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検索対象: SFマガジン 1984年7月臨時増刊号
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1. SFマガジン 1984年7月臨時増刊号

てくれ ! 幽霊なんだ ! 」 や疑いはなかった。 「ーシャルはためら「た。なんというべきか ? 真実をつげる「わたしも同感です、これ以上ここにいても仕方ない」そうクレス 5 トがいったとたん、後ろでだれかが《ガゼル》から砂地に跳びお 「落ちつくんだ、フランク」と、ささやく。「フリーのべータ星人りた。・フリーがかえりみる。きようの夕食当番のティフかなと思「 のことはお・ほえてるな。これも似たようなもの。失神する前に婚約て。 者のことを考えたんじゃないのか ? 」 が、目にしたものはあまりにショッキングだった。・フリーの肺か , カトが身を起こした。その視線がジ ' アンをはなれ、テー・フら空気が鋭い音とともに抜け、目は皿のようにな 0 たので、つづい て跳びおりた ( ガードのほうがぎよっとなった。 「アリが ! 」研究対象のことを思いだした。「いないー 「興奮しないでください ! 」ローダンとクレストにそれが見える前 った ? まだ遠くには : ・ : ・」 に ( ガードは用心していった。「いや、わが未知の友の新しいいた 「見つかるよ」マーシャルがなだめる。「見つからなくても、別のずらなんです。ゾリー、 自分の幽霊を見た人間みたいな顔はやめ を捜す」 「逃げられた ! 」 ( ガードは活発にな「た。失神の原因を思いだし「女が ! 」まだ・フリーは息が切れている。「あの連中、地球の女性 たらしく、ゆ「くりと振りかえると女性の顔をじっと見、「お茶かをどこから知 0 たんだろう ? 」 コーヒー ? コーヒーのほうがいいな、ジョアン。おいで、仲司に マーシャルもそばに来た。 紹介する : : : 」 「 ( ガードが知ってるだけで充分」とだけ説明する。 この一変ぶりはマーシャルの理解力をこすものだったが、マーシ ジョアン・キャスティングスーーーもしくは、かってジョアン・キ ャルは黙 0 てふたりのところによ「た。そ「と ( ガードの思考を探ャスティングスであ 0 たもの・ー・は、当惑の態だ「た。これも未知 り、かれも事態を理解しはじめたことを知 0 た。えりにもえ 0 て死の手品師の異常な力量を示すもの。どんな感情の動きも真似でき んだ婚約者のことを考えたなんて、つくづくしま 0 たと思 0 た。しる。彼女は目で ( ガードに助けを求め、 ( ガードはうなずいて安心 かし、未知の齠能力者は野蛮なモンスターではなく、やさしい少女させた。 をつくったのだ。これは新しい、そしてーーどうやらー・ーよろこば 「なんなの ? 」ジョアンは途方にくれていた。「だれ、この人たち しい展望である。 ここフ・ど ? 」あたりを眺めまわし、異星の風景を見て、「どこ、 ・フリーはローダンとクレストとならんでいるところだった。成果うしてこんなとこに : のなかった飛行のことを報告し、すぐ・ヘータⅣをスタートしようと ・フリーはやっと口をとじ、どっかと砂にすわった。 いうローダンに賛成した。この星に知性体はいない。その点、もは 「おかしくなっちまう、すぐにもここからおさらばしなくちゃ。で どこにし

