ては面白がってゐた。お嬢ちゃん、まあ見て御覽、こんなエ合に何ぼでも剥がれますねんと云ひながら、 瘡蓋の端を摘まんで引き剥がすと、ずるノ \ と皮が何處迄でも捲れて行く。その瘡蓋を拾ひ集めて手の中 へ人れて、母屋の臺所へ戻って來て、ほら、お孃ちゃんの體からこんなに皮が剥けるねんと、それを下働 きの女中逹に見せびらかして気味惡がらすのであったが、しまひには皆が馴れて恐がらないやうになっ 妙子が何と思ったのか、今の間にちょっと東京へ行って來る、と云ひ出したのは、悅子の病氣がさう云ふ 風に日增しに快癒しつ、あった五月上旬のことであった。彼女が云ふのには、自分はどうしても一遍本家 の兄さんに直談判をして、お金の問題を解決しないことには気が濟まない、自分は洋行は止めにしたし、 今急に結婚すると云ふのでもないが、少し計畫してゐることがあるので、貰へるものなら早く貰ひたいし、 又どうしても兄さんが出してくれないのなら、そのやうに考へ直さなければならない、勿論此のことにつ いては中姉ちゃんや雪姉ちゃんに迷惑が懸らないやうに、單獨で、穩便に掛け合ふつもりであるから、心 配しないで貰ひたい、ついては、別に今月でなければならないと云ふ譯でもないが、雪姉ちゃんが此方に 來てゐる間の方が、泊めて貰ふにも都合がよいと思ふので、ふっとその気になったのである、自分はそん な狹い家の、子供が大勢騒いでゐる所になんぞ、ゆっくり泊ってゐたくはないから、用が濟んだら直ぐ歸 って來る、見たいと思ふのは芝居ぐらゐなものだけれども、それも此の間此方で道成寺を見たばかりだか ら、ムマ月はど、つでもよ、 、と云ふのであった。幸子は、掛け合ふと云っても誰を相手に掛け合ふのか、計 畫してゐること、云ふのはどんなことなのか、など、尋ねたが、近頃はや、ともすると二人の姉達に反對 こ 0 なかあん きあん 496
細雪下卷 「なあ、こいさん、 と、幸子が云った。 「あたし等何も、無理にこいさんを啓坊と結婚さ、う云ふのやあれへんで。今も云ふやうに、此の際兎も 角も附いて行ったげて、半年でも一年でも一緖に暮らして、眞面目に動めてはるとこを見屆けてから、厭 やったらこいさんだけ歸って來たかて構めへんやないか」 「満洲くんだりまで附いて行ったりしたら、なほのこと別れられへんやうになるわ」 「そやけど、よう因果を含めて見て、それでも分ってくれはれへなんだら、その時逃げて歸って來たかて え、やないの」 「そんなことしたら、動めも何も放っといて跡追うて來るに極まったある」 「そらまあさうかも知れんけど、今迄の義理考へたら、別れるなら別れるで、ちゃんと盡すだけのことは 盡さんといかんやろ、思ふよってに。 「うち、何も啓ちゃんにそないせんならん義理あれへん」 幸子は、これ以上云ふと勢ひ口論になりさうなので、あとを控へてしまったが 「義理がないと云へるやろか」 と、雪子が云った。 「こいさんと啓ちゃんとは、世間の人が誰でも知ってるほど舊い / 、、關係やないの」 「うちは疾うからその關係を斷ちたい思うてたのんやわ。向うが執拗うて、勝手に附き纒うてたんやもん、 ひっこ 779
細雪 下卷 平 行 兩 中 人 川 そ ん そ の だ ク ) づ と に れ 用 と 振 人 い 聲 れ な 面 几 き で ひ へ ひ す 、袖 形 な : 着 思 で 出 垣 そ た や 光 覆 か 何 川 い し 叢 の な の の 家 妙 深 た ど ち た ら と が ひ る で ひ 頃 を を 子 や も 込 聲 な ら あ も か か 出 く 着 お と 螢 は ぶ と の な ん の つ て た 笑 甲 で 囁 さ す と な ら た を ひ 澤 ぢ 急 日寺 つ 本丙 の 物 が 女兼 す 見 っ く て 流 激 分 行 込 野 た が と カゝ し る と ふ い 直 汚 き ん 面 が と ゐ れ に の 屋 て 、夜 ぐ は を そ れ で ム や タ 人 何 見 ふ 兩 が ゐ と ち 川 れ ま つ 落 顏 風 岸 最 と す た し 皿 え な の 初 ち が ろ て も ほ と の の ぼ 闇 で 裾 中 ど 澤 と て た い ど で は は 來 ん イ あ 山 っ あ き り や で モ や 不呈 っ た 丁 lfij ス も と て さ カゝ リ 貸 て 來 幸こ 同 く 程 此 り よ た を り 芒 ン 浴 が 飜 か や 子 が れ じ ゐ て も、 の 分 や 僅 の 衣 し き ま も と ら は に 單 代 お 實 そ 懷 を か す な 土 っ や ム り 着 際 ふ 衣 父 狩 れ 中 オ喬 ら っ 小 な が に 低 殘 ら す に 替 な 川 此 ら の は と の で 黽 草 あ し 燈 る 方 で と る へ そ い あ 弧 ム 程 日ノ目 あ ん に い を る へ の っ 度 な 扇 も る た て な を い を る で 知 描 あ つ も の ら だ く さ ら で か て の 彳皮 あ ら つ さ け 生 も ほ る き カゝ つ が て し で 方 て っ ら ん の と が ひ ぬ た 着 刻 や 分 茂 畑 ゐ 座 は 止ヒ ま ム え カゝ っ な 方 る い な の が る で の 々 つ っ 中 物 螢 幸 て て く だ 見 と に て に 螢 狩 子 出 螢 け 中 の し た ゐ ゐ が 都 : 暗 で 朝 は を た る あ さ の 色 る 出 雅 び彳會 手 い れ 話 川 の が た 畦 ふ 妙 の 子 る を 日 の に の 路 の と 子 記 と や さ ず っ 妙 は 立 水 少 つ は や の っ 出 ふ 面 な 子 、叢 ム 宇 が し ろ て て 飛 移 ぬ 螢 見 大 白 言睾 小 治 と な つ の : こ に 悅 る 川 き 川 夜 中 風 ん ぶ や と た い さ の の や 場 な 情 ム な は の は の の の つ 縁 が 妙 行 く ほ な に で し、 見 な せ し も く ら の と か ま め を あ か 時 叢 行 る え の ら ゐ り つ ん で に っ て の 禪 ね 特 か 近 く ゐ オよ た は を の に 567
く答へたきり、あとは取りとめのない世間話をしたに過ぎない。そのうちに貞之助はやっと気が付いて立 ち上りかけたが、まあお待ち下さい、今日は此れから娘を連れて朝日會館へ映畫を見に行きますので、御 用がおありにならないならそこまで御一緖に參りませう、と云はれ、實はその娘を餘所ながらでも見たい と思ってゐたところだったので、左様ですか、ではその邊まで、と、云はざるを得ないことになった。 もうその時分、街でタキシ 1 を拾ふのはむづかしくなって來てゐたので、橋寺は電話で何處かのガレーヂ から。ハッカ 1 ドを呼んだ。そして中之嶋の朝日ビルの角まで來ると、如何です、阪急までお送りしても宜 しいですが、お差支へなかったらちょっとお降りになりませんか、と云ふのであった。ちゃうど時分時な ので、アラスカへ誘ふ莱なのだと察した貞之助は、今日も亦饗應にあづかることは重ねみ、、、で心苦しいけ れども、此の機會に娘と親しんで見たくもあり、かう云ふ風にしてだん / \ 交情が深まるのは願ってもな いことでもあるので、ま、よと、招きに應じてしまった。で、それから又一時間ばかり、洋食のテ 1 ブル を圍みながら漫談を交した譯であったが、今度は娘が加はったので、映畫の話、歌舞伎劇の話、亞米利加 や日本の俳優の話、女學校の話等々、一層たわいのないことをしゃべったゞけであった。娘は悅子より三 っ年上の十四歳と云ふことで、悅子に比べると物言ひなどもずっと落ち着いて大人びてゐたが、それは一 つには顏だちから來る感じのせゐもあったらう。と云ふのは、女學校の制服を着て、おしろい気のない顏 をしてゐるけれども、その輪郭は既に少女型でなく、面長の、鼻筋の通った、引き締まった成人型なので あった。そして橋寺に少しも似てゐないところを見ると、母親似に相違なく、母が相當の美貌であったこ とも、橋寺が此の少女に依って今は亡き戀女房の面影を偲びつ、あることも、ほヾ想察することが出來 じぶんどき 678
