思い - みる会図書館


検索対象: SFマガジン 1978年4月号
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1. SFマガジン 1978年4月号

「おお、よしよし。きがついたようじゃね」 蘭花ちゃんと陳さんがいった。 、ました。 まつどはかせがいし 「ちょっと待ってくたさいよ博士。日本列島全体が過去にもどると ゆきのじようちゃんは、すぐおきあがろうとしましたが、どうし いうことは、この部屋も、そっくり過去にもどるんでしよ。じゃ、 たわけか、からだがおもうようになりません。 宇宙人たちもついてきちゃうんじゃないんですか ? 」 「ど、どうちたのでちゅ」 俺がステテコのゴムをひつばりながらいった。 「そのへんがよくわからん。わしの計算では、タイムステテコの作ゆきのじようちゃんがいいました。 「ゆきのじようちゃん、びつくりしないでね。じつは、はかせのた : 。だから、失敗してもい 用は、宇宙人にはおよばんはすじゃが : いむすててこ、あたりの空間にはぜんぜんさようしなくて、はいて いように、きみにはいてもらったのだよ」 るあなただけ、にじゅうすうねんむかしにわかがえらせてしまった 「そ、そんなリ」 のよ。あなた、あかちゃんになってしまったんだわ」 俺は無意識に、ひつばっていたゴムをばちんとはなした。 らんかちゃんがいし 、ます。となりで、まつどはかせが、ペンペン 「ああっ、 いかん、雪之丞くん。それをやったら、タイムステテコ とあたまをさげています。 が作動してしまうリ」 ゆきのじようちゃんは、めをまんまるくして、こうぎしようとし 松戸博士が叫んた。 ましたが、おむつががさがさして、うまくできません。 しかし、時はすでに遅かった。 ステテコーン、ステテコーン、ステテコーン、ステテコーン : 「ふんぎや ~ 」 ゆきのじようちゃんは、なきました。そして、ひっしでいいまし 列車の震動音のような音につつまれて俺は気絶した。 「ばぶ、ばぶ、ばぶ。はたちて、ゆきのじようのうんめ、よ、 に。ばぶ。はたまた、ちゅけいすてーちょんはリきじえちゅ ! それから、どのくらいのじかんがたったでしようか ? ゆきのじかいじえちゅ、また、そうじえちゅリ」 ようちゃんがめをあけると、かおのうえに、まつどはかせ、らんか ちゃん、ちんさん、それから、・ほろさんだるせいじんをはじめ、た くさんのうちゅうじんたちが、おおいかぶさるようにしていまし たいむすててこがうごくまえと、ちっともこうけいはかわってい ません。どうやら、はかせのじつけんはしつばいだったようです。

2. SFマガジン 1978年4月号

ちゃ。「まだ取りに来てくれん」なーんて : : : そら、注文のひと山田そうできればいいんですけど。そろそろ、まずの連中か らでも、そういうふうになってもいいんじゃないかなあ。 月も先にできたら、だれも取りにこんわなあ、そらあ ( 大笑い ) 。 山田だけど、さっきいわれた仕事をするのに、冬はハワイで、夏 山田結局、あの、時間の配分が下手なんですよね。ばくの場合、 は北海道 : : : あれはいいですよね。 長篇が好きなもんだから、どうしてもその、別に、いまやらなく 。 ( ンナムの安い料金のが通ったら、それもできるよ。 てもいいものを先にやってしまうわけですわね、長篇を。そうす 山田でも、横槍がずいぶん入っているようですねえ。 ると、短篇をわりと短い期間につめこまなければいけないから、 日本の政府というのは、どんな形にしろ、物価を安くするとい それで苦しくなっちゃうと : うのが、いいことだという姿勢がまったくないんだなあ。ところ そしたら、短篇やめて、長篇だけにしたらいいのに ? 山田それがそうできればいいんですけど、やはりこわくて。雑誌が、メリケンはというと何はともあれ、安くするのは正義でござ います、だわなあ。だから、この二十五年間、むこうの飲み屋で さんのみなさんに見捨てられるんじゃないか、と。 ョロン島あたりに逃げていったら。好きなだけ書いて、あとは は酒の値段がほとんど変わっとらんわね。日本のほうは、高くな 焼酎飲んで、ああこりやこりや。また、こちこち仕事して、焼酎るのが物の道理と思っとるらしい。物価が上がるかわりで国家財 飲んで、ああこりやこりや。 政の赤字を埋めようなんて、情ないやりかただね。 山田それにしても、航空運賃が半値というのはすごいですね。 ワイ往復十万、本土十五万 : : : うつかりしていると、三カ月ぐら いむこうで仕事するほうが安くつきますわね。でも、注文がこな くなるとこわいんで : : : そんなことはないと思いますけれど。ち よっと離れて、注文がこなかったら : では、交替で行けばどう ? かれがここに住んで、「はいはい 山田それで、どっと引き受けられたら困るし。 いや、「本人はただいま取材のためハワイへ行っております。わ たしでいかがでしよう : : : 」返事さえすれば、納得してくれるさ。 山田ほんと、作家クラ・フでハワイあたりに持家のひとつも。 あなたが買ってくれたら、ぼくが住むわ ( 大笑い ) 。その日を 楽しみに、では、祝賀会へ参りますか。 火物の籌の性咾が新境地を拓く野心作プ ) ・太 0 虎を 崑崙遊撃隊 ( 二見書房 )