2. SFマガジン 1984年7月臨時増刊号

ハガードの悲鳴がとんだ。 ・フリーの髪がねはじめた。最初の驚きがさめると科学的好奇心が 「あぶない ! 後ろ : ・ めばえる。この姿を自分はどうして予知できたのだろう ? 見もし ・フリーは跳びあがり、さっと振りむきざま、器用にベルトから銃ないうちに ? を抜いた。 そう、一種のテレ・ ( シーがあったに違いない。むこうがかれの心 だが、その動きが硬直した。数歩先のドームのあいだに立っ奇妙に自分たちの姿を暗示したのだ。すると悪意はいだいていないな : ・ な生物をあっけにとられて眺める。それは忽然とそこにあらわれ、 いつまた消えるかわからないような感じである。 銃をベルトにもどし、両手を伸ばすと、歩きだす。歩きながら懸 ・フリーの手がのろのろとさがり、ロがあんぐりとあいた。目は皿命に思考した。 のようである。 〈きみらはテレバスだろう ? 残念だがわれわれは違う。しかし、 「まさか ! 」と、一歩さがる。 理解しあえると思う。わかったら、うなずいてほしい〉 それは人間だった。やせた長身。胸郭がはり、長い腕の先の手に 相手は動かない。 は指が六本。足はモグラのにそっくり。鋭い爪は土を掘るのに好適。 プリーはがっかりして肩をす・ほめた。 「まさか ! 」また・フリーはいった。「ありえない ! 」 「テレ。ハスじゃないんだ」と、 ハガードにいう。「どうする ? 」 ( ガードもイン。 ( ルス銃をかまえている。銃口をむけられた異星そこを考える必要はなかった。 人はおそれげもなくふたりを眺めている。ハガードはいったん・フリ 相手が動きだしたのであるーーーふたりにむかって。長い腕をあ ーにむけた目をその不思議な存在にもどした。 げ、打ちかかる姿勢をとって。だが、手には武器はない。・フリーと 「ありえない ? なにが ? 」 ハガードはたじたじと後退した。この奇妙な生物は意志の疎通など フ丿ーはうめき、目をい「ときとじて、またあける。変わりはな考えていないらしい。でなか 0 たら、こんな行動はとらないだろ 。夢をみているのではない。 う。論理的思考などないようだ。ドームと遠隔操作ロケットの存在 「想像のとおりなんだ ! ペータⅣの住民はこんなだろうって考えと矛盾するが。 たのとびったり同じ ! おれ、予知能力があったつけ ? 」 ・フリーはあらためてイゾ。 ( ルス銃をつかんだ。これは物騒な武 ( ガードはゆっくりそのふしぎな人間に歩みよる。相手は武装は器。その = ネルギ 1 ・ビームよ ーいかなる物質も原子に変えてしま していないようだ。そして、 「われわれは友達」と、アルコン星間帝国の共通語であるインター 「停まれ ! 」お・ほっかない声をかけ、銃をそのほうにむけた。相手 コスモでいった。「言葉、わかるか ? 」 は警告を理解したようでもない。その逆。・フリーに打ちかかる。 反応なし。 ふたりは別々に行動したのだが、結果としては驚くほど一致して 3 4

