入っ - みる会図書館


検索対象: SFマガジン 1984年6月号
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1. SFマガジン 1984年6月号

おれのちちおやはのうしようをもっていたが、このあたりのとちを やって来ては、去っていく。彼はいくつかの声が自分を訊問してい うってかねももっていた : : : それほどひとざとはなれているわけし るのを感じた。 いとおもっている : なしが、スクーターがあればい おまえは誰だ ? いや、ドイツしんをそれほどきらっているわけじゃないし、きら 「エルドリッジ / にいたこと っているとおもったこともない。もちろん、ヨーロッ : おれはガソリン があるが、せんそうにさんかしたわけじゃない : おまえは何だ ? のにおいが。フン。フンするはいしやセンターでにんむについていたの 「わたしはエルドリッジ・パ だ。おれはしぶんのてをつかってはたらきたかった。ほへいれんた おまえ自身のことを話すのだ。 いなんかにはいたくなかった : 「何をだって ? 」 : ちょうぎかいではっげんするけんりがある : : : おしのいって おまえ自身のことを話すのだ。 でうまくいくなんてしんじていないが、おれはおされたら、おしか 「何を ? あんたたちは何が知りたいのだ ? えしてやる : ・ : ・おれがこのまえのせんきょでだれにとうひょうした 話せ : かなんてことは、ほかのものにとやかくいわれることではない : 「でもーーー」 だが、まちのやりかたについては、おおじぬしとして、おれにもひ 話せ : . フットボール とこというけんりがあるというものだ : : よかろう。まちのこどもたちがだいすきだ : : おれはだいがくにはいかなかった。そのひつようがなかった がすきで、ななじゅうごャードのダッシをして、かったこともあ からだ : : : きよういくがありすぎると、ひとはばかになる、とちち る : : : それにホッケーもやる : : : このあたりはかなりさむくなるか ら、いちがつのさむいあさ、ドアのそとにでると〈んなにおいがすおやにいわれたのだ = ・・ = おれはのうふであるし、これからものうふ ・イングランドのいなかじゃあ、いろんなのままだろうし、かべにいちまいのそっぎようしようしょをかける るものなのだ : ・ ために、よねんかんをむだにしたりはしない。それでも、おれはし においがするものなのさ : : : まつのにおいもすれば、くさのにおい もある。とくによくお・ほえているのは、にわとりのにおいだ : : : きぶんなりのどりよくをつづけるだろう : ・ : もちろん、おれだってげんしばくだんのことはしっている。 ようかいにはかしのペンチがあるが、あれはにちょうびのにおいが する。にちょうびにはびざをつき、まえのペンチにはなをおしつけだが、おれはかがくしやじゃないし、かがくしやになるひつようも よい。じゅういになるひつようがないのとおなじように、・こ : : : そ ていのるのさ・ : ィーク一丁イにはつり うしたことをしるひつようがあるおとこたちをやとうおとこたちを 5 : つりはだいすきだが、ウ : つりもい せんきょでえらぶ。おれがとうひょうしたおとこたちは、おれのき : われわれはちょうろうはきようかいのしんじやた。 はやらない : 0 、 ・エルドリッジ・ティモンイ・。、

