不ーししたいことを押さえ、自分がカルロスの生命に対して責任「まさにそれさ。ここには旅行者はこないが、平坦で空虚な空間 があるのだという弁解もしなかった。どうせ、アウスファラーにい と、絶対零度に近い温度を求めてやってくる研究グルー。フがあるの ってみても、はじまらないことである。かわりに、「カルロスは何だ。クイックシルヴァ事業団は、この外宇宙で、 ( イバースペース か手がかりをつかんだらしいな。わたしは彼を知ってる。彼にはもの諸現象を研究するために設立された。現在また、 ( イ。 ( ースペー う、ことの次第がわかってるらしい」 スのことが、われわれにはよくわかっていない。ハ 。ハードライヴ 「それを聞きだせるかね ? 」 も、われわれの発明ではなかったのだからな。これは、異種族から 「わからんね、襲ってくるものの正体が、私たちにもわかっていれ買いとったものだ。それから、彗星の中で育つように樹木を改良し ば、それだけ安全なはずだと、カルロスを説きつけることはできたようと試みている遺伝子工学の研究所も、外宇宙に設けられてい ろう。たが、カルロスは平地人だ。そんなことをすれば、彼の態度る」 を偏向させてしまうことになる。 「冗談だろう」 「では」とアウスファラー 「カルロスの頭の中にある、手のとど「彼らは本気だよ。どんな彗星にもある化学物質を利用して光合成 かぬ知識を、大事に守っていくほかに、方法はないわけだな」 をおこなう植物 : : : そういうものができたらたいへん有用た。あら 人類の技術をはるかにこえた武器が、この船を ( イバースペースゆる彗星に、酸素を発生する植物の種子が撒かれてーー・」アウスフ からたたきだしたのだ。三十六計逃げるに如かず。ま 0 たく理の当アラーは、唐突に口をつぐんだ。ついで、「いや、何でもない。と 然というものだ。そのままぐずぐずしているなど狂気の沙汰だと、 ころで、そういったグルー。フのために、建築資材が必要だ。ここで 私はくりかえし自分にいいきかせた。が、私はどうにもそのこと建てるほうが、あらゆるものを地球や小惑星帯からも 0 てくるより が、残念でたまらないのたった。 も安くあがる。曳船がいたとしても、怪しむには当らない」 アウスファラーに向かって、「あの採鉱曳船は ? あんな場所で「しかし、あの船のほかには何もいなかったな。この船の近くに 三隻も、何をしていたのか、おれには納得できない。あれは小惑星は、まったく何も」 帯で、ニッケルー鉄の小惑星を、工業地区へ運んでいくためのもの アウスファラーはうなずいた。 なのに」 数時間後、カルロスが、ねむたげに目をしばたたかせながら部屋 「ここでも事情は同じさ。見つかるもののほとんどは、役に立たぬを出てきたとき、私は彼にたすねた。「カルロス、あの曳船は、き 石ころか、氷の塊まりだ。だが、金属分がほとんどないということみの理論で、何かの役割を果たしているのかい ? 」 にも価値がある。建築用に、そういう材料が必要なのだよ」 「どんなふうにかは、まだわからない。理論といっても、なま煮え 「建築「て、何を ? どんな人間が、こんなところに住むというんの思いっきで、あと三十分もすれば、ぼくの間抜けさかげんが暴露 た ? 恒星間宇宙で店でも開くほうがよっぽどました・せ」 されるだけかもしれん。おまけに、この理論は、時流に合ったもの
「月世界探検」表紙 《渋江抽斎》 ( 一九一六 ) として書いて以来、にわか 渋江抽斎 ( 一八〇五 ~ 一八五八 ) に世に知られるようになった。 ( 平凡社世界大百科事典より ) 江戸時代末期の医家。ただしその余業として研究し あざな た書誌学をもって有名である。名は全善、字は道純。 弘前藩の代々医官をつとめた家に生まれた。江戸にお渋江抽斎とはこういう人物なのであるが、では、この いうまでもないだろう いて、当時和漢の古典に精通した狩谷掖斎、およびそ抽斎と渋江保の関係は ? もう、 の一派の人である市野迷庵や伊沢蘭軒について学んが親子なのだ。つまり、羽化仙史という人は、渋江抽斎 だ。