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検索対象: 谷崎潤一郎全集 第1巻
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1. 谷崎潤一郎全集 第1巻

ふしん は、孰れも此れも同じゃうにマチの箱のやうな粗末な普請で、軒燈を掲げた格子戸と曇り硝子の障子を篏 すぎま めた窓とが附いて居た。その曇り硝子の内には、白い顏の女共が眼ばかり見えるやうにして、障子の隙間 から表を覗いて居る。橘は同じ路次を何度も往ったり來たりしたやうに思ったが、實はみんな異った横町 であった。横町から横町へ拔ける間に、また第三の横町があって、それへ這入ると其處にも同じゃうな世 界が擴がって居た。もしもあらゆる横町の底を究めようとすれば、それが細く長く無限に續いて居て、東 京市の外へまでも延びてゐるらしかった。もう公園から餘程遠いところへきたやうな氣がして、ふと立ち 止って空を仰ぐと、不思議にも未だ十二階が頭の上に聳えてゐる。それが橘にはいよ / ( 、、夢のやうに思は れるのであった。 「どうちゃな橘さん、この女はちょいと可愛い顏をしとるが、此所いらではお莱に召さんかな。これは千 東町の萬龍といふ仇名があるんちゃ。」 おくめん さう云って山口は、とある窓の前で臆面もなく詭明したり、どうかすると馴染の女の家と見えて、 「よう今晩は、先日は失禮。」 など、ゝ挨拶をして通ったりする。 「まあ大體この邊のところで我慢せんけりや仕方がないが、この他にまだ、活動寫眞館の裏の方にもうち あすこ っと上等な家があるから、ひとっ彼所へ行ってみよう。」 ひあはひ かう云って歩き出した山口の跡に附いて、家と家との庇合のやうな間をひょいと潜ったかと思ふと、再び 橘は元の公園の池の前に連れて來られて居た。 あだな 551

2. 谷崎潤一郎全集 第1巻

けだもの て行くちゃないか。彼奴等は馬鹿だけれども、獸のやうな丈夫さうな骨格を持って居やがる。己はとても 彼奴等に敵ひさうもない。」 そんな事を考へて居るうちに、やがて「林」と肉太に記した、叔母の家の電燈の見える臺町の通りへ出た。 門内に敷き詰めた砂礫の上を軋めきながら、俥が玄關の格子先に停ると、彼は漸く兩手を放して、駈け込 むやうに土間へ入った。 「二三日前に立ったと云ふのに、今迄何をして居たのだい。」 一と先づ八疊ばかりの客間へ案内して、いろ / \ 元氣の好い聲で云ひながら、叔母は佐伯を廊下傳ひに、 と故國の様子を聞いた。五十近い 、小太りに肥った、いつ見ても気の若い女である。 「ふむ、さうか : お父さんも今年は大分儲けたって話ちゃないか。お金が儲かったら家の普請で まへさん もするがい、って、お前様から少っとさう云っておやり。ほんとにお前さん所ぐらゐがらんとして、古ば ぎたな けた穢い家はありやしないよ。わたしや名古屋へ行く度毎にさう云ってやるんだけれど、いづれ共のうち にとか何とか、長いことばかり云って居るんだもの。此の間も博覽會の時に二三日泊まりに來いって云っ て寄越したから、わたしやさう云ってやったのさ。え、と、遊びに參り度きは山々に候へども、 ねがね御勸め申置き候御普請の儀、いまだ出來かね候うちは、地震が恐ろしくてとても御宅に逗留致し難 く候ってね。ほんたうにお前さん冗談ちゃない。少し強い地震が搖って御覽、あんな家は忽ちびしゃんこ まうろくちい になっちまふから。お父さんは頭が禿げて耄碌爺さんになって居るから好いが、叔母さんは色気こそなく なったもの、、まだ命は中々惜しいからね。」 カオ うち うち 277