3. SFマガジン 1984年7月臨時増刊号

「無線コントロールにはしかるべき装置が必要。それが地下にある旧式の液体燃料ロケット とはかぎらない」・フリーが考え考えいった。「そいつをかくしてお「それはわからない」 ( ガ】ドもささやき、みるみる小さくなるい く場所としては、山のなかがいちばん。たとえ低い止でも、枝谷やケットを目で追った。「それにしては加速が大きすぎる。しかし、 山峡がある。平野より山に注意したほうがいい」 あれに人は乗れないな。機関室と燃料タンクでいつばいだ。あれも グライダーはマッハ四で生気のない風景の上を飛んた。細かいと遠隔操作じゃないのかな ? 」 ころはかすんでわからなくなったが、それでも人工施設があればそ「大型遠隔操作カメラ以上のものだと思う ? 」 れとわかるだろう。しかし、何もあらわれない。砂漠のむこうが緑「何も思わない。しかし、この世界をはなれるつもりのはずがな の野原。せまい河が流れている。次が丘とせまい谷。そしてまた砂 。それには小さすぎる。気象観測ロケットの一種ではなかろうか 漠。 ・フリーは砂漠を見おろした。グライダーはずいぶん速度を落とし 一時間たった。太陽は透明なグリーンになった空にさっさと昇 た。高度もさげる。 る。空はグリーンから紫がかっていた。太陽になかって飛ぶ。眼下 は砂漠。地平線には山並のシルエット。 砂がまるく溶けた跡がはっきりわかった。そのかたわらに似たも ーが減速した。なぜだかわからないままに。急速に接近してのがいくつか。ここからスタートしたロケットはひとつだけではな いとい一つこと。 くる山並のためだったかもしれない。とにかく後になって、かれは ついで・フリーは三つの金属ドームを発見した。 第六感のおかげだと威張っていたが。それはとにかく、減速してよ かったのだ。山並の手前数キロメートルのところでハガードがどき陽光はその明らかに人工構築物のなめらかな表面に反射した。ド りとし、ななめ前方を指さしたのである。砂漠と山並の境をなすひ ームはひっそりと砂漠のなかに立っている。その上十メートルのと ろい窪地を。 ころをかすめた。 「あそこ : 「なんだろう ? 」と、。フリー。見当がっかないでいる。「排気孔の ・フリーは見た。すぐにわかった。全長十メートルほどの金属のシようにも見えるが」 リンダーがグライダーの飛行方向のわきに砂漠に立っていた。その ドームは中央部でも高さはせい・せい二十五センチメートル。直径 尾部から赤い炎が噴出し、あたりの砂をふきとばしている。そしは一・五メートル。三角形をなすようにならび、相互の距離は一一寸 て、ゆっくり、ためらうがごとくに、小型のロケットは安定化した メートルたらげ。 噴流に乗って地表をはなれ、速度をたかめつつ、晴れた空に昇って ・フリーが旋回するうちに、思いがけないことが生じた。いきなり っこ 0 ふたつの小型金属シリンダーが上昇してきたのである。信じられな 「驚きだ ! 」・フリーがささやいた。「狂ったのか、それとも夢か。 いような高速で空に吸いこまれ、方向を転じると、近くの山並にむ 4

4. SFマガジン 1984年7月臨時増刊号

ハガードはうなずいた。ローダンのコールサイン。 エネルギー・・ヒームは二方からその生物に集中したのである。・こ ナ「むろん偶然しゃない、・フ リー。もっとましなものを想像すればよ が、素通りしただけだった。それが存在しないかのように。 かったのに。そしたらこの星の住民との最初の出会いもましなもの になったかもしれない」 だが、存在はするのだ、間違いなくー 砂についた足跡をプリー ははっきりと認めた。それでも必殺のビームに平気とは ! そんな ハガードがローダンに報告するあいだ、・フリーはなにかぶつぶつ っていた。 ものを頭から無視して、ビームをつつきり、・フリーにむかってくる。 冗談じゃないー ハカート 「逃げよう、 化物だ、ありや ! 」 「きみが驚くことがあるそ、・フリー 」ふたりがガゼルのわきに降 ローダンはいっ り、いま一度細かい報告をすませたときペリー・ むきを変えるとグライダーに走りもどる。ハガードのことによ、 ヘータⅣの重力圏を脱 まわずに。そのハガードは数秒ためらい、あらためて不気味な相手た。「あの全長十メートルのロケットだが、・ にビームを見舞ったが、効果がないとわかるや、・フリー のあとを追出し第三惑星になかったようだ。ティフの誤解ではなかったのか な。いずれにせよ、石器人が宇宙船をつくり、 惑星から惑星に飛ん ふたりがキャビンにはいると、べータ星人は走りはじめた。そのでいるとは思えないが」 「だけどあのロケット、・ ヘータ星人ひとりを乗せる大きさもないで 足はほとんど地面に触れていないようだ。急に身軽になった感じで すぜ」 ある。そいつが飛んでもプリーは意外としなかったろう。 ローダンはほほえみ、 ーの重い手が操縦コンソール上を舞い、発進レ・ハーをひき、 エネルギーをエンジンにまわす。 「まずわれわれ、そのエンジンのことを知らない。場所をとらない がつくんとグライダーは晴れた空に上昇。三つのドームとあの化 タイプかもしれない。つぎに、その連中がきみの想像の産物と同し 物をあとに残して。そいつは六本指の手を振りまわしていた。 なのかどうか疑わしい」 旋回し機」目が西にむくと、・フリーはほっとして背あてによりかか「どうしてです ? 」 「それはわたしにもわからない。しかし、いずれわかるだろう。と もあれ第三惑星に飛ぶつもりだ」 「尋常じゃないよ」通信機で《ガゼル》を呼びだしているハガー ドにいう。「あんな偶然はありえない」 「ここでせつかく手がかりを発見したのにですか ? 」 「偶然 ? 」 ・フリーは落胆をかくさなかった。最初のコンタクトがあったとい 「わたしが想像したのと寸分たがわぬやつだった。想像したとたんうのにべータⅣを去るーーおかしいんじゃないか ? 奇妙なコンタ に出現した。本当にそっくりの : : : 」 クトではあったけれども。ド : ムの場所はわかっているから、そこ