おん許へ 「雪子ちゃん、姉ちゃんからこんなこと云うて來たで。まあ讀んで御覽。 と、幸子は眼の綠を紅くしながら、先づそれを雪子に見せたものであった。 「姉ちゃんにしては珍しい強硬な手紙やで。雪子ちゃんも大分恨まれてるやないか」 「此の手紙、兄さんが書かせてはるねんわ」 「それにしたかて、書かされる姉ちゃんも姉ちゃんやないの」 と書いてあるけど、そんな 「兄さんの顏を蹈みつけにして本家の方へは少しも歸って來てくれず、 こと、昔のことやわ。東京へ行ってからの兄さんは、本氣であたし等を引き取ることなんか、考へてはれ へなんだんや」 「雪子ちゃんは兎に角、こいさんなんか來てくれたら迷惑や、云はんばかりやった癖に」 「第一あんな狹い家に引き取れるかいな」 「此の手紙で見ると、何やこいさんを不良にしたのはあたしの責任見たいやけど、あたしは又、どうせこ いさんは本家の云ふことを聽く人やあれへん、せめてあたしが間へ立って監督してたら、ひどい脱線もせ 下えへんやらう、云ふ考やった。姉ちゃんはこない云ふけど、私が舵を取ってなんだら、今迄にもっと脱線 して、ほんまの不良になってたかも知れへんねん。あたしはあたしで、本家のためも思ひ、こいさんのた 5 細 きず めも思うて、孰方にも瑕が付かんやうに苦心したつもりやってんわ」 さち なん
: 明日は日曜でもあるし、さっき話の出た養老へ案内さ 折角だからもう一と晩伯っていらしったら、 せても宜しいがと、未亡人が云ふのを辭退して、悅子達が戻って來ると直ぐ支度をし、豫定の三時九分の 上りをまへることが出來たが、それだと蒲郡へ五時半頃には着く筈であった。上曜日の午後だと云ふの に二等車は空いてゐたので、四人がエ合よくさし向ひの席を占めたが、腰掛けて見ると昨日からの疲れが 出て、皆口をきく元氣もなく、ぐったりしてゐた。もう人梅の構への室が鬱陶しく、車室の中がじっと りと生暖いので、幸子と雪子とはうしろに靠れか、ったま、とろ / \ とし始め、妙子と悅子とは週刊朝日 とサンデ 1 毎日とを仲好くひろげて讀んでゐたが、そのうちに妙子力 「悅ちゃん、螢が逃げてしまふわ」 と、窓際に吊るしてある螢籠を取って、悅子の膝の上に載せた。それは昨夜、菅野家の爺やが悅子のため に間に合せに拵へてくれた、罐詰の室罐の底を拔いて兩側にガ 1 ゼを張った印席の螢籠で、子はそれを 大事さうに汽車の中まで持ち込んでゐたのであったが、いつの間にかガ 1 ゼを括ってある紐が緩み、その 隙間から螢が一二匹這ひ出してゐた。 「どれ / , \ 、、っちがしたげよう」 ブリキの罐がつる / \ 滑って、悅子では巧く括れないので、妙子が自分の膝へ取ったが、ガーゼの中の螢 と、あっさり暇を告げて座を立った時には、心からほっとしたのであった。 582
たしもそれに賛成したには違ひないけど、云ひ出したのは井谷さんなんですから、怒るなら井谷さんに怒 ってよ、と、丹生夫人はさう云ってから、さうイ、、、さう云へば此の間陣場さんの奥さんに會ったら、あ なた方の噂をしていらっしやったわ、陣場さんもお世話なすったことがあるんですってね、と云ふのであ : と、ち った。幸子ははっとして、陣場さん何とか云うてをられたでせうか、と云ふと、え、あの、 よっと躊躇しながら、お世話したんだけれどはっきり斷られちまったって云っていらしったわ。 