作家 - みる会図書館


検索対象: SFマガジン 1984年4月号
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1. SFマガジン 1984年4月号

第第 長 集 東京発 愛知発Ⅷ掲 誌 十 6 名古屋で「ミュータンツ」といえば、知ら 今回は一月二日から十一日まで池袋の西武 ぬものはいない位の老舗である。その「ミュ デ・ハートで開かれた「野田昌宏センス・オ・フ ータンツ」が、この程二十周年を迎える事と ・ワンダーランド展」を覗いてみた。とは言 右 なり、おりしも成人式の一月十五日に合わせ 「ても、資材の調達をちょ「とばかりお手伝ー第。 ( 、雫、《 氏 て記念式典「成人式」及び「ミュー いしたので、半分は主催者気分。 宏 昌 ・ 9 」が催された。 さて、展示品の調達は昨年の十二月二十六 田 一口で二十年というが、これは長い。ファ 屋日の深夜、担当者が野田氏宅を急襲して行わ れた。野田氏と言えば、知る人そ知る大コレ のングループとしては、先頃一一十五周年を迎え クター。その自宅たるや書庫そのもの、その■、謝 " 織 - 。、を中た「宇宙塵」に次ぐ長寿である。会誌の面で 片隅に氏は暮らしている。しかも、その混乱をー , な週一回のオープン例会「金曜会」に代表さ ぶりときたら並大抵ではない。「凄いですか らね、本当に凄いですからね。びつくりしなの手書き原稿、「」のワー。フロ原稿がれる様に、名古屋ファンダムの中核として活 いで下さい」と再三再四言われていた広告代展示され、フィルムのビデオが上映動の場を与え続けてきた意義は大きい という訳で、「成人式」だがこちらの 理店の人も、「思わず息を呑んでしまった」されていた。 同時に、マガジンや文庫の表紙等でお方には生憎出席できなかったので、その晩の A 」→一つ。 ーコン」の方をレポートしたい。 苦労して運び出されたのは、主として Z< なじみの加藤直之、天野嘉孝、萩尾望都の各「ミ グッズ。スペースシャトル打上時のプレ氏の原画も多数展示されていた。 「ダイナコン」でもお世話になっている米川 エレベ 1 ターホールでのディス。フレイとい旅館に着くと、既に宴会が始まっていた。ま 7 スサイト〈の入構証とか、アポ。計画なんか のプレスキット ( 要するに説明書 ) 、広報用うこともあって、常時人の絶えることもなもなく柴野氏のおなじみワールドコン・スラ ハンフレットから、土産物、おもちゃ、果てく、七日の野田氏のサイン会や八日の門倉純イド上映が始まる。まだ生きていたのか、と ェッグ一氏の講演には多くの人が詰めかけていた。 いう様な人から、スチャリトクル、マーティ は宇宙食 ( 不気味なスクラン・フルド・ だった ) まで種々雑多なものが展示された。特にサイン会では、ファンの美女から花東をン、タニス・リーまで並ぶ多彩な作家陣。さ 中で最も目立ったのは、スペースシャトルの贈られた野田氏が至極御満悦の様子だったのすがワールドコンなのだった。 ( コニー・ウ が印象に残っている。 ィリスがヒューゴー抱えてにつこりというの 耐熱タイル。最初の打上げの時に何枚かはが 最終日には、 Z << のアイロンパッチやには、まいったけどね ) れてヒャリとさせたあれです。レンガ大で、 続いて、実行委員長、若尾天星氏によるオ 一面だけ黒塗りで残りは真白。タイルで連想パネルの一部が来場者にプレゼントされて、 ークション。本のみならず、ただのチラシで する強固なイメージはなく、さわるとポロポ無事に展示会は終了した。 ロ落ちそうな砂糖菓子という感じだった。 ( 於池袋西武百貨店特派員・北野喜樹 ) も場を盛り上げるのは、若尾氏の手腕という その他にも、おなじみの『銀河乞食軍団』 ・ヘきか。値はそれ程上がらず、元々社セット 野田昌宏センス・ オプ・ワンダーランド展 ミューコン・ 9

