惑星 - みる会図書館


検索対象: SFマガジン 1977年7月号
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1. SFマガジン 1977年7月号

・カ それが、あらゆる力に打ちかち、中心に向かっ ( て働くとき、丸い球体としての星が生まれる。し かし、私たちは、現実に、ひとたび生まれた星 連載に が、長い進化のあとに爆発し、そのエネルギー が、万有引力をしのいで、いまも外方へ向かって″ ・・それは、夏の夜空に光る七夕の星、ーー織女星の ある、こと座の環状星雲であり、あるいは、晩秋″ ←の東の空に昇る、おうし座のかに星雲などだ。 内方と外方と そこにまた、天体の連命も分かれる。 一方は、あくまでも集積して、高密度の丸い星 高温、高圧を背景に、核融合反応を起こし、自らとなり、他方は、どんどん宇宙に拡散して、ます ます薄いガス雲となる。 四方の空間へ熱と光を放っ恒星となった。 そうでないものは、光を放射する力のない惑星 このガス雲とは、銀河星雲と呼ばれているもの ″星とは、何であろうか。 そんな、阿呆のようなことを、この頃は、しみや、衛星にとどまったわけである。木星のほとんで、アンドロメダ星雲のような、千億の恒星の大 どは、太陽と同しように、水素からできている。集団である銀河系外星雲とは、別の存在である。 ″じみと考える。 星は、丸い。球体である。 もし、木星が恒星となっていたら、太陽系は二 太陽のような恒星も、地球のような惑星も、そ重星系として、宇宙に輝いたわけで、そのような 春の末に、「星を見る会」というのを催し、 ″のことに変りはない。だが、な・せ、丸いのだろう場合、地球や人間が、いまのような形で存在しえ信州の霧ガ峰へ行った。 たという保証は、まったくない。 薄雲がかかり、それに赤いタ陽が映えたりし たぶん、太陽系は、いまとは、全然、違った姿て、それはそれなりに美しかったが、私は、天気 一昔前の私なら、 で、この虚空を運動していたことだろう。木星がを気にしていた。 「それは、万有引力のせいさ」 ″と、簡単に片づけたであろう。確かに、私たち恒星となりうるためによ、、 。しまの一〇〇倍以上も参会者およそ五十人。そのほとんどの人たち″ の太陽や地球が生まれたのは、おびただしい星間の、物質を集めることが必要だったのである。 は、望遠鏡で、惑星を見ることを期待していたか 物質が集積し、万有引力によって収縮したためでそこに太陽系の連命が分かれ、その一つの帰結らである。 として、私たち人間の存在がある。 午後八時すぎ、月のあたりには、雲がかかって ある。 いったい、何であろう だが、万有引力とは、 いたが、木星や上星の付近は、奇跡的に晴れ、望 集積した物質の量の多いものは、内部に生じた こと座の環状星雲 星座の歳時記 日下実男 フォト / 佐治嘉隆 2 2 2