5. SFマガジン 1984年7月臨時増刊号

いいながら・フラルはクソーにはげましの視線をケットが降りたのだ。惑星間飛行を終えて。正直のところ、わから 「ありがとう」そう この出来事をどう説明したらいいのか : : : 」 送り、疑いにみちみちて自室にもどった。 あすにもクソーを訪れ、まだ聞かされていないようなら、アルサ 「ま、待ちましよう」・フリーは・ハラライザーを安全装置をはすして の脱走のことをつたえようと思う。 ・ヘルトにさした。「たのしみですよ、新鮮な空気が吸えるのが」 「地球のに似た空気ですな」クレトスが計器を読んだ。「気温十八 6 「ちょっと ! 」ハガード博士がそれを中断した。さっきからスクリ ーンをにらんでいたのである。「いますぜ ! 」 第三惑星を一巡したとき、ローダンは、ここには真の知性生物が ローダンと・フリーが振りかえった。地表に降りたつつもりだった いないと確信をもった。三つの大陸は大海にかこまれ、海には一つ の船影もない。見渡すかぎりの原生林は各所に山、高原を配し、動ことをいっとき忘れる。スクリーンにはおもしろいものが見えたの 物、植物相を好奇の目からかくしている。森には大河が流れているだ。 が、その岸にも人間の集落らしきものは見られない。 「でしよう ? 」ティフは誇らしげだった。「わたしのいったとおり ティフラー少尉は探知機から顔をあげ、 「真下に微弱を放射能が探知されます、サー。着陸したロケットの 答える者はいない。 この前、少尉がべータ・アリエティスを訪 ものと思われます」 、、いながらローダンは・フリーにうなずいた。「ではしたとき目にしたものを、いまだれもが見ているのだ。森のほとり 「そうか」と にかれらはいた。毛皮をまとった男たち。半裸。ひろい胸幅。手に このあたりに降りよう。森の端がいいのではないか」 ゆっくりと《ガゼルエ》は高度をさげ、三本の着陸脚を出し、し重そうな棍棒、長い槍、弦のゆるい弓。それがじっと艇のほうを見 ずかに接地した。脚はやわらかな地面に一メートルほどめりこむ。 ている。その態度にはなにかを期待するものがあった。しかし、恐 司令室のスクリーンはすべてついていたが、怪しい動きはない。 れいったふうがないのは不思議である。 ローダンはしばらく待ってから・フリーに合図した。 そして、かれらは棍棒を振りかざし《ガゼル》に突進してきた。 「ペータ虹を拝見しようではないか。われわれを・ヘータⅣで訪ねて「おや、攻撃か」・フリーがにやりとした。「棍棒でね。・ヘリー そう思いませ きた者が森のどこかにいるはずだ。しかし、おかしいな。な・せ文明ういう行動は、宇宙航行種族にはふさわしくない の跡がないのか ? 惑星には都市ひとつ、宇宙空港ひとつない。獣んかい ? 」 をいくつか見かけただけ。ティフが煙を目にしたといってるが、錯ローダンは黙っている。その目がせばまり、じっと考えこむ顔つ 覚かもしれぬ。それにしても、ここにはきのうかきよう、三台のロきになった。何かおかしいことは・フリーに指摘されるまでもない。 8 7

