女 - みる会図書館


検索対象: 谷崎潤一郎全集 第11巻
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1. 谷崎潤一郎全集 第11巻

月極めにして、毎週火曜と金曜とに遇ふはずでしたが、二十五日の次ぎの火曜日以來、女は不思議にも姿 を見せません。纔かに望みを屬してゐるのは、あなた方から横濱の警察へ照會して、さう云ふ種類の女を 探して頂いたら、或ひはうまくその女を捕へることが出來るかも知れないと云ふ一事です。けれども多分 あの女はまらない。非常に用心深くって几べてに祕密を守ってゐるので、恐らく警察の眼には觸れない。 假りにまへたとしても女はかう云ふ面倒な事件に係り合ふのを避けるために、證據のない限りは否定す るでせう。さうしたならば、一緖に驛の食堂へ上がったことと、鎌倉のホテルへ行ったことと、ロンドン ハアで一つテ 1 プルに腰掛けたことと、有樂町驛のプラットフォームのべンチに泥醉してゐるその女を介 抱してゐたこととを、それぞれの證人によって明かにすることが出來るだけです。さうしてそれは孰れも 二十五日よりは以前のことです。僕は二十三日以後、二十五日の朝迄は丸の内ホテルにゐました。此れは ホテルでお調べになれば分ることです。しかも肝心の二十五日の午後四時からは、全く女と二人きりでゐ こ。假りに本牧に泊った家を突き止めたとしても、その家の者は女以外に誰一人として僕の顏を見てはゐ ません。二人をそこへ運んで行った自動車さへも、女が特に呼び寄せたもので、僕はその車の種類も番號 も何も知らない。 一言にして云へば、僕は運命のいたづらで、最も嫌疑を蒙むるべき事件の起った 瞬間に、全く世間から姿を消すやうな地位にハマリ込んでゐた。僕はその時その女からお伽噺の隱れ蓑を 着せられてゐた。強ひて臆測すれば、誰かが僕を陷れようとして、その女を道具に使って、 「はは、それはあなたの續篇に出る蔭の男の話ですな。あれは民衆社の校正刷りで拜見しましたが、小説 の方なら孰れゆっくり本になってから拜見しませう。」 372

2. 谷崎潤一郎全集 第11巻

果たして突き止められるかどうかもアテにならない。見付からないでうろうろ戸迷ひするやうだったら、 檢事はなほ更あやしむだらう。家も分らない、姓名も知らない、そんな女を月極めの妾にして、此の間ち ゅうから遊んでゐた ? そんな馬鹿げたことがあるか。一體その女に就いてお前は何を知ってゐるのだ ? その時何と答へるか。彼はその女がドイツ語を解することと、もとドイツ人の夫を持ってゐたこと それだけを知ってゐるに過ぎない。そ と、嘗てその夫とハンブルヒに暮らしたことがあることと、 れとても女自身の口から出たので信を置くには足らないのである。その外には銀座のカフェエ・モナコへ 出入りすることと、櫻木町驛の食堂のポ 1 イが馴染みであることを擧げ得るけれども、モナコやボーイに 尋ねても女の住所が分らなかったらどうするか。假りに住所が分ったとしても、女が飽く迄彼との關係を 否認したら、二十五日の夜女の家に確かに彼がゐたと云ふことを、誰が證明してくれるか。女に二階を貸 してゐる階下の人たちを取り調べるか。が、彼等は一切顏を見せないのであるから、あの晩二階に誰がゐ たかを明言することはむづかしからう。「男と女の整がしました。さう云ふことは始終あります。」と、さ う云へるだけに過ぎないであらう。すると今度會ふ時にあの家の町名番地をよく調べて置く必要があるカ それが明日の火曜日であって、同時に、兒島の告別式があるのである。しかも女とは櫻木町へ午後一時と 云ふので、告別式は二時から三時までの間であるから、どちらかを放擲しなければならない。 告別式へ行く義理合ひはないのだから、その方を止めればいいやうなものの、しかし行ってみたい気がし ないでもない。兒島が殺された時の況、その後の模様、犯人の心當りなど、新聞では分らないことが遺 族に會へば分るかも知れないし、彼等が水野をどう云ふ眼をもって見てゐるのか、何の積りで死亡通知从 330