2. SFマガジン 1977年7月号

ちより焼けたる金族のごときもの出づ : 出していた。初めて本当の友達ができた嬉しさがその心を激しくゆ そのあとながながと宇宙人の出現が描写されています。 すぶり、半狂乱にし、その小さな肉体を興奮させていた。 地球には、それと関係があると思われる考えがひとつあります。 ドアをたたく音がひびいた。 つまり、かれらの型恒星・太陽を取りまく四番目の惑星・火星と 「マルグリット、三十分たった、せ ! 」 五番目の木星のあいたに小惑星ベルトと称する大小の破片がちらば と、声がした。 っていますが、それはもとひとつの惑星だったものが爆発した結果 できたものだというのです。そしてかれらはその昔、その惑星をデ ある報告書の抜萃 イオスと称していたといいます。われわれの母星と同じ名前がつけ わたしが現在いる日本という国で、最も異様に思われたのは、神られていたというのは、偶然の一致かもしれませんが、はるかな の観念です。一般にいって唯一神と信じているヨーロッパの民族よ昔、そこをわれわれの先祖が前進基地のひとつにしており、その惑 りも絶対なる存在を信じているようですが、八百万もの神がいると星の最後がくるのを知って、何人かのディオス人がそこから飛び出 称しており、そのほか狐や狸までもを神として信じている人々がいし、そしてこの地球に飛来したことは考えられないでもありませ ん。 る始末です。″信心すれば鰯の頭も神さま″といういいまわしは、 ただの冗談ではないようです。そのうちどこかで鰯信仰の証拠が現わたしは前に、たたきつけるような強い波を感じたといいま した。それは衛門という日本人少年のものでした。この少年が珍し われることと思います。 いのは、セックスに関する面でのみテレ。ハシーが強力に発達したと さて、モリヤ・クラスト夫妻に関係があるかと思われる出来事を いう点であり、セックス中には放射する波が異常に強くなるの ひとっ発見しました。この地球における三つの大きな信仰のひとっ にキリスト教というのがあり、それがモリヤ・クラスト夫妻と何かです。この少年と会ったときの模様は、高速通信で先にお送り 関係があるのではないかということは前にお知らせしましたが、そしました。かれの波は大きく変形してはいますが、それでもモ リヤ夫人の波と似かよっているところが多いように思われま の宗教の聖書、旧約聖書と称しているものの中で見つけたのです。 h ゼキエル書の第一章はつぎのように述べられているところから始す。少なくともかれが、モリヤ・クラスト夫妻の血を引いているこ とは間違いないと思います。 まります。 セックス描写が多いようだがとの質問にお答えしますと、平均し 第三十年四月の五日に我ケパル河のほとりにてかの捕えうつ てこの地球というところは、セックスというものを非常に開放的に されたる者のうちにをりしに天ひらけて我神の異象を見たり : 9 ・ : 我見しに視よ烈しき風大いなる雲および燃ゆる火の玉北より取り扱いながら重視しています。アメリカでは、人の顔と同じよう 出できたるまた雲のまわりに輝きあり、その中よりして火のう に股のあいだをできるだけ美しく撮影したカラー写真がいつばいの かね

3. SFマガジン 1977年7月号

だが、この星雲に来たのは初めてでも、他の星雲で宇宙というも 文明のひとかけらも感じられない辺境。アースウエル船長は気紛 れに宇宙船のス。ヒードをゆるめた。速度の変化による映像の歪みがのを飽きるほど経験しているアースウエルと。ヒーチにとっては、こ 8 3 補正されたスクリーノこ、 、冫たまたま映ったのが、その恒星であつれもごくありふれた惑星群にしかすぎなかった。アースウエルは虚 こ 0 空の一点に宇宙船を停め、他の天体ーー主としてその恒星ーーの引 力によって動かされないように自働装置をセットすると、自から惑 「別に珍らしくもない」 アースウエルは言い捨てて、船のス。ヒードを再びあげようとした星群に出掛けようとはせずに、自働調査船を次々と発進させた。 が、その時、彼はその恒星に幾つかの惑星が付属しているのを認め「僕なら自分で一つすっ調査するな。どうせ時間はたつぶりあるの た。彼は手を止めた。 「ざっと眺める値打ちはありそうだな」 ス。ヒリトは思った。彼はいすれは自分もアースウエルのようにな ビーチが言った。彼はものごとを割と丹念に見る方であり、惑星ることに、まだ気付いていなかった。あらゆるものに対してフレッ があるとわかれば、それを一つひとっ調べていきたいと思ってい シュな興味を感じるのは、若さの特権である。それが年とともに薄 た。彼がスイッチをいれると、サプスクリーンにその恒星とそれをれ、やがてはアースウエルのように、ス。ヒリトから見ればものぐさ 取巻く惑星の立体映像が浮びあがった。 に思えるようになっていくのた。 「恒星そのものは、ごくありふれたものだ。惑星にしても、たいし でも、アースウエルやビーチはまだいい方だ。他の人たちは、退 たことはあるまい。別にどれから調べるといったこともなかろう。 屈しながらも、自分から何かをするという意欲もなくし、他人が退 近いところから行くか」 屈を紛らしてくれることを期待して、じっと動かすにいるのだから 。ヒーチの言葉に、アースウエルが頷き、宇宙船のス。ヒードと進路 を変えた。その間、グート・スビリトは二人の後ろの席に坐って黙虚空に消えた自働調査船から送られてくる映像が、次々にスクリ っていた。若い彼は自分の役割をよく承知していた。意志決定をす ーンに映したされた。外周を回る巨大な惑星は、極寒のためにあら るのは、アースウエルと。ヒーチの二人であり、便乗させてもらってゆるものが凍りつき、きらきらと輝いていた。恒星の豊かな熱丁ネ いるスビリトには、その権利はなかった。ス。ヒリトが他の星雲に出ルギーも、それたけの距離を隔てては、・ こく僅かしか到達しない。 たのは、これが初めてであり、経験を積むために、あらゆるものを外惑星の氷が融けて、液体が気体になるのは、ただ一度ーーこの恒 見たいと思っていた。彼はこの恒星のもっ惑星群を詳しく眺める機星が最期を迎え、超新星として大きく膨れあがる時しかあるまい。 会に恵まれたことに喜びを感し、好奇心に目を輝かせていた。 その短い、あまりにも短い時間に、生命が誕生して発達すること 「できれば、どれか一つでもいいから、降りてみたいものた」 は、まったく期待できない。 彼は思った。 立体スクリーンに、凍りついた透明な物体がきらりと光った。そ