2. SFマガジン 1984年6月号

「大丈夫よ。ママには内緒にしておいてあげるから」 良一は、思わず感嘆の声をあげた。 良一は、牛に近づいた。 「ぐーぜんってのは、あるもんだなあ」 尻のあたりに、生々しい焼き印のあとがついていた。〇に源の 「ほんと、ぐーぜんって、すごいねー」 字。ーーあのおっさんだ。 「しかも、この焼き印の位置が、これまたすごいぐーぜんだよ。こ 「わっ、痛そー。誰だか知らないけど、ひどいことするわねー」 んなことってあるのかな」 良一の背中ごしに、こわごわとのそきこみながら、あゆみが騒良一は、軽く口笛を吹いた。 「アメリカの首都、ワシントンに、・ とんびしやりだ ! 」 「あゆみ」 「おまえ、この牛が、どうやって入ってきたか、見なかったか ? 」 『臨時ニ、ースを申しあげます』 「ううん。物音がするんで、のそいてみたら、 いたの」 顔面蒼白のアナウンサ 1 が、声を震わせながら、言った。 「なあ、おい」 『ワシントンが、消減しました』 と、良一は牛に言った。 画面が切り替わる。一面の焦土だ。 「おまえ、どうやって入ってきたんだ ? 」 『被害区域は、ワシントンを中心に、およそ半径三百キロの広範囲 「おにーちゃん ? 」 におよんでおります。原因は、今のところ、まったくわかっており 「なに」 ません。 え ? あ、はい ( ガサガサと紙を手渡す音 ) 、えー ランドサット 「今、気づいたんだけどお、この牛、まだらだね」 ただ今、新しい情報が入りました。地上観測衛星からの衛星写真で 「それが、どうかしたのか ? 」 す。ごらん下さい』 「このまだら模様さあ、何かに似てると思わない ? 」 再び、画面が切り替わる。 良一は、あらためて、牛の白黒模様を見つめた。 宇宙からの映像は、アメリカ大陸にしるされた、巨大な〇に源の 「ロールシャツ、 ・テストかな。これが何に見えますか ? 蝶々に 字のマークを、くつきりと写し出していた。 見えます。あなたは性的に抑圧されてますねってやっ」 「こんなことになるんじゃないかと、思ってたんだ ! 」 「ちつがうよお。ほら、もっとよく見て。ね ? なんとなく世界地 マッコーウエルは、左の掌に右拳を思いきり叩きつけた。 図みたいじゃない。黒いとこが大陸で、白いとこが海で : : : 」 「ミスター・フクダ。これは、あんたの責任だそ。あんたが、ぐず そう言われてみると、たしかに、その通りだった。いや、なんとぐずしているから、こんな悲劇が、しかも最悪の悲劇が起こってし なく、なんてもんじゃない。まさに、世界地図そのものだ。 まったんだリ おまけに、下手をすると、こいつは全面核戦争にも まる まる 4

3. SFマガジン 1984年6月号

いだ 説 の銀 がた つ学 、そ 。他れナ 生な はだ 、ん 労溜 。銀 つれ い途 いあ ヵ、 、が い河種体 な の要 似を る いも は他 。なか説たな ゕ は協 も 、き 当文 ち 系がわ分 い激が成 、ん 、同 のた の明 たわで司司な絶す に信 はめ にで で る題 ぁ進 じをわれ れみ れ出 でそ に論 は明 言見 でな き さだ いた み なわ た こ普 にみだわ しぎ がれてみ だけた欲 あ故 すみ ふ る郷それ改ち たわ はと の礼 るけ な に放 と 純は 、き にみ な珍 警 見をけや に終 い個 か 題 の分 し て つだ るた た は強だ いなわ 銀 た河何 、すだ る の 座 視 る れわち いよ い ん お伝ま てわ表 、れ に き る ろ う き を て お き 河 。系あ を 代 し れ わ カ : の 題 を 扱 ね ば な ら な く な っ た 素 り そ て大素 、部 き も 理 問解ー で き ぬ と だ ろ う そ れ で く さ の の た る と も で き ぬ ほ ど た さ ん の 、要 の 疲 に ナこ を 感 じ と た か っ い者ナ つ す く な く と ド リ ツ シ 大 子 者 も の 警 正 と る よ う と ひ と か ら な 、人 間ち は 告険な し急だ な 思発伝 え展説 性 る な 何ねて き つみだ つ見な て て る に カ : 。たす う げ し、 る いだが あ カ 能 い な は で 通 る 言 ・を・ 、功 方 の 族 種 の つ い て だ み つ い て も 、なき 力、 に が し な き 方か観 にあ察 る に ち し、 し、 て し る の の ち星ほ と 。人 み双何 し く つ の と 、見 し 。た の か みもを ま のだ深 よ う に イ云 が つ て し 、わ は き 、注 く の ち き る残単 つれと へ の 、指 る針だ た 、め 肝カ 意銘息 じ ー 1 っ け て く さ い L_ は令令 官 が 者 し し 、展 て発ナ 大 、た の い な に 葉 つ純だをや系族 き り 官 を る の そ も の は な の ろ う 、でが ん す う し 避 が フ ン ス 働 て たがだ 自 本 問 で し、 み貪 と 単 ら の と ち る と で が の に を あ る ど の の 編集 : 石原藤夫 発行 : SF 資料研究会 ま F マガジン・インデックス ( 1 ー 100 ) ( 送料包装費共 378 円 ) S - F マガジン・ インテ、ツクス ( 101 ー 200 ) ( 送料包装費共 3 网円 ) S-F 図書解説総目録 ( 19 缶・上 ) 翩包装 5 ・お求め方法 SF - 資料研究会 ( 鎌倉市七里が浜東 1 ー 3 ー 1 ) 振替 ( 横浜 2 ・ 16059 ) へ現金書留か郵便振替でお申し込みください。 ・以下の書店の店頭でもお求めになれます。 東京天盛堂書店 ( 渋谷区神南 1 ー 22 ー 14 TEL. 463 ー 0511 ~ 5 ) = 省堂書店神田本店 ( 千代田区神田神保町 1 ー 1 TEL. 233 ー 3312 ~ 5 ) 福岡り一ぶる天神 ( 福岡市中央区天神 4 ー 4 ー 11 福岡ショッパーズプラザ 6 F TEL. 092 ー 721 ー 5411 ) 大阪ブックス 5 駿々堂書店・阪急ファイプ (TEL. 06 ー 312 ー 3321 ) 39

