にもこの船の寿命は早々と来ちゃった訳だけどこちとらはまだ、こ外れてしまって大きく開きッ放し、眼は脳圧のためにとび出し、無 のナビオニクスを他で使うつもりなんだから、コネクターを・フチ壊重力で起きる筋の収縮ですこし前かがみに膝を曲げ、手を前につき すわけにもいかないし、しかたないからケー・フルをそっくり外すこ出した自然位 : : : 。こわいよ。これは : ネンネはもう肝をつぶしてそのまま逃げ出したもンだから、彼女 とにして、 ハーネスをこッ外す動力ツールをとりに、あたいはいっ たん ( ッチから外へ出たのよ。そして、工具カウンターの方へ行きの背中にできる空気の陰圧にひッばられて、そのミイラはフーラフ ーラとネンネの後をどこまでも追ッ駈けるわけよ。理屈じゃ聞いて かけたとき、だしぬけに、 「キャーツ るけど、これは凄かったわよ、本当に。逃れば逃げるほどそっちへ 。といって、ネンネ ! 走っちゃ ミイラが漂っていくんだから : とンでもない悲鳴をあげて、まるで弾丸蜂みたいな勢いでネンネ なんて叫んだってそりや無理よ。それに、立ち止まった ・、ハッチからとび出して来たじゃないの。あたいはびッくらこいち駄目ー ら、多分、ミイラはそのままスーツとネンネの背中にくつつくだろ やったわよ。 作業用磁石靴をはいてるから、とび出したネンネはすとン ! とうしね : あたりじや二十人以上が仕事してたんだけど、あまりのことにみ 床に落ちたけど、さもなけりや、格納庫の端ッこまですッ飛んでる んな怖いよりなにより、とにかくボーツとしちゃって只っッ立って わね。それで、ネンネは気違いみたいに向うへ逃げだしたの。 一体、何事かとそのままぼンやり見ていたら、なんと、まるでそるだけよ : そしたら、さすがに男だね。 のネンネの後を追ッ駈けるみたいに、あなた、男がひとり、点検ハ ッチからフラリー これにゃあたい と出て来たじゃないの : 行動を起こしたのは五郎八よ。カッターだの鋸だのを使うときに もギョッとしたわ。たった今まであたいも仕事していた区画じゃな屑が浮かないように吸いとる吸引ホースね、あれをつかんで、逃げ あんな奴、一体どこにかくれてたのかしらーーーと、とっさに思るネンネの後に入って、追ッ駈けてくるミイラのコースを変えよう ミイラなんだ。 ったけど、すぐにわかった。そいつは死体なのよ。 としたわけ。これはとっさの思い付きとしては、あの田舎ッペにし 〈宇宙空間事故対策マニュアル〉の〈人身事故篇・巻の壱〉が頭のちや上出来よ。ところがさ、奴も慌ててたんだね。ノズルの根元で 中で開き、サ 1 っと流れたページが序 2 段・失圧事故のページでび調整する吸引圧を全開しちゃったもんだから、フーラフーラ漂って たツと止まった。その男は、瞬間失圧で即死した真空乾燥死体の標きてたミイラは、だしぬけにスー と、まるで腹でも立てたみ 本みたいなものだったわ。まず空気洩れなんかで失圧が発生するたいに五郎八めがけて突ッ込んできたわけよ。それも、目玉はトビ と、血圧のために体中の毛細血管の末端が破裂して出血して、それ出し、ロはばッくり開けたままの凄い顔じゃない、さすがのチンビ が次の瞬間には水分が蒸発するから顔も手も乾いた血で真ッ黒。ロラ上りもホースをおッぼり出して逃げちゃったわよ。行き足のつい は、胃の中のものが猛烈な勢いで吸い出されるから、あごの関節がたミイラは、ストンー とそこに入ってた」 1 型の船殻にぶつかっ 236