それらの人の影響をうけて、とくに考証学にくわの息子だったのだ。抽斎を知らなかった人には感動はう ・ほくはこれを知った時にはかなり しく、多くの中国の医書や一般の漠籍の古い写本ならすいかも知れないが、 びに版本をあつめ、それを研究した。その結果として興奮してしまった。 完成したのが、森立之らと共著になった《経籍訪古「渋江抽斎の息子は、明治時代の作家だったんです 誌》であって、いまでは中国の古書の研究書として名よ、 今度から、日本の t-n 史を語る時、こういえるのだ。 著となっている。また抽斎は、江戸幕府の医学館に召 し出され、医書の講義をしたこともあり、また日本のうれしいではないか。しかも、鵰外の『渋江抽斎』は、 丹波康頼の著わした名高い医書《医心方》の出版にカほとんどこの保の資料提供によって書かれているのた。 これは をつくしたこともある。そのくわしい伝記を森外が では、渋江保はどんな経歴の持主なのかフ 『渋江抽斎』を読むと、かなり詳しく知ることができ る。安政四年 ( 一八五七 ) 生まれ、昭和五年 ( 一九三〇 ) 没。享年七十四歳。形の整った経歴は、いすれ書かなけ ればいけないと思うが、ここでは『渋江抽斎』の〈その 百十二〉の一節を紹介することにしよう。雑誌に森 鵐外の小説が引用されるなどというのも、一興ではない 主人の保さんは抽斎の第七子で、継嗣となったもの である。經を漁村、竹逕の海保氏父子、嶋田篁村、兼 松石居、根本羽嶽に、漢医方を多紀雲従に受け、師範 学校に於て教育家として養成せられ、共立学舎、應応 義塾に於て英語を研究し、浜松、静岡にあっては、或 5
的なものは、どの星の上でも同じである。円周率数百トンの人工放射性元素をロケットに積みこ″ これらの元素は、 ののようなものも、基本的な物理法則などととみ、恒星に命中させてもよい なぜなら、将来、星間交信のネットワークが、 ″どこかの星の字宙人との接触に成功したとき、彼もに、 ~ ~ 宙人同士が共通して使える星間一「〕語とし人工的に誘起されたものと分かる分光学的な輝線 を生み出す。したが「てそうい 0 た恒星は当然、 ~ らは、私たちのま「たく知らない言語で話しかけて使えるだろう。 だから最初に送られてくるメッセージには、星綿密な研究の対象となるだろう。 ″てくることは必至であろう。 しとういったことを手がかり間通信を行おうとするほどの知的生物なら、だれそのため多くの惑星の住民が、その字宙人の住″ ″そのとき、いっこ : でも理解できるようなものが、必ずふくまれていむ恒星に電波望遠鏡を向け、その結果、ついには〃 ″に、相手の言語を理解していけばいいのか。 その宇宙人のメッセージにも気がつく、というこ″ それを、私たちとはまったく違った言語をもつ、るにちがいない。 とになるにちがいないからだ。 たとえば、陽子と電子の質量比とか、 1 、 2 、 いるかたちの研究から知ることができるかもしれ 注意喚起用の信号に続いて送られてくるのは、 : といった数字の列が ″ない、というのだ。 送られてきたら、私たちはそれこそ宇宙人からの彼らが伝えようとしているメッセージに使われて″ 人間の言語体系とは違った言語の例として、 いる符号や、概念を、知らせるための手がかりと ″るか語を研究し、たがいに意志を疎通するための信号だと解釈してよいだろう。素数とか、特別な 意味をもっ数字が、激しい雷雨や、その他の自然なるものだ。 手がかりを探ろうというのである。 知的生物は、 いくつかの例を通して概念を汲み / 〃実際に、星間一一 = 〔語の問題は、これから重要にな現象で生じることはないからだ。 単に注意を引きつけるだけなら、電波でメッセとり、学習する能力をもっている。たとえば、 3 ると思われる。 5 Ⅱ 8 、 5 3 Ⅱ 8 、 2 4 Ⅱ 6 といった価【 - か ージを送らなくても、もっと簡単な方法がある。 ら、はプラスするという 掌宙人がメッセージを電波にのせて送る場合、 意味だということを判断す まず考えることは、自分たちの信号を、自然の雑一一 必 ) るに至るだろう。