつもり。町へ行くのよ。そこで仕事を見つけてー るんなら、戻ってこないことね。そのほうが身のためだわ ! 」 二人の少女はやぶからあらわれてまっすぐに立った。いやがるゲ 「町ですって ! 」ヴェラが短く笑った。「何言ってるのよ ! まる イラをヴェラが校舎のほうへひつばっていく。ゲイラは学校から先 それにそんなに でおばさんがあんたを行かせるみたいじゃないー へ伸びた埃つぼい道を物ほしげに肩ごしにふり返った。″自分の道 若くて、どんな仕事を見つけられると思うの ? ペン・コリンズがまた女の子を捜しているわ。フ = イスおばさんを行くのよ。わたしはそんな思いが、ゲイラのうしろで旗のように なびいているのを聞きとった。″幸せと、わたしを愛してくれる人 ならきっとーー」 「べン・コリンズ ! 」ゲイラのびつくりした顔がさっとヴ = ラのほをさがすんだ。わたしを望んでくれる人を。 黒ずんだ空から稲妻が突き刺した。丘陵をゆるがす雷にともなっ うを向いた。「ルースはどうしたの ? 」 「セントラルにいるおじさんと一緒に暮らすんだって。あのコリンてふいに突風が吹き、刺すような冷たい雨つぶが落ちてきて、二人 ズ一味につかえるより、牛の乳をしぼったり、綿つみをしたりするの少女は校舎めざして駆けだした、そして ほうがましなんでしよ。ペッド 一つに四人が寝るなんて考えてもみ車のフロントガラスに雨滴が散っていた。わたしは目をばちくり てよ。少なくとも両端には二人分の場所はあるけどね。コリンズのさせて市街地図を見おろした。目ざす直線道路が北南でも東西でも