3. SFマガジン 1978年4月号

「日常の品物は、各室の気送シ、ートから、手に入ります。端末ュ ジュリは、黒檀のような黒い顔を歪めて、白い歯を見せた。その ニットに、音声入力していただけば、けっこうです」 表情には、不安が隠しきれない。 戦闘員が答えた。特にと断わったところをみると、通常必要なも「よく判らない。その協定なるものが、まだっかめていない。だ のーー食料など以外に、なにか要求するものがあるかどうか、訊い が、太古の地球の一部が、かれらの占領を受けているのは、まぎれ たつもりらしい もない事実た。われわれは、その敵の占領地に、ろくな装備もな く、なにも知らずに乗りこんでしまったわけだ」 「木材と大きな葉と葛草が欲しい。かれらには、家が必要た」 サエキが叫びながら、ドロマエオサウルスの群を指さした。かれ「酷い話だわ。わたしたちは、見殺しにされるはずだった。囮の役 らは、だたっ広いところに、脅えたようにうすくまっている。 ですらもなかった。ペレジノイは、まったくの大死にでしかなかっ 三十世紀人たちは、奇妙な要求におどろいて、引きあげていっ たのね ? 」 ジュリは、呟いた。彼女なりに、 ここでの情勢について、あれこ あとに残された人々は、なにから話しだしていいか判らすに、しれと考えていたにちがいない。 ばらく沈黙を保ったまま、顔を見あわせていた。 工ペレットは、ジュリの言葉を、サエキに聞かれずにすんで、よ 「ドロマエオサウルスの群を見てきます」 かったと思った。親友のゲォルギー・ペレジノイの死について、サ サエキが立ちかけた。この若者にとって、友人のハンターのことエキは、なんらかの意味付けを必要とするにちがいない。 が、気がかりなのたろう。たしかに、太古の自然のなかで生きてき さいわい、サエキは、群のリーダーであるハンターの兄貴分とし た恐竜に、 ここの文明が居心地がいいとは思えない。 て、群の世話にかかりきっていた。気送シュートからとりたした食 「気送シュートから、食料をとりだしてやるがよい」 物を、みすからロにしてみせ、仔竜たちにすすめている。アカメと 工べレットは、サエキにむかって、アド・ハイスした。 シロとコロが、サエキのまわりにまとわりつく。仔竜たちほど、人 「ええ、そのつもりです」 工の食物に、抵抗がないようである。ほかの恐竜たちも、しだ、 サキが、広間の恐竜の群のほうへ向かうのを追って、ソネ教授に、食事にとりかかった。 も立ちあがった。 どうやら、サエキは、不可解な事態を解明する努力を、放棄して あとには、二人のタイム。 ( トロール隊員だけが残された。ジュリしまったようである。古生物学の生態観察に没入することによっ は、しばらく考えてからロを開いた。 て、かろうじて心の平衡を保っていられるのかもしれない。 「白亜紀後期末のいわき市のあたりは、あの異星人に占領されてい その日は、それで暮れた。工ペレットも、思い患うのをやめた。 るのね ? しかも、そのことを、三十世紀の人々も、協定によってなにか新たな説明を与えられないかぎり、事態は進展しない。 認めているようだわ。どういうことなの ? 」 久しぶりのロにする文明は、四人の人類を落ちつかせた。なぜな つるくさ おとワ ロ 5

