人間 - みる会図書館


検索対象: SFマガジン 1978年3月号
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1. SFマガジン 1978年3月号

場面が変って、司政庁内の光景となっても、そのことは同しであってから回答して来た軍の態度に、巨大機構につきものの事大主義 った。兵士たちは、手あたりしたいに武器を使用するのではなく、 と事務処理の遅さといったものを連想したのである。 逃げる人々を放置していることも、すくなくなかったのだ。あきら どうせ、回答といっても、おざなりなものであろう。 かに、目標をあらかじめ定めていたらしいのである。 それよりも、今しがたおこった連邦軍の奇怪な行動を、あらため 「報告します」 て説明して貰わなければならない。 がいいだした。「連邦軍は、司政庁内及び司政庁外壁の周それが重要なのだ。 、刀 囲にいた反乱者たちを駆逐しつつあります。現在迄に得たデータを 総合して、私は、連邦軍が殺害の対象としている反乱者の型をほぼ 「回答は、連邦軍星域群統合参謀本部からありました。連絡責任者 突きとめました。連邦軍が殺害の目標としているのは、対神経麻痺名は、ヤン・・タイツ日となっております」 線被覆衣を着用した人間と、連邦軍に抵抗しようとした人間が大部は告げたのだ。「それによれば、連邦軍は、軍倉庫から武 分の模様です。このふたつの条件に該当しない反乱者で殺害された器類を盗み出し反乱をもくろんだラクザーンの植民者たちを処断す 者もありますが、きわめて少数のようです」 るための作戦を開始、遂行しつつあるとのことです。これは、軍自 体の権威にかかわる問題であり、また、軍自体が有する権限の行使 でもあるので、司政官にも了解いただきたいとのことです」 マセは、すぐには答えなかった。 対神経麻痺線被覆衣着用者と、軍に抵抗を試みた者 : マセは、視線を宙に向けた。 それが何を示唆しているか、まだはっきりと彼がっかみ切れない でいるうちに、は次の、外部からの情報を伝えて来た。 軍倉庫から武器類が盗み出された : 「報告します」 その武器を使って反乱をおこした植民者を処断する ? と、よ、つこ。 をしオ「ただいま、連邦軍から回答がありまし武器というのは : : : 彼は、これ迄の状況がみるみる明確になって た」 来るのを自覚した。武器とは : : : そう、あの対神経麻痺線被覆衣で 「回答 ? 」 はないのだろうか ? たから、対神経麻痺線被覆衣を着用している 「連邦軍が出動しつつある理由と、司政庁上空に船団が静止してい 人間を殺し、その作戦をさまたげようとする者をも殺したのではな る理由の、二度の私の説明要求に対する回答です」 かったのか ? 「ーーそうだったな」 しかも。 7 マセは苦笑するところであった。彼はその問合せをしたことを、 その対神経麻痺線被覆衣が実際に盗まれたのかと考えれば : : : マ盟 失念しかけていたのだ。そしてまた、事態がこんな奇妙な具合になセには到底承服は出来なかった。 ・、 0