「返事しな ! 」 と危険だから」 ネンネは片手をあげた。 「ふてッてるのかいー 壁は五〇メートル位向うにあるらしい 強い投光器の光の中に、まばらに流れる隕石が浮かび上る。加速″なにわめいてるのよ″ だしぬけにネンネの〈ルメットがはしけの舷側に現われた。 " は 度がないからその隕石はすいすい壁を抜けていくらしい。でも、は しけが渦流にひツかけられてあッちへ持ってかれ、止むなく噴射し : 。なにしろ あたいはネンネが浮かせてよこしたロッカーを受けとり、曳航索 て、それでもそのまンまあの壁へ入ってしまったら : ・ でツかいものを曳航してるから、モーメントでネンネの方が壁の方をとり込んでからキヤノ。ヒーを密閉した。 ヘルメットを外して汗を拭きながら、ネンネはまたつぶやいた。 「惜しいなあ : : : あれ」 「早くしな、ネンネ ! 」こわくなってあたいはせきたてた。 ″うン、あとすこし : それから一時間後、あたい達のはしけは割れ目を伝って降りてき 「早くしないと、壁の方へ吸いこまれるよ ! 」 - 」 0 ー↓ 加型艇とランデヴーした。 ネンネのつぶやきが伝わってきた。 ″惜しいな : ・ ″ロッカーは回収したな ? ″五郎八の声がとびこんできた。 「なにが惜しいンだって卩」こっちはあせるわよ。なにを言ってや 「回収したわよ ! 」 がるンだか : 「なにが惜しいのよ ? 」 いちばん上がキャビンで、その下の層が第二ナビオニクス・べイ″御苦労、いま、エアロックを 五郎八がそこまで言った時だった。 でたしかここには慣性航法システムが だしぬけに強い波が割り込んできたかと思うと太い男の声がし 「そんなことより、貴重品ロッカーはどうしたのさ卩」 ″ロッカーはもう外したわ : : : でも、この下に ″よし、じたばた騒ぐな ! 貴様達はもう雪隠詰めだー・ このバカがー こっちは呆ッ気にとられてしまった。 「早く帰ってきなツたら ! 」あたいは思わずどなった。 五郎八も同じらしい。なにか言いかけたが、向うはおツかぶせる 思ってるンだい ? このバカ ! 」 ように続けた。 ″だって おと 「だっても糞もあるもんか、早く帰って来な ! さもないと曳航索″金米糖からあとをつけてきたんだ、この餓鬼共奴が : なしく口ッカーをこっちへよこせばよし、さもなければ木ッ葉みじ 4 たたツ切るよ ! 」 んにしてくれるから覚悟しやがれー 「なんだと こ。
写真にとってあげたいわあ。今まで何回か、あたしが写真をとってにはアザゼルのことを打ち明けなくともロージーに恩を着せる方法 みたんだけど、どうしてもうまくとれないのよ」 を思いついた。もちろん、彼女の信頼を裏切るようなやりかたでは 「ほんもので我慢すりやいいじゃないか、し ないそ。何しろおれは、あんたみたいに頭のおかしい連中に対して 、としのロージー」 「実はね」と、ロージーはためらってから、この上なく魅力的に顔も信義は守る男だからな。 を赤らめて言った。「あのひとって、いつもそんなふうってわけじ おれはさっそく、アザゼルに相談を持ちかけた。当然のことなが ゃないのよ。あのひと、空港でとてもむずかしいお仕事してるでしら、アザゼルはあまりいい顔はしない。 よ、ときにはもうくたくたに疲れきって家へ帰ってくることもある「おまえはいつも余に余計なことばかりさせたがる」 の。そんなときは、ほんのちょっとだけどご機嫌が悪くてね、あた そうやつは言い、おれは応じた。 しにもしかめつつらしか見せないこともあるのよ。ほんと、なまの 「とんでもない。ただの写真を一枚たのんでるだけだよ。そいつを ままのあのひとの写真がありさえすればね、あたしの慰めになるん実体化してくれるだけでいいんだ」 だけ・ど どんなにか大きな慰めに : 「なに、それだけのことか ? そんな簡単なことなら、おまえが自 目に見えぬ涙がロージーの青い眼を曇らせた。 分でやればよい。