トライト クミラーこへツ・ ドライ・ハーがけっして無茶っとばしをしないことを知っていた。警なことを繰返しているうちに、吉岡は・ハッ 察官としてス。ヒード違反を奨励する訳ではなかったが、一〇キロやの点減を認めた。まだすっと後ろを走っている自動車のものであっ 3 二〇キロの違反をとやかく言うつもりもなかった。それに、日本のたが、昔の勘を取戻しかけていた吉岡の鋭い目は、その光の瞬きを ドライ・ハーたちも大人になっており、危険な走り方をするのは、ご見逃さなかった。 く一部の者に限られていた。僅かな違反を咎めだてするよりは、本「気の毒に : : : 」 当に危険な走り方をするドライ・ ( ーを取締る方が、ずっと重要なこ彼は思った。 , 彼のずっと後ろでライトを点滅させたドライ・ハー とである、と彼は信じていた。 は、自分の前にパトカーが走っていることに気がっかないでいる。 一群の自動車が走り去ってしまうと、高速道路上の流れはまばらそして何百メートルかに近付いてパトカーの存在を認めると、自動 になった。吉岡はギャをローにいれて、クラッチをつないだ。パ 車の列のどこかに入りこんで、時速一〇〇キロのス。ヒードでゆっく カーは低く唸るとパスレーンをダッシュして、本線を走りだした。 りと走り続けることになるのだ。心のうちでパトカーの存在を呪い 鋭い加速でたちまち時速一〇〇キロに達すると、吉岡はギャをながら。 トカーはエン 第四速から第五速に入れて、アクセルをゆるめた。パ 吉岡は肩越しに後ろを指さした。その時には、梅沢も補助。ハック ジンの回転をおとして、静かに巡行した。 ミラーでライトの点減に気がついていた。 自動車の数はかなり少ない。それでもパトカ 1 が時速一〇〇キロ 吉岡はフラッシャーをだして追越車線に出ると、トラックを抜き で走っていると、十分とたたないうちに、その後ろに乗用車の列が にかかった。追越車線に出るタイミングが、いつもより早目であっ できてしまう。その多くはスポーツ指向の濃いクーべやハ たが、それは後ろの自動車のドライバ 1 。ハトカーの存在をはっ 。フであるが、そうならないために吉岡は実速度一〇五キロほどにスきりと見せるためであった。そいつがスビード違反をしていること ビードをあげた。それでも高性能の。ハトカーにとっては、軽い散歩は明白であったが、。、 / トカーの姿を見てス。ヒードをおとせば、それ ていどのス。ヒードにすぎない。 でいいのだと吉岡は思っていた。僅かなスビードの超過を咎めだて そのス。ヒードからアクセルを踏みこめば、粘りのある強力なエンするよりは、事故の原因となる要素を取除くことの方が、すっと重 ジンは第五速のままでもたちまちメーターの針を大きく振らせる要であった。捕まえるよりは、ス。ヒードをおとさせることの方が、 し、第四速か第三速にシフトダウンすれば、まさにシート ・ハックに全体としては大きな意味をもつのである。 背中を押しつけられるようなと形容される強力な加速をみせてくれ彼はトラックを抜いてからも、走行車線に戻るのを遅らせて、し る。もっとも、そのような性能が要求されることはめったにない ばらく追越車線を走った。 し、そう頻繁にあってはたまったものではない。 ところが後ろから来たドライノ ・、ーは、そんな吉岡の配慮を知って ス。ヒードの遅いトラックを追越して、再び走行車線に戻る。そんか知らずか、あいかわらすヘッ・ トライトを激しく点減させながら、