2. SFマガジン 1978年3月号

あれが盗まれたものだろうか ? 訴がどう処理され、かっ、軍に対しどうすべきかを決定するかとな 連邦軍が、最新型ではないとはいえ、武器装備のたぐいをたやすれば : いや、そうなる迄に、名乗り出た人間が無事で生きていら く盗まれるような、そんなすさんな管理をするものであろうか ? れるかどうか、怪しいのではないか ? あれは : : : 貸与されたものではないのか ? 連邦軍のどこかの部事実は、そうなのかも知れない。すくなくともマセには、そうと 門、何らかの機関が、反乱をもくろむ連中に与えたのたとすれば : しか考えられなかったのだ。 : このほうが、はるかにつじつまが合うのである。 だが、かりにこれが事実たとして : : : 連邦軍は、何のために、こ んな手のこんだ真似をしたのであろう。 そうではないか マセが目をあげたとき、がまた伝えた。 連邦軍がこれ迄すっと暴動をうしろからあやつり、武器類を与え ( ことによると、対神経麻痺線被覆衣たけでなく、他の弾薬銃器類「報告します。さきほどの回答の補足として、連邦軍からあたらし だってそうかも知れない ) さらには作戦指導をも行って、人々をあい連絡が入りました。連邦軍は現在、軍倉庫から武器類を盗み出し おり、司政庁を陥落させるところへこぎつけたとすれば : : : 納得出た植民者たちとその同調者を、ツラツリット市内および辺境各地に おいて掃討、処刑しつつあります。これは軍の権限と責任において 来るのではないか ? それは・ : : ・公務室〈や「て来た反乱者たちのリーダーの言動から行われるものであり、今後、連邦軍の武器類を使用する反乱はおこ らないであろうとの見解もつけ加えられております」 もあきらかだとはいえないだろうか ? 軍は、反乱者のリーダー格 の連中と接触を保ち、かれらを後押しして大規模な反乱に立ちあが マセは、低い声を出した。 らせ : : : それから、かれらを殺しにかかったのである。消してしま ッラツリット市のみならず : : : 辺境各地だと ? ったのである。それ迄の経緯を知っている人間を、あっさりと消し て、証拠をなくしてしまったのだ。かりに連邦軍の手をのがれた反それは、ラクザーンにおける反乱が叩き潰されたということであ 乱のリーダー格の連中がいたとしても、これから追われて殺されるる。 であろうし、殺されなかったとしても、かれらは訴えに出る場を持換言すれば、司政機構の手にあまった暴動・反乱を、連邦軍が出 たないのだ。軍はむろんそんなことを否定するであろうし、司政庁動して強引に鎮圧したということでもあった。 に名乗り出るのは、みずから反乱の罪を自首するようなものだ。そ これ迄にも、たびたび暴動鎮圧に協力しようといって来ていた連 の自首を司政庁が受人れ、真相究明を司政官がやろうとしても : 邦軍が、ついにそれを実行に移したということなのだ。それも、ち ほとんど絶望的なのであった。司政官がその気になっても、その告やんと出動の名目をこしらえて動きだしたのだから、司政官として 発は直接軍に向けられるのではなく、連邦経営機構への提訴という は正面から非難は出来ないのである。 かたちになる。連邦経営機構の入り組んだシステムの中で、その提しかし : : : な・せだ ? 228

3. SFマガジン 1978年3月号

あまりわからないな ( 大笑い ) 。間接的なタッチとか直接的な肌合いの違う人が文章を書き、を書くわけですわなあ。 石原そうですね。 タッチとか : : : 説明してちょうだい。 とにかく変わってますわなあ。 石原要するに機械を眺めて暮らしているようなですね、デ 1 タで 石原ふしぎですねえ。 物を見ようというような感じですね、何かを測定して、 な・せ書くようになったのか、あるいはなぜのところに近づ 人文科学のほうで、たとえばお役所などで、同じような人が同 くようになったのか ? に近づいてくるのはやつばり、科学 じ職場にいてデータだけを相手にしているのもいますわね。でも と小説との接点というか、そういうところが、ある一部ではある ードな科学 : : : 人文科学のと違って、あなたのところのような からでしような。 ハードなものをやっているところでいちばん違っているのは、や 石原ええ。 つばり、物 ? そのへんを : : : とな・せかかわりあって、なぜ、あるいはい 石原やはり、だから日常の生活でもって、自分がいちばん長いこ かに、いつごろから書き出されたのかをちょっと : と接触しているものというのが、要するになんといいますかね、 石原そうですねえ、うーん、要するになんというか、そのまあ正 ドですね。 こう機械、物、 そこがふつうの人には、わかったようなわからんような ( 笑直にいえばですね、なんか、やりたいことをやっているうちに、 自然にそうなったということなんですがねえ ( 往復笑い ) 。その 理由というふうになると、ちょっと考えちゃって : 石原そうですね。 では、いっからをお読みになりだしたかという、いちばん 人間そのものが違うような気がするんですがね。われわれが一 最初のところは ? 般にいう科学者というのは、人間が非常にかたい、石部金吉 : 石原最初はですね、ちょっとまあ、ええ、いわゆるそのう、だれ 根本的にすっとまじめ人間、じゃないんですか ? でも、昔の・ほくらぐらいの年齢だとですねえ、小学校時代という 石原 ( 笑い ) 自分じや気がっきませんけどもねえ : : : そう、やつば かそういうころに、少年クラ・フとかですね、海野十三のやつだと り違うんでしようね。 か、それからあの平田晋作とか : 生まれたときから違っていて、学校とか社会に出たとぎに、も ふーん、昭和遊撃隊 ? っとくつきり違ってくる。・ほくは、なんか人間そのものが違うん じゃないかという気がしますね。・ほくが地球人なら、あなたは火石原昭和遊撃隊とか、ああいうのをまあ、夢中になって読みまし たわね。だけどまあ、だれでも読んでいることで特別なもんじゃ 星人。 ないと。ぼくは、最初に読みはじめたのはですねえ : : : 結婚して 石原 ( 往復笑い ) そうかもしれませんねえ。 はっきりというか、肌合いが違う、その ですね、結婚して子供ができて、それで学位論文がたいたいでき なんとなくというか 2 8

