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検索対象: SFマガジン 1984年3月号
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1. SFマガジン 1984年3月号

いる。その要因のひとつは、今般、ほ・ほ時期点引用者 ) ては公けにされていなかったこと、これはゆ もうひとつに、ジャーナリズムへの意識 同じくして彼女の第三評論『ベストセラーの ゅしき事態であった。 中島梓の専門誌初登場は、本誌、旧構造』 ( 講談社 ) が出たことだ。この二冊はは、きわめて濃厚である。 ウ 『奇想天外』誌ともに、一九七八年四月双生児、とまではゆかずとも、姉妹の関係は先に「リアルタイム」と表現した彼女の関 ( 号 ) 。「レビ = ウ」と「日本作家持つ。たがいに補いあうことによって、親のむとは、つまるところいま、ここにおける作 論 / ート」を同時に執筆開始している。とり全貌をより明らかにしてくれたのだ。以下、家・作品のみならず、現象・状況にまで収東 してゆくからだ。これはまた、活字の他、マ わけ後者は、この号から一九七九年六月号ま特徴をまとめよう。 ンガ、アニメといったメディアへの並々なら ひとつには、前掲論評でも言及した、ヒュ で間断なく続き、時に一一論文併載の月もみう ぬ関心であり、それらメディアに人々が供給 レ ーマニズムの姿勢が挙げられる。 けられるほど精力的に書かれたため、十五ケ 「日本作家論ノート」を一暼してもわかを渇望する幻想と、その背後にひかえてそ 月間でありながら十七回にもわたる。 フィクシ・ン C.TSQ. 光瀬龍からはじま 0 て山田正紀、田中光るように、彼女はキ〉ラクター論から出発しれら幻想を保証・操作する一、・ , デ→ア 二、星新一、筒井康隆など、じつに多くの作た。ただ、ここで付言したいのは、その実体なるメタ幻想への尽きることのない関心と 家をポイントをよくおさえた切りこみでそれがむしろ民主主義的なインデヴィジ = アリズも言える。 ・こ、ら、たとえば彼女はそれこそ自身の それ論じわけており、この時点で一冊にまとム、すなわち川又千秋とも通ずる六〇年代以ナカ 「個」のために「仮想敵」をしつらえること めてくれるか、と期待させたが、諸々の事情降の「個の視点」と換言できることだ。かっ て平井論で重視された「おれは、おれだ」のがよくあるがーー『道化師と神』にはスコー ゆえに惜しくも宙ぶらりんになった、と聞い ルズ、ラ・フキンのー歴史とそのヴィジ 視点ー ている。 『ベストセラーの構造』にはクーン むろん、一般的な論では個よりも普遍ョン』、 ところが、彼女にとって、障壁はひとつに とどまらなかった。本書「追記」にうかがえが尺度とされている。しかし、中島梓のみるツ『ベストセラー小説の書き方』が仮想敵で るとおり、この評論自体にしてからがまたも日本は、個にとっての普遍が対立項としあるのは、彼女自身の本誌一九八一年四月号、 一九八三年十月号の熱つぼい「レビュ や、一九八一年なかばに脱稿しながら「個人てでなく通過儀礼として機能してきた歴史、 的な事情があって、その刊行までには、丸一すなわち〈個↓普遍↓ ( 再統合された ) 個〉ウ」からも読みとれようーーーそれはすべて、 なる発展にほかならない。さらにこの視点 年半」宙ぶらりんにされるという道筋を辿っ たのである。何よりも「リアルタイム」の作は、人間、作家としての個と文学ジャンル、 家・作品・時代にこそ関心をもつ中島梓にとフィクションとしての個との間にさえ架橋し って、これはのつびきならぬ苦境だったろて、大団円を導く。 「は、われわれが、われわれ自身であ ることの意味を、正しく教えてくれること では、実際刊行された本書を読了した結 のできる唯一のジャンルである。 ( 中略 ) 果、どうであったか ? われわれは、この、がであるこ 目下のところ、評者としての私には、この と、その意味をいまこそ最も重大に考えな 一年の「遅れ」とは本当のところなかなかに くてはいけないのである」 ( 二一一頁、傍 意味あることだったのではないか、と思えて 。 . をいゞ中島。物、 フィクシ第ン 9