どんどん距離を縮めてぎた。 〇年後半にデビ = ーしたこのクルマは、世界最速のロードカーとし て時速三〇二キロのス。ヒードを誇っていた。あのスー すでに、誰の目にもパトカーの存在がわかる距離に迫っていた。 、、ウ 1 ムの時にフ = ラーリと人気を二分したランポルギーニには、 それでもその自動車ーー赤い塗色であることは読みとれた ス。ヒードをゆるめることなく走り続けていた。 ラをベースにしたス、ポーツレーシングカーのや、カウンタ ック»-Ä 5 0 0 といった、フェラーリ以上のスビードをだせるモデ 「赤色回転燈をつけろ」 トカルもあったが、それらはあくまでも試作の域をでない特殊モデルで 吉岡が命じると、梅沢が手を伸ばしてスイッチをいれた。パ ーの屋根の上に突き出た赤ランプが、光を発してくるくると回転をあり、けっしてカタログ・モデルではなかった。 フェラーリ 512 は、日本にも何台か輸入されてはいたが、 はじめた。 〈これでパトカーの存在がいやでも目について、赤い自動車もス。ヒ最近では公道を走ることがほとんどなくなり、ましてや白昼堂々と ードをおとし、走行車線に戻るだろう〉 猛ス。ヒードでパトカーを抜いていくことなど、まったく考えられな 吉岡は思った。その場合は、彼は敢えてその赤い自動車をまえ ようとは思わなかった。 それが現実に自分の。 ( トカーを抜いていった時、吉岡の頭は一時 ところが、赤い自動車はス。ヒードをゆるめるどころか、あっと、 カ身体はその事態に素早く反応していた。 し的に混乱しかかった。 ; 、 う間に。 ( トカーと並び、轟音と排ガスとを浴びせかけて、そのまま追越車線に後続車がないことを見定めると、彼はぐいとアクセルを 走り去ったのである。 踏みこみ、ハンドルを軽く捻って走行車線に移っていた。 その瞬間の吉岡の気持には複雑なものがあった。スビードの差カ 回転をあげた四・五リッターのエンジンが、ジェトロニック燃 一〇〇キロはあったろうか。みごとな走りっぷりに思わずうーんと料噴射装置のおかげで、一瞬のためらいもなく二三〇馬力のパワー 唸りそうになり、同時に警察官としての意識が、彼に赤い自動車のを発揮して、ポルシェ 928 パトカーを力強く加速していった。ギ 追跡を命じていた。そして、身体の反応はそれ以上に素早かった。 ヤは第四速にシフトアップされ、型八気筒 O O エンジンが唸り 手と脚が自然に動いており、ダ・フル・クラッチを踏んでギャを第五をあげた。時速二〇〇キロ。 だが、その僅かな間に、フェラーリ 512BB は遙か遠くに走り 速から第三速にシフトダウンすると同時に、方向指示器のスイッチ 去っていた。吉岡は豆粒のように小さくなった赤いフェラーリを追 をいれていた。サイレンの音があたりに響いた。 「フェラーリ 512 ・ヘルリネッタ・・ホクサーだ って、アクセルをさらに強く踏んでいた。ギャは第五速へ。 ゆるやかなカーゾであったが、時速二〇〇キロで走る赤いフェラ 梅沢がサイレンのスイッチから手を戻しながら、怒鳴るように言 ーリにとっても、それを追うパトカーのポルシェ 9 28 にとって 4 がエンジンを後車軸 フェラーリ 512 。 3 6 5 4 の後続車として一九七も、そのスビードが限界であった。フ = ラーリ リヤアクスル
分かっていない。そこで、再び向きを変えて、・フラックホールに向「これまでの諸データを分析すると、推進システムにも人命にも口 かってほしいんだ」 ポット命にも異常が生じないで脱出できる確率は九九・九パーセン プ 「おいおい 」ヒノはあわてた様子でロをとがらせた。「 ト以上だ。この数字は、われわれ惑星調査員にとっては、絶対確実 ラックホールの近くへは、さっき行ってきたばかりじゃないか。あということを意味する。九十九。ハーセントの可能性があって実行し れ以上近づいたら呑み込まれるたけで、もう戻れないってところまなかったら、調査員の恥さらしになるよ」 で行ったんだ。あれでもずいぶん危険たったんたそ。それを、もう「 : ・ 一度行くだけでなく、シュワルッシルトの障壁にまで近づいたら、 ヒノはしばらくうなっていたが、数字をあげてのシオダの話に えらいことになる。