司政官 - みる会図書館


検索対象: SFマガジン 1984年6月号
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1. SFマガジン 1984年6月号

, ヒャ全体に関するもので彼はいった。 ためにするお願いで、もうひとつは、 : 「私は、この ( ビヤの特産品を考えています。 ( ビヤでは、他のゾ ハオヌのコ。 ( コパにはないような品々が手に人るのです」 「伺いましよう」 と、パャサバ。 「私のほうのお願いは、司政官殿との交易です。ロポットの方々か ら聞いていますが、司政官殿は広い領土をお持ちで、そこではさま「それは結構ですが : : : 」 ざまなものが生産されているそうです。その中には司政官殿にもう彼は、少しがっかりしながら、言葉をにごした。それではとても 不要でも、私たちには役に立っ品物がたくさんあるに違いありませ本当の交易にはなりそうもない。かりにその特産品とやらがちょ「 ん。例えば、いらなくなった金属の棒や板とか、人間が使う紙の類と珍しいものであっても、それでは高が知れているのだ。 とか : ・ : 私はそうしたものを活用して、私のコ。 ( に来る者の物資と 「もちろん、それだけでは、司政官殿のほうには大してうま味はな 交換したいのです」 いでしよう」 「なるほど」 と、・ ( ャサバはいったのた。「ですからそれはそれとして、私 彼は、やはり、と頷きつつ応じた。そういう申し出があるだろう は、司政官殿にいろいろ便宜を供与しようと思います」 ことは、はじめから予想していたのだ。しかし、そうした″交易″ は、プ・ ( オヌの側からの見返り物資がせいぜいここの原産植物や動「便宜 : : : ですか」 よくわからないので、彼は問い返した。 物、でなければその加工品のたぐいだろうから、実質的にこちらの 持ち出しになり、援助に過ぎなくなるおそれがある。そんな援助「たしか、そういう単語だ 0 たと存じますが」 パャサ・ ( はテー・フルに身を乗り出した。「私がいいたいのは : を、申し出てくるプパオヌ全部に対してやっていたら、司政庁のほ うがどうにもならなくなるのだ。といって、特定のプ、、 ( オヌの集団そうですね、。フパオヌについてのこまかい情報、必要とあればよそ のコ。 ( コパへ行ってでも収集して来る、。イハオヌに関するあらゆる だけを対象にするのはますい。不公平のそしりを免れないだろう。 : ここへロ 知識の提供。それからハビヤを利用していただくこと : そんなわけで、司政庁では。イ ( オヌに対し、特に司政上の問題 植民者とのあつれきや、天災による被害などがない限り、原則としポットたちの駐在所を作ってもいいですし、ここの。フ・ ( オヌたちを 作業に使ってもらっても構わないのです。私は、司政官殿をお迎え てそういうことをしないようにしているとのことだったのだ。 するために、報酬を約東して五人の。フ・ ( オヌを使いました。あのや だから、交易といわれても、すぐに承知するわけには行かない。 先方がどういう条件を出すか、問いたださなければならないのでありかたで、司政官殿に奉仕することも出来ます。その他、私が委員 として出来る範囲内での、あらゆる協力を提供したいのですが : しかがでしようか」 「それで : : : そちらからは、何を提供していただけるのですか ? 」 2

