仕事 - みる会図書館


検索対象: SFマガジン 1984年2月号
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1. SFマガジン 1984年2月号

インタビュウの第二回目は天野嘉孝さん ニメの世界に入ってしまいました。もう少 『風の谷のナウシカ』の素晴しさは特筆に です。天野さんのイラストについては今さ値します。日本の少年まんが界を動かすし詳しく話すと、静岡の幼な友達が国分寺 に住んでいまして、遊びにいった時に、近 ら何か言うまでもないでしよう。どれほど力、あるいは本道に戻すパワーを持ってい 人気が高いかは、昨年の大会、— くに面白いところがあるからといわれてタ ます。今、才能はアニメ界に集まってい OOZ ーⅣで星雲賞のアート部門を受賞し ッノコ・プロに行ったんです。見学した る、という気さえします。それはたぶん、 たことでも知れるというものです。また、 ら、どうしても入りたくなって、すぐに絵 うわべの華やかさとは別に、まだまだアニ を描いてもっていって入れてもらったんで 御存知のように、天野さんはア = メ界、そメ界は苛酷な厳しい仕事の分野であるとい れもタッノコ・プロの出身です。余計なこ うことと無関係ではないでしよう。単に物す。昼間は仕事をし夜は夜学にちょっと通 、″、ノグリ ったんですけれど、すぐタッ / コに。アニ とかもしれませんが、最近、絵の分野での質的な意味ではなく アニメ界の人たちの活躍には、眼をみはる メとかまんがとか区別する意識はあまりな ころから才能は生まれるのではないでしょ ものがあります。特にコミックスでは、安 いんですよね。今みたいにアニメーション 彦良和さんの『アリオン』や宮崎駿さんの というのが知られていなかったし、ウォル 閑話休題。天野さんに話を戻しましょ ト・ディズニーが好きでアニメをやりた う。タッノコ・。フロを辞め、独立し 、と。それだけで、それほど理性はなか て天プロダクションを設立し一年目 ったですね ( 笑 ) 。『マッハ 0 0 0 』 の天野さん。といっても社員は女の 子ひとりだけで週休二日、なのにオをやってた頃でしたが、最初は絵を描かせ ーナーである天野さんは休みなしでてもらえなかった。色塗りとかいろいろや らされて、一年ぐらいで試験があるんです 徹夜明け : : : という土曜日の午後、 横浜は伊勢崎町に近いマンションのよね」 ーー何の試験ですか。 一室、仕事場にお邪魔しました。 「タッノコの中で、当時まんがもやってま したから、まんがとアニメーションの試験 まずは経歴などから : ・ 「昭和二十七年三月二十六日、静岡があって、それをパスすると仕事として絵 市生まれです。十五歳で、家出同然を描かせてもらえるようになるんです」 ーーー学校の試験みたいに。 で東京へやってきて、それですぐア 引 8