おまえだ「て、質量 = ネルギー等値性翁対雑論に おれは思わずロージーにアザゼル ( 裏切りにより、天使の手で捕の質量はそれに光の速度の平方を乗じた ) のことはよく知っているはずだ」 値のエネルギーに恒等であるという法則 えられた魔物の名だ。やつを本当の名前の訳語で呼ぶわけこよ、 冫冫しか「写真一枚だけでいいんだがね」 たてまっ ないので、とりあえずこの名前を奉っている ) のことを打ち明「しかし、おまえが定義することも描写することもできぬ対象の写 け、やつならカになってくれるかもしれない と、話してやりた真ではないか」 くなった。 「あいつが、自分の女房に見せるような顔を、このおれに見せるは デーモ / しかしながら、これはこの上なく軽率であるーー・おれの小悪魔のずはないじゃないか。でもよ、おれはあんたの能力に無限の信頼を ことを世間に知られてしまうという可能性を、うつかり忘れるとこ置いているんだぜ」 ろであった。 胸くその悪くなるほど持ち上げれば、やつをくどき落とせるんじ あんじよう それに、この衝動を抑えるのは、おれにとってはむずかしいことやよ、 オしか : : : と期待したんだな、おれは。案の定、とうとうやつは ではなかった。何しろおれは意志の強い現実主義者であり、愚かな膨れつつらでこう言いやがった。 感傷に溺れるような人間ではないからだ。もっとも、おれの・ほろ・ほ「当人の写真を手にいれなければならぬそよ」 ろの心臓の中に、優しくて若い美女を見るとたちまち甘い気分こよ 冫オ「いい写真がどうしても・ : : ・」 ってしまうーー・ーもちろん、伯父さんとしての威厳を保ちながら、こ だ「いい写真を持ってくる必要はない。その点は余が面倒をみる。だ 5 カ とろけかけた部分がある事実は否定できんがね。結局、実際が、抽象作用の焦点を合わす物的対象があったほうが、作業はず ふく
奴は、すぐ、そこの暗がりでリモコンポックス操ってる五郎八に こっちは散々ぶたれた後だけど、それでも気の毒だったくらい 気がついた。だって、あいつも馬鹿なのよ。いくら、自分でこしらよ。 えた玉虫が調子よく。フウ。フウ飛んでそのいけ好かない奴をキリキリ ところがさア、あの五郎八つて奴ア手加減のできない奴なのね。 舞いさせてるからッたって、、そんなとこでゲラゲラ笑ってちゃいけそれでよく口ケ松ッつアンにぶン撲られるもとになるんだけど、こ れがまたそれよ。。フウ。フウ、ノウ。フウ飛んでる玉虫をさ、そのまま 逃がしゃいいものを、両手で鼻を押さえて腰抜かしてる紳士めがけ 怒り狂ったそいつは五郎八の方へ突進したわよ。 あわてた五郎八は、これが見事だったわね、いきなりその玉虫をてまた急降下させたのよ。そしてどうしたと思う ? 六本の脚でそ そいつの顔の回りに旋回させはじめたの。 の髪をひつつかんだのよ。でも、あいつ、どうしてわかったのかし 。フウ 。フウ。フウ、。フウ。フウ、そのけたたましい事ッたら : らね : ・ とひときわ大きな音を立てて飛び上っ 紳士は、鼻先を玉虫にひツかけられそうになって、あわてて立ちた玉虫は、もろに紳士の頭からかつらをムシリ取ったのよ。ツルツ 止まったわ。 禿になった紳士はもうはちゃよ : それで、あなた・ : 。ひょっとして見た事あるかしら ? 昼寝し そのあげくに玉虫はプウ。フウブウブウやかましい音を立てて馬車 と てた三毛猫がさ、飛ンでる蝶々かなんかをとッつかまえようとしのところへ飛んでいったかと思うと、今度は馬の先でパフツー て、ゴロニヤアー と後肢で立ち上ってばツー と獲物に跳びかかまた一発やったわけ : ・ ることあるじゃン。あれよ。まさにあれだったね。もう、恥も外聞 そりや、かわいそうに、馬は、いななく なんてものじゃなか もありやしない。