4. SFマガジン 1977年7月号

な関係にあり、人間の眼にはやや緑色がかって見えた。 シオダは眉間にしわを寄せ、データ・ファイルをにらんだ。 この恒星がしたがえている惑星は全部で五十二個あり、その中の 「どう、おかしいんた ? 」 ひとつ、三十三番めのものが、問題の《プラックホール惑星》たっ ヒノは腰を浮かせ、シオダのファイルをのそきこんだ。 た。《ブラ ' クホー ~ 惑星》は惑星血液型分類学によると型「ここがこうな 0 て、ここがこういう風たから、ここがこんな風に に属し、中心の恒星からの平均距離は三・三六ーーっまり地球おかしい : ・太陽間の三倍強であり、必然的に、その一年は三地球年に相当し シオダはゆっくりと説明した。 ていた。自転周期は四十三地球時間であり、大気の成分や濃度、ま「そこがそうなのか ! 」 た重力はまあまあ地球類似だった。 ヒノはあせった声を出した。 つまり、一年や一日は異な 0 ているが、受容熱 = ネルギーを含む「そのとおりだ」 各種環境は、きわめて地球的であり、その意味で、多少辺境ではあ シオダはうなすいた。 っても、 " 惑星開発コンサルタント社。がその開発権を取得してい つまり、中心の恒星から《プラックホール惑星》に向かっている たのは、当然のことといえた。 放射線のスペクトル型よ、、 冫しわゆる黒体輻射に準じており、その意 " ヒノシオ号。は、今や、《プラ , クホール惑星》を形あるものと味で平凡なものであ 0 たが、その上に、赤色超巨星に似た〈クト してスクリーンに捕える所まで接近していた。 ルがわすかに重畳された形状をしていたのだ。さらにシオダは、そ ヒノとシオダは、高鳴る胸をおさえ、そのあいまいな姿をにらんの重畳スペクトルが、半周期的に脈動していることを発見した。 「どういう意味があるんだろう ? 」 惑星の姿は、少しす 0 大きくなり、諸定数が計器で確認されはし勢いこんで、身体を乗りだす , に対して、〉オダは、かすかに めた。 かぶりを振ってみせた。 職務に忠実に、・ テータを記録、照合していたシオダが、「おやー 「これだけではま「たく分からない。情報不足だ。これまで発見さ ー」と小首をかしけた。 れていなかったのは、変異が微弱なためか、それとも最近にな「て 「どうした ? 」 起こったものであるためか、それすらも不明た」 惑星周回 0 ーに人る準備をしていたヒノが、シオダの横顔を見「われわれの身に危険はないたろうな ? 」 こ 0 「われわれの着陸に影響を与えるようなものではない。ただ問題は 「スペクトル型が少しおかしいんだ」 《ブラックホール惑星》の存在に関係があるかどうかだ : : : 」 「スペクトル型 ? 」 「物理的には ? 」 「うむ」 「着陸して、じ「くりと調査してみなければ、何とも言えない」 398

