中央部へ、突っ込んで行ったのである。 確な動きで、方形陣に変化していた。 その、だしぬけの一体となった動き異様な音響が群衆に恐怖 その陣形のまま、今度はあの威嚇音も立てず、歩行速度で、こち 2 を与えたのは、あきらかだった。 らへ戻って来る。 人々は割れ、逃げて、治安部隊がその中央を駈け抜けるのを許し ロポットたちの意図をはかりかねて群衆が戸惑っているうちに、 た。石や棒を投げた者もいないではなかったが、ロポットたちのスそれは、群衆のまっただ中で、動きをとめた。 ビードと分厚い装甲が、それを簡単にはね返した。 再び、甲高い威嚇音が噴きあがった。 しかも。 と。 走り抜ける間に治安部隊は、群衆の、行く手にいた者や近くにい 方形陣は、それがはじめから部品を寄せ集めていたかのように、 た連中を、神経麻痺線でなぎ倒して行ったのた。 ばらばらになったのだ。ロポットたちは、横二列の十体一組すつに 人々が二手に分れたあとには、麻痺線にやられた何百人かがころ分解し、どっと群衆の中に、それそれ突っ込んで行ったのである。 がっていた。 群衆はばらばらになった。算を乱して、めいめいが勝手な方向へ 治安部隊は群衆の中を通過すると、むこうでびたりと停止し、向と逃げ出した。 き直った。 その荒れ狂う海の中へ、十体一組のロポットたちは、抵抗も受け 群衆の混乱がひどくなった。 ずに散って行き : : : その一組すつが、ひとりの人間を追いつめて神 その中にまじり、まだ何とかして群衆を立て直そうとしている連経麻痺線で撃ち倒していた。 中は、必死になって、人々にどなりつけ、みんなをいくつかの円陣撃ち倒された目標は、すべて、群衆を扇動し、引きずって行こう に組みあげようとしている。 としていたリーダーやその仲間であった。 そう。 マセはそれを見ながら、ふと、古い戦争の記録を思い出してい た。これは : : : 騎兵が突っ込んで来たとき、歩兵たちが外に向いた 治安部隊は、最初の突撃と、そのあとのみじかい待機のうちに、 円陣を作って防ぐという、あのかたちを連想させたのである。群衆群衆の中にいる誰がリーダーで、誰がそうでないかを見定め、狙い のリーダーたちの頭の中には、あきらかにその意識があったのであをつけていたのである。 ろう。だが、これはロポットの戦闘集団なのである。そんな古めか 丿ーダーを失った群衆は、もう収拾のつかない状態におちいって しいやりかたが通用するはずもないのた。 そして、その通りだった。 目標を倒した十体一組のグル 1 プは、 いっか、群衆の外側に出 退路を断たれた格好の群衆が、自分でも良く分らぬままに、 いくて、群衆を囲む位置についていた。 つかの円陣めいたものを作ろうとしかけたときには、治安部隊は正 が、それは完全な包囲ではない。あちら側の一方をあけたかたち
三部作、コードウェイナー であなたが占める位置について、まったく新しい見 アメージング誌掲載「夢のライオン」イラスト ーズなど スミスの未来史シリ かたを身につけるためには、まず最初に、あなたの習 は、その好例だ。 慣的な物の見かたを、完全に捨て去らないまでも、い アメリカのアカデミックな、 ~ 、 ったんばらばらにほぐしてみることが必要なのだ。 それとも、スターハイカーのポー・フォレスター の言葉をかりれば、あなたは自分の夢の視角を見い の構造上の特異性を " 認識の ~ 「物 ださなくてはならないのだ。 乖離″と呼んでいる。大げさ な言葉だが、かみくだいてい ジャック・ダンは一九四五年ニ、ーヨーク州生ま えば、一般に受け入れられた れの t-n 作家。大学で政治科学、法律、比較文学な 世界観となにかの点ではなは どを専攻したのち、社の職員、モーテルの係 だしく違った世界観にでくわ 員、ビアホールのビアニスト、その他さまざまな職 ある。 業を経験した。趣味はスキン・ダイビング、空手、 美術、演劇など。 さて、これはそれほど異常 ファンタスティック誌七三年十一月号に発表した なことではない。熱心な シュールレアリスティックな作品『ジャンクション』 ファンなら、すくなくとも毎 "Junction ・・で、この中篇はその年のネビュラ賞 日一度はそんな状態を経験し ているはずだ。 