今 - みる会図書館


検索対象: SFマガジン 1978年1月号
214件見つかりました。

1. SFマガジン 1978年1月号

今宵 走る砂を追って 今を今にとどめよ、つとい、つのなら 流れ星の消えぬ間に せめて千度くりかえして否と あたしの人よ まだ見ぬ明日を沈めた 水銀の湖はどこ。 星々の谷間に青銅のとびら 閉して せめて今だけ思い出をください。 羽るのは陽でしよ、つか 褪せるのは時でしようか 破れた地図のかたわれは 残されたかたみをすべて つつんで。 どこにおられます。 あたしの人よ。 火星人の粘土板から 連作宇宙事詩Ⅳ 星と粘土板 萩光 尾瀬 亡月 都龍

2. SFマガジン 1978年1月号

ら舞 めや た さ が る く でを 傷直一 、よ そ し う う 横は の あな は ら さ ま襲 と き 観返 っ カ : て地 ものげ の癶ゞ、、第宀 だ出 で の の る ジれ そ ロた の ] 男 と 凄 はが でた ぇ い を は よ で ほ沈 き う 明 も が 分 あ ど 亜 じ、相 る 肩 シ こ の す手 。を剣、 ロ ぎ 走風 がち 目 つを の の息 今 と が 鋭全、 な 夜 い 荒 し、 い に く 痛カ と な みわ ロ と を り さ今 は シ と 叔 る ロ は の 父 よ 胸 で か と う はき カ : や 上 ら な ほな 激が く 下 覚 し ら を つ 折な り 倒 た 檻 の返 れ に し そ を よ で 宀 り あ た な ら の に 体 の は調 自 で ロ 9

3. SFマガジン 1978年1月号

「ああ、そうだよ、で、あんたは ? 」 ねます。この町での暮しはたいへんです。権力は軍がにぎっていま 男は器用に小さなポケットから名刺を一枚抜きとって俺の前へ置す。物資の供給はよくありません。すぐそばにゾーンがあって、ま 。それに目をやると、《移民局全権代理アロイーズ・マクノ》るで火山の上で暮しているようなものです。いつなんどき突発的に と読めた。こいつのことならむろん俺は知っている。誰かれなしに伝染病が発生するとか、それよりもっと悪いことがなにか起るとか この町から立ち去れとうるさく説得してまわっている野郎た。どう ・ : お年寄りたちの気持ちは分ります。あの人達に住み慣れた土地 しても俺たちを一人残らすこの町から追っぱらいたがっているやつを立ちのけと言うのは酷です。しかし、たとえばあなたは : : : おい がいるってことだ。ハ ーモントの町の半分は昔のまんま、また俺た くつですか ? 二十二か三、それ以上の年とは思えません ちに残されているんだそ、それなのに、こうやって俺たちをこの場すか、私たちの局は慈善組織ですから、この仕事で利益を得ような 所からあっさり追っぱらってぎれいに掃除をしたがっている野郎がんて考えていません。皆さんにこの悪魔の土地から立ちのいていた いる。俺は爪先で名刺をはしぎ返して、言ってやる。 だき、本物の生活に入っていただきたいたけなんです。旅費と新し 「ご好意は誠にもってかたじけないが、ことわる。興味がないんでい土地での就労については私たちが保障しているんですよ。あなた ね。生れたとこでくたばるってのが俺の夢でねえ、分るだろ」 のような若いかたには学ぶ可能性たって保障されているんです : 「しかし、どうしてですか」勢いこんで男がく。 それでも、いやだとおっしやる理由が私には分りません ! 」 「不躾な質問で申しわけありませんが、あなたをここにとどまらせ 「するとなんだな、どいつもこいつもうんと言わんのだな ? 」 ているものはいったい何なんでしよう ? 」 、え、一人も、という訳ではありません : : : 承知してくれる人 それほど聴きたきや、なぜ俺がここにとどまっているのかその訳たちもいくらかはいます、ことに家族持ちの人たちですが。しかし を率直に言ってやろう。 : したいこの町に何があるんですか、あな 老人と若い人たちが・ 「むろん、少年時代の甘い想い出さ。シティ。ハ ークでのはじめてのたがたにとって ? ここは人里離れた僻地ですよ、たたの田舎じゃ キス、お袋さんに、親父のこと、ほかでもない、 この ' ハーで酔っぱありませんか : : : 」 らっておつばじめたひどい喧嘩、想い出すたんびに胸がきゅうと締そこで俺は男にぶちまけてやった。 めつけられるほどなっかしい分署の豚箱 : : : 」ここで俺はおもむろ「アロイーズ・マクノさんとやら、みんな今あんたが言ったとおり に鼻汁で汚れたばっちいハンカチをポケットから引っぱり出して、 さ。この俺たちのケチな町は僻地さ。ずっと今までも僻地たった 目に当てる。 し、今だってその通りよ。たたし、ここんとこがかんじんなんだ あな 「ためだ、どうあってもここは動かんそ ! 」 : 、今はこの僻地が未来につながってる穴だってことよ。この僻地 かれはそれを見て、 ーポンをひと舐めし、考えながら言う 9 を通して、あんたたちのド汚ない世界に、これからは何もかも変る 6 「ハーモントっ子といわれる皆さんが、どうしても私には理解しかんだってことを俺たちが教えてやるのよ。暮しも変る、まともにな 0 、、 0

