古アルコン人もそういう気持だったでしような」 もまた可能。他の種族が強力になって人類が消えてしまうわけで 「いや、かれらの感情は別のものだったのではないでしようか」ロす。ここがそうかもしれない」 1 ダンはそっけなく答えた。「われわれには、石器人を併合する気・フリーはかぶりを振り、 などありません。わたしの関心事はただひとつ。われわれ全員にと「でも、ティフが人間を発見したのですよ。それが証明 : ・ : ・」 って重要なことです。つまり、この第三惑星の住民は他からの干渉「何も証明はされていませんなーーー人間が発生したということだけ なしで自分の世界で進化してきたのか、それとも、遭難した宇宙飛で。しかし、それが石器時代にいると聞いている。第三惑星でのそ 行種族の子孫なのか、そこが知りたい」 の敵が強すぎ、人類の進化を認容できないのではありますまいか。 それまで自分のカウチでひっそりしていたプリーが、いきなり立ま、いずれわかることです」 ちあがって、 プリーは不満そうだったが、 「なんでそんなことを考えついたんです ? 」赤い剛髪がさかだち、 「ま、わかるでしようや」 頭全体が・フラシみたいに見える。「まさか、われわれが遭難した宙短いシグナルがあってスクリーンが明るくなった。ティフが紙片 航士の子孫だなんて : : : 」 をもって読みあげる。 「そう思える点がいくつかある。違うかね ? 」ローダンはほほえみ「ペータ・アリ = ティスの直径は百四十万キロメートル。第四惑星 ながらも、目はペータ・アリエティスからはなさない。 「それはわまでの距離は二億一一千万キロメートル。第三惑星へは一億五千万キ れわれが例外ということもありうるーー・ダーウインが正しいという ロメートル。両惑星のデータは火星と地球に驚くほど類似。恒星も ことでな。ま、アルコンのポジトロン・カード がいっか答えを出し ソルとほ・ほ同じ大きさ。第四惑星は火星なみの、第三惑星は地球な てくれるだろう」 みの生活条件をもっ」 ーがクレストをちらと見た。アルコン人クレストはそのやり 「めずらしい偶然だな」ローダンがいった。「なお正確なデータを とりを黙って聞いていた。目をしっと無限の空間にむけて。どちら よこしてくれ いや、こっちから行こう。着陸はわたしがうけも がより深い淵だろう かれの目か、宇宙空間か ? つ。ご苦労だった、ティフ」と、スイッチを切り、ゆっくりとクレ 「どう思います、クレスト ? 」・フリーがアルコン人の瞑想を破「ストと・フリーにむきなお 0 た。「どうもわが太陽系とは双子の関係 た。「可能ですかね、自然が同じ生物をふたっ生じさせるなんて ? らしい。ここでの進化が別様だったら、かえって不思議だ。一万年 自然淘汰の法則から人間はいつも唯一の知性体として残ってきたわ後に来たら、おそらくわれわれ自身に出会っていたろうな」 けだけど」 フ丿ーはそういうローダンをじっと見たが、なにもいわなかっ クレストが・フリーを見た。 「可能ですなーーーしかし、別の星で自然法則が別の決定を下すこと クレストは謎のような徴笑。 こ 0 4
早く休む。司令室ではティフが最初の当直にあたる。真夜中にグ「これですべてだ。地下につづいてはいない。てつきりこれも遠隔 ッキーと交替。その次はローダン。 操作でどこかから制御されていると思ったのだが。しかし、なんで恥 夜はこともなく過ぎた。 こんなところにあるのか ? 」 翌朝、太陽はうららかに昇り、前日と同じ場所にあるドームを照ティフは銃を肩にもどした。その表情に驚きがやどる。 らした。動きはない。なにかの姿も見えない。 「わかりません。この種族の文明のすべてが遠隔操作のミニ・ロケ ・ : そんなはずはない」 ローダンはティフに大型光線銃をもたせ、ふたりで《ガゼル》 を出た。プリ ーが司令室に残り、スクリーンで友たちの行動を追ローダンは答えなかった。