内で説明がっかないのは、このふたつの星だけである。 な放射線をキャッチ。その放射線は次第に強まり、午後三時ご ろ最大値に達し、以後、減少中。その放射線は太陽系外からの ものである。 二〇七五年二月 / イオニア川号は我 4 Z およびハワイの科学者グル 1 。フは、。、 ヴンソールは考え ドッキング段階にはいると、チャーリイ・リ 1 我の知らないふたつの星によるシンクロトロン放射の円盤の中 た・ーー今なら、荷物を見たたけで、どれが科学者だか簡単にわかる を通過したのだ、と発表した。 な。科学者は神経質な人種なのだ。 ふたつの星は″黒色矮星″である。 このふたつの星々は互いのまわりを四十秒に一回まわってい 表面的には、非常に平穏のようたったーーースペース・シャトルが 離陸したときにも、骨が痛み、皮膚がつつばるような加速はなかっ る。この二者は三十五万年に一回、太陽のまわりをまわる。 ふたつのうちのひとつは、反物質である。正の物質に接触すたのだ。ギラギラ光る透明な円柱形の»-Äー 5 は、ゆっくりと大きく ると、爆発をおこす。ハワイの科学者たちの見たものは、見なっていき、やがてぐるりと彼らの方に向きをかえた。 えない ( 赤外線 ) 光の薄暗い円で、二十秒ごとに明減をくり四千人を維持していくことの可能な宇宙植民衛星は、とにかくす かえしている。この光はふたつの星のガス体の接触によるもごい慣性をもっているーーそれが問題だった。かなりの速度で、く ・ほみにぶつかると、それだけでアコーディオンのようにしわくちゃ のである ( 左下の写真 ) 。 この星々は大きな磁カ場をもっている。放射線は、星々からになってしまう。宇宙船は反対方向の力には強くつくられているの とびだし、その磁カ場を通りぬけようとする物質から発せら れる。 ャーリイはファースト・クラスの金を払ってはいなかったが、 職業が職業なので大目にみてもら このふたつの星は、地球日太陽間の五千倍の距離のところに観測ドームに入れてもらえた ある。太陽系のそれ以外の部分と比較すると、このふたつのえたのだ。そこには、あとふたりがいるたけだった。ヴェルクロ生 星は、おかしな位置にある ( 右下の写真 ) 。 地の絨毯の上に立ち、片手で手すりをつかみ、もう一方の手で相手 5 この星々に危険はない、とは発表した。遠く離れすぎてにしがみついている。 いるし、太陽系内の何者も、その放射線をくぐりぬけることは若い男女だった。たぶん新しい移住者なのだろう。男は興奮した 様子でしゃべっていた。女はその声に耳もかさず、まっすぐ前方を 6 このふたつの星を発見した女性は、これらをスキ、ラとカリ・フ見つめていた。手すりをつかんだその拳はまっ白で、歯をしつかり とくいしばっている。チャーリイは同情の言葉をかけてやりたいと デスと名づけたいと言っている。 7 この星々の起源は不明である、と科学者たちは言った。太陽系思ったが、息を凝らしているときにしゃべるのはむすかしいもの に 4
いきなり ラムプック掲載の「小説作法ーーーその構成と が、「遠近法」 ( 『夢の棲む街』に収録 ) が 書かれるいきさつや、そのころ書いていたプロへの道ーーー」に関する注釈、解説。 と書きだすのは、平几にして陳腐、いちば「ファンタジア領」「魔術師」 ( これは未発午後の第一は、眉村卓氏による、″思いあ 表 ) について語る。 がりの夏より″。短篇集『思いあがりの夏』 ん下手くそな書きだしだそうである。 より、タイトル・ストーリイと「名残りの だが、しかし、それにしても、夏響・・・、 雪」の成立について、黒板を使って熱演され の京都は、暑い る ( その途中、最後のゲスト、小松左京氏が 今年は七月二十八日から京都にの 氏おみえになる ) 。 りこんでいたのだが、連日、三十度 をこえる暑さである。