2. SFマガジン 1984年3月号

みどりはエスパー④ エスパー以上 「へえータッちゃん、もう一年生卩ついこの間まておしめし 4 ていたのに」久しぶりに訪れた従姉の家。みどりは、猫と じゃれる、と一一一口うより猫に遊ばれているタッヤを見て目を まるくする。「じゃ、タッャ君におこづかいあげなきや。はい 入学祝いよ」 ( えへ、やったっ ) ? ☆會◎ ) 幼い思考波がみど 4 りの頭の中て躍る。もうひとつは、タッヤに投げ出された 猫のトトのものだ。 4 ( いつばい買わなきや、あれ もつ、これもっ′ . ) だが、伸 4 4 4 びようとしたタッヤの手を、 44 4 4 母親のクミコがさえぎった。 「ありがとう、みどりちゃん。 44 ても、これ、私に預からせてね。どうせこの子、いつばい買う 4 んだっ、あれもこれもつ、て騒ぐにきまってるんだから」 さすが母親。わが子の心を読むのはエスパー以上だ。ほほ 4 をフクッとふくらませたタッヤは、トトに八つ当りを始め 4 4 4 た。「この子には、余分なお金をもたさないようにしてるの。 44 4 4 おこづかいも半分あげたつもりて自動積立にしてるのよ。 4 子どもの天引きね。この子がお金の本当の使い方を覚え 4 る 宀にし J 、さが僴期日ト」 トトの反撃に驚いて、タッヤは母親に飛びついた。 ノ 壑第ミ第 0 ) 三和銀行

3. SFマガジン 1984年3月号

いって、その階層も生きている、という。 それはさておき、本書に戻ると、目から鱗第 《意識をもっている細胞》に、夢野久作『ド が落ちる思いを、二カ所でした。 グラ・マグラ』を連想してしまう。 ひとつは、オリヴァー『太陽の影』の見直、 ウ ハミルトンの『フェッセンデンの宇宙』をしができたこと。″アメリカに滞在してみる 思わせるようなところもある。″銀河系にとと、アメリカの現代人たちは、本当にその土 っての人間は、ちょうど人間が原子構成要素地に密着した生活をしているというより、ま を見るのと同じように、「銀河系の顕微鏡」るで他の惑星からやって来た移住者という感 をもってしても観察され得ないほど小さな短じを受けるだろう″そういう感じは、無意識 レ 命な存在であろう″ 的にであれ、アメリカ人自身もしていて、そ 玉ねぎのような階層の、外側にあるものれを投影したのが、『太陽の影』になったよ ( ) うに思われる。映画『・ e 』でよく描かれしかし、地球は生きているのかな。本書は ・ t..nu. は、すぐ内側にあるものに対して、 " 神。な のだ。人間はその細胞に対して神だし、地球たように、町の外に一・歩出ると、宇宙に直結それを実感するには、自ら訓練しなければな 生命は人類の神 : : : 、惑星としての地球は地してしまうようなところが、アメリカにはあらない、という。たとえば、多くの村々を訪 さざ 球生命の神。そういえば、人類家畜テ 1 マのる。外から、光燦めく夜の町を見おろすと、れよう。ひとつの村をゆっくり、リラックス 傑作『超生命ヴァイトン』が思い出される。町がそのまま宇宙へ、と翔びたっていくのをして歩き回り、村についての本を何冊か読め サイエンス・フィクションに通じる、さま幻視するのも、おかしくない。・フリッシュ、 ば、村の生きている世界線が実感されるだろ ざまなアイデアをノンフィクションとして体宇宙都市シリーズですな。 う。それを世界中で繰り返し、記憶の珠玉に 系化すると、体系化の根拠をさかの・ほって、 もうひとつは、レム『ソラリスの陽のもと輝く網目で地球をおおえば、確かに地球生体 どこかに公理を置かざるをえない。本書でに』のコンタクト失敗の原因に、気づかされの実感を味わえもするだろう。 は、玉ねぎモデルの最中心部に″内部自我″たこと。個々のヒトが、惑星生体のソラリス今、必要とされるのは、ひとところに固着 をおく。さまざまな階層の生体に、内部自我に呼びかけても、それはウイルスが人間に呼した学校の中で、紙の上だけの勉強をするこ は住み、人体もそのひとつである。うーむ、 びかけるようなもので、答が返ってきても、 とではなく、「旅する学校」ではなかろう ほんとうかなあと疑っても、公理なんですかわからないのは、とう・せんだ。惑星生体ソラか。デンマークのツビンド学園のトラベリン ら、どうしようもない。そこは判断留保のか リスに呼びかけて、コミュニケーションを成グ・フォーク ハイスクールは、その好例 っこ入れにしておいて、体系化の果実が、ど立させる、こちら側の主体は《生きている地で、第三世界を旅行する学校。十八歳以上な の程度、ぼくたちに新鮮な目を与えてくれる球》そのものでなければならないー ら国籍を問わず誰でも試験なく入れる ( 『ポ かを問題にしたい。とくに、小さな誤りや矛ヒトだけでない。鳥も森も、海も陸も、マ ビュラーサイエンス』八四年二月号 ) 。 盾を、鬼の首をとったかのように誇らし気に ントルも核も含めた一体としての地球そのも なお、本書の原題は、 "THE SECRET 指摘したりなどしたくない。まったく意味がのが、コンタクトを試みないと、ソラリスは OF THE GODG" ( 『宇宙解明の新理論』 ないとは思わないが、倭小な人間がそれをやまともに答えてくれないだろう。映画『ソラ / 著者Ⅱ・・ストリンガー / 訳者Ⅱ吉江 ると、作品をより小さくするだけだ。揚げ足リス』の最終シーンは、そのことを示唆して正雄 / 二七六頁 / \ 一三〇〇 / 判上製 / とりは、子どもが好きなこと。 いるようだ。 こびあん書房 ) 字宙解第の理第 : い 円 2