4. SFマガジン 1984年6月号

ジェリイのおかげで靴下だけはいつも清潔だ。だが失業中である そしてそのはるかな延長上に《寒天》は、、 しる。とっくに時代おことには変わりはない。口座の残がゼロになれば食糧局は配達をス くれになった「ゼラチン女中」をよみがえらそうと、・ほくのデザイ トツ。フするだろう。世のなかがこんなじゃ、失業救済機構が仕事を ナーとしてのありったけを注ぎこんで創りあげた。自在な運動性、していると期待するのは愚かしい。そしてデザイナーの求人がある 自己造形力、人格付与中枢、芸術的な発語方式。十五年前の時点でだろうと考えるのはもっと愚かしい。第一、危なっかしくて外も歩 すでにジェリイはとてつもない先進性を持っていた。商品化になじけやしないのだ。 まないほど。すべて、・ほくがつくりあげたものだ。それらはひとっ腹の底にひびくゾラスのような咆哮が、今夜も窓を横切る。今夜 の統一を得て、ジェリイと名づけられた。 はどこが叩きこわされるのだろう。誰が殺されるのだろう。だがー 今のジェリイは、しかしそれをはるかに凌駕する。・ほくが改良しー彼はまだ四歳の幼な子なのだ。 たのではない。彼女のなかで奇蹟が進行しているのだ。・ほくの想像グラスを干し、それを握りつぶす。とっておきのガラスのコッ もおよばない反応がおこなわれつつある。無意識のうちにジェリイ。フ。手をひらくと血まみれでキラキラと細かいかけらが光った。・ほ は自分で自分をつくりかえているのだ。その、信じがたいような恩くはジ = リイに腕をさしだす。すつぼりと掌がつつまれると、痛み 恵に、・ほくは何度も浴していた。 はあとかたもなく消えた。やわらかい舌でなめられている感触がす 「ーー・喉がかわいた」 る。ジェリイはどんなに小さなガラス片も除去してくれるだろう、 つぶやくと、イスのアームのうえにチリチリに冷えたマティニのと思う。手をぬくと痛みはぶり返したが、アルコールが入っている グラスがあらわれた。するとまだ食糧局は機能しているのだ。・ほくのに血は止まっていた。傷口もふさがりかけている。ジェリイが、 はグラスをとり、指先で露をなそった。 ガラス片を排出した。ゼラチンのパテにつつみこまれている。 「オリー・フがついてないな」 これは甘えだろうか ? 文句言っちやダメ 空気がさっと肌あいを変えた。いいえ っちやダメ ! 失業中なのよ。 「ありがとう」 「ああ」 新しいグラスをとって、ロをつける。 ・ほくは苦笑してグラスを傾けた。ジンもベルモットも安物。だが たぶん、そうだ。これは甘えだ。信じていた世界が目の前で崩れ ジェリイの言うとおり文句は言えまい。失業中なのだから。 ていくのに耐えきれず、ジェリイのかたまりのそばでべそをかいて ジェリイの表面が波立ち、靴下が吐き出された。汚れはきれいに いるのだ。でも、もう少し信じがいのある世界であってくれてもよ かったろうに。 落ちている。頭のまわりを風が踊り、おいしかったわと言った。 「ありがとう」 フリーク化した世界。戦争もないのに地球は十年で減んでしまお ーミング 2 協