その紳士はほんとに後肢で立ち上った大きな猫みったわよ。二頭の馬は絶叫して跳ね上って、もう、気違いみたいに ナいに、お手々を伸ばしてばツー と玉虫へ跳びかかったのよ。 ・ハ馬車をひつばったまま走り出した。御者があとを追ツかけて、ドプ 力だよね工 : メカ虫を手づかみする奴があるもンか。 で足をとられて頭からひっくりかえるし、野次馬は逃げ回るし : ほンでもって、とにかくそいつは抱きつくみたいに玉虫をひッ捉 。あたいはもう、ころげ回って笑っちゃったわ。そしてひょっと えたわよ。 気がつくと、横にべッたりすわってるその子も、あたいを見上げて だけどそのとたんにパフッ ニコニコ笑ってるのよ。 ってヘンな音がして、玉虫はおな らを吹いた。紳士の鼻先に黄色な煙が立った。 思わずあたいが、泥まみれになったその子の顔を拭いてやってた これは利くわよ。だって、生のフンコロリン酸カリウム・ガスだら、 もの。 「いそげ ! 」押し殺したような声がした。 ほンとにそいつは鼻を押さえて、まるで煙に・フチのめされたみた はツと振りかえると、そこにあかりを消した地表艇が浮いてい いに吹ッ飛んだね。 て、ロケ松ッつアンが半身をのり出している。「連れてこい 232
と、上の方から、なにか黒いものがすーっと窓の外を通り過ぎ、 と眼のくらむような爆 5 これは本格的なわるだわ : : : とあたいは思った。 下の方へと見えなくなったとたん、。ハッ 発が約こった。爆雷だー 宇宙艇の船殻は頑丈だから、直撃をくわない限りやられることは 5 追い詰められて ないけど、爆発で吹きとばされた隕石の破片が嵐みたいに押しよせ あたい達は型艇もろとも、〈黒瀬・ 5 〉の深い割れ目の底へ雪てきて、こ 0 ちはもう滅ッ茶苦茶に振り回された。ほんとにもう駄 目だと思ったわ。体をシートに固定していたからよかったものの、 隠詰めになってしまった。 のあっちこっちにたたきつけられて死 そうでなかったらコク。ヒット 入口をふさいでる奴は、炎陽に縄張りを持ってるワルらしくて、 強い電波でガンガン言ってくる向うの言い分によれば、このロッカんでるわね。ひどかったわよ。 ″さあ、どうだー かなり利いたろう ! もう一発いくか 2 ・ 1 に入ってる二万クレジットはあの・フルート・山田という男が惑星 ・炎陽の賭博場でイカサマを使って稼いだ金で、彼はそれをひつつあたい達は顔を見合わせた。 ″逃げようったって逃げられやしねエンだそん かんで 300ZX を盗んで逃げ出したんだそうだ : どこまでが本当か知らないけど、奴等は、最初にロケ松ッつアン ″ゃい、返事をしろ : 達が引揚げ作業をやったときからずーっとこっちを監視していたら ″なんとか返をしろ、てめ工らのポジションはがっちり捉えてい ″さあ、おとなしく口ッカーを差し出しゃあよし。さもなけりや、 るんだ″ イ・フり出して呉れるから覚悟しやがれー ″ゃい、返事をしろ ! こっちはだンまりをきめこんだ。だってあんまりだしぬけのこと 向うはあせってきた : でどう答えていいかわからないじゃン。とにかく口ッカーを差し出 ″返事をしね工か : す気はないわよ。 そのとき、となりの奴かなんかの声がかぶさってきた。 ″ゃい、返事をしね工か ? ″声はくい下る。 ″直撃喰わせたんじゃね工のか : ちょっと心配そう : ″よオし、返事をしね工つもりだな ? そっちがその気ならこっち にも考えがある。覚悟しやがれ″ いや、十分距離はとった石 相手は無気味に黙りこんだ。 ″吹っとんだ隕石が命中することだって :