吸い込まれるだけだよ」 は、なっとくせざるをえなかった。とにかく、・フラックホールの近 「いや、近づいて戻るんじゃないんだ」 くの現象をもう少し調べなければ惑星《ホワイトホール》を救出す る手段が決まらないというのたから、決行しなければ敗北あるのみ 「そのまま入ってしまいたいんだよ」 である。 「よし、行ってみよう ! 」 ヒノは絶句してしまった。 ″ヒノシオ号″を・フラックホールに突 ヒノの声はやや上すっていたが、身体は敏捷に動いた。操縦用の ″ヒノシオ号″は方向を変えた。 入させるーーという発想そのものは、さして突飛なものではない。 コンソールに太い腕が舞い、 惑星《ホワイトホール》が出たり入ったりしていてこわれもせす、 『頑張る以外に生きる道はありませんねえ、行ったり来たりであわ その住民も無事でいることが分かっているので、調査のために自分ただしいけど : : : 』 たちも突入してみよう アールはヒノの助手として、推進システムの動作をチェックしな という考えは、ヒノの頭にも浮かんだこ とはある。しかし、そんなことをして、もし推進システムに異常をがら、悲壮なような、あきらめたようなサビサビ声で言った。 ″ヒノシオ号″の推進は、今度はまったく楽だった。 きたし、惑星《ホワイトホール》と同じように、未来永劫ぬけだせ なくなったら大変である。だから、冒険好きのヒノも、そこまでは 後方から多量の星間物質で押されるので、推進システムが働かな 考えていなかったのである。 くとも、相当なス。ヒードが出る。それにさらに『白黒穴帆型』恒星 アールもあわてたようだった。 の力が加わるのだから、ス。ヒードは優に光速の三 間ラム・ジェット 『ポンコツになってしまったら、もう元へは戻りませんよ。そり倍を越えていた。 や、ちょいとやりすぎですよ』 飛翔ス。ヒードが光速を超えればこえるほど、艇内の時間経過は遅 びつくりして、ポンコツになることばかり心配している。 くなる。これはつまり、またたくまに・フラックホールに到達すると 6 シオダは相変わらず、小首をかしげたまま、平然としていた。 いうことである。
「どうしたらいい ? ヒノは元気を無くした声で、シオダの意見を求めた。 8 シオダも困惑の表情でかぶりをふった。シオダの頭脳をもってし 冫。しかなかったのた。 ヒノの思い入れよろしいため息がとぎれるとすぐに、制御卓の脇ても、惑星そのものを抑え込むわけこま、 ータブル・マシン・トランスレーダ 「とにかく、惑星《ホワイトホール》のあとを追うことにしよう。 にあるボマット ( 簡易宇宙語翻訳装置 ) から、歯ぎしりのような音 がひびきはじめた。シオダはすぐにそのポリームを上げた。それそのうちに、事態が変わるかもしれない」 「うむ、他に方法がないな : : : 」 は、″ホワイトホール人〃からの呼びかけだった。 ヒノは″ヒノシオ号″のエンジンを咆哮させた。惑星《ホワイト 〈助けて下さい。宇宙船の宇宙人よ、シュッ、シュッ〉 ホール》の移動ス。ヒードは次第に大きくなっているので、よほど頑 「こりや、張り切らなきや ! 」 張らないと″ヒノシオ号″でも追いっかなくなりそうなのだ。 ヒノは大喜びで、ボマットに向かってどなった。 「もちろん、援助いたしますよ。できることなら何でもいたします「コンチキしようめ ! 」 ヒノはコンソールの前で地団太を踏んで悔しがった。追いかける 〈わたしたちは、この星の地下深くにかくれています。地底怪獣のだけで助けようがないのだから、行動派のヒノが欲求不満になるの おかげで息をしていられますが、太陽はすっかり見えなくなりましも無理はない。 た、ジ = ツ。気温はぐんぐん下がっています。この惑星全体が、重惑星《ホワイトホール》はいやましにス。ヒードを増し、それを追 う″ヒノシオ号″のス。