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検索対象: SFマガジン 1984年6月号
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1. SFマガジン 1984年6月号

おれのちちおやはのうしようをもっていたが、このあたりのとちを やって来ては、去っていく。彼はいくつかの声が自分を訊問してい うってかねももっていた : : : それほどひとざとはなれているわけし るのを感じた。 いとおもっている : なしが、スクーターがあればい おまえは誰だ ? いや、ドイツしんをそれほどきらっているわけじゃないし、きら 「エルドリッジ / にいたこと っているとおもったこともない。もちろん、ヨーロッ : おれはガソリン があるが、せんそうにさんかしたわけじゃない : おまえは何だ ? のにおいが。フン。フンするはいしやセンターでにんむについていたの 「わたしはエルドリッジ・パ だ。おれはしぶんのてをつかってはたらきたかった。ほへいれんた おまえ自身のことを話すのだ。 いなんかにはいたくなかった : 「何をだって ? 」 : ちょうぎかいではっげんするけんりがある : : : おしのいって おまえ自身のことを話すのだ。 でうまくいくなんてしんじていないが、おれはおされたら、おしか 「何を ? あんたたちは何が知りたいのだ ? えしてやる : ・ : ・おれがこのまえのせんきょでだれにとうひょうした 話せ : かなんてことは、ほかのものにとやかくいわれることではない : 「でもーーー」 だが、まちのやりかたについては、おおじぬしとして、おれにもひ 話せ : . フットボール とこというけんりがあるというものだ : : よかろう。まちのこどもたちがだいすきだ : : おれはだいがくにはいかなかった。そのひつようがなかった がすきで、ななじゅうごャードのダッシをして、かったこともあ からだ : : : きよういくがありすぎると、ひとはばかになる、とちち る : : : それにホッケーもやる : : : このあたりはかなりさむくなるか ら、いちがつのさむいあさ、ドアのそとにでると〈んなにおいがすおやにいわれたのだ = ・・ = おれはのうふであるし、これからものうふ ・イングランドのいなかじゃあ、いろんなのままだろうし、かべにいちまいのそっぎようしようしょをかける るものなのだ : ・ ために、よねんかんをむだにしたりはしない。それでも、おれはし においがするものなのさ : : : まつのにおいもすれば、くさのにおい もある。とくによくお・ほえているのは、にわとりのにおいだ : : : きぶんなりのどりよくをつづけるだろう : ・ : もちろん、おれだってげんしばくだんのことはしっている。 ようかいにはかしのペンチがあるが、あれはにちょうびのにおいが する。にちょうびにはびざをつき、まえのペンチにはなをおしつけだが、おれはかがくしやじゃないし、かがくしやになるひつようも よい。じゅういになるひつようがないのとおなじように、・こ : : : そ ていのるのさ・ : ィーク一丁イにはつり うしたことをしるひつようがあるおとこたちをやとうおとこたちを 5 : つりはだいすきだが、ウ : つりもい せんきょでえらぶ。おれがとうひょうしたおとこたちは、おれのき : われわれはちょうろうはきようかいのしんじやた。 はやらない : 0 、 ・エルドリッジ・ティモンイ・。、