りするのか ? わたしたちは、その患者の怒りを正当に表現する助 けになるべきです」 「そうかもしれん」 「メアリーさんが、もし本当にあなたに怒りをぶつけられたのな 「けがはしてないか ? 」 ら、あなたはそれで十分役に立っているのですわ」 ラヴランドは斜面にへばりつきながら、ジャックに声をかけた。 「これから彼女はどうなるのだろう ? 」 「オーライ。今そっちへ行くよ」 「それはむずかしい質問です。しかし、そんなことを問うより、彼「ここは不安定た。おれが動こう」 女が安らかに眠れることを祈りたいではありませんか」 ラヴランドは、両手両足を少しずっ引きずりながら、斜め下方へ : 。ぼくはあまり祈りたくないのだ」 「わからない : 降りていった。自分たちは今、巨大なアリ地獄の斜面にいるんしゃ 「早く死ぬことを祈るのではありません。患者が最後の生を楽に生ないかという疑念はなかなか捨てられなかった。 きることを祈るのです。わたしたちは、死にゆく人を、家族や親近 ジャックの声がすぐ近くになった。 0 、 0 、、 者が残酷に引きとどめているのをときどき目にします。他の段階の ライターを持っている ? 」 患者はともかく、死を″受容〃した患者の扱いには慎重を期すべき「え、ああ、ポケットに入っている」 「・ほくの方は火の消えた松明を持っているんだ。火をつけるよ」 「メアリーは、まだ受容していないね」 それはまさに幸運と言うべきであった。明かりがなければ、彼ら 「その通りです。しかし、患者には死の予感を持っことがままあっは絶望を抱えたまま一生を終えていたかもしれない。松明をつけて て、それを表現したがります。しかしまた、それが罪悪感や何かへみると、斜面の終わりはすぐ目の前だったのだ。 の執着のせいで、まったく逆の表現になることもあるのです」 目の前には複雑にというより手当たり次第に掘り抜かれた穴が無 「ーーちょっと訓きたいんだが : : : 」 数にあいた壁があった。 「ここから地質が違うな。時代も違うようだ。断層が隆起したかど 「今、彼女の息子を連れてくるというのは適当でないだろうか うかしたんだろうな」 長いこと行方不明だった」 ラヴランドは岩の表面をなぜてみながら言った。 「居場所がおわかりですの ? 」 突如、ジャックが横の方で大声を上げる。 「これから捜しに行くんだ」 「どうした」 いことたと思いますわ」 「見てごらんよ、 「そうだろうね」 彼の手の松明に照らされた壁面には、白っぽい棒のようなもの 4 8
まえにね、二人で出掛けたとき、ぬれ甘納豆使って氷アズキこし はたしかよ。 らえようってあの子が言い出したことがあるの。これにはあたいも なにか、とんでもない秘密がからんでる : のつかって、。フラバックの中に水とお砂糖とぬれ甘納豆を入れてシ どう考えてもこれは只事じゃない。 ールして、こっちもバカだよ、宇宙服つけて外に出て、氷がひとっ 五郎八にのツけられてここまでやってはきたものの、これはとン クをもンでればきっとジャリジャ のかたまりにならないようにパッ ・ : とあたいは思った。 でもない間違いだったのかもしれない : そんな思いに沈んでるとき、なにか小さな黒いものが鼻の先を横リの氷アズキができると考えたわけ。なっかしいね = 、おネジッ子 から一本立ちして、軽宇宙艇艇長資格をとったすぐの頃よ。 切った。あたいの鼻の先をーーーよ。 なにかと思ってつかまえたら甘納豆、ふりかえったら航法通信席それでエアロックに入って減圧をはじめたとたんに、。フラ。、 の空気を抜いてないじゃン、みるみるお化けみたいに・ハックがふく のネンネが甘納豆食べながら〈乙女の友〉に読みふけっている。 「ちょいと ! 」あたいはとッちめた。「甘納豆食べるのは勝手だけらんで、しまッたと思う間もなしに大爆発よ ! あとのお掃除に苦 いったん外扉を開けたもんで、ぬれ甘納豆がカリカリ ど、ちゃンとやンな。