5. SFマガジン 1984年6月号

そうか、そうだったのかー・ 「劇団員はみな無事だ。ロニと、姉のサキを除いてはな」 マーシェンカ一族は、宇宙の語り部として、遺伝子をフィックス 「サキが ? 」 「おお、そうだ。それで思い出したが、きみはあの娘が妊娠して いされた存在だったのだ。自らの進化の可能性を閉ざすことによっ て、他の生を演じる才能を与えられていたのだろう。だが、ある たのを知っていたか ? 」 「ああーそうだったなと、ぼくは思った。かわいそうに。一度にふ日、その才能の中から″反乱″が始まった。一五七代ぶんのツケが いっぺんにまわってきたのだ。カロもロニもサキも、そしてサキの たつの生命を失ったのだ。 「彼女が死んだのは、屋根のせいじゃなく、ショックか、自分で倒子も、みんな同じ生物なのだ。それで他の生を担う苦役から逃れた れて頭を打ったかしたらしい。ところが、その子供が見当たらんのがっていた筈だ。どうしてそんなことにすぐ気がっかなかったのだ ろう ? ・ほくは、地球行の使に乗るまでそれから三日間、シャーリイと抱 「え ? 」 「死産した様子もなし。かといって正常に産んだ筈もなし。剖見でき合って、死んだように寝ていた。 は、妊娠してたのは確からしい」 ・ほくは何だか気分が悪くなってきた。「父親は誰なんだ ? 」 ・ほくは地球でシャーリイと結婚し、その後も仕事であちこちの星 「何だって ? 」 を転々とした。しかしふたりとも、あのマーシ = ンカ一座と暮らし 「父親だよ。サキの亭主は誰だったのか調べただろ ? 」 た日々をかたときも忘れることはなかった。 「きみは、知らないのか ? 」 そして、あれから三〇年ぶりに、・ほくらはメネムシアにやってき 「ああ、聞いてみなかったからな」 「そうじゃない。マーシェンカ一族の生態をだよ。連中はセックス 劇場はとり壊され、跡地は公園になっていた。その一角に、ひと をしないんだ。みんな単為生殖でふえるんだぜ」 つの碑が建っているのをシャーリイが見つけ、・ほくを呼び寄せた。 「なんだって ? 」 ぼくは不思議な緊張感に包まれながら、その前に立った。 ロポットは困ったというジェスチャーを不器用にした。 それはまさしく口ニの記念の碑だった。そして、・ほくの理不尽な 「マーシェンカの一家には雄はいよい。全部雌で、卵は受精なしで妄想は本当になった。そこに刻まれている文はこうだった。 発生を開始する」 ″また会ったね、きみ。もう幕はおりてるんだぜ訂 「なんてこった。・ ・ : とすると」 「連中はすべて親と同じーーークローンてことになるな。天然のね」 ばくは呆然とした。自分の馬鹿さかげんにもあきれ返った。