2. SFマガジン 1984年6月号

そうか、そうだったのかー・ 「劇団員はみな無事だ。ロニと、姉のサキを除いてはな」 マーシェンカ一族は、宇宙の語り部として、遺伝子をフィックス 「サキが ? 」 「おお、そうだ。それで思い出したが、きみはあの娘が妊娠して いされた存在だったのだ。自らの進化の可能性を閉ざすことによっ て、他の生を演じる才能を与えられていたのだろう。だが、ある たのを知っていたか ? 」 「ああーそうだったなと、ぼくは思った。かわいそうに。一度にふ日、その才能の中から″反乱″が始まった。一五七代ぶんのツケが いっぺんにまわってきたのだ。カロもロニもサキも、そしてサキの たつの生命を失ったのだ。 「彼女が死んだのは、屋根のせいじゃなく、ショックか、自分で倒子も、みんな同じ生物なのだ。それで他の生を担う苦役から逃れた れて頭を打ったかしたらしい。ところが、その子供が見当たらんのがっていた筈だ。どうしてそんなことにすぐ気がっかなかったのだ ろう ? ・ほくは、地球行の使に乗るまでそれから三日間、シャーリイと抱 「え ? 」 「死産した様子もなし。かといって正常に産んだ筈もなし。剖見でき合って、死んだように寝ていた。 は、妊娠してたのは確からしい」 ・ほくは何だか気分が悪くなってきた。「父親は誰なんだ ? 」 ・ほくは地球でシャーリイと結婚し、その後も仕事であちこちの星 「何だって ? 」 を転々とした。しかしふたりとも、あのマーシ = ンカ一座と暮らし 「父親だよ。サキの亭主は誰だったのか調べただろ ? 」 た日々をかたときも忘れることはなかった。 「きみは、知らないのか ? 」 そして、あれから三〇年ぶりに、・ほくらはメネムシアにやってき 「ああ、聞いてみなかったからな」 「そうじゃない。マーシェンカ一族の生態をだよ。連中はセックス 劇場はとり壊され、跡地は公園になっていた。その一角に、ひと をしないんだ。みんな単為生殖でふえるんだぜ」 つの碑が建っているのをシャーリイが見つけ、・ほくを呼び寄せた。 「なんだって ? 」 ぼくは不思議な緊張感に包まれながら、その前に立った。 ロポットは困ったというジェスチャーを不器用にした。 それはまさしく口ニの記念の碑だった。そして、・ほくの理不尽な 「マーシェンカの一家には雄はいよい。全部雌で、卵は受精なしで妄想は本当になった。そこに刻まれている文はこうだった。 発生を開始する」 ″また会ったね、きみ。もう幕はおりてるんだぜ訂 「なんてこった。・ ・ : とすると」 「連中はすべて親と同じーーークローンてことになるな。天然のね」 ばくは呆然とした。自分の馬鹿さかげんにもあきれ返った。

3. SFマガジン 1984年6月号

「の、農協で、牛の品評会があって、その帰りだ」 「の 1 きょ 1 だとー ? 」 「んだ。おら、自慢じゃねーが、その道では、″牛飼い源みちゃーたら、 知らんものはねえくらい、牛飼いひとすじ五十年の立派な百姓だ」 源蔵は胸を張った。 「今日も牧場から、トラックに牛十頭ばかしのせて、やってきただ よ。品評会も終って、やれ帰ろうかっちゅう段になって、牛が一頭 足りねーことに気がついて、あちこち探し回って、やっと見つけた だ。決して、あやしいもんじゃねーだよ。なんなら、農協さ問い合 わせてみてくれてもええ」 「ふーん」 男たちは、額を寄せ合って、何事か相談し始めた。 一人が、源蔵の連れていた牛の尻のあたりを指さして、言った。 まる 「どうやら本当のようだ。〇に源の字の焼き印もある」 「そうか」 男たちは、残念そうに、銃をホルスターにしまった。 「まったく、牛を探せなんて、福田室長は何考えてるんだ」 「だいたい、 こんな住宅街で、牛を見つけろってのが、無理なんだ 「東京のど真ん中に、牛がうろついてるはずねーもんな」 「ほんとほんと。馬鹿馬鹿しいっちゃねえ ! 」 口々に、・フックサと不平を言いながら、男たちは、二人並んで・ほ んやりつっ立っている良一とエリのそばを、ぞろそろと通りすぎて いく。チラッとも見ようとしない。 エリの顔色が徴妙に変化した。 エリは、手にしていた。フラカードで、いきなり手近かの男の頭 9 5