2. SFマガジン 1984年2月号

のだ。 仕事上、夜型でしようね、と聞かれるたび 九時に朝食をとり、散歩をかねて郵便を出 に、そうですよ、と答える。 別に嘘を言っているわけではなく、まちが しに行く。わが家から二十メートルと離れて いないところに郵便局がある。が、ここでは いなく夜型である。といっても、夜中に仕事 3 出さない。わざわざ七、八分歩いて信濃町の 、ーをするのでなく、早朝に仕事をする。 慶応病院前の郵便局まで行く。運動になると 四時前には起き、机に坐る。六時すぎまで の二時間、女房も起きてこないし、朝刊も米 いうより、早起きのわたしは、午前中一回、 ラジオをつけても、ニュースはきのう 一一十分近く歩かぬと調子が狂う。 のままだ。 ところで、その郵便局の手前に書店があ の ( 咼 わたしのような気の散る人間は、世の中動もる。その書店の前を十時すぎに通るのが怖 いていると、気になって仕方がない。会社は 。開店早々で客が誰もいないからだ。書店 ~ ~ 巻経済を追 0 ているし、テレビ局は放送中だ・疥に誰もいないなんて、ゾー〉とする。イラス ~ 、し、スポーツは勝敗を竸 0 ているし、行事も トレーターだから、著書はほとんどないが、 の 装幀をした本は何冊かある。その本が、誰も 何かと行なわれていて : : : と思うと、落着か いない店内にひっそりとレンガのように積ま タ〕 が、四時すぎは、テレビもやっていない れていると思うと、背すじが凍る。本が売れ し、ラジオも長距離トラックの運転手や農村 ないと、内容よりも、装幀のせいにされるか の皆さん向けの番組ばかりで、わたしには関トらである。 係なく、落着いていられる。マチガイ電話もスそこで、十時前、まだシャッターの閉って かかってこないし、もちろん来客もない。 一フいる時刻に、郵便物を出しに行くことにして 早朝は暗いので、絵の仕事はできない。 イいる。が、電話があったり、送るべき校正や 夜、描いて昼間見ると、まるでちがう色にな派原稿が手間ど 0 たりして、十時すぎになるこ ってしまうからで、調べものをしたり、手紙 とも週に一、二回。おそるおそる通り、今日 を書いたり。それに、文章を書いた時には必 は人がいると思ってホッとして、よくよく見 ると、二、三人の人影は店員だった。 / らを . ず校正をするので、ゲラ返しがあり、赤鉛筆 をにぎることが多い。 本屋がひっそりとしているのは、精神的に 『朝は夜よりも賢い』というタイトルの本の も、都市文化のうえからもよろしくない。。ハ 広告を見たが、これは経営書で、危機にみま チンコ屋のように派手にを店外まで流 われたら、夜、あまり考えすぎるな、という すとか、早朝に本を買った客には、インスタ ントコーヒーをふるまうとか、書店も努力し 物内容のようだが、わたしの場合は、朝、頭が さえるというより、まわりが動いていないの てくれなければ ! 幼稚園が倒産しはしめ、 で気が散らぬという、ただそれだけのことな やがて大学も。若ものが減っていくのだから。 3

3. SFマガジン 1984年2月号

『ガッチャマン』とか『キャシャーン』と 「そうですね。だから勉強しないと駄目でやってましたけど ( 笑 ) 。最初の作品は、 かリアルっぽいものが多いんですよね。そ 『紅三四郎』とか、けっこうリアルなやっ すね、デッサンとか。全国から絵の好きな の時は向うの『バットマン』や『スー 連中が来るわけです。・ほくなんか最年少です。キャラクター室というか、今はキャ ニール・アダムズやフラゼッタな ラクター・デザインというけれど、その頃マン』、 で、当時十八とか二十すぎとかいたし どの資料を参考にしてやってたから、アメ はそんな部門はなかったんで、それで新作 アニメーションの方の試験を受けまし コミはやつばり凄い絵だな、まだまだ遅れ があるごとに、シナリオとか企画の会議が て、それがなんとか通って動画部に入った あって、そこで絵を決めたりしてたんでてるな日本は ( 笑 ) とか思ってました。た んです。で、タッノコは年齢は関係なく、 実力がなければ駄目で、どんな年寄りでもす。アニメーションといっても、動かす方んだん良いものを吸収というか、頑張らな くちゃなと、ただ仕事だけやってればいい 立派な人でも絵が下手だと駄目なんですではなくて、企画の方から入っていったか ね。ちゃんとしたものを描けば優遇されるら、いろいろ勉強していないと駄目なんでんじゃないんだ、みたいな感じでかなり刺 すよね。その段階でアメリカン・コミック激されましたね、そういうものに」 制度があったんですよね。だから、そうい タッ / コ・プロを辞めたのは。 スを見たり洋書屋に行って絵を見たり映画 う意味では勉強させてもらった。あんまり 「昨年の五月なんですけど、ちょうど三十 を見たりとか、ひとつの仕事としてやって 仕事をしてるって意識はないんですよね。 たんです。それやらないと新しいアニメがで辞めたんです ( 笑 ) 、区切りがいいと鬯 ずうっとそんな感じできてしまったから、 って。三十からまたやり直そうみたいな、 ぼくは普通の勤めの仕事をやったことがな作れない、みたいなところがあって非常に いんですよ。絵しかやってないから恐いで勉強になりましたね。周りの雰囲気もそうね ( 笑 ) 。十五でアニメ界に入って、十五 だし、友達も頑張ってました。十代は本当年ずつでやっていけば区切りがいいんじゃ すね、他の仕事というのが ( 笑 ) 」 イラストを描くようになったのは。 に勉強しました。二十過ぎてから遊びましないか、みたいな。四十五歳までイラスト で頑張ろう ( 笑 ) 」 たけれど ( 笑 ) 。 しい勉強をさせてもらっ 「ぼくは最終的にはアニメーションに向い イラストを描いている時は楽しいです たというか、タッノコはある意味で学校み てないですよね。というのは一枚絵に凝り 、刀 すぎてしまうんです。アニメーションは流たいな所で、いろいろなことを覚えました 「うまくいけば楽しいですけどね。 れだから、やはり流れのなかでデッサンっね」 マガジン〃でやらせてもらう時も、ます小 他に作品としてどんなものを。 けないといけないのに、・ほくの場合は一枚 一枚にこだわってしまって、どうしても駄「数多いから : : : 世に出てないものもある説を読みますよね。その文章の中で、作 者の言ってることというか、読者として 目だったんですよね。まあ、仕事としてはし、世に出ても知られてないものとか : 9