6. SFマガジン 1984年6月号

「なんだか、いやらしい格好だな」 することになった。といっても、決められた仕事の内容があるわけ マーシェンカが・ほくの肩ごしに言った。 ではなく、だいたいは思いついたことをやっていればよかった。ポ 「何を言ってるんだ」 スターはり、客の整理、切符のモギリ ・ほくはそう言ってドキッとした。「かなり倒錯してるよ、ロニ。 いちばん楽しいのは、町や村を劇のシークエンスを演じながら、 雌はきみで、ばくが雄なんだぜ」 音楽つきのトラックで宣伝して回るときだ。 くつくっとマーシェンカは笑い、・ほくも笑った。 シークエンスといっても、即興劇だ。そのときの衣装の感しと 「ロニ、どうして地球へ来ないんだ ? こんな辺境の惑星よりはず か、演したい気分によって、勝手に劇が進行してゆく。ロニがとき っと話題になるよ」 どきいたずらをして、傍らで見物人と一緒に眺めているぼくらに・ハ 「マスコミってやつだろ」 トンを渡すことがある。 「うん」 「これは、これは。珍らしいお客人が。どうです、姫君の癇の虫は 「あれはダメなんだよ。マスコミは演劇の " 場。を変換してしま最近あばれませんかな ? 」 、どぎまぎしながらも、恍惚とした気分に襲われる。 「残念だな」 「なんと陛下、うちのものがお目通りかなったのは、今日が初めて 「それより、レン。きみが・ほくらと一緒に来ないか ? 」 ではありませなんだか ? 」 「え ? 」・ほくは顔をねじ曲げた。 「はつは、ご冗談を。先日お見えのとき、うちの父や母にも自慢げ 「宣伝や進行や、手伝ってもらいたいことが山ほどあるんだ」 に紹介なさっていたではありませぬか。のう、奥様 ? 」 ・ほくは二、三歩足踏みをした。 シャーリイはとびあがった。急に・ほくの奥方の役がまわってきた 「・ほくは、無理だな。一カ月後には帰らなければならない」 からだ。 「地球へ ? 」 「え、は : : : そうでしたでしようか ? 」 「そう」 「それはありませんそ、奥方」カロまでが調子にのってシャーリイ 「だ 0 たらひと月・ほくらと過ごさないか ? どうせここでの仕事はをいじめにかかる。「お子が生まれたら、わしに名前をつけさせて 片づいたんだろ ? 」 くれる約東ではありませんか ? 」 ・ほくは、「 1 シ = ンカをおぶ「たまま、明けはじめた街角にたた「それではそのとき列席していたものに聞いてみよう」〔 = がトラ ずんだ。 ックを降り、見物人の中に入っていった。「その方、あの日、宮中 で給仕をしていたであろう ? 」 ぼくとシャ 1 リイは、マーシ = ンカ劇団の宣伝やその他の雑用を ロニはいきなり村人のひとりを指でさした。「あちらの奥方に食

7. SFマガジン 1984年6月号

「しや、なにしてたのよ。ごはんも食べないで」 もとより、根っからの現実主義者である彼は、世界の終りがどー のこーのと言う、坊さんの世迷い言など、てんから信じちゃいない。 「言ったって、とても信じちゃもらえないだろうけどね」 ただ、このでかいつらをした O—< 野郎に、ひとあわふかせてやり良一は、カなく笑った。 たい、それだけのために、部下にハツ。、 ノをかけ続けているのだ。 「牛を探してたんだ」 その時ーー 「むつ : 「まあ、この子は、また馬鹿なこと言って。お父さんが帰ってきた それまで、ずっと死んだように身動きひとっしなかった老ゥパ ら、うんとしかってもらいますからね ! 」 スが、不意に目を見開いた。 母親は、・フリ。フリしながら台所に入っていった。味噌汁をあたた 「いかがなされた、老師」 め直すのだろう。 マッコーウエルが、声をかけた。 「おやじ、まだなのか、あゆみ」 あっき 「悪気じゃ ! 妙に胸さわぎがする。何か悪いことが起こらねばよ「うん。どーせ、どっかで飲んでるのよ。だから、よけいにママ、 いが : : : 」 これなの」 ゥパースの言葉が終るか終らぬかの内に、突然、テーブルの上の あゆみは、指でつのを作ってみせた。 電話が鳴り始めた。 「それよりさー、おにーちゃん。さっき言ってた牛って、おにーち 凶々しいベルの音に、福田とマ、 ソコーウ = ルは、思わず顔を見合やんの部屋にいる、あの牛のこと ? 」 わせて、立ちすくんだ。 「ああ。そうだよ : : : 」 ・ハッタみたいにはね起きた。 生返事をした良一が、次の瞬間 「今、なんて言った」 しーし こんなおそくまで、どこで何してたの ! も「だから、おにーちゃんの部屋にいる牛って : う十一時すぎよ ! 」 良一は居間をとび出して、階段を二段とばしてかけ登った。 家に帰るなり、母親のヒス声が飛んできた。 ドアを開ける。 「エリちゃんと、デートしてたのよねー、おにーちゃん ? 」 そこに、牛がいた。 中三のあゆみが、・フラウン管の前から、笑顔をふり向かせて言っ 「なんてこった」 こ 0 良一は、首をふった。よくよく、気に人られちまったらしい 「ちがーよ」 「ね ? 言った通りでしょ ? 」 良一は、ソフアに体を投げ出した。疲れきっていたのだ。 いつのまにか、後ろにやって来たあゆみが、得意気に言った。 3 6