2. SFマガジン 1984年4月号

& 耘加 ( 1958 ) 、『夜の訪問者』 e the / g 襯 ( 1959 ) 、『激突 ! 』 ( 集 1973 日本 ) 。 物質瞬送 MATTER TRANSMISSION 物質瞬送機は S F の発明物の一つで、い ちおうの技術的説明はされているが、さま ざまなサイ能力、この場合はテレポーテー ションの疑似科学的相似物に近い。どちら のプロセスも、人間または物体をある場所 から別の場所へ、そこに介在する空間を一 見横切ることなく、瞬時に ( あるいはそれ に近い短時間で ) 移動させる。この項目で は、便宜上、テレポーテーションを精神能 力によって成就されるそうした移動と定義 しておく。ただし、この用語は、実際のフ。ロ セスが物質瞬送、すなわち機械力による移 動である場合にも、しばしば使われている。 この用語の混乱はラリイ・ ーヴンの「脳 細胞の体操ーーテレポーテーションの理論 と実際」 "Exercise ⅲ Speculation : The Theory and Practice of Teleportation ” ( 1969 ) にも明らかである。このェッセイ はおもに物質瞬送を論じたもので、上記の 混乱を除けば、空想科学の一分野が提起す るさまざまな問題やパラドックスへの有益 で懇切丁寧な手引きである。 S F で物質瞬送機が使われた最も初期の 一例は、おそらく ェドガー・ペイジ・ミッ チェルの不気味な "The Man Without a Body ” ( 1877 ) であろう。 こでは猫が電 線を通ってうまく伝送されるが、つぎに科 学者が自分の頭だけを伝送したところで電 池がなくなる。フレッド・ T ・ジェーンの To 例切地 e S ど co れ ( 1897 ) では、 物質瞬送が太陽系旅行に使われている。初 期バルプ S F の例には、クレメント・フェ ザンディーの "The Secret 0f Electrical Transmission ” ( 1922 ) 、エドモンド・ハミ 265 ルトンの "The Moon Menace ” ( 1927 ) 、 ジャック・ウィリアムスンの "Cosmic Express ” ( 1930 ) がある。 最後の例からもうかがわれるように、 S F における物質瞬送はたんなる便利な輸送 機関、特に宇宙の旅で遠距離を克服する手 段として使われることが多い。瞬送機がな んらかの方法で人間 ( または異星人や物 体 ) のあらゆるディテールを、、記録″し、 この情報を受理装置 ( あるいはそれが不要 なシステムではどこでも好きな場所 ) に送 ると、そこへ人間 ( その他 ) が再出現す る、というのが基本的なシステムである。 ときにはこの過程で、元の肉体の物理的消 減を来たすこともある一一たとえばポール ・アンダースンの『敵の星』 The Enemy & 4 ( 1959 ) では、瞬送機が星間探測船 の乗員交代に使われている一一が、多くの 場合、この問題は頬かむりされている。ジ ホールドマンの『マインドブリッ ジ』 Mindbridge ( 1976 ) では、瞬送機が 受理装置を必要としないが、どんな物体も ある一定の期間を過ぎると、、パチンコ効 果〃で自動的に出発点へもどってしまうた め、その使用には制約がある。ジョーゼフ ・ L ・グリーンの The 0 住工 5 Refuge ( 統 1965 ) では、物質瞬送機が異星への植 民に利用され、またロイド・ビッグル・ジ ニアの『暗黒のすべての色』〃 the Colo Da れ s ( 1963 ) では、異星人 の陰謀に必要不可欠なものになっている。 これらは、この装置の表面的な利用法であ る。クリフォード・ D ・シマックの『中継 ステーション』ル & 4 0 れ ( 1963 ) で は、作動範囲の限られた物質瞬送機のネッ トワークが、ちょうど鉄道網のように銀河 系に張りめぐらされている。主人公は、地 球上に隠されたステーションの管理人であ る。これらの作品は、すべて物質瞬送が星 間の遠距離でも可能たという前提に立って VII