4. SFマガジン 1978年4月号

篇見覚えのある文章で一八〇〇円、とい た。全体にどうしても、急ぎ足、というであれ、それはそれでおもしろいのだ。 うのは、少々切ないんだよなあ。おそら息せき切った感じはいなめない。 「競馬ミステリ ー」の章なんか当然石川 くこの本の発行部数よりは c-u マガジン 『おもろ大百科』のほうは、その点、ガ氏の独壇場で、・フランシスなどに混 の読者の頭数の方が多いと思うし、だかイド、と銘うっているとおり、毎回テー って、自作の名もしつかり出てくる。 らそう思う人は決して少なくはないはすマを決めたエッセイ、という形をとってあまり固いことを云わずにとミス そのテーマにそったやミステリを紹テリの楽しみを教えてくれる、という点 それと、第一部の「作家論のための / 介しているので、その作品を知らなけれではかっこうの一冊だろう。あえて文句 】ト」にしても、解説、という制約は大ば、ヘ工、と思うし、知っていればよけをつけるなら、石川氏独自の観、 レ きなものであって、どうしても著者の世い興味がわくわけで、とにかく読んでい ステリ観がもう少し出ていた方がよかっ コマ切れでて楽しい。 た、と思わないでもないが、それもこう ・「 5. 界が十分にはったわらない、 次へひきまわされてしまう、うらみがあ「世界一おもしろい推理小説」「世界一 いう性質の本ではないものねだり、とい る。 おもしろい」の章なんか、何が出てうことになるかもしれない。とにかく、 むしろこの部分だけをふくらませて書くるか、というだけでも興味津々であ安心してよめる楽しいエッセイである。 きおろしも加えるなどの工夫がほしかつる。氏のあげたものに賛成であれ、反対 ( 中島梓 ) ミステリを読まないキミたち三第 , い S F なんて ' というあなたたち 断界の先達が機知とユーモアにあ。 ふれた文で、知らす知ら・ずのうち に、一その魅力のリコにする ! SF の時代 日本 SF の胎動と展望 石川喬司 響社

5. SFマガジン 1978年4月号

またできた、か ! ( 大笑い ) いや、しかし、あなたの中では、 ヨーロッパ・中近東放浪というのをもっと詳しく聞くと、面白い んだろうな。何かあるだろうからね。 山田何も大したことないですよ : : : ただ、ぶらぶらしていたたけ ですもん。 それがほとんどの人がみな、ぶらぶらしないんだもの ( 笑い ) 。 山田そう考えると、えらいなあと自分でも思いますけどね。 みんな、勤め先や学校と家のあいだをぶらぶらしているだけた もの : : : 大ぶらぶらと小ぶらぶらとの違いさ。 山田でもあのときに、いちばんよくなかったのは、自分の中で言 葉にするでしよ、これはどういうことを意味しているんだとか : : ところが、先へ進むことだけを考えていると、そこらへんが、 ごそっと抜け落ちちゃうんですよ。だから、あれはなんだったん だろうと考えると何も出てこないですよねえ。 ほかの外国人とのコミニュケーションというのは、ほとんどな かったの ? 山田いや、ありました。友達もできましたし、いっしょにしばら く旅行もしましたし。 いやあ、大変なもんだ。 山田いやあ大変なことはないですよ。 だって、一期一会の機会が何度もできたんだもの。 山田そうですね、それはいつばいありました。 いまでも文通はあるの、そういう連中と ? 山田ええ、ときどきありますけど、たんだん疎遠になりますね。 日本へ来た人たちのお世話したことがありますけど、それもその 日本へ来たときに、スイスの男の子なんですけどもね、男の子と ー . ンヨックと いっても三十近いんですけど、その人がカルチャ 思うんですけども、おかしくなっちゃって。で、いろんな騒ぎを おこしてから、意識的に遠のくという感じになってしまいました ね、こっちが。大変な騒ぎになっちゃって、どこかの病院へ収容 されて。しかも、スイス大使館へ連絡つけて帰したんですね : ・ そしたら、死んじゃいましてね、自殺して、それでなおさら、 : その人も言葉が思うように通じない やになっちゃったみたい : ということで、しかもそのとき、死ぬ直前に手紙を書いてきてい るんですよ。それが、スイス人の書く英語で、細かい文字で読 めないんですよね、ぜんぜん。それで手紙を書きたいんだけど、 読めないから、ほったらかしているうちに死んじゃった、と。あ と味が悪くって。別にぼくのせいで死んだわけじゃないんですけ どね。それにしても、死ぬ直前に書いた手紙だから、なんか書い 火神を盗め ( 祥伝社 ) 5 9