4. SFマガジン 1984年6月号

「そんなことに興味があるの ? 」 ばくはアイスペールを床に落とした。ドシャンという音がして、 「これでも若いころは演劇青年だったんだぜ」 薄暗がりの向こうから何組かの客がこちらを振り向く気配がした。 マーシェンカは、ちょっとからだを倒してペールを拾いあげる「そいつは最高に趣味が悪いね」 と、「あなたがたはオス、メスと呼びたいかもしれないけれど マーシェンカは冗談を言ったが、目は・ほくを避けて横の方へ行っ こ 0 つまり、雌だよ。排卵孔もあるよ、見る ? 」と、ヴェストのボタン をはずしにかかナ っこ。・ほくはあわてて、手を・ ( タ・ハタさせて制止し「逃げたいね」 たが、最後のそれが冗談だとわかるとテー。フルに思わず突っ伏し ・ほそっと呟く声が聞こえた。訓練された役者の声ではなく、生身 の人間の声がしたので、・ほくはひどく驚いてしまった。マーシ = ン 「ほくの一家は完全な女系なんだ。つまらないことおびただしい」 力の顔を見たが、まだ足元の方を見ているので、しかたなく・ほくも マーシェンカは頭を振った。白い喉がときおり上下する。 自分のグラスに酒を注ぎ直した。 「すると、きみもどこかから婿を取って、家を守っていくわけかい 「こういうとき無能の評論家は何て言うか知ってるかい ? 」 マーシェンカは突然明るい声を出した。・ほくは反射的にばっと顔 家を守るという表現をしたとき、マーシ = ンカは露骨にいやな顏をあげた。そして、しばらくお互いに見つめあった後、ほとんど同 をした。「だといいね」 時に二人は声を出した。 ・ほくは話題をかえようと思って頭の中をあれこれかきまわしてみ「人生はドラマだからねえー た。「きみの一家はいつごろから劇団をやってるの ? 」 マーシェンカは白い喉を見せて仰向けにひっくり返り、・ほくはテ 結局何もかわっていなかった。 ー・フルに頭を打ちつけて笑った。「ひつひっ、こいつは傑作だ」 「さあてね。記録はある筈だけど、見たことがない。代でいけば、 「本当に傑作だよ」 今の座長が一五七代目のカロ・マーシェンカだ」 マーシェンカは涙を流しながら起きあがってきた。「こいつが本 ・ほくは数を聞きまちがえたのかと思った。そんな長い間、よく家当に傑作なのは、この言葉の持っ真実の意味の部分をも無能な連中 や芸を保持していられるものだ。 は理解していないことなんだ」 「子孫としてどう思う ? どうしてご先祖は役者をはじめたのかな「真実の部分 ? 」・ほくはハンカチーフをさし出した。 「・ほくらの住んでるこの宇宙や生き物、これも事実という名のフィ 「それは、ほとんど人々がな・せ芝居を必要とするかっていう問題にクションなのさ」 等しいよ」 マーシェンカは片方のロの端を吊り上げて、シニカルな口調で言 0 っこ。・ほくにマジな顔して突っこませないそというポーズなのかも 「それでもいいさ。ロニ自身はな・せ役者をやってる ? 」

5. SFマガジン 1984年6月号

良一は、両方の掌をひろげて、上に向けた。それから、エリのあ そこに、牛はいなかった。 とを追いかけ始めた。 エリは、あわててあたりを見回した。牛は、どこにもいなかった。 言い方を変えれば、そこらじゅう、いない牛でいつばい・こっこ。 とこへいったの ? 」 「牛は、・ << O e / 5 ある牛の詩 「昔、花はどこへいったって唄があったけど、覚えてる ? 」 ヒマラヤの山奥あたりじゃ、ちょっとお目にかかれない、グラマ 「あたしは、牛はどこへいったのかって、聞いてんのよ ! 」 1 な雌牛だった。 「さっきまでは、君の後ろにいたよ」 「さっきまで、あたしの後ろにいたことは、よーくわかってるわ」 聖牛は、思わずふらふらと引き寄せられた。 エリは、押し殺したような声で言った。 雌牛は、ハスキーな牛語で言った。 『あんた、どこの牛 ? 見かけない顔ね』 「あたしが知りたいのは、今、どこにいるのかってこと ! 」 『ヒマラヤ』 「さあねえ」 ーーそれ 良一は、首をかしげた。それから、 = リの目の色を見て、あわて『ヒマラヤ牧場 ? 聞いたことないわね。まあ、いいわ。 より、あんた。悪いことは、言わないから、ついて来ない方がいし てつけ加える。 わよ。あたしたち雌は別だけど、雄はよっぽどの血統書付きじゃな 「だけど、最後に、・ほくが見たときは : : : 」 けりや、すぐに製肉工場行きよ。そうなって後悔しても、手遅れな 「見たときは ? 」 「あの″牛飼い源″とかいう人の牛と、一緒にいたみたいだったけのよ』 聖牛は、気どりまくった声で、応えた。 どね」 『愛とは、決して後悔しないこと』 「なんてこと ! 」 「ほれほれ、何をモーモー鳴いとるんだ」 エリは、飛びあがって叫んだ。 牛飼い源が、後ろをふり返った。そして、聖牛に気がついた。 「きっと連れてかれちゃったんだわ ! 」 「自分でついてったのかも知れない。相手は色つぼい雌牛だったか「おまえ、どこの牛だ。うちの大事な花子に、色目なんか使いおっ らね」 牛飼い源は、聖牛をジロジロと見つめた。 「とにかく探すのよ ! 」 肩のあたりを、平手でばんばんと叩いて、呟く。 「探すって、どこを ? 」 、肉づきをしとるわい。毛並みもいい」 「ふーむ、なかなか、いし 「いたるところを、よ ! 」 牛飼い源は、聖牛のまわりを、ぐるりと一周して、首をひねった。 そう言って、エリはかけ出した。 うた 6

