「みぎゃう。ふつ、ほっ、ふつ」 鼻息荒く、ムギが戻ってきた。どーやらまたもや逃げきられたら あたしとユリ、それにムギはこときれたジャンニーニを囲んで、 悄然と立った。せつかく有力な証人を得たと思ったら、あっという 間にこのざまである。しみじみと情ない。、」 どーしても、立ってらんなかった。 「置いてくしかないね」 ハランスを崩したうえ、足を揺れにすくわれているのだ。もう転 ュリが一一一口った。ジャンニ ーニのなきがらのことだ。気のりはしょ オ倒を食い止める手だては、あたしにはない。 いが、たしかに、そうするほかに手段はない。 ふわりと宙に浮いた。 「行こうか・ : : ・」 みごとに、もんどりら一つた。 短いため息をついてから、あたしはムギに言った。ムギは膝を折地面に激突。 り、あたしたちが乗りやすいようにからだを低くしてくれた。 そこへ、また実にタイミングよくュリが落ちてきた。 ュリが先にまたがった。つぎに、あたしが足を振り上げようとし ぐえ ュリのでかいお尻が、あたしのスマートなおなかをつぶす。 そのとたんに。 「余震よ。さっきの ! 」 ぐらっときた。 あたしの上でユリがわめいた。そんなの、どーでもいい。わめく 一瞬、めまったかと思った。睡眠不足で体力が尽きた。 リこどけー 「目第ー な感じだった。 岩が割れ、山が崩れる音がした。地震はいよいよ激しい。大地そ でも、そうじゃなかった。 のものが、まるでエンジンの。ヒストンのように上下する。 さらに、ぐらぐらくる。 土砂が滝のように降ってきた。 猛烈な縦揺れだ。 そこで、ようやく気がついた。 その揺れ方でめまいでないことが、わかった。こりや地震だ。め ここは、坑道の中だ。その坑道が掘られている山が崩壊し、坑道 まいなんかで、こんなふうになるもんか。 に土砂が落下してくるということは : あたしはムギにまって、からだを支えようとした。 生き埋め。 しかし、失敗した。伸ばした手が空を切った。目測を誤ったの落ちてきた岩が、あたしの手首にあたった。 ( ンドライトをもぎ とられた。 こ 0 あたしは、つんのめるように・ハランスを崩した。 ああ。これが本当のめまい 8 6
・つたものがだんだん改良されていくうちに ( 〒躓福岡県粕屋郡篠栗町尾仲五八二ー ・「便利」なものになって、それが普通にな五太田定芳 ) ってしまうと今度はそれがないと困る「必 最近のお便りには、読書感想文が少ないな 需品」と化し、更にそれが豊富にあるのが と思っていたところでした。 ・常態となる。そしてその常態にすら「不 『ものぐさ精神分析』は私も何年か前に読 ・便」を感じるようになって、結局は自他未 み、岸田理論に驚愕した記憶があります。す ・分化な幼児期の全能状態を人工環境により ごい本があるなと、えらく感動したものでし つくりだそうというのではないでしよう こ 0 、刀 しかし、すべてを幻想だとする唯幻論は、 ・「時間と空間の起源」の中でも″われわれ 唯幻論そのものさえ幻想としてしまうあやふ の屈辱は、われわれが瞬時のうちに宇宙の やさを持っており、仮説の文学のごときもの ・果てまでいつでもゆけるようになるまで解 0 コーナ ・消しないであろう″とあり、幼児期の全能 連載も今月号で最終回を迎えた、めるヘん 感を虚構によって満たそうとするのが 、ノダーテイベアアニメ化記念タンクトめーかーさんの手による美麗イラスト・ポー ・で、それを実際にやってしまおうというの ップ十ポスター二十名 ゼ ・が現在の文明なのでしよう。ドラえもんの ファン垂涎のしろもの。 今月号巻頭で御紹介した「ダーテイベア」 ポケットが大体なんでものび太 ( 人類 ) のレ のアニメ化。これを記念して作られたタンク トツ。フとポスターをセットで。 〈応募要綱〉 ・欲求を満たしてしまうのは、まさに全能感フ の充足です。