艇からハガード博士が何かどなってい う。右手を砲のコントロールにおいて。マ 1 シャルとグッキーは異る。ローダンにその内容はわからなかったが、身振りだけで充分だ 種思考インパクトを探ったが、成果はなかった。 ドームの前でローダンは足をとめた。輝くその表面とその細い継「《ガゼル》にもどれといってる」と、ティフに叫び、いま一度、 目をじっと検分する。眉のあいだに深いしわが刻まれた。かぶりを砂に横たわるふしぎな金属の蓋のようなものを見やった。「なにか 振り、ティフに合図。 あったらしい」 「焼き切ろう ほかに接触の方法はない。むこうから出てきてく ・フリーがクレストとならんでハッチのところにあらわれる。 れなければ」 「急いでくださいー お客ですわ ! おかしなやつが十体あまり、 丘から攻めてきます ! 今度は武器をもって ! 」 このドームの住人となんとしても連絡をとろうと心をきめてい ローダンは全員が艇にはいるのを待って、自分も乗りこんだ。背 ローダンはこのドームが地下深くにある居住施設の上の部分だと後にハッチをしめ、司令室に急ぐ。スクリーンというスクリーンは つき、あたりをまざまざとうっし出していた。 信じて疑わなかった。観測室と出入口をかねるものかもしれない。 観測目的に使う小型ロケットがいきなり出現したこともそれで説明身長二メートルはたつぶりあるやつが十体、すごいス・ヒードで近 できる。 よってくる。手に手に重い棍棒をふりかざして。口があいたりとじ ティフは銃をドームの縁にむけ、おや指を発射ボタンにあてがっ たりしているのに、外側マイクからは何も音声はったわってこな た。押そうとしたとき、意外にもローダンにとめられた。 「待て、ティフ ! 」と、ローダンは腰がかがめ、指で砂を掘った。 ローダンがまたも眉根をよせた。 すると驚いたことに、なんの抵抗もなかった。 「妙だ。どこからあんな棍棒を ? ペータⅣにそれほど大きな樹は ドームは地表下一センチでおしまいだったのである。 ない。それに、な・せ叫びが聞こえない ? グッキー、思考イン。ハル ロ 1 ダンは立った。じっとティフを眺め、
ロ 1 ダンは・フリーをちらりと見やってからティフにいっこ。 い、なんなのだ。やつらは ? 」 イ】ルドのあいだにハイバ ーカム送信 「アルコン反応炉と反重力フ ローダンは答えず、クレストを見る。アルコン人は肩をすくめ、 長い白髪をな・せ、スクリーンのほうになんとなく手を振った。 機をおいてくれないか、ティフ。そのうえで、強化された重力フィ ールドでやってみよう。それだけの変化をあたえれば、フィールド 「とにかくおかしなものでありますな。たしかなのは、あれが・フリ ーの想像の産物であること。そして、物質であること。でなかったは三次元だけでなく、四次元、五次元的効果をもつ。ゾンビーども ら、グッキーのテレキネシスは効かなかったでしようから。そうしに意外な効果をかならずや及・ほすはずだ」 ティフが仕事にかかるうち、ローダンは質問攻めにあったが、か てさらに、物質ではないこと。物質だったら、われわれのインパル ス砲で消減したはず。おわかりでしようが、しかるべき説明を見いぶりを振ってにつこりするだけであった。 だすのは至難の業のようであります。ま、定義してみるなら、それ「自分でも完全にはわからないのだ。説明なそできないさ。想像に は物質から成るが、一部は別次元にいるということでしようか」 すぎないことだ。投影だと思ったがそうでないことがわかった。と 「それなら見えないでしよう」ハガードが抗議した。 いって、ふつうの物質でもない。その中間なのだな。物質になった クレストはほほえんだだけ。スクリーン上のできごとに注意をむ投影。われわれの次元に存在するだけでない。それを消すために ける。