2. SFマガジン 1984年6月号

パャサ・ハはいう。「早いにこしたことはありませんが、今すぐお 彼は、正直のところ、ややあっけにとられていた。 返事をいただきたいとは申しません。何ふん、よろしくお願いしま 3 こういう、かたちのないものを提供されようとは、考えもしなかすー ったのである。交易というと、まず実物であり、手にとれるものが 「わかりました」 ふつうだが : : : それを、情報とかサービスといった無形のもので行彼は頷き : : : さて次は何だろう、と、待ち受けた。 おうというのは : : : それもプ・ハオヌがいいだすとは、驚きであり、 はじめが交易だとすれば・ : : ハビャ全体に関する願いというの 新鮮だったのだ。 は、おそらく、植民者からの保護ということではあるまいか ? そ そして、彼や司政機構にとって、このハビヤを利用出来ること、 れがもっともありそうな線である。 必要とあらば拠点とし得るということは : ・ : たしかに有利なのであ そして。 った。そういうものを持てば、司政官としては何かと期待出来るで 「ふたつめは、、・ ノヒャ全体にかかわるお願いです」 あろう。当面すぐには役に立たなくても、いずれ有効に働くはずで ハヤサ・ハは、何気ない調子でいいだしたのである。「私たちは、 ある。すくなくともプ・ハオヌの問題に関しては、植民者たちに対抗司政官殿に、、・ / ヒヤの主権を認めていただきたいのです。ハビヤが する材料を持っことになるのだ。 自立し独立していて、誰がハビヤにやって来ても、 ( ビヤの定めに 悪くない。 従わなければならないということを、司政官殿が公認し、宣言して 悪くないけれども : : これを彼の独断で決定するのは早計であっ いただきたいのです」 た。の意見を聞く必要がある。それも、この場でやるのは考 ( 以下次号 ) えものだ。に一度否といわせてしまうと、あとがやりにくく なるたろうし、パャサ・ハも協力的態度を捨てるかも知れない。あと ハヤサ・ハのいないところで、 cn 01 と話し合わなければなる まい。彼自身が乗り気であるだけに、ことは慎重に運ぶ必要がある のだった。 「そのお話については、ご意向はわかりました」 と、彼は、の反論を呼ばないいいかたをした。「ただ、こ ちらのほうもどの程度のものを提供出来るか、ここではわかりかね ますので、追ってお返事をしたいのですが : : しかがですか」 「結構です」

3. SFマガジン 1984年6月号

3 ( 承前 ) どうやらは、・ハヤサ・ハの申し出を額面通りに受けとり、そ の言葉を盾にとる方式を選んだようである。つまり、何を要求され るか不明だが、それが現実に実行不可能とか、司政上具合が悪いと いった事柄 ( この点、彼と 1 の見方がことなってくるというこ とは、充分考えられるが ) なら、そのときに拒否するつもりなの だ。先方は、いやならことわってくれて構わないと明言したのだか ら、そうする権利があるというわけだろう。もっとも、それは先方 の言葉のあやというもので、ことわれば相手の心証をそこねるのは 避けられない。が、はそのことを承知で、やむを得ないとし たのかもわからなかった。ひょっとすると 01 は、、 カりにそうな ってもそれはそのときで、相手の感情をやわらげるいいまわしや方 法をとるつもりなのかも知れない。とにかく、ここは、相手の存念 をつかもうとしていろいろさぐりを入れたり、条件づけをしたりす るよりも、一応相手に同調するほうが、話を進めることになりそう なのであった。その意味では、司政官の立場をおもんばか り、司政官がやりやすい状況を作ろうとしているといえる。そし て彼にとっては、こうして tn 01 の了解をとりつけておけば、それ でいいのであった。 「どうも、失礼しました」 彼は、パャサ・ハに向き直った。「それでは、そちらのお話という のは、のちほど伺うことにして : いくつか、おたずねしてもよろ しいのですね ? 」 「どうぞ。私は、私に許された範囲内で、出来るだけ誠実にお答え ・前回までのあらすじ・ 待命司政官キタ・ 4 ・カノ " ビアは彼の出身惑星タトラデ ンの司政を命ぜられた。出身惑星が任地となること自体が異例だ が、その任務はさらに異例だった。タトラデンが中心となっている 反連邦的な第四五星区のプロック化を阻止せよというのだ。彼は着 任早々、タトラデンを支配する名家の圧力に抗して学校開設をはか るドラエテ・・エクドートから援助を乞われる。初の公式的な 行事であった記者会見は、彼の出自に関する質問に終始した。記者 会見後、彼は科学センターのヤペ・・エクトイックと名乗る 男の訪問を受ける。ャベはタトラデンの原住種族プ・ハオスの保護を 訴え、。フ・ハオヌの中でも特別に知能も高く闘争本能も強いトズトー C フ・ハオヌの突然変異種 ) を増やすことをすすめる。その後、彼の もとに旧知の名家の男、エイゲル・・ジャクトから舞踏会の招 待状が届く。キタは名家、名家に対抗する勢力、プ・ハオヌのそれぞ れに好意的な政策をとることを決め、手はじめに・フ・ハオスの調査に 赴く。そして訪れたプ・ハォメの仮設都市日コ・ハコ・ハのハビヤで、思 いがけず知性的なプ・ハオヌたちと出会う。そしてその一人、・ハヤサ ・ハとの会見が始まったが : ・ 登場人物 キタ・ 4 ・カノいビア : : : タトラデン出身の司政 ~ 呂。 ドラエテ・・エクドート : : : もと通信社を経営していた女性。 ャベ・ 2 ・エクトイック : : : 元タトラデンの科学センター職 員。 ミア・・コートレオ : : : 東海岸通信の女性記者。 ・ハヤサ・ ハビヤの委員を務めるプオヌ。本名。ハヤサニャレイ ェイゲル・・ジャクト : : : 初級・中級学校時代のキタの同級生 の兄。ジャクト家の男。 ・ヒウセニャム・ハハ : ハビヤの笨頭委員。 8