というのはこういった意 はがきに希望の品を一つ明記し ( 二つ以上 オリジナルプラスチックモデ書いた場合は無効 ) 、住所・氏名・年齢・職 味で、ヒトの最も本質的な部分を描き、反 業・今月号で一番よかったもの一つ・その他 ル十名 映しているようです。 マガジンへの希望等お書きの上、左記ま 今月号六 ~ 九頁で御紹介した横山ワール 0 「心理学者の解説はなぜっまらないか」で でお送り下さい。 。その中核をなす 3 オリジナル。 は、心理学者というのは挫折した自然科学 フィギュア、スチール。、 ーツ、ディカール締切は七月二十五日 ( 当日消印有効 ) 。 者と挫折した文学者がなるのだと言ってい 等の付いたリアルプラモデル。 発表は、発送をもって代えさせていただき ますが、 " 挫折した〃を " 想像力豊かな。 どれが当たるかは、お楽しみ ! ます。 に換えると作家にな 0 て、精神分析の 〒皿東京都千代田区神田多町一一ー二早川書 発達との発展には何か関連があるかも 5 O めるヘんめーかーさんの直筆イラスト・ 房マガジン編集部「。フレゼント・コ しれませんね。というわけで、このへんで 2 ポード三名 1 ナー」係 0 終わります。 ⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢ日ⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢ ではないかと現在は考えております。不可知 論や現象論のように、つぼい見方を展開 しようとする時、威力を発揮するわけです。 最近の岸田ものでは『希望の原理』なんて ものも出ましたが、私はこの本の上にうつか りしようゆを、それも大量にぶつかけてしま い、あまりのしようゆ臭さに途中から読めな くなって往生しております。 あいかわらず「幻想だ幻想だ」といってる のかしらん。 今月は実にたくさんのお便りが寄せられま した。載らなかった人、ご免なさい。 ( 阿 )
「見張りをつづけているというしるしなのだ。襲って来るとすれ太鼓は、そう語りかけているようだ。 きよう ば、静かになった時が危ない」 さしもの剛毅なカーティス卿も、時折足を止め、額の汗をぬぐっ ルーファスをうながして、進み始めた。ナーガ人たちはもちろんた。それはまことに神経に応える行軍だったのだ。 : しかし太 トムトムまえ ジャガ族の太鼓を以前にも聞いたことがあるのだろう。さして畏怖はいっこうに止まず、ジャガ族が襲って来る気配はなかった。 の表情も見せなかった。・ : ことによるとかれらは恐節という感情 そして、歌声が聞こえ始めた。 けつらく が欠落しているのかも知れない。 低くおどろおどろしい、単調なリズムの歌声だ。森の奥から、を森 しばらく進むうち、私ははっきりと気配を感じた。森に人ると猟にひそむ悪魔が呻いているかのように、ひびいて来る。 師はけものなみに感覚がするどくなるものである。一種の超感覚と「 : : : かれらが歌っている」 でもいうべきものが、そなわるようになるのだ。 ルーファスが足を止めると、私たちをふりかえった】 その感覚がはっきりと告げている。 「それは分かっている」 ・かれらはすぐ近くにい じゅじよう る。かれらはそのゴリラに近い体質からすると、樹上での行動に長私はいった。 けているのかも知れない。 地上に下りて間もないようにも思われ「やつらは何を歌っているのだ ? 」 じゅかん かみかんしゃ る。 : : : 近くの樹間にひそみ、私たちをうかがっているようだ。 「あれは、よろこびの歌 : : : かれらの神に感謝を捧げる歌です。大 やこうせい ザワザワと時折枝が鳴るのは、夜行性のけものの立てる音かも知量の肉が手に人り、部族が飢えすにすんだことを、神に感謝してい さかだ るのです」 れない。