ヒードもあがった。 昔、地 カ場にひかれて、悪魔の星の方に動いてゆきます、シュッ。 そして、ビンチとなった。 球の人が教えてくれたゾラックホールに吸い込まれるに相違ありま せん。そうなったらもうおしまいです、シツ。時間と空間が四次流れる惑星とそれを追う″ヒノシオ号〃は、ホワイトホールの側 からブラックホールの側へと近づいてゆき、そしてついに・フラック 元的にもつれあったり絡みあったりしたら、もう最後です。そうな らないうちに、どうかこの惑星の動きを停めて下さい。お願いしまホールが見える所まで来てしまったのた。 というが、それは嘘であ 俗に、・フラックホールは見えない す。お願いします : : : ヒュッ、シュッ、 る。たしかにプラックホールは光も脱出できない天体だから、そこ 「こりや、難問ですなあ : : : 」 ヒ / は、マットに向かって、申し訳なさそうに、頭をかいてみから出る光を見ることはできない。しかし、その周辺は一種異様な せた。たしかに、難問だった。いくら『白黒穴帆型』の推進システ輝きであふれている。吸い込まれる物質たちが、断末魔の光エネル ムが性能抜群であるといっても、惑星全体の移動をくいとめることギーを放出するからだ。それから、・フラックホールの強大な重力場 5 はパックグラウンドとなる天球の星々の光線をゆがめてしまうの は無理である。 コノソール
いのた。まして、飛翔する空間は太陽系の外側である。 : ? これは実にすばらしいアイディアである ! 空間か 土星クラスの大きさの宇宙船を考えた「て、すこしも大きすぎる 9 ら燃料そのものを得るのたから、空気を取り入れる大気中のラム・ シェットより、はるかに画期的な推進システムである。宇宙塵や水ということはない。 。ヒアス先生が悲観的な計算をしたその翌年、カリフォルニア大の 系分子をはしめとする星間物質は希薄であるが、収集面積を広くし ロス・アラモス研究所のスッサードが、収集面積にこだわらすに計 てやればけっこう集まるのではないか : また、宇宙船のス。ヒードはジ = ット機とは比較にならないほど大算し、『恒星間ラム・ジ = ットは可能だリ』という解答を出した。 宇宙工学の専門雑誌に掲載されたこの論文は、のちに宇宙愛好家 きいから、単位時間に収集される星間物質もそれだけ多量になるの ッサード先生が先駆者の栄誉を担うことにな の間で評判になり、 ではないたろうか : サード先生の方 ヒアス先生にとっては残念なことだが、・ハッ 取り入れロは、金属などを使ったのではそう大きくすることはでった。。 きないが、未来科学の花形、超電導技術を駆使して強力な磁場を作が先見の明があったと言われるのはやむをえない。 ッサード先生の計算では、星間物質の密度がとくべっ多い場 たし、磁場の擘を漏斗状にして、その中に星間物質を捕獲し、圧 合、収集面積ーーーすなわち吸収ロの大きさーーーは一万平方キロメー 黼してやればよいたろう。 トル位で足りるというのである。 頭の良い人はどこにでもいるもので、一九五九年にアメリカのペ ロンドン市大のマーチン博士は、銀河宇宙におけるふつうの星間 ル電話研究所のファンで、創作もする・・ビアスが、この 物質の密度 ( 一立方センチの中に水素が一個 ) の場合、百万トンの アイディアを提唱し、計算した。 ふしぎなことに彼は、電気の学会雑誌に相対性理論の論文を発表宇宙船を一にまで加速するのに、半径二千キロメートルの吸収ロ ″の理論に触れが必要であるとして、その作り方や材質について研究している。 そしてその中で、この″恒星間ラム・ジェット 一万平方キロメートルというとかなり大きいように聞こえるが たのである。 エステイメイシ これでも、地球よりはすっと小さいのである。 