6. SFマガジン 1984年7月臨時増刊号

ロータン・ クラ刀 ペグーワールド編 1971 年、ペリー・ローダン、レジナル ド・カレらは、人類初の月宇宙船《ス ターダスト》で月に降りたち、そこで 月面に不時着していたアルコシ人トー ラ、クレストと出会った。爾来 350 年 余、永遠の生命の星ワンダラーをめぐ る謎解きの旅、地球統一、アルコン帝 国のロボット摂政との確執、ポスビと ローリンそしてカレー族との戦い・・・・・・ さまざまの困難を乗り越え、数々の冒 険を経て、今ペリー・ローダンたちは テラナーとして初めて、アンドロメダ への道の第一歩を踏みだそうとしてい る。そのテラナーたちの 350 年余の足 跡を思い出の名場面とともにたどる。 ファンであるわれわれにとって、やは りは名シーンが多い。ましてその 5 . 隆 巻数が三桁となってしまった今、その量 はたいへんなもの。その中からごく一部 依ではありますが、われわれの独断で選び 出した思い出の場面を巻数順に紹介して ン ョ みましよう。 シ まずは月面にからくも不時着したロ】 レ ダン一行が、妨害電波の発信源であるア ス ルコン調査船に遭遇した場面から : イ ・フリーの反応はいろいろだった。しばら くすると皮肉な大声をひびかせる。 「おたくの船の下には怪物が二ひき来てま すぜ。腹には飢え、喉には渇きをかかえ て。こんにちは。レジナルド・・フルといい ます。不時着させてくださってどうも。お 礼参りに参上しました」 ・フリーはロをつぐんた。ほかの場合だっ たらローダンは笑ったろう。いまはちが 、つフリー のずぶとい冗談は的をいたらし ( 第一巻九三頁 ) でしょ どうです ? なかなか・フリー この後、ローダン一行はアルコン人科 学者クレストとともに地球へと戻りま