だが私の神経は逆立った。たしかに、私たちを見つめてい る視線が感じられる。 ルーファスが咳払いをするといった。私たちは顔を見合わせた。 とお どうかっ ・ : そのことばの意味するものはあまりにも明白だった。 そして太妓は遠く近く鳴りつづけていた。私たちを嘲笑し、恫喝 するかのように。 「いそごう : : : 」 ″お前たちが来たことは分かっているそ″ グッドが叫んだ。 太妓の一つがいう。 「あのいまわしい歌が終わらないうちになー ″そうだ。だがまだ生かしておいてやる″ 消耗していたのは私だけではない。カーティスもグッドも汗みず こた べつな太鼓が応える。 くで、疲れ切っていたようだ。今夜は朝から馬に乗りづめで、ろく よそもの むり ″新らしい肉だ。新鮮な他所者の肉だ〃 に休息も食事も摂っていないのだから無理はない。 : しかしいま 新たな太鼓がささやきかける。 のグッドのことばで、電気に打たれたように活気がよみがえった。 私たちは小走りに走り始めた。 ″よく来てくれた、お前たち : : : おれたちは脚をすかせて待ってい たのだ〃 歌声は次第に近くなり、 : やがて前が明かるくなった。木立を うめ ー 55
あの員女は 結局は星姫 でしたけれど ほくが言いた かったのはその : 口を閉じて 黙って あたしを見て これからは 言葉のいらない 会話をするの レーテルラン : それもいいわ 、一忘れてないから ちゃんと なり = せん / 見世物の まあなんー しう、」とさらし者を 一つとめたわ けっこうな 儲けに なったはすよ あたしは あたし 自身を 競り落とすわ 国へのご恩を あ忘れガ : ・ さよなら 乳田や 行くわよ ヒラリー そして ほら
「あたしも : : : 」 眼下に見えるハイウェイの惨状が、アスラヴィルの連命を予告し ている。 「うーむ」 コク。ヒットの中で、ユリが言った。 ュリが唸った。 「うーむ」 「〈ラブリーエンゼル〉に戻ったら、部長に報告しなくちゃだめね」 あたしも唸った。 それは凶悪犯が自首するのと同じである。 そのときだった。もう一つだめ押しが来た。 「報告することが三つあるわ」 だしぬけに景色がぶれたのだ。 ュリは言った。 一瞬、エンジンの不調かと思った。 「なんと何 ? 」 あまり聞きたくないけど、とりあえず、あたしは訊いてみた。 しかし、そうではなかった。 それは地震だった。 「一つは、事件が完全に解決したことでしよ」 四鉱がクレーターになったときも地震はあった。チャクラのもろ ュリは指を折った。 い地穀が、あの猛烈なエネルギーの放射に耐えられなくて、地震に それは、けっこう。 なるのだ。 「二つ目は、好意的な異次元文明との接触が永久に絶たれたこと」 前の地震が駑級のそれなら、今度のは超弩級の地震たった。 ぜんぜんけっこうじゃない。 十分くらいつづいたし、揺れもすごかった。上から見てると山が「そして、三つ目は、大地震でチャクラが壊減したこと」 崩れ、大地が裂け、丘が陥没するのが、はっきりとわかった。クレ さ、最悪じゃ。 ーターもひびだらけになった。 胸が悪くなった。 「ねえ、ケイ : ・ : ・」 アスラヴィルを上空から眺めた。 ュリが、やけに冷静な声で言った。 郊外から都心部まで、建物という建物は、すべて倒壊している。 「これだけの地震だと、アスラヴィルってどーなるかしらねー ダウンタウンなんかは、火の海た。 「どうって、その : : : 」 あたしたちは市内への着陸を締めた。降りようにも、ヘリポート あたしは、その先を口にだして言えなかった。 、刀ュ / し 事態は、予想どおりであった。 エンゼル〉に戻ることにした。 まっすぐ〈ラブリー 宇宙港に着いた。 ェビローグ そこで、あたしたちは、もっと悪い話を聞かされた。一 宇宙港が、使用不能になったのだ。離着床が一つ残らずずたずた 円盤機で、アスラヴィルに帰還した。