8. SFマガジン 1984年6月号

空気が冷えきる前に母が言った。姉は一口食べて、母に同意す「まずいわね」 る。母が彩子にそうしろと目くばせでーーー・ほくにはその方法がよく「まずくはないよ」 わからないのだが、言葉以外の方法でーーそうしろと命じたのだ。 「何が言いたいの」 〈おまえの気持はわかるけど〉と母は彩子にいったにちがいない、 「母さんに教えてもらえよ。上手な弟の扱い方をいつも聞かせても 〈今夜の淳は新しい環境に入る前で、不安なのよ。逆らわないほうらっているだろう」 力いいわ〉 「気に入らないなら自分で焼きなさいよ。わたしはねーー」 「そうね」と彩子は言った。 「読んでみろ」・ほくはどなった。「読んでみろよ、・ほくの心が知り 「そうさ」と・ほくは答えた。 たければ読んでみるがいい。気持なんかロで説明できるものか」 「え ? なにが ? 」 彩子は目を母の方へやりかけた。 彩子は長いまっげをあげて、心を盗み読まれてしまった動揺をあ 「やめろ」と・ほくは言った。「・ほくは姉さんに言っているんだ。な らわすような眼を・ほくに向けた。眼の表面にすっとシャッターをおにが精神医だ。悔しかったら・ほくの心を精神衝撃波で焼きつくして ろすように、涙が眼球を覆う動きが見えた。それで姉が見せた動揺みる力しし : 、、。・ほくの目を見ろ、そして心を読め。姉さんにはできな は消えてしまう。 いよ。なにもできないんだ。まともなケーキだって焼くことができ 「甘すぎたわね、淳」 ないのさ」 感情のこもらない声で姉は言った。いつもと同じだ。姉は父や母彩子は顔をゆっくりと・ほくに向けた。いつにもまして無表情だっ のように、声におおげさな感情の抑揚をつけたことがない。それが こ。・ほくにはそれでも姉の心がわかる気がした。彩子は、激昻した 普通の人間なのだ。 ・ほくを見るのは初めてだったろう。弟にこんな激しい心があったな 「母さんがいつも正しいわけじゃないさ。ちょうどいい甘さだよ、 んて、と姉は驚いたにちがいなかった。 姉さん」 ・ほくはといえば、昻奮状態などは見せかけのもので、心は冷えて 「じゃあ、なにが不満なの」 いた。自分自身の吐いた言葉に熱くなり、感情が昻まるのを待つ、 姉はぼくの仕掛けた罠にひっかかって、もう母の言うなりの姉で・ほくの怒りはいつもそうしたものだった。ぼくの怒りは一種の快楽 はなくなっている。 で、その昻まる様子は性感がやがて絶頂に向けて上昇してゆく曲線 「さあな」 に似ていた。・ほくにとって怒りは最高の快感といってもいし ・ほくの唇には、たぶん笑みが浮かんでいただろう。 「おやめ、淳」 「はっきり言いなさいよ」 母は強くぼくをたしなめた。母はぼくの性質をよく知っているの 「少し甘いかな」 2