4. SFマガジン 1984年6月号

機甲創世紀モスヒ。ーダ 「ジェネシスクライマー インビットと地球奪還軍との 戦闘を再現。 5 月初旬¥ 3 , 500 ⑥タッノコプロ・アートミッワ ファンタジーロールプレイゲーム 「ローストウロード」 ファンタジーロールプレイゲ ームの決定版登場。 価格未定 6 月末 ☆加藤直之氏デザインのメタル フィギュアが入る予定です。 新製品情報 ・「司政官」予価 Y4 , 500 5 月末 貴方は一つの惑星の司政官として原住民、植民 者、軍等のバランスを保ち惑星開発を管理する。 ・「グインサーガ」予価 \ 4 , 500 7 月頃 ・「スタークエスト」価格未定 7 月頃 スペースロールプレイゲーム 泰聯← 〒Ⅱー東京・台東・元表単 3- ト 3 003 843 日 30 ロ 7

5. SFマガジン 1984年6月号

、ル第朝、れ、 の招待 、O@ヨ-編 くてある。ドゴンにしても、ちゃんとテ レポー下塒間飛行ができ、細かいシステム ではないけれども、ツポはおさえてある。 結局、このうに小説の要素をとりこむに あたって いうまでもないことだが、つね に原作をし、り把握していることが重要に オる。細部 いかにその原作のおもしろさをゲーム・シス テムと結合させるか、デフォルメだって当然 必要かもしれないが、それは原作およびゲー ムの楽しさと直結していることが肝心だ。そ うして始めて、プレイヤーはの世界を 自ら開いている″と実感できるだろう。 + ト・ゲームでは小説のもつ状況 の変化まではなかなかっかみきれないのも事十、 実である。そのあたりはまた次号で。 ( ゲーム・ファンのための註 ) 今回ご紹介したゲームは残念ながら、入手 しにくいものばかりです。 ただ原作のあるシミュレーション・ゲ ームとしては、近々ックダホビー社より、眉 村卓氏の『司政官』が登場します。ある惑星 を舞台として、原住者、植民者、司政官らの 対立を扱った戦略タイ。フのゲームになると聞 きます。かなり原作の小説的雰囲気をもっゲ ームになるはずとは、デザイナーのです が、期待できそうです。 また、同社のファンタジイ・ロール・。フレイ ング・ゲームも追って出る予定だそうです。 ( 資料協力【ックダホビー社、ホビージャパ ン社 ) LARAD TELGAR Maximum Bid Thread Fighting 、 ' u に Maximum Bid

6. SFマガジン 1984年6月号

〃グカ・ファンタジイ & SE 持約ノ材 / ル、 8 4 連載・・第 司政官シリーズ 眉村卓 「猶予の月」 昭和 35 年一月ロ日第三種郵便物認可 昭和引年に月一日国瞽特第扱ゑ認 雑誌第 ( 2 号昭第 ) 年 ( 1 月一日胤・発行 ( 毎月一回日発行 ) 第当巻第い号 待望の連載開始 ! 川又千秋 創星記」 当 984 年”に 立井 SF ピープル HO] 新連載工イリアン SF パソコン入門講 L コミック御厨さと美 SF フォト・コン第 読切第第を ース ・特別工ッセイ・ ・ 3 <WATCHING ④川又千秋 / つ、