例の十体は《ガゼル》のところに来て、棍棒を振りまわしは、ほかの次元にも影響をあたえなくてはならない。それをいまや ーカム送信機を利用 ながらそのまわりを踊っている。一「三体が近より、その原始的なろうというのだ。五次元空間で作動するハイバ 武器で艇の外被をぶんなぐりはじめた。艇内ににぶい音がひびきわしてね。よし、じき判明するそ。この理論が実地面で証明されるか たる。 どうか」 「くそ、イワシの缶づめにこぶができちゃう ! 」プリーが・ほゃい ティフが司令室にもどり、命令どおりにしましたと報告。その顔 た。その声には不安がこもっていた。「なぜすぐ逃げないんです ? は不信をあらわしている。クレストは発言をひかえ、ハガードはた やつらだって飛ぶのは無理でしようが」 のしみなようだった。・フリーは中立ときめたらしい。友好的中立と グッキーはにたにた。一本于をのそかせている。 わーしし、刀ーし、刀 「謎を解かずにかね ? 」ローダンは非難をほのめかした。「あれは ゾンビーといってもいし 。その正体を科学的に解明できなくても、 ロ 1 ダンはずらりとならんだスクリーンに最後の一警をくれた。 せめて排除の方法ぐらい知りたい。それで一歩前進できるかもしれ奇妙な人間どもはまだ艇のまわりで踊っている。なんとかはいろ ない」 うと試みているが、それはだめ。棍棒でアルコニット鋼の外被をぶ 「排除ですって ? どうやって ? エネルギー・ビームでもだめだんなぐるだけ。 ったんですよ。傷すらつけられない 「いまにわかるぞ」ローダンは疑惑と希望をまとめた。「その結果 9 それはグッキーが証明した じゃないですか。どうやってやるんです ? 」 こちらの知識がふえるかどうかは別の問題だが」
「 ( ゲタカですよ」とレジナルド・ブルは言った。「そこの上、見だ生きていることを、二人は知っていた。さっき動いているのが見 たでしよ。待っているんですな」 えたのだ。アコン人はまだ三人生き残っている。 彼は唇をなめた。唇はひからび割れていたので、そのくらいでは 「三対二か」とローダンはつぶやく。思いを巡らしながら、彼は水 なんの足しにもならなかった。 筒を再びベルトに固定した。 「死ぬまでずっと待っているんでしようよ」とプルは予想した。そ「われわれを殺すつもりです・せ」とレジナルド・・フル。あたりの砂 のときハゲタカが一声鳴いた。 のように赤く、短い髪をこすって、「彼らは殺意を持っています。 リノ 1 ー・ ローダンは腰につけていた水筒を・フルに渡した。中の水アコン人が殺さなかったとしても、この土地にやられてしまいます は吐き気を催すほどぬるくて変質しきっていたが、水には違いなかよ。われわれはもう終りなんです。わかっているでしよ」 っこ 0 「また言ったな」とローダンはやさしく言った。「同じことをきの 「きみが正しいのかもしれん」ローダンは言った。彼の声もおかしうも言った。だがきみはまだ生きているではないか」 「誰かを待っているのはたしかだが、それがわたしときみだと「しかしね、ティフは」と・フルは話そうと振り返った。影の中にい いうのは正しくないぞ。たとえそうであっても、われわれをえさにても、二人の立っている砂は耐えがたいほど熱い 「ティフは死に はできまい」 ました。司令官も、二人のアコン人も。乗組員は言うまでもない」 ・フルは水筒から水をちびりちびり飲んだ。割り当てられた水はす彼は頭を振った。遠くで金属がきらめいた。破壊された直径百メ でに一時間前に飲みつくしていて、のどを通る水はローダンの分 1 トルの宇宙船の残骸のうち、無傷で燃えなかったわずかな部分 だ。生き延びるために、彼だけではなく、ロ ] ダンも必要としてい が、太陽の光を反射して、まぶしいばかりだった。 るものだとは知っている。 「ロー・グンになんか飛ぶべきじゃなかったんですよ」とブルは不 二人は大岩塊の影を見やった。