3. SFマガジン 1984年4月号

SF REVIEW 「エッシャーの発見は、単にグラフィカルなない。そのためには、荒巻義雄はあまりにもなるーーー着目に価する。要注意人物の名はみ 之構図ではありません。たとえば、映画『 20 実直すぎる。彼は、書きまとめるよりは読みな以上の作品から採られ、彼らは言わばピラ 2 ンデルロ流メタキャラクターのごとく、自ら コンテクスト 孝 01 年宇宙の旅』の中の宇宙船内の光景。天ほどく。彼の複合ジャンルの本質とは、ジャ 井は床となり床は天井となるあの感覚、そこ ンルによってジャンルを批評 / 解体してしまのおさまるべき運命を探す。従って、そう コンテクスト に・ほくは、世界の驚異を直感したのでう点にこそ潜む。だからその場合、絵画にせした謎の鍵を求め、人物の運命を暴きだ 巽す」 ( 荒巻義雄「おたより」、『宇宙塵』一よ小説にせよ、あくまで虚構のメカ = ズムをす夢探偵の作業とは、文学を読む行為そのも 四六号、一九七〇年七月号 ) 公分母として相互に誤読 / 修正しあう一体系のの隠喩に他ならない。そして肝心なの 荒巻義雄が、今「要望」に応え始めてい に等しい。ここが、大切なのである。 は、第一作で明らかにされるとおり、この街 る。 端的に言えば、本書は、エッシャー宇宙・の殺人事件はなべて陀羅男自身のエディ。フ カストロバル・ハの幻想建築ス・コンプレックス ( 乳瓜なる食物、母親の 的構図が、主人公の夢探体臭を持っ港、乳房型の娼家はその左証とな 偵万治陀羅男の精神分析的ろう ) が夢想した「無意識下の殺人」 ( 六七 工 推理で読みほどき / 読みつ頁 ) の可能性さえ持っことーー文学を読むと 。〉ぼ・局製 むがれる道筋をその骨格と いうまさにその読み行為自体に犯罪性が孕ま 偵 する。しかもカストロ・ハル れていることーーであろう。 ・ハそのものが「大勢の人々 とりわけ興味深いのは、エッシャー作品中 ルのル の夢でできあがっている最高傑作と目される「版画画廊」 ( 一九五六 、、一口宇円 街」 ( 六四頁 ) と、いう設年 ) を解読する第三作。少年が版画中の街を 定。すなわち、外宇畆のう観ているのか、版画中の街の中に画廊が在る 公 ちに内宇宙を読む、「柔らのか・ : : ・異様な内部曲率「空間の歪み」に根 力、、 かい時計」以来この作者にざすかような主客解体の矛盾律「メビウスの 、荒 2 中 一貫する独自のヴィジョン輪」こそ、エッシャーの「無限」観念 ( ダグ 」 0 ラス・ホフシュタッター『ゲーデル、エッシ 冒険・伝奇推理を経たあげく、再びあ収録四連作はすべて、こうしたエッシャー 、・、ツハ』ヴィンテージ、一九八〇年、 の初期作品群の想像力を発揮しだしたのだ。 宇宙の名所で発生する殺人事件を扱う。わけ一五、七一五ー七一七頁 ) の典型だが、本作 もちろん、タイトル『カストロ・ハルバ ても、それらの解決のために各々著名文学作品ではこの少年をラスコリニコフと名付け、 スト ェッシャー宇宙の探偵局』に留意するなら、 品が用いられていることはーー「物見の塔の版画中の老婆の殺害へと駆りたてるのだ。夢 形式として採られているのは、とりあえず幻殺人」ではトルストイ『アンナ・カレー = 探偵はそれにウロポロス的発想より胎内回帰 想とミステリーの複合ジャンルと映る。 ナ』、「無窮の滝の殺人」ではエデイプス神理論で解決を下す。そう、エッシャー的画 十年余の歳月がもたらした必然だが、ただし話、「版画画廊の殺人」ではドストエフスキが「無限」であり「夢限」であるというこの その結果にたとえば「二つのジャンルのロあ 『罪と罰』、「球形住宅の殺人」ではケッ読みにこそ、本書の意義は認められよう。 たりのいいカクテル」などを期待してはならセル『昼顏』が、それぞれ謎を解く鍵と テクスト ミスナリー ナクスト テクスト メタテクスト テクスト