短い文章は、その衝撃的な効果をこの要素にたよっ候補作にあげられた。その後オービット、ニ = ー すぐれた / ファンタジイに不可欠なこの要素ているし、また、史の筆者たちが遠くルキアノワールズなどにいくつかの短篇を書き、注目すべき は、偶然にもまた、霊的な啓示に到達するさいに不スの著作にまで時代をさかの・ほって、の歴史的新人という評価が高いが、長篇はこの『スター ( イ 可欠なものでもある。この要素がキリスト教や仏教系譜を探し求めるときに指摘するのも、やはりこのカー』が最初である。ほかに編者としてアンソロ の聖典の中にも、哲学や科学の中にも作用している要素であゑもう一つついでにいうなら、この要素ジイが二冊 ! ー、ユダヤ人的テーマのとファタ のは、見れば明らかだろう。この要素は、『易経』はわれわれの夜ごとの夢の中につねに存在しているジイを集めた『さすらいの星・ほし』 "Wandering のような古い書物の中にも、またヴィトゲンシ、タものでもある。すぐれた / ファンタジイの作家 stars" ( 1974 ) と、恒星旅行のを集めたジョー インの『論理学的・哲学的論文』のような新しい著たちが、そして、霊感者やわれわれの夢が言おうとしジ・ゼプロウスキーと共編の『超光速』 "Faster この世界と、その中 Than Light" ( 1976 ) がある。 ( 訳・浅倉久志 ) 作の中にも存在している。禅の公案や俳句のようなているのはこういうことた 0 0 0 0 0 スキ、ヤナー 5
一同は驚いて目を瞠った。フィアンの兵士が進むずっと後方で、 るで最初からなかったかのように完全に消え去った。 〈地獄〉の戦士の砕かれ打ちのめされた死体が、体をつくろい、体フィオン・マク・クーメイルはためらわず、「フィアンの者ど 液まみれの洞穴の床から立ち上がっていたからである。どうしたわも」と叫び、「我らは裸でやって来た。だから裸で出て行くのだ。 けか、前より体が小さくなったようである。戦士たちは、黒く果て進め」 しなく暗い眼で、フィアンナの後衛と睨みあった。 フィアンナは、炎に気づかないというふうに進みに進んだ。 オスカやゴールや配下の強者たちは、後衛戦の構えをとった。 さて、これは奇妙なことたとお思いになるかもしれない。 普通な ところが、第一歩兵隊の兵士は向きを変えて駆け出した。松明をら裸の人間は、大きくごうごうと燃えさかる火を恐れるものだから 持った男に追われて洞穴から飛び出すコウモリのようにキイキイ声である。それは、こんなふうに説明できる。 をあげていた。 アイルランドのフィアンの強者たちは、〈地獄〉に滞在している間 前衛では、フィオン・マク・クーメイルが敵兵に叩きつけて槍をに、非常に奇妙なことを発見した。憶えておいでのことと思うが、 折ってしまい、剣を抜いて、鎌で小麦を刈るように人間をなぎ倒し彼らはそれ以前に長いこと、寒さと飢えと渇きばかりの灰色の砂漠 ていた。 ですごしていたのだ。だから初めのうちは、〈地獄〉の暖かさも食 こう書いても、アイルランド兵の方にまったく負傷者がなかったべ物も飲み物も素晴らしく思えていた。ところが、じきに気がつい わけではない。負傷者が出ても、皆と一緒に進めないほど重い傷でたのは、〈地獄〉の暖かさが表面だけのもので、肉も骨も暖めては はなかったのである。 くれないということである。そして、こう書いてもわかっていたた と、突然、苦悶する熊のような声が、赤く照らされて煙たい洞穴けないかもしれないが〈地獄〉の御馳走は身の内に必ず奇妙な飢餓 中に轟きわたった。 感を残し、〈地獄〉の飲み物はロの中に一種ネ・ハついた渇きを残し 「よくわかったぞ、フィオン・マク・クーメイル。それなら全面戦たのである。その上、〈地獄〉の火では、火傷するつもりにならな い限り火傷しないということもわかったのである。 争だ」 〈地獄〉の業火の中へ、アイルランドの英雄たちはまっすぐ突き進 「それで結構だ、〈地獄〉のルーキフェル」とフィオン・マク・ク ーメイルも怒鳴り返したが、彼の声の方が、〈地獄〉の大王の声よんだ。 り大きく、力強かった。 そこで、ルーキフェルの第二歩兵隊と向かい合った。 それを合図にしたかのように、フィアンナをぐるりと囲んで恐ろ さて今度の相手は人間らしさも持ち合わせていなかった。例えば しい炎が燃え上がり、まるで古代の倒木の森がまわり中で火を発し想像してほしい。飢えかけた馬の首に狼の牙をつけ、これを、手が たかのように、・ こうごうと燃えさかった。 鷲の足になった痩せ猿の胴体にのせてみる。この程度の相手はフィ それと同時に、フィアンナが贈られた戦闘衣も剣も盾も槍も、まアンの行手をさえぎる恐るべき化物たちの中でも、まだましな方で