5. SFマガジン 1977年7月号

の惑星から見る母なる恒星は、他の星々より幾分か大きく明るいに実際には、広大な宇宙に知的生命はごく少ない。あらゆる惑星 しゅうえん を、その誕生から終焉まで、詳細な調査を続ければ、その数はもっ すぎない。寒冷の惑星は、あらゆる物質がじっと息をひそめてい と多くなるであろうが、超光速宇宙船を駆るクルス族がアトラン る、眠りの世界た。死の世界だ。 ダムに宇宙を飛びまわったからとて、知的生命と遭遇する確率は、 「たんに美しいだけだ。活動はまったく見られない」 。ヒーチが呟くと同時に、スクリーンの映像が切換った。自働調査ごく小さなものでしかない。 船が近付くにつれて、惑星が次第に大きくなり、周囲を回る衛星群かってアースウ = ルは、知的生命の遺跡を見た。自からの生まれ た惑星を飛び出し、その太陽系全域に発展し、さらに隣接する太陽 かはっきりと映しだされてきた。調査船から補助調査船が発進し、 円盤型の船体を遠い恒星の光にきらめかせながら、衛星の群へと散系まで足を伸ばしかけたところで、その生命は終っていた。もしア ースウエルがもう少し早くそこに来ていたら、その知的生命をつぶ っていく様子が、主調査船からの映像として、スクリ 1 ンに映しだ さに観察することができたのであろうが、無限に続く時間の流れの された。 中にあって、一瞬と一瞬が完全に合致することは、期待する方が無 「これも期待できんな」 アースウエルが言った時、別のスクリーンの映像が、三人の目を理というものだ。 ひきつけた。きらきらと輝くその惑星は、表面の多くが水に覆われ時間と空間。それそれが無限の拡がりをもつ中で、一瞬と一瞬 ていた。 が、一点と一点が、びたりと一致することがありえようか。他の知 的生命と遭遇する確率は、それほど小さいのである。 「こちらは可能性が大きいそ」 「いや、生命の発生は・ ( ランスが徴妙だから、あまり期待しない方しかし、この場合は。ヒ 1 チの楽観論が当っていた。その恒星の周 がいい。大気温度がほんの少し違っても、条件はがらっと変ってし囲を回る十一個の惑星は、あるものは凍りついており、あるものは 灼熱の地獄であったが、内側から四番目の惑星は、水が多く、大気 まうのだから」 アースウエルはビーチの楽観論に対して反対の意見を述べた。三温度もほ・ほ理想にちかく、生命の発生にうってつけの条件を備えて 人のうちで最も経験の豊富なア 1 スウエルは、これまで裏切られた さまざまな惑星の姿を思いたしていた。そして、生命が発生して知「君の言うとおりかもしれん。もっと詳しく調べてみよう」 アースウエルはスクリーンを拡大した。 的生物へと進化するためには、よい条件が偶然としかいえないほど 多く重ならなければならないことを、よく承知していた。たんに水「可能性たけではないそ。すでに生命が発生している。ごく原始的 があるからとか、大気温度が適しているとか、そのくらいで生命が な段階ではあるが : : : 」 発生するなら宇宙はとうの昔に生命でいつばいになっている筈なの彼は唸るように言って、さらにスクリーンの拡大率を高めた。自 8 働調査船が大気圏に入り、きめられた。フログラムに従って、円盤型