4. SFマガジン 1984年2月号

頭の中に描いたものを映像化するだけですも締切りに遅れたりして ( 笑 ) 。コンスタ図とか発想の段階ではいらないんですけれ ど、実際絵にする場合は、技術が大事です ントに出来なくて、どうも嫌なんですよ からね。でも絵というのはこうしたいな、 と思っても描けないものですね。頭の中でね、こういう生活 ( 笑 ) 。昼間駄目なら夜からね。人に自分の思っていることを表現 するのは、技術でしか見せられないから、 こういう場面、とか文章を読んでると浮かやればいいや、夜になると今日寝なきゃい いんだ、とだんだん逃げていくんですよねそういう意味で欲しいですね」 んでくるんですよね。でも描けない場合が ( 笑 ) 。自分が一番苦しいんだからね。今 多いですね。だから、ある意味では絵とは 話はまだまだ尽きないのです。天野さん 頭の中にあるものを映像化することではな回もここに二日泊まり込みで、ウチに帰れ が夢枕獏さんとコンビを組んで″モーショ いか、という気がするんですよ。の場ばちゃんと蒲団があるのになあ ( 笑 ) 」 ン・コミック″誌に連載しているコミック これからチャレンジしたい絵は。 合、特にそうですし。そのあたりの作業が 『アモン・サーガ』の話 ( かなり長くなっ 面白いですね。技術的なものは他で勉強す「漠然としてますけど、作品としてあるの ではなくて、自分の中にあるものとして傾て、もっと怖しいモノがどんどん出てくる ればいいんですから」 雑誌や単行本のイラスト以外の仕事向というのがわかってきた気がするんですそうです ) や、タッ / コ・。フロ時代、寮から よ。 よね。それは迫力あるところとナイーヴさ出てアパート暮しをするようになって、そ こで″絵″だけでない生活を知ったり ( 仕 「アニメが多いですね。放映しているやつを持ったものが生かされる作品。ちょっと 事部屋に置いてあるギターで演歌を唱うの クラシックな感じがあって、ヒロイック・ のレコード・ジャケットとかビンナップ もその頃覚えた趣味とか ) と、ま、いろい ファンタジイの迫力とアール・ヌーヴォー イラストとか、新作のキャラクター・デザ ろあるのですが紙数の方が尽きました。 風の要素と、それだけに留まらない動きの インとか、半々くらいですね、イラスト アーサー・ラッカムやジェフリイ・ジョ と。ただアニメは慣れてますけど、イラスある部分があって、それでいて今風。難し 1 ンズが好きという天野さん。自分の絵を いんですけどね。架空の世界で、ものすご トは出来上がりの時間が計算できないんで かためることよりも、いろんな人の影響を くきれいなものがあったり、汚いもの、恐 す。そこが面白いんですけどね、なんか先 受けていこうと、チャレンジ欲旺盛な しいものがあったり : : : そういうのを絵に がわからないというのは。例えば一週間ス イラストレイター。今の、そしてこれから したら面白いですね」 ケジュ 1 ルもらうとしても、一週間ずっと の仕事に注目しているファンは多いので 絵を描くうえで欲しいものは。 描いてるわけでなく、描く準備というか遊 びというか、そういうのが多いから、実際「モデルですね。それは影の付け方にしてす。 に描く時間はそんなにかからない。それでも、モデルがいないと想像ですからね。構 3 幻