り、真理と、自由と、彼自身に アメージング誌掲載「スターハイカー」イラスト む。しかし、彼らの乗った宇宙船は、やがて遭難の 似ただれかの愛を探しもとめて 危機を迎えることになる。重力ワープの推進装置の いる男た。 ' 物第・第物「故障で、船体に大きな破損が生じたのだ。プラ〉ク ポーの住む未来の平穏な地球 ・ホールの付近にいたという悪条件がそこに重な は、かなり昔に星間戦争に敗れ、 り、宇宙船は衝突進路にそって、恐ろしい重力の井 戸へとひきよせられていく。危機一髪のとごろで重 勝利者である温和なフロウ人 1 霻 ~ 〔 の支配下にある。フロウ人は不 力の井戸から逃れ、修理を終えた宇宙船は、進路を 可解な異星種族で、彼ら自身と かえて〈結節世界〉に向かう。結節世界というのは おなじように不可解な装置や、 意識をもった世界、それ自身が一つの生物である惑 おとぎ話にある水品の都のよう 星だ。ダンは、この古いのアイデアを、スタニ な現実離れした建物を、地球の スワフ・レムの『ソラリスの陽のもとに』以来の最 各地に設けている。ポーは、地・を物罅気 ' 、 も独創的なやりかたで料理してみせる。そしてこの 球の過去の栄光ばかりを夢見て 結節世界で、ポーとケジアはそれそれの連命を見い いる人間の仲間の中で生活する だすのた。 ことに満足できず、自分の連命、、 この発見に重要な役割を演じるのは、もう二人の は星・ほしへの旅の中にあるので。、、 ーフテとザ・サマキである。彼 登場人物 ( ? ) 、 はないかと考えるようになる。 らは、わたしが現代の中ででくわした最も独創 フロウ人が宇宙港の周囲に張りめぐらしているテレ人の宇宙船に乗ったことが、もしほかの人間たちに的な産物に属しており、これから以後、それをお手 リャーをくぐり抜ける方法を見つけたポ知れれば、ポーは裏切者として殺されるだろう。も本にしたたくさんの模倣が出てきそうな気がする。 ーフテは、プラック・ホールの中に落ちこんた ーは、宇宙船の中に身を隠して密航を試みる。彼のうすこしでそうなりかけるような事件は、たびたび 星・ほしへの旅と、運命をたずねる旅はこうして始ま起こる。 人間の時間旅行者だ。彼の肉体はそのために破壊さ る。 人類がやはりフロウ人の支配下にある別の惑星れたが、彼の上意識はプラック・ホールの特異領域 で、ポーは彼とおなじような放浪者であるケジアとに刷りこまれており、それがたまたまフォームフォ すぐれた冒険小説がすべてそうであるように、 こいう女と知り合う。二人は、共生関係でつながったロアーとエグネシェイによって発見され、吸収され の旅は危険でいつばいだ。もしフロウ人に密航を発フォームフォロアーと = グネシェイという魅力的なる。ザ・サマキは " 自己発展的。なコンビーター 見されれば、ポーは殺されるだろう。また、フロウ異星生物の導きで、別のフロウ人の宇宙船に乗りこつまり、掌雷船のコン。ヒ = ーターと共生的なつなが 0 0 0 0 0 U) ) ズ、〔キ、ヤナは / ード・ワール ー 2 3
