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検索対象: 徳川家康 2
363件見つかりました。

1. 徳川家康 2

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2. 徳川家康 2

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3. 徳川家康 2

元康は雅楽助のそばへ来ると、何となく立ちどまった。 雅楽助はわざと声をかけなかった。 関口御前がすぐ城中で義元に言われて来たことを話すに 違いない。それにこの若い殿がどんな反応をしめしてゆく か ? 黙って見ていたい雅楽助だった。 「雅楽助、ーー」 元康の方から呼びかけられては仕方がない。 「おお、これはお帰りなされませ」 雅楽助は籾ざるを抱えたまま顔をあげた。 午後の日が、掘りかえしたまっ黒な土の上に、門、 : の松の影を這わしている。元康の顔がその土と影の対照で いかにも柔弱な白さに見えた。 「蹴まりというはなかなか面白いものであった。そなたは 見たことがあるか」 「ござりません。また、見たいとも思いませぬ」 「なぜじゃ、なかなか風雅なものそ」 る。「そうか。いよいよ瀬ぶみされる時が来たか」雅楽助「われわれには縁のない都ぶりゆえ、何の興味もござりま せん」 がふたたび畠へ立って、籾ざるをとった時、当の元康が、 供の平岩七之助とのどかな表情で門を入って来るのが見え 元康はちらりと傍の平岩七之助と顔を見合って、 「そちはひどくじれているの。いま七之助と話しながら来 たところだ。たぶん爺にこう言ったら、こう答えるであろ うとな。その通りであった」 雅楽助はちかりと上眼で元康を見たまま答えなかった。 「無理もない。元康も十八歳じゃ。岡崎から人質に差立て られた時が六歳、十二年の歳月は短こうもない。そしてま だ、いつの日岡崎へ戻れることやらわからぬ身 : : : 」 元康はそこでふっと言葉をきって、 「わしはいま、どうしてじれずに春の次に来る、夏を待と うかと工夫をこらしている。自然はあせらぬ。今日も城内 の森では鶯どもがよい声で鳴きおった。といって、自然は な、いつまでも鶯を鳴かせておきはせぬ。のう爺」 「そちは蹴まりを、そちに縁のない都ぶりと申したな」 「申しました。無縁の遊びにござりまする」 「わしはそうは思わぬ。わしは陽当りのいい庭で、うつ ら、うつらとしながら、そちたち皆に見せてやる日を想う ていた」 、一 0 268

4. 徳川家康 2

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5. 徳川家康 2

「あれはの、術を心得ると子供でも大人に勝っということの代官の下で総奉行を命じられている鳥居伊賀守忠吉が、 だ。それゆえ術を磨けということだ。あははは、ここでもその子の元忠をともなってやって来た時もそうであった。 弁慶が負けくさったわい」 正ー亠糸は「〕信 」こそわが家の宝と口にして、子供と思 竹千代がそういってはやし立てると、奥山伝心はしぶい えぬほど濃やかな愛情で側臣をかばっていながら、はるば 顏になった。自分が子供になりきっては、このしぶとい子る岡崎から側小姓に出て来たばかりの元忠を、居間の縁か 供は教えられないーー・・そんな反省じみたものがホロ苦く心ら足で蹴おとした。 をかすめた。 元忠は竹千代より三つ年上の十三歳で、竹千代が百舌を 「戯れてはならぬ ! 」と伝、いはいっこ。 捕えて鷹のようにならして遊んでいるのを見て、 「さ、また打込みの槽古じゃ。斬り返しはそのあとのこと「鷹には鷹、百舌には百舌の取柄がありましよう」 にする。五百回 ! はじめ」 そういっただけなのに、顔中をまっ赤にして激怒した。 きびしい表情でそういうと、竹千代はまた素直にうなず「 たわけ者、もう一度申してみよ ! 」 声より早く右足をあげて、元忠の肩を発止と蹴り、元忠 そして、桜の幹を相手と見て、その前で、柔軟な足さばは縁からころがりおちて、口惜しそうに竹千代を見上げ きで木剣を構えては打ちおろし、打ちおろしてはまた構えた。 すると竹千代はいきなり自分も地べたへとび降り、こん そうした竹千代の姿をいつやって来たのか祖母の華陽どはカツンー と頭上に拳をふるった。 院、今の源応尼はうっとり庭に立ってながめている。 そのありさまをながめたとき、源応尼は胸がつぶれそう であった。 ぬれ縁に腰かけて、伝、いはまじろぎもしなかった。 しまでは竹千代の生命の綱だった。彼のひ 鳥居忠吉は、、 そかな仕送りがなければ、駿府での生活はなり立たない。 祖母の眼から見ても竹千代には判じきれない復雑さがあ忠吉の細かい心遣いをいつも感謝していながら、なぜその った。去年の秋、夢にも忘れかねている岡崎から、今川家子にこのような乱暴をしかけるのかと。 、 ) 0 もず 2 46