5. SFマガジン 1984年2月号

て、ありがとうございました。これで安心して、第一九星系へ行く 彼は、歎声を放っところだった。 ことが出来ます」 とこか、自分の中にたまっていたものを吐き出 そういうヤ・ヘは、・ 壮大な計画である。 そうなれば、たしかに事態はまるで違って来るであろう。 して、カが抜けたようであった。 だが、彼が歎声を放ちたくなった理由は、それだけではなかっ た。その逆の意味もあったのだ。 公務室へ戻る。 それは、可能性の上に可能性を、そのまた上に可能性を積み重ね歩きながら、彼は、今のヤべが。フバオヌのことについて、な・せあ て行く 一種の夢物語でもあったのである。実現の見通しは、きあも情熱的だったのだろう、と、考えていた。 わめて低い。その非現実的なことにも、溜息をつきたい感じだったそこには、植民をする人間側からの義務感や、さらにはおのれが のだ。 見聞きしたプ・ハオヌの状況に対する同情、感傷といったものが働い 「それにしても : : : よくもこんなことを考えっかれたものですね」ていたのは、たしかであろう。 けれども、本当のところ、というより、それ以上に強い動機とな 彼は、感心 ( その点はたしかであった ) して、いった。 「いえ : : : 実は、私自身がやってみたいと思っていたことなのでっていたのは、やはり科学センターで自分なり、自分の仕事という ものが認められなかったことへの、一種のしつべ返しの気分があっ たのではあるまいか ? 自分が計画したことを司政官に託し : : : 司 ャベは、返事をした。「もっとも、私の計画は、どこかでトズト 1 の体細胞を手に入れて、ごく小規模にやろうというものでしたが政官が実行に移すかも知れないというそのことに、うさ晴らしをお ぼえていたのではあるまいか ? 「おやりにならなかったのですか ? 」 だが、それらはあくまでも推量である。そして今さら、去って行 「かんじんの、そのトズトーが見つからなかったのです」 ったヤべの心理を忖度したって仕方がないのだ。 ャベは、小さくいった。「それにセンターの連中には、危険だと ・たしかにトズトーのクローンというのは、一案であっ か夢物語だとかいわれて : : : 誰も親身になってはくれなかったのでた。トズトーをクローンによって増やすことで、。イハオヌの問題に あたらしい局面を来たすことは、間違いないであろう。トズト 1 が 「それは、お気の毒でした」 たくさん出て来るというだけで、タトラデンの様相に何らかの変化 、え。もういいのです。こうして司政官にお願いし、聴いてい が出て来ることも、充分期待出来る。 ただけたのですから」 これもまた、手札のひとっとして頭にとどめておいていいのでは ャベは、頭をさげた。「どうも貴重なお時間をさいていただい / し・カ と、彼は思った。トズトーのクーンというものを用意 6 2