6. SFマガジン 1984年6月号

いだ 説 の銀 がた つ学 、そ 。他れナ 生な はだ 、ん 労溜 。銀 つれ い途 いあ ヵ、 、が い河種体 な の要 似を る いも は他 。なか説たな ゕ は協 も 、き 当文 ち 系がわ分 い激が成 、ん 、同 のた の明 たわで司司な絶す に信 はめ にで で る題 ぁ進 じをわれ れみ れ出 でそ に論 は明 言見 でな き さだ いた み なわ た こ普 にみだわ しぎ がれてみ だけた欲 あ故 すみ ふ る郷それ改ち たわ はと の礼 るけ な に放 と 純は 、き にみ な珍 警 見をけや に終 い個 か 題 の分 し て つだ るた た は強だ いなわ 銀 た河何 、すだ る の 座 視 る れわち いよ い ん お伝ま てわ表 、れ に き る ろ う き を て お き 河 。系あ を 代 し れ わ カ : の 題 を 扱 ね ば な ら な く な っ た 素 り そ て大素 、部 き も 理 問解ー で き ぬ と だ ろ う そ れ で く さ の の た る と も で き ぬ ほ ど た さ ん の 、要 の 疲 に ナこ を 感 じ と た か っ い者ナ つ す く な く と ド リ ツ シ 大 子 者 も の 警 正 と る よ う と ひ と か ら な 、人 間ち は 告険な し急だ な 思発伝 え展説 性 る な 何ねて き つみだ つ見な て て る に カ : 。たす う げ し、 る いだが あ カ 能 い な は で 通 る 言 ・を・ 、功 方 の 族 種 の つ い て だ み つ い て も 、なき 力、 に が し な き 方か観 にあ察 る に ち し、 し、 て し る の の ち星ほ と 。人 み双何 し く つ の と 、見 し 。た の か みもを ま のだ深 よ う に イ云 が つ て し 、わ は き 、注 く の ち き る残単 つれと へ の 、指 る針だ た 、め 肝カ 意銘息 じ ー 1 っ け て く さ い L_ は令令 官 が 者 し し 、展 て発ナ 大 、た の い な に 葉 つ純だをや系族 き り 官 を る の そ も の は な の ろ う 、でが ん す う し 避 が フ ン ス 働 て たがだ 自 本 問 で し、 み貪 と 単 ら の と ち る と で が の に を あ る ど の の 編集 : 石原藤夫 発行 : SF 資料研究会 ま F マガジン・インデックス ( 1 ー 100 ) ( 送料包装費共 378 円 ) S - F マガジン・ インテ、ツクス ( 101 ー 200 ) ( 送料包装費共 3 网円 ) S-F 図書解説総目録 ( 19 缶・上 ) 翩包装 5 ・お求め方法 SF - 資料研究会 ( 鎌倉市七里が浜東 1 ー 3 ー 1 ) 振替 ( 横浜 2 ・ 16059 ) へ現金書留か郵便振替でお申し込みください。 ・以下の書店の店頭でもお求めになれます。 東京天盛堂書店 ( 渋谷区神南 1 ー 22 ー 14 TEL. 463 ー 0511 ~ 5 ) = 省堂書店神田本店 ( 千代田区神田神保町 1 ー 1 TEL. 233 ー 3312 ~ 5 ) 福岡り一ぶる天神 ( 福岡市中央区天神 4 ー 4 ー 11 福岡ショッパーズプラザ 6 F TEL. 092 ー 721 ー 5411 ) 大阪ブックス 5 駿々堂書店・阪急ファイプ (TEL. 06 ー 312 ー 3321 ) 39