9. SFマガジン 1984年6月号

といてくださいよ。叫んでる場合と違うでしんなおもしろいことおまへんやろ。ドドドンそしたら何でわかってんな。弁当の中から腕 よう。一回注文しておいて。聞いてるんですいうて局地戦用の・ハズーガーの弾体を敵兵めがそのままでてきたって、他にも頭とか太股 か。ちょっとあんた。みつともないそんな声がけてぶつばなすのは最高ですで。横でドカとか。何やそれは、あれほど調理場に原形を を出すのはやめ、何つ、地球へ帰りたい、おカカドカカカ鳴っていっ喰らうかと考えたら残さんように料理しろっていうといたのにま 母さんやて、知らんがなそんな事。又地球人体中がゾックンゾックンして笑いがとまりまずいがな。最近では地球人を観ただけでよだ かいな。泣くなっていうてるやろう。死にとせんがな。まだいうんかいな。もうええ加減れを流す奴が出て来たって。そらもうあかん うないっていうたかて仕方がないやろうが。 にしてくださいな。はやいとこ注文を済ませわ。これはばれるのは時間の問題やな。ええ か、今のうちに獲れるだけ獲っとくんやで。 それより注文をどないするんですか、弁当なて。あたしも忙がしいから。もしもし、あか んかどうでもええって、何てことをいうんやんわ。アホみたいに笑ってさつばり要領を得この事が知れ渡るとあんな連中はすぐに食べ あんたは。せやから地球人は困る。大黒屋はえへんわ。ようこんな奴が一人だけ生き残っ尽くされてしまうからな。全力を挙げて捕獲 このトールイべで三二七代続いた、えつ、突たな。どうせ携帯用のシェルターへでも隠れするんや。戦場へ行けば簡単に獲れるんやか 然何ですか。 トールイ・ヘは狂ってるって。狂てたんやろうけど。地球人はほんまに心身共ら。手当てははずむからしつかりやりや。又 ってるのはあんたでしよう。そんなに情けなに最弱ゃな。もっともその弱い体のおかげで注文の電話が鳴ってるからこれで切るけど、 い声でしゃべらないでしやきっとしなはれ。 こっちは助かっているんやけど。そういえば帰ってきたら必ず電話するんやで、わかった 何がいいたいんや。はっきりしゃべりなはそろそろ冷蔵庫の肉も品切れになる頃ゃね。な。もしもし、まいどありがとうございま れ。戦場から本や服や食料が気軽に電話で買シナサルサに電話して肉を持ってきてもらうす。大黒屋です。 えるのがばかげてるて。何でですの。戦ってとしよか。電話番号は、これでよしと。この いる最中にかて食べたいものはあるし読みた時間やったらおるはずやけど。もしもし、シ い本もあれば欲しいものもあるでしよう。弾ナサルサかい。あたしやけど。ええ材料が手 応募規定 丸かてなくなったら買わなあかんし。そうでに入ったかい。三六〇体ほどならあるって、そ■応募資格一切制限なし。ただし、 品は商業誌に未発表の創作に限りま す、これは戦争です。もう何千年と続いてい んだけあったらまあ何とかなるやろ。地球人 す。 る戦争です。それがどないしたんです。戦争は頭のてつべんから足の先までくまなく食べ を楽しんでるやろうって、あたりまえでしよられるからね。脂肪分が多くて骨も肉やわ■枚数四百字詰原稿用紙八枚。必ずタ テ書きのこと。鉛筆書きは不可。 う。嫌いなことを何で進んでやらなあきませらかいし、栄養もあるし、数は多いし、まさ ■原稿に住所・電話番号・氏名・年齢・ んの。地球人は違うて。うそをいいなさんに食べられるために生まれてきたような連中 職業を明記し、封筒に「リーダーズ な。そんな訳のわからんこというて騙そう思ゃね。大黒屋の弁当の評判がええのも奴らの ・ストーリイ応募」と朱筆の上、郵 てもあきませんで。あたしはこうみえても博おかげやよ。もっともそれに気い付いたあた 送のこと ( 宛先は奥付参照 ) 。ペン 学で地球の事もよう知ってます。あんたらかしの頭のおかげというのがほんまやけど。ま ネームの場合も本名を併記してくた さい。なお、応募原稿は一切返却し て今までぎようさん戦争してるやありませんさか客はあんな青っ白くて病気でも持ってそ ません。 の。好きなくせに照れんでもええでしよう。 うな感じの地球人を食べているなんて思いも ■賞品金一封 素直にいいなはれ。あんたもしつこい人やしないやろうね。何 ? それがそうでもない ■掲載作品の版権および隣接権は早川書 ね。誰が戦争を嫌いやねん。あたしがもう少やて。もう薄々感づいているやて、ほんまか 房に帰属いたします。 し若かったら喜んで戦場へ行くところや。あいな。あんたへまをやったんかいな。違う、