6. 徳川家康 2

久六が聞きとがめると、小猿はヘラへラとさっきとは人わしてくるものだった。 この徴候を洞察して、次に備える者を賢者と呼び、その が変ったような笑い方をした。 「、ま、 0 ヾ ーしとうで天地の静まるまで大きな風はせかれますま賢者の言に耳傾けて、人を愛して兵をうごかすーー乱世で し」 はそれが表面にあらわれてくる名将であり、英傑であるは ずだった。 ョ今川家と織田家の衝突のことか」 「はい。あの信長さまが、眼の黒い間に今川義元が旗下に したがって彼はその見解にしたがって、平手政秀の乞 立っとは受取れず、といって、今川義元が信長の下風で納いを容れ、信長の吉法師にわが思想のいぶきを吹きかけ まることなどなおさら考えられませぬ。とすれば大きくぶ つかって、いずれかがこの世から消えねばならぬ運命。そ しかし信長となった吉法師は、彼の予期した成長以上に う決ったら、どちらも余り強大にならぬうち、戦わせるが彼自身も時に一歩しりぞいて首かしげるほどの成長をして のけた。彼が、 駿遠三尾四カ国の諸民のためでござりましようが」 「ーー・・、・、古きをこばて ! 」 「するとその方はその戦を待っているのか」 「ほほほ : : : 大高でも鳴海でも、ちょっとうしろから : と訓えたのは、無力になり果てた貴族文化の袋の底をさ なにすると、すぐに火はつくと存じますがな」 ぐるな。すでにそこには干からびて滋養にならぬ乾いた骨 小猿はそう言い放って、突然きらりと凄まじい眼になっ片があるばかりだ、ーーそうした意味で訓えたのが、信長の て波太郎から久六、久六から随風と見ていった。 中では貴族文化の否定ばかりか、一切の慣行を蹴散らす奔 ( たしかにこれは並の風来坊ではない ) 馬の蹄に成長していた。そのために当の平手政秀までが切 波太郎はしずかに眼を閉じた。 腹して果てた。 しかも信長の今日までの政治、経済から人事行政、いず れもさしたる失敗はない。家中の混乱のしずめ方、こんど 竹之内波太郎の見解にしたがえば、歴史の流れの転換の領内通行勝手のふれ、一つとして他人の肝を消さぬもの は、つねにこのような風来坊の言鋤の中にその徴候をあらとてなく、そうした奇矯に近い信長に、この針売りの浮浪 つ」 0 205