4. SFマガジン 1984年4月号

所にカづくでまともに入り込むというような真似をしては、好感を と彼、それに護衛役のロポットたちが降りてくると、待 持たれるわけがないのだ。好感どころか、警戒され敵意を抱かせるっていたロポット官僚は何もいわずに向きを変え、、森のほうへと歩 2 のがおちだろう。そんなわけで、まずは先方からは離れた地点に降きだした。 り立ち、礼を失しないようにしつつ、徒歩で訪問するという形式に 「この近くまで、数名のゾ・ハオヌが来てくれているそうです。これ からご案内するとのことです」 なったのだった。 N<< がいう。 その、これから訪ねるはずの仮設都市にしても、 01 はロポッ ト官僚らの調査報告にもとづき、植民者たちと出会わないようなとその案内役のロポットとの交信は、即座に電波で行われ ころを選んだのである。中央諸島ではまだ植民者たちは勢力を及・ほたのであろう。あるいは機の到着以前に完了していたのかもわから していないのは事実だが : : : 島によってはグループを作って移住しない。い・ すれにせよ、ここでは O が @) 01 の力も借りてい 開拓地を作ろうとしている場所がないわけではないのだ。今の段階るのはたしかだが ) 彼の随行隊長であり、ロポット官僚たちを統括 では粗末な住居を作ってようやく暮らしている程度で : : : 。フ・ハオヌ ・指揮しているのだから、彼は、 02 との連携によって行動す たちとの接触もないのが普通というけれども、いくばくかの植民者ればいいのである。 が来ているのは事実であった。また、それとは別に漁船の避難用に彼は、進みだした 02 について、歩きはじめた。 使われている入江があり、そちらにも植民者がいる場合が考えられ他のロポットたちは、彼を護衛する態勢でこれも動きだす。 : ロポットといっても司政官機をはじめとする五機は、砂 る。そうした人々と関係のない土地、かれらと間違っても出くわさ ないようなところを、 01 は選定したわけなのであった。こうい浜にとどまって待機した。それらの大きさでは森の中に入るのはむ う地で植民者たちと顔を合わせるにしても : : : いや、こういう地だっかしいからだ。とはいえ、それらも砂浜にいながら O? 2 とは からこそ : : : 彼は司政官として、かれらに相応の挨拶をしなければ連絡をとっているのであり、必要とあればいつでも司政官の近くへ ならないであろう。かれらにとっては、司政官に出会い、その司政飛んで来るのだから、問題はなかった。 官が自分たちに親切たったか無視したかは、きわめて重大なことな砂地はじきに終って、かれらは森の中に踏み込んだ。 のだ。そんな時間と手間は、今回の旅行において、彼には惜しかっ道らしい道はなかった。草が膝のあたりまで生え、樹々がしだい たのである。 に密集してくるのである。それと共に、頭上から照りつけていた強 そうした条件を満たすもののうちから、森に入り込んでいるロポ い日射しがさえぎられ、汗が引いて行くのが感じられた。 ット官僚たちの交渉によって訪問が認められたのは、ハ・ ヒヤという先導ロポットと、それに彼の周囲の護衛たちは、黙々と 仮設都市だ と、彼は、機上でを介し、の報告を進む。それも、樹に出会えば横を通り、湿地帯に来れば迂回しなが 受けていた。 らである。ロポット官僚たちの能力をよく知らない者が見たら、み

5. SFマガジン 1984年4月号

ヾ興ゞ、 本シリーズ中最年少の佐藤道明氏の登場 です。高校時代、あこがれのスタジオぬ えの門をたたき、加藤氏や宮武氏らから 超多忙の合い間をぬって薰陶を受けると いう、新世代ならではのめぐまれたスタ ートをきる。光陰矢の如し、かっての紅 顔の美少年も、愛娘に目のない父親とな り果てるが、それはさておき、イラスト レーションの進境著しきは目を見張るほ ど。期待大 ! というところで、作品展 とインタビュウをどうそ V 難波弘之「ハーティー・トウナイト」レコードジャケット △マルカム・ハルク「恐るべき最終兵器」