7. SFマガジン 1984年6月号

かんべんしてくれたまえ」 「いや、とんでもない」 実際あまり騒ぎたい気分でもなかったのだ。 ジ 「そのかわりといってはなんだが、おもしろい人物を呼んであるん タ ン ア ラウル氏に促されて一角の席に着こうとすると、向かい側に既に ク 人がすわっているのが見えた。その人物は立ちあがり、・ほくの方に 手をさしのべた。 ロ 「ロニ・マーシェンカです。はじめまして」 ・ほくは仰天した。 ろ ひ 彼は、そして・ほくが正気をとり戻すまで約十秒間握手を待ってい てくれた。マーシェンカの手は、細い骨ばった手だったが、実にソ フトな握り方をした。 「ーシ = ンカはダーク・グレーのスーツを着て、黒 0 。ほいタイを舞 していた。この服装は彼のスリムな体型に驚くほど似合っていた。 「先日の舞台、いらしてたそうですね」 の マーシェンカは、・ほくが席につくと、 いくぶん恥じらい気味に言境 異 る す ・ほくは憤然とラウル氏の方を向く。 「ラウルさん、お知り合いだったんですか ? 」 「もう長年のつきあいだよ。もっとも友人なのは座長のカロで、ロ ニとはあまり親しく話したことはなかったな。おまえさん、そのう ちに宇宙一のスターになっちまったからな」 「からかわないでくださいよ」 「レン、わたしはね、こいつがこんな子トカゲだったころから知っ ているんだよ」 台 大魔界 田中文雄 竜神戦士ハンニバル氷神女王アーシュラ幻神惑星ナーガ 定価 500 円 定価 380 円 定価 420 円 物を毳ル朝第レ ハヤカワ文庫 JA

8. SFマガジン 1984年6月号

「役者に知り合いはおらん。しかし、出演するエレンデルラ劇場の ことわっておくけど、・ほくは決して″マーシェンカ・フリーク / なんかじゃなかった。それどころか、・ほくはマ 1 シ = ンカ一座の存支配人とは親しい。連絡すればどうにかしてくれるでしよう 「しかし、公演先はどこも一年も前から札止めらしいじゃないです 在を知らなかったのだ。 もちろん、いくつかの公演で、ギャルたちが群らがっていたのか」 は、目の片隅で見ていた。でも、そういうものからは無意識のうち「心配はいらんよ。どうにかなるさ」 ラウル氏は、つまらぬことというように軽くせきこみながら、葉 に遠ざかろうとしていたのかもしれない。 ・ほくがマ 1 シ = ンカと会ったのは偶然だと思う。でもそれは、雨巻に火をつけた。 ・ほくはこの星、メネムシアに来てからというもの、マーシェンカ 水が川と出会うような偶然だったかもしれない。支流から、あるい 一座のにふりまわされていた。マーシェンカ、マーシ = ンカー は道や屋根の上から排水溝を伝って、一本の川に出会う。その川 たかが旅芸人の一座に人々がな・せこうも興味を示すのかっ・ は、・ほくが大いなる水のサイクルに生きていることを教えてくれた 「ほくだけのためにお誘いくださるのなら、ご遠慮申し上げますが のだ。 川は蛇行しながら、遙かなる海を目指す。水がどうして蛇行し、 「なになに、わしも孫たちが騒ぐロニ・マーシ = ンカを一度見てみ くねりながら流れてゆくのか、人間には残念ながらわからない。マ 1 シ = ンカ流に言うなら、この川そのもの , ーー水一滴、一滴のやむたいでな。それに、わしが行こうと行くまいと、支配人は切符を送 ってくるんじゃよ」 にやまれぬ就跡こそがーー物語なのだ。 ロニ・マーシェンカは一匹のトカゲだ。しかし、その中にはとう「こちらでは凄い人気のようですね ? 」 「こちらでは ? 地球じや人気がないかね。前売券の奪いあいなん とうたる大河が流れていた。 ぞはひどいもんさ。もっともこうも熱狂的なのは、都市部だけかも しれんが」 「そうだ、あなたにいい物を見せてあげよう」 ・ほくはいささか恥ずかしさを覚えながら聞いた。「ところで、マ ラウル氏の話がまた脱線した。もう商談なんかそっちのけだ。 ーシェンカって、どんな男なんです ? 」 「カロ・マーシェンカの一座が、今この星に来とるんだ。よかった ラウル氏は、ちょっと鼻の頭にしわを寄せた。「知らんのかね ? 」 ら、明日の晩あたり、みなで観に行きはせんですか ? 」 「残念ながら : : : 」・ほくは肩をすくめる。 「マーシェンカの一座ですって ? 」 「ふむ。まあ、そう言われてみると、ここの人気の方が少々異常か ・ほくはいっぺんで眠気がふっとんだ。 もしれん。 「マーシェンカをご存じなんですか ? 」 マ 1 シ = ンカは一家で作られた旅の劇団で : : : その ラウル氏は、葉巻を指で軽くはじいて、ふんと鼻を鳴らした。