7. 徳川家康 2

おれだからよい。胆の小さな者ならけがをするわい」 馬の世話は拙者がする。それゆえ、殿より馬のその それから怖わごわと手をのばして、電光の鼻づらを撫で日その日の心は藤吉が知っている。それで解決っくことで てやった。そして、電光がそのままおとなしく撫でさせるござりましよう」 と見てとると、 と、その時だった、こんどは十二頭の馬がいっせいに声 「これからおどろかすと、こうしてやるわ」 をそろえていなないたのは。 コツンと眼と眼のあいだを小突いて利家をふり返った。 「あーーー」と、藤吉郎は顔色変えてあたりを見まわした。 利家はまたプーツと噴き出した。その仕種は負けおしみ と、馬どもの視線の先に、信長の姿があったのだ。信長 と稚気と、図太さと用心ぶかさを滑稽にふくんでいる。 の近づく姿を見て、いっせいにいななく馬。 「藤吉・ーーー」 ノノノハ」と・宀豕がき ( た入った。 「なんでござりまする」 「世話するその方よりも、馬どもは殿がよいと申して居 「その方、相手をまず撫でておいては小突く癖があるのる。 力」 信長が近寄ると、ます疾風が鼻をつけ、のどを鳴らして 「とんでもござりませぬ。人をおどろかすと、自分もおど甘えていった。 「猿 ! 」と信長は疾風の平首をたたきながら藤吉郎に呼び ろかされる。天の理を行うて訓えてやったまでのこと」 「屁理窟を申すな。が、友達甲斐に訓えておこう。殿はい つも、馬 ! としか仰せられぬそ」 「なるほど馬 ! たしかにやつらは馬でござりまするな」 「その馬 ! と呼ばれた時、どの馬をひいて行くか。どの馬 を呼んでいるのかが判断出来ねば、殿のくつわは取れぬそ」 「なるほど。それはそうでござりましような」 「殿の顔色、行先によって、今日はこれと読みきれるか」 藤吉郎はポンと胸をたたいてうなすいた。 信長に呼びかけられて、藤吉郎はペこんと頭を下げて近 風雲うごく 295

8. 徳川家康 2

「尼どのは、この戦、雪斎の負けとふまれたな ? 」 華陽院はうなずきも否定もしなかった。 「三月から滞陣してすでに半歳、まだ安祥の小城一つぬけ ずにおる。駿河からは義元さま直々に出陣しようかと矢の 催促。そうふまれるのも無理からぬが、しかしこの雪斎に も思案はござる。もし落城のご懸念ならばご無用に願いた し」 華陽院はまた数珠を額にあてて答えなかった。 雪斎はじりじりした。この尼は広忠の父清康を動かした ほどの女性であり、清康の死後も、わが産みの子を広忠の 正室に迎えさせるほどの勢力をもった才女だった。その才「なるほど、さようなことを申すみ仏もあるであろうな。 女に自分の戦の手ぬるさを批判されるのは不愉央だった。 それも小さな慈悲の一つじやで」 ましばらく見ておられよ。 「戦には戦機がご、ざるでな、い 「お許し下さりまするか禅師さま」 「さればの、フ : 雪斎ひとりで必す勝ってご覧にいれる。方寸あっての足ぶ みじゃ」 雪斎はまた言葉をにごして、華陽院の申出の真意をさぐ る眼ざしだった。 「 ~ 秤〕帥き、ま」 ( 落城をおそれての駿府ゆきでないとすれば、この尼はい 「思いとどまられるかな」 ったい何を考えているのだろう ? ) 「この尼は世を捨てたみ仏の弟子、残らず事情を打明けま 岡崎衆の生活の苦しさを訴えようとしているのか ? それとも戦に勝っても竹千代がこの城を素通りして、駿 「仰せられよ。遠慮はいらぬ」 府にはこばれるものと判断し、その先まわりをしようとい 「禅師さまもすでにお気づきとは存じまするが、岡崎衆一 、つのか ? ・ 統は日々の糊口にこと欠く始末 : : : 」 「なるほど、それで : : : 」 「この尼だけでも城を立退き、一統の負担を減らすがよい と : : : み仏のお告げでござりまする」 そういうと華陽院の、まだ衰えぬ明眸にキラリと露が光 ってゆく。 「なるほど」と、雪斎はうなずく代りに庭先の木斛へ眼を そらした。華陽院の言葉よりもあちこちで鳴いているひぐ らしの声を聞いている雪斎だった。 もっ - 一く 2