やや涼しいと の続いて、星新一氏が、″ショート・ショー 見トの書き方″と題して、小話をいくつも紹介 感じたのは、比叡山にの・ほった時だ しつつ、ストーリイの重要性を語られた。 けである。 ポ 尾最後に小松左京氏が、古今東西の文学概念 第五回の星群祭のひらかれた七月 の中におけるエンターティンメント、特に レ三十日はいやになるほど日射しの強 野の位置づけについて熱弁をふるわれた。 い日で、しかも、会場の京都教育文 柴 小休止ののち、ディスカッション。 化センターには冷房の設備がないと きている。加えて、百余名の参加者 前もって配布されている、星群の会の方々 祭 の作品集『呼び声』をもとにして、眉村氏の 群の熱気で会場はムンムンしている。 星司会でディスカッションがおこなわれる。 九時四十分に会場に着くと、すで 星 に柴野拓美氏がいらしている。喫茶 収録各作品への批評にはじまり、類型の問 眉題、小説を書くうえでの体験の問題など、内 室にて、しばし歓談。十時までには 容は高度、かっ多岐にわたった。これは実に 回星新一氏、眉村卓氏もおみえにな 左すばらしい聞きものであったと信ずる。いず り、定刻どおり、十時、児島冬樹実 行委員長の開会宣言。 景れ活字になるであろう。 風ディスカッションは四時五十分、これから 第つづいて、後藤俊雄副実行委員長 の司会で講演。 翻小説を書こうという人々へのアドヴァイスを しめくくりとして、終了した。 まず、僕が、海外について、 五時より二次会で、ワインを飲みながら談 ル・グイン「九つのいのち」、シル ーグ「太陽踊り」を例にひ 論風発。をまじめに考えるユニークな大 会、″星群祭″は、今年も立派な成果をのこ き、作者のエッセイを紹介、さらに、異星人午前の講演の最後は、柴野拓美氏で、ファ の名前のつけ方などに言及したラリイ・ニー ンと。フロの作品のちがいについて、氏の編集して無事、終わった。 ( 風見潤 ) ヴンのエッセイを紹介した。持ち時間びったする〈宇宙塵〉に即して語られた。 り、三十分しゃべり、続いて、山尾悠子氏午前の部の最後は、後藤氏による、プログ 7
ーリイと (-) ー 5 が苦境をぬけだす件については、うまくいっ た。事故のほうは、一九六〇年以来前例のない宇宙旅行への興味と 、うレベルでおさまった。 英雄がうまれた。厳重にシールドされた作業艇にのった志願者 あき、コントロール・センサーが一組と姿勢制御ジェット : カ壊が、ケー・フルをひつばって宇宙にでていき、被害状況をはっきりと された。 見きわめた。作業艇は損傷部の写真を送ってよこし、そしてケープ 4 いまのところ、状況は安定しています。いまも一で少しずルがふつんと切れた。 っ加速中。でも、方向変史はできないし、推進装置を切ること もできないの。 ダイダロス号二〇八一年 二重星をまわる軌道にあるときは、ロシェの限界内にいたか 地球一二〇一年 ら、輪をつくる岩片でトラブルは起こらなかったのたけれど。 輪に自然にできた裂け目を利用したの。進入したのと同じよう 以下のニュースは〈ファックス & 。ヒックス〉の記事から抹消され にして戻ろうとしたのだけれど、今度はスビードもでていなく た。記事冫 こ使われる″平明な英語に翻訳することが困難だったか て、複雑な動きをしたのね。最外縁の輪の岩片にぶつかってしらである。 まったわけ。 宇宙船白鳥座礙番星近傍を通過ー 5 通信員 ) 推進装置をとめられれば、修理の可能性もでてくるのでしょ 本日、宇宙船ダイダロス号より通信文が届いた。ダイダロス うけど、作業艇は一で加速中の船にはついていけないわ。そ れに、放射線で作業員はアッという間にカリカリになっちゃう 号は白鳥座礙番星の四百天文単位内のところを通過したそうで でしようしね。 ある。これは太陽Ⅱ冥王星間の十倍の距離にあたる。 実際には、ダイダロス号は十一年ばかり昔に礙番星近傍を通 わたしたちは、いまいろいろとやっています。