3. 谷崎潤一郎全集 第1巻

あやま だから、是非お目に懸って、譯を話して詫らなければならないと思って居たの。ほんとに濟まなかったわ ね。あたし、つくる \ 自分を馬鹿だと思ってよ。」 いざ喋舌り出すと、女は又雄辯であった。宗一は敏捷な言ひ廻しに眩惑されないやうに、要所々々に心を 留めて聞き終った後、 : 口に出すのは初めてだが、僕は美代ちゃんを戀して居る。 「そんな事は、怒るも怒らないもないよ。 かう云って、自分の唇が洩らした大膽な言葉に、自ら戦きながら語り續けた。 : 僕は出來る事なら、君と結婚をしたいと思ふ。 「そりや美代ちゃんだって、気が付いて居るだらう。 君の家でも、僕の家でも承知してくれなかったら、已むを得ないけれど、若し兩方の親が許したら : 僕の所へ來るなり、他へ嫁に行くなり、美代ちゃんに撰擇の自由が與へられたら、君は僕と結婚をしてく れまいか。」 「宗ちゃん、そりや本當のこと ? 」 美代子は、低い、熱心の籠った聲で、力強く念を押した。 「うむ。 くらでも立派な 「あたしのやうな者を、そんなに思って下さるのは勿體ないけれど、宗ちゃんなんか、い ・ : 宗ちゃんはまだ、家の事情を詳しく御存知ないんでせう。あ お嫁さんを貰へるぢゃありませんか。 たしはほんとに不仕合せな入間なのよ。此の間から、いっそ死んで了はうかと思った事が度々あるの。先 をのゝ せん 450

4. 谷崎潤一郎全集 第1巻

密 秘 間の小路にぶつかった。 成る程正面に印形屋の看板が見える。 其れを望みながら、秘密の潜んでゐる巖窟の奥を究めでもするやうに、つか / \ と進んで行ったが、つき あたりの通りへ出ると、思ひがけなくも、共處は毎晩夜店の出る下谷竹町の往來の績きであった。いっぞ や小絞の縮緬を買った古着屋の店もつい二三間先に見えて居る。不思議な小路は、三味線堀と仲お徒町の 通りを横に繋いで居る街路であったが、どうも私は今迄其處を通った覺えがなかった。散々私を惱ました 精美堂の看板の前に立って、私は暫く彳んで居た。燦爛とした星の室を戴いて夢のやうな神秘な室氣に蔽 ひから はれながら、赤い燈火を湛へて居る夜の趣とは全く異り、秋の日にかん / 、、照り附けられて乾涸びて居る 貧相な家並を見ると、何だか一時にがっかりして興が覺めて了った。 抑へ難い好奇心に驅られ、犬が路上の匂ひを嗅ぎつ、自分の棲み家へ歸るやうに、私は又其處から見當を つけて走り出した。 すがばし 道は再び淺草區へ這入って、小島町から右へイ \ と進み、菅橋の近所で電車通りを越え、代地河岸を柳橋 の方へ曲って、遂に兩國の廣小路へ出た。女が如何に方角を悟らせまいとして、大迂廻をやって居たかゞ やげんぼり 察せられる。藥研堀、久松町、濱町と來て蠣濱橋を渡った處で、急に共の先が判らなくなった。 何んでも女の家は、此の邊の路次にあるらしかった。一時間ばかりか、って、私は其の近所の狹い横町を 出つ人りつした。 ひあはひ だうれうごんげん 丁度道了權現の向ひ側の、ぎっしり並んだ家と家との庇間を分けて、殆ど眼につかないやうな、細い、さ うち 269