7. SFマガジン 1984年6月号

「あとで返してあげよ 「われわれが預かっている」医師が言った。 ような好奇心をもって彼らを見つめ返した。いまのこの状態には、 ・ : あれはわれわれには合わないのだ」 どこか不自然なところがあった。双方とも、好奇心を隠そうともせう。いまは : : : 返せない : ッジがいささか抜け目なく訊いた。 ー弓しのかね ? 」エルドリ ずに、異形の相手を見つめあった。 「弱いわけではない。ただ : : : 単に : : : 気分が悪くなるのだ。司令 沈黙がつづいた。そこに困惑がはいりこんだ。誰もが、異星人に なか「て直接、話しかけたくはないのだ、と暗黙のうちに認めあ「官が言「た。「話をつづけよう。まず、きみがいまどこにいるのか 話してあげよう。きみは概ね、故郷の星によく似た星にいる。たた 「それ : : : 彼は居心地はいいのかね ? 」医師のほうを向いて、司令し、何 : : : 」 司令官はロごもり、学者を見た。 官が訊いた。 「おそらくは」医師がゆっくりと答えた。「われわれの知るかぎり「光年」重々しい声が言った。 「 : : : 何光年も離れている。この光年という言葉は、きみたちが使 うのと同し意味だ」司令官がさらにきびきびした口調でつづけた。 エルドリッジのほうを向き、司令官は言った。 ここに連れてきたの ツンティモシイ。、 ーカー、自分がどこにいるのか、さそ「故郷の星から何十光年も離れているのだ。 「エルドリ は、べつにきみに対して : : : 嫌悪を感じているからでもなく : こ思っていることだろうね ? 」 や不思議冫 警戒と習慣から、 , ルドリ , ジはロをつぐんだ。彼は答えようと意を感じているからでもない。ただ = = = 」 はしなか「た。あまり長いこと口を開かなか「たので、司令官はつ「観察」医師が言「た。司令官は医師のほうを向き、ちょ「と頭を まらなそうに医師のほうを向いた。医師はちょっと頭を振って、司さげ、医師もお返しに頭をさげた。 「 : : : 観察のためなのだ」司令官がつづけた。「さて、ここまでの 令官を安心させた。 「さあ、しゃべるんだ、司令官が言 0 た。「きみの言葉を理解できところは理解できたかね ? 」 「拝聴しているよ」エルドリッジが言った。 るだろう。きみがわれわれの言葉を理解しているようにね。きみの 「けっこうだ」司令官が応じた。「では、つづけよう。きみたちの 悪いようにはしない。きみが何をしゃべろうとも、きみの : 種族について、ぜひとも知りたいことがあるのだ。きみを研究し ・ : 状況に変化はない」 司令官はまた言葉を切り、返事を待つように = ルドリ〉ジを見て、それを発見するつもりだ。いまのところーー率直に言「て エル、ドリ , ジはまだ黙「たままだ「た。だが、片手は震えながまだ、それを発見していない。きみ自身もそれが何だか知らない とわれわれの学者は共通して考えている。そこで、われわれはきみ ら、無意識のうちに胸ポケットのあたりを探っていた。 が自分で、それを発見するのではないかと希望している」 「パイ。フはーーー」エルドリッジは言った。 「おい・ : 」エルドリッジは息を呑んだ。 ッジを見返した。 三匹はたがいに顔を見あわせ、ついでエルドリ 7 3