7. SFマガジン 1984年7月臨時増刊号

・フリーはその問題にはもうかまわず、懸命にシュ・フにルを捜した いろんな点でアリに似ていた。小さな触角が興奮の態でびくびく が、砂地についたいくつかの溝のようなものしか見あたらない。たしていたが、・ とうもふたりのほうへ向けられているらしい。六本の め息をついてあきらめた。 脚は逃げだすかまえ。固そうなキチン質の鎧は濃い褐色。まるい目 「ローダンのいうとおりだな ほかを捜さなきや。ペータ虹だろは黒い。真珠のように輝いている。そこには恐怖だけでなく、好奇 うけど」 心もあるようだった。 ハガードは焦げた土のサン。フルも採取し、苔にくわえて袋にしま「アリだろうか ? 」プリ ーがたずねた。がっかりしているようだ。 「サソリじゃなかろうな ? 」 「第三惑星でも謎にしか出くわさなかったら、ティフがこの星系で「大きさで判断してはいけない」と、 ハガードが指をそれに近よせ 生命なんか発見しなか「たほうがよか 0 たってことになる。石器た。「はじめはコオロギかと思ったけど、やはりアリかな。な・せも 人 ? 冗談じゃないよ ! 夢を見てたんじゃないかな ? 」 っと早く発見できなかったのだろう ? 」 ・フリーはじっとある一点を凝視していた。ほんの四、五メートル 「山ははじめてだ ここにしかいないんじゃないのか ? 水と緑 先の。そこでなにか動いたように思えたのだ。 のあるところに : 「あんた、いったつけな、ペータⅣは不毛ーー昆虫もいない、高等 ハガードはあたりを眺めまわし、 動物もいないって : 「ほかにいないかな ? 一体じや少なすぎる。地球でと同じように 「い「た。河に魚とカ = の種類がすこし。昆虫にはまだ出会「てな暮らしてるんじゃなかろうか ? 」 。時間がなくてくわしい調査は無理だったけど : : : 」と、・フリー 「アリ塚のこと ? 」 をしげしげ見やり、「何故そんなことを ? 」 「そう。地下に住居をつくることだって、むろんある。捜してみな 「あそこ、石のところで、何か見たようなんだ。トカゲみたいなや くては」 「ローダンはべータⅣのアリどころじゃないね」・フリ ーが注意し , カトがそこへ行って石をもちあげてみた。トカゲはよくそう た。「これをつかまえなさい。一体でも見つかったのをさいわいと いうところにかくれている。・フリーの目がたしかなら、あるいは : 思って。噛まなきゃいいけど」 あやうく石をとりおとすところだった。ぎざぎざになった石の下 ハガードはかくしを探って手袋をとりだし、はめた。 に逃げこんだ小動物を発見したときの驚きはそれほど大きかった。 「ごらんのように、用意はいいんだ。これなら大丈夫。袋をもって 石をわきにずらして地面におき、かがんでその獲物を観察した。・フ いてくれないか」 リーもよってきて、七、八センチの動物を眺める。動物はこわそう ・フリーは透明なビニールの袋をとってそのロをあけ、ハガードが だったが、逃げはしない。 獲物をつかまえるのを辛抱強く待った。

8. SFマガジン 1984年7月臨時増刊号

むこうは接触を望んでない。あんな化物をさ 「よせよ、ハガード。 見ていた。「そいつで何かわかりやいいけど」 ハガードはうなずいたが、急にからだを起こした。頭をわずかかしなけないだけでも感謝しなくちゃ。見たまえ、あのロケット たむけ、せまい谷の奥を見つめる。谷は途中で曲がっていて、そこ十メートルそこそこだ。乗員がいるとしても、ひとりだけじゃない のかな。遠隔操作かもしれないし。わけがわかんなくなったよ」 から先は見えない。 ぐんぐん遠くなる炎の点をハガードは歯をくいしばって見送っ 「なにか聞こえなかったかな ? 」ハガードはささやいた。 ・フリーよ、・、って た。唇が動くが言葉が出ない。落胆が大きすぎたのだ。ほんのちょ いまや最後のチャソスが青緑色の空に 「いや。聞こえたのか ? 」 っとのところだったのにー ハガードは答えずに耳をすます。やがて確信をもったらしく、 消えつつある。 エンジンだー 「そう。聞きお・ほえがある。まだ聞こえない ? ・フリーが進みでた。いまさっきまでロケットがいたところへ。ま らーー、大きくなる ! 」 るく焦げている。何か手がかりがあるかもしれない。 なんの ? ・フリーのあまり敏感でない耳にも今度は聞こえた。谷の奥でロケ手がかり ハガードがのろのろとついてくる。おのれを取りもどし、小型通 ット・エンジンの始動音。はじめはつぶやくようだったのが、だん だん強くなる。それがもはや聞きのがすべくもなくなった。 信機でいま《ガゼル》に報告をいれた。そこではとうに二台のロ 合図があったかのようにふたりは谷間に走りだした。地面には石ケットを探知し、機器で追跡している。そのコースからすると、重 ころが多く、一再ならずつまづいて、ころびそうになった。轟音はカ圏を脱出するために加速していることは明らか。その目的地はや だんだん近づいてくる。 はり第三惑星だ。陽動作戦でなければ。 ふたりの耳ががんがん鳴った。鼓膜が破れそうだった。角を曲が ・フリーは発射の跡に呆然と立っていた。乗員を示唆するものは全 るーーふたりはあっと足をとめた。 然ない。かれらは何も残していかなかった。ハガードがそばに来 二台のロケット。百メートルほど前によりそって立ち、その尾部た。声をすこしふるわせながら、 ロケットにひとりしか乗ってい から炎を噴いている。灼熱のガスが四方にまきちらされ、植物や岩「おかしい。どうにもおかしいー 石を焦がしていた。ロケットの先端はぶるぶるふるえ、徐々に晴れないにしてもだ、やはり小型すぎる。あれで宇宙空間が飛べるはず た空にせりあがっていく。 がない。アルコン型反応炉なら場所をとらないが、そんなものを持 「待て ! 」ハガードは叫んだ。叫んでも無駄だとは気がっかない。 ってるとは思えないし。全長十メートル。人間のために最低五メー 「待てったら ! なんで逃げる ? 友達なんだ ! わかんないのトルは要る。残りの五メートルじや大気圏の外まで機体を運ぶにた か ? 友達だぞ : : : 」 しかし、べ 1 タⅢへなかってるとティフがいうからには : : : 」 ・フリーは医師の肩に手をおいた。 5