いいアイデア 過しているのであるが、通信が地球に届くまでに十一年かかっ があったら、教えてください。これで、あなたがたも無罪放免 たというわけである。 ってことになるんじゃないかしら , ーー船は地球に戻りつつあっ たが、事故をおこしたのたって。通常の通信回線で連絡を送る ダイダロス号が現在どこにいるかは、明確でない。いまだに ことにします。この通信はすぐに消減します。 暴走推進装置の修理がなされていないとすると、船は礙番星よ り十一光年はなれたところにいることになる ( 礙番星近傍を通 ーセント以上をだしていた ) 。 過時、ダイダロス号は光速の四パ 宇宙船乗員の立場で考えると、事情はさらに複雑になる。相 対性原理により、光速に近づけば近づくほど、時間の進み方は 遅くなるのである。したがって、彼らにとっての四年は、我々 から見れば十一年になる。
さ。君たちは〈技術者協会〉にならってーー」 「説明させてくれ。我々はかって、この星ーーー白鳥座礙番星にメッ 「技術者なんか知ったことか、ーー」 セージを送ったことがあった。この星は実は二重星だ。暗い伴星が 「彼らは〈宣伝協会〉を使った」上院議員は肩をすくめた。「ちゃある」 んと予算をぶんどったよ、彼らは」 「我々と同じたな」 「まあね。とにかく、彼らは応答してこなかった。明らかに、メッ 「橋や発電所、スペース・シャトルを売るのはやさしいさ。純粋な 科学を売るのはむずかしい」 セージに気づかなかったのだ。返事もよこさなかった」 「まさか、そんなことを言いに 「だが、我々はーー」 「ああ、もちろん違う。倍の予算を要求して、半分を宣伝屋に払う「我々がいまキャッチしているのは、地球から十一光年はなれたと かもしれん、来年は。だが、わたしはその話をしに、ここに来たんころでキャッチしうるものと同じなのさ。十一年前の放送がごっち じゃないんだ」 やになって入ってくるんだ。非常にかすかだが、なんらかの自然現 「あの電波の件かね ? 」 象によって発生したものじゃない」 「そうた。報告は読んでくれたか ? 」 「では、我々はすでにメッセージを送り返しているわけた。彼らが コナーズはグラスをのそきこんで、 送ってきたのと同じものを」 「チャーリイ、時間がなくて , ーー」 「そうだ。だがーーー」 「しかし、誰かが眼をとおしたな」 「で、わたしに何をしろと ? 「そりや、大丈夫た。スタッフに天文学にあかるい奴がいるんだ「彼らにささやき返すんじゃ、だめなんだ。叫び返したいんだよー よ。そいつが要約を聞かせてくれた。なかなか興味深い」 リーヴンソールはワインを口にして、「そ 彼らの注意をひきたい」 「十一光年はなれたところに知的文明が存在するーーそれが″なかのためには、莫大な量の電気がいる」 なか興味深い″かね ? 」 「おい、チャ ーリイ、電気は金だそ。どれくらいかかる予定た ? 」 「いや、すばらしい進歩だよ」ぎごちない沈黙。「で、この件につ 「めいつばいだ。デス・ヴァレイを十二時間、閉鎖したいー いて、君はなにをするつもりなんだい ? 」 上院議員のロがポカンとあけられた。 「ふたつある。ひとつは、彼らの言っていることを理解しようとす「チャーリイ、君は働きすぎだ。また大停電をやらかそうっていう ることた。こいつはむすかしい。ふたつめは、こっちからもメッセ のか。それも、故意に」 ージを送り出すことだ。これはやさしい。これはあなたの力もかし「停電にはならんたろう。デス・ヴァレイは緊急用充電で十四時間 てもらえるしな」 は保つはすだ」 上院議員はうなすいた。いささか用心深い様子であった。 「最大出力の半分ならな」上院議員は酒を飲みほすと、頭をふりふ