6. SFマガジン 1977年7月号

生を詳しく観察するには、距離が遠すぎた。 アースウエルはス。ヒードをあげた。恒星系はすぐ近くになってい アースウエルはス。ヒ 1 ドをあけたい気持をしっと抑えていた。ひた。 こたび星雲の中に入った以上、さまざまな物質の飛びかう宇宙空間 「第六惑星が崩壊してできた岩塊は、同じ軌道ながらほぼ均一に散 、危険なスビードで飛ぶことは許されない。この宇宙船の能力をらばっている」 もってしても、これだけの密度をもっ星雲の中では、次々と現われ 。ヒーチが言った。第一惑星はその時に恒星に突入し、この恒星の っ宇宙の放浪物質を回避し続けるのは、かなりのストレスがかかるもっ惑星の数は二つ減 0 ていた。彼は自働調査船を宇宙船から発進 させた。紡錘形の自働調査船の群は、かって第四惑星であった水の 宇宙船が岩塊や彗星や岩塊を避けるたびに、スクリーンに光の点多い第一一一惑星の大気圏にはいり、 上空で円盤形の補助調査船の大群 瞬き、その存在を示した。光の点は、この星雲に入ってから、ずを船腹から発進させた。 ) とついたままであった。時には二つ以上が同時に光ることもあっ その時までに、アースウエルもビーチも、この惑星の生物の一種 に。アースウエルよ、 かなりのス。ヒードで目的の惑星に向ってい が、異常な進化をとげていることを知っていた。この生物は、天国 の飲物に手をつけていた。クルス族が苦心して作った天国の飲 ふと、ビーチはいやな予感がした。彼は宇宙船が回避した物質物。自然のもつ高い圧力と長い年月をかけて作られた天国の飲物 ずっと観察し続けていたが、今、別のスクリーンに拡大像としに、害虫がとりついたのだ。口にすれば魂は天国に遊ぶという、あ 」とらえたものは、それまでのものと違っていた。それは天然に存の天国の飲物に、虫がわいたのだ。 する物体ではなく、あきらかに人工の物体であ「た。軌道を計算アースウ = ルは円盤形調査船の一隻を操作して、陸地の上に描い 丿ると、目的の惑星の属する恒星の方角から飛んできたものであっ たアースウエル家の紋章を探した。それは害虫の巣からはほど遠い 所にあったが、聖なる紋章の上にも、害虫がいたし、害虫の乗った 「見てくれ」 乗物がうごめいていた。さらに気に障ったのは、その乗物が天国の ビーチがスクリーンの拡大率をあげた。 飲物からエネルギーを取っていることであった。天国の飲物に邪悪 「ごく原始的な無人調査船の一種だ」 な手法を加えて変質させ、乗物の一部にも使っていることであった。 アースウエルが唸るように言った。彼にもその意味がわかってい 彼は怒った。彼は円盤形調査船のビームで乗物ごと生物をとらえ ~ 。彼は最悪の場合を考えていた。惑星上に発達した生物のひとっ 、恒星の引力を振切って物体を遠くに飛ばすだけの力を備えてき「見てくれ。あのまま残「ている」 」のだ。その段階まで到達した生物は、知的生命とよぶにはまだ未ビーチが言「た。。ヒーチが積み重ねた巨石は、ほぼその時のまま であっても、天国の飲物に手をつけているに違いなかった。 に残っていた。 392