日曜の午後おそく目ざめた彼は、すぐに絵の前にとんだ。できば 。声が聞えるようにも思えたが、頭の中に吹きまくる風のため確 えは、彼の目にも、はじめの二つより劣っていた。それには急いだ かではなかった。白いものは彼をつかむと、立ちあがらせた。それ 6 ようすがあった。また黒と白だけでは見ばえもよくなかった。絵のは罵声を吐きちらしたが、意味までは理解できなかった。何かが顏 中のジョン・リーは、なすこともなく立ちつくしている。だらりとに激突した。霧がわずかに晴れた。白い服の男が、彼のシャツの襟 腰におろした両手、うつむき加減の顔から見つめる目。彼は自分がをつかんでいる。ウイスキー・サワーのにおいが、ぶんと鼻をつい ポーズをとったとき立っていたフロアに目をやったが、そこには何た。男はジョン・リーに平手打ちをくれると、壁にたたきつけた。 もなかった。ところが絵の中では、そのフロアに図形が見えるのだが、かろうじて倒れるのはまぬがれた。 ・ヘンダグラム だ。五線星形の中に立っている。顔つきもどこか違っていた。もっ 頭の中の風は衰えはしめていた。男の怒りの声が聞えた。「くそ とおとなに見えるのた。少なくとも五つぐらい年上ーーー二十ぐらい ったれ ! 」椅子にかけたジョン・リー の絵を見つめている。男はポ ケットからナイフを抜くと、その絵に切りつけた。 、。、ールと一アイジ 火曜の日 「やめろ ! 」ジョン・リーはしわがれ声でいい ー・メイは、彼をグローマンズ・チャ 、男のいる方向にお ・ほっかぬ足を進めた。 イニーズ劇場に誘った。映画はすばらしく、劇場の前にある有名ス ターの手形や足形は、聞いたことのない名前が大半だったが、映画男はふりかえり、ナイフの切先をジョン・リーに向けた。「なん 以上におもしろかった。そのあと彼らは中華料理店に行き、生まれてこった ! 」男は驚いたようこ、 冫しった。「まだガキしゃねえかー てはじめて中華料理を食べた。おいしいとは思わなかったが、パ】 あいつ、こんなガキに乗りかえやがったのか ! 」ナイフを持って突 ルを喜ばせたい一心で、おいしいと答えた。ローレル・キャニオンきかかる男の顔が、クシャッとつぶれたように見えた。ジョン・リ にもどったのは真夜中近くだった。パールは昔の家に泊ってゆけと ーはその腕をつかんたが、男のほうがはるかに力が強かった。その すすめたが、彼にはその気はなかった。スーは今夜にも帰るかもしとき男の足がパンキンの尻尾を踏んだ。パンキンは絶叫をあげ、そ れないし、帰ったとき、そまこ 冫冫いたかったからだ。 っ の足に爪をつき立てた。男はわめき、ジョン・リーにのしかか 彼は信じられぬほど満ちたりた気分で、木の階段をの・ほった。あた。男が上になり、二人は重なりあってフロアに倒れた。 とはスーさえいてくれたら。パンキンが綱渡り芸人さながらに手す「くそっ」とまどったようなかすれ声がもれた。やがて、その息は りをおりてきて、喉を鳴らして彼を迎えた。ジョン・リーは猫を抱アデノイド患者を思わせるあえぎとなって出てゆき、二度ともどる きあけ、あやすように歌った。猫は彼のあごに頭をこすりつけ、彼ことはなかった。ジョ ー・リーは男の下からはいだした。男はあお を笑わせた。。、 ノンキンを抱いて家にはいると、明りをつけた。 なけにころがった。胸には、ナイフの柄がまっすぐに立っている。 頭が爆発した。足の力がみるまにぬけてゆき、猫をとりおとすとそれはすでに血まみれだった。ジョン・リーは立ちあがろうとした 自分も崩折れた。何か白いものがそばにあるが、目の焦点が合わな が、膝をつくのが精いつばいどっこ。・、ールとディジー メ・イ、カカ
「それがしはフィオン マク・クーメイル」とこちらも大声で答イオン・マク・クーメイルがいかに父親として説得に努めても、と え、「我がフィオンの者ともども、恩義におすがりいたす。我ら、 どめることはできず、オイシンは王女とともに、西の海を駆け渡る 長い間、食物も飲物もとっておりませぬ」 ィール・ナ・ヌオーグに行って ことのできる魔法の白馬に乗ってテ 中の声が轟いて、「フィオン・マク・クーメイルとな。おはいりしまった。その地の王は、この娘婿に広い土地と豊かな財宝を贈っ なされ、歓迎いたしましよう。貴殿と部下の方々をお待ち申し上げ ておりました」 ところが、《青春の地》に三年暮らしたオイシンは緑のアイルラ 、もう すると扉が大きく開き、フィアンナはめまいのする思いであっ ンドに帰ってーーといっても、ほんの短い里帰りであるが た。中には光と色が満ち、長い間単調な灰色ばかりを見て来た眼に 一度あの美しい故郷を見、父や子やフィアンの強者たちと語りあい は衝撃であった上に、吹きかかる温気は肌から、とうに慣れてしま たくてたまらなくなってしまった。 