6. SFマガジン 1984年4月号

て、困難事であろう。加工賃のみならず運賃まで。フラスされている いってみれば軟樹や軟樹の実は、熱帯地の、自己 いずれにせよ、 からだ。それに見合うだけの価格で売れるかどうか : : : 怪しいものの居住地域を確保している。イハオヌたちの専有物ーーとの趣がある である。といって、温室か何かを作ってスホンタを育てるとなれのだった。 ば、スホンタの高さに合わせることになり : : これはこれで経費がその軟樹が、硬樹系の樹々よりもはるかに多く、やたらにそびえ かかるはずである。どう考えても軟樹の実に関する限り、あまりうているのである。 まい商売にはなりそうもないのであった。 それにしても、考えてみれば、こうして硬樹と軟樹がごっちゃに もっとも : : : 軟樹の実といっても、全部が全部すぐに腐るのでは と、彼は思う。こういう樹木 なって生えているのは奇妙な話だ なく、中身を取り出して捨て、外殻だけを日乾しにすれば、堅いかというものは、それそれに適した気候があるはずで、こんな風に混 らからの状態になるものもある。プ・ハオヌが装身具を作るのは、そ在するのは異様な感じがするのだった。軟樹はともかく、本来なら ういう種類の実なのだが : : : そんなものは食用にならない。そしてもっと北方のものであるかも知れない硬樹が、ここでもちゃんと生 装身具の素材として、または。フ・ハオヌによって完成品となったそうき、枝葉を張っているのは : : : 何か原因があるのだろうか。たとえ いう実は、人間と混住しているプ・ハオヌたちに売れるのは本当だけば水分ひとつをとってみても、硬樹と軟樹では、必要量がことなる れども : : : そのほうのルートは、例の人間と。フパオヌ居住地域の接のではあるまいか。それが : : : まじり合って生きているのには、摂 点から入るというかたちですでに出来あがっており : : : それだっ取する水分を硬樹と軟樹で振り分け合っているというような、そん て、混住。フ・ハオヌは植民者社会の工業製品を装身具として使う傾向な関係でもあるのだろうか。これは普通ではあまり考えられないこ が強くなっているために、利益はそれほど期待出来ないらしいのでとだが : : : そういうことがあるのかも知れない。 ある。 ・カ u J 第をキ三ズベ c ー肥 t0 the MonKey の e : モン・ハウスへ ようこそ ! 伊藤典夫・吉田誠一 浅倉久志 / 他訳 Ⅵ 700 ー待望の短篇集、完訳 ! SF 、ラヴ・スト ーリイ、ユーモアなど 七色の硝子玉のように ころがり出る、優しく ほろ苦い物語の数々。 鬼才ヴォネガットのあ らゆる側面が、長篇と はまたちがった良さで 満喫できる一冊です。 早川書房 0 、 0 7 2