4. SFマガジン 1978年1月号

ごしに息を吐きだした。見ると救助隊の連中がヘリコプターに乗りるみたいなひどく青つぼい光が舌みたいにちょろちょろと動いて、 こんでおり、消防隊は敬意を表して整列し、ゲートのところで中尉その光で家の中が照されているから、中がのそける。それは《魔女 8 ー》が地下室から息を吐いているんだ。だがそのことを別 が、阿呆め、挙手の礼をしてやがる。連中の頭上に、すでに色があのジェリ にすれ・は、おおむねいま見えているようなもんだ。街区は街区、家 せてしまっているすこぶる頑丈なプラカードがかかっている。 屋は家屋のままだ、むろん修繕しなきゃならないが、特になにがあ るというわけじゃない。ただ人の姿がないだけのことだ。そうそ 歓迎、宇宙からのお客様 ! う、あの煉瓦づくりの家は″コンマ″という仇名の算数の先生が住 テンダーのやつが演出効果を狙って連中に手を振ったが、そんなんでたんだっけ。退屈な人で、人生の敗残者だった。二度目の奥さ 儀式のことなんかいっぺんに忘れてしまうぐらい効き目のあるやつんにも訪問の直前に逃げだされてしまい、一人娘は、目が白内障に を一発、やつの横腹に食らわしてやった。訣別ってもんがどんなも かかっていた。今でもよく覚えているが、その子を俺たちはよくい んかこれからあんたに見せてやるぜ。 ニックが起ると、先生もほかの連中とい じめて泣かしたもんだ。パ っしょに下着たけでこの地帯から橋のところまで逃げだしてきたー 前進していた。 ー六キロもの道のりを全然休みなしに走りづめに走ってだ。そのあ 右に研究所、左に。へスト地域。俺たちは標識から標識をひとつず ったどって通りのまんなかを進んだ。この通りを人も乗物も通らなと長いことベストを罹り、皮膚はむけてしまうし、爪もとれてしま くなってからもうずいぶんと歳月がたつ。アスファルトの舗装はすった。この地帯に住んでいた連中はみんな発病したから、ここをベ つかりひび割れ、亀裂には雑草が生い茂っているが、それはまだ今スト地帯と呼んでいるんた。そら、あそこの三地域の住民は盲にな ってしまった。だから今じゃ、あの地域を、第一盲人区、第二盲人 のところ俺たち人類の草た。そら左手の歩道を見ろよ、もう黒い刺 のある草が生えている。その刺草がいかにも境界をはっきり示して区 : : : というふうに言っている。すっかり視力がなくなって全盲 いるように見える。大鎌ですつばり切り落としたみたいに舗道ぎわになったんじゃなく、なんと言うか、そうそう、鳥目とか夜盲症と よそもの いうやつだ。ついでだが、連中が盲になったのは、閃光かなんか強 のところに黒い草が生い茂っていた。あんがいあの″来訪者″たち い光に目がさらされたためしゃないらしいって話だ。強い閃光もた はまともなやつらたったかもしれん。ゾーンからこっち側へ飛んで くる《刺のある和毛》にしたって、ありや風で吹きとばされてきたしかに光るには光ったらしいが、盲になった原因は、轟音のせい だけかもしれんじゃないか : だ。ものすごい音がしだしたとたん、目が見えなくなったというこ とだ。そんなはずはない、よく想い出してみろ、と医者たちが連中 ベスト地帯の家屋は、壁がはげ落ちた廃屋だった。窓ガラスはほと んどどこも無事たったが、ただ汚れつばなしだからまるで盲どうぜに言ったんたが、今まで聞いたこともないような音がして、それで 目が見えなくなった、と連中は言いはってきかなかったそうだ。と んたった。夜中にそ、はを這って通るときは、アルコールが燃えてい