った冷えを拭い去ったのである。 「わかりましたわ、愛しいオイシン、そうまで言うのでしたら」と 乞われるまでもなく、一同は中にはいって行った。 「でも、あなたにはこういう禁忌を科して 金髪のニアメーは言い、 おきます。足が決してアイルランドの土に触れないこと。もし触れ さてそれでは、きわめて手短かに、フィオンの息子でオスカの父 たら二度と私のもとへは帰れません。あなたに二度とお会いでぎな 親にあたるオイシンの身に何が起こったか、お話しすることにしょ いのではないかと胸の中では恐ろしくてたまらないのです」 「そういう約東なら、そうしよう」とオイシン・マク・フィオンは 言い残し、魔法の白馬の背にまたがって出発した。アイルランドの まず第一に頭に入れておいていただきたいのは、オイシンがフィ オン・マク・クーメイルを父親とし、トウアハ・デ・ダナーン ( ア岸辺に着くと、まっすぐに、キルデアのアルムにあるフィオン・マ イルランドで強大な力と技芸を誇った種族 ) の乙女であった佳人サク・クーメイルの居城に向かった。 ハを母親として生まれたということである。また、このトウアハ ところが、たどりついてみると狐につままれたようだった。アル デ・ダナーンの血がオイシン・マク・フィオンの体に色濃く流れてムの高い丘はあったけれども藪や雑草が生い繁り、フィオン・マク いたことを考え合わせれば、金髪のニアメーを一目見た時、どうし ・ク 1 メイルの邸など影も形もなかったからである。このことを考 ようもなく惚れこんでしまったのも驚くにあたらない。というのもえ考え行くと、大岩を動かそうとしている、やや小柄な男たちの一 ニアメーはダナーン族の王女であり、その父こそ遠く西の海に《青団に出会った。この男たちの仕事に手を貸してやれば、質問の一つ ィール・ナ・ヌオーグを治める王だったからである。しや二つは答えてくれるだろう、と彼は心に思った。小柄な男たちが 春の地》テ かも、オイシンの美貌と才能を考える時、王女ニアメーもまた同様十二人がかりでも岩はびくともしなかったが、オイシン・マク・フ 9 フ イオンは鞍から身を乗り出し、片手で、小柄な男たちの動かそうと にオイシンに惣れこんでしまったことに、なんら不思議はな、。 こ 0
タコトノ間 = 、大キナ食イチガイガアルコトヲ、久シイ前 = 私 ( 学ナゼナラ、持チコタ = ウル限度 = 近イトコロ = イル危険ナ人間ノ前 デ、ヘるめっとヲ作動サセテシマッタカラダ。ワレワレ / ドチラ ンダ。彼女ハ患者ニへるめっとヲ取リニイカセ、彼ハソレヲ彼女ノ トコロへ持チカエッタ。彼 ( 混乱シタ精神状態テ戻ッテキタ、逮捕モ、ワレワレガイタコト、アルイ ( 、イナカッタコトガ、他人 / 身 ニ起ッタコトノ原因トナッタコトニ ( 、責任ハナイノダ、コトニ、 トソノ先ノ監禁トヲオソレテ。彼ラハ言イ争ッタ。ソノトキ、私ノ ソノ結果ニツイテ、ワレワレが無知デアッタトキニ ( 。数年前ニ、 接近ガ、ヘるめっとヲ作動セシメタ、ソノタメニ彼ハへるめっとヲ 落トシ、彼女ニ襲イカカッタ。彼ノ最初 / 一撃ガ彼女ヲ殺シタノ 私 ( コ / コトヲ会得スルコトヲ学ンダ、ソシテ私 ( 、ソレヲ放棄ス ダ、ソレガ起ッタトキ、私 ( 彼女ノ心ノ中ニイタノデ、ワカルノル意志ハナイ。原因ヲ求メテ、アナタ ( ドコマデサカノ・ホレ・ ( 、気 ダ。私ハアノ建物ニ接近ヲッヅケタ、彼女ノモトへ行クッモリデ。 ガスムノカ ? へるめっとヲ彼女ガアノ男ニ取リニイカセタコトニ シカシナガラ、車ノ往来ガアリ、見ッケラレルノフ避ケルタメニ途ョッテ、彼女ヲ死へト導イタ一連ノ出来事ノイトグチヲ開イタノ 中デ遅レヲトッテシマッタ。ソノウチニアナタガ入ッテキテ、ヘる 、彼女自身ナノダ。シカルニ彼女ハ恐怖ニカラレテ行動シ、彼女 めっとヲ用イタ。私ハスグニ逃ゲタ。 ガ自己防衛ト考エタ行動ノタメニモットモ手近ノ武器ヲ使ッタ。ト オレハアンナニ近クニイタノニ ! インチキノ調査ナンカノタ コロデコ / 恐怖ハイズコョリ来タノカ ? ソノ根 ( 、ズット以前ニ メニ、五階デグズグズシティナケレ・ハ・ 起ッタアル出来事ニ対スル罪ノ意識ノ中ニ横タワッティル。