ほれ、ここまで漂ってるよ。加速したとたん労したわよ。 に乾いて壁にはりついちゃってとれないのよ : : : 。帰港してから整 に、スイッチの接点かなんかにはさまったらどうするつもり ? 」 「ごめン、でも、すごオい、 この小説 : : : あたし、ドキドキする : ・備班のこわアいお姉工様たちに呼び出されてシメられて、二人でエ アロックの雑巾掛けやらされたわ : これだよ。 それからね、あたいは 〈星海企業〉じゃ、宇宙空間へ出るとき、正規の食料はもちろん日 だしぬけに、、 ′ーネスで固定されている体が前へとび出しそうに 程に合わせて必要な分だけ、緊急用と一緒に積み込まれるけど、そ なり、あたいの頬ッペたをかすめて後から飛んできたぬれ甘納豆の れ以外に、嗜好品は乗組員の好みで発註できるわけ。あたいなンか と正面の窓にはりついた。 は、おせンぺいとかスルメとか塩コン・フとか駄菓子風のものが好みかたまりが、べチャツー なの、たとえばべッドの中で塩せン・ヘイ食って屑を散らしても、地五郎八が非常制動噴射をかけた ! あいつは顔をこわばらせて、制動をかけたまま艇を急旋回させた。 表と違って宇宙艇の・ハンクなら背中がチカチカして夜中にシーツ ミシミシ ! 艇体がいやな音を立て、正面の〈黒瀬・ 5 〉がぐぐ 。ところがあの子ときたら、 を、・ハタ・ハタ払う必要もないしね : ーっと大きく流れる ! 隕石が迫るー そうなのよ、あんな風だから、チョコレートから飴ン棒からおまン じゅう : 。それをさ、御ていねいにあたいたちの分まで、つまり 五郎八が荒ッぼくレ。ハーをプチ込むと一瞬、体が浮き上り、つづ そ 三人前注文しちゃうわけ。宇宙空間じゃそんなに甘いもの食べられいて今度はイヤというほど座席の。ハックレストへ押さえ込まれた ! ないわよ。だから結局あの子が三人分食べちゃうわけね。 ガラスから離れたぬれ甘納豆が一気にすッとんできてあたいの顔 2
ラヴランドは、砂が目に入らぬよう、手でひさしを作って応え 「来たとも。おまえを追っていたら、ずいぶん勘が鋭くなった」 石造りの舞台があった。 ふたりは坂道の途中で、お互いのからだに触れ合った。しかし、 ラヴランドは腰に手を当てて、その不思議な眺めを見上げた。 ふたりとも決して笑ってはいなかった。 車は三時間前に放棄していた。傾斜もさることながら、蛇行する「変たね。魔がさしたんだ。 : 会ってもいいような気がしたん 道の細さ、そして小石の多い路面の不安定さが運転を不可能にしてだ」 少年 , ーー七、八歳に見えるこの少年は、父親に頬ずりをされなが 谷がせばまり、両側の岩壁が爪のように出会おうとしている部分らこう言った。 がある。そして、それをとり囲むように粗削りの大きな石が両方の 「当たり前だ。親子が : : : どうして : : : 会っていけないなどという ことがあるんだ」 崖の上に並べられている。 ラヴランドは、息子の細い肩をぎゅっと握りしめた。だが、それ ストーンヘンジのようなものに較べると、はるかに粗雑な造りだ が、高いところにあるというのが特徴だった。この足場の悪いとこ以上に親愛の情を示すことは、彼にはできなかった。 「。ハバがに まくを探していることはわかっていたから : : : 」 ろを一体どうやって運び上げたのだろう ? 「それでも帰ってこようとはしなかったんだな」 ラヴランドは、何度か小石に足をとられながら、頭上を見てそう 思った。彼は道のすぐわきの岩肌を蹴ってみる。火山性のその岩「パ ラヴランドは首をふった。 ーいとも簡単に表面が・ほろぼろと細かな砕片となってこぼれ落ち た。これでは手でかつぎ上げるのはもちろん、ロー。