5. SFマガジン 1978年1月号

避という至上の仕事が与えられた結果であった。どうしても退避をか、何年もかけて行われたのか、それも謎である。 肯んじない先住者たちへの説得材料になるかも知れないから、この しかし、古代文明があったのは、疑いようのない事実であった。 ことがにわかに浮びあがって来たのである。マセは、先住者たちが ハムデ文明は存在したのだ。 もちろんマセは、が調べ出したこの結果を科学センターに ラクザーンと運命を共にするというのが古文書のハムデへのタ・フー に起因すると知って、そのハムデ自体が実在しなかったか、でなけ知らせ、連邦経営機構に報告した。 ればハムデの文明というのが古文書にあるようなものではなく、今反応は、複雑であった。 の先住者の生きかたを正当化するために作為的に変改されたもので 本来ならこの発見は、センセーショナルな反響を惹起し、科学セ あるという証拠さえっかめば、ひょっとすると先住者を説き伏せらンターは直ちに総力をあげて詳細な調査に着手するであろうし、連 れるのではないかと考え、もその意見を支持したのであっ邦からも別に科学者たちが乗り込んで来る場面である。 けれども : ・ : ・今はそう簡単な状況ではないのであった。科学セン は、裏半球に部下を送り込みーーその海底におびたたしい ターはこれ迄の仕事を極度に縮小し、減びゆくラクザーンの記録づ 遺物が眠っているのを見つけ出した。厚い泥をかぶってはいたものくりに主力をそそいでいるのた。ラクザーンそのものが無に帰して の、巨大な建造物の部分らしいものや、高度の技術で加工されたとしまうからである。そのラクザーンの、かって沈んだ大陸にあった お・ほしい金属などを得たのである。ところによっては、そうした残古い文明を本格的に調べあげたとしても、それが何になろう。い 骸も高熱によって溶融していたのだ。調べるとしても、もっと時間 や、何になろうというのは行き過ぎであるとしても : : : 現存してい がかかるだろうと予想していたにもかかわらず、あっさりとこうしるものを記録にとどめようとする大仕事を前にしては、そちらにま たものが発見されたのは、それらが広範囲にひろがっていたのを示わせる余力はほとんどないのであった。科学センターは裏半球にお していた。 もむいて海底を実地に調べるのは断念し、ロポット官僚が持ち帰っ た遺物やその調査レポートをコレクションに加えるということしか は、引き揚げられた遺物を分析し、それらがほ・ほ三千レー 出来なかった。連邦のほうは、さらに冷淡であった。連邦が握って ン前のものであると断定した。 いるあまたの植民世界のひとつがやがて消減しようとしている。そ あきらかに、ラクザーンには古代文明が存在していたのだ。それ も、今の先住者の生活とは異質の、高度の文明がである。 の惑星の住民を無事に退避させ、その世界の記録を出来るだけ残す この古代文明がなぜ減んだのかは、まだよく分らない。大地が沈 ・ : それが大切なのである。おそらくは何年も何年もかかるであろ んだというのも、古文書にあるハムデがみずからのカでそのような うその古代文明の解明をどうするかとなれば、マセに通告して来た し J い、つほ、か 結果を招いたのか、偶然その時期に異変が起きて沈降したのかそれように、貴官の裁量によって最善の処置をとられたい、 もはっきりしてはいない。さらには、その破滅が急激に到来したの仕様がなかったのである。 2