9. 徳川家康 2

徳姫だけが、形だけ大人ぶって、不安や恐怖の外に坐っ ていたが、頑是ない故だと思うと、これも胸が詰ってく る。 しばらくそうしたしじまがつづくと、濃姫はおだやかに みんなを見回した。 もうその場には長谷川橋介も岩室重休もいなかった。彼 等もまた素早い身支度で信長のあとを追っていったのだ。 「生駒どの」 信長の消えていった奥の館は暴風のあとのような静けさ 濃姫はお類を見るとあやしい感情がツーンと胸をかすめ お類の方も、お奈々の方も茫然として入側の外の朝の陽ていった。この女が、自分には産めなかった信長の子を産 んだのだという妬心のほかに、子は産んでも後の指図はな 8 を見ていた。すべてが夢のような想いなのに違いない。 ここが清洲の城内であることも、自分たちが信長の側室しえまいーーーそんな哀れみと優越の入り混 0 た想いであ 0 3 、 ) 0 であったことも、子を産んだことも : しったいこうしたあわただしさで出ていって、果して帰「覚はできていましようの」 不意に話しかけられて、お類よりもお奈々と深雪がハッ ル ~ とは ? ・ ( 驟とは ? ・死とは ? ・ って来るのかどうか ? 側室の中でいちばん身分の低い深雪はいっそう哀れでとしたようだった。 あった。彼女は、身にしみついた腰元時代の慣わしで、そ「殿のお身を想うなら、どのようなことがあっても取乱し の時も嵐の去った後片付けをしなければと、食べ散らしててはなりませぬ。それぞれ覚悟はできていましようの」 「どのような場合 : : : と仰せられますると」 いった信長の膳をしつかりつかんで震えていた。 濃姫の侍女だった深雪がいちばん正直だった。救いをも 奇妙丸は生母のお類の代りに正室濃姫の膝に手をおい て、不安そうにみんなを見回していたし、あとの小さい二とめるように両手をついた。 「お指図下さりませ。お指図のとおりにいたしまするし 人は乳母にすがってすくんでいる。 は ) っこ 0 疾風の音

10. 徳川家康 2

を握ったでは幸先がわるい。そこでまずその動きを見よう藤井又右衛門が、昼食にもどって来ると、猿に似た藤吉 として : : : 左様雨期に入ると地の理がわるい。ここ半月あ郎は、びたりと話をやめて、木綿の陣羽織をうやうやしく よ、り - の、つっこ、、 . 手調べの戦を仕掛けて来るであろうのう」正して立上った。 「これなるはこのたび新規に召抱えた木下藤吉郎と申す 「訛皿が ? ・」 者、おぬしの組下におかれ、殿が乗馬の手入れをさせよと 「知れたこと。松平元康が」 けろりと言いきられて利家は田いわずパチパチッと瞬きしのお指図じゃ」 利家の言うあとから藤吉郎は儿帳面に一礼した。また例 の怪弁をふるいはせぬかと思っていると、 「中村に住む、先殿の足軽彌助が倅にござりまする。この たび父に代り、御大将のおそばに仕えることに相成りまし おそらくそこへこの家の主、藤井又右衛門が戻って来な っ ) 0 何も存ぜぬがさつ者、よろしゅうお引回し、お目かけ ければ、まだ藤吉郎の舌はとめどなく動いていったに違い 下さりまするよう、偏にお願いいたします」 「おお、中村の彌助どのがお倅か。そう言えばどこか面ざ : と言いたしが、その言葉は話し 流れる水のごとくに : てしる、っちこ、、 しつか身分の見境がなくなって、二千二百しが似てござる。そうか、母御はお丈夫かな」 「はい。拙者の出世を首をのばして待って居りましよう」 貫の御曹司をたしなめたり、叱ったり、からかったりしか 「それはそれは、ご奉公大切になされ。そのうち殿にお願 けてくる。 「ーーー、他人に肚を見すかされ、することを言いあてられるいして長屋へなり引取れるよう取計らって進ぜよう。前田 さま、たしかに受取りました」 ような奴では使いものにはならぬ」 いうのが信長の癖であったが、藤吉郎はさしずめ使藤井又右衛門がばくとつに挨拶すると、利家は縁を立っ いものになりそうな、信長の好みそうな典型的な乱世むきて、まだ何となく藤吉郎に別れたくない想いがした。 「ではわしはこれから厩に参る。厩で殿のご乗馬を教えて の怪人物に見えた。 おこう。そのあとで組の者にひき合せてやるよう。藤吉、 「おお、これは前田さまで」 っ ) 0 293