7. SFマガジン 1977年7月号

アースウエルは大きく息をついた。他の二人がスイッチをきった 揺れた。岩塊の質量があまりにも大きか 0 たので、第六調査船を介 して岩塊を引きつけた宇宙船が、逆に岩塊に引寄せられ始めたの調査船は、宇宙船のビームがなくな 0 たとたん、一時は急速に岩塊 へと引寄せられていったが、スイッチをきられたので綱引きから解 だ。逆推進を全力にしても、宇宙船はどんどん引寄せられていっ 放され、本船へと向った。 、調査船を第四惑星から横に発進させろ。あれ今や岩塊は第四惑星のすぐ近くまで迫「ていた。もはや岩塊の軌 「。ヒ 1 チ、ス。ヒリト 道を変える時間は残っていなかった。しかし、アースウ = ルは岩塊 でもいくらか助けにはなる」 の軌道が少しすれたことを感じとっていた。岩塊はまっすぐ第四惑 「わかりました」 一一人がスイ , チを操作すると、第四惑星の大気圏に留「ていた自星に向 0 ているように見えたが、宇宙船と調査船群を相手に綱引き 働調査船の群が、宇宙空間に飛出した。そして、惑星から遠ざかりをした結果コースがいくぶんすれていた。 ながら、岩塊にとりついた第六調査船とフィールド・ビームで引き「すぐ近くをかすめて飛びさるようですね」 あった。 ス。ヒリトに対して。ヒーチが何か言いかけたが、彼はロを閉ざして だが、これも質量の差はいかんともしがたく、逆に岩塊に吸寄せ られていった。それでもいくらかは足しになっていたようだ。三人スイッチを操作した。 「どうやら、あの岩塊は第四惑星に捕えられるらしい」 の乗った宇宙船の震えが少なくなり、綱引きは以前ほど一方的でな 「衛星になるのですか ? くなっていた。 突然、船体にシ ' ックがあ 0 た。アースウ = ルがスクリーンを見「これまでのデータをインプ , トした結果では、そういう答がでて ると、恒星の一部が大きく膨らんでいた。それとともに、大きく千いる。ちょっと信じがたいが : : : 」 三人が見守る中で、岩塊は第四惑星の脇をかすめるように飛び、 切れた炎が、宇宙船に向ってまっすぐに襲いかかってきた。 アースウ = ルは炎に危機を感じと 0 た。すばやく宇宙船を回避さ軌道をぐー「とカー・フさせると、その周囲を回りはしめた。 せつかく 「とにかく、第四惑星と正面衝突しなければそれでいい。 せようとしたが、フィールド・ビームで岩塊と綱引きをしている宇 苦心して自転軸を変えたのに、それが第六惑星のようにこなごなに 宙船に、自由な運動はできなかった。 なったのでは、元も子もないからな。第六惑星は壊れたが : : : 」 「調査船のビームをきれつ ! 」 そこまで言って、アースウ = ルはスクリーンの立体像に目を転じ 言いざま、彼はスイッチをきった。自由になった宇宙船は一気に 彼の頭の中に「さっきの炎は何だ 上方に移動し、間一髪それまでいた所を炎が赤い矢となって走りすた。彼は恒星をしっと観察した。 , 9- ったのだろう」という疑問が湧いてきた。スクリーンで恒星は煮え ぎた。 たぎっていた。この惑星系に来た時とは違った激しさだった。