4. SFマガジン 1984年3月号

海の向こうでは、相変らずファンタジイとらえた。その感覚は次第に強まってゆかった。首尾よくディフォークを誘拐し、 禾の量産が続いている。ローカス誌によれき、近くの巨大な岩が胎動するがごとく震地の底ーー - 、死の世界ーーからの使者を待っ ば、八二年度のファンタジイ出版点数は長え始めた。と見る間に岩にき裂がはいり、 た。やがて地の底からやって来た死霊の案 篇だけで一二九冊 ( 再版を除く ) 。このスその裂け目から骨だけの手がにゆっとの内人と魂抜取人に連れられて、彼らは死界 本 キャナーのためもあって、頑張って読んでび、這い上がってきたものは、髪をしたた へと、魑魅魍魎のひしめく地底の河を下っ 襃はいるつもりだがなにせ横文字、この二割らせた骸骨だ 0 た。その手には大きな黄金て行 0 た。 もこなせば上出来といったところだ。しかの鍵がにぎられていた。骸骨は焚き火のそ「これより先、あちこちに支配者の代官が しここ一年を振り返ってみると、意外なほ ばでくずおれた、と見るや、その骨に肉がおる。そこを通るには通行税として、おま ど印象に残っている作品が少ない。量産に いや、何万、何億という地虫えらの体の一かけらをそれそれ一回だけ差 よる質の低下も歪めぬ事実だが、″あくのが骨を覆っているのだ。やがて虫どもが何し出さねばならぬ、よいな」、死の地に着 強さ″が欠如しているよう くと案内人は言った。妖獣に引かれた車で に思える。やはりファンタ ・出発した彼らを最初に迎えたのは、顔も体 ジイには、その完成度もさ もただれた三人の鬼婆だった。「さあ、肉 の一部を : : : 」との要求にニフトが進み出 ることながら、鮮烈なイメ・、ー・ ' さー ( ると、鬼婆は左耳をくれという。彼は自ら ージが不可欠なのである。、 今回紹介するマイクル・ 刀で耳を切り取って投げた。鬼婆共はそれ どくろ シェイの『変屈者ニフト』 を奪い合って食べた。次に彼らは骸骨の面 をかぶった大きな猿人に出合った。それは 4 ザーを想わせる設定のも・・・、 ハルダーに人差し指を求め、彼が切り落し と、かのウィアード・テー た指をうまそうにロに放りこんだ。目的地 ルズ誌的色彩を色濃く漂わ が近づいた頃、全身を包帯でくるんだ、男 せた、強烈な印象を残すあ。 と女とお・ほしきふたりの巨人が彼らを待っ ていた。「わたしの赤ん坊にその男の眼玉 〃 - い 0 強」作品であゑ がほしい」と女は言う。ぞっとして後退る 処へともなく去ったあとには、見まごうこ ディフォークより素早く包帯男の腕がの その女が語っ 陽が西に沈む頃、ふたりの男が大草原をとなき全裸の美女が = 渡っていた。狼の群が出没すると知りつつナ こ、「私はダリッセム、七年前にこの世をび、彼の眠を抜き取った。女が抱きかかえ も、そのふたりの盗賊ーーニフトとハルダ去った女です。私の願いをきいて下されていた包みを開くと、そこには赤子の顔は は止むなくそこで一夜を過すことに ば、この魔術師の鍵を差しあげます。私をなく、無数の妖虫がのたうっており、眼玉 シ した。その夜ふけ、「俺がこの世でほしい裏切った男、ラークナ・ダウンズのディフを飲みこむようにつつみこんだ。 ものは″魔術師の鍵″と呼ばれているやっ オークを地の底まで連れてきて下さい」そ目的地の丘に着いた彼らはダリッセムを 屈クだ。そいつのためなら首だ 0 てかけるぜ」れだけ言い残すと、女は再び大地の下へ吸呼んだ。しかし : ・ イと ( ルダーが話していたとき、地面の下か いこまれるように消えた。 一九八三年〈世界幻想文学大賞〉ノヴェ 偏 ル部門受賞作。 マら何かがや「てくるような感覚がふたりを早速ふたりはラークナ・ダウンズ〈と向 ソウルナイカー 5