5. 谷崎潤一郎全集 第1巻

智 の 大 の 發 此 晩 浮 今 と オよ に カゝ ど イ業 壁 っ 家 豸王 下 谷 で の か に し 間 は 院 は り れ も ふ で 第 叡 放 日乍 ふ 川 の 九 に を て は た て の は 形 熱 向 爺 來 山 イ 條 文 イ乍 武 袈 流 す 禪 お が 忌 の る 明 っ 「裟 聖 齋と子 る つ な け ↓方 さ の あ に の て 信 淨ぎ姫 主 様 な と 士 っ 方 る 居 徒 を の 理 票 で 迄 . る と は は を に 始 廣 ↓方 屋 見 を 田丁 亭 る あ ム る に 魚 招 が は 朴せ め と と る が イ曾 齒ばら 全 : 衣 中 再 だ カゝ か 何 信 れ 絞 侶 國 村 澤 び の れ を 寺 山 竹 ん 州 ば 屋 下 た 山 に ら て し は 經 イ可 ま に 居 駄 で の を 萬 何 戻 を 驚 田 沙 も ら 先 て し 讀 人 卒 冫定 君 る 穿 た つヾ い 示 て 洋 此 川 は む も と ば 持 處 行 を 上 て ね ム 学ぃ を イ言 ふ し つ カゝ と ノヾ て 渡 中 イ た り リ て の て が 居 ら 川 ロ 來 ↓ち 村 1 ロ や 主 だ 生 ン る せ れ た 、イ弗 で 眞 て と れ た で く 甲 キ 蘭 オよ 女 て あ 里 ン 刀ヾ っ 始 1 西 く 淨 オし る へ、 カ で の ッ ヨ : て め 1 ロロ を タト 不 と 出 の 路 け、 て で は 賴 堤 本 あ 詩 解 交 來 に は を の 山 集 す 酉卒 る 家 幸 る で が る と で の の っ 列 者 の 止 を あ 四 場 り カ ふ ま 雨 で し て な ら を て な て け 事 於 座 あ 降 下 此 れ 矛劣 る の の 家 た と も て さ と 軒 で あ 子 幅 か ま を の の よ 有 り 威 板 捕 さ が ひ 頂 ん 利 の な 天 か 財 於 降貸 を な の 窺 な 歌 つ て の が が あ い 家 て ら ふ ら ま 女子 で り き 庫 あ ま と だ ネ里 る さ が 々 344

6. 谷崎潤一郎全集 第1巻

こんな事を云ひ合った。猪瀬は闇をすかして靜江の瞳を覗はうとした。 「もう見付かったんだぞ 。みんな出て來 1 い。」 やがて晃一の怒鳴る整がした。 七月下旬、新庄の祭が近づくと街の人々は、一日一湯野濱を引き揚げて行った。猪瀨に取っても思ひ出の多い 天滿宮の祭であった。廿四日の祭禮の當日、彼は母を一人古ロへ歸して、山岡の後を追った。 もとあひかい とほ 本合海の渡しから新庄まで二里の街道は、祭へ急ぐ人々の俥や徒歩の群で賑はった。此の一日を睛れと着 飾る百姓の娘達のケ、、 ( / \ しい洋傘が街道の後にも先にも見えた。午後二時の日は右方の猿羽根峠から正 あざやか 面に連なる中央山脈の襞を鮮に照した。其の此方に展けた平原には見渡す限り畑地が靑々とっゞいた。 へ近づくに隨って左手の西山の蔭から鳥海山が、寸、一寸とせり上って來た。共れを見ると猪瀨は又湯野 濱の事を想ひ出した。 新庄の彼の親戚・・ー、ー , 母親の實家 中村の家は街の中程にあった。日盛りの街は沸き騰るやうな雜沓 で、人々は暑さを忘れて騒いだ。梅の紋のついた提灯が軒列に吊るされて、絹行燈が兩側にずらりと井び、 往來の處々に大きな行燈を頂いた門が造られた。花車、屋臺、大名行列などが其の門の下を通ると、見物 なだれ 人は狹い街路に雪崩を打った。芝居、寄席、活動寫眞、見せ物、各種の興行が町に催されて、道端に建て をどりやたい られた踊屋臺では藝妓の踊が始まって居た。 中村の家につくと、猪瀬は挨拶もそこ / \ にして戸外へ出た。さうして人ごみの中を分けて山岡の家を訪 よせ あが さばね なら 134