4. SFマガジン 1978年3月号

青年もわめいた。わめいて、命令を出した制服よりも前に出て来ふたりとも連邦軍の兵士の武器によってそうなったのだ、と、マ 6 ると、銃を持っていないほうの手で、マセをはげしく指した。「わセが悟ったときには、制服の指揮官は、マセには分らぬ符号らしい 2 れわれは、こいつに頭を下げさせなければならないんだ ! それをものを叫び、兵士たちが行動をおこしていた。司政庁内のあちらこ 見届けなければならないんだ ! 」 ちらから、狼狽した声や悲鳴があがり、足音が入り乱れて高くなっ くるりと振り向くと、青年は、制服をののしった。「われわれていた。 は、ぎみのような下っぱではなく、もっと上の、話の分る人間に出 公務室のドアには、もう、指揮官ひとりが残っているだけであっ て来て貰いたい。それを要求ーー」 た。指揮官は靴のかかとをカチリと合わせると、マセにむかって敬 声は、おしまい迄続かなかった。 礼し、身をひるがえして、廊下へと駈けだして行った。 これは : 青年の正面になっていた指揮官らしい制服が、引き金に指をかけ これは、何を意味するのだ ? たまま、銃身を一閃させたのである。 何がおこったのか、とっさにはマセには分らなかった。ただ、青マセは、床にころがったふたつの死体をみつめていた。 い捧がさらに長くなりながら半円を描いて宙を横切るのを認めただ昨夜来のたて続けの事件でさえすでに悪夢を連想させるのに : これは、その悪夢が頂点に達したような気分であった。 けであった。 それからーーー立っていた青年の頭部の上半分が下とずれて、離連邦軍は、どういうつもりなのだ ? そこで彼ははっとわれに返り、スクリーンに目をやった。 れ、床へと落下して行った。それを追うようにして、残りの身体が 倒れて行った。すつばりと切断された上頭部の切り口がマセの位置 スクリーンには、ばらばらになって逃げる群衆が映っていた。そ からも見えたが : : : それは黒いガラスのようにつやつやしていて、 の背後から、例の青く光る棒を持った連邦軍兵土たちが、格別急ぐ でもなく追っているのである。青い棒光の触れるところはことごと まだかすかに湯気をあげていた。 その光景を視覚から意識の中へ繰り入れながら、マセは、別に悲く切断されるのみならず、遠距離の対象には、その光が銃から離れ 鳴を聞いたような気もした。女の悲鳴である。どの位の長さ続いたて飛び、相手の身体を刺しつらぬきながら消えて行くのだった。 それは、正に殺戮であった。恐柿に逃げる人々を、狩りさながら のか、それともほんの瞬間だったのか、あるいは全然そんなものは なかったのか : : : 彼にはしかとは断言出来なかったが、ロを開いたに、うしろから次々としとめているのである。 女の顔が視野にあって、その口から声が出たように思えたのだ。ド アのそばにいたその若い女の首は、驚いた表情で、ちょっとの間胴見ているうちに、彼には、どうやらそれが無差別の大虐殺ではな に載っていたが、たちまち仰向きになってころげ落ち、一歩前に進 く、相手を選んでいるのだと分って来た。連邦軍の兵士たちは、近 んた胴が、こちらへ倒れたのであった。 くに人間がいても、必ずしも殺すわけではないようなのだ。