7. SFマガジン 1984年4月号

今までいろいろと経験してきたことが、 ーー空間を表現したい : 丈夫です。それにメカが必要なものを描く 結局イラストレーターになるのに集東して 「時間が止まっている感じ、流れがない、 とき、『メカニック・マガジン』は特にそ うですけど、まず先に文章があるから、筆エントロビーがゼロという状態を描いてみきたという感じがあるんですよね、という たい。発表するしないは別にして、どんど佐藤さん。その″いろいろ″の趣味のう 者の方に聞くのが一番手取り早いですね。 ん時間を工夫して自分の描きたいものを描ち、いまではあまりやらなくなったのは、 そうして確認して絵を描きます」 ・フラモデル作りぐらいだという。大学に入 こうというのが強くなってきたんです。 オリジナルで、どんな絵を描いてもい ってから始めたという・ハイクと音楽。・ハイ ″ベルギ 1 象徴派展″を見て、さらに思い いといわれたら : クは、″ぬえ″のある影響力の強い人のお 「は描かないですね ( 笑 ) 。人間を描ましたね。大袈裟に言うと、人間が洞窟に きます。昔はわりとにこだわっていたちょこちょこと描いた時から今までの歴史かげで知らないうちに免許を取らされたと の積み重ねがあって、・ほくらはその上に立かで、カワサキで暴走しているが、 んですけど、今は r-n よりむしろキッチリ ってさらに新しいものを描いていかなきや近く中型免許を取得の予定。人間の出せな 人間を描くほうが興味深いですね。人物は いスビードで別世界が見えてくるので病み いけないのに、自分のやってるのを見ると リアルだけれど背景はデザイン的に処理し いけないなあ、と思うんですよね。 : : : 結つきになったとパイク狂の弁を語ってくれ たり、もしくは実際には無いものをまるで ました。音楽のほうは、大学時代のロッ 在るように描くとか。サイエンスやファン局は人間に尽きるとは思いますね、描きた ク : ハンドが集まりにくくなったため、も いものは。逆に言えば、人間描けなかった タジイとは関係ないもの」 つばら多重録音で曲作りをしているそうで ら絵をやらなくてもいいや、というところ 絵に対する執着が、よりも強くな ってきた : までいっちゃうかもしれない 。の絵をす。五、六曲出きていて、ギタ 1 、キーポ べースの他に奥さんのヴォーカルも 「というか、表現したいという欲求があっ描くのは充分楽しいし好きなんだけれど、 入るとか。好きなアーティストのアラン・ て、それを一枚に焼き付けられるものであやつばり人間、デッサンだなと。だから、 ホールズワース、自作の曲、そして愛娘の れば絵にするし、一定の流れが必要なもの絵で自分が表現したいものが表現できるよ うになるのと、表現の方法がオリジナリテ泣き声をにインタビ = ウの二時間 であれば音楽にするとかビデオにすると イあふれたものになること、その二点を満恥しいテープレコーダーの操作ミスなどあ か、そういった感じです。絵の中に魅き込 りましたが、絵に対する佐藤さんの熱気は たすようになりたい、というのが今後の抱 まれるような絵、フレームの中にもうひと 伝えられたのではないでしようか。 っ別の世界があるみたいなものが描けたら負です」 いいな、と思いますね」

8. SFマガジン 1984年4月号

が忙しくなったからですか。 シンポリズムの画家が一番好きなんですよ勝手に発展していって、作者の考えていた 「いえ、遠かったからです ( 笑 ) 、大学が。 ね、クノッ。フとかクリムトとか、そのへんものと違ってしまう : : ・ほくとしてはこう 家から通ってましたから、電車の中で本をが : : : 。絵に対するア。フローチの仕方が、 描きたいのだけど、そう描いてしまっては 読めるのはいいんですが、なんか時間が無なんか自分と較べるのはおこがましいんで 間違いになるから、こう描かなければなら 駄なような気がして ( 笑 ) 。その時間でやすが、よくわかるんです。写真でいうと、 というように規制していくことが りたいことがいつばいありましたから」 被写界深度の浅いものが好きなんですよ。 たまにありますね」 最近、関係もそうなんですけど、 人物にはシャ】。フにビントが合っていて 絵を描くうえで辛いことは : 『野性時代』や『メカニック・マガジン』 も、その前後は。ヒントが甘いという感じが 「色が決まらないのが辛いです。色のセン などの絵を見ると変わってきてるような気 スが悪いんです ( 笑 ) 、配色の問題で。文 がするんですが。 そういう技法をでやるというのは庫のカ・ハーで印刷に適さない色を使って、 「結局、。フロで一番大事なことはオリジナ あがってくると原画と全然違ってしまった リティでしよう。絵でオリジナリティがな 「オリジナル作品ならいいんですけど、駄 り、途中まで塗りおわったのを潰してまた ければ、。フロで仕事をしているわけにはい 目なんですよ。文章を読むと、その文章の描き直すとか : : : 。逆に、惑星が出てくる かないな、と前から強く思ってました。今持っている世界とか雰囲気に影響されてし とうれしい ( 笑 ) 。惑星の表面を描くのが は、もっと線一本の説得力がほしいんですまうんです。というか、そこを表現したく 好きですから。雲が徴妙に地上から浮きあ よね。細かい線を重ねるのではなくて、線なるんです。違ったア。フローチも考えてい がっているのを描くのが好きなんです。シ 一本とか筆のタッチひとつに説得力を持た るんですが、やつばり挿絵だから、あまり ャトルが地球を撮った写真なんか見るとワ すというほうに、ぼくの描き方は移行して文章のイメージと絵のイメージがかけ離れクワクする。あの感じを自分の絵に生かせ きているんです」 ていてはよくないですよね」 ると、描いていても楽しい」 絵の趣味も変わってきたのでは : : : 。 自分がファンであることで絵が規 メカの科学考証などはどうしてます : ・ 「昔よかったものの中でも、もういいやと 制されることはありませんか。ファンであ いうものと、どんどん好きになったものと る部分がより高いレベルを要求するとか。 「子供の頃から飛ぶものが好きだったんで がありますね。イラストレーターの作品は 「たいてい技術が追いっかないんですけどすよ。だから『マガジン』読むのと平 少なくて、昔の画家のものが多いですね。 ( 笑 ) 。文章を読んで自分のイメージを表行して『航空ファン』とか『航空ジャーナ 一九世紀のイギリスの新古典派のものとか現していくわけですが、イメージのほうが ル』なんか読んでまして、飛ぶものなら大