フなどを使って「怒ってるんじゃない」 引っぱり上げるのだって難しいだろう。 少年は、顔をちょっと離して、父親と向かい合った。背丈はまた シーンズはほ・ほからだに合ったサイズの ラヴランドは片手を岩壁につき、足元を見つめて軽いため息をつ父親の半分ほどしかない。・ ものをはいていたが、シャツはだいぶ大きかった。そして、いずれ も汚れていて、型くずれしていた。ラヴランドは、なぜかそうした ハラバラと、細かい石くれがもう一度彼の目の前に落ちてきた。 息子の前に立っているのが恥ずかしいことのように思えた。 彼は、からだを支えていた右手を岩から離してみた。 「行こう、ジャック。おまえの家に案内しておくれ」 ハッと気がついて上を見上げる。 逆光の中に人影があった。 ラヴランドは息子の両肩に手を置き、もう一度その顔を自分の胸 7 「ついに来たね、 に押しつけた。 る。
だから、そんないやな尊を、お店や役所のある〇番錨地 ( うちは あいつがせンから欲しがってたメカトロンの手頃な奴を、町のおも ・ショッ。フなんかで大ッびらにしゃべる奴 9 と逃げ出したとたん、ス左二番なの ) のコーヒー ちゃ屋で掻ッ払ったの。そして、 2 カートがひっかかって大きな商品ケースをひとっ丸ごとひっくり返 がいても、二人はなんにも言わない。 しちゃッてさ、こっちは下敷きになりかけてさ、店のおやじは真ッ蒼 だから、尚更、二人がかわいそうでねエ・ ! ″なンてオロオロ言って になって″お嬢ちゃン ! 大丈夫ですか よ ! まア、ぶ るうちに、セ】ターの下にかくしてた奴がポロリ : : : 五郎八の操縦であたい達ののった型艇が錨地のエアロックに人 うちにまでのりこまれて たれたのぶたれないの : ・ って、フロアへ降りたとたん、ラッタルの下にネンネが待ってた。 いや、そんなこたアどうでもいいんだ、この際 : 「ね工、買ってきてくれた ? 」 それはどうでもいいんだけど、そんなあたいだって、かりにあの お帰りも言わずにこれだよ : 時、あのナビオニクス・べイの中でよ、ネンネと二人で二万クレジ 「あア、買ってきてやったよ ! 」あたいはっッけンどんに言った。 トの札東みつけたとしても、くすねたりは絶対にしないわよ。 「こっちゃ、お尻を鞭でたたかれるやら、ドブン中へ四つン這いな これが他の工場で働いてるンなら話は別よ。 るやら大変だったンだから ! 」 だって、二万クレジットといや、星涯のホテル・レモンパイで 「どこにあるの ? 」これだもの。 ″松″っていういちばん豪華な結婚式をネンネと二人でそれそれ五「あんな下らないもンがそんなに読みたきや勝手にしな ! 」とうと ほしのみやこ 回ずつもあげたうえで、五回とも〈星京〉まで新婚旅行に行けるうあたいは噛ましてやった。「席の物入れ ! 」 ・ : たぶ やるね、きッと くらいのお金よ : くすねるな : ・ 「あ、そう」 ん。あたいはいただいちゃう。他の工場で働いてたら、あたいはき なんて奴だろ : ・ あたいは、とことこラッタルを登ってくネイ っとくすねる : ネをまじまじと見ちゃった : でも、ムックホッファ頭目とロケ松ッつアンの下で働いてる限 ネンネに頼まれたのは、〈乙女の友〉っていう雑誌なんだけど り、そんなことは絶対にしないわ。できないわ。 . 殺されてもできなさ、クソ甘ッたるい恋愛小説がいつばいのってるほんとに下らない おりる 。そんな人なのよ、あの二人は : 雑誌なのよ。星涯へ行くんで刪型に乗るとき、ネンネの奴が、あた 五郎八、椋十、虎造、キチ : : : みんな、あたいとは桁違いのワル いに〈乙女の友〉を買ってきてッて、頼むわけよ。 あア、こいつもとうとう色気づきやがったかと、あたいはがツく 上りだけど、あいつらも乞食軍団にいる限りは絶対にやらない。あ りしたんだけど、あそこまでノボせてるとは知らなかった : 、こよわかってる。 そしてそれは「あの二人にもわかってるのよ。あの二人は心の底それで、ごはんを食べて工場に戻ったら、事もあろうにネンネの奴 からみんなを信じてるんだ。 は〈乙女の友〉をひろげたまま、例の真ッ二つになった〈クリスクラフ