ソシテ ソウダ。シカシ、アナタハ ソウシナケレ・ ( ナラナカッタ、中ソノ行為 ( マターー、・・モウタクサンダ ! 罪ノ意識 ( 、人智ノ開ケテ ョリコノカタ、人間ノ一生ヲ駆リタテ、破減ニ追イコンデキタ。ソ へ入ルタメニ、ラクナ方法ガアルトイウノニ、ムリャリ押シ入リタ ワレワレスペテトトモニ、ワレワレノ墓へト乗リコムダロウ ク ( ナカッタダロウ。ソンナ理由デ、自分ヲ責メルコトハデキナレ、 アナタモソレハ承知シ ト、私ハ確信シティル。私ハ罪ノ産物ダ イ。モシアナタガ一時間アトニ アルイハ、一日アトニーーー来テ ソノ奴隷・ : ・ : シカ イタラ、疑ィモナク、モットチガウョウニ感ジタダロウ、ソシテ彼ティルョウダ。ソノ産物、ソ / 臣下、カッテハ シ、私 ( ソレト妥協ヲシタ、ソレガ、私ノ人間性ノ尺度フハカル必 女ハ、同様ニ、死ンディルダロウ。 しかし別の考えが湧いて私を同じように悩ませた。あの男がメン要不可欠ナ属性テアルコトプ遂 = 悟ッタカラダ。アレラノ死ーー・警 フィスで私を見かけたことが、動揺の原因であったということはあ備員ノ死、でいぶノ死、らいらノ死ーーー = 対スルアナタノ評価 ( ョクワカル、同様ニソノ他ノ事柄ニ対スルアナタ / 結論モワカル。 りえるだろうか ? ライラのところへやってきた謎の訪問者によっ て見とがめられたことが彼を動転させたのではなかろうか ? 群衆ワレワレ ( ナントイウ愚カシイ、ツムジ曲リノ、近視眼的ナ、利己 の中にわたしの顔をちらりと見つけたことが、あの最後のシーンを主義的な種族デアロウ力。多ク / 点デ、コレ ( 真実テアル、シカシ コレハ、罪ガ象徴スルトコロ / モノノ一面デアルニスギ田 一方デハ、 惹きおこす誘因になったのではなかろうか ? コノ惑星ノ他ノ居住者ー・、ーアル種ノ ナイ。罪ナクシテハ、人間 止メテクレ ! 私ハアナタノ罪ノ意識プ容易ニ感ジテシマウ、
りを持っ魚の群れであり、彼らは宇宙船をコントロできればここで、ダンが『スター ( イカー』の中用であり、また別の一部は、プライス・デウィット ールするだけでなく、フロウ人の情緒的記億を形成に盛りこんだ哲学や宇宙観をくわしく論じたいとこの論文 Mechanics and Rea1ity" か してもいる。 ろである。だが、あいにく、その内容は非常に複雑らヒントを得たものだ」 ( ーフテとザ・サマキは、十ーに " 世界の夢。をだし、限られた長さでは道草を食っている余裕がなもしこのリストになにかをつけ加えるとすれば、 見せ、その中で彼に知識を教えこむ。その知識は、 したがってここでは、これだけをいうにとどめ ハート・ハインライン、・・ヴァン・ヴォク ・ホーが結節世界での試練を生きのび、そのあとにくておこう。ダンがわれわれに示す宇宙像は、本質的ト、ポール・アンダースン、といった作家がかなり る霊的な変貌を生きのびるために、・ せひとも必要なに禅と道教のそれに近いものである。そして、なに前に発展させたストーリーテリングの技術をあげて ものなのだ。 よりも重要なのは、ダンの宇宙像の描き方が決してもいいだろう。 ペダンティックでなく、新鮮なおもしろさに溢れてここまで書いてきたところでも明らかだと思う 『スター ( イカー』の前半は、スタンダードな冒険いることだ。 が、わたしはこの小説にすっかり惚れこんでいる。 小説の型を守って、わりあい直線的な語り口で展開ダンはいう それはこの小説がたくさんのすばらしいことをやり されていく。ポー・フォレスターは当然そうあるべ「この小説を書く上で、わたしは多くの著者の影響とげているからだ。それはアイデアだけでなく人間 き魅力的な人物であり、そしてダンはフォレスターをうけた。その名をあげると、アドリアン・べリー を描いた物語であり、地上的なものと宇宙的なも をそんな人間に描くことで、″賢者としての放浪 ( 『一万年後』 ) 、ホルへ・ルイス・ポルへス ()A の、平凡なものと深遠なものを両立させた小説であ 者″の神話を有効に活用している。 New Refutation of Time ・ ') 、アーサー・ o ・クる。