6. SFマガジン 1978年1月号

ばく然とこう考えるのだ、この新しい肉体を手に入れ、それにペ = て。そうしている間にも、・ほくはトロイの〈レンにゴーカンされよ ス ( あるいはヴァギナ ) が欠けているからには、違ったようにふるうとしていた。・ほくは頭を上げた。 まうのが当然じゃないか、と。 「どんな感じ ? ハロウ」 ぼくには彼女の落ち込んだキャラクターが何かわかった。ぼくだ彼女はちょっと手をゆるめた。でも、決してやめはしない。その って、昔の文化に興味をもっ点、他のチビどもにひけをとらない。 ままで片ひじを立てる。 彼女がプロンディで、・ほくがダグウッドってわけだ。例のマンガの「説明できそうも、ないわ」 やつ。典型的で家庭的な十九世紀のカツ。フル。彼女は赤白チェック 「そこをなんとか」 のテー・フルクロスを広げ、皿とナプキンとウォッシュポールをふた えくぼが顔に浮かんだ。「一体全体どんなふうか、本当はわかん ところに用意して、小さな電気燭台を置いた。 ないの」そして、「わたし、まだ・ハ ージンなんだもん」 ・ほくは、小さなオーヴンの前にしやがんで一つの・ ( ーナーに三つ ぼくは起きあがった。「きみは、それも手に入れたってわけ ? 」 のフライ。 ( ンをのせようとしている、そんな彼女に微笑まざるを得「トーゼンよ、どうして ? でも、気にしないでいいの。わたし、 なかった。ぼくを喜ばせようとして、・ほくに全然興味のもてないよ怖くなんかないもん」 うなことを、こんなに一所懸命やってくれるんだもの。彼女は働き「メイク・ラブについては ? 」 ながらハミングしていた。 「おお、フォックス、フォックス ! もちろん、もちろんよ。わた 食事の後、・ほくは後かたづけを申し出た ( あーあ、なにしろダグし : : : 」 ウッドなんだ ) 。ところが・フロンディのいうには、ありがとう、で「違う、違うんだ ! ちょっと待って」ぼくはもう少し離れようと もいいのよ、あなた、あたしが全部やるから : そこで・ほくはあ彼女の下でもがいた。「つまり、・ほくがいいたいのは、取り換える お向けに寝ころんで、おなかをかかえ、じっと地球を見つめてい ってことに問題はなかったの ? つまり、今男の子とセックスする た。すると、・ほくの横に、あったかい肢体がすりよってきて、半身をことに全然嫌悪感ないわけ ? 」本当に・ハ力な質問だよ。でも彼女は からませ、顔からつま先までびったりと・ほくに押しつけてきた。彼真面目にとった。 女は・フロンディをどこか汚れた皿の間にでも放り出してきたんだ。 「そこまで思ったことなかったわ」と、つくづく考えていし 今、ばくの耳もとで息づいている女性は トロイのヘレン ? グ方、手は下へ伸びて、・ほくを招き入れようと不器用にまさぐってい レタ・ガルポ ? ともかく、新しいだれかだ。もとの ( ロウに戻た。・ほくはそれがうまくいくよう協力し、彼女はしやがみこんだ。 ってほしいと、・ほくは心から願った。もし彼女を中におさめている「〈変身〉の前には考えてたけど、まあどうでもよくなって。今じ この熱狂的な生き物がすこし遠慮してくれたなら、 ( 0 ウとぼくはや、全然、不安なんてないの。ああ 0 ! 」彼女が乱暴に腰をおとし まさしくモーレツなセックスができるんじゃないか、と思ったりしすぎたのだ。ぼくたちは勢いよくスタートした。