プラス以 音の中から、何とかして目立たせようと努めるこ 外にも、いろいろな概念を とだろう。 フ伝えることが可能である。 自然現象では、起こりえないようなパターン こうい 0 た異文明間の意 ~ や、一定の反復などを使って、ちょうど、非常に 正確な周期で電波を出している。ハルサーが、天文 / ム志疎通に必要な、特別の言 のウ語についての研究も、すで 学者たちを驚かせたように、とにかく相手に気づ ルアに進められている。 かせることを、第一にするだろう。 ベルが一 たとえば宇宙を支配する物理法則は、どの星の れシ九六五年に発表した星間一『ロ″ 上でも成り立っということを、彼らは知っている さの 練ミ語は、からまでのアル はずだ。 訓アファベ〉トと、 1 から川ま〃 光の速度や、水素の原子構造などといった基本
蘭花ちゃんがたずねる。 博士が俺のほうをちらりと見て、陳さんにいった。馬の骨とは、 「うむ、それはじゃね、ジェット・ロ 1 ラー・タイムマシンの行き 0 とうも、好きにな 俺にあてつけをいっているとしか考えられない。・ 2 りにくい博士た。俺は博士に抗議しようかと思ったが、残りページ先は、陳さんの故郷である 0 国の一億八千万年前の四川省支那竹林 を考えてやめにした。だから、俺は博士の登場に反対だったのだ。郡大熊猫村にセットしてあったのたが、タイムマシンの時間軸一回 、、、たいことも満足にいえない。といって、まさ転半山下跳び装置が狂って、なぜか突然、陳さんの故郷ではなく現 人間が増えると 住所に向かってしまったため、こうなってしまった」 か、連載や長篇もないし。クソッー。 「博士、蘭花ちゃんのことは心配しないで、もし、知っているんな「すると、ここは一億八千万年もむかしの世界こんな遠いとこ ろへきちゃって、どうやって帰るんです。電車はないし」 ら、早くこの事件について説明してくたさい . 俺がいった。 俺も、久しぶりにまじめな顔をしていった。 「そうじゃった。あんまり、蘭花ちゃんがかわいらしいので忘れて「それで困っておるのじゃ」 「しかし、博士はどういうわけで、あたしたちの故郷の過去へいこ しまった。実はなにをかくそう、知っているどころか、この事件は うとしたんですか ? 」 わしが原因で起こってしまったのじゃ」 蘭花ちゃんがいう。 博士が三人の顔を順々にながめながらいった。 「きみたちのルーツを探るためじゃよ」 「博士が原因、それどういうことあるか ? 」 ツなんのためあるのことかよね」 陳さんが代表質問をした。 「うむ。これはタイム・スリップ、日本語では時震などともいわれ陳さんがききかえした。 る現象なのじゃ。詳しい説明は横田順彌著『事典』 ( 広済堂刊「うむ。それはな、わしの研究所の助手にマージャンをやめさせる ・五八〇円 ) を見るとわかるが、時間の流れに歪みができて、このためじゃ」 二軒の家だけが原始時代に時間移動してしまったのじゃ。おわかり「博士の助手に、マージャンをやめさせるため ? 」 蘭花ちゃんが、九十八センチの・ハストをぶるるんとさせていっ かな ? で、その現象が起こった原因しやが、わしが研究しておっ ・タイムマシンが失敗して爆た。 た新型の航時機、ジェット・ローラー 発し、その時の巨大なエネルギーの渦が、この空間に作用したのし「そうじゃ。実はわしの研究所に東家天和という助手がおるのじ ゃ。いや、まことに申しわけない」 「はあ、浪曲師みたいな名前ですね」 博士がペコリと頭をさげた。 「でも、どうして、あたしたちの家二軒だけがタイム・スリップし俺が口をはさんた。 「よけいなことをいうな。これが非常に有能な男でな、わしより、 ちゃったんですか ? 」