3. 谷崎潤一郎全集 第11巻

てゐるし、結局茫然として引き返すより仕方がなかった。そして歸りの電車の中でも女のことと兒島のこ ととがごっちゃになって、いろいろと彼の空想を刺戟しないでは措かなかった。彼には何だか、女が急に 3 姿を隱したと云ふことが兒島の問題に關係がありさうに考へられて仕方がなかった。ロンドンバアで偶然 知り合ひになった女と、兒島の事件とは表面何の連絡もないやうだけれども、しかし一概にさうも云へな 。何だかそこに裏の裏があって、あの女が始めから水野を陷れるために一と役買って出たのではないか、 うしろに蔭の男がゐて、そいつがあの女をあやつってゐるのではないか、と云ふやうな氣がした。考へて みればああ云ふハイカラなモガタイプの女が、い くら商賣だからと云って、格別金がありさうにも見えな い水野のやうな男に眼を付けたと云ふのが變だ。祕密祕密と、几べてに祕密一點張りで、名前を明かさな かったのもをかしい。それから會ふ日を火曜日と金曜日に極めたのも深いたくらみがあったからで、二十 五日の夜の水野の行動を世間から隱すやうにしたのかも知れない。畜生 ! とうとう己は蔭の男の陷し穴 にかかったかな。かかるまいかかるまいと警戒しながら、女にかけては眼がないものだから、ついうつか りと乘せられたかな。 冗談ちゃない、そんな馬鹿げたことがあるもんか ! 女を使ったり、何の罪もない人を殺したりして迄己 を陷れようとするなんて、そんな面倒なことをする奴が今時の世の中にあるもんか。みんな己の飛んでも ない妄想なんだ。 : 水野はそれを全く根も葉もない恐怖、さもうそらしいことだと云ふ風に考へても みたが、しかしそれなら何のために女が姿を隱したのか。強ひて推理すれば、水野自身は自分に嫌疑のか かってゐることを知らないけれども、世間では已にみんながそれを問題にしてゐるのではないか。そして

4. 谷崎潤一郎全集 第11巻

りられた。さうしてそれが十六日の晩まで机の上に擴げてあった。中澤があなたの不在中にあなたの部屋 へ行った時、十一月二十五日のところが開けたままになってゐるのを見た。そこであなたが外形に於いて も小説と並行してゐないことを證據立てるには、問題の日、印ち十一月二十五日に於けるあなたの動靜を 明かにするより外にないのです。われわれの調べた限りに於いては、それが分ってゐないのですが、 「あなたは火曜日の晩以來、下宿へ歸って來られなかったさうですな。」 と、渡邊が後を引き取って云った。 「ああ、それです、それに就いては非常に困ってゐるんです。僕はあなた方の質間が結局そこへ落ちて來 ることを豫想してゐたんですが、何故僕が火曜日の晩以來ゐなくなったかと云ふことを説明するには、一 人の女を出して來なければならないんです。さうして問題の二十五日の夜に於ける僕の動靜を知ってゐる のは、ただその女一人しかない。 ところが僕は、その女の名も知らなければ、素性も知らない、住所も知 まるでお伽噺のやうだと云 らない。だからあなた方に、在りもしない女を捏造したと云はれても、 はれても、不幸にして辯解の辭がないんです。尤も僕が火曜日の午後一時頃、一人の洋裝をしたタイビス ト風の女を連れて櫻木町驛の食堂へ這人ったことは、恐らくあの食堂のポ 1 イが證明してくれるでせう。 その女こそは、十六日の晩銀座のロンドンバアで出遇って以來、僕と或る種の契約を結んだところの、主 に外人を客に取ってゐる職業婦人なんですが、さうして二十五日の晩に泊ったのはその女の家なんですが、 1 ではその家はどこかと云はれても、僕にはそれを確かに此處だと指し示すことが出來ない。僕はその女を