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「そうでしようか ? 」医師が重々しい口調で言った。「彼が独れた すよ。脱獄は不可能だという事実を否定したのです。ここにこそ、 とりわけ危険な、とくに恐 彼の種族が恐るべき、危険な存在である理山があるのです。あるこら燃えっきてしまうはずの防御壁は とが不可能であるという事実は、彼らには障壁とはならないのでろしい武器であるはずの防御擘はどうです ? 」 す。これこそが、われわれには決して到達できない段階にまで彼ら司令官は医師をじっと見つめた。 を到達させる秘密だったのです」 「だがーー」司令官は言った。「防御壁は切ってあったのだ。もち 「だが、その前提は間違っている ! 」司令官が反論した。「彼らはろんそうだ。食事当番を通すためにな。ドアも開いていた。たぶん 自然の法則を破ることはできない。彼らも、宇宙の物理法則には縛 「わたしは調べました」医師が言った。その眼はしっと司令官をに られているはずだ」 医師はまた笑った。その笑い声は荒々しかった。司令官は医師をらんでいた。「彼が逃げる前に、防御壁のスイッチは入っていたの 見た。 「だが、彼は逃げた ! まさかーー」 「薬をやっているな」司令官が言った。 「ええ」かすれた声で医師が言った。「もっとやりたい気分です司令官の声は震え、とぎれた。三匹は突然、石のように押し黙っ よ。われわれの種族の減亡に乾杯しましよう」 た。見えない手に操られたかのように、ゆっくりと、彼らは向きを 「ヒステリーだ」指令官が言った。 変え、雲ひとつない空を、その先にひろがる宇宙を見あげた。 「ヒステリー ? 「まさかーー」 ・」医師がおうな返しに言った。「い いえーー罪悪感 司令官がまた言いかけて、またロをつぐんだ。 です ! われわれ三人は罪を犯したんじゃありませんか ? 彼らに は触れるな、彼らの爆薬に点火してはならない、と伝説は教えてく「そうですとも ! 」医師が小声で言った。 れました。だが、われわれは点火してしまったのです。あなたとあ なたとわたしとでね。いまやわれわれは敵を宇宙に送り出してしま銀河のただなかで、感受性のつよい種族の子供が、叫び声をあげ いましたーーー彼は何年分もの食糧を積んだ宇宙船に乗り、死なない て、眠りから覚め、母親にしがみついた。 「恐い夢を見たよ」子供はささやいた。 身体をもって、銀河を渡っています。彼に与えた学習能力を使い 故郷の星のありかを知ることのできる星図をもち、われわれの科学 「よしよし」母親が言った。「よしよし」 だが、母親はじっと横になって、天井を見あげていた。彼女もま を理解する鍵となる手掛りをたくさん持っています」 た、夢を見たのだった。 「だが」司令官は断固として言った。「彼はそんなに危険ではない いまのところはな。いまのところ、彼はなにもしていない。彼 は何も異常なところを見せてはいない」 どこかで、エルドリッジは星々に微笑みかけていた。

9. SFマガジン 1984年6月号

「でまあ、子供にトズトーが出たということで、私はみなに迷惑欲的な委員らしいことは窺えるが : : : そうなったのも彼女の娘にト をかけたぶんたけ、コ。、 コパにつくさなければならない、 と、努力ズトーが出来たとの負い目のせいだった となれば、これは必然 2 しました。いろいろコ。ハのあたらしい使いかたも考えたりして : 的だとはいえないにしても、全くの偶然とは見做すわけには行かな 私が現在ハビヤの委員をしているのもそのおかげと思えば、多少は いであろう。そこにかすかで細いかも知れないが、一本の糸がつな 感謝していいのかも知れません」 がっている、とも解釈出来るのではあるまいか ? ともあれ、彼はこれでまた、あるいは活用出来るかもわからない 手札を得た感じがしたのた。 彼は、相手にどういったらいいか、わからなかった。 が、その心の一方では、思わぬものにぶつかったという気持ちが 「この位で、よろしいですか ? 」 あったのだ。 。ハヤサスがしナ うまく行けば : : : 自分は案外早く、本物のトズトーに会えるかも「いろいろ、貴重なお話を、ありがとうございました」 知れない。 このパャサ・ハに頼んで、。ハヤサ・ハの娘というのに会わせ彼も答えた。 てもらえるかもわからないのである。なろうことなら、彼はすぐに 答えながら : : : 今度はそちらの番だ、と、彼は心の中で呟いてい もそのことを、パャサ、、ハに頼みたいところであったけれども : : : き た。パャサバが、情報提供の代償として、何事かを要求するはすな よう顔を合わせたばかりの相手に、すぐそれをいうのは、やはりまのである。 ずいだろうと考えたのだ。いすれ頼むとして : : : きようのところは いでしようか 「それでは : : こちらからのお願いを申し上げて、 遠慮しよう、と、彼は思いとどまった。 ハヤサくよ、 それにしても、これは偶然である。トズトーと知り合いになれる ノーしいたした。 / ビヤに 機会なんて、なかなか得られないと覚悟していたのに : 雨はすっかりゃんで、外は再び日光に照らされているようであっ 来て最初に話をしたプバオヌの娘がトズトーだったとは、話がうま た。部屋の中もあかるくなり、。ハヤサバの表情も黄と黒の服も、よ 過ぎるのではないか ? く見えるようになっている。そして、これから何を持ち出されるの しかし。 かという気のせいか、彼の目に彼女は、さきほどまでよりもたいふ 彼は、それが、決してまぐれ当りの幸運などではないことを悟っ大きく映るのであった。 た。偶然であり幸運であるとしても、これまでの経緯を想起する「どうそ」 と、司政官を迎え入れ、話をしようと決心したのはこのパャサ。 ( 彼は応じた。 で、あとの委員たちはそれを承諾したたけだということではなかっ 「お願いというのは、ふたつです」 たか ? そして。ハヤサバ自身の話でも、彼女がきわめて進取的で意 パャサ。 ( は目を向けた。「ひとつは、私が自分の管理するコパの