いてくれてもいい」 くと・ーーそっちへ目をひくためではない。 フォワードに対しては、 カルロスはびつくりしたようにふりかえった。 ; 、 カロをひらくよ彼は存在しないことになっているのだからーー彼は考え深げに、そ 4 り前、スクリーンが点いた。金髪を小惑星帯人刈りに短く刈りこ こからみえるフォワード の横顔を見つめているところだった。 み、無感動な微笑をうかべている、やせた白い顔がのそいた。 「さて」と、フォワード。「ところで、どういう御用件ですかな ? 「はし 、、フォワード研究基地です」 「こちら、べーオウルフ・シ = イファーです。こちらがジ = リアン 「やあ。こちら地球のカルロス・ウー、長距離でかけてます。ジ = ・フォワード」カルロスが紹介し、私は頭をさげた。「このべイの リアン・フォワード博士をお願いできますか ? 」 船で、地球へ向かっていたところ、 ( イバ ードライヴ・モーターが 「出られるかどうか伺ってみます」スクリーンは点いたまま残っ消えちまったんです」 こ。 「消えちまった ? 」 とたんにカルロスの怒りが爆発した。「いったいどんなお遊びを 迫真性を増すため、私も口をはさんた。「消えちまった、そのと やろうってんだ ? ・ほくがこんな、武装した擬装軍艦の持ちぬしたおりなんです。モ 1 ター ・ケースはからつぼ。モーターの支柱は、 なんて、どう説明をつける ? 」 すつばりと切りとられていました。 ードライヴがないんじ しかし私はすでに、アウスファラーの思惑をみはじめていた。 や、ここに釘づけで、しかもどうしてそんなことになったのかも皆 「ともかく、いわないようにすりやいいんだ。たぶん、聞かれるこ目わからないんです」 ともないたろうし そこでロをつぐんだ。フォワードの姿が現「たいたいそういうことです」カル 0 スが、楽しげな口調で、「フ れたからである。 ォワード博士。この事故については、私にもいささかの解釈がある ジ、リアン・フォワードはジンクス人で、丈が低く幅はひろく、 んですが、あなたのご意見を伺いたいのです」 腕は脚のようで、脚は円柱のようだった。肌は髪と同じくらい黒「あなたがたは、今どこにおられる ? 」 。シリウスの陽に焼けたその色を、今はたぶん太陽の光が、あせ 私は船の位置と速度をコンビータからひつばりだし、それをフ ないように保持しているのたろう。「〉サージ椅子に、浅く腰をおォワード研究所〈、一瞬のうちに送りつけた。そんなことをしてい ろしている。「カルロス・ウーだと ! 」わざとらしい驚きの声をあ し力とうか、ちょっと不安・こっこ。・、、 オナカもしいけなければ、アウス げた。「あの、シレアムの限界問題を解いたカルロス・ウー ご当ファラーには、とめる余裕が充分あったはずだし、彼はとめようと 人かね ? 」 はしなかったのだ。 カルロスは、そうだと答えた。それからふたりは、数学の議論を「よろしい」フォワード の映像がいった。「地球へいくよりも、こ はじめた どうやら、カル。スの解の、ほかの限界問題〈の応用ちら〈こられるほうが、ず 0 と早いでしよう。フォワード研究所の の可否とい「たことらしい。私が、アウスフ , ラーのほうをふり向位置は、あなたの船の前方、距離は二十天文単位以下です。ここ〈
は、異性とめぐりあう可能性は極めて少なくなるのみ家族集団を作るのではないかと思う。おそらギーを必要としないから、それほど大食いではあ ので、やがて絶減してしまう。したがって一頭単くマムシなどのように、親の胎内で卵がかえる卵るまい。大食いでないということは、性質は温和 位でテリトリー を作るか、少数でグループを作っ胎生であろう。 であるということであり、サメやシャチのことを て一定海域を占有するのがふつうである。目撃例 魚が常食の肉食動物であるが、体は大きくても考えるとちょっと心配だが、目撃例から考えて個 の多いことから考えると、前者であり、繁殖期に陸上動物のように自分の体を支えるためのエネル 体数はかなり多いと思われるから、まあ、大丈夫 ・こッつ、つ .0 海底開発や海洋汚染による環境の荒廃が、この 置 ような動物にはもっとも障害になる。とくに海底 の の 大 少 油田の管理や、潮流を変えてしまうおそれのある 背 海底工事などは、きびしい監督が必要だ。水爆や 抗 原爆の海中爆発実験など絶対にいけない。