6. SFマガジン 1978年4月号

か。かれはこのチャンスを稼ぎだしたじゃありませんか。いいこ と、お父さま、かれとあたしはもう何年もこのことを話し合ってき たのよ ! 」 「何年も話し合ってきた、ほんとか ? 」 どうやら法廷もまた自由に値段は付けられないという立場をとり 「ええ、そして何度も何年も、かれはお父さまを傷つけやしないかそうに思われました。そして値段がないのだから、いくら大金を積 んでもロポットに自由など買えるわけがない と判断しそうに思わ と心配して、延期してきたのよ。こんどもあたしがやらせたから、 れたのです。 かれはこんなことを言い出したんです」 クラス・アクション 「かれは自由とはなにかわかっておらん。ロポットだからな 自由に反対して団体訴訟を起した人々を代表して、地方検事はご 「お父さま、あなたはかれを知らないのよ。かれは書庫の本をみんく簡単な意見陳述をしました。「ロポットに適用された場合、〈自 な読んでしまったわ。あたしにはかれが内部でなにを感じているの由〉という言葉はまったく意味をなさないのであります。ただ人間 かわからないけれど、あなたの心の中もわかりません。話してみれたけが自由であることができるのであります」かれはこの意見を、 ば、かれも抽象的観念に対してあなたやあたしと同じ反応をするこそれが適当であると思われたときには何度もくり返しました。ゆっ とがおわかりになります。それ以外になにが必要だとおっしやる くりと、言葉を際立たせるために眼のまえの机を調子よく手でたた の。他人があなたと同じ反応をするとしたら、あなたはそれ以上なきながら。 にを要求できますか」 小さいお嬢さまがアンドリューのためにと発言の許可をもとめま 「法律がそのような立場をとるはずがない」旦那さまは腹をたててした。 いわれました。「おい、いいか、おまえ ! 」かれは脅しつけるよう 彼女のフル・ネームが呼ばれ発言が認められましたが、このとき な声をだして、アンドリューを振りかえりました。「おまえを解放アンドリューは初めてそれを耳にしたのでした。「アマンダ・ロー するとしたら法律的にやるしかないのだ。これが法廷にもち出されラ・マーチン・チャーニイ、裁判官席に近づいてよろしい」 たら、おまえは自由を得るどころか、法律はおまえの金がいったい 「ありがとうございます、裁判長さま。あたしは法律家ではなく専 なんなのかその所有者を正式に明らかにしようとするだろう。ロポ門的な言葉づかいを存じませんが、どうか意のあるところに耳を傾 ットに金を稼ぐ権利などないと、かれらは言うのだ。ややこしい訴け、言葉は無視していただきたいと存じます。 訟などして、金をなくして、それでいいのか」 ますアンドリューの場合、自由であるとはどんなことを意味して 「自由 「自由に値段はございません、旦那さま」とアンドリュー。 いるか考えてみたいと思います。ある意味では、かれはいまでも自 には、たとえチャンスだけたったとしてもそれだけの値打ちはござ由です。少なくともこの二十年間、あたしたちマーチン家のものは だれ一人として、かれの気が進まないだろうと思うことをやれと命 います」