10. SFマガジン 1984年6月号

ッジは衛兵の持っていた黒い武器を手に、片膝をついて身構えた。 なものを感じていた。だが、いつもの思考過程は損なわれていなか っこ 0 その武器からは炎がのび、もう一匹の衛兵も倒れた。エルドリッジ は足を突き出し、まだ開いていたドアにとびついた。 「ハッチの蝶番が」と彼は言った。「腐食していました。酸にやら ドアは閉まりかけていた。だが、武器を持っていない食事の当番れたのです」 兵はあわてて、くるりと向きを変え、逃げだしかけていた。エルド 「酸に ? 」司令官は医師をじっと見つめた。「彼はどこで酸を手に リッジの武器から出た稲妻が、当番兵の背中にあたった。彼は倒入れたのだ ? 」 れ、ドアがその身体をはさみこんで、つかえた。当番兵のあとを追「食事の消化のときに、ですーー吐き戻し、蝶番に吐きつけたので ったエルドリッジは、まだ開いている隙間に身体を押しこんだ。 す。彼は胃の中に塩酸をもっていたのです。強いものじゃありませ かくて、彼は自由の空の下に出た。警報の音が大気を切り裂いんーーーでも、ある程度の時がたてば : : : 」 た。彼は走りだした : ・ 「だがーーー」司令官がやけになったように言った。「それは幸運と 医師はすでに薬を注射しおわっていた だが、知らせがはい っしか言いようがないと思う」 たとき、野原に出られないほどひどい状態ではなかった。奇妙なっ 「こんなことが信じられますかな ? 」学者が言った。「こんなタイ なじまがりの性質のせいで、医師はまず監獄へ行き、壊れたハッチ ミングのいいことが信じられますか。食事を運ぶアームが適当な位 と曲がったアームを調べた。彼はエルドリッジの逃亡経路をたどっ置にあり、ドアが適当な幅に開き、衛兵がまたとない位置に立って ていった。宇宙港に出ると、そこに司令官と学者とがいるのに気づ いる瞬間を選ぶことができるでしようか。ためらうことなく行動 いた。ふたりは剥きだしの黒くなったコンクリート のそばに立ってし、武器を確実に使いーー・それは何時間も観察した賜物でしようが いた。ふたりは医師に軽く礼をした。 ーー食糧を満載した宇宙船が駆動装置を停止せずに宇宙港で彼を待 「ここで宇宙船を手にいれたのですか ? 」医師が訊いた。 : などと。 いや」彼はかぶりを振った。 っている瞬間を選んだ : 「ここで宇宙船を手にいれたのだ」司令官が答えた。 「これで答えがでたのです。われわれは彼を脱獄不可能な監獄に押 しばらく沈黙があった。 しこめ、彼は脱獄しました」 「では」と学者が言った。「われわれは答を得たわけだな」 「だが、こんなことはありうるものではない ! 」司令官が叫んだ。 「答を ? 」司令官が挑むようにあとのふたりを見た。「逃げること医師は笑った。薬に冒された、朦朧となった笑いだった。彼はロ は不可能だったーーそうではありませんか ? 穴がたまたま壊れるをあけたが、学者が先にしゃべりだした。 ことなど、ありえないーーー彼は考えもせずに行動した。これは幸運「彼がやったことではありません」学者が言った。「だが、事実、 だったのですか ? 」 彼はやったのです。他の種族のものなら、脱獄の可能性を心に抱く 7 医師はかぶりを振った。彼は薬のせいでかすかなめまいと不自然ことすらなかったでしよう。わかりませんかーー彼は無視したので