8. SFマガジン 1977年7月号

「アースウエル、第一惑星がもうすぐ恒星に隠れるそ。間に合うか 鋭い直感は、第六惑星が崩壊してできた岩塊の一つに、危険を感じ とっていた。ばらばらになった時、ま後ろから自働調査船に押され聞 3 「間に合わせなければならん。出力をもっと上げるそ。いくつかまた岩塊が、遠心力によるスピードをはるかにこえ、まっしぐらに第 たすつば抜けるだろうが、ス。ヒリト、 回収を頼むそ」 四惑星に向って飛んでいったのた。 「わかりました」 「軌道を計算しろ、ス。ヒリト」 「四パーセント、アツ。フ」 アースウエルが叫んだ。ス。ヒリトは思いがけない命令にとまどっ 四。ハーセント」 たが、すぐにこの岩塊の軌道を計算した。 「さらに五パ 1 セント」 「このままたと、第四惑星と正面衝突します」 「五パーセント、 0 」 「思ったとおりだ。第六調査船で岩塊の軌道をすらす」 七九番が固定子とともに第四惑星から飛びだした。スビリトはすアースウ = ルが言って、本船に戻りかけた第六調査船をタ 1 ンさ ばやくスイッチをきり、回収を指示した。 せた。 「もう一度、五パーセントのアップ」 が、それも空しい作業であった。ようやく岩塊に到達した第六調 「五パーセント増」 査船を使って、岩塊の軌道を変えるために、横方向の力を加えてみ 三つの惑星を引きあうフィールド・ビーム。その時、第六惑星の たが、たかだか一隻の自働調査船のカでは、遠心力で飛びだし、第 地穀が、激しいストレスに耐えきれずに、ぐずぐずと崩れはじめて四惑星と恒星の引力で加速された岩塊の戦道を変えることなど、と いた。ひとたび崩れはじめれば、あとは連鎖反応である。一瞬前まてもできる筈がなかった。 では一個の独立した惑星であったものが、たちまち大小の岩の塊と「とても無理た。質量が大きすぎる。なにか支点になるものはない なっていた。 「第六、第一調査船、同時スイッチ・オフ」 さっきまでは、第一惑星と第六惑星を支点にして、第四惑星の自 「第六、第一、スイッチ・オフ」 転軸を変えようとしていたのであったが、その支点の一つである第 「両調査船を回収」 六惑星が崩壊したため、・ハランスがとれなくなって第一惑星が支点 「両船回収」 としての価値を失い、恒星の輻射熱で熱くなったこともあって、第 ビーチが命令を復唱して、スイッチを操作した。恒星の輻射熱で一惑星から調査船を引揚げてしまっていた。第一惑星を支点として まっ赤になった調査船が、恒星の引力に逆らって、本船に向った。 利用することは、もはやできなかった。 第六調査船は岩塊の陰から飛びだして、これも本船に向った。 「仕方がない。本船からフィールド・ビームを放射しよう」 調査船の回収には、まったく問題がなかったが、ア 1 スウエルの ア 1 スウエルはスイッチをいれた。そのとたん、船体がぐらりと

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「ない。第一惑星がなくなっている」 いと憧れていたこともあった。それが、あとは待つだけで手に入る 「ないって ? 」 のであった。アースウエルと。ヒーチのことだから、できると言った 3 ビーチもスビリトも目を凝らした。が、三人が見ても、立体スクら失敗することは考えられなかった。 リーンに第一惑星の姿はなかった。 「後から他の奴が来て、知らずに横取りするといけない。何か目印 「どこに消えたのだろう ? 」 をつけていこう」 「わかった」 アースウエルが言った。 。ヒーチが叫んだ。 「補助調査船を残していく方法もないではないが、これから必要に 「恒星の中だ。支点として使われたたために、公転速度がおちて、 なるかもしれないから、一隻といっても減らしたくない : 「放射能は成熟に悪影響があるという話だし : : : 」 遠心力が引力に負け、恒星に引込まれたのだ」 「なるほど。それでさっきの炎も説明がつく。あれは煮えたぎった「やはり、惑星の表面に目印を付けるのが一番だと思うな」 恒星に第一惑星が落ちこんではねたものだ」 アースウエルの言葉に、ビーチが頷いた。 アースウエレ ; 頁、こ。 惑星の表面は、かなり荒れていた。無理に自転軸を傾けたため 「第一惑星は恒星に呑込まれてしまった。第六惑星は粉々になってに、極だった所が暖かくなって氷が融けはじめ、新たに極となった しまった。しかし、第四惑星の自転軸は、かなり変えることができ海と陸地が凍りはじめていた。それに加えて、一つの大きな島だっ た。陸地が一か所にまとまっていたのが、幾つかに別れてしまったた陸地が幾つにも分かれたので、その間に海水が流れこんでいた が、そんなことは別にどうってことはない。 ソイヤーの原理によれし、調査船を固定するために、陸地のあちこちから、まだ熱い熔岩 ば、これでこの惑星はしばらくたっと熟してくる : : : 」 が地表に噴出していた。 アースウエルが舌なめずりをした。。ヒーチもロの中に唾がわいて しかし、それらも待っ間に落着いてきた。三人は調査船を惑星に くるのを感じた。二人はたった一度であったが、熟した惑星から採降ろして、地表に目印をつけはじめた。 った妙なる液体を口にしたことがあった。それは、えもいわれぬ味アースウエルは自働調査船を上空に停め、そこからの映像を監視 がする、まさに天国の飲物であった。あれを再び口にできるならどしながら、補助調査船を使って、地面に大きな図形を描いた。樹が んなことでも : 、と二人は思っていた。あとは熟すのを待つだけ成長し草が生い繁っても、上空からひと目でわかるような、大きな であった。長い長い時間であったが、彼等には時間がたつぶりあっ図であった。それは、アースウエル家の紋章を簡略化したものであ っこ 0 た。そして、待っ時間を短くする方法も知っていた。 スビリトは天国の飲物をまだ口にしたことがなかったが、それが ビーチは荒れ果てた地面から大きな岩を探しだして、・ヒームで運 どんなものであるか、話には聞いていた。一度でいいからロにしたんでは並べていた。 / を 彼ま岩の硬さから、これなら惑星が熟すまで保