7. SFマガジン 1978年1月号

・争 0 るま 0 を都を 0 0 民 0 め 応募数は増えた 弱い。な・せ、こんな世界になっているのか、 が、今回は、低調。 よく判らないから、オチがビンとこなくなっ したがって、入選作てしまう。疑似イベント・テーマとしては、 説明不足といえる。 なしにする。もし、 今回、入選作をだし 「風化する街」片山富士男 てしまうと、先月号 ショートショートになっていない。感受性 の次点の作者に、気だけで書いている。ムードに捨てがたいもの の毒だからである。 があるが、このタッチで、五十枚、書けるカ 価、ろみ 0 争 0 気むの優しい選者としがあるのだろうか ? ては、苦しい立場である。そのかわり、応募「盗作者はいったい誰 ? 」 、川容弘 作品のレベルが高いときには、二作でも三作おれは、作家だ。今、この欄の選者を 0 ・・、、誉 0 る、 , を争 0 でも、入選にしてしまおうと思う。 している。選者であるからして、読者に責任 0 ~ 0 争 0 め 0 、第、ぐを 0 、。 、学ツ・ 0 6 望 0 ・ 9 ・蝓 0 & 0 体、 おれは、選者だ。誰がなんといおうと、選がある。おれの好みの作品ばかり、とるわけ 冫。いかない。したがって。ハロディは、よほ 者にまちがいない。編集部は困るだろうが、 田これからは、そうすることに決めた。 ど、出来がよくないと、採らないことに決め なぜ、こんなことを書いたかというと、今たのだ。 回の応募作のなかに、「おれは x x だ。 x x 「二十五世紀の夢」高岩恵 0 、、、 0 0 今、お 0 x る にまちがいない」という書きだしの作品が、 心優しいコンビュータと人魚の話。 0 ・ 0 、み、、 4 、め ~ ス校守 数篇あったからである。選者に、おもねって ードなのだが、構成に難。ショートショート 、民メ 0 、 0 争 0 ー としては、途中で、コン。ヒュータの一人称が 平 ~ は困る。かえ「て興醒めする。 ′タ評 0 割れてしまい、オチがなくなった。 み新 0 金め争 0 設 - 「ウィーク・エンドレス」萩原洋輔 「石」岬兄悟 “、価争体価 0 金 二作応募している。どちらも良いが、文章アイデアが面白い。誤字が多いのは困る。 士兀 とオチの計算に難点がある。アイデアマンらアイデアが、星新一風なのだから、ドタバタ しい人だから、無駄な描写を切り、必要な描調で書いたのは、失敗ではないだろうか ? 写を入れる計算をして書けば、もっと良い作オチは、よく効いている。 品が、できあがるはずである。次回作に期待 「転生」時野優 編集部より豊田氏の予想どおり、編集部 アイデアは良いのだが、ストーリイ展開が は困りました。そこで、「リーダーズ・ス 乱暴すぎて、ついていけない。また、オチ トーリイ」第一回に次点となった「パ の部分にも、もう一考あってしかるべきだろ ェクト・マシーン」を掲載することにいた しました。もちろん、この作品は改稿後の 「タクシー会員証」番次小太郎 ものです。 、説得力が 0 0 ー 53 , Ⅲ