7. SFマガジン 1978年4月号

追ってくるのを確かめて、また走り去っていくのだ。明らかにジロやなしているのた。微妙に陰影を変える色彩は、なにかしら神々し ーを誘い、かっ嘲弄するのを楽しんでいるようだった。 ささえ帯びて見えた。 逃げ水を追う旅人のように、ジローは繰り返し歓喜と絶望を味わ ジーは、巨大な泡のなかに居た。気泡は決して割れることな うことになった。すでに、余のことは眼に入らなくなっていた。た く、ジローの鴉をユラュラと運んでいた。 だたた、闇のなかに閃く白い人影だけが視界をいつばいに占めてい ( 戦士よ、これが″生命の泥″だ ) ふいに、ジローの頭蓋に落雷のような声が響いた。 ジローは、自分がしだいに神殿を下りつつあることに気がっかな「誰だ : : : 」 かった。十層から成る神殿は、円壇、方形基壇、基壇と重なってお ジーは、泡の内面に両手をつきながら叫んだ。 り、そのす・ヘてがなだらかな勾配をなす廻廊でつながっている。ジ ( 私は″稲魂″だ : : : ) ローはいっしか基壇、しかもその中央を占める″至聖所″に近づき声が言った。 つつあったのだ。 ( マンドールをつかさどる″稲魂″なのだ ) ふいに、白い人影が足をとめた。 廻廊そのものが、闇にとぎれているような印象があった。天井ジローは沈黙した。なにか言おうにも、恐怖に圧倒され声になら も、壁も定かには見えなかった。水を透かしたように、すべてが曖なかった。 昧として、現実感を欠いていた。 ( これを見るがいい、若き戦士よ : : : ) 、刀 ジローに他のことに注意を配る余裕がある筈はなかった。 ″稲魂″の言葉と共に、泥のなかに別の気泡が浮かび上がってくる 「ラン : のが見えた。気泡は淡く光を帯び、そこに一人の少女の姿を描きだ ジローは叫びざま、白い人影に向かって走り、 そして、そのしていた。ゾウの山車のうえで、両腕を優雅にくねらしている少女 人影をつきぬけ、漆黒の闇に投げだされたのだ。 の姿を : ・ 「ラン : ジロ 1 のは、泥によって受けとめられた。もがく間もな ジローの叫びを、頭蓋に響く″稲魂″の声が圧した。 く、泥はジローを呑み込んだ。 ( 違う。これは、私がつくり出した幻に過ぎない : 今、ジローは膨大な泥の堆積のなかを、ゆっくりと漂っているの「さっきのランも、幻だったんだな」ジーは呻くように言った。 「なぜだ ? なぜ、そんなに俺を苦しめる」 泥は透明性が強く、しかも光を複雑に屈折させていた。あるい ま ( 恋そのものが幻に過ぎぬのだ : : : ) こがね 赤く、あるいは黄金色に光が閃き、全体に虹のようなパターンをあ声に、かすかに哀れむような響きがこもった。 ・こっこ 0 ゆとり