5. 谷崎潤一郎全集 第11巻

缺けたら取り引きしないと云ふのだらうか。けれど百六十圓に對する百二三十圓を受け取るとしたら : : 損得の胸算用は別として金のことは儿帳面にしないと莱が濟まないたちな : 損はないはずである。 のだらうか ? さう云ふ風にキツ。ハリ極まりをつけるのが矢張りドイツ流なのだらうか ? 水野にはそれが、男をじらす手段であるとは思へなかった。男はわざわざ東京から附いて來たのである。 もう此れ以上じらす必要はないはずであり、此の女のテキ。 ( キとした氣象ではそんな足もとに付け込むや うなアクドイことをしさうもない。それに女としてみれば、ここで男を逃がしてしまへば、果たして此の 次ぎに來るかどうかはアテにならない譯であるから、さうなると身も蓋もなくしてしまふことを考 ~ ねば なるまい。それだのに此の女は、見す見す百二三十圓の金を眼の前にしながら、振り向かうともしないの である。では何のためにロンドンバアであんな意志表示をしたのだらう ? 醉った紛れのいたづらかしら ん ? 女は十時になったら起すと云った。するとその時分に誰かと約東があることを想ひ出したのであら うか ? が、女の腹はどうであっても、結果はじらすことになる。 : よう、君、君 : 「でも、 いちゃないか、そんなことを云はないだってー 「又今度 : ・ : : : 今度いらっしゃいよ。」 「どうしてさ ? なぜ急に氣が變ったのさ ? 」 「氣が變ったんぢゃないけれど、あんまり遲くなっちゃったんだもの。 ら。」 女は水野の手のひらの間からそっと自分の手のひらを拔いて、 : 十時には人が來るんだか 247

6. 谷崎潤一郎全集 第11巻

白 やはり此のバアへ來て、同じテーブルに向かひ合はせたのも縁だ。しかも向かひ合はせると直ぐ、女の方 から秋波を寄せた。 あのハイカラが、あたりまへなら到底見向きもしさうもない己のやうな男にた だならぬけぶりを見せたと云ふのは、よくよくの綠だ。大方好運の神樣があの女の眼に宿ってくれたのだ らう。それに折りも折り、己の懷に百六十圓の金がある。かう云ふ風に几べてお誂へ向きに運んでゐるの は、天があの女を授けてくれたのだ。よし、どうしても己は掴まへてみせる。今夜會へなければ此れから 毎晩でもモナコへ行ってやる。それでも會へなければ、モナコで聞けば分るだらうから、あの女の家へ訪 ねて行くなり、手紙を出すなり、どうにでもする方法がある。そこまで度胸を極めてしまへば確かなもん だ。どう轉んでも此の四五日ぢゅうには會へる : あの女がさっきここを出て行ったのが七時ちょっと過ぎだった。あれから晩飯を喰ひに行ったとして、ま づその間が二時間はかかるだらう。それからモナコへ廻るとすると、九時ごろになるか知らん。それとも あの二人の孰方かと話が出來て、待合へでもシケ込むか知らん。いや、ああ云ふ女は待合ではあるまい ホテルの一室か、でなければ多分あの女の集があるのだらう。麹町か、麻布か、赤坂か、あの邊の高臺の 閑靜な一廓にある小じんまりした洋風の家。 : 見付きは品のいいしまうた家で、大使館員か外務省の 役人でも住みさうな構へで、入り口のところは標札も讀めないくらゐに門燈がほの暗く、し 1 んとして空 き家のやうに、扉がひっそり締まってゐる。呼鈴を押すと中から支那人のアマが出て來て默って戸を開け る。そして小聲で、「ヘルアイン ! 」とドイツ語で云ふ。女について二階へ上がると、そこに祕密の寢室 がある。ふかふかと體の落ち込む安樂椅子、長椅子、ダブルべッド、レースの窓かけ、煖爐棚、 223