ーリイは思った。む配するのは彼らじゃないんだ。 彼とア・フは、ー 5 をジネズミの怒りから守る計画ーーーかなりあ それに、とチャ タイダロス号の乗員は、途方もない心 やがてわかったことたが、 ぶなっかしいものだがーーをたてていた。この人工衛星上の誰ひと り、船が礙番星に向かったことを知らなかった。スキュラⅡカリ。フ配事にぶつかることになった。 デスに向かう途中、乗員たちはある決定をくだしたのだーー二重星 をめぐる軌道にあるうち、彼らは船の推進装置を物質日反物質の消 二〇七七年六月 減エネルギーで動くように改造するというのである。ー 5 はその 暴動めいた計画を、ダイダロス号が二重星を離れたときに送りたし ロシア人はメーデーの祝典を挙行したーーー・チャーリイはそれをテ た通信で知った。通信が地球に届くまでに、ダイダロスは一カ月レビで見て、彼らがレオニード・—・・フレジネフ号に言及するたび ーリイをはじ 分、礙番星に向かって進んでいた。 にたしろいだ。やがて、すべては正常に戻った。チャ それは見えすいたやり方だったが、ダイダロスの本当の使命の記めとする三千人は、″驚嘆すべき″メッセージが送られてくるのを 録が *-a ー 5 に残らないよう、彼らは充分に注意した。だが、三千人イライラと待っていた。それは予想どおり、六月の初めにやって来 た。しかし、内容は予想していたものと違っていた。 の人々は真相を知っていた。有能なエンジニアや物理学者なら、う すうす感づいているようなことた。 アビゲイル・べミスよりチャールズ・リーヴンソールへ。 ア・フもそれを感じていた。バレたところで、ジネズミたちは二十 三年間も怒り続けることはできない たとえ彼らが反物質などに チャーリイ、やっかいなことになりました。船尾になにかが 感銘をうけないとしても、だ。 ぶつかって、被害がでたのです。第一推進リフレクターに穴が ←思考の憶え描き・・・念 賛吉【鍋専十四色使用変形版価 2800 円 糸イラスト界のパイオニアが繊細で秀麗なイラストレイションと奔放 なイマジネイショ・ンを駆使して織りなす四十二の字宙改造計画 ! ー 45
ヘラクレスの冒険 アガサ・クリスティー ボアロのクリスマス アガサ・クリスティー 第三の女 アガサ・クリスティー 恐怖の研究 工ラリイ・クイーン 帝王死す 工ラリイ・クイーン 悪魔のいる天国 星新一 奇妙な妻 眉村卓 宇宙救助隊幻 80 年 光瀬龍 わが赴くは蒼き大地 田中光ニ 影の影 慣村卓 征東都督府 光瀬龍 星からの帰還 スタニスワフ・レム 闇の左手 アーシュラ・ K ・ル・グイン 中継ステーション クリフォード・ D ・シマック 薔薇の荘園 トマス・バーネット・スワン キャプテン・フューチャー いだ で怒 重版情報 本し の何 。当 ハヤカワ・ミステリ文庫 感た きやたわ ハヤカワ文庫 いさ ち家 SF/JA/NV/NF 当内 の敢 たを っそ の考 す力 にけ はな 人奥 んだ に制 は女 話性 めあ 説や か制 、明 。ま いは つら 気か 分ナ すと たみ持感 る然 わな には いら 彼か いれ え戒 る心、 。は だけ ど何 すれ ばめ レ知 る はな は責 毒れ い制 剤みあわ 化カ のも い分 別い 手あ 物る たみ でと な地 、と 有だ客な彼彼 Y460 Y400 Y380 Y280 Y380 Y280 Y340 Y320 Y340 Y280 Y380 Y420 Y380 Y340 Y340 な ん も な の よ コ は を 重 ね る そ の 手 は 温 か け す ん だ 本 意 の ワ イ の 名 と し て い る り に い近を い あ . る 観 不ぼ明 く ら も何と が言を 思わさ いなが な と カ : る と き ぼ ら に 何 し と リ 0 よ き 今 で は 本 気 で 警 戒 し て の 自 心 を 説お し 求 自 心、 と う よ り 用 カ ; る か し、 う う るす当 0 く ら いよ 。