たた、いまの武部が完全に常軌を逸してしまっていることは間違 つくりと部屋を移動していた。 武部が海獺島で生まれたというのは意外ではあったが、ソ連が侵いなかった。その虚ろな表情にときおり、狂おしいばかりに凶暴な 攻してくるまでは日本の領土たったのだから、べつにありえないこ翳がよぎるのだ。 とではない。 武部から眼を逸らさないようにし、美奈子はゆっくりと部屋を移 武部の話ー。 こよもう一つ要領を得ないきらいがあったが、それもい動していた。緊張のあまり、喉がカラカラに渇き、股にひきつるよ まはどうでもいい。怪物にとり憑かれたのか、それとも武部は柴岡うなふるえを感じた。 という衝動が湧き いっそのこと一気にかたをつけてしまいたい、 の仲間で、ついに本性を表したのか、要するにまともではなかっ おこってきて、それを抑えるのに必死だった。 武部がなにをするつもりかは、推測することもできないが、いま背後にストーブの熱を感じた。そこで立ちどまり、やはり武部を はとにかく時間をかせがねばならなかった。 凝視したまま、背後に手を伸ばした。 自分でも意外だったのだが、美奈子はこの状況にそれほど脅えて 「ーーーわしはりゅうひょうさまにお会いしたことを何人もの人間に しや、脅えていないはずよよ、 ; 、 オしカそれより自分のカで話したよ。それこそ何度も、何度も口がすつばくなるまで喋ったも という思いのほうがのだ。だが、だれもわしの話を信じようとはせなんだ。だれもがわ なんとかこの場を切り抜けなければならない、 ・重、つこ。 りゅうひょうさまはそん しのことをホラ吹きだと笑いおった。 日ツ、力 / 「ーーわしはあれからあと、いつもりゅうひょうさまのことを考えなわしを哀れにお ' ほしめされ、それでまたお姿を見せてくれたので : なんとありがたいことではあるまいか。わしはり ていた。りゅうひょうさまは海獺島に身をひそめ、めったに人間のはなかろうか : 世界には出てこないはすなのに、どうしてあのときたけ、姿をお現ゅうひょうさまに礼をささげねばならぬのだが、このまえのときと しになったのか、わしにはそれがふしぎでならなかった : : : あのあ違って、今度は藁人形さえ持ってきてはおらぬ。なにせ突然のこと と、戦争があり、わしも赤紙一枚でかりだされて、満州にわたつじゃったから : : : 」 た。それでりゅうひょうさまがなにをお怒りになっていたのか、分このときかろうじて残されていた理性が、ついに突き崩されたの だ。武部はそのまま一気に狂気のなかに突入していった。 かったような気がした。人間たちが戦争を起こすとき、りゅうひょ 「おまえが身替わりに ! おまえが身替わりに ! おまえが身替わ うさまはお怒りになるのではないか。わしはそう考えた。りゅうひ ようさまのお怒りを鎮めるためには、藁人形ではなしに、生きた人 武部はそう叫びざま、斧をふりかざし、それを美奈子に叩きつけ 間をささげねばならんのじゃないか : : : 」 9 た。美奈子はとっさに石炭コ 1 クスのスコツ。フをとりあげると、そ 4 武部のつぶやきは独白に近く、美奈子にはほとんど理解できか れを頭のうえにかざした。 った。理解しようとも思わない。 りにー・」