8. SFマガジン 1978年1月号

やつはいないんだし、知りようもないんだ。かりに警察からだとし手に言いがかりをつけたのか、お前には分っているか ? たって、たしかに連中なら古いことは知ってるだろうが、今の俺の そう考えると、俺は今日はゾーンに行くべきじゃないと感じ、ほ ことはつかんじゃいない。そうだ、″はげたか″のやつがっかまっ っとしたぐらいだ。ただ問題はそのことをキリールにどうやってそ たんだ、畜生、あの野郎だったら罪を軽くしてもらいたいばっかりれとなくわからせるかってことだ。 に人をはめるぐらいのことは : : : しかし待てよ、 ″はげたか″のや俺はずばっと言った。 つもたしか、今の俺のことは知らんはすだ、俺はあれこれ考えた。 「俺はゾーンに行かんことにした。なんか言うことがあるかい ? 」 たがいくら頭を悩ましてみても役に立ちそうなことはなんにも思い むろんはじめは目をまるくして俺を見ていた。なにか言ったよう つかないので、ほっとくことにする。最後に夜中にゾーンへ行った だ。そのつぎかれがやったことは、俺の腕をつかみ、自分の部屋へ のは三カ月前で、あのとき持ち出したブツはほとんどさばいてしま連れていって俺をかれのデスクに坐らせると、自分は俺の坐ってい って、金も使いはたしてしまった。現行犯でとっ捕まったこともある椅子の肘掛けに尻をのせた。二人とも一言も口をきかないで、タ・ハ るが、今はそう簡単に挙げられてたまるかってんだ、こっちだってコに火を点けた。やがてかれのほうからます用心深く口を開いた。 すばしつこいんだ。 「なんかあったのか、レッドっ・ 俺になにが言える ? すでに階段をの・ほりかけていたが、ふと頭に浮んだことがある。 それがあんまりにも思いがけんことだったから、また史衣室へもど「いや、べつになにも」と俺。「なにもありやしないさ。昨日ポー ってくると、椅子に腰掛けてタ。ハコに火をつけた。はっきりしてるカーで二十もすっちまってねーーヌーナンのやつが馬鹿についてた ことは今日、俺はゾーンに行くわけにいかんということだ。それにもんで、いまいましいがこっちは・ 明日もだめた、あさってもだめだ。あのなんでも嗅ぎまわってある「話をそらすな」とキリール。 くヒキガエルどもが俺のことを忘れずにいたんだ、これでわかった 「いったいどうしたんだ、考えなおしたのか ? 」 そ、かりに忘れていたのかもしれんが、どいっか想い出した野郎が 緊張してたせいだろう、俺は溜息をついたぐらいだから。 いるってことた。そのクソタレがどいっかなんてことはこのさいど「ますいんだ、俺は行けんよ」もそもそとロの中で言った。 「分るたろ、やばいんたよ。さっきへルツオーグが俺を呼びつけや うてもしい、ストーカーだったら、つけまわされているってことが 分ってたら、正気なら絶対に大砲をぶつ。はなされたってゾーンに近がったんだ」 づくような間抜けたことをするやつはいない。いまはいちばん暗い それを聴くとかれはいっぺんにしおれてしまった。またあの惨め 隅でそっとしてるべきときだ。ゾーンがなんだって言うんた ? やったらしいしょ・ほくれた姿になってしまった。目まで、また病気に つらに言わせりやこの俺が通行許可証なしであそこへ行った月があかかったプードルみたいになっちまったのだ。さも気忙しそうに息 るとほのめかしてるんたそ。なんでやつらが尊敬すべきこの実験助をつくと、吸いさしのタ・ハコから新しいタバコに火を移し、それで 8 7