こうい 中 う動物は、いったん亡びてしまったら二度と出現 水 してくるものではないし、人工によってふやすこ とがでぎるなどというものでもない。 一国の利益 がどうとか、体面がどうとか、そんなことで置き 脊 かえのきくようなものでもことでもない。日本学 術会議あたりでも、もっと積極的に各国の学者や よ の 研究者と連絡し、協力し合って研究をすすめてゆ く態勢づくりぐらい考えたがよい。 わが国の学界は、これまでも、ふしぎなもの や、理解できないものにぶつかると、あえて目を つぶり、耳をふたし、意見を求められたりする と、小馬鹿にしたり、あるいはかえって色をなし て発言を拒否するような小児病的な体質がある。 ある種の徒弟制度に起因する閉鎖性と官僚性、事 腔なかれ主義などの陰湿なものが、謎に対する自由 な、ほしいままなアプローチを妨げている。学問 とか研究というものは、本来、本質的に自由なる ものであり、親方の顔色をうかがってからでなけ ればものを言えないなどというものではない。 その意味で、この一枚の写真の投げた波紋は実 に大きいと言わなければならない。 脊椎骨から上方へ長く骨がのびている ( 体の形を保っ ) 脊椎骨 角、には首の骨はない 魚類 0 内 肋骨 は虫類 長い首の骨 魚類の断面 胸骨肋骨 内臓 は虫類の断面ー ( ( 脊椎骨 肋骨 脊椎骨 肋骨 内 体腔 ( 体の中の空所 ) 内
という内容の、本家「海底旅行」の作者ヴェルヌもお 其書は随時世人を啓発した功はあるにしても、概皆 どろくようなアクションまたアクションのストーリ 1 で時局を追ふ書估の誅求に応じて筆を走らせたものであ ある。 る。保さんの精力は徒費せられたと謂はざることを得 『月世界探検』 ( 明治三十九年 ) は、 ない。そして保さんは自らこれを知ってゐる。 科学界の一大発明あり、月世界旅行機械これなり、 の評言を引用して、渋江保のをあまり評価はして 未曾有の英傑と、絶世の美人と相携へて万里大空に飛 いないようだが、・ ほくの立場としてはこれをあっさり認 揚す、其遭遇する危難、奇禍果して如何、怪事あり怪めるわけこよ、 冫。しかない。なにぶんにも春浪にくらべて、 挙あり、読了一番、身は漂渺として、天涯万里の外に作品入手が困難であるため、一生のうちにその半分の作 あらん。 品を読むことができるかどうかの自信さえもないが、 tn g-k 史を語るうえでの正当な評価を与えてみたいと思って と、これもまた、・・・ハローズの大冒険「火いる。数を読んでいないのに、 いまの評価が低いとする この時代には珍し 星シリーズ」に優るとも劣らない いのはおかしいかとも思われるが、 ・ほくはこう考えるの 女性が主人公の波瀾万丈の物語である。 だ。もし、全部が全部、愚作だったとしても、明治の末 また、残念ながらぼくは所持していないが、『月世界期に五十篇からのを書いていたという事実たけをと 探険』の続編『空中電気旅行』は、 ってみても、「保さんの精力は徒費せられた」と判断す るのは、少なくとも研究者の側からは不適当ではな 美人、月宀呂の中天に飛んで踪跡を失す、太陽に焚殺いかと。 せられたるか、驚鳥に拶去られたか生 ? 死 ? 東西 それに、「時局を追ふ書估の誅求に応じて筆を走らせ 南北杏として消息なし、ここに於て空中電気旅行の計 た」とはいえ、なぜそれがや冒険小説でなければな 画あり、捜索隊中、学者あり、少婦あり、惨死あり、 らなかったのかも、もう少し研究される必要があろう。 月世界探険の問題とすれば本書はこの解釈なり。 当時、たしかに春浪の出現で少年小説界は、冒険小説や ()n のブ 1 ムになりつつはあった。しかし、これだけの という、小型スペース・オペラの観がある。 才をもった人だ。単にこの分野がウケているから、じゃ 春浪と比較すると、文体も内容もずっと軟派であるあ書いてみようと思ったとは考えにくいではないか。 が、小説の完成度はともかく、的要素の大小という また、後に保は、おそらく本人がもっとも気に入った 点では、春浪をしのいでさえいる、といってよかろう。 と思われる易や心霊術関係の書に精力をつぎこんでいる 大田兼雄氏は、鵐外の にもかかわらす、そのタイトルから察するところでは、 208