5. SFマガジン 1984年3月号

ンス・オプ・ワンダーランド⑩〔 程も弁え ↑スオ。ヘラの書 とにくカードを作ってみよう」 とんな事になる 、全然見当もっ力ない 雑把にこれからの , れ・モ・し・【・ ' 、ゞ内 ( な - でスベオペごときを書か ? 分しか書けぬスベオ。へと ( 、発想。為。触媒 媒の方・、とその蓄積の仕方にし , に観する知的生の法 媒 0 釀酵せ方との組み合せ」 0 」》第 - 、「 メージの脹ませ方 3 ついて め方、 ( 責め女のノウ立 引。寸して・た るインターのド ろう・ 考え 、・私のこ「の〈ネペ ちつど書い もとも なペラトル感覚 " 作家に必要なのは、読を作の・ 以下色 ばっていくべクトル感覚ある“ ツを・・ま , ( - 合せズいない い」ろうと思て える文を書一」イ・ , やを・、自信よ という言葉である。 、めて七転八 -9 て、一澹た に ) て書くと か。しか と、読みめたあ最後、お、のな覿とその、整理 ) 、 . どいが当に う基本原 し - れよ。 , 順序など ろう わりまで、一気に読を引きげア ( 0 っぞしま リ」 - つで , も 」かんェで進 韲になる , るを しいる言葉はなと思 - フのたが・ キミカ えるほど、の " ペクドル感覚。のよ凄 さて、ス十・ ら私、、秀物を書 する。 い言葉。自分の日記ならいざ知らげ れなんであれ、いやしくも人に読でも 谷、つに座っ銘と一い言葉でいくつ。 し , かし、はぞ ) にはかな、 ミの頭の中にん べき事 ってあ . - う為の文章を書こうとける人にと 0 て不可よ資 イラストレーション・加藤直之