それはまたわれわれの世界観について語った小 小説の後半は、それまでとがらりと変わって、鏡ラーク ( 『未来の。フロフィル』 ) 、ロ・、 ート・ }--2 ・フ説でもある。これだけすぐれた作品なら、惚れこみ の中にちらちらとのぞく夢のような性質をおびる。ォワード ("Far Out Physics") 、・ がいもあるというものだ。 読者はこの部分へきて、自己の運命をたずねるポーンスター・フラー ("The DymaxionWo 「 ld 。 ( / ファンタジイの持つある構造上の特異性 の旅が、また同時に、霊的なヴィジョンと啓示をた Buckminster Fuller") 、—・ ・レヴィット ("Be ・は、神秘主義的傾向の物語のそれと共通するところ ずねる旅でもあることに気づく。そして、小説の結 yond the Known Unive 「 (。) 、オラフ・ステーが多い。これは最初考えるほど意外ではないように 末にくる頃には、ポー・フォレスターが経験した事プルドン ("The sta 「 Make 「 =) 、鈴木大拙 ("Zen 思うが、『スター ( イカー』の中で、ダンはこの二 件の一つ一つが、彼の自己発見の過程の一歩一歩で Buddhism") 、モーティマー・ト—M"Computers つがいかに近い関係にあるかをみごとに証明してく あったことを知るようになる。ポーは、自己の運命 and Common sense") 、ジョン・・テイラーれる。もちろん、それをやりとげた作家はダンひと ( それがなんであれ ) を把握するためには、まず自 ( 『プラック・ホール』 ) などである。後半の各章のりだけではない。オラフ・ステープルドンの "La ・ 分自身を知らなければならない、とさとるのだ。 一部は、数学者のパナッハとタレスキーが展開した st and First Men" や "The Star Maker"' O ・ 理論と、ゲォルク・カントールが展開した理論の応 co ・リュイスの『沈黙の惑星より』をはじめとする LE ,. キャ 0 0 0 0 0 6 4
オシ = はその土地にしがみついた。大半の人びとが。 ( ニックにおち グレイス・エリザ・ヘスはポ 1 チの揺り椅子にかけ、静かに椅子を いった中で、彼は例外たった。土地をたた同然の値で売りとばしたゆすりながら、ウオシ = の服の縫いつくろいを続けた。闇がおり、 税金が払えないばかりに手離したりすることもなかった。戦争目がきかなくなると、彼女はつくろい物をきちんと膝にたたみ、椅 が始まると景気はいくらか上向いたが、大不況以前にはほど遠かっ子にもたれかかって目を閉じた。 た。そして今また、一家はどん底にあった。汗水たらした一年一年あくる朝、朝食が出てこないのを不審に思ったウオシ、は、そこ が終っても、あとには、翌年また同じ労苦をくりかえすだけの資金でようやく妻の死に気づいた。ホーリイにある第一・ハプテスト教会 しか残らないのだ。 での簡単な葬儀ののち、彼女はカウンティ・ライン墓地に、五人の 子供とともに葬られた。ローズお、はとライラおばは、めん鳥の鳴く この家をだれかが継ぐとしたら、それはやはり長男のウオシュ・ 」を連発し、黒レースのハ ジ = = アだろう。うれしいことに、ジョン・リーは継がなくてすような声で「かわいそうなジョン・リー む。彼女は二階の息子の部屋にあがり、彼の身のまわり品を安物のンカチを存分に濡らした。 トランクに詰めた。トランクを見つけやすい場所におくと、つぎに葬式からの帰り、ジョン・リーは、父親とならんで五三年型シポ 自分の部屋に行った。古ぼけた脚付きタンスは、むかし実家の祖母レーのフロント・シートにすわった。どちらも口をきくことはな ミラーズ・コーナーズでハイウェイからそれるま が使っていたものたが、その引出しをあけると、木棉のスリップのく、その状態は、 下に隠しておいた封筒をとりだした。彼女は台所にもどり、封筒をで続いた。 ジョン・リーにわたした。 「ウオシュ・ジ、ニアに手紙を重〔きなさい。帰ってくるように言う 彼は受けとり、母親を見た。「これ何、ママっ・ んだ、ジョン・リーは答えない。