7. 谷崎潤一郎全集 第11巻

女はだまってうなづいたやうであった。水野の眼には、うなじを垂れてしとやかに耳を傾けてゐる肉づき のいい襟足が見えた。髪は艶がなく、赤くそそけてゐるけれども、苦勞をしたわりに痩せたふうはなく、 却って前よりは年增ざかりの脂ぶとりに肥えてゐるのは、矢張り此の女が無神經なせゐなのか、それとも ロでは何と云はうと、無意識ながら現从に井んじてゐるのであらう。彼は毛絲の肩掛けの下に覗かれる背 すちの方から : 此のめいせんの綿人れを着た、黒繻子の腹合はせ帶の下で息づいてゐる十三 四貫の肉體が嘗て己れの「女房」と稱するものだったのだ。己は此の肉體の太ったところが気に人ったの だが、間もなくそれが嫌ひになった。此の肉體は太ってゐるばかりで彈力がなかった。緊張がなかった。 人のいい女は、肉體に迄もその人のよさが宿ってゐるのか、手ざはりでそれが感じられた。云はば眠って ゐるやうな肉體であった。が、いったい此の女の云ふ幸輻とは、どんなことを意味するのであらう。かう 云ふ女でもそれほど幸を追ふのであらうか。 「クリスチャンになったのはどう云ふ譯だね。感ずるところでもあったのかね。」 多少冷やかされたやうな気がしたのか、女はかすかに「ふふ」と笑った。 「え ? ど、つ云ふ譯さ ? 」 「別に譯なんかありはしないわ。」 「お前、此の世に御様があると思ふのか ? 」 「そんなことは分らないわ。 けれども今に分って來るからって云はれたの。」 「今の人にかい ? 」 288

8. 谷崎潤一郎全集 第11巻

「さうだよ、あれは女も惡いんだよ。好きな人なら手鍋を提げても構はないって云ふ主義だからね。」 「あたしだったら、月に千圓お小遣ひをくれなければいや。」 「くれたら結婚する気があるかね。」 「そりやしないとは限らないけれど、日本人は眞っ平よ。」 「日本人だって例外はあるさ。僕なんぞは贅澤な女の方が好きだな。」 「さう ? だけどフラウに持って見ると後悔するわよ。我が儘で、おてんばで手が附けられないから。」 いっぺんさう云ふのを女房に持って 「さう云ふ女がいいんだよ、可愛がるのに張り合ひがあって。 みたいもんだな。そして思ひきり贅澤をさして、欲しいものは買ひ放題、うまいものは喰べ放題、何でも 僕は昔から、さう云ふ女をフラウに持っこと したいと云ふことをさせて勝手氣儘に振る舞はせて、 を始終夢に見てゐたんだが、日本の女には今迄それに値するやうなのが一人もないんだ。あるかも知れな 、僕は一度もぶつかったことがないんだ。それで今でも獨りばっちでゐるんだがね。」 「さう ? あなた獨身なの ? 」 それからずつ 「持ってゐたことはあるんだけれど、馬鹿なんで叩き出しちゃったよ、二三年前 と獨身なんだ。夢が實現される迄は、いつまでも待っ積りなんだ。」 テ 1 ブルの下で女の靴の先がさはった。テ 1 ブルの上には手のひらと腕とが彼の觸覺をそそるやうに伸び てゐる。胃の腑がみちると彼には別な食慾が湧いた。彼は體ちゅうがうづうづして來た。直徑三四尺のテ 1 ブルがたまらなく邪厥になった : 304