8. SFマガジン 1978年4月号

ることが多いのだが、これから、この手 の本の出版を企画されているところは、に そういう連中を相手にしているのだとい うことを考えに入れて欲しい。とはいう ものの、そういう連中に限ってどんな下 らない本でも買ってしまうのだから世話 そんなわけで、これから出る本の中の 本命はというと、芳賀書店の「映画宝 庫」の特集、それに徳間書店の「テ レビランド」の別冊・宇宙映画特集とい ったところだろう。 「映画宝庫」の方は石上三登志さんの責 任編集で、日本未公開映画評など、 批評や論文といった読み物的要素が多く なりそうだ。 ちょうどこの号が出る頃、 2 月幻日から「未知これに対して「テレビランド」の方は、 との遭遇」が公開になる。一年程前からくすぶり南山宏さんの監修、それに僕が協力とい ないだけの内容は持っているはずだ。 続けてきた映画プームの火もこれでやっと燃う形で、巻頭に「未知との遭遇」、「スターウォー とはいうもののこれらの企画、石上さんが「テ ズ」、「 2 0 01 年宇宙の旅」の三大作のカラーグ え上がりそうな気配がしてきた。「未知」につい レビランド」に小論文を書いていたり、僕が「映 ラビアが入り、全頁ア 1 ト紙または上質紙を使っ ては先号の手塚さんも取り上げられているので、 これに対する僕の意見はひとまず置くことにして、かなりヴィジュアルな本にする予定だ。中で画宝庫」の座談会に顔を出していたりで、互いに も僕自身が担当している宇宙映画カタログは、公融通しあっている所がミソ。僕の方も、「映画宝 て、プームの周辺から、少し追ってみよう。 での特集などもさることながら、出版やレ開、未公開を問わず、約団本の映画に全て一枚以庫」でデ】タ面はかなり補てんしてくれそうなの コードなどでも映画プームが起ころうとして上の写真を付ける計画で、現在その写真集めに奔で、データを少し削って写真を大きく使おうか な、と思っていたりで、かなり有機的なつながり いる。既に出ているものもあるが、中には見るか走している次第。他に和田誠さんのイラストエッ らにプームに当て込んだ即製のものもあって、よセイ「お楽しみはこれからだ編」など、かなを持った本になってしまいそうだ。 それからもう一つ、レコ 1 ドの方では、これは くもまあこんなはずかしいものを高い値段で売っり楽しい本にできそうな気がする。乞ご期待とい プ 1 ムにのってくれればいいのだけれど東宝レコ ていると思うものもある。だいたい映画にはったところだ。 ードから「ゴジラ」のサウンドトラック '--äが出 かなりマニアックなファンが多いわけで、僕自他にキネマ旬報やアサヒソノラマでも企画があ ズ全燔作のため 身、 ()0 映画研究会の人達と会っていると、こつるとか。これらの本から、どれを買うかは読者のる。このレコードはゴジラシリー とれを取っても、一応損はしに作曲され、録音された 432 曲、時間の音楽 ちがあわをくうような質問をされてお手上げにな皆さんの判断だが、・ フォーカス 大 サウンドトラック L P 「ゴジラ」のジャケット 4

9. SFマガジン 1978年4月号

俺がそこで顔を伏せてみせるとナオコは感極まってワワッと泣きゅっくり話し合いの機会を持つ事が必要だろうな。安心したのな だした。右眼の付けまっげがはすれて頬にくつついていたが、彼女ら、家へ戻りなさい」 の魅力はいささかも損われなかった。 船長は一生懸命と・ほけている。だが、オカミさんにしてみればそ の態度が鼻もちならなかったらしい。 「あなた。生きて帰れるの」 「何だい、その言いぐさは。私から顔をそむけて : : : ははあん。何 「馬鹿なことをきくんじゃない。当り前じゃよ、 ナ . し、刀」 か心に玖しいことでもあるんだろ。それで、私の眼が見れないん 「でも酸素が一人分しかないって皆さん言ってたわ」 だ。図星たろ」 「何とか解決したって言ったろう」 「そっ。それは誤解だ」 「船長はなぜ、画面に出られないの」 「じゃあ、こちらをちゃんと向いたらどうだい」 「ああ、今、ちょっとした作業をやっておられる」 そこへ赤鼻のごっつい中年女が割込んできた。銅鑼声で俺に向か「し、しかし、わしと結婚する時、おまえは、わしの横顔に魅かれ 、、、ノフリー・ ポガードに似ているとい って叫んだのだ。 たと言ってたろう。たしカノ、 「いつまで話しこんでんのさ。ウチのを出してよ」 う表現さえ使っていたじゃないか」 船長のオカミさんだ。俺は椅子からずり落ちそうになりながら一言 「あんた ! 何、寝とぼけてんのさ ! 」 オカミさんの罵声に、船長は本能的に席から三十センチも飛び上 「よっ。ただいまよんで参ります」 った。船長はカメラから逃れ出ると同時にくるりと踵を返し、俺の ニヒルどころか、画像の死角へまるでアヒルみたいに飛びだし、半身をカメラに向けてしまった。仕方なく「まあ、まあ」となだめ クルリと体の向きを逆にした。そうすると、今度はカメラに対してつつ再びカメラに向う。地球では、興奮した船長のオカミさんが、 俺の太股ほどもある腕をまくり、拳をこちらに向けてつきだしてい は右半分のモリ船長の身体が写ることになる。 「ああ、ああ。ナワ君。気を使ってもらってうれしいよ。もっとナた。その時、初めて船長に同情を感じてしまったのだ。 「あんた。ウチの部下のナワさんだね。もう一度、ウチのを出して オコさんと話して安心させてあげればよかったのに」 画面外の俺に話している : : : という演技で後ずさりしながら再びよ。あの愚図に言ってきかせることがあるんだから」 「しかし、また船内にはやらねばならぬ作業が残っています。一応 席に着くというところなど、なかなかこまかいのた。すごい剣幕た った船長のオカミさんもほっと胸を撫でおろしたらしい 安全になったと言ってもまだ非常事態中ですからね」 「おまえさん。安心したよ。ところで頼んどいた味噌のほうも大丈「まあ。でも、おかしいよ。いくら危険だと言っても作業中だと一言 夫だろうね」 っても、狭い船内なんだろう。画像には一人ずっしか写らない。不 5 「味噌 ? 何のことだ。我々の家庭内の問題なら、また帰ってから自然だよ」