下りようと崖に対して半身になり、腰をかがめる。 かめてみた。 と、それを待っていたかのように。 ュリにからだを支えてもらい、こわごわと崖の底を覗きこむ。 いきなり、首が飛びだした。、、 なんだ。 甲冑兵の灰色の首。 ホッとした。 一つ二つではない。穴の端にずらりと七つ。崖の下から、あたし 想像してたよりも、ずっとたいしたことない。崖と呼ぶのも、は ばかられるくらいの段差である。急角度で落ちこんでいるのは、せの目の前へびよんとでてきた。 いぜい四、五メートルってとこ。ちょっと下れば、すぐに卵のある 岩山へとつづく尾根へと渡ることができる。尾根は剣の刃みたいに 細くないから、ったっていくのは、そんなにむずかしくはなさそう だ。問題なのは、そこへ辿りつくまでの体力だが、いいささと なったらムギがいる。 あたしはユリに合図してひつばってもらい、坑道の奥に戻った。 状況をユリに話す。 「尾根づたいに行くことになるのね」 ュリはうなずいた。 「厄介なのは、あの靄よ」あたしは言った。「尾根であれに視界を いくら幅があるといっても 奪われたら、動きがとれなくなるわ。 尾根は尾根。へたに進もと、足を踏みはずして谷底に転落しちゃ 「わっ、痛そ」 ュリが両の拳を口もとに揃えて、怯えたような表情をつくった。 ュリのアホ。痛いですむか ! 「とにかく行くわよ」ュリのしぐさを無視して、あたしは言を継い 「あんな低い崖で転げ落ちないでね」 きびすを返し、穴の端に立った。 広生ロ三三 = = 三 『ダーティ。ヘアの大逆転』発売記念 高千穂遙氏サイン会のお知らせ 待望の〈ダーテイベア・シリーズ〉第二弾『ダーテ イベアの大逆転』の発売を記念して、著者、高千穂 遙氏のサイン会を左記のように行ないます。 ・日時昭和六十年七月五日 ( 金 ) 午後四時 ~ 五時まで ・場所栄松堂書店・横浜相鉄ジョイナス店 ( 連絡先横浜市西区南幸一丁目五番一号横浜 相鉄ジョイナス四階 e 0 4 5 ( 3 21 ) 6800 -1 、イニ 0 ) 1 二目 7
この男の世界には、感生がマヒしそうな魅力かある。臆面もなく、こんなアル・ ( ムを作「てしまう。フ リンスという人の頭の中は、一体どうなっている プリンス『アラウンド・ザ・ワールド・イン・ア・デイ』 んだろう。しかも、このアル・ハムは前作『パープ ル・レイン』と同時期にレコーディングされたと いうウワサもある。 ・アル・ハム『アラウンなんて、ロが裂けても言いたくなかった。 私は、プリンスのニュ もしもそのウワサが本当だとしたら、。フリンス けれども、コワイモノみたさと、隠れたスケベ ・ザ・ワールド・イン・ア・デイ』を聴いて、 は稀代の天才音楽家であると言っても過言ではな 心でプリンスの世界を垣間見ているうちに、つい すっかり打ちのめされてしまった。 いだろう。アル。ハムをある個的な世界だとすれ というより、驚きのあまり、ロが。ほっかりとあうつかり彼の世界にはまってしまったのだ。はま ば、プリンスは、一度に二つの世界の創造主とな いたままになり、アウアウアウ : : : と、アゴのホってしまえば、粘着質の。フリンスの世界からのが ってしまったのだ。しかも、全く違った世界の : れるのは、相当むずかしい。ゴキプリホイホイか ネがガクガクしてしまったのだった。 。これは現代の聖徳太子的偉業としか言い様が なんという、なんという男だっ ! やつばりコ鳥もちのように、のがれようともがけばもがくほ ィッはタダモノではない。言っときますが、私はど、感性が、からめとられてしまうのだ。 決してプリンスのような男は好きではない、むし前作『。 ( ー。フル・レイン』から、一八〇度の方とりあえず、『アラウンド・ザ・ワールド・イ ろ、ちょっと ) 」えんりよしたいタイプの男なので向転換。だけならまだおどろかないが、なんと新ン・ア・デイ』は、『。 ( ー。フル・レイン』と趣き ある。そりやそーだ、ロコツに黒い。ヒチビチビキしいアル・ハムでは、ペイズリーもようが宙を舞を異にしながらも、実に完成度の高い、カラフル なアル・ハムになっている。 花が地をうめつくすサイケデリック・ワール ニの。ハンツであらわれたり、べッドにしばりつけ サイケデリック大好きな性格と相まって、何も られてアへーアへしたり、そんなプリンスを好きだドが展開される。