- シルヴァー事業団は、いまわれわれとは太陽をはさんで反対側にの向こう側にいながら、なおかっ海賊船隊の首領ということもあり ~ るアンテノラを、大きな半径でめぐる周回軌道上にいるのだ。そうるしーーー」 ) よりカルロス、このメン・ハーの中のひとりが、船を食う装置をこ 「いや。そいつはありえない」 ) らえたとは思わないかね ? 」 「もう一度考えてみたまえ。ここは太陽の特異空間の外だ。海賊側 いや、あんたのいうとおりだ。その仕事には、重力とい は、当然、ハイ。′ 、 1 ドライヴの船をもっているだろう」 , ものを知っている人間が要る。しかし、どうみても、クイックシ 「もし、ジュリアン・フォワードが船食いの犯人なら、彼はこの近 アー事業団は、嫌疑からはずれるな。一万人以上が就業してい くにいるはずだ。その種の装置は、超空間の中を移動できないんだ よ」 ) グループの中で、何がかくしておける ? 」 ーじゃ、このジュリアン・フォワードという男は ? 」 私はロをはさんた。「カルロス、われわれの知らない何かが命と ーフォワードか。うん、・ほくが昔から会いたいと思っていた人物だりになるかもしれないんだそ。もうそんなお遊びはやめてーー」し かし彼は、微笑して首を横にふるばかりだ。こん畜生。「よかろ ー彼のことを知っていると ? どういう男かね ? 」 う。フォワードに当ってみるだけならな。呼びだして、今どこにい 、よく、ジンクスの知識学会と組んで、何かやっていたよ。ここ数るってきいてやれよ ! 先方も、きみのことは、うわさで知ってる 、うわさをきいていない。銀河系の中心核からくる重力波を研究かね ? 」 ) ていて : : : 結果は失敗たったらしいな。ジグムンド、彼を呼んで「もちろん。ぼくもまあ有名なほうだから」 よう」 「よし。もし彼がすぐ近くにいるようなら、お願いして家まで送っ 、そして何というつもりだね ? 」 てもらえるかもしれんしな。こんな場所でこんなありさまじゃ、ど んなハイバ ーなんたって : ? 」そこでカルロスは、今の状況を思いだした。 ードライヴの船たろうと、恋しくなるってもんだ」 、そうか。あんたは、もしゃ彼がーー・なるほど」 「攻撃されるほうがまだましだ」と、アウスファラー。「戦うこと ならできるーーー」 ・彼をどのくらいよく知っている ? 」 ・評判をきいてるたけさ。有名な人物だ。あれほどの男が集団殺人「だが、逃げることはできないぜ。先方は、こっちの攻撃をかわせ 一走るなんて、わけがわからないよ」 るが、こっちにはできないんだ」 ・前にあんたは、重力現象研究の熟練者を求めるといったな」 「やめろよ、ふたりとも。こいつを片づけるほうが先だ」カルロス ・そのとおり」 は超空間通信機に向かって腰をおろし、番号をたたいた。 アウスファラーは、下くちびるをす・ほめてしゆっと息を吸うと、 ふいにアウスファラーがいいだした。「わしの名前を出さないよ ・たぶん、話しかけてみる以上のことは何もできまい。現在、太陽うにしてくれないか ? 必要なら、きみの船たということにしてお ! 46
間もなく騒々しい叫び声をきいた、見るとどうであ く、皆ことごとく骨となり、思い思いに飛び去ってし まう。 ろう、十五六人の骸骨が、一つの大きな木像の如き上 官をかついで来た、正しくこれは艦長の骸骨であろう。 予らは満身の勇気を振って、二人一所に甲板の上か こと 1 」と ら飛びおりて、その拍子にドシーンと体を打っと共 《五》皆盡く骨となる に、その反動でもう陸へ来ていたのだ。 士官らは上官の骸骨を卓の上に載せて、口々に息を 鳴呼予ら両人は、ふとした空想から、天界旅行を企 吹きかくると、不思議や骸骨に肉が付いて立派な艦長て、それに失敗して海底に不思議な秘密を見た、艦隊 の姿を現わした、最前からこの艦内の出来事の、一部の亡魂が、日日夜夜、かかる残忍なる活劇を演するの 始終を見ていた予らは、さながら長い活動写真を見て 理由は読者諸君にはいまたおわかりにならぬであろ いる様で、しかもそれが活動写真ではなく、実地だか う、されど予らははからすも艦内の金庫において、一 らたまらない。