10. SFマガジン 1984年6月号

「そんなことに興味があるの ? 」 ばくはアイスペールを床に落とした。ドシャンという音がして、 「これでも若いころは演劇青年だったんだぜ」 薄暗がりの向こうから何組かの客がこちらを振り向く気配がした。 マーシェンカは、ちょっとからだを倒してペールを拾いあげる「そいつは最高に趣味が悪いね」 と、「あなたがたはオス、メスと呼びたいかもしれないけれど マーシェンカは冗談を言ったが、目は・ほくを避けて横の方へ行っ こ 0 つまり、雌だよ。排卵孔もあるよ、見る ? 」と、ヴェストのボタン をはずしにかかナ っこ。・ほくはあわてて、手を・ ( タ・ハタさせて制止し「逃げたいね」 たが、最後のそれが冗談だとわかるとテー。フルに思わず突っ伏し ・ほそっと呟く声が聞こえた。訓練された役者の声ではなく、生身 の人間の声がしたので、・ほくはひどく驚いてしまった。マーシ = ン 「ほくの一家は完全な女系なんだ。つまらないことおびただしい」 力の顔を見たが、まだ足元の方を見ているので、しかたなく・ほくも マーシェンカは頭を振った。白い喉がときおり上下する。 自分のグラスに酒を注ぎ直した。 「すると、きみもどこかから婿を取って、家を守っていくわけかい 「こういうとき無能の評論家は何て言うか知ってるかい ? 」 マーシェンカは突然明るい声を出した。・ほくは反射的にばっと顔 家を守るという表現をしたとき、マーシ = ンカは露骨にいやな顏をあげた。そして、しばらくお互いに見つめあった後、ほとんど同 をした。「だといいね」 時に二人は声を出した。 ・ほくは話題をかえようと思って頭の中をあれこれかきまわしてみ「人生はドラマだからねえー た。「きみの一家はいつごろから劇団をやってるの ? 」 マーシェンカは白い喉を見せて仰向けにひっくり返り、・ほくはテ 結局何もかわっていなかった。 ー・フルに頭を打ちつけて笑った。「ひつひっ、こいつは傑作だ」 「さあてね。記録はある筈だけど、見たことがない。代でいけば、 「本当に傑作だよ」 今の座長が一五七代目のカロ・マーシェンカだ」 マーシェンカは涙を流しながら起きあがってきた。「こいつが本 ・ほくは数を聞きまちがえたのかと思った。そんな長い間、よく家当に傑作なのは、この言葉の持っ真実の意味の部分をも無能な連中 や芸を保持していられるものだ。 は理解していないことなんだ」 「子孫としてどう思う ? どうしてご先祖は役者をはじめたのかな「真実の部分 ? 」・ほくはハンカチーフをさし出した。 「・ほくらの住んでるこの宇宙や生き物、これも事実という名のフィ 「それは、ほとんど人々がな・せ芝居を必要とするかっていう問題にクションなのさ」 等しいよ」 マーシェンカは片方のロの端を吊り上げて、シニカルな口調で言 0 っこ。・ほくにマジな顔して突っこませないそというポーズなのかも 「それでもいいさ。ロニ自身はな・せ役者をやってる ? 」