6. SFマガジン 1984年2月号

釣れたか見てきますから・ーーというか、何かお手伝いできることあ ・ : 」ルースは魚をおき、眉根を寄せる。 るかしら、ドン ? 」 「で、ティカルへ行くわけか。ポナムパクへは ? 」 気がきくことだ。憤然とノーの唸り声をあげると、ルースは自分「いし 、え」だしぬけに立ちあがり、顔にふりかかった雨をはらう。 の用事をしに出かけてゆく。 「水を持ってくるわ、ドン」 用事の中には、たしかに自分だけのプライベートなものもある。 ルースは斜面のむこうに消え、かなりたってから、よく実ったパ わたしが苦労して生理的欲求をみたしたあとも、ルースはなかなか イナツ。フルを持ってもどる。 戻らない。ようやく水のはねる音が聞えてくる。 「すまない」ルースはかたわらに立ったまま、落ち着かなげに遠く 「大きな魚よ ! 」またも水音。土手をあがってきたルースは、三ポを見わたしている。 ンドもありそうなグレイ・スナツ・ハーを抱えているーーーほかにも何「ル しいきるのもどうかと思うが、あの連中はもどってこな いよ。そのほうがいいかもしれん。連中が何を考えてるにしろ、わ 魚をさばく厄介な仕事がかたづくころになって、ふとわたしは気れわれは厄介者なんだ。われわれがここにいることを人に伝えるぐ らいがせいぜいだろう。話が広まるまで一日か二日。そのころには ルースは切り身を焼くのに、小枝とごみをかためている。小さな飛行機のところまで戻れるはずだ」 手の動きはめまぐるしく、女つぼい上くちびるには緊張が見える。 「わたしもそう思う」たき火のところへぶらぶらと歩く。 雨はいまは小降りになり、二人ともずぶ濡れだが、寒くはない。ル 「それから、娘さんについてもくよくよしないことだ。もう大人な ースはマングロー・フの串にさして魚をよこすと、妙に気息音のましんだから」 る溜息をついてしやがむ。 「ああ、アルシアのことは心配していないの : : いまごろは水もた 「いっしょに食べないのかい ? 」 つぶり確保しているだろうし」指が太腿をせわしげにたたく。また 「あ、そうね」ルースは切り身を串でひっかけ、すかさずいう。雨が降りだしている。 「塩がありすぎるかと思うと、今度はすくなすぎたりして。海水を「さあ、ルース。すわってくれ。アルシアの話を聞きたいね。まだ 汲んできましよう」視線がありもしないものからどこへともなくさカレッジなのか ? 」 まよう。 溜息に似たかすかな笑い声をもらし、ルースはすわる。「去年卒 「いい考えだ」また例の溜息が聞え、ガール・スカウトにも心の支業したわ。いまはコンビ = ータ・。フログラマー」 えが必要だと知る。「娘さんから聞いたんだが、メリダからだと「いい仕事だ。で、あなたは ? 記録部ではどの方面を ? 」 か。メキシコ観光はもうたつぶりやったのですか ? 」 「海外調達記録保管室」かたちだけの笑みをうかべるが、息つかい 「そうでもないわ。去年はマサトランとクエルナ・ ( 力に行ったけどは浅い。「おもしろい仕事よ」 382