9. SFマガジン 1984年6月号

「戦争バンザイ」 橋本冬樹 もしもし、大黒屋です。これはどうも。ハ・ハ ってまわりにおった者も全員そうですわ。一よろしいのに一人前に欲にくらんで。ほんま キッギ中佐、いつも御贔屓にしてもうてあり個中隊全減ですで。そうです、まだ白米食べにしようがないですわ。わかってるがな、う がとうございます。 = ケケ弁当を三三人前、白られたぐらいましですわ。大黒で = ケケ弁るさい子やね。いや、こっちの話しです。中 米ばっかりのが七人前、残りが白米とデダう当に米を混・せるのはつい最近で地球人がやっ佐も地球人には気い付けてくださいな。そし じを三対七で混ぜた奴ですか。五時間後に <t て来てからはじめたもんやから気い付かんたら五時間後に、どうも。わかってるいうて の一四四ポイントへ届けたらええんですね。 と、これから気い付けます。ところで、白米るやろう。電話が鳴ってるぐらい聞こえてる はいようわかりました。はい、えつ、この日 門ばっかりのを注文するところをみると地球人がな。中佐が長話しするんやから、ったく。 注文したエケケの二対八の混合のに白米が入がおるんでしよう。いやね、昨日の事やけもしもし、大黒屋です。もしもし、電話が遠 ってなかった。おかしいですね。大黒屋はこど、地球人だけの部隊から注文があって弁当 いんですけど。何ですか。やかましいてよう のトールイべで三二七代続いている弁当屋でを届けに行ったら、その部隊の者全員頭がお聞こえへん。戦闘中ですか、そらよろしいで す。そんなええ加減なことはせえしません。 かしなってましてな。いきなり射ってくるんすね。はいつ、タニナ弁当、違うんですか、 そんな事いわれたかて中佐、大黒屋はちゃんですわ。 いつもの通り旗をかかげああラリラン弁当を四七人前。違う、五七人 と責任持って : ・ いやちょっとまってくだて、スビーカーでまいどありがとうございま前、はいはい四一人前ですか。いつどこへも さい、ひょっとしたらその弁当届いてすぐ食す。大黒屋です。御注文の弁当を届けにまい って行けばいいんです。二時間後に N の七七 べはらへんだんと違いますか。食べてない。 りました。って怒鳴って、しかも識別信号まポイントへですか。もしもし、よう聞こえへ やつばりそうや。それはデダうじが白米を食で出してるのにみさかいなく攻撃してくるもんのですけど。もしもし、の八三ですか、 べてしもうたんですわ。うちのは生きのええんやからあたしも腹立ちましてな。せやけどもしもし。おかしいな。急に返事せえへんよ のを入れてますからな。そういうたらこの前お客さんやから手出したらあかん何とかやめうになって。傍で大きな爆発音がしたけど大 にエケケを頼んだお客さんが届いた弁当をほさせなと思って口から火を吐いたんです。丈夫かいな。もしもし、返事してください。 ったらかしといて、五日過って思い出して、そしたらあんた、それが一瞬にして燃え上がもしも、あっ、電話代わったんですか。今の ほっとそのふたを開けたらデダうじが親に変ってしまってすぐに全員炭化してしもたんで方はどこへ行ったんです。ああそうですか亡 わってましてな、知ってると思いますけどあすわ。ほんまに地球人っていうのは弱いですくなったんですか。全身に型の裂死弾を受 れは小さくても凶暴で、ものすごいあごをしな。トールイべの利権争いがはじまって六五けて戦死ですか。へええ、新型ですかそれ。 てるでしよう。それが集団で襲ってきたもん〇世紀、い ろんな星人を見てきましたけどあそれで注文の方は。はい。えっ何ですか、直 やからその人はほんの数秒、ほんまにあっとんなにもろいのははじめてや。気い狂うぐら撃を受けて全減やからもうええっていうんで いう間に骨になったそうです。あおりを喰ら いやったらはじめから戦争に混ざらへんだらすか。そんなあんた、ええ加減な事をいわん 0 入選作 0 田 6