彼な は 思 お カ : あた彼た話 シ ら族勇 と ほ ん の ん た だ の し、 い ら い の ま に か ん 失 せ て る っ い わ め し て い の 力、 ク ス リ ど な の し く 聞警 - ー 1 力、 た く な 、ん消 じ や な と ち だ っ の 、ね あ な 0 よ だ わ わ スノ お に か そ う な ん で す も の と ば ら し し、 見 つ る は る く な で し う 用 意 て あ る のあす ら い の よ や お 子 さ ん た ち れ ら お ん ん り く な ん で も よ解 女 解憐任 の も っ 目 、着止 く で し よ う た ち の理る 彼すは る カ : る に は 声 出 の め ん 彼 は た き て を き と 剤 ア コ したが い に はだた く ら な い う き でさ球脱使 ら う ん で 。すこ ルふ恥 ル気も ポ ノ ラ し た ち を 本 に た 見 て る の た し ち 女 だ か く ど 。力、 ー 1 り た し、 暗黒星大接近 Y380 謎の宇宙船強奪団 Y300 時のロストワールド Y320 輝く星々のかなたへ Y320 宇宙囚人船の反乱 Y340 工ドモンド・ハミルトン 東京神田多町 2 ー 2 早川書房 振替東京 6 ー 47799 207
「ふたつの星は一種の赤外線のストロボ・ショットでとったので 二〇七六年九月 す。この連星をまわる軌道から一万ないし二万枚の写真をとりまし た。それを分類しまして、強化したのです」 ダイダロス号が旅程の半分を消化し、反転して減速にうつったと 若者はそう指摘したが、あまり助けにはならなかった。チャ 1 丿 き、ー 5 では静かな祝典がもよおされた。乗員からの。フログレスイは別の角度からキュー・フを見つめていたからだ。 ・レポートによれば、飛行は″平穏無事″だった。そのころ、ロケ 「ガス体がふれあうところの炎の薄層は、紫外線でとりました。こ ットは光速の十分の二に達していた。通信を連ぶレーザー・ビームまかい構造がよくわかります。 は赤色偏移をおこし、青い光からオレンジ色に変わった。方向転換輪は容易でした。可視光線で長時間露光していればいいんですか 《わ一 0 ・、ツ に成功したという報告は、ダイダロス号からー 5 まで二週間かか クの星空もそうです」 って到着した。 ドアに軽いノックがして、補佐官が頭をつきだした。 わずかにコースを変更したと報告が入った。位相角が減少中にス 「ちょっとよろしいですか、博士 ? 」 キュラ日カリプデスの偏光を分析したところ、このふたつの星に 「いいとも」 は、土星のように、岩屑による平べったい輪があることが判明し「ロシアのメーデー委員会の人間が電話にでています。船の名をプ た。船は衝突を避けるため、低速に移った。 レジネフに変えたかどうか知りたがっていますが」 「ああ、。フレジネフじゃなく、レオン・トロッキー号とすることに 決めたと伝えろ」 二〇七七年一月 補佐官はまじめにうなずいて、 ダイダロス号は、三週間にわたり、スキュラ日カリプデス系の鮮「わかりました」 明な写真を送ってきた。 と、ドアを閉めようとした。 ャーリイはデスクに立体写真のキュー・フを置き、驚嘆しつつ、 「待て ! 」チャーリイは眼をこすった。「相手に伝えろ、アノ : 指でチュープをぐるっと回してみた。 船は連星の軌道上にあるため、いまだその記念すべき名をつけては 「信じられんな。どうやって作ったんだい ? 」 いない。帰途につくときにプレジネフと名付けられるであろう、 と 「もちろん、モンタージュですよ」 ジョニイはあとに残った大人のなかではいちばん若いひとりたっ 「本当ですか ? 」ジョニイが説ねた。 た。心臓雑音があり、膝関節硬直症で、天体物理学者は大勢いすぎ「知らん。そんなこと、気にする奴もおるまい。あと二カ月ほど たのである。 で、あのロケットに人名をつけたいとは思わなくなるたろう」