7. SFマガジン 1984年2月号

″あ、こういうところが見たいな″というんです、″マガジン〃の仕事は ( 笑 ) 。見事なんですが。 で、持ち込みのあと仕事をもらいまして、 ところを、あまり自分で作らないで、その 「べタが描けないんですよね。きれいなポ カシとか。だから、そうしたい部分もある 作品の持ってる雰囲気みたいなものを表現タッノコ辞めるまでアニメの仕事をしなが らアル・ハイトで描いてました。いけないこ できれ・よ、 : しいな、と思って描いています。 んですけど、それができないという真実も となんですけど ( 笑 ) 」 ( 笑 ) 。どうしても筆でやるからムラが出 アニメのキャラというのも、話に合ったも カラーとモノクロではどちらが描き易てしまう」 のを作るというのが第一条件なんですよ モノクロも筆で描かれるんですか。 ね。それと時代に合ったものというか : 「モ / クロですね。モノクロの方がストレ 「サインペンとかマジックですね。最近ペ ・ほくとしてはアニメとイラストの違いとい ートに描きたいものが出ます。カラーの場ンを使うようになって、そろそろ慣れてき うのはあまりないんですよね。表現方法と して出てくるものが違うだけで、やり方と合は色の段階で最初考えていたのと違ってた。やつばりペンが一番いいんでしよう きてしまう。色のもつイメージみたいなもけど、サインペンの方が安心感があって、 しては変わらないという気がする。タッノ のがかなり占めてしまうから、カラーの方鉛筆に近いし、ペンだとひっかかりますよ コでの、ものの見方とか考え方が役立って が恐いですね。カラーインクとかリキテ ッね。サインペンは自由に描けるし、すぐ乾 いると思いますが : : : 」 クスとかで、最近は水彩を使わなくなりま くし ( 笑 ) 、いつも筆やペンで描くとペチ 最初のイラストは。 した。リキテックスをメインに使うのも少 ョベチョになって汚ないんですよ。原稿も 「持ち込みでマガジン″へ。ここで よい。使いたいけれど、慣れていないから 指紋はついてるし ( 笑 ) 」 イラストを描きたいと持っていったんです よね、駄目たったけど ( 笑 ) 」 恐くて。リキテックスだけで油絵のように 作品を読んでからイラストを描きます カ . マガジンみを読んでいたんですやってみたいという憧れは常に持っている んですけど。たたやつばり、線で処理する 「読まないと描けないんです。・ほくの場 のが今のところ描き易いですから。アニメ 合、読んでも誤解するから ( 笑 ) 。イラス 「あんまり読まなかったです ( 笑 ) 。名前 は有名でしよ。それにうちの女房が凄というか線で入ってきたから、線にこだわ トは状況説明のほうがいい時もあるし、作 く好きで、作家になろうと思ったこと ってしまって、線が入ってないと安心でき品が難解たったらムードだけでいった方が ない。もっと勉強して線がなくなるように もあるくらいのファンなんです。アニメの いいな、とかいろいろ考えて努力はしてる したいですね」 背景やってたんです力 ・、、一よくよりしく んですが、それが結果につながるかどうか て。だからうちの女房が一番喜んでくれる をハー画の・ハックの白地など、処理がわからない。デッサンや構図は二の次で、 、 0 3 20