岩壁の色と同じ赤い砂におちるそ平をもらした。「この惑星はどこかおかしいと言ったのに」 の影は真黒だった。太陽光線が地面に強烈に降りそそいでいる証拠「そのとおり」とローダソは認めた。彼は峡谷の向こうにいるアコ である。 ン人を捜した。彼らは三人いるはずだ。きのうは四人いたが、その 「ティフもすでに餌食になっていますよ」とブルはつぶやいた。飲うちの一人が傷つき死んだことを確認していた。それでもあと三人 み干さずに水筒のふたを締めてローダンに返した。もっと飲みたい いる。アコン人がどうしてこれほど長く生き続けているか不思議 気持をおさえるのにどんなに苦労したろうか。 だ。アコン宇宙船は大地に激突したまま放置されていた。 「異星人たちも」とローダンは言い添えた。そしてちらっと横を向「今や、ハゲタカが歓迎しとります」とレジナルド・・フルは言っ き、遠くを睨みつけた。 た。「ここにハゲタカがいるのは奇妙だ。他に生物などいないの幻 峡谷の反対側に生命の徴候は感じられなかった。しかし彼らがまに」 ペ
「《ガゼル }•-* 》の内部はせまいからですわ。グッキーは小柄だし、 「立ち聞きしたな ! 」ローダンがきびしくさえぎった。「なんた 三つの超能力を一身にそなえている。テレバスでテレポーターでテる ! 禁令は知「ているだろう、会議にあた 0 ては = ・ : ・」 レキネスで」 「偶然だったんですよう」グッキーはあやまって、一本牙をひっこ 「なるほどな」 1 ダンは納得した。「しかし、本人に聞いてみなめた。まじめにな 0 ているしるし。「ほくの思考がね。そこらをう くては。その気があるかどうか : ・ : ・」 ろうろしてて、この部屋にはいっちゃったわけ。そしたらちょうど ・フリーが何かいう前に、奇妙なことが生じた。部屋のまんなかで・フリ ーが・ほくの名を口にしてるのを聞いた。それだけです」 空気がゆらぎはじめたのである。大型のヒーターにスイ ' チを入れ「ふむ」と、 0 ーダンは顔をしかめた。しかし、ロの端がびくびく たみたいだ 0 た。あたためられた空気が天井に昇るのが見えるかのしているのは、本気で怒 0 ているのではない証拠。「ほかならぬ・フ ようであった。そこに実体化した姿は、はじめは厚いガラス戸のむ 丿 1 の推薦だから、拒絶はしたくない。今後とも忘れないように。 こうにいるみたいだ 0 たが、すぐには「きりし、ついには現実そのきみが同行できるのは・フリーのおかげだということを」 ものとなって部屋に立った。 「忘れません」ネズミ ー・、 1 はぎようぎようしく約東した。 すっくと立っという感じとはちょっと違うが。 「今後・ほくを怒らせることがあっても、天井に宙づりにする時間を グッキーは人間ではない。大ネズミとビー ・ ( ーがうまくまじりあ五分だけへらします」 ったというところ。一メートルのからだは錆茶色の毛皮におおわれ この不釣り合いなふたりよ中・、 をイカいいくせによく喧嘩するのだ。そ ている。大きな耳がびんと垂直に立ち、いつでも何かをうかがってれはいつも・フリー の負けで終わる。ネズミ ーのテレキネシ いるようだ。 スにはかなうはずがないのだから。 きらきらする褐色の目はつぶらでやさしい。とがった鼻のあたり ブリーが何かいう ~ 間にローダン : にたいてい一本牙が輝いている。にやりとするといつも出るのだ。 「ティフラー少尉、明朝、現地時間で十時に宇宙空港でわれわれを 後足で立っときには、幅のひろい尾がつつかえ棒になる。 待っていてほしい。これ以上相談はしないぞ。きみの乗員は交替さ このグッキーをローダンは死にゆく太陽の惑星から連れてきたのせたか ? 」 だ。そこには生まれつきのテレキネス種族が住んでいたのである。 「発進準備はととのっております、サー」 ミ = ータント部隊の重要メン・ ( ーとしてグッキーは、第三勢力の指 ローダンはうなずいて、 導者に深い友情をお・ほえている。 「よろしい、ティフ」軍規をはずれた親称を使ったのは、本来の会 そのつぶらな目を・フリーにむけて、 議はこれで終わったという意味だ。「では、見たことを話してもら 「ありがと、・フリー、提案してもら「て。もちろん承知さ。い「しおうか、きみがペータ・アリ = ティスⅢの上空を通過したときに = ょに行くよ。ついにまた : : : 」 っ ~