5. SFマガジン 1978年3月号

でしよう」 はまがりなりにも野次馬の同情を得、 リカ人一般の宗教的偶像の表現は、ス そして、すでにこの映画には、四千万「ジョー・ ス」では自信と希望をつかテンドグラス的な、安つぼいものなの ドルの興収が保証されているという。み、そしてこの「未知ーー」では人間 だ ) 、彼がラストでこそ強調しようと ウ で、結局、この映画をなぜス。ヒル・ハ 讃歌、というより宇宙的ヒ = ーマ = ズしたテーマがそのために弱まってしま ーグがつくったのかという議論が、こ ムの謳歌でまとめられている点、彼は ったせいかもしれない。 れからいろいろ起こるだろう。・ほく自行き着くべき結論にたどりついた、と大詰、母船の ( ッチがあき、光り輝 ヒ 身はこう思うのた。この感想は、先言えるのじゃないか。 く中に異星人が・ほんやりと現われてゆ レ 程、・ほくの「火の鳥」とテーマが似て この映画のラストが、かなり甘いと つくり手を拡げて挨拶したとき、・ほく いるといった点につながる。宗教的人 いってけなす人達がいるとすれば、そは、ス。ヒル・ ( ーグのいいたいことがこ R..ØQ. 道映画、という評もある。 ( 平井和正れはシネラ「的な花火シ = ーや母船ののワンカ ' トにすべて総括されている 氏がひどく喜ぶような映画なのだ ! ) 映像や音響 ( レ・ミ・ド・ド・ソとい と感じて心を打たれ、しかも、ジョー ジ つまり、ス。ヒル・ ( ーグが「激突 ! 」う五つの音から出来た、宇宙人とのコ ・。ハルの名作「宇宙戦争」のラスト からはじまって「ジョー。 ス」を経て、 ンタクトの音 ) のきらびやかさの印象の宇宙人とはまったく正反対で、その 「未知ーーこに至るまで一貫して描きに負けてしまったためたと思う。それ二つの映画の間には二十年の歳月の流 たかったものは、人間のちつ。ほけさ、 はスビル・ ( ーグの誤算で ( 彼はディズれがあったことを思い浮かべてよけい もろさ、みじめさと、それと相対的に ニーのファンであったし、また、アメ感動したのだった。 ( 手塚治虫 ) 人間への信頼や思いやりを描き分ける ことたったと思う。それには人間を一 旦つつばなし、客観的な目から眺めて 地求・申分斤己彖ー = ルド・アナリこス 反省させ、再評価させる手法がとられ た。その客観的な眼がトラックであ 山田正紀著徳間書店・一ニ〇〇円 り、鮫であり、宇宙人だったのだ。こ の手法はかのレムの「ソラリス」の海 とおなじ趣好なのだ。そして人間をつ 山田正紀は、その最新作『地球・精においてはどうか知らないが、すくな つばなして見守るという点では「火の神分析記録ーーエルド・アナリ = シスくとも日本では、それほど意外なこと 鳥」も同じなのだ。 』で、新しい境地に突入したようでよよ 。オい。だが、単にその体系にのつ だが、「激突 ! 」では、ラストで苦に思える。 とって小説をつくりあげるというので 苦しくやりきれない自己嫌悪でヘたり ュングの心理学を利用して作品を構はなく、それを素材にして今まで こんだ主人公が、「カージャック」で成するということ自体は、米英界にとりあげられてきた多くの発想と組 ロ 6

