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検索対象: 西郷隆盛 第15巻
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1. 西郷隆盛 第15巻

・明治維新編《丹楓の巻》の時代的背景 間・ 3 土佐藩主後見、山内容堂 ( 豊信 ) 、幕府に大政の奉還を建 第一八六七年 ( 慶応三年・西議する。これは坂本竜馬が起案し、後藤象二郎を通じて土佐藩 郷隆盛・歳 ) の藩論とされたものである。武力討幕を主張する薩長両藩に対 する土佐藩の牽制という意味合いもあった。 【世相】 8 月間 ・ 6 岩倉具視、中御門経之と大久保利通 ( 薩摩 ) 、品川弥一一 名古屋地方に 郎 ( 長州 ) ら、王制復古の方略を謀議する。太政官職制や錦旗な ええじゃない どの案を互いに提示している。 か起る。翌月、 加・昭蛤御門の変で謹慎を命じられていた長州藩主、毛利敬親 東海道・江戸・ 父子に官位復旧の宣旨を降下する。 京畿その他一 間・薩摩藩主、島津忠義父子ならびに長州藩主、毛利敬親父 円に拡大。岩 代・信濃に農子に討幕の密勅下る。同日、将軍徳川慶喜、大政奉還の上表を 民一揆。柳河 提出する。 春三「西洋雑 0 . -0 大政奉還の奏請を勅許し、十万石以上の大名諸侯に召集 1 1 Ⅱ一 0 「ー亠 」〒卞「 1 月 を命令する ( 翌日、勅許示達 ) 京都町奉行、 加・幕府、各国公使に大政奉還が勅許された旨を通達する。 ええじゃない か踊りを禁止。

2. 西郷隆盛 第15巻

ークス公使とキング提督は、兵庫の開港準備を視察するために出かけて行った。サトーとミッド フォードは大阪にのこされた。 「もうじきクリスマスだぜ。われわれも息抜きがしたいね」 、ツドフォードが言いだした。 「どこかおもしろいところはないか」 サトーはうれしそうにうなすいて、 「長法寺では夜の冒険をやったね。あの手で行くか」 この春の大阪滞在中には、若い二人は寺の土塀の破れ目からぬけ出して、酒と女のある灯の赤い町 に出かけたものだ。 「今度はうまく行きそうにないね」 、、ツドフォードは顔をしかめて、「大阪城が近すぎる。夜の警戒は厳重らしいそ」 「昼間はどうだ」 「へえ、君は昼間も遊べる場所を知っているのか」 「知らないね」 「いっそ兵庫まで行ってみるか。情報集めだと言えば、カミナリ公使も文句は言うまい。案外な掘出 しものがあるかもしれない」 181 第十章大阪の町

3. 西郷隆盛 第15巻

たくない。人間、口先だけなら、いくらでも勇ましくなれる」 「伊牟田、それも言葉がすぎる」 大久保の声は冷たかった。「酔っているのなら仕方がないが、教えてやろう。岩倉卿も三条卿も近く 御赦免になる。宮中に召しかえされるのも時日の問題だ」 「へえ、そいつは耳寄りな話だが、両卿を呼びかえすだけの力と骨のあるお公卿さんが今の宮中にい るかね ? 」 「御赦免を取りはからったのは僕だ。われわれだ」 「ほほう、大久保さん、あんたも大した腕前になったものだ。 伊牟田は小路のほうから聞えてくるどよめきに耳をかたむけて、 「先斗町まで押しこんでくるとは景気がいい」 = イジャナイカ騒ぎであった。この秋の初めころから京都を中心に発生し、大阪に波及し、次第に 東海道を下って江戸に近づいて行く原因不明のお祭さわぎである。 ( ェイジャナイカ。 ェイジャナイカ。 クサイモノニ、紙ヲハレ。 ヤ、、フレタラ、マタハレ。 : ゃあ、また騒いでいるそ」

4. 西郷隆盛 第15巻

「そうたろう。そっちの旦那が君千代にあずけた」 後藤象二郎が盃をおいて、 「あすけたのではない。盜まれたのだ」 「へえ、旦那の拳銃を盗んだか。物騒な観音さんだ」 君千代の仇名は「白磁の観音」という。 しいえ、おあすかりしたのです」 表情をくずさす、気取った声で、「旦那さまは、お酔いになると、どこへでもおやすみになります。私 、くらかお役に立つでしよう」 が持っていたほうがし 竜馬は大げさにおどろいてみせて、 「これは貞女だ。いや、烈婦かな」 かんぶ 「そうそう、烈婦で悍婦だ」 後藤はうれしそうに、 したら、銃口をおれに向けると言った。近藤勇も顔負けの貞女だ」 「ごきげんだな、旦那」 松本亭は土佐藩の寮に使われている茶屋で、山内容堂も滞京中はたびたび遊びに来た。後藤象二郎 はここを宿舎代りにして、連絡の場所にあてている。君千代は祇園の芸者だが、この春の上京の折り ' 後藤の寵愛をうけて、今度もそばをはなれない。 「いざという場合にはビストルでおれを守ってくれるそうだが、もし浮気でも