6. SFマガジン 1984年3月号

「だから、あんたが、あたしの話をきいて、そして、あたしのこと修平も , ーーかれもまた、ささやくような声になった。 「ここへきて。あたしのとなりへ」 を頭がヘンだっていったって、あたしゃいっこうに気にしやしない わよ。別に、あんたに信じてもらって、助けてやるいわれもないし「こうーー ? 」 「そう」 あんたはあんたで好きにやって、死ぬなり、生きるなりすれば ルカの吐息が、修平の耳にふれた。 しいじゃない ? 」 ルカは修平の耳の中に、決してその音を、外の空気にはふれさせ だから、あたしのことをどう思ったっていいけどさ」 まいとでもいうかのように、ささやきこむ。 「はやく云ってくれーー」 それは、こうきこえた。 修平は、かすれた声でいう。 くッド・スヒリット 「早く」 「そうねえ」 じらすようにルカはいし こ 0 「じらしてるのか ? 」 「そんなことないわよ」 ルカは楽しそうにいい、罐ビールをぐっとのむ。 「じゃ、云うわ。ーーあたしたちはね。戦争をーーしたくてしてい るわけじゃないのよ」 「経済学、性悪説、エゴイズムーーーたぶん、みんな、いくらかづっ あたってるはずよ。だけどーーー全部じゃない」 「あたしたちは 戦争をさせられてるのよ」 ルカはそれを、かすかな、ささやくような声でいう。 世界がきき耳をたてている、とでも、いうかのように。 「誰に ? 」 パキンと音をたてて罐ビ 1 ルをあけ「 一瞬、ひどく愚かしいびつくり顔で、修平は娘をみつめる。 「わかってんのよ。あんたの考えてることは」 ルカは、挑戦的に、罐ビールをのみほしてアルミ罐をへやの隅に 放りつけると、修平を正面からのそきこんだ。 「なんだ、やつばりこいつ、分裂症だったのかーー・そう思ってるで しよ。ついてくるんじゃなかったーーー時間をムダにした、とね」 「ムリすることないわよ。信じないなら、お帰りなさい。信してく れっていってるわけじゃないよ」 「信じるよ」 弱々しく、修平はいう。 一体、何なんだ 「信じるよ。だからつづけてくれよ。それは 3 「何っていう、実体はないのよ。みんなのすぐ考えるように、サタ ンとか、そういう、すでに知られてるものじゃないの。それしゃ何

7. SFマガジン 1984年3月号

. 物ー卩わー 「クトウルーの呼び声」に寸されている「旧年代の資料ブック」 してまってな結果にに、「一九二〇年代の資料ブック」を添付し ことが多く、 たことだろう。ここには、当時の年表、事 終わる場〈、しー、はある撃 何とくらしゲー心やと思われるかもしれ件、有名人から貨幣価値、風俗 ( 汽車や気球 ないが、実際にクトウー神話を読まれた方の見取図を含む ) まで砿、簡潔にまとめ上げ ならおわかりのとおり、原作の内容はまさしられている。いわばこのゲームは ' 究に述べ、 くこのゲーどおりなのだ。それに、人間のたストーリー性と世界構築性への指向せ こわいもの見たさの心理というのはおもしろもち、なおかつ新しい分野を開拓したという ことて、まさに画期的な作品てはないだろう いもので、・うのこうの言っても参現ゲー 、になる ) うした〉 7 、は見事に機能「か。昨年の・・ (-) ・ウ = ~ ズ賞を。ー ~ ・プ るのである ( どろやらプピイヤにはンツ、」イ部門で受けたのも無理のないところだ。 ・マスターの″出たオ ! という叫びをき こうして、 ( ファンタジイ ) の原作と たいためだけにやっているようなところがあ 結びついたロール・プレイング・ゲームを概 る ) 。 もう一つ、このゲームの見事な点は、ラヴ観してきたが、ひとっ言えるのは、ロール・ クラフトの描いた″時代″を再現するためプレイの本質が従来よりコンフリクト ( 戦 闘 ) 指向でなくなり、スト丿 ( 謎とき ) 指向、あるいは役割演技 ( 世界構築 ) 指向へ と向かってきていることだろう。もっとも、 こうした洗練が一方では反発を呼ぶのか、今 回は触れられよかったが、原点に近いスー ヒーロ 第ル・プレイが再び人気を呼 プ」イン「グゲに」よ ) ・か 0 てのよう にいま芦朝名づけられぬもの。であるだけに 今後もさまざまな振幅を 0 り返していイのは 上ち力いないと田じ - フ ( ゲーム・ファンのための註 ) ゲームは ズのポード・ 〈エルリック〉シリー 版権がア・ ( ロン・ヒル社に移ったので、近い うちにホビージャ。 ( ン社より出される予定で す。ロール・プレイング・ゲームの方はどう なるかわかりません。