兆のひびきに充ちていたからであるーーチャクラは自分の顔から血立ち去っていった。 の気がひいていくのをお・ほえていた。 あとには、ただ呆然と立ちつくしているチャクラだけが残され 「心配するな」 雲龍がやさしく、なためるような声で言った。 しい加減すれつからしになっているチ 雲龍は、あちこち放浪し、 て、なにもおまえたちを殺そうというんじゃない」 ヤクラが、生まれて初めておそろしいと感じた人間だった。 「じ、じゃあ、どうして : : : 」 チャクラは、自然に悲鳴をあげるような声になっていた。金魚み その夜、雲龍の姿は城壁のうえにあった。 ナいに、ロを。ハクパクと開閉させている。 「どうして、おまえたちを俺の邸に招いたのかを知りたいのか , 城壁のうえは細い回廊のようになっていて、常時、警備士が巡回 をつづけている。 いったんことが起これば、城壁のすべての門はと ひ チャクラはガクガクとうなずいた。 ざされ、睥と呼ばれる石垣に身をひそめた兵士たちが、外敵に向か 「どうしてかな : : : 」 って矢を射かけるわけである。 しかし、今、巡回する警備士たちの姿は見えない。ただ、松明の 雲龍はうってかわってふてぶてしい表情になっていた。「おそら く、おまえたちが俺の野心のどんなさまたげになるのか、この眼で明かりがこうこうとともされているだけだった。 雲龍は、角楼のほぼ真下あたりに立ち、一心に夜空を見つめてい たしかめたかったのかもしれんな : : : それとも、この俺が俺の星よ りも強いことを、はっきりとみさだめたかったのか」 この時代の人間はなべて運命論者た。この世のしくみは、すべて遠い夜空に、奇妙な光のアラベスクがあやなされていた。青い閃 星にみちびかれ、あらかじめさだめられている、と、かたくなに信光がいなずまみたいに走り、空が熱せられたように赤く染めあげら じている人間が多い。だからこそ、占い師、巫女、呪術師などが存れるのだ。光は微妙に色相をかえ、たがいにつらなり、みやくう 在する余地があるともいえた。 ち、さながら万華鏡のようにあざやかに渦巻いているのだった。 ところが、雲龍はおのれを律している星にみすから挑戦すると宣美しいが、しかし妙に不吉なものを感じさせる光の迸流だった。 告したのた。よほど強靱な精神力を持っていなければ、とうていでもちろん、光があまりに強烈にすぎて、星はほとんど見ることがで きない。 きることではなかった。 しようじよう チャクラには、雲龍という男が、猩猩よりも、畢方よりも、聆雲龍は、なにかしら沈痛な面持ちになっていた。傲慢不遜なこの 男が、悲しみに似た色をその顔にただよわせているのである。 幹よりも数倍もおそろしい存在に感じられた。 雲龍はふいに笑い声をあげると、マントをひるがえして、足早に「雲龍 ひつほう 「だからといっ ー 08
緊急連 を超え ~ サウンド / ウ左ル 宙宙 さ吸 「ノくイフォー わ収 SF DISCORÄMA 鳴るさ ス タ オ ヌ 工 作 〈収録内容》プロローグ / 宇宙戦 大 小松左京が自ら、演出・構成・特別 艦カシオペア / コスミック・ファ 出演する全面的参画によって、一年 初 B イト / スターパードの最後 / ジョ 有余の制作・準備期間をかけた感動 ーの復活 / 工ビローグ ( 宇宙に捧ぐ ) 的で、画期的な S F 大作。 S F 空間 レ の真の創造をめざし、音楽、 S E 、 ・作・構成・演出 = 小松左京 ・作曲ー - 横田年昭 出演者がそれぞれに最高の成果を上 限タ ーデている。 