5. 西郷隆盛 第15巻

の伊藤俊輔は内寅丸をさ 0 さと買 0 てしまったが、こ 0 ちは船は買いたし銭はなし。どうなることか物 と思いましたな」 吉之助は無言でうなずく。 「無事に手に入れることができたのは、浜崎屋太平治とグラバーのおかげです。浜崎屋は手付金八万 両を都合してくれ、グラ ・ハーは船主を口説いて、薩摩の財政力は自分が保証すると言ってくれました。 保証してくれたのはありがたいが、 あとの支払いが気になって : : : 」 「全く御苦労であったな」 かいもんだけ 「長崎を出航した時にも、まだ自分の船だという気がしなかった。開聞岳の鼻をまわった時に、ああ、 これでやっと薩摩のものになったと胸をなぜおろしました。 : ところで、西郷先生、船の名は何と つけますか。早くきめてください」 「もうきまっている」 吉之助は答えた。「春日丸」 「へえ、どこかで聞いたようだが : 「わが藩にとっては、山緒ある船だ」 「ああ、あの春日丸か ! 」 春日丸は豊臣秀占の朝鮮征伐で活した三百りの軍船で、のる。その後藩主の御座船になり、久 へいいんまる くど

6. 西郷隆盛 第15巻

「また少年だな」 四十三歳の「老公」は後藤を少年と言った。 後藤は平伏して、 「おそれいりました。しかし、私は決して薩摩の下風に立ったわけでも、大久保、西郷に踊らされた つもりでもございません。彼らの機先を制し、彼らの陰謀と野心を打ちくたかぬかぎり、この難局は、 卩はええ 「芋面の久光はひとかどの国士顔、賢侯面をしているが、た だのあやつり人形だ。大久保、西郷、小松帯刀などの家臣ど もに楽屋で教えられたセリフを棒読みにする芸も工夫もない 大根役者だ。余は久光の賢侯面ががまんできなくなったので 京都をひきあげた。河原町の藩邸で、余が久光の襟首をつか んでひきすりまわした話は聞いたカ ? 」 「はい、噂だけは」 ぐんびよう 「実は、あの晩も、薩摩の軍兵が三百名あまり、わが藩邸を とりかこみ、空鉄砲を放って騒ぎまわっていた。余を脅迫す るとは笑止千万。お寺の屋根の ( トならいざ知らす、この容 堂は空鉄砲にはおどろかぬ。象二郎、その方、何歳になっ 「はつ、三十一歳でございます」

7. 西郷隆盛 第15巻

しばらくして、伊牟田尚平がたすねた。 1 西郷、あんたは、この計画の発案者は板垣退助だと言ったが、土佐からもだれか江戸に行くのか ? 」 吉之助は首をふった。 「いや、土佐は当分動けぬ」 「へえ、言い出しもとは屁もひらぬのか」 やまのうちょうどう つぼづけ 「板垣君のせいではない。山内容堂という漬物石に頭をおさえられて、土佐藩士は壺漬の大根のよう にちちこまってござる」 「はつはつは、大目付板垣退助君もしわだらけの壺漬大根の組か。こいつは笑い話だ」 「伊牟田 ! 」 益満休之助がたしなめた。「おぬし、また曲がる。これだから、人にきらわれる」 「曲がるも曲がらぬもない。板垣がもし本気でやる気なら、脱藩して天下の浪士になればいい。 「火はおれたちの胸中に : いや、酒があれば、火鉢はいらん。酒だ、酒だ ! 」 おかみがひきさがって行くと、吉之助は申しわけなさそうな顔になって、 「今夜は壮行会のつもりだが、派手にはやれぬ。女どもも呼ぶわけには行かぬし : : : 」 益満が軽くひきとって、 「なあに、江戸に行けば ' いやでも派手になりますよ」 へ つけものいし 坂本

8. 西郷隆盛 第15巻

うな気ちがい騒ぎであった。 別手組の隊長は護衛の人数をふやそうと言ったが、中井はことわった。 「この騒ぎがつづいているあいだは、交通も治安も安全だ。馬鹿踊りを楽しむ良民の中で、刀をふり まわすような野暮なやつはいないよ」 いつもの二人の護衛と中井弘に守られて、三人のイギリス人は仮公使館を出た。 踊りくるう群集をかきわけて進むのは大事業であった。しかし、踊り手も見物人も外国人には気が つかないようであった。まるで物の怪につかれたような目の色である。たた、別手組の護衛が乱暴に 群集をつきとばして道をあけさせるので、サトーはそのたびにはらはらした。 ュ / カ別にトラブルもおこらず、約三十分の後、目的地に着いた。盛り場の裏通りにある劇場のよ うに大きな料理屋であった。 まげ 小さな髷を頭にのせたおかみが玄関に出て来て、あやつり人形のように首をふり、ペコペコと中井 にあやまった。祭の連中に占領されて、どの部屋も満員だと言っているらしい 中井はどなった。 「けしからん。ちゃんと予約しておいたはすではないか」 「へえ、それがもう、無茶くちやでございまして」 その言葉を証明するように、踊り狂う若者の一団がグロテスクな人形をのせた轎をかついで玄関に一 おしこんできた。中で宴会していた客たちがとび出てぎて、両手をたたいて歓迎し、いっしょに踊り はしめた。踊りながら道にとび出し、そのまま姿を消した客も何組かあった。 こし 201 笋十章虚と実と