ところがビアス先生は、ちょっとしたアンダー こういった、後の人たちの理論をみると、ビアス先生の最初の仮 ョンのために、先駆者の栄光をまえそこなってしまった。 、こーー・罪ぶかいまでにーーーひかえめであったかが分かろ 先生は、星間物質の捕捉面積を、わすか、〇・〇一平方キロメー定が、いカ冫 トル程度と仮定して、『このような推進システムは実現不可能であうというものである。 さて、未来が訪れるのは早い る』と結論してしまったのである。 大方のファンの期待にこたえて、″恒星間ラム・ジェットノ これは、明らかに誤りである。 が銀河を翔ける日がやってきた。 銀河は広い なにしろ、地球を出発する時に燃料を積んでいなくてよいのたか 太陽系の中でだって、〇・〇一平方キロメートルは″無″に等し
指上計算機で、白黒反応の効率を計算し、理論のチェックをして いたシオダも、これに同意した。 「なにしろ、光速の一 ・八倍のス。ヒードが自然に出てしまうんだか スクリーンに同定された″星の流れる領域〃は、前に較べてはる かに拡大され、構造の細部も映し出されるようになってきていた。 ヒノがまた、大声を出した。 通常の星域と、物質やエネルギーの分布は大差ないのたが、たしか シオダは小首をかしげて話した。 いくつかの恒星や惑星が引力の法則に逆らって移動している様 「ホワイトホールと・フラックホールを利用するこのラム・ジェット が光速を突破できる物理的な意味について、疑問を述べたてる人も子が認められた。 そして、その星域との距離が、ぐんぐん縮まってきているが、パ いないではない。数式的には証明できても、物理的に説明できなけ という頭の固い科学者もいるんだ。しかネルの計器からも読みとることがでぎた。 ればなっとくできない ″星の流れる領域″の周囲は通常の空間よりも心なしか明るく、ロ し、・ほくに言わせれば、物理的理由なんて簡単だ。宇宙船が空間を ーレンツ変換の帰結として時おり生することのある星虹が、鮮や 飛ぶのは、エネルギーの働きによるのではなく、慣性の働きであ こよっている。そして、噴射時の宇宙船かなスペクトラムを輝やかせてリング状の伸縮をくりかえしてい り、″運動量保存の法則〃冫 が運動量を得るのは、噴射ガスが符号を反転してそれを引き受けるた。 ことにより保存則を満足させているからだ。ところが、『白黒穴帆そしてこの星虹によって、目標星域の不気味さは一層強調され 型』の場合には、宇宙船が得る運動量の代償を噴射ガスが受け持っているのである。 シオダはさかんにデータをチェックしながら、ヒノに向かってう のではなく、″あの世″が受け持つのた。・フラックホールとホワイ トホールの四次元空間的性質によって、″あの世″と宇宙船の間のなすいてみせた。 が出せる「たしかに、現実にこうやって飛んでいるという事実が、何より優 作用・反作用が生じ、そのおかけで、光速以上のス。ヒード こ″あの世〃の項を新たに追加して考れた証明だと一一一口えるね」 んだ。″運動量保存の法則″冫 「この改良″ヒ / シオ号″は、右の収集口からプラックホールを取 えれば、物理的な意味はきわめて明確になるんだよ : : : 」 「まったく、何で疑問をもつやつらがいるのか、おれにはさつばり り入れ、左の収集口からホワイトホールを取り人れるようになって 分からん。とにかく、こうやってちゃんと飛んでるんだからな ! 」 いる , 、ーー」ヒノは起き上がって、パイロット席に坐りなおしながら ヒノはねそべったまま、正面のスクリーンを指さした。 「ーーー右からのプラックホールと左からのホワイトホール 喋った。 とが、おれたちの背後にある反応炉で反応を起こし、その運動量を ″あの世″に送り込みながら飛翔しているんたと思うと、じつに痛 4 スター