9. SFマガジン 1984年4月号

のかなたから彼のもとに嫁いできた女性ーーーの短く黒い髪の下で、 ときおり発作的に頭をもたげるのである。 ガミッチの耳に、玄関のドアがしまるのが聞こえた。 しばらくのち、場面は変わってコンコーディア病院。その一階 ・ハンター夫人のはいっているほの暗い個室から、ヘ ・ハンターはとろけるような笑みを浮かべ、しきりに愛想をふ りまきながら、あとずさりに逃げだしてきた。われにもなくあわて ふためいていたが、それというのも、かすかにコロンの香りを漂わ せて、狭い、高いペッドに仰臥としているその老婦人が、うわべは けなげに平静をよそおっていながら、かたくひきなすんだ、それで いて穏やかにほほえんでいるくちびるの奥から、いまにも深い、し やくりあげるような鳴咽をし・ほりだそうとしている、そのことを直 観的にさとって、なんとかしてそれを聞くまいとしたからだ。それ を聞いてしまったら、いやでもまたペッドのそばにもどって、もう 丿ーが見舞いにこられない 一度最初から、慰めたりなだめたり、 言い訳をしたりをくりかえさねばならないが、そんなことにはとう てい堪えられそうもない。・ ( ニックにとらえられ、その不条理なカ に衝き動かされて、ヘレンは思わず知らず勢いよく、そして大きく 戸口から後退したーーー勢いあまって、廊下の向かい側の、おなじよ うにほの暗い二人部屋のなかにとびこんでしまったほどに。 やっといくらか落着きをとりもどして、急いで向きなおり、その 部屋をぎっしり埋めた三台のペッドと三人の老女を見まわしたとた ん、ヘレンは言葉にならない驚きに打たれて、一瞬その場に立ちっ くした。その部屋と、いましがた見舞ってきたばかりの部屋との、 なんという対照 ! 義母は、きちんと寝具にくるまれて寝かされていた ( なろん腰骨 フリツツ・ライ・ハ き・ i 新 Leiber ″老いを知らぬ″という形容句は、フリツツ・ライ・ハーのためにあ るのかもしれない。一九一〇年生まれだから、今年で七十四歳。当 代随一のこの技巧派も、一時に比・ヘると執筆量が落ちたようだが、 それでも情報誌ローカスに毎月元気にエッセイを書きつづけている し、三分の一を新作で埋めたイラスト入り短篇集「ゴースト・ライ ト』が近く刊行される。 ここに紹介する短篇も、 & 誌の昨年十月号 ( オールスター の新作で、しかもうれしいこと 特集号 ) の巻頭に載った・ハリ・ハリ に、往年の名作『跳躍者の時空』 ( 創元推理文庫の『・ヘスト・ オ・フ・ザ・ベスト』上巻に収録 ) と、同じく猫のガミッチを主人公 にした作品なのである。 ライ・ハーが愛猫家であることは、その作品の中に彼のいう″尊大 で鋭敏な動物界の貴族がひんばんに登場することからも察しがっ く。あるインタビュ 1 アーから、「いつも猫を飼っているんですか ? 」と聞かれて、ライ。ハーはこう答えている 「そう、わたしはいつも猫を飼ってきた。妻のジョンキルが亡くな ってからは、二ひきにふえて、もうこれ以上は飼うまいと誓ったぐ らいだ。しかし、そこへやってきたのがガミターだった。彼は捨て られていた一腹の仔猫の最後の生き残りで、死んだ兄弟たちの上に 立ち、世界に向かって怒りの唸りを上げていた。いうまでもなく、 『跳躍者の時空』の仔猫は彼なんだ : : : 」 なお、蛇足だが、中に出てくるエリオットの詩『不思議猫マキャ ・ヒテイ』は、いま評判のミュージカル「キャツツ』の原作である。 ( 浅倉久志 )