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かった。あっという間に消えてしまう。 そろそろとハガードがついてくる。 「追おう ! 」 ( ガードがどなって、からだを乗りだす。その光点を砂地に跡を捜したが、一見意味もなくドームからドームについて 4 見失うまいとして。・フリーはかぶりを振ると、グライダーをそのま いる奇妙な細い溝しか見あたらない。足跡はない。あのロケットの ま降下させ、手前の金属ドームから五十メートルとはなれていない スタート地点にもこの溝しかついてない。あのロケットに乗員がい ところにふんわりと降りた。そして、 たと仮定した意合、乗員は途中で自分の足跡を消していったのだろ 「なぜ ? あれは遠隔操作。ここからコントロールされてる。異星うか ? どうしてフ 人がいるとすれば、ここ。 っこ 0 「われわれの来ることを知っていたらしいな」ハガードがしナ 光線銃をもっていくぞ、ドク。わたしだって人間の善意を信じて ・フリーは返事しない。い ちばん手前のドームのところに着き、か るけど、ここで会うのが人間とは限らない : がんでしらべはじめた。いまになってわかったのだが、まるい構築 キャビンの透明天井がはねあげられ、・フ リーがまたいで外に出る物の表面は一体形成ではなく、、 しくつもの小さい部分からなりたっ と、つかのま赤道環の上に立「た。充分支えになる。その足の一メていた。それが継目なしにあわさっている。よけいな手間のように 1 トル下が砂。 思える。こんな小さなドームなららくに一体形成できるだろうに。 三つのドームは陽光に不気味に輝いていた。砂漠にはかくれ場は なにごともないので、・フリーは自信を得た。次のドームに近よ ない。あのロケットは地面に横になっていたに違いない。それもド り、それもしらべる。前のと同じ。三番めも変わりはなかったが、 1 ムのかげに。でなかったら見逃すはずはないのだ。・フリーは安全その反応は違った。 を確認してから、地面に跳びおりた。ハガード がつづく。 せめぎあう感情と思考をかかえて・フリーはそこに近よった。この ドームのあたりに動きはない。・ トームの下、地下になにがあるの星に住みながら姿を見せない知性体はどんな格好をしているだろう だろう ? 地下の大要塞の上端部なのかもしれない。 いまこの瞬といちばん先に考える。ここの気象と小重力からして、やせた長 、その建造者はスクリーン上でふたりの一挙手一投足を観察して身、胸郭がは「ていると思う。ま、ヒー「ノイドならだが。・フリ いる可能性だってある。武器を地表にせりだしてふたりを殺すため 1 の空想にはきりがない。かれらはロケットを製造した。だから手 がある しかし、指はきっと六本だろう。そのほうがおもしろ そう考えるとブリーの髪が逆だった。ベルトにぶらついている銃 。脚かーー・地下に暮らしているなら、モグラの足みたいで鋭い爪 を手でたしかめる。いきなりドームのそばに着陸したのは軽率だっ があるかも : たかもしれない。なにか対策をたてておくべきだったか ? 幻想の生物を完成させるとにやりとし、第三のドームをもっと良 いまさら仕方がない。思いきる。 く眺めようとからだをかがめた。 「フリ 「しらべてみよう」と、ささやき、手近のドームに歩んだ。