6. SFマガジン 1978年3月号

これは私の恣意的なイメージにすぎないかも知れない : て、千年以上生きている、とさわいでいる、千年後の人間たちの でも : 夢を見ているのかも知れない。あんたも、私の夢の中にひょいと これは、私の見ている夢かも知れない。人間は、今まで覚醒中 出て来た : に見た事もない景色の夢でも、 いくらでも見られる。イメージ しかし、あなたは : : : 眠りの中で、宇宙を夢見ているあなたの はいくらでもっくれるからだ。現実の世界で、一生かけて見ら体は : : : 実際に千年以上たっています。千年もの間、呼吸し、生 れる不思議な自然の光景より、はるかに奇妙で、異様なイメージ き : : : 朽ち果てもせす : をつくれるはすだ : : 。私は、そう言った″夢〃を見るために修 実際にそうだとして、それが私にとって、どんな意味がある ? 行し、訓練をかさね、やがて人々の祝福と、歓送の儀式におくら眠りつづけ、夢を見つづけている私にとって、夢の外の時間経過 れて、もっとも静かな墓所に、愛する娘とともに横たわり、もっ など、どうって事はない 。どうか、私の夢のたのしみを邪魔しな とも頑丈な″舟″の中で、夢の生成を助ける″神のキノコ″を食 いでくれ。私を起し、私の夢を中断する事が、あんたたちにとっ べ、香料の香りをかぎ、黒燿石の鏡に見人りながら、″夢の旅″ て、どんな意味があるというのだ ? 他人の夢に干渉して、いっ にむかって船出した : たいどうしようと言うのだ ? あの真の闇の中で : : : どうやって鏡を見入るんです ? 私たちは : : : 知りたいのです ! ーー夢でだ : ・ほくは力をこめて言った。 。と″三の猿″はかすかに笑った。ーーー夢の中には ・ : 闇の彼方に光がある。すべての光景がある。 どうしても、知りたいのです。・ : ・ : どうやって、千年以上、酸 でも : : : たとえ仮死状態にしろ、どうやって千年以上も生きら素も乏しく、食物もなく、水さえも無い闇の中で、千年以上、眠 れるんです りつづける事ができるのか : : どうやって、夢で : : : あるいは魂 だけ、ほんものの宇宙を、光速をこしてとびまわれるのか : 千年 ? : : : あんたたちの時間で、千年以上たとうが、それが私 ″三の猿″は、仮面を反 にとってどんな意味がある ? お聞き、マヤには、トウモロコシ あなたたちも、夢を見ればいし の粥が煮上る間に、自分の一生の有為転変のすべてを見てしまっ対側にむけてつぶやいた。 あなたたちだって、志せばい、。 た、という男の伝説がある。かと思うと、ほんのうとうとまどろ そう言った夢を : : : 地球上の卑小な個人の生を超越して、無遍在 んでいる間に、眼がさめてみると、一・ ( クトウン ( 四百年 ) もた の宇宙をわたって行く夢を見よう、と : ・ ってしまっていた、という男の話もある。眼がさめたとたん、そ そこが問題です。 : 一体、夢を志す事ができるんですか ? の男は白髪の老人になり、やがて。ほろぼろの灰のような死体にな そこが修行だ : と″三の猿″はおかしそうに言った。 ってしまった : 私が千年以上も生きているって : : : そんな事それと″神のキノコ″だ。そうすれば、欲する夢が見られるよう 5 になる は信じられないね。実は、私が、仮眠している私の姿を見つけ