好奇心もいい加減にやめようと思って 大秘密記録を発見し、さてはとうなすかれた節もあっ も、体が動かない、逃げロは解らないしする故、やは 。諸君よ我日本海の海底には、数万の死霊が、日夜 り黙って怖いものを見物していた。 望郷の怨みをのんで、血を流し骨を築き、永久にやむ ところがかの残忍なる士官らは、艦長が復活したの 時がないと思うと、誰か身の毛をよだてすにおられよ を見て、これを乱暴にも荒繩でくくりあげた艦長は怨 う、ああ誰か恐怖の念を挿ますにおられよう。 めしそうな顔をして、絶えず手足を動かしてもがいて いるが、士官らはその手足首胴をさえ、隙間もなく繩というわけで、今月はここまで。それにしても、この をめぐらし、さて愉快なる軍楽の響きと共に、高く大小説はひどいというなかれ。明治の tn なんて、ほとん 檣の上へと吊し上げられたのである。 どはこれと似たりよったりなのた。さっき、・ほくは古典 艦長は苦悶措くところを知らす、思わすも多量の吐の研究者を求めたけれど、これに耐えられないよう この 血をすると、士官らは急いでその血を吸い取り、なおなら、古典の研究などとうていできっこない。 も繩で引き締め引き締め、あらん限りの血を絞り、彼ゴミの山の中から、宝をさがしだすのが仕事なんたから。 らは髑髏の杯に受けて、痛飲する、やがて再び軍楽の 結局、これでも図版が足りないので、この小説の載っ 響きが起ると、骨ばかりに成った木像の如き艦長は、 ている「冒険世界、と同じころのライ・ハル誌「探検世 徐々として引き下され、待ち設けた骸骨の水兵が、ど界」から、それらしい表紙やイラストを紹介して、お茶 こへか片付けてしまう。 をにごしておこう。 さても髑髏の杯に、艦長が膏血を盛りて、気焔ますそれでは、みなさま、また来月。 ( やはり、暑さと、 ます高き士官らは、やがてそのままそこに酔い斃るる中日の弱すぎで、頭が不自由になったとしか思えない。 と共に、かのエッキス光線に美人骸骨と変するが如 ーー編集部註 ) 幻 2 :
の本質〈は大衆小説の一形式とことなのである。一方、同時にそれは「終末聞く、このとき誓 ・、 - 、一して社会に認められ、その方向にそって発展の時」でもあった。彼はこの小説のタイトル願の不思議あって ・、、・一してきた。しかしを成り立たせているもを決めるにあたり、『一九八四年』と『ヨー因果の理法を裁断 》◆◆ 3 のは、実は形式ではない。人を地球上の一個 0 , パ最後の人』 (The LastMan 一 = Eu- したもうと〉】石 ◆。◆・◆の生命、人類を宇宙における一つの種として rope) のいずれをとるべきかを迷「ている。上玄一郎『輪廻と 八四年が「いま」であり同時に「終末」転生』 ( 人文書院 マ、◆・◆、◆捉えようとする″物の見方″なのである。こ ・ 12 0 0 円 ) か ・ - 、・一れがおそらく、においてもっとも理解さであることは、この小説において作者が試み 一 - 、、一れにくいところであり、またもっとも魅惑的た最大の逆説なのである〉Ⅱ三沢佳子『ジ ' ら。 夢と想像力 ① ージ・オーウエル研究』 ( 御茶の水書房・ : アメリカにおける 9 9 蜘 9 一なところだろう。 〈夢の小説が不可 ◆、◆、◆研究熱の高まりは、このような考え方の普及 600 円 ) から。 娯楽〈酩酊「何しろこういう″芸能″は解な底知れぬ恐 ◆、◆、◆と無縁ではないだろう〉 ( 伊藤典夫 ) 日『文 一種の催眠術みたいなものですからね , ーーと怖、奇怪な自己分 ◆・◆、学』 7 月号 ( 岩波書店・ 430 円 ) から。 ドタバタ宣言〈人類はみな平等。愛。「わきどきアクチ、アルな現実生活に題材をとっ裂、準則の破壊な ・・、一たしは嘘は申しません」。性善説。「戦争はごた、滑稽な " 幕間狂言。をはさんで、観客をどに満たされてい ◆・◆・◆免だ」。