8. SFマガジン 1984年3月号

山下の顔から、音を立てて血の気がひいてい一つた。 地の底からわいてくるような、低い震動が、かって応接室だった その部屋を満たした。『推カ上昇百二十万トン。秒読ミニ入リマ 合成音が、無慈悲に響く。 『打チ上ゲマデ、 e マイナス六十秒。五十九。五十八 : それを聞いたとたん、山下は尻尾をふんづけられた猫みたいに、 ぎやっと言って飛びあがった。」 扉にとりついて、わめく。 「出してくれ・、—・ーっつ ! 」 「無駄よ。打ち上げ中は、全ての隔壁は、ロックされてるわ」 さあ、観念しろと言わんばかりのみのりの声。 猫ヶ丘の街に住む人々は、子々孫々にまで語り伝えることだろ 山下は、ずるずると扉の下にへたりこんだ。 ) 「さあさあ、山下さん。早くシートについて。人間あきらめが肝心 よ。・フラックホールを見にいくんですからね。サトルさんをごらん丘のほぼ頂上に位置する豪田篤胤科学研究所の建物そのものが、 土台から火を吹いて、ゆっくりと上昇を始め、やがて一本の白い煙 なさいよ」 みのりは、シートに座っているサトルを指さしてみせた。しかを残して、青空のかなたに消え去っていったさまを。 し、サトルが単に気を失っているだけだということには、気づかな っこ 0 ・カー 3 遠雷のような低周波音が、徐々にのぼりつめていく。 マイナス、三十秒』 「もうすぐ、大気圏を出るわよ」 シートに半ば横たわる格好のみのりが、を見つめながら、 コン。ヒュータが告げた 1 山下は、がつくりと肩を落とし、はうようにしてシートに座りこ 言った。 んだ。 「なるほど」 全てをあきらめた様子で、両目をしつかりと閉じ、シートのひじ魂を抜かれたような声で、山下がうなずいた。 かけを力いつばい握りしめた。 ふと目を開けて、となりの席のみのりをふり返る。 「この家は、昔からこんな仕掛けになってたんですか ? 」 「まさか」 と、みのりが前を向いたまま答えた。 「あたしが改造したのよ」 「やつばり、いやだ 山下は、悲鳴をあげてシートから飛び出そうとした。しかし、時 すでに遅し。 低い雷鳴が、一気に耳をつんざくような轟音と化し、打ち上げ時 の加速が、山下の体をシートに叩きつけた。 3

9. SFマガジン 1984年3月号

がかりだった。ぎみだけが、おれのいったことばを少しもおどろきのことなんか、考えることないわ。はじまりは終わりと同じ意味な んだから。そうでないから、いまあたしたち、ここにこうしている恥 もせずにうけとめた。きみだけがーーー」 2 わけでしよ」 あっさりと、ルカは、修平のくりごとをさえぎった。 ルカは先に立って、せまいマンションの階段をとっとと上ってい った。それはどうみても、築後二十年近くはたっていそうな、旧式 一瞬、彼は、ばかんとする。 で、エレベーターひとつない、汚い建物で、しかも煙突のように細 「いいわ、といったのよ。 そこまで思いつめてるのなら : : : ち長かった。ルカはそのマンションの四階に住んでいた。 ゃんと、話すことは話してあげないと、かえって、じたばたと動き室内もまたおどろくべき乱雑さだった。大半は修平にも覚えのあ まわって、あたしの首までしめるようなことになるかもしれないもるような本がいくつもの山になって、床じゅうにスラまかれ、その しいわーー・といっても、ここじやどうしようもないわ。 んね。 上に布団がしいてあるありさまだった。壁にはやたらとハンガーに あたしんとこへ、来る ? そこなら、たぶん・ーー少しは安全だと思かけた服やコートがつるしてあった。ろくろく家具もない、その室 うわ」 に入り、ていねいにカギとチェーンをかけたルカがまずしたこと は、窓にびったりとはってある黒い厚地の布のぐあいを、かるくっ ついたりひつばったりしてたしかめることだった。一方がこわれた ままの螢光灯にてらされた室はうす暗く、わびしく、妙に防空壕 や、そういったものを思わせた。 「安全、って : : : 」 私鉄の駅から、暗い道を、肩を並べて歩きながら、おずおずと修「どう ? 」 しいお住いだね」 平はたずねた。 「ハカね。そんなこと、きいてんじゃないわよ」 「そのーー核シェルターかなにか、用意してあるわけ ルカはマントと・フーツをぬいだ。下には、黒いニットのすとんと 「ばかね」 娘はするどく吐きすてる。カッカッと・フーツのヒールがアスフアしたシルエットのワンビースと、悪趣味なモザイクのような模様編 みのタイツをつけている。 ルトに鳴る。 「まったく、信じられないほど、混乱して、わけがわかんなくなつ「何かのむ。罐ビールとウイスキーぐらいしかないけど」 てるのね。あんたのいうこと、矛盾だらけよ。 もう戦争ははじ「いいよ。それよりーー・・話してくれ」 「そうね。時間がないものね」 まっている、といったかと思うと、核がどうこうってーーーはじまっ たのがもし核戦争なら、何したってムダなことよ。だから、核戦争娘も同意して、マントをポンと片隅に放り出し、本の山の上にの