7. SFマガジン 1978年3月号

「それはこういう意味です」と、リーア。「 " あなたもわたしもはのいちばん身近で大切な友だちとして、ここに人れられた。この人 たからよけいな心配をする必要のないほど、偉大で年老いた恐ろしびとは、彼らが出会う人間を片 0 ばしからだまし、そしてこの世界 の色彩ゆたかなものをなに一つ楽しむことができない″」 い魔法使が、わたしをここに入れたのだ″」 「それからこうもいったつけ。ォルルムンプに、ムル。フプグルム、 「それからグラム。フヴムル、それにファッフル、それにファールン それにグラ・フルミ = ー。フ。フレフルム。フ : : : ヒック ! 」 プなんていったよ」ェイモスは彼女に訴えた。 「″ほかの人びと 「それはこういう意味です。 " わたしは、この陰気な灰色の人びと「おおまかに翻訳すると」と、リー アはいった。

8. SFマガジン 1978年3月号

はみんな迷信深いからね : : : 不吉な子供たと本だけは読んでた。そのうち小説を書きたく 「どれくらい山奥にいたんだ ? 」 「どこまでも入っていって、反対側に突き抜思ったんだろう。とにかく、その婆さんにひなって、書いて雑誌に送ったんだ。それが売 0 けないぐらいのところさ。知ってる ? ほときとられたわけ。本職は産婆なんたけど、自れて、五十ドル送ってきた。金持になったみ こ、こ隸ったな、で、もう一つ書いた。あち んどの人はテレビも映画も知らないし、大統分を魔女かなんかだと思いこんでいたフシがナし冫・ 領の名前も知らない連中がいるんだよ。自分あって、いつもどろどろしたものをこしらえこちを歩きながら、物を書いて暮すようにな の生まれたところから三十マイル以上動くて : ほくはそれを飲まされてたよ。食べさせったのはそれからさ。 = ージ = ントがいて細 人間も少ないし、電灯も見たことがない。信てくれたのも、服を買ってくれたのも、教育かい仕事は全部やってくれるから、ぼくは書 じられない話たけどね。それも、ただ物が違らしいものをしてくれたのも、みんな婆さくだけ」 うっていうだけじゃないんだ。人間が違うんん。そのかわり魔法も全部教えこまれた。あデトワイラーの健康そうな肌の輝きは、午 だ、考え方も違うしーー・ちょうど外国に来たまり本気にはなれなかったけどね」彼は恥か後になって薄れはじめた。病気とまでは行か 「・ほくは婆さんのない。われわれ俗界の人間どもと似た気分に 「もっとも、そのしそうな笑みをうかべた。 みたいにー肩をすくめた。 うちみんな同じようになってしまうんだろう雑用を引き受けて、最後には助手みたいなもなりだしたというところだろう。そして、お けど、文明がだんたん近づいてきてるから。のになった。産婆の手伝いまでしたよ : : : 出れのほうは一度かためた決意がゆらぎだすの ・ほくが学校へ行ったことがないって知ってる産のとき、そばにいたりなんかして。でも、を感じていた。この無邪気な青年が、一連の ? 」にこにこしながら、「生まれてから一日これは長くは続かなかった。ぼくがいると赤血まみれ殺人に関係しているとはどうしても も。靴たって十になるまで履いてなかった。んぼうに不吉がのりうつると、親のほうが心思えないのだ。ただ信じられない偶然が重な 信じられない話だけどね」思い出がよみがえ配したものだから。婆さんのおかげで本も読っただけのことなのかもしれない。そう、 ったように首をふった。「学校に行きたかつめるようになって、それからさ、癖になって「信じられない」それがキー・ワードだ。確 たなあ」低くつぶやいた。 しまった。どこからかき集めたのか、本はた率の法則が完全に崩壊してしまったのでない くさんあったな。第一次大戦の前に出たようかぎり、彼は関わりあいがあるにちがいな 「どうして出る気になったんだい ? 」 反面、デトワイラーが化けの皮をかぶつ 。八つのとき両親が火な本ばかり。百科事典も全部読んじや「たー 「いる理由がないもの ているのではないことも誓っていい気がし 事で死んで、家も焼けてなくな 0 てたし。そー一九一一年発行のを」 おれは笑った。 た。あどけないばかりの彼の純真さは本物、 んな遠くないところに頭のいかれた婆さんが いて、そこにひきとられたんだ。親戚もある彼の目から光が消えた。「それから婆さんだれが何といおうと本物なのだ。 、ーンドンが死んで三日 にはあったけど、みんないやがったみたい」が : : : 死んで。もう十五だったから、とびだ土曜の朝、ミス・ , おれを見つめた、信頼しきって、「あの地方したわけ。半端仕事をいろいろやりながら、目、おれはロレインとジョ = イに話を持ちか