車のうしろで舞いあがる埃りのに 「朝になったらあけなさい、ジョン・リー。さあ、もうべッドに行おいをかいでいた。父親は古い馬車置き場の前に車をとめると、服 を着替え、半日のロスをとりもどすためにかけだしていった。ジョ 「たけど、まだ暗くもなってないよ」なにか変だ、なにか変た。 ン・リーは玄関の物置きに行き、靴箱をおろした。母親が小物入れ 「じゃ、もう少ししたらね。しばらくボーチに坐って、休みたい に使っていたもので、住所はその中にあるはすだった。ちょっとか の」息子にキスし、その肩をたたくと、彼女は部屋を出ていった。 きまわし、底に行きついたところで、十三年前そのままに住所が見 ジョン・リーはがらんとした戸口を見つめ、耳もとで脈打っ血の音 つかった。手紙もけつきよく書きおえた。 を聞いていた。しばらくのち、彼は冷水器の水を一杯飲み、自分の 例の封筒は、封も切らずに枕の下においたままだった。あける前 部屋にはいった。べッドに横たわると、封筒を両手ににぎりしめた から、中身はおよそ見当がついていた。母親が苦心してためた金 のふちにすわった。 まま、天井の擘紙に残るしみの模様を見つめた。目に涙がこみあげは、数えると百二十七ドルあった。彼はペッド てきたが、まばたき以上のことはしなかった。 朽ちかけた静かな家の中、物音一つない部屋の中、母親が作ってく 7 3
・フェントリスをさがしているんですが」 街へ入っていくと、嵐の前触れの気配を感じた。黒い雲の壁が、 「わたしがディビッド・フェントリスですよ」 〔のかたに築かれつつあった。しばらくして、ディ。フが仕事をして るビルの前に立ったとき、雨がポッポッおちはじめ、汚れた煉瓦「はじめまして」いいながら、わたしは彼が立っているところへ近 づいた。「あなたが、昔、関係しておられたあるプロジェクトに関 ) 壁にぶつかってはねかえった。壁がすっかりきれいになるには、 っと降らなければためだろう、このあたりの建物はどれも。彼はする調査に協力していますが : : : 」 ) よっと前にもう来ているはずだとわたしは思ったように記憶す彼は微笑してうなすき、わたしの手を握った。 「ハングマンですな、むろん。よろしく、ドンさん」 「ええ、ノ、 、ノグマンです」わたしま、つこ。 冫しナ「目下、報告書を作成 肩をすくめて雨をはらい、中へ入った。 案内板が指示をあたえてくれ、エレベーターがわたしを上に運中でーーこ わたしの足が彼の部屋までの道をたどった。ドアをノックし「ーーそれで、あいつがいかに危険かということについてわたしの ~ 。しばらくしてもう一度ノックした。またも反応なし。ノブに手意見を聞きにきたんですな。おかけなさい」彼は、作業台のはしに ある椅子を示した。「紅茶でもどうです ? 」 かけ、ドアが開いているのを発見し、中へ入った。 ひとけ そこは人気のない狭い待ち合い室で、緑色のカーベットが敷いて「いや、けっこうです」 のる。受付の机はほこりをかぶっている。部屋を横切ってプラスチ「飲もうと思っていたところだが、 「ああ、それでしたら : : : 」 - クの間仕切りのうしろをのぞいた。 男がこちらに背を向けてすわっている。間仕切りを指関節でたた彼は別の机に近づいた。 「クリームがなくて。すみませんな」 。それを聞きつけ男が振りむく。 ハングマンに関係があるとどうしてわかっ 「かまいませんよ。 たんです ? 」 おたがいの眼があった。彼の眼は相変らず角縁でふちどられ、 彼は茶碗をわたしにさしだしながら、ニコニコ笑った。 いき輝いていた。レンズは前より厚くなり、頭髪はうすくなり、 「なぜならばあれが戻ってきたからですよ」と彼はいった。「それ はややこけていた。 に、確かにあれほど多くの関心をもってわたしが接したのはあれた 彼の疑問符は空中で震え、彼の視線は、わたしに気づいたという ハ配を見せなかった。図表の東の上にかがみこんでいるところだっけですからな」 「それについて話していただけませんか」 。金属、石英、磁器、ガラスでできた、いびつな籠が手近のテー 「ある点までなら」 - ルにのっていた。 ーしナコアイビッド 「その点とは ? 」 「・ほく、ドンです、ジョン・ドン」わたしよ、つこ。 ー 5 2