がっき、再び左側の方向指示燈を琥珀色に点減させると、フェラー見失いました。御殿場出口と本線上を固めて下さい」 リはゆっくりと左に寄った。足柄サービスエリアの入口であった。 あのス。ヒードで走るフェラーリ 512 をいったん見失ったら、再 4 3 スビードをおとしたフェラーリは、カー・フした登り坂を美しいリヤび視界にとらえることは不可能であった。それでも吉岡は本線には クオーターのラインを見せながら登っていった。 いってスビードをあげ、自からマイクをとって、本部に連絡した。 吉岡はアクセルを踏み続け、サービスエリア近くになって、強く「こちら本部。御殿場インターは検問準備完了。本線上にも一台が ・フレーキをかけた。変速機の強力なシンクロメッシュを利してのエ待機中」 フォースサ ンジンブレーキが、第四速、第三速と続き、サービスエリアに通す「了解。念のため後続のパトカーに、足柄をチェックさせて下さ るスロープの入口では、第二速になっていた。タイヤがキキーツと 軋んた。吉岡はステアリングを左にきり、梅沢はグリップを強く握「すでに三台が向っている」 「了解」 りしめていた。 吉岡は満足そうに頷いて、マイクを戻した。遊園地の観覧車がポ 制限速度が四〇キロのきついカー・フが終ると、目の前に広々とし ルシェの左側を後方に流れ去った。 / 御殿場インターはもう目と鼻の た駐車場があった。まばらに駐められた乗用車とトラック。ひと目 で駐車場全体が見渡せたが、そこにあのフェラ 1 リの姿は見えなか先であった。 「本部より六四号車へ。本線上に待機中の三八号車が、六四号車の 赤い光を認めたと報告してきた。赤いフェラーリはまだ通過してい 二人は同時に叫んだ。サイレンの音に、人々が驚いてパトカーをない。インター出口の料金所で待機中の三二号車からは、フェラー リがまだ来ないとの報告だ」 見つめた。 「通り抜けたんだ」 「了解」 梅沢がマイクをとって返事をした。ポルシェ 9 2 8 のパトカー六 「悪知恵の働く奴たー 吉岡が再びアクセルを踏み、 。 ( トカーは駐車場を横に見ながら出四号が追越車線を疾走し、御殿場インターへの出口が後ろに流れ去 口に向って進んだ。梅沢は赤いフェラーリを見落さないようにと、 った。その先に御殿場インターから本線への合流車線があり、さら に一〇〇メートルほど先に、白と黒とに塗りわけられたクラウンの ハスやトラックの陰に注意して、駐車場に目を光らせた。 「見あたりません」 パトカーが、赤い回転燈をつけて路肩に駐っていた。吉岡はフラッ 梅沢の言葉に吉岡がさらにアクセルを踏みこみ、 ハトカーは駐車シャーを点減させて左に寄り、・フレーキをかけた。ポルシェ 9 2 8 場を後にして本線へと疾走した。 のパトカーがぐーっとス。ヒードをおとした。 「六四号車より本部へ。足柄サービスエリアで、赤いフェラーリを ポルシェがクラウンのパトカーの後ろに駐まると、梅沢はベルト
の直前に置いた基本的に操縦安定性のよいミドシッ。フのレイアウト なら、ポレシェ 9 2 8 はフロント・ エンジン / リヤ・ドライブのレ ィアウトながら、変速機を後車軸の直前に移したトランスアクスル 方式によって前後輪の重量配分を改善し、さらにカー・フに強いハイ ハ・アクスルを採用していた。そして、吉岡はかって鈴鹿での トカー・ドライノ ・コンテストで最優秀ドライ。ハ 1 に選ばれた こともある、優れた腕前をもっていた。 カー・フが続いている間は、赤いフェラーリと白と黒に塗られたポ ルシ工とは、同し間隔を保っていた。 「いかん。もうすぐカープが終る」 ハトカーのポルシェ 9 2 8 は 梅沢が呟いた。カープの間でこそ、 フェラーリ 512 と同等のス。ヒードで走っていられるが、カー・フが 終って直線路にでれば、時速三〇二キロのフェラーリの最高速度が ものをいう。ポルシェ 9 2 8 の巡行最高速度はたかだか二三〇キロ にすぎないのだ。 