10. SFマガジン 1984年6月号

空気が冷えきる前に母が言った。姉は一口食べて、母に同意す「まずいわね」 る。母が彩子にそうしろと目くばせでーーー・ほくにはその方法がよく「まずくはないよ」 わからないのだが、言葉以外の方法でーーそうしろと命じたのだ。 「何が言いたいの」 〈おまえの気持はわかるけど〉と母は彩子にいったにちがいない、 「母さんに教えてもらえよ。上手な弟の扱い方をいつも聞かせても 〈今夜の淳は新しい環境に入る前で、不安なのよ。逆らわないほうらっているだろう」 力いいわ〉 「気に入らないなら自分で焼きなさいよ。わたしはねーー」 「そうね」と彩子は言った。 「読んでみろ」・ほくはどなった。「読んでみろよ、・ほくの心が知り 「そうさ」と・ほくは答えた。 たければ読んでみるがいい。気持なんかロで説明できるものか」 「え ? なにが ? 」 彩子は目を母の方へやりかけた。 彩子は長いまっげをあげて、心を盗み読まれてしまった動揺をあ 「やめろ」と・ほくは言った。「・ほくは姉さんに言っているんだ。な らわすような眼を・ほくに向けた。眼の表面にすっとシャッターをおにが精神医だ。悔しかったら・ほくの心を精神衝撃波で焼きつくして ろすように、涙が眼球を覆う動きが見えた。それで姉が見せた動揺みる力しし : 、、。・ほくの目を見ろ、そして心を読め。姉さんにはできな は消えてしまう。 いよ。なにもできないんだ。まともなケーキだって焼くことができ 「甘すぎたわね、淳」 ないのさ」 感情のこもらない声で姉は言った。いつもと同じだ。姉は父や母彩子は顔をゆっくりと・ほくに向けた。いつにもまして無表情だっ のように、声におおげさな感情の抑揚をつけたことがない。それが こ。・ほくにはそれでも姉の心がわかる気がした。彩子は、激昻した 普通の人間なのだ。 ・ほくを見るのは初めてだったろう。弟にこんな激しい心があったな 「母さんがいつも正しいわけじゃないさ。ちょうどいい甘さだよ、 んて、と姉は驚いたにちがいなかった。 姉さん」 ・ほくはといえば、昻奮状態などは見せかけのもので、心は冷えて 「じゃあ、なにが不満なの」 いた。自分自身の吐いた言葉に熱くなり、感情が昻まるのを待つ、 姉はぼくの仕掛けた罠にひっかかって、もう母の言うなりの姉で・ほくの怒りはいつもそうしたものだった。ぼくの怒りは一種の快楽 はなくなっている。 で、その昻まる様子は性感がやがて絶頂に向けて上昇してゆく曲線 「さあな」 に似ていた。・ほくにとって怒りは最高の快感といってもいし ・ほくの唇には、たぶん笑みが浮かんでいただろう。 「おやめ、淳」 「はっきり言いなさいよ」 母は強くぼくをたしなめた。母はぼくの性質をよく知っているの 「少し甘いかな」 2