フアズのかかったギターが、も うろうとした頭の中を自由自在に行き来する。こ考えなければ大変楽しくルンルンと聴けるアル・ハ ムなのだけれど、この聖徳太子 ( というよりも背 の世界には、ビキニバンツのプリンスも、べッド でのたうちまわる。フリンスもいない。愛と平和を徳太子 ) のワザと精神構造を考え始めると、その コミックスのフキダシのように、現実感なく歌うあまりの凄さに、ついついアゴがアウアウアウ : ・ : となってしまう私なのだった。 第六〇年代の幻がいるだけだ。 ファン待望のロールプレイゲーム、 ア ン 「タンジョン & ドラゴン』日本版、ついに登場 , イ 今月はまたビッグ・ニ、ースが一つある。以である。 これはじつに待ち遠しかった作品だ。とにかく 前、本誌に連載した「ゲームへの招待」で ン ″ロールプレイ″ ″ロールプレイ″といくら一言っ もくり返し紹介した『ダンジョン & ドラゴン』 ウ ラ D ミ ~ g きラ D 、ミ g 。ラ社 ) 、ロールプても、その創始者であり、いまだ代名詞でもある レイング・ゲームの第一号であり、アメリカで大作品が出ないことには、分野自体がいつまでたっ ヒットしたあのゲームが、ついに日本でも出るのても雲をつかむような感じからぬけきれない。 ・ (J)<OX--TO 〇¯) ー >< ・ついにモトワロス・レースに初出場 / 結果は、走ってる時間よりコケてる時間の方ガ長なった。ても私は不屈の女 / 0 一 SK い . 白局 , さちほ 安田均 そ 0
そして、その手前にムギがいた。一 広場を全力疾走した。 ムギは、甲胄兵に取り囲まれている。逆立った黒い体毛に炎が赤 ベガサスが去った。風がおさまり、砂ばこりが散る。坑道の入口 く照り返し、鬼神もかくやという恐ろしい形相だ。ムギの足もとに が目に見えるようになった。 と、 四人ほど転がっているのは、すでに片づけられてしまった甲冑兵だ いうことは ろう。びくりとも動かない。それでも、無傷の甲冑兵はまだ優に二 あたしたちの姿も、甲胄兵に丸見え。 十人以上いる。みんなやられてしまったのか、あるいは車の向こう 坑道に飛びこんだ。体をひねり、壁にへばりついた。一 にいるのか、公安スタッフの姿はどこにもなかった。 ほとんどタッチの差だった。へばりついて身を隠したとたんに、 レーザーの集中放火が坑道の入口を減茶苦茶に灼いた。 包囲網の中から、三人の甲胄兵が前にでた。三人ともレーザーガ 暗い坑道が白く光った。地震で崩れかけていた入口の岩が真っ赤ンではなく、剣を手にしている。この近距離だ。レーザーガンでは ムギのス。ヒードに振り回されるだけだということを、ようやく悟っ になって熔けはじめた。 たらしい 二メートルくらいの距離を置き、甲胄兵が歩を止めた。一 一斉に跳んだ。一 横なぐりの豪雨みたいなレーザー攻撃は、一、二分っづいた 9 ムギが後肢だけで立ち上がる。 その間、あたしたちはただ我慢するだけ。動くことも反撃するこ ムギと三人の甲胄兵の影が、一つに重なった。、 ともできない。壁にへばりついたまま横にいざっていけば、一応、 と、思ったら 移動できるけど、そんなのやっても意味はない。それよりも我慢し ムギの鋭い爪でズタズタに切り裂かれた甲胄兵が、地面に叩きっ て、相手が不用意に動くのを待った方が得策だ。なんたって、外に けられた。 は怒り狂ったムギがいる。 まるで相手にならない。大人と子供のケンカである。いや、あっ だしぬけに、攻撃が熄んだ。一瞬、誘っているのかと思ったが、 ちの方が、もう少し歯応えがあるかな。これじゃ、人間がアリを踏 そうではないようだ。なんとなく騒がしい。ざわっいている。 そろそろと入口に近づき、赤く熔けて、まだ高熱を放っている岩みつぶすのと大差ない。 越しに外の状況を窺ってみた。 あたしとユリは、ヒートガンを構えた。甲胄兵はムギの強さに圧 最初に目に映ったのは、真紅の炎に包まれた、あたしたちの六輪倒されて、なすすべもなく突っ立っている。形勢を逆転するには、 車だった。甲胄兵が火を放ったに違いない。・ こうごうと燃えさかっ今がチャンスだ。 ている。 あたしたちは甲冑兵を撃った。手当たり次第に撃ちまくった。 9 5