10. SFマガジン 1977年7月号

「わかりました。すぐに始めますか ? 」 「使える調査船の数は ? 」 「ああ、さっそくとりかかってくれ」 「第一惑星と第六惑星に一つずつ残してありますから、八つです」 「よし、もう一つを第四惑星から少し離せ。その補助調査船も使っ 三人は補助スクリーンで拡大像を見ながら、スイッチやレ・ハーを て、惑星全体がモニターできるようにしてくれ」 操作して、自働調査船を地上に降ろしていった。 「はい。わかりました」 ス。ヒリトがスイッチを操作した。一隻の調査船が紡錘形の船体アースウ = ルの操る自働調査船の一隻が、ゆっくりと上空から降 を、宇宙空間に静止させた。円盤形の補助調査船が船腹から発進しりてくると、ジャングルの上に浮かんで停止した。とっぜん船腹か ら一条の光線が地上に流れ、うっそうと生い繁った巨木が赤く輝い て第四惑星を取巻いた。 た。次の瞬間、それまで緑一色たったジャングルの一点に、むきだ 「もう少し離してくれ。そう、それでいい」 目の前の立体像が拡大されて、第四惑星の表面を、あますところしの地表が現われた。紡錘形の自働調査船は静かに着地した。 船腹から地中へと伸びる細い光線。音もなく掘られる細く深い なく映しだした。 穴。アースウエルが固定子を竪坑に送りこもうとした時、スクリー 「次が大仕事た。。ヒーチ、わかっているな」 ンに異帯があった。反射的に彼は自働調査船を空中に退避させた。 「自分でするのは初めてだけど、理論としては、よくわかってい その後を追うように、竪坑からまっ赤な熔岩が空高く噴出した。地 る」 表に亀裂が生じ、熔岩が大きな流れとなって噴出しはじめた。 「よし、それでは、そこの三分の一を頼む」 アースウエルは舌打ちをして、調査船を現場から遠ざけた。それ アースウエルが指さすと、第四惑星の陸地の三分の一が青く輝い から彼は再びジャングルを焼き払い、調査船を着地させた。 今度は慎重であった。彼は細い竪坑を掘りさげ、無事に固定子を 「スビリトはここだ」 次の三分の一が、オレンジ色に輝いた。 地中深く埋めこんだ。自働調査船と円盤形の補助調査船の性能をも 「どうするんです ? 」 ってすれば、地上にしつかりと固定することはかなり容易であっ 「自働調査船を総動員して、その惑星の陸地の表面にしつかりと固た。 アースウエルは固定作業を続ける。ヒーチとス。ヒリトを横目で見 定する。補助調査船も同様に固定する」 アースウエルが手を動かすと、オレンジ色に染まった陸地に、三て、今度は第一惑星の表面に、残してきた自働調査船を固定した。 つの輝く点が生じた。 それまで第一惑星の影に入って、恒星からの激しい輻射熱を避けて 「そこに自働調査船を固定しろ。補助調査船はここだ」 いた調査船は、第一惑星の自転によって定期的に恒星の輻射熱にさ らされることになり、たちまちのうちに熱くなったが、ア 1 ・スウェ 三つの輝点を囲むように、無数の小さな点が光った。