9. 谷崎潤一郎全集 第11巻

いや、さうでないかな、賣淫行爲が明かになれば自分も罪に 女も事實を否認することはなからう。 なる譯だから、西洋流に飽く迄利己主義に出て、冷酷にシラを切るかな。 : あの女にはさう云ふ殘忍 なところがないでもない : その時彼は急に顏色が靑くなった。と云ふのは、今日にも彼が檢事局へ送られて二十五日の晩の行動を問 はれたとしたら、必然本牧の女の家にゐたことを説明しなければならなくなる。「それは何と云ふ女の家 か」と、檢事は尋ねる。然るに彼はその質間には答へられない。彼は女の姓名を知らない。「ではその家 の町名番地は ? 」 次ぎにさう云ふ質問が來る。が、それにも彼は答へられない。「では道筋は分っ さう云はれても彼は檢事を女の家迄連れて行 てゐるだらう、その家へわれわれを同道してみよ。」 くことが出來るかどうか甚だしい。彼は今迄に三度もそこへ行ってをり、行く度毎に少くとも三四時間 長い時は十時間以上も遊んだことがあるのだから、家の内部はよく知ってゐる。外部の様子も實は何とな く知ってゐるやうな気がしてゐたけれど、よく考へるとただ大几その方角が呑み込めてゐるばかりで、電 車路からどう曲るのだか、何番目のどう云ふ路次にあるのだか、さつばり分ってゐないのである。彼は本 牧と云ふ土地に不案内である上に、行く時も歸る時もいつも夜更けか明け方の暗い時分に限ってゐた。強 ひてさうした譯ではないが、さう云ふ廻り合はせにばかりなってゐた。そして大概は行ける所まで自動車 で行って降りてから先は歩いたのであるがその自動車の停まった場所が明かでない。尤もその場所が分り さへしたら、そこから女の家迄はほんの二三町の所であるから、出鱈目に歩いても見つかりさうに思へる けれども、どれも同じゃうなゴミゴミした路次を出たり這人ったりしたのだから、行ってみないことには 329

10. 谷崎潤一郎全集 第11巻

上げる程に、稚兒にしてやって下さいと母が云ふのを、にこにこ笑ひながら聞いてゐた法師は、やがて文 殊丸を自分の方 ~ 引き寄せて、やさしく頤に手をかけて、顏をしげしげと覗き込んだ。そして暫くとみか ひじり うみしてから、 いかさま此の兒は賢さうな兒ぢや、佛門に入って修行を積めば有りがたい聖になるであら つが、惜しいことにはたった一つの障りがある、それを除いてからでなけれと、思ひがけないことを云 った。母が驚いてその譯を詰ると、法師が云ふには、此の兒には遠い遠い先の世から、幾たびとなく生れ 變り死に變って、契りをこめた女がある。此の兒が畜生に生れる時はその女も畜生に生れ、人間になれば 人間になって、輪廻の世界をめぐってゐる。此の世にその女がゐる間は、いっかは行き遇ふことがあらう。 此の兒が年ごろになったとき、身には法衣を纒うてゐても、ひとたびその女の姿を見れば、智慧は曇り、 きづな 心は挫け、煩惱の絆に五體を縛られ、難行苦行の功も失せて無明の闇に墮ちるであらう。 はは」ぜ ひじり 「なう、母御前、和子を聖にさせたいと思へば、今のうちにその女の在りかを捜して、一生和子に會はな いやうに、遠い國へ連れて行っておしまひなされ。それでなければ、愚僧は此の兒を預る譯には參らぬが と、法師は首を傾けて云った。 法師には又、その女が文殊丸より二つ年下の、ことし五つの兒であることや、それが此處から程遠くない、 たつみかた たなごころ 同じ都の巽の方に住んでゐることやが、まるで掌をさすやうに、はっきり占ひが出來るのであった。さ みてら うしてその家をつきとめたければ、母と文殊丸と、二人で淸水の御寺へ參籠するがいい 。眞心をこめて願 をかけたら、七日目の夜に、きっと御佛のお告げがあって、その女の在りかが分るであらうと、そんなこ りんね ほふえ