9. SFマガジン 1978年1月号

いたら、研究所の『報告書』をもらってくれ、それには、その《空要するに俺は今、かれとこの保管室にいる。そしてかれがどんな 罐》のことを書いた論文が載ってるやったったらどの号にでも写真ざまになってるか、どんなに目が落ちく・ほんじまっているか眺めて 7 いるんだ。なぜだか知らんが、かれが哀れに見える。で、俺は腹を があるから : だいたいキリールのやつがその《空罐》で苦労するようになって決めた。もっとも俺が自分でその気になったと言うより、他人に舌 、つこをつかまれ、無理やり喋らされたみたいな具合だったのだが。 もう一年ぐらいたつ。最初から俺はかれのところにいるが、しナ : ・」と俺。 いかれがそんなものから何を引きだそうとしているのか今まで理解「なあ、キリール : だがかれはまるで今にも《空罐》の中へはいずりこみかねん格好 しようとしてみたこともないし、正直なところ、ことさら分ろうと をして、そいつを持っているところだ。 努力もしていない。そんなことはかれが自分で理解して、納得がい いいことで、こっちはそのときになれば、かれから「おい、キリール。中身が詰まってる《空罐》をあんたにくれてや くまで調べりや 話を聴けばすむことだ。だが、その俺にも分っていることがひとつるって言われたらどうする、え ? 」 だけある、どんな手を使ってもなんとかふたつみつ《空罐》をこっ 「中身が詰まってる《空罐》 ? 」と訊き返し、俺が暗号かなんかで そり手に入れて、そいつをばらしたり、酸で腐食させたり、プレス話しかけたみたいに面食らっている。 で押し潰してみたり、炉の中で熔解してみる必要があるということ「ああそうだ。あんたのあの液体磁気罠、なんて言ったけな : : : 対 だ。それでかれがなにもかも解明できりや、名誉と賞讃はかれのも象物体 77B みたいなやつだ。ただ中が詰まってると言ったって青 いものが入ってるだけの話だが」 んになるし、全世界の科学界が身をふるわせて満足の意を表するに きまっている。しかし俺の知る限りじゃ、そいつはまたまたうんと俺が言わんとしていることがじんわりとかれに伝わっていくのが 先の話だ。今のところかれはまだなにも手に入れていない、ただす感じでわかる。 つかりへばって、生彩がなくなり無口になっている。どちらかとい 目をあげて俺を見、まばたいた。その犬が泣いてるみたいなしょ うと病気にかかった犬みたいな目をして、しょ・ほくれている。これぼくれたかれの目の奥に〈知性の閃き〉が現われた。 がかれでなくて他のやつだったら、きっと俺は夜の酒場や、それ以「ちょっと待ってくれ」とかれ。「中身が詰まっているんだと ? 外にだって気晴らしのできる場所はあるんだから、そいつをひつば これと同じゃっなんだな、ただし中身が詰まっている ? 」 りまわしていたかもしれん。そうすりや一週間でしやきっと生き返「まあ、そういうこと」と俺。 「どこにあるんだ ? 」 って新品同様になるのになあ : : : 耳をびんと立てて、尻尾が。ヒスト ルみたいにつったつのに・ : キリールにだけはその薬が効かんの俺のキリールはしやきっとして、耳をびんと立て、尻尾をおった だ、言ってみるだけの価値もない、あの男はそういう種類の野郎じてた。 ゃないんた。 「一息いれにいこうや」

10. SFマガジン 1978年1月号

・ソリスを捜し求めて火星を放浪す るカーメー というオリジナル・ス トーリイである。しかし、デジャー ・ンリスが今一歩というところ。 ン 他に特筆すべきは『二〇〇一年宇 ザ ・ウォーズ』の ノノ一宙の旅』と『スター の二点。もちろんどちらもあまりにも ~ グ ( 名のみ ) 有名な映画からのコミッ ニク化。そしてなぜか二点ともマーヴ 0 マ エル・コミックスの作品。どうもマ がエデ ・ 7 《スーヴ = ルはあのスタン・リー イターの座を降りてから、アイディ アに行き詰まったのか、他人様のフ ンドシで相撲をとるばかり。 『スター ・ウォ 1 ズ』は映画のスト ーリイを忠実に漫画化している ( らし ・セマによって描き継がれている。ター ソンと違って、こちらはすぐに原作を使い ) 。画家はたいしたことないし、まあ それたけの作品。ただ手に入れにくいこ > つくし、以後はオリジナル・ストーリ とは天下一品たろう、今のところは。 「で物語を続けている。コミックという 約のせいか原作独特の悽惨な感じは失『二〇〇一年 : : : 』は最初、映画そのま まを特別版でコミック化したもの。とこ 芸物語も〈剣と魔法プラス超科学〉と ズにな ろが評判がよくてそのままシリー いった雰囲気になっている。 った。と言ってももちろん、その先のス 兄弟分のターザンと一緒に・ O から トーリイがあるわけではなく、後はジャ ーヴェルに移った大物は、同し・ハロ 1 ー ック・カービイが・目由にストーリイを作 ( 大先生の火星の大元帥ジョン・カータ ーである。・ O 時代は画家が良くなか っていって、現在では一種のロポット・ 、 : 。、ツとしなかったが、マ ーマンものになっている。 たせしカ / ソエルでは鬼才ジル・ケインを登用して この社では ~ 間にも『フランケンシュタ いる。物語は悪人に誘拐されたデジャー インの怪物』や『宇宙戦争』もコミック タ 「 2001 年宇宙の旅」 「スター・ウォーズ」 「ウォーロード」 田 4