「インターに検問を設けるように依頼しろ。本線上にもパトカーを 配置してもらえ」 「わかりました」 梅沢が答えてダッシュポードのフックからマイクを取り上げた。 。東名高速下り車線七三キロ地点で、暴 「六四号車より本部へ : 走中の赤いフェラーリ 512 を追跡中。御殿場より西の各インター 。ハトカーを配置して下さい。追いつくことは不可能で と本線上に、 ・、ーは、ナン・ハー。フレート が付いて す。 : フェラーリの登録ナン いません」 ここまで言って、喋った梅沢も運転していた吉岡も、はっと気が ついた。フェラーリにナン・ハープレートが付いていなかったのた。 ギャックス 0 70 9 344
この耳の大きいネズ ミから発展したのが、 ボクの怪物のひとつの 。ハターンになっている わけで、これなどはそ のよい例である。これ は、ボクの画集を出し たアメリカの Gerr} 「 de la Ree 夫妻にボク が一九五四年のクリス マスに出したクリスマ ス・カードである。現 物は水彩のとてもきれ いなものらしい ( 以上 "BOK" Publi ・ shed by 「 Gerry 「 de la Ree 1974 USA より )
〔得られるであろうから、 る。Ⅳの式も同様に逆転しての中に「イナ = が「き、 VV= 26800000m 、、 sec 」なり、質量比を川とすると、 となる。 V Ⅱ 60900000mAeC ところで、・フラックホールとホワイトホールを混合した白黒反応 」なる。これは相当な高速度だが、光速にくらべると、まだ二十。、 ′では、この世界にある質量が、ブラックホールとホワイトホールを ・セント位にしかなっていない いったん″あの世″に行き、そこで二倍になって″この イ・フンロノ を大きくすればよい。 を光速に近づけるには、。 ) これまでに世〃に帰ってきて、最初から″この世〃にあった質量と加え合さる ので、 ~ られている燃料のうち、もっとも効率の良いのは反物質である。 へ物質は、正物質と混合すると、その全てがエネルギーに変わって Ⅱ 1 十 2 Ⅱ 3 ) まうという便利な性質をもっている。すなわち、 となる。そこで、噴射速度Ⅳは、 三日 C 、く、ー 3 ( 2 ー 3 ) Ⅱ CA/ ー 3 とー 1 Ⅱ 1. 73C ある。このとき、 のようになり、ロケットの速度は、 三Ⅱ C 2 X l. 73 十 1 「Ⅱ C x 2 X 1. 73 ー 1 フなわち噴射速度Ⅳは光速に等しくなり、一方ロケットの速度 Ⅱ 544000000mAeC 、質量比川で、 V Ⅱ 0. 98X C Ⅱ 294000000m 、、 sec となる。 ーセントにまで近づくわけである。 」なる。光速の九十八 すなわち、光速の一・八倍もの高スビードに達するのである。 さて、『白黒穴帆型』の場合であるが、この推進システムにおい 以上で、『白黒穴帆型』進の推進システムが、光速を超える速度 、は、ふつうのロケットのように燃料を搭載するということがなを出しうることが理論的に証明されたわけである。 。だから、前述の質量比は常に 1 である。また、後になるほど 回速になるので燃料の供給量が増大するという、ふつうのロケット 「何べん読みかえしても、光速突破のこの証明は、鮮やかなもんだ J は逆の関係がある。このため、ロケットのス。ヒードを表す式は、 なあ ! 」 ″ヒノシオ号″のパイロット用シートに大の字になってねそべった 2 三 まⅡ C ままア、 、ノフレットで『白黒穴帆型』の原理を勉強しなおしていた 2 = 、 ヒノが、嘆声をもらした。 ) ように、逆転また逆転、日本シリーズのような形をもつようにな「とにかく、ひじように論理的でスキのない証明たね」 Ⅱ 1. 81 C ー 44