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「《ガゼル }•-* 》の内部はせまいからですわ。グッキーは小柄だし、 「立ち聞きしたな ! 」ローダンがきびしくさえぎった。「なんた 三つの超能力を一身にそなえている。テレバスでテレポーターでテる ! 禁令は知「ているだろう、会議にあた 0 ては = ・ : ・」 レキネスで」 「偶然だったんですよう」グッキーはあやまって、一本牙をひっこ 「なるほどな」 1 ダンは納得した。「しかし、本人に聞いてみなめた。まじめにな 0 ているしるし。「ほくの思考がね。そこらをう くては。その気があるかどうか : ・ : ・」 ろうろしてて、この部屋にはいっちゃったわけ。そしたらちょうど ・フリーが何かいう前に、奇妙なことが生じた。部屋のまんなかで・フリ ーが・ほくの名を口にしてるのを聞いた。それだけです」 空気がゆらぎはじめたのである。大型のヒーターにスイ ' チを入れ「ふむ」と、 0 ーダンは顔をしかめた。しかし、ロの端がびくびく たみたいだ 0 た。あたためられた空気が天井に昇るのが見えるかのしているのは、本気で怒 0 ているのではない証拠。「ほかならぬ・フ ようであった。そこに実体化した姿は、はじめは厚いガラス戸のむ 丿 1 の推薦だから、拒絶はしたくない。今後とも忘れないように。 こうにいるみたいだ 0 たが、すぐには「きりし、ついには現実そのきみが同行できるのは・フリーのおかげだということを」 ものとなって部屋に立った。 「忘れません」ネズミ ー・、 1 はぎようぎようしく約東した。 すっくと立っという感じとはちょっと違うが。 「今後・ほくを怒らせることがあっても、天井に宙づりにする時間を グッキーは人間ではない。大ネズミとビー ・ ( ーがうまくまじりあ五分だけへらします」 ったというところ。一メートルのからだは錆茶色の毛皮におおわれ この不釣り合いなふたりよ中・、 をイカいいくせによく喧嘩するのだ。そ ている。大きな耳がびんと垂直に立ち、いつでも何かをうかがってれはいつも・フリー の負けで終わる。ネズミ ーのテレキネシ いるようだ。 スにはかなうはずがないのだから。 きらきらする褐色の目はつぶらでやさしい。とがった鼻のあたり ブリーが何かいう ~ 間にローダン : にたいてい一本牙が輝いている。にやりとするといつも出るのだ。 「ティフラー少尉、明朝、現地時間で十時に宇宙空港でわれわれを 後足で立っときには、幅のひろい尾がつつかえ棒になる。 待っていてほしい。これ以上相談はしないぞ。きみの乗員は交替さ このグッキーをローダンは死にゆく太陽の惑星から連れてきたのせたか ? 」 だ。そこには生まれつきのテレキネス種族が住んでいたのである。 「発進準備はととのっております、サー」 ミ = ータント部隊の重要メン・ ( ーとしてグッキーは、第三勢力の指 ローダンはうなずいて、 導者に深い友情をお・ほえている。 「よろしい、ティフ」軍規をはずれた親称を使ったのは、本来の会 そのつぶらな目を・フリーにむけて、 議はこれで終わったという意味だ。「では、見たことを話してもら 「ありがと、・フリー、提案してもら「て。もちろん承知さ。い「しおうか、きみがペータ・アリ = ティスⅢの上空を通過したときに = ょに行くよ。ついにまた : : : 」 っ ~