レコード番号 : KVX - 1042 Y2 , 5 圓 カセット番号 : VCK - 1328 *2 , 300 ÄMAZIN G 3 ーーーーー AMAZI NG 3 ーー - ー - ・ 3 踊今ス現 今手力な 出全一日 ヨづ 亭落をじ 星新一 / 星寄席 て界家で 化 朝のの新 Side A = パプリング創世紀 ■ねちらた作戦・四で割って る筒井格 の実世一 シる 競カ界 ? Side B = 朗読・眠る方法 ■戸棚の男 演派にヨ ヨ 隆のれ ・作・構成 = 筒井康隆・作曲 , = 山下洋輔 ( A ) ・作・構成ー = 星新一 レコード番号 : KVX - 田 43 Y2.500 ・ロ演 = 屋小三治 / 古今亭志ん朝 屋 カセット番号 : VCK ヨ 3 四 Y2.300 レコード番号 : KVX - 田 44 Y2.500 レ カセット番号 : VCK - ロ 30 Y2 ′ 300 の で化の お問合せは・・・東京都渋谷区神宮前 4 - 26- 慴 ( 原宿ヒアザビル ) ビクター音楽産業株谷 03 ( 405 ) 引引 ( 大代 ) まで / ポスター・プレゼント 筒井康隆 / 文明 に Vi ( に 0 「 ビつタ - しコード・音楽テ - プ 幻 7
かくて、水素爆弾はヘルシンキに集められ、宇宙気違いども は、本来の仕事に戻った。毎年、彼らは水素爆弾の使用を嘆願 一一〇四〇年六月 したが、毎年、″人民の意志″はそれを拒否した。 何百ドルという無駄遣いの宇宙船は、いまも宇宙に浮かん 人旧社会小史〉 ( フリーマン出版、ニ 0 四 0 年 ) より でいる。市民階級の愚行の記念碑として、それは。ヒラミッドよ : それを無駄と思うなら、ダイダロス計画に注目するとい り程度の悪いものである。 これこそ、ー 5 以降最初の大宇宙船であった。ー 5 はい まも立派に就航しているが、それは実用に適しているからであ 一一〇七五年一一月 る。ギリシャ神話の空を飛ぶ神の名をとったダイダロス号は、 どぶに金を捨てるというまぎれもない一例である。 「じゃあ、スキュラ探査は、燃料を手に入れるための策略ーーー」 二〇一六年、科学者たちは、″市民〃の了解をとりつけ、よ「あら、そういうわけでもないわ」彼女は青いカ・ハーのついたフォ その星への旅行の資金援助を得た。その星間旅行は、百年以ルダーを彼の方にすべらせて、「わたしたちはまだスキュラを調べ 上にわたり、親から子へ、子から孫へと引き継がれていく旅でているのよ。縮潰した反物質を数メガトンすくいとり、カリ・フデス あった 科学者たちは子供をうみ、 ( 子供たちが望もうが望から縮潰した正物質を同量すくいとるの。 むまいが ) 子供たちを科学者として訓練するのである。 船の中で何世代もがすごすっていう方法はとらないわ。水素燃料 でスキュラに着けるでしよう。向こうに着いてしまえば、本当の燃 燃料には昔の水素爆弾をことごとく使うことになっていたー ー地球上のわれわれには、いっか、燃料のまったくいらない日料を保存するための磁カ瓶に動力を与えることができるわ」 が来るというかのように、である。もしー 5 がわれわれを嫌い 「物体が完全に無に帰するんだな」 になり、電力ビームを切断したら、いったいどうなるのたろう ? 「そうよ。小数点以下九位までイコール 0 の二乗でふっとんじ ダイダロス号は全長一キロの宇宙船になるはずだった。そのやうわ。白鳥座礙番星に行くのに百年以上もかかる、なんていうの 大部分は月の材料を使って、宇宙で作られたが、特に高価な部は昔の話。九年よ、行って帰ってくるのに」 分は地球からうち上けねばならなかった。 「ジネズミどもは気に入るまい。ダイダロス号には悪い印象をもっ 宇宙船がほとんどできあがったとき、″分裂″と″人民革命″ているからーーー」 がおこった。人民は、科学者たちに水素爆弾を与えておくわけ「知ったことですか。わたしたちは、やると言ったことは必ずやる がなかった。頭上にそのようなものがあるのは、かなわない、 のよ。水素爆弾を使い、スキュラに行き、反物質を手に入れ、戻っ というわけであった。 てくる。そして、長い旅に出発するのよ」