場さんきっと怒ってをられるのでせうね、と云ふと、さあ、さうかも知れないけど、さう云ったって綠が ないものは仕方がないわ、そんなことで一々怒ってたら縁談の世話なんて出來やしないちゃありませんか、 あたしは決して野暮は云びませんから、お會びになってお嫌だったら御遠慮なくお斷りになったらい、わ、 ・ : ねえ、兎も角も會ふ そんなにむづかしくお考へにならないで、気輕にいらしって戴けないか知ら、 だけ會って御覽になるやうに雪子さんに仰っしやってよ、會ひもしないでお斷りになったら、それこそあ : さう云って丹生夫人は、自分の方は孰方にしても座敷を申込んだことであるから、 たし怒ってよ。 定刻には橋寺氏を誘って約束の場所へ出かけて行くつもりなので、御返事のお電話を戴くには及ばない、 : と云ふのであった。 大概お越しになるものと思ってお待ちしてゐる、 幸子は、今日聞いて今日と云ふ、足元から鳥の立つやうな申込みに應ずることが餘りにも輕々しいと云ふ 下莱持はあるが、それにこだはりさへしなければ、今日雪子を出してやることに何の差支へもあるのではな かった。雪子が一人で行くことは嫌がるであらうが、今迄にも幸子の代りに貞之助が附添って行った例が 1 細 こ。司題は何處までも、そんなに あるので、貞之助の都合さへよければ、その方はそれで濟みさうに思へ / ド ことわ
細雪中卷 云ふのであるが、しかし芳雄から下の三人はまだ學校へ行かないのであるから、ほんたうに姉の手が室く 時はありさうにもなかった。そのくせ姉は、相間を見ては二階へ話しに來るのであるが、直きに後からそ の三人が上って來て纒はり着く。云っても聽かないとまへて臀を叩いたりして折檻するので、そのため に騒ぎがなほ大きくなり、泣き喚く聲で耳ががん / \ するやうなことが大概日に一二度はある。幸子は姉 が子供に對して手が早いのを大阪時代から見て知ってゐたし、又そのくらゐにしなければ、とてもこれだ けの子供の母として切り廻して行けないことも分ってゐたけれども、そんな有様なので、くつろいで話を する暇などはなかった。悅子も二三日の間は、雪子に連れられて靖國神社や泉岳寺などを見て廻ってゐた けれども、暑い時分にさう / \ 出歩くことも出來ないし、間もなく退屈するやうになった。幸子は兄弟の 味を知らない悅子が、歳下の女の兒を珍しがるところから、かう云ふ機會に從妹と親しませようと云ふ考 もあったので、それも旅館を避けた理由の一つだったのであるが、生憎梅子はひどいお母さん兒で、雪子 にさへもなっかないと云ふ風なので、悅子にはちょっと手に負へなかった。で、もう學校も始まる時分や し・早く歸らないとルミ 1 さんもマニラへ立ってしまふし、 : と、悅子はぼっ / ( 、母に耳こすりをす る始末であった。それに彼女は、自分がさう云ふ躾方をされたことがないので、伯母の折檻が始まると、 脅えたやうな眼つきをして伯母の顏を盜み視るのであった。幸子は、自分達姉妹のうちで一番と云っても よいくらゐ優しいところのある姉を、そんなことで悅子が惡く思ふやうになりはしまいか、又それが彼女 の神經衰弱に變な影響を及ばしはしまいか、と云ふやうなことも心配になって來て、旁よ先にお春を附け て歸すに越したことはないと思ったのであるが、困ったことには、櫛田醫師から紹介状を貰って來た東大 363
ます / 、ひどくなって行った。診て貰ふ程でもあるまいと思って櫛田醫師に電話で相談して、アダリンを 一箇寢しなに飮ますやうにしてみたが、一箇ではなか / \ 利いて來ないし、量を殖やすと利き過ぎて寢坊 をする。朝、餘りよく寢てゐるので、寢かして置いてやると、眼が覺めるや否や枕元の時計を見てわッと 泣き出して、今日も遲刻した、こんなに遲くては極まりが惡くて學校へ行かれないと云って喚く。そんな らと云って、遲刻しないやうに起してやると、悅子ちょっとも昨夜寢られてえへんねんと、怒って布團を 頭からすつぼり被って寢てしまひ、眼が覺めると又遲刻したと云って泣き出す。女中達に對する愛憎の變 化が激しくなって、嫌ひ出すと極端な言葉を使ひ、「殺す」とか「殺してやる」とか云ふことを屡よロ走 る。