ってもなんらおかしくはない。それとコンタクトをつけねばなりま すまい」 4 「どうやって ? 」 ローダンはそれを聞いてほほえんだ。 ガゼルの司令室。 ティフは食事の残りをかたづけ、照明をつけた。外は暗くな「て「知的生物と 0 ンタクトをつけるのはね、原始人にこ 0 ちの平和的 いる。ここではたそがれというのはない。小さな太陽はあっという意図を納得させるより簡単ですよ。いまごろかれらは、われわれが どこに降りたかを知っている。あすにも訪ねてくるでしような 間に沈み、外気はすぐに冷える。気温は氷点以下だった。 また、飛ぶテレビカメラだけかもしれないが。われわれ、連中とテ だが、司令室は明るく、あたたかい。 レビで対話もできるわけです」 「つまりだ、ここには知的生物がいるに違いない」ローダンがまと は半信半疑。 「ふむ」・フリー め、視線をマーシャルからグッキーに移した。グッキーはいつもの ローダンがそっちを見て、「もっといい考えがあるかね ? 」 ようにカウチの上の壁にもたれている。「それが遠隔操作のテレビ 「いや」・フリーの頭が横に振られた。 カメラをもっていることはわかっている。長さ一メ 1 トルだった カウチでグッキーが不遠慮にくすくすやる。・フリーになんの案も が、われわれを避けたからなーーわれわれには気がついたしるし ないことをローダンにすぐいってやれたのだ、その気になれば。 だ。クレストとマーシャルも飛行中、同種の物体を目撃した。が、 ローダンはため息をついた。 マーシャルは思考インパルスをキャッチできなかった。ここからも 遠隔操作物体だということがわかる。グッキーもイン。 ( ルスをうけ「それでも何かやってもらわなくてはならんな。あす、 ( ガード博 ていない。知性体はうんと遠くにいるか、シールドされているかだ 士とペータⅣを一周してくれ。 よ たとえば厚い土の層で」 グライダーは高速。一日に二万キロメートルは飛べる。この星に 「地下にいるとお思いですか」 「というと」と、クレスト。 都市や工場のようなものがあるかどうか、知らなくてはならん。低 「飛行中、ここに知性体が住む徴候をわずかなりと発見しましたか空を飛べよ。《ガゼル》と常時無線連絡を保て。電離層は強い な、クレストっ・ 短波を反射してくれる」 ・フリーは席を立ち、ハガードに合図した : アルコン人はかぶりを振った。 「あすは忙しくなるそ。ええ、わたしが寝ることに反対のかたは 「いや、たしかにおっしやるとおり。つまり、この星系には有人の 惑星がふたつある ? 異常ですな、ひじように」 だれもいなかった。徹夜する気の者はひとりもない。 「どうしてです ? ペ 1 タ虹にはティフの観察によると石器時代の 人間がいる。ペータⅣはもっと古い星です。ここに進んだ文明があ 9- 3
いいながら・フラルはクソーにはげましの視線をケットが降りたのだ。惑星間飛行を終えて。正直のところ、わから 「ありがとう」そう この出来事をどう説明したらいいのか : : : 」 送り、疑いにみちみちて自室にもどった。 あすにもクソーを訪れ、まだ聞かされていないようなら、アルサ 「ま、待ちましよう」・フリーは・ハラライザーを安全装置をはすして の脱走のことをつたえようと思う。 ・ヘルトにさした。「たのしみですよ、新鮮な空気が吸えるのが」 「地球のに似た空気ですな」クレトスが計器を読んだ。「気温十八 6 「ちょっと ! 