9. SFマガジン 1978年3月号

をきみに教えられるものかどうか自信がな しいえ。アルクトウルス人というのはこ 「すると平和党の代議士は秘かに地球を訪 いのさ、ジム。たしかに近頃わたしは暇つ の銀河系で発見された初めての非関係的なれようとして、ハイ・シカゴから下りもし や ないうちに殺られてしまったというわけか ぶしに、異星人の思考システムについて ) 」人間類似種族です。つまり地球の人類とは く個人的な研究を火星人ハラ日 ハラ相手に関係がないという意味ですが。事実、かれらね」 「そのとおり。状況がますいんですよ、シ やってはいるが、しかし・ー・ー - ・」 は三つの眼をもち、両手には指が六本すっ ーン。まるでわれわれが戦争をやりたが 「わたしはなにもここにテレバシーの専門 あります。髪の毛はありませんが、しかし ともかくかれらは二足歩行する哺乳動物で っているように見えますからね。〈通商連 家を捜しにきたわけじゃありません」若い 警部はきつばりと一一一口った。 すよ。かれらの女性の一人が最近〈星と靴盟〉の他の加盟種族はすでに充分に、銀河 「それなら安心だ、ジム。きみは自分のし下留め〉に出演してたいへんな人気です」系全体に対する地球の意図が究極的に平和 ていることを心得ているわけだ。事件を聞 「われわれの時代にも警察はそういう 場所的なものかどうか疑っています。かれらは わば試金石としてアルクトウルスの情勢 かせてもらおう。それから背景も教えてく にたえす眼を光らせていたものだ」老いた れ。わたしはどうも最近のニュースにはう 警部補は記憶をたどり、うなすいた。「アを見まもっているんです。かれらの言うに といものだから」 ルクトウルス人がテレバスなのかね」 は、われわれが北極星人やアンタレス人や しいえ。テレバシーの件はあとで説明しその他さまざまな種族を対等な存在として 若い警部はいぶかしげな顔をした。「あます。アルクトウルス人は二つの党派に分受けいれたのは、たんにかれらの形態や文 の殺人事件のことはハイ・シカゴ中のもの裂しています。一方に〈通商連盟〉への加 化がわれわれとはかけ離れたものたったか たとえば相手がマルハナ がみんな知ってるんですよーー現場はここ入を希望し、かれらの太陽系を広く宇宙社らにすぎない ・ハチならひとます法律的な平等を認めてお から四分の一マイルも離れてやしませんー 会へとひらいて地球をはじめとする多くの いて、あとで卑劣な仕打ちをするのは簡単 ーアルクトウルス平和党の代議士が殺され異星と交わろうとするものたちーーーこれが たんです」 なことですよ。 要するに平和党ですが があり、他方に しかし、われわれの銀河評論家たちは疑 「わたしは知らんよ」老いた警部補はいっ きびしい非交渉政策を望むものがいます。 た。「アルクトウルス人とは何者かね。 われわれの知るかぎりでは、排他的な政策 問を投げかけるのです。われわれ地球人に っておくが、わたしのような老人にとって はつねに究極的には戦争に結びつく。いま は果して人間類似種族との平等を認める心 は、現代などたんに歴史上のもう一つの時の情勢では戦争党がむしろ優勢です。なに がまえができているのか、果して喜んで認 代というにすぎんのだ。だれか他のものに が起きてもパランスが崩れるおそれがあめるだろうか。ときにはあなた、自分の実 4 相談した方がよくはないかね、ジム」 る」 の弟を人間と認めるよりも、地球の裏側に ド・ガーダー スター・ア /