それに、發育盛りの年頃にしては前から食慾が旺盛でないのであるが、その傾向が募って來て、毎食 一二膳しか食べず、お數も、鹽昆布とか、高野豆腐とか、老人の食べるやうな物を好み、お茶漬にして無 理に飯を流し込む。「鈴」と云ふ牝猫を可愛がって、食事の時は脚下に置いていろ / \ の物を與へるので あるが、少し脂っこい物は自分が食べるよりも大半鈴に遣ってしまふ。そのくせ潔癖が異常に強くて、食 事の間に、猫が觸ったとか、蠅が止ったとか、給仕人の袖が觸ったとか云って、二三度は箸に熱湯をかけ させるので、給仕する者は心得て、番茶の熱いのを土瓶に人れて食事の初めから食卓の上に用意して置く。 蠅を恐れることは非常で、食物に止った場合は勿論、近くへ飛んで來たのを見たゞけでも、どうも止った 上らしいと云って食べなかったり、確かに今の蠅は止まらなかったゞらうかと、周圍の者に執拗く尋ねたり する。そして、箸から落したものは、洗ひたてのテ 1 ブルクロ 1 スの上に落ちたのでも、汚がって食べな 7 細 すゐだうみち い。或る時幸子は、悅子を連れて水道路へ散歩に出て、路端に蛆の沸いた鼠の屍骸が轉がってゐるのを見
て 川 へ ち ま な や っ に 戒 し ひ 、架 眼 が 螢 の や っ 光 る と び飛 ふ 蛇 を 恐 な が ら 迄 っ ゞ い て ゐ る 川 あ 彼 女 と ろ し て あ る を と き 彼 方 渡 り 此 方 へ 冫度 り し く 搖 ら れ て 行 く や っ な さ つ ム あ の 小 川 は 螢 を て 彳一丁 く と 分 く 直 線 に 何 處 上也 誘 ひ 込 ま る の で あ つ た 何 か 自 分 の 魂 が あ く が ゝ れ 出 し て あ ク ) 螢 の 交 つ て 水 の 面 を 「司 く イ氏 が と 晩 ぢ ゆ っ も な く 明 減 し 婁気 限 り な く 飛 び 交 っ て ゐ る の と ふ と ひ や っ な 浪 漫 的 な 心、 彼 女 は 自 分 が カゝ っ し 床 の で 眼 を ぶ て ゐ る 此 の 眞 イ 中 も あ の 川 の ほ と で は あ れ ら の 螢 じ を 作 曲 し た の が あ つ て も よ が も あ る が あ の 世 繪 す る よ り は に き も の カゝ も 知 れ な い お 琴 か ヒ。 ア ノ カゝ あ の 感 冥 想 的 な と で も ム っ た よ い の で あ ら っ か そ れ で ゐ て お 伽 噺 の 世 じ み た 子 供 つ と ろ も 螢 狩 に 來 た 甲 斐 あ ・つ オこ な る ほ ど 螢 豸守 と ム も の は お 見 の や っ な 糸會 畫 的 な も の は な く て る ほ ん た っ に ム 夜 で 番 印 象 の 深 か つ た の は あ の 刻 で あ つ た あ れ を 味 は ゞ け て ゐ た 幽 鬼 め い た 螢 の 火 は ム 夢 の 中 に ま で 尾 を 曳 い て ゐ る や で 眼 を つ ぶ つ て も あ り と 見 ん 覺 に 感 じ ら れ る 時 に く く 川 の く 限 り 幾 筋 と な い 線 い て 兩 側 カゝ ら 入 り 亂 れ っ 點 し 凹 / レ だ 川 面 か ら 暗 黒 が ひ 上 つ て 來 っ あ り な ら ま も や と く の の れ 動 く け は が 視 舞 ひ 上 ら ず に 水 を 慕 て く 搖 す せ ゐ で つ た そ の 眞 の 闇 に な る 刻 月リ 落 ち た そ れ が 今 迄 見 え な か つ た の は が 丈 く 伸 ゐ の と そ 間 か ら 飛 立 っ 螢 が の 568 見 す 限 り ひ と す の 川 の 縁 に て 何 も て し な 兩 岸 カゝ ら は す の が 見