」ハガード博士がそれを中断した。さっきからスクリ ーンをにらんでいたのである。「いますぜ ! 」 第三惑星を一巡したとき、ローダンは、ここには真の知性生物が ローダンと・フリーが振りかえった。地表に降りたつつもりだった いないと確信をもった。三つの大陸は大海にかこまれ、海には一つ の船影もない。見渡すかぎりの原生林は各所に山、高原を配し、動ことをいっとき忘れる。スクリーンにはおもしろいものが見えたの 物、植物相を好奇の目からかくしている。森には大河が流れているだ。 が、その岸にも人間の集落らしきものは見られない。 「でしよう ? 」ティフは誇らしげだった。「わたしのいったとおり ティフラー少尉は探知機から顔をあげ、 「真下に微弱を放射能が探知されます、サー。着陸したロケットの 答える者はいない。 この前、少尉がべータ・アリエティスを訪 ものと思われます」 、、いながらローダンは・フリーにうなずいた。「ではしたとき目にしたものを、いまだれもが見ているのだ。森のほとり 「そうか」と にかれらはいた。毛皮をまとった男たち。半裸。ひろい胸幅。手に このあたりに降りよう。森の端がいいのではないか」 ゆっくりと《ガゼルエ》は高度をさげ、三本の着陸脚を出し、し重そうな棍棒、長い槍、弦のゆるい弓。それがじっと艇のほうを見 ずかに接地した。脚はやわらかな地面に一メートルほどめりこむ。 ている。その態度にはなにかを期待するものがあった。しかし、恐 司令室のスクリーンはすべてついていたが、怪しい動きはない。 れいったふうがないのは不思議である。 ローダンはしばらく待ってから・フリーに合図した。 そして、かれらは棍棒を振りかざし《ガゼル》に突進してきた。 「ペータ虹を拝見しようではないか。われわれを・ヘータⅣで訪ねて「おや、攻撃か」・フリーがにやりとした。「棍棒でね。・ヘリー そう思いませ きた者が森のどこかにいるはずだ。しかし、おかしいな。な・せ文明ういう行動は、宇宙航行種族にはふさわしくない の跡がないのか ? 惑星には都市ひとつ、宇宙空港ひとつない。獣んかい ? 」 をいくつか見かけただけ。ティフが煙を目にしたといってるが、錯ローダンは黙っている。その目がせばまり、じっと考えこむ顔つ 覚かもしれぬ。それにしても、ここにはきのうかきよう、三台のロきになった。何かおかしいことは・フリーに指摘されるまでもない。 8 7
ティフに合図する。若い少尉はうなずきかえし、管制盤になかっ原住民ではありませんな。われわれと同じ訪問者でしよう。隣りの た。いくつかのボタンを押し、いくつかのレ。 ( ーを倒す。鈍い音が星から来たのかどうかは不明ですが、・〈ータ虹の状況を見なければ 9 艇体をふるわせた。そこでハンドルを右へ。音は高くなる。そしてなんともいえない。よろしい、ここにあと数日いましよう。近くの またひとつのレ・ハーを : ・ 山脈をしらべてみますか」 ローダンたちはスクリーンを凝視した。まだ十体のゾンビーは見「なぜです ? 」と、・フリ 「ここを発した小型ロケット二台がそこらに降りたからさ。ティフ える。いまやローダンはそれが言葉の真の意味でのゾン・ヒーではな いと確信していた。・フリーがもう少しましな趣味をもっていればよの探知機がとらえた」 かったのだーーもっとも・フリーがこの存在の生みの親であるとしたそして翌日のために当直をきめた。 場合だが。 正午ごろハガード博士と・フリーが低い山並に歩いていった。二キ ロメートルしかはなれていない。 そして、すべては消えさったのである。あっという間に。 《ガゼルエ》のまわりははききよめたようになった。ただ、寄妙な ローダンが一時間後にグライダーで来て、捜索範囲をひろげるは 足跡だけは残っている。 ず。だが、何を捜すのか、だれにもよくはわガっていない。 そのことはローダンにもだれにも説明がっかなかった。