7. 谷崎潤一郎全集 第1巻

長で、ゴム輪とは云へ、ビカピカ光った車臺などは中々見嘗らない。而も相箱が今以て盛んに流行すると 見える。幅が狹くて、兩股の間へ鞄を挾むと足を入れる室地がない。お蔭で私は買ひたての足駄の齒を缺 ル、つ : をり・ いて、洋傘を何處へか落して了った。 ゃなみ 雨はいよ / \ 土砂降りになって、陰鬱な京の小路の家列に瀟々と濺ぐ。澁のやうに燻んだ色の格子造り 軒を並べ、家の中は孰れも眞暗で、何百年の昔の匂が瓦や柱に沁み込んで居る。到る所に佛師の住居の見 えるのも、私には珍しくなっかしかった。 市區改正で、電車路を取擴げてゐる四條の大通を横切ると、程なく三條の御幸町角の新聞社へ着く。新聞 社と云っても、日本造りの古びた建物で、森閑とした二階の應接間へ通される。 「や、あんたが谷崎さんで : : 御盛名は兼ねてから伺うて居ります」 と、今しがた封を切った松内さんの手紙を握って、春秋さんが綠側傳ひに入って來る。 「靜かで勉強が出來て、夜遲く歸ってもかまはぬゃうな宿屋を周旋してくれろ」と云ふ手紙の注文通り 早速恰好な隱れ家を尋ねさせるから、兎に角一寸晝飯を喰ひに行かうとなった。 ふやちゃう 案内されたのは、麩屋町の佛國料理萬養軒と云ふ洋食屋である。近來京都の洋食は一時に發達して、カッ フェ・。ハウリスタの支店までが出來たさうな。此處の家もつい此の頃、醫者の住居を共れらしく直して開 業したのだが、中々評判がい、と云ふ。矢張日本造りの疊の上へ敷物を布いて、テーブルや椅子が置いて 雀ある。五坪程の奥庭に靑苔が一面に生えて、石燈籠の古色蒼然たる風情など、洋食屋には少々勿體ない。 「唯今もう一一三人客を呼びましたから、あなたに御紹介しませう」 あひ・はこ 335

8. 谷崎潤一郎全集 第1巻

少年 かきがら もう彼れ此れ二十年ばかりも前にならう。漸く私が十ぐらゐで、蠣殼町二丁目の家から水天宮裏の有馬學 あきうどやこんのれん カ / \ と日があたって、取 校へ通って居た時分ーー - 」人形町通りの空が霞んで、軒並の商家の紺暖簾にぼゝ り止めのない夢のやうな幼心にも何となく春が感じられる陽気な時候の頃であった。 そろばん 或るうら / \ と睛れた日の事、眠くなるやうな午後の授業が濟んで墨だらけの手に算盤を抱へながら學校 の門を出ようとすると、 「萩原の榮ちゃん」 うしろ と、私の名を呼んで後からばた / 、、と追ひかけて來た者がある。其の子は同級の塙信一と云って人學した 當時から尋常四年の今日まで附添人の女中を片時も側から離した事のない評判の意氣地なし、誰も彼も弱 虫だの泣き虫だのと惡口をきいて遊び相手になる者のない坊ちゃんであった。 「何か用かい」 珍らしくも信一から聲をかけられたのを不思議に思って私は共の子と附添の女中の顏をしげ / \ と見守っ こ 0 「今日あたしの家へ來て一緖にお遊びな。家のお庭でお稻荷様のお祭があるんだから」 緋の打ち紐で括ったやうな口から、優しい、おづ / \ した聲で云って、信一は訴へるやうな眼差をした。 いつも一人ばっちでいぢけて居る子が、何でこんな意外な事を云ふのやら、私は少しうろたへて、相手の うち まなざし 145