10. SFマガジン 1978年3月号

その点では子供たちも同様だった。こんな荒野でついているのだ。いや、外見だけでなく、しぐさだてきた書評の切り抜きには、べたほめのものが多い。 満足して、おとなしくしているような子供たちではって。 エルグ・クイーンと呼ばれる権力の中枢、エステ ないのだ。 . 。ししカーーー壁が・フーンとうなっルに代表される愛に満ちたクイーン、さらにはチェ ゲームの用意ま、 こ 0 スヴェンは訊ねた。 スのクイーンと、それそれのもっ象徴的な意味や、 「ダルグレンが会議に出席するのよ、、 冫しつだね ? 」「まず服を着なくちゃ」アンドロイドのダルグレンこのエキサイティングなストーリイに含まれる、科 「三十一標準日後よ。ソルスリー風にいえば三十八が言う。ダルグレンのとまったく同じ作業衣を着な学の進歩のもたらす狂気や、愛や自己儀牲の尊さと 日後かしら」 がら、「なんのゲームをやるのかね ? 」 いったものを指摘してほめている評論が目立った。 「二十八か九日後だ」スヴェンが言う。 チェスだ。 ともあれ、今年ーーじゃなかったーー去年いちば 「ガルフェドまではここからどれくらいかかるのか壁がサッとひらき、そのむこうの明るく照らされん読みごたえのあった長篇でした。 しら ? 」と、エステル。 た部屋にチェス・テー・フルと二脚の椅子がおかれて 「十五日ぐらいだね」ジョシ、アが応じる。 さて、今年はにとってどんな年になるのだろ 「スヴェン、行くつもり ? 」 かくて、人間とアンドロイド、鏡にうっしたう。「スターウォーズ」や「スーパーマン」「未知 「ああ、ここにいても安全とはかぎらないからね」ようにそっくりのふたりのあいだでチ = スの試合がとの遭遇」が封切られる年 ( 「一一〇〇一年宇宙の旅」 「でも、この星の中心地区にたどりつくには、十二おこなわれる。その何度かのゲームの勝敗自体、象もリヴァイバル公開されるのかな ? ) 。 日しか残されていないわ」 徴的なのだそうだ ( あちらの書評を読むと ) が、・ほ 大会。四月末に高松でフェスティ・ハルが しかも、ここと中心地区のあいだに横たわるのくにはよくわからない。だが、しだいにエルグたち開かれるとか聞いた ( 山尾悠子さんや星群の会の人 は、沼とヴィルスと人殺しを覚えたエルグたちと遺の陰謀の本質がわかってきて、アンドロイドのダルと会場でお会いする約束をしたのだが、詳しいこと 伝子実験によって化物と化した動物たちに満ちた世グレンが外見だけでなく、心も人間になっていく過がさつばりわからない。どなたか教えてくだされ ) 。 界なのだ。 程がじわじわしたサスペンスのうちに語られてい七月末には星群祭。今年のテーマは「現代作 法」 ( らしい。間違ってたらごめんなさい ) 。第十 ダルグレンはべッドに横たわっていた。 それと平行して進むのが、五人の悪童どもとひと七回日本大会は箱根芦ノ湖。杖立温泉、支笏湖 スヴ = ンたちはどうしただろう、イガルやエステりと二匹の ( 現代のわれわれから見れば ) 化物の物についで三度目のリゾート地での開催。ガタコンは レよ 2. きっと、あの荒野で死んでしまったこと語である。しかも、こっちの旅にはタイム・リミッどうですか ? 」つ、つ 0 トがあるのだ。 出版のほうも海外ノヴェルズをはじめ、いろ アンドロイドのダルグレンはテー・フルについてい いろな企画を耳にしている。 た。いまや、人間そっくりにみえる。ちゃんと肉がエージ = ントのヴァージニア・キッドから送られ今年もにとっていい年でありますように。 0 0 5