論理にも草があらわれはじめる。地面の湿気がふえたしるしだ。ところど もとることである。 ころに苔や曲がりくねった小さな灌木。その葉はおかしなかたちを プリーはため息をもらし、 している。塊茎が水タンクの役をしているらしい 「この次にはもっとハンサムなべータ星人を想像しよう。チャンス とあるせまい谷の入口がふたりの注意をひいた。幅は十メートル があったら。しかし、だれだろうな、こんないたずらをしかけたのもない。両側の壁はかなり勾配がきついが、高さは二十メートル未 満。上はまた平地である。 ローダンは砂につけられた足跡をまだ眺めていた。 Ⅱを指さし 「グランド・キャニョンのミニ版たな」と、・フリー 「謎の回答はペータ虹にあるのかもしれない」ひとり言のようにい た。山並から流れてきて、砂漠の縁で地下に消えている。「もった った。「ペータⅣはやはり無人のようだ いろいろなことがあっ いないね、貴重な水なのに。計画的に灌漑工事したら、すばらしい たが。理由はわからないものの、そう思える」 ところになるだろうに」 「直観ですか ? 」クレストがほほえんだ。「わたしも同感。しか「谷を見てみよう」ハガードはかがみ、苔の一種を観察した。「火 し、べータ証へ飛ぶのはもう少し待ったほうがよろしいな。二、 一一一星みたいだ。共通点が多い」 日。さよう、ここにわれわれしかいないと判明してから」 「火星にや五次元のお化けはいないがね」そういいながらプリー 「われわれだけではない」ローダンが答える。「しかし、この星のは、医師が苔をいくつか採り、持参の袋におさめるのを興味ぶかく
星座は少々ゆがみ、ずれる。が、変化はそれだけ。大変化を招く には三光年では足りない。艇尾方向の黄色い小さな星が・フリーの注 ほかの宇宙艦とは違いガゼルは円盤型。中央部の厚さは十八メー トル。直径はびったり三十メートル。つまり比較的小型だが、エン意をひいた。 ジン室は小さくてすなので、乗員、乗客のための余裕はたつぶりあ「あーーわれわれの太陽 ! 三年前の姿だな ! 」 る。アルコン型反応炉はエンジンだけでなく、空調装置、搭載兵器 ローダンは振りかえらない。前方をじっとにらんだまま。ドーム のためにもエネルギーを供給する。 の十字マークの交点に小さな点が光っている。 「べータ・アリエティスだ」ローダンはしずかにいった。「あとた そのハイバー ・エンジンは五次元を通過してのジャンブを可能に する。たった一秒で最高三光年までこなせるのだ。航法脳で位置をつた四十九光年 : : : 」 確認、コースを計算して、半時間後にはつぎのジャンゾができる。 地球が青緑色のポールとなって無限の漆黒空間に小さくなるこ十八度めのジャン。フは二光年ちょうどだった。 ろ、ローダン、・フリー 冫いた。円盤の上部 クレストは観測ドームこ のたいらなふくらみで、壁は透明。通常飛行のあいだはここからの実体にもどったとき、見慣れた星座はまるでなか「た。その理由 眺めがすばらしい。そこから肉眼では見えないガゼルの下の空間のは星座がひどくゆがんだということより、地球から肉眼では見えな 様子はスクリーンでわかる。 い多くの星があらわれたためだろう。 月は遠くなり、ガゼルはすごい加速ぶりで光速に近づきつつ、太飛行方向には黄色つばい恒星がぎらぎら燃えている。 陽系から出ていく。 「べ 1 タ・アリエティス : : ・」またローダンがいった。すでにかれ そして第一次遷移。 はいろいろの恒星を見てきたが、その大半は生物のいない惑星を照 短い命令があって、数分の一秒のあいだ、ふつうの意味では存在らしているだけだった。しかし、そういう感傷は数秒しかつづかな しない状態がそこに現出した。それを意識して体験した者はいない 観測ドームと司令室をつなぐインターカムにぐいとスイッチを 「前面の星系についてのきみ のである。