8. SFマガジン 1984年2月号

「そういうことだ」 「どうして ? 」 ・ほくの口から煙がなげやりに吐き出された。 クレスタは、チュー・フから虚空を見上げた。牙えざえとした闇 「ジニーたちには感情がないんだ。物事を素敵だと思ったり、うま だ。砂をまいたような星が、その上に散らばっている。 いと思ったりする感情がね。感情というより、その土台かな。共通 「どうしてかしらね。わたしは、そのことを知っているような気も の基盤がね。だから会話が苦手だ。論理的な思考はできるのに」 するけど : : : 」 「感情がないと、なぜ会話が ? 」 ・ほくも反論する気はなかった。 ・ほくらは居住区に人り、一緒に食事をした。冷蔵庫の中には、本「話し言葉は、多分に表情や身ぶりに助けられているからさ。かた 物のワインと合成チーズが入っていた。ワインはまずかったが、チことの外国語でも、面と向かって喋れば通じるけれど、電話では無 理だろ。きっとそういうことなんだろう」 1 ズはうまかった。 「テクニカル・ワインにすればよかったわね。本物はやつばりだめ「じゃあ、論理的な文章は作れる ? 」 「作れる筈だ。伝達の用をなすかどうかは別として」 クレスタはグラスの脚をもてあそびながら、何事かを考えこんで 「ワインのうまい、まずいがわかるかい ? 」 「わかるわよ。 : だって、わかるもの」 「彼らには自分と他人を分ける境界がないんだ。だから伝達という 「本物はだめで、合成はうまい ? 」 ちょっとの間、沈黙があった。 ものがわからない」 「″自分″て一体何かしらね」 「なにが言いたいの ? 」 ・ほくはクレスタのしぐさを眺めて、考えをまとめようとした。 「そうロを尖らすなよ。・ほくもそう思うーー本物はだめで、合成の 方がずっといける」 「きみでないものーーーそれが・ほくだ。きみのように髪の長くないも 「あなたは今、ジニーのことを考えているのね ? 」 の、アルトで喋らないもの、・フラウスとスカートを着ていないも クレスタはフォークを皿の上に置いた。 の、女でないもの : : : 」 クレスタは目を上げた。 「仕事の鬼ね」 ・ほくはタ・ハコに火をつけた。 「なるほど。あなたが何を怖れていたのかわかったわ」 「きみはセンターの教育スタッフをやめられるかい ? 「うん」 て、アフター・アワーズに盛り場で飲んだり、休日にゴルフに行っ ・ほくは、しばらく遠ざけてあったワイングラスを手元に引き寄 たりできれば公私をきちんと分ける自信はあるんだけどね」 せ、わずかばかり残っていた液体を皿の上にこ・ほした。 「この中じゃ、どこにいてもスタッフのままってことね」 「そんなのは絶対的な差じゃない。大切なのは、生物学的な差違し ロ 9

9. SFマガジン 1984年2月号

ただけだ。喋り出すと、自分で勝手に想像してしまうんだ。浮気し 「右耳で ? それとも左か」 ているとしたらどんな女か、と。あの男が浮気しているのは当たっ 「そこまでは考えなかった」 ているらしい。それから先はわからん。しかし想像するためのコッ 淳は笑った。 のようなものはある。読心とは違うがーーー」 二人は小さな明るい小料理屋の座敷席に落ち着いた。 「仕事、大変たろう。人が現実に殺され、殺すやつが現実にいるん「似たようなものだと思うな。姉さんの影響もあるだろう。彩子さ だからな。おれには信じられないよ。おまえは肌身でそれを体験しんは人間心理の専門家だ。彩子さんとは最近会っているか」 てるんだな」 淳は言葉をにごした。杯を傾けて、目を閉じ、彩子を想った。そ 「おまえらしい言い方だな、淳。まったく、少しは暇になりたい まるようじ よ。いま追ってるのは広域手配中のやっさ。磨琉養二。仲間うちでの想いを澄郎に悟られたのではないかと怖れて淳は杯をおき、澄郎 ! りう は磨琉と呼ばれてるが本名は琉というらしい。目立っ名だからをうかがった。澄郎は淳を見ていた。悟られたのかもしれないと淳 な、もちろん偽名を使っているだろうが、見つからん。殺人、放は思った。しかし澄郎の表情には嫌悪や軽蔑の色は浮かんではいな ま澄郎の心にあるのは淳と彩子のことでは 火、強姦、その他、やりたいほうだいだ。おまえの読心術でなんとかった。それで淳は、い ないのだと思いなおした。たぶん自分の判断は間違ってはいないだ かしてもらいたいと本気で思うよ」 「あれはショーなんだ」 ろうと淳は澄郎に酒を注いだ。 「彩子さんのいる精神衛生研によく行くんだ」 「うまく出来たショーだな。発煙と炎か。あの炎は消防法に引っか と澄郎は言った。 かるぜ。許可はされないだろう。それともあれも幻なのかな」 「もぐりさ。やばい仕事だ」 「おまえが ? どこかわるいのか ? 」 「本業じゃないから気楽なものだろう、淳」 「ちがう、ちがう。精衛研では臨床はやってない。研究所だ」 酒を酌み、淳はうなずいた。鍋料理がきた。それをつつきながら「そうか」 澄郎は淳に言った。 「姉貴の研究所じゃないか 、働いている」 「しかし炎や小細工はともかく、おまえの読心能力は本物だな。今「姉の仕事のことはよく知らないんだ」 夜の相手に、おまえ最後に本当のことを言ったろう。あの男、顔色「まったく世間知らずだよ、おまえは。犯罪心理について教えても を変えていたぜ」 らうんだ。磨琉の行動や精神状態について分析を依頼している。精 「おれは感じたままを言っただけだ。職業柄人を観察するのが癖に衛研はおもしろいところだ。ちゃんと犯罪心理学をやっている人間 なっているんだ。こいつはどんな生き方をしているんだろう、なに がいるんだ。関本星香という女の子が、女の子と言っちゃいけない 9 が好みでなにが嫌いか。どんな言葉にどう反応するか。ためしてみんだな、磨琉の心理行動分析を引き受けてくれたよ」 ! りう っ