10. SFマガジン 1984年4月号

ールの身体は固定せずに、まるで浮塵子が人の形に集まったかのよ 4 ( 承前 ) うに空中で震えた。 自分を消減させるほどの強い反抗を受けたのは初めてだった。。 ( ・、ールの乗った車は激しいイシスの選択事象に巻き込まれた。 ールはいままで自分を追う治安士に対しては、常にその動きをつか そのイシスの放った選択事象は・ ( ールの視覚にはほとんど感しんで悠然と逃がれ、理論的に劣っている彼らを嘲笑ってきた。しか られなかった。ただ、車のフロントグラスの外に向けて大きく開いし今の攻撃はそうではなかった。自分と同じ能力を持つイシスは治 たくールの額の第三眼は、二〇〇メートルほど先に立つイシスを中安士の持っ武器などよりもはるかに手強い ルは激昻したが、 心に球状に広がる透明な波動をとらえた。その変化は、イシスの周それはイシスの能力に対してというよりも、イシスカ , 。 : 、ール理論を 囲に屈折率の異る新大気が発生し急激に膨張したかのようだった。 利用した、という事実に腹を立てた。自分の作った理論で自分が消 木造住宅の立て混んだ裏通りの景色には大きな変化はなかった。 されかけたということに。 が、細部で。ハールの見ていた像とは異なる、イシスの存在によって アスタートさえあれば、とノ くールは思った。リンポス世界事象を 創られた町が実体化しつつ 、。、ールの周りにもそれが達した。その広範囲に同時に制御できるアスタート。はるか高空からリンポスを 司、。、ールは視力を失った。 見下ろす巨大な衛星カミスにあるアスタートを使えば、イシスなど イシスに向けて突進させた車のエンジンの擬振動も、 ( ンドルをなんの苦もなく、ちょいと理論計画。フログラムにそれを組み込んで 握った感覚も一瞬のうちに消えた。パールの身体はイシスの選択事実行させるだけで消せるのだ。イシスなどという女は過去にも現在 象に吹きとばされた。・ ( ールは意識や自分の存在そのものが消減しにも未来にも存在しない、という事象を作るのはごく簡単な操作で てゆくのを感じたが、それをかろうじて支えたのは彼の激しい怒り可能だ。 ! 」っこ 0 しかしいまスールのおかれた事象からは、アスタートはまさしく ールの " 怒り。を核に、それに引きつけられるように彼の第三手の届かないはるかな高みに浮かぶ天上の星だった。バールは月人 眼が形造られた。イシスの第三眼視野から離れた表通りのビル街であり同時に地球人だった。地球人は生身では月へは上がれない。 の、地上から五メートルほどの空中に・ ( ールの紅い第三眼が出現し 。 ( ールは額の第三眼を開き、その視野内の事象を選択することが た。加熱された鉄のように赤く輝き、震えた。 できる。その作用は超小」 型のアスタートのようなものだった。・ハ 〈おれの理論だ。おれの。イシスめ、おれの理論を盗み、その上、 ルはその第三眼をアスタートの事象制御出力アンテナのように用い このおれを消そうとしやがった〉 て、ちょうど第三眼で計算機の波動入力装置を操るように、第三眠 。 ( ールは自分の身体を復元する。第三眼の周囲に天色の霧が集がとらえる世界と接触し、データ検索をやる要領でその世界の事象に り、だんだん濃く、密度を上けてゆく。だが激しい怒りのためにパ を固定することができた。その能力はアスタートから得たのた。そ リンス カミス