この短い時間のあいだ、船と人は第五次元にあるのだいれた。そこにあらわれたティフに、 が、そこでは空間と時間は抽象概念にすぎず、重要ではない。その自身の計算を検討し、データをまわしてくれ。減速しつつ接近。当 あいだに現実にどれだけの時間が経過したのかはわからないが、と面の目標は第四惑星」 にかくガゼルの時計は一秒をも記録していない。通常次元ではそれティフはうなずいて消える。スクリーンは暗くなった。 だけしか経過していないということだ。そのあいだに三光年を実際クレストは豊かな白髪をなでつつ、 に飛んだのである。 「知っておいでかな、ペリー いま大いなる使命をはたしつつある かれらとともに宇宙も実体化する。 ことを ? 有人惑星を発見し、帝国に組みいれようと考えたときの
てきたではないか。 ローダンはしやがんで、ひらたい石をひっくりかえしてみた。澄 まずローダンが草のちょろちょろ生えた地面に跳びおりた。重力んだ水はガラスのよう。細かい砂を流していく。だが、いくらロ はよっぱど小さい。地球の三分の一ぐらい。重い毛皮服もおかげでダソが目を凝らしても、石の下に魚やカタッムリのいた気配はなか 空飛ぶ円盤″の三本の着陸脚は地中深くうまってった。澄んだ水は生命とは無縁かーー、少なくともそう見えた。精密 苦にならない。″ いる。かれらの頭上二十メートルに観測ドームが輝いていた。そのな検査はこれからだが。 ずっと前にティフの顔が司令室の窓の奥に見えた。それがうなずき からだを起こしたローダンは連れの不自然な沈黙に気がついた。 かける。 それまでほとんどひっきりなしにしゃべっていた二人なのに。振り 谷は幅二キロメートル、長さ五、六キロメートル。一方は低い山かえってプリーに声をかけようとしたが、その声が出なかった。・フ 丿ーの大きくみひらかれた目を正面からのそく。・フリーの目はなな 並につらなり、他方は地平線までの平原。左右は背の低い樹や藪を ちりばめたなだらかな斜面。その頂きは谷の底から二百メートルもめ上方の青空にむけられていた。そこに幽霊を見るかのように。赤 い髪は逆だち、極度の興奮を示している。みひらかれた目から不信 「きれいなとこだな」と、・フリーはかがんで草をしらべた。「地球がほとばしっていた。 とよく似てる」 ローダンはさっと視線をハガード博士に移した。医師も・フリーそ つくりだった。やはり空を見上げている。目を皿のようにして。 「それでも五十光年以上はなれた地球の進化とは無関係で発生した のでしような」ハガード がいった。「少なくとも昆虫のような生物ためらいつつローダンはふたりの視線を追った。 はいるはずです。どんな場合もそれがいちばん早くあらわれる」 かれが見たものは、まさに驚きに価いした。 ローダンは話に加わらない。火星に来たような気分だった。生活谷底の上五十メートルあたりに、金属光沢の細長い物体がうか 条件が同じなのだ。火星でも動物は発見できなかった。ここにいるび、ゆっくりと山並をめざしているではないか。全長は一メートル はずがあるか ? ローダンは青緑色の空を見あげた。地球の空より たらずか。太さは二十五センチメートルほど。前端は砲弾のように 日、 0 まるくなっている。尾部からは青白い炎が噴射され、物体を押しす ・ヘ 1 タ・アリエティスも、地球でみる太陽よりは小さい。 すめていた。 ペータⅣと火星の差は、前者には月がないという天文学的事実だ ローダンの混乱もふたりと似たりよったりだった。 けだなーーそうローダンは考えた。 手首の小型無線機のシグナルではっとわれにかえる。ティフから 日床につく。砂浜でちょっと休みたくなる。ハガードはもってき・こった。 た瓶に水のサン・フルを詰める。あとで調べてみよう。微生物が見つ「飛行物体を目撃しました、サー ガゼルの上空を山のほうへ通 かるかもしれない。 過。いまごろそちらの頭上だと思います」