10. SFマガジン 1978年4月号

通常の場合であれば、世論はこの種の事件ではロポットの主張をに追及し、二度と立ち直れないようにするまで決して休みません。 支持しないものですが、失礼ながら〈ロポツツ〉はあまり一般必要とあれば、あらゆる手段に訴えて世論を喚起し、〈ロポッ 9 国民に人気がありません。もっともよく口ポットを利用し利益をあッ〉に対抗しますよ。もしも、依頼人のプラチナ日ィリジウム本体 げている人々でさえ〈ロポツツ〉には疑惑を抱いています。このうちたった一本の回路でも乱されるようなことがあったら」かれ れは一般にロポットというものが広く恐れられていた時代からの、 はアンドリューを振りむき、たすねました。「これでいいだろう いわば遺物であるのかもしれません。あるいは世界的な独占企業でね、アンドリュー」 ある〈ロポツツ〉の、富と権力に対して反感があるのかもしれ アンドリューはたっぷり一分間ためらいました。それは結局のと ない。まあ原因はともかく、反感は存在しているのです。わたしのころ嘘と脅迫に、人間に対する強要と侮辱に同意することになるで 考えでは、あなたは訴訟などに巻きこまれるのは好ましくないと考しよう。しかし、肉体的に危害を加えるわけではない、 とかれは心 えられるでしよう。ことにわたしの依頼人は豊かな財力をもち、このなかでいいました。肉体的に危害を加えるわけではありません。 れからまだ何十世紀も生きるのですからね。かれには永遠の戦いで ようやくの思いで、最後に、かれはいくらか小さな声をだしまし さえあえて回避する理由はないのですよ」 た。「はい」 スミスⅡロヾ ハートソンの顔はゆっくりと紅潮していきました。 「きみたちはこのわたしを無理矢理に 「なにも強制してはいません。とポール。「わたしの依頼人の、正 当な要求に同意を拒否されたいのでしたら、どうかそうしていたた かれはまるでもう一度調整しなおされているような気がしまし きたい。われわれはこのまま何も言わずに帰ります。しかし、われた。何日も、そして何週間も、ついには何カ月も、アンドリ = ーは われは告訴しますよ。明らかに、それがわれわれの権利ですからどこかしら自分自身とは違った自分を見いたしつづけ、ほんのささ いな行為がいつまでもためらいを呼び起しつづけたのです。 ね。そしてあなたは結局、敗北を知らされることになるでしよう」 ポールは逆上しました。「やつらはきみを傷つけたんだ、アンド 「ちょっときみ : : : 」 「あなたは要求を呑むことになると思いますーとポール。「ためらリュー。絶対に告訴してやるそ ! 」 アンドリューはひどくゆっくりしゃべりました。「い われるかも知れないが、結局はそう決断されることになるのです。 : りつ : : : 立証が : : : で : : : き : : : ませ そうなると、さらに一点はっきりさせておかなくてはならない。もません。あなたにはりつ : : はん : : : はんーーー」 し、わたしの依頼人の陽電子頭脳をいまのボデイから有機ボディにん。かれらの : : : は : 移しかえる過程で、なんらかの損害が生じた場合、それがいかに些「犯意かね」 少なものであっても、わたしは全力を傾けてあなたの会社を徹底的「犯意が。それに、わたし : : : は : : だん : : : だん : : : 強く、順調