9. 谷崎潤一郎全集 第1巻

山口はわざと仰山に狒として、往來のまん中で立ち止った。 「まあさ、何もそんなに怒るには及ばないさ。一切君に任してあるのだから、さう手數をかけなくてもい 、ちゃないか。」 「いや、手數をかけると云ふ譯ぢゃないが、あんまり君が贅澤を云ふからぢゃ。私は一昨日吉原へ行った ばかりたから、今夜はそんなに気が進んで居らんのちゃ。今日は君に賴まれたから據んどころなく出て來 たんちゃ。全く君の犧牲になっとるやうなものぢゃ。」 「あは、、、 犧牲はちっと大袈裟だな。さう恩に着せないでもよからうぜ。」 だうらくもの 「冗談ぢゃない。ほんたうの話ちゃがな。なんぼ私が道樂者だって、始めての人を誘惑するのは實際いや な役廻りちやからなあ。」 「始めてと云へば、僕にさう云ふ經驗が無いのだと云ふことを、先の女に君から斷ってくれ給へね。さう ぐあひ でないと僕は何だか工合が惡いからな。」 「い、よ、心配せんでも大丈夫だよ。そんなことに気を揉むなんて、君も可愛い男ちゃなあ。」 こんな事を語り合ひながら、二人は一二時間も公園の彼方此方をさまよって、バアへ這入ったり立ち見を したりして隙を潰した。やがて十時頃になってから、「さあそろ / \ 行ってみよう。」と云ひながら、山口 はずん / \ 先に立って、十二階の下の細い新路へ踏み込んで、兩側にぎっしりと並んだ、明るい家の軒下 をぐる / \ と經廻って行った。かういふ狹い區域に、どうしてこれほど澤山な横丁があるかと驚かれるく らゐ、其處は蜂の集のやうに交錯した路次と路次とが、目まぐるしく折れ曲って居た。さうして其の家々 へめぐ しんみち さぎ わしをとゝひ 550

10. 谷崎潤一郎全集 第1巻

と一旦は承知しつゝ、直ぐと三人の様子に眼を付けて、お伴れ様がお有りではちとお座敷が狹すぎますと か、明いて居りました積りのお座敷が實はまだ塞がって居りましたとか、體よく斷わられるばかりであっ 共の夜は月があると見えて、曇った空が鈍い鉛色の底光を含み、晝とも夜とも區別のつかない、 とした謎のやうな光りを、寒國の市街に投げて居た。一と冬の間に五六尺も降り固まった往來の雪は、硝 子のやうにつる / 、、と凍って、四人は幾度か滑って轉びさうになり、互に手を把り合ふやうにして歩んオ のきば めぬき 此の町の目貫の場所かとも見える大通りもすっかり戸が閉まって、家々の軒端にはさも重たさうに雪がも たれか、り、時々そよ / 、と吹き渡る靜かな夜風にも唇が痛む程の寒い威力が潜んで居た。 此の世から追放された亡者のやうに、眠れる街の辻々で迷ひながら、共れでも根気よく一軒々々宿屋を賴 ゃなみ んで廻ったが、何の效もなかった。妹娘は時々家列の暗い片隅に身を寄せて、。へったりと蹲踞ったま、、 激しい嘔吐に肩をふるはせて、ひい / \ と泣いた。共の度毎に直はマントの蔭へ娘を庇ひ入れて、背を 揉んでやったり、胸をなで、やったりした。 「御志は有り難うございますが、何卒あなただけは御自由にお宿をお取りなすって下さいまし。私共は野 宿でも何でもする覺悟でございますから」 と、言葉を盡して、三人は直彦に説いたが、かうなると意地になっても、此のま、別れる心はなかっ 直彦の後に附いて、姉娘も到る所の宿屋の玄關へ立ち竦んでは、いろノ \ と口説き立てた。 こ 0 かひ そこびかり うづくま 222