ま ) 」ころ。老人を敬まおう。不幸な正気にもどしておく。でないと、テレビで視る場合が多いのはな・せだろう。おそらくは、 ◆・◆・◆人に愛の手を。こういうものはみんな嘘であ聴者が催眠術にかか「たまま、解けないとき無名の想像力によ「て照らしだされた夢の光 り、それを嘘と認識したところからドタ・ ( 夕、みたいなさわぎが起こる ( 笑 ) 」斜栗「そう景の雛型を夢の小説というかたちにつくりだ は、常に″娯楽の形で提出しすことによって、作家は、小説制作において 、・スラブスティック、ハチャメチャは始まだ ないといけないという小生の持論も、そこに機能する想像力の基本的なあり方を追尋し、 - ) る〉 ( 筒井康隆 ) Ⅱ『別冊奇想天外・ドタ・ ( 、・タ大全集』 ( 奇想天外社・千円 ) から。あるんでね。『日本沈没』をまともにとられ彼をなにかしれぬ根源的なもの〈の接近に駟 と科学〈科学技術の先取りはのたら、えらいことになる ( 笑 ) 」海月「戦前な : ◆・◆、◆自由奔放だけでできることではなく、ヴ = ルら " 治安維持法。で小菅にぶちこまれて、元認しようと試みているのだ。いわば書くこと 、、ヌのように科学技術的素養の上に立った反常総理の隣りで麦メシ食ってるところだ ( 笑 ) 」それ自体の追究。そこにあるのは小説的時間 日小松左京『人間博物館ー「性と食」の民族虚構の時間の純粋形である〉日清水徹『読書 、、識 ( 反常識がなければにならないし、科 のユ ート。ヒア』 ( 中央公論社・ 13 5 0 円 ) 学』 ( 光文社・ 890 円 ) から。 ・、学小説にすらならない ) の賜と思われる。 , 、◆、◆・◆と科学の関係は一方通行ではなく相互の地球文明への道〈「人類社会」は、たやから。②〈しかし、夢を面白がるとなにか大 切なものが失われるようで : : : 〉日っげ義春 : ◆、◆・◆関係である〉 ( 堀源一郎 ) Ⅱ『思想の科学』すく「統合」できるものではないであろう。 「諸文明間の致命的闘争」の可能性もまだ残『っげ義春と・ほく』 ( 晶文社・ 1600 円 ) 7 月号 ( 思想の科学社・ 340 円 ) から。 、綺想科学〈異端科学・仮分類表①素朴されており、性急な「使命感」にかられた統から。③〈ある作家なり詩人なりの文学の原 、 - 永久機関②言霊神道派楢崎皐月 ( 相似象 ) 合の強制は、かえ 0 て「地域地域の魂文化」質を夢にさぐる試みは慎重でなければならな ・ : 〉 ( 登尾豊 ) 日『国文学・解釈と鑑賞』 、◆、 - 、◆篠田義市 ( 光線 ) ③地震予知派椋平広の圧殺や、流血の抵抗をよぶであろう。にも 蕚第 2 否繦。大絮わらず、「異質文化・異質文明」が、相爿号・特集《夢、文学。原質を求 ( 至 今月の単行本田中光一一『大放浪』 ( 徳 4 十 ( 無双原理 ) ⑤生物派ケルプラン ( 生体るような、「調整」の可能性を増大させるた : ◆、◆、一 ( 超相対性理論 ) ⑦学会派内田秀雄しい「地球文明」を構想せざるをえないだろ切日に到着のため、詳細は来月に。なお上半 : ◆、、◆、関英男橋本健⑧その他倉田昌造 ( 動因う〉Ⅱ小松左京『日本文化の死角』 ( 講談社期の収穫として、福島正実編『日本の世 界』 ( 角川書店・ 12 0 0 円 ) 、石川・柴野 : 4 、、、論 ) 〉日『地球ロマン』 8 月号・総特集《綺現代新書・ 390 円 ) から。 〈 : ・ : ・私は煩悩の昏い海を漂う泡編『日本・原点への招待ー《宇宙塵》保 生と死 : ・泡沫の身に自力を作選』全 3 巻 ( 講談社・各 880 円 ) を追 ・ 3 想科学鑑》 ( 絃映社・。。円 ) から。 ・逆説〈八四年という数字にはなにほどのの一つにも如かない。 、・・意味があるのか。オーウ = ルにと 0 て「八四頼むも、いたずらなあがきでしかなく、とう ◆。◆。・】年」は「四八年」であり、つまり「いま」のていこの輪廻の渦から脱るべくもない。ただ 日本セクション 担当 : 石川喬司