10. SFマガジン 1984年3月号

仲間がくるには少々下品で、柄がわるかったし、会社からも少しは なれすぎていた。別に、修平の行動を看視しているわけでもなかっ木戸は閉ロしたようにうなづいたが、あとでこっそりと多田に、 安田さんすごい意気ごみだぜ、とささやいた。まるで、魅入られた たから、木戸や多田にせよ、いぶかしむこともなかった。ただ、 「何だ、また定時退社なのーー修ちゃんこの頃、何だかっきあいがみたいだよ しかし、その木戸にせよ、修平が本屋で戦記ものの本を買って わるいじゃないの」 は、かえりに公園へいってべンチにすわっている、とまでは、まっ 高野がかるい、からかうような声をとおりすがりにかけていった たく想像もできなかったにちがいない。 だけである。 修平はこたえなかった。ごまかすような、えたいのしれぬあいま次の日曜日、竜太は前日から、動物園へつれていってもらうん だ、と楽しみにしていたが、修平は、ダメだと首をふった。 いな徴笑をうかべてみせただけだった。 出の日なんだ」 「すまんがね、チビ君、あしたは、。、。、、 三日めは、雨だった。さすがに修平も待ち呆けをやめたが、次の 夜、雨があがると、またあついコートに身をつつんで、しっと公園「あら、つまらない」 云ったのは、竜太よりも美穂が先だった。 でうずくまっていた。 「忙しいの ? また、去年の五、六月ごろみたいに、めちゃくちゃ 五日、六日 に忙しくなるのかしら ? 」 そのかたわらで、彼は毎日のように本屋と図書館にかよっては、 「あのときほどじゃないよ」 せっせと本を買い借り出してよみまくっていた。急に読書家になり ましたね、と美穂と同じからかいを木戸が投げると、およそくそ真修平はなぐさめるようにいった。 「オンエアはたぶん八月だから。本格的に忙しくなるのは、もう半 面目な顔で、資料だよ、といった。 「資料だけはしつかりやっとかんと、イメージがゆたかにならんだ年くらいしてからだろう。あしたのはただたまたま出になっちま ったんだよーー喜つかくの休みだから、美穂が竜太をおばあちゃん ろ」 「そりやね。ま、そんくらい安田さんが乗「てくれてるんなら、ぼのとこへでも、つれて「てや「たらどうだい。ママだ「て、つまら ないだろ」 くとしても、やりがいのある感じだなあー 「そうねえ」 「なーに : : : まだ時間はたっぷりあるんだし」 「ママ。おばあちゃんとこへ行こうよ。行こうよ、ねえ」 修平はにやりと奇妙な笑みをうかべた。 「そうね : : : 」 「こんどの奴はとにかく、世間をあっといわせるようなしろものに してみせるからな。画期的な・ーー前代未聞の。お前さんも、そのつ 「竜太もそういってるし」 修平はにこやかに笑って、何となくうかぬ顔をしている美穂の肩 もりでいろよな、木戸チャン」 233