A - 毳 S S 当 リーターズ・ストーリイ ・読者のつくるべージ・選評日生敬 リーダーズ・ストーリイ、今月は、比較に、未来は混沌とし、旅することはできな 的にアイデア・ス いはずなのに : トーリイでの応募作品の 。オチの説明に無理があ神奈川県の成川雅彦さんの「大の散歩」、 多い月たったといえます。八十篇弱の作品るようです。もう一度考えてみて下さい 科学文明が進み、機械化された未来社会、 の中の三十篇ほどがアイデアでした。 神奈川県の米岡正紀さんの「イン。フッ 一つのステータス・シンポルとして大を飼 この傾向が続くと選者としても、読む楽ト」、第五、第六世代と開発されたコンビう人々が増えていた。だがその大は : ・ : ・。 しみが増えてくるんですけどね。皆さん、 トフラー的未来世界を舞台にしたアイデア ュ 1 タも、第七世代に入るや完全なる人工 がんばって下さいね。 ストーリイ。 知脳となった未来、人間そっくりの思考カ それともう一つ、今月はめすらしいことを持っコン。ヒュ 1 タと人間がコンタクトし 兵庫県の脇大輔さんの「天才」と「文字 に女性の作品がほとんどありませんでした時 : : : 。オ 1 ソドックスながら、よくま変化」の二篇、「天才」は、並はずれた能 た。いつもだと半数近くあるのにです。女とまった一篇です。 力を持つが故に苦悩する若い男の物語。天 性投稿者の皆さん、お待ちしてますよ。 福岡県の生成順次さんの「寝床」、この才、天才と騒がれた男の孤独感は : : : 。 さて、短評です。今回は選考に残った作作品、汚れきった四畳半が一つのライフ・ 「文字変化」は、タイボグラフィック 品が多いため、全部を紹介することはできサイクル・システムを作り上げ、一つの生 トーリイを普通の小説で表現したもの。本 そうもありませんけれど。 命世界となってしまうというもの。生物化の山に埋もれて生活する男が、ある日突 まずは、静岡県の廣瀬彰さんの「両替」した四畳半のイメージがグロテスクで、楽然、変身してしまったというもの。典型的 から。廣瀬さん、この作品、シチュエーシしめます。 なアイデア・ストーリイです。 ョンは面白いのですけど、オチが読めてし設定をしつかりすれば、長めのストーリ さて、今月の番外篇です。北海道の木宮 まいます。もう一工夫ほしいですね。物語イに仕上がるかもしれませんね。 敬さんの「お xxx 」、誌面に載せみわけ は、時間旅行者と各時代の時貨交換制度、 続いては東京都の堀越幸一さんの「パイ にはいきませんが、非常におかしな一篇。 一つの時代への旅に人気が集中しすぎるロットの条件」、恒星間探査飛行をする宇ワン・アイデアで、笑わせてくれる作品が と、両替用の貨幣が足りなくなって : 宙船の乗組員の物語。旅の途中で出会った少なくなった中で、久しぶりに大笑いしま 東京都の三文東二さんの「未来」、この旧式の宇宙船のパイロットは : ・ : ・。人間以した。こういう作品、もっと送って下さい 作品、受験勉強に疲れた息子に活気をとり外の存在だったのだ。オ 1 ソドックスですよ、木宮さん。 もどすべくタイムマシンで未来を見せた父が、書き方一つでもっと面白くなるはずで今月の入選作ですが、米岡さんの「イン 親の物語。不確定要素の上に成り立つが故す。もう一工夫してみてはいかがでしょゾット」とします。 円 0