: 。さア、かかンなさい ! 」 腰紐つけてやるのよ。馴れてないから : ・ 順確認をはじめたもんでタイミング外した。 あたい達は姐御に言われた通り、船体を整備工場のエアロック通「はアイ ! 」まだ十三か十四のかわいいおネジッ子達は一斉に作業 へ、か、かっ 4 / すのに支障がないことをぐるっと回って確認してから、先に錨地へ 引き返した。 「あたい達は、ナビオニクス・べイの中をばらしてるからね、なん かあったらすぐ報告するのよ」あたい達はそう言い置いてから、ち ようどコックビットの真下になるナビオニクス機器類の入ってち区 「どうする、お七 ? 」 ネンネは、そびえるみたいな船体二つのふもとで心配そうに言っ画の点検用 ( ッチを開いて中に入った。 た。たったさっきまで船体をェアロック通す作業をてきばき指揮し「まア、きれい ! 」探見灯をかざしたネンネが溜息をついた。「さ すがに金持ちの船ね工 ! 」 てたくせに、今になっていきなりこれだもの。だから、ついつい たしかにそんな感じだった。ラックにずらりとマウントされてる こっちが前に出なきゃならなくなっちゃうわけよ。 よくお聞き、みんな」しかたないから、あたいは集まクリーム・ビンク塗装のナビオ = クス機器ケースは、なにか、お姫 「いい、カし ってる手下のおネジッ子達に向かって言った。「見ればおわかりだ様のロッカールームって感じなのよね。 船体は、〈星古都〉星系のクリスクラフト社からライセンスと ろ、この艇はほ・ほ真ン中あたりで切断されてる。だからパイ。ヒング やケープル類はみんなそこでチョン切れてるわけ。あんた達はまず「て、星涯の丸徳造船が建造したものだけど、ナビオ = クス関係は ほしのみやこ リットン〉とか、みんな〈星京〉星系からは 〈北辰横河〉とか〈 これをそっくり外すの、いいね るばる輸入した超一流品ばかりなんだもの : 「はアイ ! 」みんなが声を揃えた。 。やつばり星涯なンてド田舎 さすが、東銀河連邦の首星系よ : ・ 「ヒナ子とクウ子、コックビットから主機に行く管制信号電路にか ーニンの星系だと思っちゃうわ。 ・ケー・フルを大事に扱うのよ。みんなコ かンな。ファイ・ハ でもそんなに感心してもはじまらないから、まだうッとりしてる グの純正品らしいから、値打ちもンだよ。それと、あぶないから主 機には一切さわるんじゃないよ。明日、動力班が白沙から上って来ネンネをつッついて仕事にかかったわけ。 ラックから外した機器は、ケースごとあたりに浮かしといて、ま て炉心を抜くことになってるから : : : 」 とめて点検ハッチから外へ出すつもりだったんだけど、おどろいた 「はアイ ! 」 「ミョ子とセッ子は電力ケープル。・フラケットなんか外すのは動力ことにケー・フル・コネクターがみんなはめ殺しになってるんだ。故 これ以上の新モデルは出さない カッター使ってもいいけど、指なンかちょン切らないように気をつ障なんか起きッこない、 5 けなさいよ。それから ( ナ子とミチ子は上にあがってセンサーとアう自信なんだね。耐用年限は船そのものの寿命だ って訳よ。や 、、チ子がとンでかないように、 ッば、連邦首星系のメーカーってのは強気だよ。それでまア、不幸 ンテナを外して。それでハナ子 ! ほしのふるみやこ