10. SFマガジン 1984年2月号

「こんな目は初めてだ」 やがて、十トンのセルメックと、殆ど骨組だけになった、 ″ジャンビー〃の、むき出しになった鉄骨につかまって、ジョーインビング・・ハニー″が残った。ジョーイは、興味深げに、変りはて ーぐゃいた。まだ使えそうな機材はとり外して、″グレイシイ″に た船体をながめた。船名の一部、 ″〃の頭文字まで、半分欠けて 積み込むために、まとめてある。 「こいつは一体何だ ? 」 「おれもさ」 疑り深そうに、ジョーイは残骸を指差した : 何のなぐさめにもならない台詞で、おれは答えた。 「おおロミオ、ロミオ、あなたはどうしてロミオなの ? そして、 「古代の遺跡さ。一休みするとしよう。そろそろ、″グレイス〃が 帰って来る頃だ」 八百四十八」 おれが、で解除指令コードを送信すると、セルメックは、 ジョーイは、グレイクレイの主星があると思われる方角を仰ぎ見 すみやかに原形にもどりはじめた。とりこんだ種々の元素、水、金た。どれがその星たか、幾百万もの星くずの中では、てんで見分け 属板などを排出しながら、灰色のプラスティック状のかたまりを、もっかない。おれたちは、思わず互いのそばに寄った。千立方パ あちらで一つ、こちらでふたっと作って行く。 セクにわたって、生き物は、おれとジョ ] イと、セルメックだけだ っこ 0 「何て台詞だ、それは」 「仕方ないだろ。・フロディは、シェイクス。ヒアのファンなんだ」 「いい趣味だ。身ぶるいが出る」 「調子はどうだい、 ジョーイは、セルメックと廃棄物を選り分けはじめた。おれは、 ジョーイがにやにやしながら言った。″グレイシイ″は、″ぶら スラスターでセルメックを押して、一つの山 ( ? ) にまとめる。 ぶらする″のを終えて金を取りに行く途中で、おれ以外の全乗組員 楽な仕事ではなかった。 はにやにやしていた。おれの機嫌はよくない。 「その数字は何なんだ、・ ? 」 「気に入らんな。どうも見覚えがある。積みかえたな ? 」 「数字 ? 」 おれは、″グレイシイ″の空気再成装置をポンとたたいた。″ジ トの尻尾にあった、八百いくらって奴さ」 ャンビー″でおれが作った、セルメック製のものに、、 しつの間にか 「ああ。チェックコードさ。誰かがうつかり、解除コードを口にしすりかわっている。解除コードを発信した時には、″グレイスフル ても、船が・ハラ・ハラにならんように、つけてあるんだ。続けて言わ ″は亜空間の中 : : : 分解を免れる道理だ。 ないかぎり、解除プログラムは動かない」 「その通り。こいつもだよ」 「″ジャンピー″で、シェイクスピアを上演するとは思えないけど ジョーイは、そばにあった大きな合金製のケースをけとばした。 な」 「あんたがサ・フで使ってた、セルメック培養器ーーーセルメック製の 3 ー 0